
2021年冬、”SPAC”というキーワードがニュースを騒がせていました。例えば以下の通りです。
米ウォルマートなど小売企業に物流施設の自動化技術を提供するシンボティックは13日、ソフトバンクグループが出資するSPACとの合併によりNASDAQに上場すると発表した。評価額は55億ドル(約6200億円)。2022年上半期に取引が完了する予定だ。取引を通じ、総額7億2,500万ドルの資金調達を見込む。(日本経済新聞より引用)
日本企業を合併の対象とするSPACがまもなく上場する。米資産運用会社がスポンサーとなって運用する「Evoアクイジション」で、このSPACとの合併を通じて、日本のスタートアップ企業は比較的短期間で米証券市場に上場できるようになる。米国で有望な日本企業に投資する新たな機会ができ、関心を呼びそうだ。SECに提出した目論見書によると、合併対象のスタートアップとして日本のテクノロジーや金融関連企業を候補に挙げた。2億5千万~7億5千万ドルの企業価値の会社を想定する。Evoの社外取締役には千葉ロッテマリーンズ元監督のボビー・バレンタイン氏も就く。日本にゆかりのある人材を登用し日本のスタートアップ開拓を狙う。(日本経済新聞より引用)
日本のスタートアップを合併の対象とするSPACがこのほど、NASDAQ市場に上場した。IT(情報技術)やドローン、人工知能(AI)などの企業を狙う。コロプラ元副社長の千葉功太郎氏が社外取締役を務めており、千葉氏を通じて有望な日本のスタートアップを探すようだ。米国進出を模索するスタートアップにとっては、短期間で米株式市場に上場する道が開ける。(日本経済新聞より引用)
以上からアメリカの証券市場ではすでにSPAC上場が普及し、「日本発のスタートアップ・ベンチャー企業が米国市場に上場する道」も開いています。
今回はこのSPACについて解説します!
そもそも”SPAC”とは?
読み方はSPAC(スパック)です。
”Special Purpose Acquisition Company”の略で、直訳すると「特別買収目的会社」となります。 一般的な会社とは異なり、買収を目的に設立される会社というのが特徴です。
SPACは上場した時点では、自らは事業を行わないペーパーカンパニーです。上場後に、株式市場から資金調達を行い未公開会社の買収を行います。株式市場から調達した資金で一定期間内(原則2年以内)に有望な未上場のスタートアップ・ベンチャー企業を買収し、空箱企業に具体的な事業という中身を入れるイメージになります。
SPAC上場後に買収された未公開会社は、従来の上場のプロセスを行わずに上場することができるため、「裏口上場」と言われることもあります。またSPACは買収を目的とした企業であることから、「白地小切手会社」や「ブランク・チェック・カンパニー」などと呼ばれています。自社事業がないため「空箱上場」とも例えられます。
SPACには、著名な経営者や投資家が代表になるケースが多くあります。ソフトバンクグループの孫正義などは世界的に有名であり、個人の信用力と「上場後の優良企業の買収(合併)」を行うというコミット感により、市場から資金を調達し、未公開会社の買収を実施する目論見であると考えられます。
まずは、この状態で上場した後、SPACは買収した企業と合併することで、実質的に買収された企業が株式市場での上場企業になる-という流れになっています。最近では、投資銀行がSPACスキームに力を入れていることもあり、SPAC上場する件数が増加傾向にあります。
なぜ注目されたのか?バブルとの指摘も
米国の調査会社SPACリサーチによると、2019年のSPAC上場は59件で、調達資金総額が136億ドル(約1兆4,800億円)に達しています。2020年には248件(前年の4倍)、834億ドルに急拡大しており、2021年は最終的に613社のSPAC上場を果たし、1,625億ドルにも達しています。
ブームの背景には、「新型コロナ対策での大規模金融緩和」があります。また米国の元プロスポーツ選手や著名人がSPACに関与する動きを活発化させたことも追い風となったようです。ブームは各国に飛び火しており、日本企業ではソフトバンクグループが、有望なテクノロジー企業の買収を狙い、米国でSPACを上場しています。
