
令和4年度一般会計概算要求・要望額等が公表されました。(令和3年9月7日公表)
この概算要求に基づいて予算計上されるため、概算要求を紐解くことによって、政策動向やどのような補助金等の施策が出されそうか探ることができます。
令和4年度予算の概算要求額と金額を盛り込んだ要望額の総額は、111兆6,559億円となりました。
これで、概算要求額・要望額の総額が100兆円を超えるのは8年連続で、過去最大を4年連続で更新しました。
本コラムでは、この内の毎年多くの補助金が実施されている経済産業省の概算要求から、令和4年度の動向やトレンドを解説していきます。
令和4年度(2022~2023年)は、引き続き新型コロナウイルス感染症対応した予算が計上されると共に、カーボンニュートラルに向けた脱炭素化の促進、デジタル改革の実現、半導体・AI・量子・5G 等のデュアルユース技術の取り込み、地域イノベーション及びスタートアップ発のイノベーション促進等、様々な分野において予算が割かれる予定です。
それでは、具体的な予算額などをチェックしていきましょう!
令和4年度の経済産業政策の重点
令和4年度の経済経済産業政策の重点は、「長期化するコロナ禍等の環境下にある適切な企業支援」と「コロナ禍がもたらした社会変化に対応するための取り組み支援」の大きく2つに分けられます。
Ⅰ.コロナ禍の経済情勢に応じた適確な対応
(1)事業継続のための着実な支援
(2)事業再構築・承継・再生を目指す事業者の後押し
(3)生産性向上による成長促進
(4)取引環境の改善をはじめとする事業環境整備等
Ⅱ.コロナ禍を経て、新たな付加価値を中長期的に獲得し、成長を続けられる産業構造の構築
Ⅱ-1 求められる「価値」の実現と「経済」の好循環の同時達成
(1)「経済」×「環境」の好循環~グリーン成長戦略・エネルギー基本計画~
(2)「経済」×「安保」の同時実現~経済安全保障/サプライチェーンのレジリエンス~
(3)「経済」×「分配」=包摂的成長~誰もが実感できる成長の実現~
(4)「経済」×「健康」の同時実現 ~民間による健康エコシステムへの投資促進~
Ⅱ-2.デジタル前提の経済・社会運営
(1) データ主導の経済・社会システムや産業の DX 化・デジタル人材育成
(2) サイバーセキュリティ
Ⅱ-3.内外一体の対外経済対策
(1)信頼あるバリューチェーンの確立
(2)自由貿易のアップグレード
Ⅱ-4.最重要課題:廃炉・汚染水・処理水対策/福島の復興を着実に進める
Ⅰ.コロナ禍の経済情勢に応じた適確な対応
重点Ⅰでは「長期化するコロナ禍等の環境下にある適切な企業支援」として、中小企業・小規模事業者・個人事業主等の、事業再構築・継続・承継・再生などへの支援を引き続き行っていく方針が示されています。
(1)事業継続のための着実な支援
コロナ禍の中小企業・小規模事業者・個人事業主等に対し、資金繰り支援、月次支援金等の給付(令和2年度予備費等:6,979 億円)、イベントの再開支援(令和 2 年度一次補正、三次補正、予備費:1,594 億円)など、足下で必要な事業継続のための支援を着実かつ迅速に実施。
(2)事業再構築・承継・再生を目指す事業者の後押し【298 億円(185 億円)+中小機構交付金 182 億円(177 億円)】
■事業再構築補助金(令和2年度三次補正:1 兆 1,485 億円)の継続
■ものづくり等高度連携・事業再構築促進事業【25.4億円(新規)】
■中小企業再生支援・事業承継総合支援事業【159.1 億円(95.0 億円)】
■事業承継・引継ぎ・再生支援事業【47.1 億円(16.2 億円)】 等
(3)生産性向上による成長促進【236億円(169億円)+中小機構交付金 182億円(177億円)】
■生産性革命補助金(ものづくり補助金、持続化補助金、IT導入補助金)
【2024・令和6年】最大250万円!? 小規模事業者持続化補助金 (賃金引上げ / 後継者支援 / 創業 / 卒業 / インボイス)とは?
