
皆様は「PMF」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?
この記事では、これから起業される方や既に起業されている方に向けて、「PMFの定義や指標、成功事例」に関して解説していきます。学生の方でも理解できるようにかみ砕いて、かつ詳しく説明しています。よろしければ是非ご覧ください!
PMF(プロダクトマーケットフィット)とは?
PMFとは「プロダクトマーケットフィット(Product Market Fit)」の頭文字を取った略語であり、「プロダクトやサービスが顧客を満足させるもので、特定のマーケットに適合している状態」のことを指します。
PMFという言葉はアメリカの事業家であり投資家でもあるマーク・アンドリーセン氏によって広められ、現在はビジネス用語として定着しています。
具体的にPMFとは、下の図のように「提供価値」と「満たされていないニーズ」を繋げることです。PMFを達成するには、「適切な市場を見つけること」と「顧客を満足させるプロダクト」の両方が重要になります。
そして、このPMFはスタートアップの成功の鍵になる考え方です。提供するプロダクトが顧客ニーズを満たせなければ、いくら機能や性能が良いプロダクトでも全く買ってもらえません。PMFは基本的かつ最も重要な考え方です。シリーズAに向けて証明しなければならない大きな壁となります。
実際に、下記の調査ではスタートアップの失敗のうち、34%がPMF(No Market Needs)が上手くいかなかったことが原因で失敗したということがわかります。
出典)https://explodingtopics.com/blog/startup-failure-stats
PMFを達成する為の手順
①ターゲット顧客を決定する
まず、プロダクトのターゲット顧客を見つける必要があります。市場セグメントを分析し、どの市場が適しているかを判断して、ターゲット顧客を定義します。
その際に、性別、年齢、収入、家族構成、行動パターンなど、物理的および心理的要因に基づいて、顧客をセグメント化することができます。ターゲット顧客が決まれば、ペルソナを明確にするとより良いでしょう。
②ターゲットの満たされていないニーズを特定する
ターゲット顧客を決定したら、ターゲット顧客が求めているニーズを特定し、プロダクトに反映させる必要があります。アンケートやインタビュー、調査などを行い、顧客のニーズを正確に把握することが重要です。
③提供価値の定義
多くの場合、既に市場には競合が存在しています。プロダクトが競合他社よりも顧客ニーズをどのように満たすかを定義するには、提供価値を定義する必要があります。自社の強みや競合他社を分析することで、自社の提供価値を明確にしましょう。
④MVP(実用最小限の商品)を決める
提供価値が決まった後は、MVPを用いてプロダクトをテスト(検証)します。その為に、まずは最小限必要な機能を決める必要があります。MVPは、フィードバックを元に改善することを前提にしています。機能を取捨選択し、「最短で開発可能」かつ「最小限の機能」を保有するMVPを目指しましょう
⑤MVPを作成し、フィードバックを得る
上記の4ステップで決めたことに基づいて、MVPを作成します。
MVPが完成した後は、実際に顧客に使ってもらい、フィードバックを得ます。フィードバックを活用して、プロダクト機能の追加や変更をしましょう。そして、フィードバックを元に改善を重ねていく中で、PMFが達成される瞬間が訪れるでしょう。
PMFの指標(測定方法)
1)NPS(ネットプロモータースコア)
NPSとは「ネットプロモータースコア」の略で、顧客ロイヤリティを図る指標になります。「企業に対しての愛着や信頼度」を数値化することができ、改善点の発見や他社サービスとの比較に用いられます。この指標は事業の成長率と高い相関があり、近年多くの企業アンケートなどにも導入されています。
NPSでは、顧客に「その企業および製品を友人や同僚に薦める可能性はどの程度ですか?」という質問を投げかけて、0〜10の11段階で答えてもらいます。「0~6:批判者」「7~8:中立者」「9~10:推奨者」と定義して、推奨者の割合から批判者の割合を差し引いた数値がNPSのスコアです。
出典)https://www.nttcoms.com/service/nps/summary/
ほとんどの場合は、スコアはマイナスになります。実際に、業界別でのNPSランキング1位として、クレジットカード業界は楽天カードで-17.0ポイント、銀行業界ではソニー銀行で-24.5ポイントとなっています。
2) CSAT(顧客満足度)
CSAT(顧客満足度)とは、プロダクトに対して顧客がどの程度満足しているかを測る指標です。その名の通り、顧客満足度を数値化することが可能であり、前のプロダクトとの比較に用いられます。
CSATは、「非常に不満」~「普通」~「非常に満足」の5段階尺度で顧客にアンケートを取ることで、満足度を計測します。計算式は企業により、独自のものを用いています。
計算式例)CSAT(%) = 4または5と回答された数 ÷ 調査への回答者 × 100
定期的な調査を行い、測定結果をグラフ化することで、顧客満足度が改善されているかを確認することができます。
3)リテンションカーブ
ビジネスにおけるリテンションカーブは、提供しているプロダクトがどれくらい顧客に継続的に使われているかを示す指標です。プロダクトを気に入り、リピートする顧客を測ることができます。縦軸にリテンション率、横軸にプロダクトリリース開始からの期間をとったグラフで、リテンション率を時系列順に記録することで、曲線のグラフとなります。
出典)https://review.foundx.jp/entry/retention_sequoia
グラフが水平に近づくにつれ、PMFに近づいているということです。逆にリテンション率が低く、常に下降傾向にある場合はその原因を発見し、いち早く解決する必要があります。
4)成長率
成長率は、その名の通り成長している速度です。売上高成長率が代表的ですが、顧客増加率などの様々な指標があります。企業が重要視するKPIに合わせた成長率の指標を採用すると良いでしょう。プロダクトが市場に受け入れられ、PMFがなされている場合は想定通りまたは想定以上の成長率になるはずです。
PMFの成功事例
ⅰ. 株式会社カミナシ
企業HP)https://corp.kaminashi.jp/
株式会社カミナシは、作業現場で働く人向けに、現場のルーティンワークや事務作業を自動化する現場管理アプリを提供している会社です。元々、食品工場向けの作業をデジタル化するサービスを提供していましたが、製造や小売、飲食、物流など、あらゆる現場のノンデスクワーカー向けのツールに変えたことで、ニーズが一気に増したそうです。
ⅱ. 株式会社SmartHR
企業HP)https://smarthr.jp/
SmartHRは人事・労務の業務のペーパーレス化やデータ管理を行い、生産性向上を支える「クラウド人事労務ソフト」を提供している会社です。
当初はスタートアップやIT界隈がターゲット顧客だったそうですが、飲食や小売にフォーカスすることで、売上が一気に増加したそうです。
冒頭に記述した通り、「適切な市場を見つけること」と「顧客を満足させるプロダクト」が重要になります。上記の2つの企業のように、PMFが達成した時には顧客にはまる瞬間が訪れ、一気に事業が加速します。
終わりに
最後までご覧いただきありがとうございました。今回は、PMFの定義や指標、具体的な成功事例などをご紹介いたしました。PMFを達成することでシリーズAの大型資金調達につなげることが可能となります。
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