しかし、その後米国でのSPACのIPO(新規株式公開)が急減速しています。2022年は2月9日時点でSPACの上場は30社と、2021年の同時期と比べると約4分の1に減少しているのです。急減速の引き金は、2021年12月にゲンスラー委員長が講演会で改めてSPACの情報開示強化に言及したことであると見られています。SPACブームがIPO市場の活性化につながった一方、合併プロセスは投資家保護の観点で多くの問題をはらんでいることを問題視しています。(日本経済新聞より参考)
SPACを通じて上場を果たした”Nikola”や”Lordstown Motors”、”Canoo”、”Lucid Group”は、企業が、投資家に説明していた業績見通しや成長戦略などが不適切であることを理由として、SEC(米証券取引委員会)や司法省の調査を受けました。一度はSPACによる買収・合併を合意した”Acorns Grow”や”HeartFlow”は、市場の反応等を鑑みて合意を白紙に戻しました。SPACとの合併を模索していた”BuzzFeed”は、SPAC投資家の9割以上が償還権を行使してしまい、想定の1割にも満たない額しか資金調達できませんでした。(大和総研より引用)
景気後退とともに米国SPACブームも終焉か
しかし2022年12月現在、SPAC関係者は年内にSPACを清算しようと急いでいる。12月に入り、SPACの閉鎖は1日4社のペースで続いている。これは昨年初めに、このセクターがピークに達していた頃のSPAC設立のペースとほぼ同じだ。閉鎖を急ぐ背景には、すぐに買収・合併できそうな候補企業が見当たらないことや、新たな税金が来年から課されることが突如決まったという背景がある。
約70社のSPACが今月すでに清算を完了し、投資家に資金を返却している。今月の清算で6億ドル(約797億円)以上、今年に入ってからは11億ドル以上の損失を出した(SPACリサーチ調べ)。
このブームに遅れて参加したSPACは買収・合併先を見つけるのに苦労している。株価の下落と金利上昇により、新規上場市場は実質的に凍結され、経営陣が2年間という案件探しの期限を守ることは困難になっている模様。その期限の多くが来年前半に迫っているSPACも多いという。
気候変動や医療、歳出に関するインフレ抑制法が成立し、自社株買いに対する1%の連邦税が導入されることも清算を加速させている。SPACを清算し、投資家に現金を還元することは、会社の既存株の買い戻しと見なされ、来年から買い戻し税が課されることになる。一部のアナリストは、SPACの清算損失は向こう数カ月で20億ドルを超えると予測されている。
白紙委任会社とも呼ばれるSPACは、投資家から資金を調達し、未公開企業と合併して上場を目指すが、その目的は株式公開だけというダミー会社。規制当局の審査を経て取引が完了すると、株式市場に名前が登場するのはSPACではなく上場した企業となる。
こうした合併は、2020年と2021年に従来の新規株式公開(IPO)に代わる人気のある選択肢として登場したが、ブームは2022年の市場の下落により終焉(しゅうえん)してしまった。
さらに、合併契約には達したものの、まだ完了していないSPACが150社あり、全体で約250億ドルを保有している(SPACリサーチ調べ)。その中には、ドナルド・トランプ氏のソーシャルメディア企業を上場しようとしているSPACも含まれている。この150社の中には恐らく合併を断念するものも出てくるとみられ、清算損失は予想以上に膨らむ可能性もある。
参照:Wall Street Journal SPACに清算ブーム、損失さらに膨らむ見込み
今後の海外市場の動向にも注目
こうした米国でのSPACブーム終焉を踏まえて香港、シンガポール、ロンドンなど海外のSPACマーケットがどのような変化がもたらされるか、それらを踏まえて日本市場にSPACの仕組みが導入されるかなど引き続き注目していく必要があります。
【海外事例】SPAC上場に関する事例