■成長型中小企業等研究開発支援事業(サポイン事業等)【162.6 億円(109.0 億円)】
■海外展開のための支援事業者活用促進事業(JAPAN ブランド育成等支援事業等)【9.4 億円(8.0 億円)】
■展示会等のイベント産業高度化推進事業【3.8 億円(3.3 億円)】
■共創型サービスIT連携支援事業【5.0 億円(5.0 億円)】 等
(4)取引環境の改善をはじめとする事業環境整備等【398億円(365億円)+中小機構交付金 182億円(177億円)】
■地域の持続的発展のための中小商業者等の機能活性化事業【10.5 億円(5.5 億円)】
■中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業【60.0 億円(40.9 億円)】
■小規模事業対策推進等事業【55.9 億円(53.2 億円)】
■中小企業取引対策事業【13.5 億円(9.8 億円)】うち 1.8 億円はデジタル庁計上
■中小企業・小規模事業者人材対策事業 【11.1 億円(10.5 億円)】
■地方公共団体による小規模事業者支援推進事業【12.8 億円(10.8 億円)】 等
Ⅱ.コロナ禍を経て、新たな付加価値を中長期的に獲得し、成長を続けられる産業構造の構築
重点Ⅱでは、「コロナ禍がもたらした社会変化に対応するための取り組み支援」として、アフターコロナ社会にて持続的な成長のための取り組み支援のための予算が計上されています。
Ⅱ-1 求められる「価値」の実現と「経済」の好循環の同時達成
(1)「経済」×「環境」の好循環 ~グリーン成長戦略・エネルギー基本計画~【8,242 億円(7,454 億円)】
カーボンニュートラルや温室効果ガス削減に向けてグリーン成長戦略や現在検討中の第6次エネルギー基本計画に基づき、「経済」と「環境」の好循環を達成するための取組を進める方針が示されています。
・電池・水素・洋上風力などにおけるイノベーションによるグリーン成長の加速
・エネルギー需給構造の強靱化による S+3E の実現
・成長に資するカーボンプライシング 等
(2)「経済」×「安保」の同時実現 ~経済安全保障/~【1,685億円(1,369億円)+JOGMEC 交付金 39億円(38億円)の内数+NITE 交付金 81億円(75億円)】
社会のデジタル化に不可欠な半導体・データセンター、パンデミック時に社会・経済活動維持の鍵を握るバイオ・医療、脱炭素化に必須のレアアース等の重要資源の確保・開発へ向けた施策を総合的・包括的支援が進められます。
・重要技術を「知る」「守る」「育てる
・半導体・データセンター
・バイオ・医療
・レアアース等の重要資源の確保
(3)「経済」×「分配」=包摂的成長~誰もが実感できる成長の実現~【303 億円(177 億円)+IPA 交付金 58 億円(58 億円)の内数 +JETRO 交付金 265 億円(253 億円)の内数】
誰もが成長を実感できる包摂的な成長の実現に向けて、EdTech を活用した先端的な学びの事例創出・普及や人材への投資、多様性の確保を促進。 また、地域の課題解決やイノベーション促進、地域特性を生かした DX、地域への対日直接投資の促進等を通じて、地域の持続的な発展を促進していく。さらに、スタートアップのエコシステム構築やオープンイ ノベーション促進のための環境整備に取り組み、スタートアップ発のイノベーションを促進していく方針が示されています。
・人づくり
■学びと社会の連携促進事業【25.0 億円(13.1 億円)】(※以下令和3年度参考資料)
■地域デジタル人材育成・確保推進事業【9.0 億円(新規)】
■独立行政法人情報処理推進機構運営費交付金【58.3 億円(58.1 億円)】
■大企業等人材による新規事業創造促進事業【8.2 億円(6.1 億円)】
・強靭な地域経済
■地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業【10.2 億円(5.6 億円)】
■地域未来 DX 投資促進事業【16.9 億円(11.7 億円)】
■伝統的工芸品産業振興補助金【7.2 億円(7.2 億円)】
