
カスタマーサクセスとは、顧客が製品・サービスを通じて「望む成果」を達成できるよう、企業側から能動的に支援するビジネス手法です。問い合わせを待って対応するカスタマーサポートとは異なり、顧客の課題を先回りして解決することで、解約率の低下とLTV(顧客生涯価値)の最大化を実現します。SaaSをはじめとするストック型ビジネスの成長に不可欠な機能であり、本記事では、これから起業される方や既に起業されている方に向けて、定義から実践ステップ、KPI設計、成功事例までを解説します。
この記事でわかること
- カスタマーサクセスの定義と、カスタマーサポートとの本質的な違い
- なぜストック型ビジネスでカスタマーサクセスが必須なのか
- 実践のための5ステップと、監視すべきKPI(LTV・解約率・NPS・ヘルススコア)
- BtoB・BtoCの成功事例(Adobe・ヤプリ・オイシックス・Spotify)
- スタートアップがカスタマーサクセスに投資すべきタイミング
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カスタマーサクセスとは何か?一言で答えると
カスタマーサクセスとは、「顧客が製品・サービスを使うことで、望ましい結果を達成することを支援するビジネス手法」です。顧客の課題を事前に予測し、能動的にソリューションを提供することで顧客満足度と継続率を高め、結果として自社の収益とロイヤルティの向上につなげます。
従来のカスタマーサポートが顧客から課題を与えられ対応するのに対し、カスタマーサクセスは顧客の課題を先回りして解決することが大きな違いです。ストック型ビジネスが主流になり、新規顧客獲得コストが高まっていることから、カスタマーサクセスの重要性が高まっています。
1つはストック型ビジネスが主流になっているからです。ストック型ビジネスモデルでは、顧客が継続的にサービスを利用してもらうことを前提としており、顧客のリテンション率を高める為にはカスタマーサクセスが必須と言えます。
もう1つは世の中にモノが溢れかえっているからです。サービスや商品が多くある現代は、過去に比べて新規顧客獲得コストが高くなっています。既存顧客に継続的にサービスや商品を使ってもらうことで、企業の利益向上に繋がります。
実際に、今日成長している企業には、カスタマーサクセスに多く投資している企業もあります。下の調査では、成長中の企業は成長が鈍化している企業に比べて、21%もカスタマーサクセスを優先している傾向にあると報告されています。
なぜ今、カスタマーサクセスが重要なのか
理由は大きく2つあります。
① ストック型ビジネスの主流化:SaaS・サブスクリプションでは、顧客に契約を継続してもらえるかが収益を決めます。一般に新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持コストの5倍かかるとされ(1:5の法則)、解約率をわずかに下げるだけで収益構造が大きく改善します。
② 新規獲得コストの高騰:モノとサービスが溢れる現代では広告経由の獲得単価が上がり続けており、既存顧客のアップセル・クロスセルによる成長(ネガティブチャーンの実現)が、資本効率の高い成長戦略として投資家からも重視されています。
参考)What Is Customer Success? (hubspot.com)
カスタマーサクセス実践の5ステップ
次の5つのステップが、カスタマーサクセス成功に向けた具体的な方法になります。
各ステップの詳細を見ていきましょう。
1. 顧客にとっての成功を理解する
まず始めに、顧客が何を欲しているかを正確に理解する必要があります。顧客が何を求めるのかを正確に把握することで、サービスやカスタマーサクセスのプロセスを効果的に構築することができます。
サービス利用開始時のアンケートなどで、早期に顧客の最終目標や欲していることを明確にしましょう。
2. 顧客をセグメント化する
次に、顧客をセグメント化します。顧客の中にも様々な種類の顧客が存在し、顧客に応じて求めるものやレベルも変わります。
各セグメントには、独自の成功の定義があり、それらを事前に理解することで、カスタマーサクセスプログラムをより効果的にすることが可能です。
3. カスタマーサクセスジャーニーマップを作成する
カスタマーサクセスは、1人の従業員や1部門だけでは成し遂げられません。異なるグループ間で連携が必須であり、抜け漏れや最適なサポートができないリスクが伴います。
カスタマーサクセスジャーニーマップでは、カスタマーサクセスプロセスのすべてのステップを描きます。つまずく可能性のある箇所や各段階での顧客の求める成果、使用するツールなどの情報をまとめておく必要があります。
そして、カスタマージャーニーマップを元に、顧客とのタッチポイントごとに付加価値を提供する具体的な方法を示し、実行できるように整備します。下の表がカスタマージャーニーマップの例です。
出典)https://www.persol-pt.co.jp/salesmarketingservice/blog/customer-success_launch/
4. 積極的に顧客をサポートする
顧客と積極的にやり取りを行い、その度に関係に価値を加えることができれば、顧客の満足度向上に繋がります。具体的には以下のような付加価値を提供することが可能です。
- 顧客の現状確認(課題の把握)
- アップセル・クロスセル提案
- 新たな機能や情報の提供
- トレーニングの提供
- コンテンツ共有 (ブログやポッドキャストなど)
- ユーザー勉強会
- 顧客の良い出来事を祝う
5. 継続的な改善のために指標を監視する
カスタマーサクセスにおいて、サービスを導入後にサービスが効果を発揮していることを確認する必要があります。この時に、会社と顧客の両方の成功を測定する指標を測定する必要があります。
会社への影響を測定するために使用できる代表的な指標は「顧客生涯価値(LTV)」と「解約率」があります。
顧客への影響を分析する代表的な指標は、「顧客推奨度(NPS)」や「ヘルススコア」があります。