SPACが買収先の対象企業を特定し、買収することを”De-SPAC(デスパック)”といいます。上場規則でSPACは、「IPO後2〜3年以内に買収を完了すること」や「対象企業のフェアバリュー(公正市場価値)は信託したIPOの80%以上」などの条件を満たす必要があるなどの条件が付されています。
SPAC上場に成功した事例
・Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック )
リチャード・ブランソン氏が率いる宇宙開発ベンチャーである同社は、2019年10月に元Facebook幹部のチャマス・パリハピティヤが運営するSPACの「ソーシャル・キャピタル・ヘドソフィア」との合併により、米ニューヨーク証券取引所に上場した。初値は12.34ドル。初値を基に計算した時価総額は約10億ドル(約1080億円)となる。宇宙旅行会社として株式公開したのは世界で初めてで、SPAC取引ブームの先駆けとなった。(ForbesJAPANより参考)
・Grab(グラブ)
ソフトバンクグループ(SBG)が出資する東南アジア配車最大手の同社は、2021年12月2日、米NASDAQ市場に上場するSPAC「アルティメーター・グロース」と合併することで米ナスダック市場に上場した。合併時のグラブの評価額は346億ドル。第三者割当増資分を合わせた合併新会社の価値は約400億ドルに達していた。米調査会社ディールロジックによると、SPAC合併案件としては過去最大と見られている。ただ新型コロナウイルスの新変異型「オミクロン型」拡大の影響が懸念されており、厳しい船出となった。(日本経済新聞より引用)
Luminar Technologies(ルミナー・テクノロジーズ)
自動運転車の目であるLiDARを開発している同社は、2020年12月にSPACの「ゴアーズ・メトロポウラス」を通じてNASDAQに上場した。SPACを通じてNASDAQに上場したLiDARメーカーは、ヴェロダイン・LiDAR、アエヴァに続いて同社は三社目。アナリストの多くは、同社がすでに大口の契約を決めていることと、他社との商談が始まっていることなどを理由に、同社の株価はまだ上昇の余地を残していると見ている。(米国株ナビより引用)
*LiDAR(Light Detection And Ranging):レーザー光を照射し、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測し、物体までの距離や方向を測定する技術。自動運転システムに使われる。
・WeWork(ウィーワーク)
起業家向けのコワーキングスペースを提供する米シェアオフィス大手で、ソフトバンクグループが筆頭株主の同社が21日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。SPACとの合併を活用した。世界でシェアオフィス事業を急拡大させて赤字続きだったほか、創業者のアダム・ニューマン氏の企業統治に関する市場の懸念が強まり評価額が急落。19年9月に上場を取り下げた。SBGの支援でリストラし、2年たっての上場となった。(日本経済新聞より引用)
・Aurora Innovation(オーロラ・イノベーション)
Uber(ウーバー)の自動運転部門を買収した自動運転車両スタートアップの同社はSPACである”Reinvent Technology Partners Y”との合併を通じて上場する。2021年7月15日に発表されたこの取引は、LinkedIn共同創業者Reid Hoffman氏とZynga創業者Mark Pincus氏、マネージングパートナーのMichael Thompson氏によって立ち上げられたSPACとAuroraが最終的な協議を行った。Uberの自動運転部門の買収後の同社の評価額は、100億ドル(約1兆980億円)だった。同社は4年という期間で、話題を振りまくスタートアップから上場企業になった。(TechCrunchより引用)
・Redwire(レッドワイヤー)
