
【2026年最新】日本のスーパーシティ構想とは?つくば・大阪の進捗、Woven City、スマートシティとの違いを解説
AI、データ連携、自動運転、遠隔医療、デジタル行政などを組み合わせ、住民の暮らしを起点に未来社会を先行実装する――それが日本政府の「スーパーシティ構想」です。
2026年8月時点で、スーパーシティ型国家戦略特区に指定されているのは、茨城県つくば市と大阪府・大阪市の2区域です。両地域では、規制・制度改革、データ連携基盤、住民参加を組み合わせながら、移動、健康・医療、行政、物流、防災など複数分野の社会実装が進められています。
また、静岡県裾野市のToyota Woven Cityは、国のスーパーシティ指定とは別の民間主導プロジェクトですが、2025年9月に実証を開始しました。人が実際に暮らす環境で、モビリティ、ロボット、AI、エネルギー、物流などを検証する「モビリティのテストコース」として注目されています。
本記事では、スーパーシティ構想の制度設計、スマートシティとの違い、つくば・大阪の最新進捗、Woven Cityとの関係、地域・スタートアップにとっての事業機会を整理します。
スーパーシティ構想とは
スーパーシティ構想は、住民が参画し、住民目線で2030年頃に実現が期待される未来社会を先行実現することをめざす、国家戦略特区を活用した政策です。
従来のスマートシティが、交通、エネルギー、防災、行政など個別領域から段階的にデジタル化・高度化を進める場合が多いのに対し、スーパーシティでは、複数分野のサービスを同時に設計し、データ連携と規制・制度改革を一体で進める点に特徴があります。
主な要件は次の3点です。
- 生活全般にわたる複数分野の先端サービスを提供すること
- 分野横断のデータ連携基盤を整備・活用すること
- 実装を阻む規制・制度上の課題を改革すること
対象となる領域には、移動、物流、決済、行政、医療・介護、教育、エネルギー、防災、防犯などがあります。重要なのは、個別技術の実証ではなく、住民の生活上の課題を起点に、複数サービスを接続して継続的に利用できる状態まで持ち込むことです。
スマートシティとの違い
| 観点 | スマートシティ | スーパーシティ |
|---|---|---|
| 位置付け | ICT・データを活用して地域課題を解決し、新たな価値を生み出す広い概念 | スマートシティの考え方を踏まえ、国家戦略特区を活用して未来社会を先行実現する政策モデル |
| 対象領域 | 交通、防災、エネルギー、行政、観光、福祉など。個別分野からの取組も多い | 生活全般に関わる複数分野を一体で扱う |
| データ | 分野ごとのデータ活用から都市OS・データ連携基盤まで幅がある | 分野横断のデータ連携が制度上も重要な柱 |
| 規制改革 | 必須ではない | 実装に必要な大胆な規制・制度改革を重視 |
| 推進主体 | 自治体、企業、大学、住民、地域団体など | 自治体・住民・事業者が国家戦略特区の枠組みで協働 |
| 成功指標 | 個別サービスの導入・利用・地域課題の改善 | 複数サービスの統合、制度改革、住民便益、持続的な社会実装 |
スーパーシティは、単に「先端技術が多い都市」を意味しません。技術・制度・データ・住民合意を同時に設計する都市変革プロジェクトと捉えると、違いが理解しやすくなります。
現在の指定区域
2021年の公募には全国31自治体・自治体グループが応募しました。その後の審査を経て、2022年4月12日に、つくば市と大阪府・大阪市がスーパーシティ型国家戦略特区として指定されました。2026年8月時点で、同構想の指定区域はこの2区域です。
つくば市
つくば市は「つくばスーパーサイエンスシティ構想」を掲げ、研究機関、大学、企業、住民の連携を基盤に、科学技術を市民の暮らしの選択肢へ変えることをめざしています。
重点分野は、次のようなものです。
- 自動運転バスやパーソナルモビリティなどの次世代交通
- ロボット・ドローンを活用した物流・配送
- データ連携による医療・健康支援
- デジタル行政、インターネット投票等に関する制度・技術の検討
- 防災・インフラ管理におけるデータ活用
- 中心市街地を実証・実装の場とする都市開発
つくば市では、スーパーシティ指定から4年目を迎えるにあたり、優先的に先行実現するサービス・プロジェクトを検討するための市民アンケートも実施されました。これは、技術起点ではなく、住民の困りごとや受容性を踏まえて実装の優先順位を定める動きといえます。
特に重要なのは、つくば市が「研究開発都市」であることにとどまらず、研究成果を市民の日常へ接続できるかです。自動運転、配送ロボット、遠隔医療といった個別実証を、移動困難者支援、買い物支援、医療アクセス向上、地域交通の持続可能性といった生活課題の解決につなげることが問われています。
大阪府・大阪市
大阪府・大阪市は、「健康といのち」をテーマに、夢洲、うめきた2期をはじめとする都市開発エリアや大阪全域を視野に、データ連携を軸とした都市DXを進めています。
大阪スーパーシティは、複数分野の先端サービスと規制改革を組み合わせ、未来の生活を先行実現する「まるごと未来都市」をめざす取組です。大阪府・大阪市は全体計画を策定し、スーパーシティ型国家戦略特別区域の区域計画も認定されています。
大阪・関西万博は2025年に開催され、先端技術・デジタルサービスの実装と国際発信の機会となりました。今後の焦点は、万博会場での展示や期間限定の実証を、うめきた、夢洲、森之宮などの都市開発、さらには大阪府域全体の持続的なサービスへどう接続するかです。
