
2020年12月21日、ソフトバンクグループは企業買収を手掛ける特別目的会社「SPAC」の新規株式公開(IPO)を米当局に申請しました。調達金額は5億2500万ドル(約540億円)以上となる見通しでハイテク企業投資ファンドで培ったネットワークを生かし、有力企業との合併を目指します。
アメリカの証券市場ではすでにSPAC(特別買収目的会社)の上場が急増しており、今後日本においてもスタンダードな上場の手段になる可能性を秘めています。
今回はこのSPACについて解説します。
そもそもSPACとは
読み方はSPAC(スパック)です。
Special Purpose Acquisition Companyの略で、直訳すると特別買収目的会社となります。 一般的な会社とは異なり、買収を目的に設立される会社というのが特徴です。
SPACは上場した時点では、自らは事業を行わないペーパーカンパニーです。上場後に、株式市場から資金調達を行い未公開会社の買収を行います。特別買収目的会社(SPAC)の上場後に買収された未公開会社は、従来の上場のプロセスを行わずに上場することができるため、「裏口上場」と言われることもあります。
またSPACは買収を目的とした企業であることから、「白地小切手会社」や「ブランク・チェック・カンパニー」などと呼ばれています。自社事業がないため「空箱」とも例えられます。
特別買収目的会社(SPAC)には、著名な経営者や投資家が代表になるケースが多くあります。ソフトバンクグループの孫正義などは世界的に有名であり、個人の信用力と「上場後の優良企業の買収(合併)」を行うというコミット感により、市場から資金を調達し、未公開会社の買収を実施する目論見であると考えられます。
なぜ注目されているのか?
米国の証券市場では、SPAC(特別買収目的会社)の2020年の上場数が50社を超え、およそ3兆円以上の資金調達が実施されました。本来「上場する(IPO)」とは、監査法人や証券会社と厳しい審査を乗り越え、多額の資金とリソースを投じて実施するものであったのに対し、SPACの仕組みを使えば未公開企業は従来のIPOプロセスを経ることなく、(SPACによる)買収や合併によって上場企業となることができます。
SPACのメリットは?
設立のメリットは優良企業をスムーズに買収できるなど上場までのスピード面が魅力です。買収される企業としても資金や時間を大幅に削減でき、従来のIPOに比べて上場までの期間が短く、上場審査も簡素になります。
投資家目線では少額の資金で未公開株式取引に参加できる点が魅力です。未公開企業への投資は『株式投資型クラウドファンディング』などいくつか手段もありますが、SPACでの投資先は買収後すでに上場企業となっているので、株式の途中売却ができることが大きな違いです。
SPACのデメリットは?
すでに波紋を呼ぶ案件がでており、米国では法整備が進んでいます。
2020年6月、ニコラという会社は、SPACを活用して、ナスダック上場企業になりました。上場後は90ドル以上の値を付け、二酸化炭素を排出しない大型トラック開発事業であることから、成長企業をイメージさせ一時的に株価は急騰しました。しかしその後、ニコラをカラ売りしている投資会社が「ニコラの技術には虚偽がある」とするレポートを公表したことで暴落が起こり16ドルまで株価は値下がり、創業者はが辞任するという出来事がありました。ルールが整いきっていないことがSPACのデメリットと言えます。
まとめ:日本でSPACは導入されるのか
まだ日本での導入はなく、検討されているかも明らかにされていませんが、ソフトバンクグループの米証券市場でのSPAC設立、また未公開企業の買収が実施されればまた大きくニュースで報じられる可能性が高く、今後注目の手法になると考えられます。
未公開企業への投資は日本においてもまだまだ課題は多く、投資の機運は徐々に広がっているものの、現状未公開企業への投資の回収は『M&A』か『IPO』によるEXITがメインで、投資からかなりの時間を掛けないと回収できない仕組みになっています。SPACが日本で導入されれば、ここの投資⇒回収のスピード感は上がると予測されます。すると投資家も「新しい挑戦をする企業」や「未来を変える企業」への投資がやりやすくなり、スタートアップのさらなる活性化、また日本の経済発展に繋がるものと思います。
今後のSPACの動向に注目です。