宇宙スタートアップである同社は、SPACである”Genesis Park Acquisition Corp.”との合併により株式公開し、合併後の会社はニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場すると発表した。Redwireは2021年に1億6300万ドル(約177億9000万円)の収益を見込んでおり、収益を生み出す力があることが証明されている。また、現在Redwireの傘下で事業を展開している企業の多くはかなり成熟しており、何年にもわたって営業キャッシュフローが黒字の場合も多い。こうしたことから、公開市場への道としてのSPACは、このような場合には意味があると思われる。しかし、このルートを選択する宇宙企業の頻度と量が増えていることから、全体的には健全な懐疑心を持って見守るべきトレンドである。(TechCrunchより引用)
・EVgo(EVゴー)
電気自動車(EV)向けの公共急速充電設備を所有・運営しているLS Powerの完全子会社である同社は、SPACの”Climate Change Crisis Real Impact I Acquisition Corporation”との合併を通じて公開企業となることで合意した。同社はEV業界新規参入者ではない。同社は2010年に創業され、過去10年のほとんどをインフラの拡大に費やしてきた。今日では同社は34州にまたがる67主要都市マーケットの800カ所超にチャージャーを展開している。
EV関連企業がSPACと合併して、IPO手続きを回避するという動きが続いており、”Arrival”、”Canoo”、”ChargePoint”、”Fisker”、”Lordstown Motors”、”Proterra”、”The Lion Electric Company”といった企業がSPACと合併したり、あるいは合併の予定を発表している。(TechCrunchより引用)
SPAC上場に関して注目された事例
・コインチェック
マネックスグループ子会社の仮想通貨取引サービスを展開する同社は、2022年内に米国株式市場のNASDAQへ上場する方針を固めた。Web3領域における世界戦略を推進していく計画で、そのために米国市場で資本を確保し、グローバル人材の採用が肝要と判断。上場にあたり、オランダの持株会社Coincheck Group N.V(CCG)と既にNASDAQ上場のThunder Bridge Capital Partners IV(THCP)との間で事業統合契約を締結。持株会社のCCGとTHCPを統合させ、CCGを上場させる。上場後、マネックスグループはCCGの72.5%の株式を保有する。(TOKYO GEEKSより引用)
・香港の企業
中国の招商銀行傘下、招銀国際資産管理が支援するSPACが、香港で上場承認を取得した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。香港でSPAC上場が認められるのは初めて。関係者によると、SPACの「アクイラ・アクイジション」が24日に承認を獲得。約3億米ドル(約345億円)の調達を目指すと関係者の1人は述べた。アクイラは取引所ウェブサイトに掲載された暫定の届け出で、調達資金はグリーンエネルギーやライフサイエンスなど「ニューエコノミー」セクターでテクノロジー対応企業の買収に充てられると説明した。(bloombergより引用)
・Circle(サークル)
暗号資産企業の同社は、上場しているSPACの”Concord Acquisition Corp.”とのこれまでの契約を解消したことを発表した。同時に、Concord Acquisition Corp.と新たな合併に向けた契約を締結した。この取引が成立すれば、Circleは90億ドル(約1兆350億円)の評価額で上場企業となる。もともと2021年7月に発表されたこの合併は、2021年第4四半期に完了することになっていた。そして、Circleは45億ドル(約5180億円)で評価された最初の取引に満足していなかったようだ。同社は2022年4月3日の終了日を待たずに契約を破棄し、新たな契約を交わした。(TechCrunchより引用)
・A.L.I.テクノロジーズ