大阪の強みは、医療・ライフサイエンス、製造業、都市開発、大学、スタートアップ支援機関、国際イベントの集積を持つことです。一方で、都市スケールでデータを活用するには、行政・民間・住民の間でデータガバナンス、費用負担、サービス運営主体を設計する必要があります。
Woven Cityとの関係
Woven Cityは静岡県裾野市にあるトヨタ自動車とWoven by Toyotaによる民間主導の実証都市であり、国のスーパーシティ型国家戦略特区ではありません。しかし、現実の生活環境で先端技術を検証し、社会実装をめざすという点で、日本のスマートシティ・スーパーシティ議論にとって重要な先行事例です。
Woven Cityは2025年9月25日にオフィシャルローンチを迎え、住民の居住と企業・個人による実証が始まりました。Phase 1ではトヨタ関係者や家族を中心とする住民が生活を始め、最終的には約300人の居住を想定しています。将来的には全体で約2,000人規模へ拡大する計画です。
2026年春時点では、約100人の「Weavers」が生活する環境で、モビリティ、ソフトウェア、AI、ロボット、物流、スマートホームなどの共創が進められています。一般来訪者の受け入れは2026年度以降が予定されています。
Woven Cityの位置付け
| 観点 | スーパーシティ | Woven City |
|---|---|---|
| 主導 | 国・自治体・住民・事業者 | トヨタ、Woven by Toyota、パートナー、住民 |
| 制度 | 国家戦略特区による規制・制度改革を重視 | 民間主導の実証・共創を中心に進める |
| 都市タイプ | 既存都市・開発地を含む地域社会の変革 | 新たな実証環境をつくるグリーンフィールド型のテストコース |
| 主眼 | 市民生活の高度化と地域課題の解決 | モビリティを中心とする製品・サービスの実環境検証 |
| 学び | 住民合意、行政データ、制度改革、地域運営 | 実証設計、共創の場、企業・スタートアップの参加、生活環境での検証 |
静岡県にとってWoven Cityは、単なる大企業の実証拠点ではなく、県内のスタートアップ、大学、地域企業、行政がどのように実証テーマや事業連携を生み出せるかを考える重要な機会です。地域企業が参加する際は、「技術を持っている」だけでなく、誰のどの生活課題を、どの指標で改善し、実証後に誰が費用を負担して継続運営するのかまで提案できることが重要になります。
デジタル田園健康特区も重要
スーパーシティと並行して、政府はデジタル田園健康特区を推進しています。指定自治体は、石川県加賀市、長野県茅野市、岡山県吉備中央町です。これらの地域では、健康・医療を主軸に、デジタル活用と規制・制度改革を一体で進め、地域課題の解決と未来社会の先行実現をめざしています。
スーパーシティが都市全体の複数領域を横断する大規模な未来社会実装を志向するのに対し、デジタル田園健康特区は、健康・医療・福祉を中核に、地方部・中山間地も含めた暮らしの課題へ踏み込む点に特色があります。
人口減少や高齢化が進む地域にとっては、巨大な都市OSを先に導入することよりも、医療アクセス、移動、買い物、見守り、行政手続き、地域人材の不足といった具体的な課題を起点に、必要なデータ連携と規制改革を組み立てるほうが現実的な場合もあります。
スタートアップ・地域企業の機会
スーパーシティやスマートシティで求められるのは、単発のPoCを受託する企業ではなく、自治体・住民・地域事業者と一緒に社会実装の仕組みを設計できるプレイヤーです。
特に事業機会が大きい領域は次の通りです。
- 自動運転、オンデマンド交通、MaaS、物流最適化
- ドローン配送、ロボット配送、ラストワンマイル支援
- 高齢者の健康管理、遠隔診療、介護予防、見守り
- 防災データ、避難支援、地域インフラの予防保全
- 地域ID、行政手続き、データ連携、本人同意管理
- 脱炭素、分散型エネルギー、地域マイクログリッド
- 観光DX、関係人口創出、地域商店・交通の連携
- 住民対話、合意形成、効果測定、データガバナンス
例えば、ドローン配送の事業であれば、「飛ばせるか」を実証するだけでは社会実装になりません。配送頻度、荷物単価、離着陸地点、住民の利用意向、地域商店との連携、悪天候時の代替手段、運航主体、規制対応までを一つのサービス設計として成立させる必要があります。
今後の論点
日本のスーパーシティ政策は、制度指定のフェーズから、具体的なサービスを継続運営するフェーズへ移っています。今後は、次の5点が成否を分けます。
- 住民が実感できる便益を、どのサービスから早く示せるか
- 実証実験で終わらず、料金・予算・運営主体を含めた事業モデルをつくれるか
- 分野ごとのデータを、安全かつ住民の納得を得ながら連携できるか
- 規制改革を、現場の具体的な運用課題まで落とし込めるか
- 大都市モデルだけでなく、地方・中山間地域にも再現可能な形にできるか
技術の先進性だけでは、都市の変革は起きません。住民が「便利になった」「安心して暮らせる」「選択肢が増えた」と感じる具体的な価値と、それを継続する制度・運営・収益モデルがそろって初めて、スーパーシティは社会実装になります。
2026年の日本は、スーパーシティの構想段階を越え、つくば・大阪での実装成果、デジタル田園健康特区での地域課題解決、そしてWoven Cityでの実生活を伴う技術共創を、どこまで横展開できるかが問われる局面に入っています。