その他にも顧客の状況を測定するKPI(指標)を監視するとよいでしょう。
例えば、ログイン回数などのKPIを監視することで、ユーザーのログイン回数が減っていれば何かしらの対策を打つ、といった判断に活用できます。
そして、これらのKPIを元に継続的にサポートすることが重要になります。
LTVや顧客推奨度(NPS)などについては下の記事に記載されているので、合わせてご覧ください。
カスタマーサクセスの成功事例
BtoB事例
Adobe:大企業から個人まで幅広い顧客の利用状況を自動分析する仕組みを構築し、全ユーザーに同じ対応をするのではなく、利用ログに基づいて最適なタイミング・内容のサポートを実行しています。テックタッチの代表例です。
ヤプリ:アプリ開発プラットフォームを提供する同社は、解約率をKPIに設定し、オンボード・カスタマーサクセス・コミュニケーションの3部門体制で顧客を支援。解約率約1%未満という高い継続率を実現しています。
Salesforce:カスタマーサクセスという概念を確立した企業であり、顧客のライフサイクル全体を通じた成功支援に年間5億ドル以上を投資しています。
BtoC事例
オイシックス・ラ・大地:食材宅配サブスクにおいて、広告では魅力が伝わりにくい課題に対し、徹底したユーザーヒアリングと商品への反映で顧客の成功体験を作り込み、継続率と売上の向上につなげました。
Spotify:選曲履歴データによるレコメンド精度の向上に加え、ユーザー同士が助け合う公式コミュニティを運営し、エンゲージメントを高めています。
EXPACTの支援現場から:スタートアップがCSに投資すべきタイミング
支援300社超の現場から見ると、カスタマーサクセスへの投資判断で迷うスタートアップは非常に多いです。結論から言えば、PMF(プロダクトマーケットフィット)が見え始めた瞬間が、CS体制構築の適切なタイミングです。
ある静岡のSaaS系スタートアップでは、新規獲得に営業リソースを全振りしていた結果、解約率が月3%を超え、「穴の空いたバケツに水を注ぐ」状態に陥っていました。私たちは資金調達の支援と並行して、調達資金の使途にCS人材の採用とヘルススコア整備を組み込むことを提案。1年後には解約率が1%台まで改善し、次のラウンドではLTV/CACの改善データそのものが投資家への最強の説得材料になりました。
静岡銀行時代から一貫して感じるのは、「既存顧客が定着しているか」は、金融機関や投資家が事業の持続性を判断する核心的な指標だということです。カスタマーサクセスは顧客のためであると同時に、資金調達力を高める経営投資でもあります。
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よくある質問
Q1. カスタマーサクセスとカスタマーサポートは何が違いますか?
最大の違いは「受動的か能動的か」です。カスタマーサポートは顧客からの問い合わせに対応する受動的な機能であるのに対し、カスタマーサクセスはデータに基づいて顧客の課題を先回りし、企業側から働きかけて成果達成を支援します。KPIも、サポートが対応件数・解決時間であるのに対し、サクセスは解約率・LTV・NPSといった事業成果に直結する指標を追います。
Q2. 小規模なスタートアップでもカスタマーサクセスは必要ですか?
ストック型ビジネスであれば必要です。ただし初期から専任部門を作る必要はなく、まずは創業者やセールス担当が「解約率とその理由」を把握することから始めれば十分です。PMFが見え、有料顧客が数十社を超えたあたりが専任者を置く一つの目安です。解約率が月2〜3%を超えている場合は、新規獲得より先にCSへの投資を優先すべきシグナルと考えられます。
Q3. カスタマーサクセスのKPIは何を設定すればいいですか?
基本形は4つです。会社側の成果を測る「解約率(チャーンレート)」と「LTV(顧客生涯価値)」、顧客側の状態を測る「NPS(顧客推奨度)」と「ヘルススコア」です。加えて、ログイン頻度や主要機能の利用率などの先行指標を監視すると、解約の予兆を早期に検知できます。これらはUnit Economics(LTV/CAC)として資金調達時の重要な提示データにもなります。
まとめ:カスタマーサクセスは「守り」ではなく「攻め」の投資
カスタマーサクセスの要点を3つに絞ります。
- サポートとの違いは能動性:問い合わせを待たず、データで課題を先回りする
- 5ステップで仕組み化する:成功の定義→セグメント→ジャーニーマップ→能動的支援→KPI改善
- CSは資金調達力に直結する:解約率とLTVの改善は、投資家への最も説得力ある成長証拠になる
新規獲得コストが高騰し続ける時代、既存顧客の成功に投資することが最も資本効率の高い成長戦略です。自社の解約率を把握することから始めましょう。
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最後までご覧いただきありがとうございました。今回は、カスタマーサクセスの意味や施策、具体的な成功事例などをご紹介しました。
EXPACTでは幅広い分野での支援を行っています。特にスタートアップ企業への補助金活用や資金調達を強みとしており、実績・経験も多数ございます。カスタマーサクセスに注力する為に資金調達をする必要がある、パートナーを探している、また詳しく話を聞いてみたいという方は是非お問い合わせください。
著者情報
髙地耕平(EXPACT株式会社 代表取締役)
静岡銀行にて約9年間、融資・企業支援業務に従事した後、トーマツでのベンチャー支援を経て、2018年7月にEXPACT株式会社を創業。資金調達支援累計40億円超・補助金獲得支援累計20億円超・支援スタートアップ数300社超。一般社団法人静岡ベンチャースタートアップ協会(SVSA)理事長として、学生・若手起業家育成にも従事。
最終更新:2026年8月25日
EXPACTでは、起業を始めたい方向けに有益な記事を多く配信しています。カスタマーサクセスと合わせて知っておきたい記事はこちら↓