同社は2022年9月8⽇、⽶国に設⽴した親会社が⽶ナスダック市場に上場する特別買収⽬的会社(SPAC)と統合すると発表した。⽶証券取引委員会(SEC)の届け出などを経て2023年3⽉頃までに⼿続きを完了する計画だ。(中略)⽇本企業がSPACを通じて上場を⽬指すのは珍しい。A.L.I.は16年創業のスタートアップ。ドローンや浮上して⾛⾏するホバーバイクの開発を⼿掛ける。⽚野⼤輔社⻑は「⽶国や中東を中⼼にホバーバイク販売の世界展開を進めていく」と話す。1億5000万ドル(200億円強)程度と⾒込む上場による調達資⾦は製品開発や世界展開への販促に充てる。(日本経済新聞より引用)
SPAC上場後に問題が発覚した例
・NiKola(二コラ)
電気自動車(EV)トラックの新興メーカー、ニコラはSPACとの合併により2020年6月に株式上場した。上場直後に時価総額が米フォード・モーターを超えるなど市場の注目を集めたが、米調査会社が同年9月、ニコラが電動化の技術や受注実績を偽って投資家を欺いていたと告発。ミルトン前会長が辞任に追い込まれ、SECや米司法省が調査に乗り出した。SECと米司法省はミルトン前会長個人を証券取引法違反や詐欺容疑で提訴している。米国では新興EVメーカーのSPAC上場が相次いでおり、ローズタウン・モーターズなど複数の企業が投資家への説明を巡りSECの調査を受けている。(日本経済新聞より引用)
・Lucid Motors(ルーシード・モータース)
同社は2021年2月に、SPACの”Churchill Capital IV Corp”との合併を通じて上場企業になることで合意したと発表した。当時、SPACと電気自動車スタートアップとの間で行われる取引としては最大級のものと考えられていた。しかし、Lucidは2021年12月6日に証券当局に提出した書類の中で、米証券取引委員会(SEC)から調査に関連する特定の文書を要求されたと述べた。「この問題の範囲や結果について確たるものはありませんが、調査は当社(旧Churchill Capital Corp. IV)とAtievaとの合併、および特定の見通しと声明に関するものと思われます」と規制当局への提出書類には書かれている。このニュースを受けて、Lucidの株価は9.5%以上下落した。(TechCrunchより引用)
上記は一部ですが、先進的な技術や取り組みの企業が多いのが特徴です。その他、エアモビリティ関連のSPAC上場のニュースも多く取り上げられています。事業としては魅力があるものの、従来のプロセスでは上場までのハードルが非常に高い事業が多いように見受けられます。
SPACのメリットは?
SPAC設立のメリットは、機関投資家にとっては優良企業をスムーズに買収できるなど上場までのスピードが魅力です。上場で集めた資金を買収に活用して買収先を存続企業にする仕組みで、スタートアップの早期上場や、有望ベンチャーの育成や上場促進が期待されています。上場SPACを通じて未上場企業に投資できることに加えて、償還権を行使すれば投資額を回収できるオプションが付与されており、買収不成立時や買収非賛同時の損失を回避•軽減できます。また機関投資家はIPOの前段階で、資金提供の見返りに期間投資家向けのみにSPACのユニット(通常株式+ワラント)の付与を受けるのが一般的になっています。ワラント付与によって、De-SPAC時点で償還権を行使して元本を回収しながらアップサイドのみ狙うアービトラージも可能です。SPACも資金が足りなければ、PIPEs(Private Investments in Public Equities:投資会社が上場企業の私募増資を引き受けること)にて資金調達することも可能です。
個人投資家にとっては、少額の資金で有望スタートアップに投資できる点が魅力です。未公開企業への投資は『株式投資型クラウドファンディング』などいくつか手段もありますが、SPACでの投資先は買収後すでに上場企業となっているので、株式の途中売却ができる流動性の高さが大きな魅力です。
買収される未上場企業としても資金や時間を大幅に削減でき、従来のIPOに比べて上場までの期間が短く、上場審査も簡素になります。また株式市場の状況に左右されず上場時期や株価等をFixできること、上場交渉を秘密裏に実施できること、迅速なエグゼキューション、SPACスポンサーとの業務提携によるスケールアップなどが挙げられます。
SPACのデメリットは?
すでに波紋を呼ぶ案件がでており、米国では法整備が進んでいます。
2020年6月、Nikolaという会社は、SPACを活用して、NASDAQ上場企業になりました。上場後は90ドル以上の値を付け、二酸化炭素を排出しない大型トラック開発事業であることから、成長企業をイメージさせ一時的に株価は急騰しました。
しかしその後、同社をカラ売りしている投資会社が「Nikolaの技術には虚偽がある」とするレポートを公表したことで暴落が起こり16ドルまで株価は値下がり、創業者はが辞任するという出来事がありました。SPACが台頭した米国では、この仕組みが業績見通しの不明瞭な企業の上場につながり、投資家が損失を被る問題も起きてます。(日本経済新聞より参考)
ルールが整いきっていないことがSPAC最大のデメリットと言えます。
日本でもSPAC上場解禁に向け検討がスタート
2021年6月、日本国内でもSPAC(特別買収目的会社)上場解禁に向けた検討が、成長戦略会議で行われ、SPAC制度導入に向け検討を進めていく方針を打ち出すとの報道がありました。2021年10月には、第1回 SPAC制度の在り方等に関する研究会が東京証券取引所の主催で開催されています。
SPACは米国だけでなく、カナダや欧州、韓国など広く導入されており、2021年にシンガポール、2022年1月から香港でも導入されています。国際金融センターとしての地位確立を目指す日本においても、SPACの導入は検討するべきではとの声も上がっています。しかし、導入にあたっては米国で顕在化している様々な問題点を踏まえ、投資家保護に十分に配慮しつつ、企業の円滑な資金調達に資する制度設計が求められています。(大和総研より引用)
未公開企業への投資は日本においてもまだまだ課題は多く、投資の機運は徐々に広がっているものの、現状未公開企業への投資の回収は『M&A』か『IPO』によるEXITがメインで、投資からかなりの時間を掛けないと回収できない仕組みになっています。
2022年、SPAC上場に大きな変化が
2021年にSPAC上場が日本に導入されましたが、2022年上半期(1⽉〜6⽉)のSPAC⾃体の上場件数は、地政学的リスクや⽶国の⾦融引き締め等による世界的なIPOの市況悪化の影響を受け、2021年上半期から75%減少の98件となりました。調達⾦額も145億米ドルと87%減少。また、東京証券取引所においても⽇本でのSPACに関する議論がされています。
今後のSPACに関する量的な盛り上がりは不明ですが、クロスボーダー上場を含めた上場のひとつの形態として定着する可能性があることを考えると、その動向には引き続き留意する必要があると思われます。(参考:EY-2022年上半期のSPACの動向)
投機ブームは収束か。SPAC閉鎖に需要。
特別買収⽬的会社(SPAC)の閉鎖を⽀援するサービスが⽶国で登場した。上場廃⽌や清算の過程で投資家とのやり取りを⼿助けするという。情報サイトのSPACアナリティクスによると現在、約560のSPACが合併先を⾒つけられていない。株式相場の低迷や⽶証券取引委員会(SEC)の規制強化によって「SPACの半数が清算に向かう」との⾒⽅もある。商機は⼤きそうだ。
SPACと合併する未公開会社は証券会社による審査など、通常の上場プロセスを経ずに上場するため、情報開⽰の不⼗分さなどが問題視されている。SPACの値動きをまとめた株価指数は21年末⽐で6割安と、ハイテク株の⽐率が⾼い⽶ナスダック総合株価指数の同2割安と⽐べても売られている。実⼒に⾒合わない⾯があったことは否めない。
新型コロナウイルス禍対応の⾦融緩和相場はSPACに限らず、ミーム株(はやり株)や暗号資産(仮想通貨)といった、業績など裏付けの乏しい資産にも⼤量の資⾦が流れ込んだ。リスク資産の「⼿じまい」に商機を⾒いだす企業があらわれたことは、緩和下の投機ブーム終焉(しゅうえん)の象徴する新たな事例となる。(日本経済新聞引用)
一方、SPACで上場している企業のパフォーマンスも低かったようです。例えば、 WeWork は現在、1 株 1 ドル強で取引されており、Grab は2021 年のピークから 80% 以上下落しています。(2023年3月現在)
まとめ
いま、日本では上場審査が厳しくなっています。過熱感も指摘されたSPACのIPOは一気にしぼんでいる状況もあり、マーケット動向を注視する必要があります。そうした動向を踏まえて、日本ではどのような法整備がなされるのか、また、今後の状況によってはSPACの活用が日本のスタートアップで再ブームとなる可能性が出てくるかもしれません、今後のSPACの動向に注目です。