■伝統的工芸品産業支援補助金【3.6 億円(3.6 億円)】
■独立行政法人日本貿易振興機構運営費交付金【264.9 億円(252.9 億円)】等
・イノベーション・スタートアップ
■グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業【8.2 億円(11.3 億円)】
■研究開発型スタートアップ支援事業【72.7 億円(21.4 億円)】
■大企業等人材による新規事業創造促進事業【8.2 億円(6.1 億円)】
■官民による若手研究者発掘支援事業【19.0 億円(12.2 億円)】等
(4)「経済」×「健康」の同時実現 ~民間による健康エコシステムへの投資促進~
コロナ禍で「健康」という価値が世界的に再認識される中、医薬品・医療機器・ヘルスケア分野の競争力強化を図る。健康経営の拡大により、企業が社員のみならず、社会の「健康」への投資を支えることを促すとともに、研究開発の促進や社会実装に向けた仕組みづくり及び産業の創出につながるエコシステムを構築を支援していく。
・健康への投資拡大
■ヘルスケアサービス社会実装事業【9.0 億円(7.0 億円)】等
・ヘルスケア産業の社会実装促進
■予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業【15.0 億円(7.8 億円)】等
・勝てる産業育成・海外展開
■医工連携イノベーション推進事業【24.0 億円(20.8 億円)】
■ヘルスケア産業国際展開推進事業【4.1 億円(4.1 億円)】等
・2025 年大阪・関西万博開催に向けた準備の本格化
■2025 年大阪・関西万博開催に向けた準備の本格化
Ⅱ-2.デジタル前提の経済・社会運営
デジタルを前提とした経済・社会の実現に向け、未来志向のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していく。 そのために、デジタルアセットを活用した新たな付加価値を生み出すための包括的なデータ戦略の推進、 デジタル庁を中心とした国民目線のデジタル・ガバメントの推進、産業分野での DX、デジタル人材の育成、サイバーセキュリティの強化など、関連する施策を総合的に進めるための予算が計上されている。
(1)データ主導の経済・社会システムや産業のDX化・デジタル人材育成【444 億円(327 億円)+IPA 交付金 58 億円(58 億円)】
■産業 DX のためのデジタルインフラ整備事業【25.0 億円(新規)】
■ 流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業【6.5 億円(3.0 億円)】
■IoT社会実現に向けた次世代人工知能・センシング等中核技術開発【65.7 億円(58.0 億円)】
■ 次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発事業【17.6 億円(16.5 億円)】
■ 宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業(SERVIS プロジェクト)【28.7 億円(8.4 億円)】
■ デジタル取引環境整備事業【6.9 億円(5.0 億円)】
■ 経済産業省デジタルプラットフォーム構築事業【28.8 億円(20.7 億円)】 うち 27.4 億円はデジタル庁計上
■ 革新的ロボット研究開発等基盤構築事業【18.7 億円(6.6 億円)】等
(2) サイバーセキュリティ【53 億円(43 億円)+IPA 交付金 58 億円(58 億円)】
■ 産業系サイバーセキュリティ推進事業【21.0 億円(19.4 億円)】
■ サプライチェーン・サイバーセキュリティ対策促進事業【5.6 億円(新規)】
■ 中小企業サイバーセキュリティ対策促進事業【3.4 億円(2.0 億円)】
■ サイバーセキュリティ経済基盤構築事業【20.5 億円(19.3 億円)】
■ 独立行政法人情報処理推進機構運営費交付金【58.3 億円(58.1 億円)】 等
Ⅱ-3.内外一体の対外経済対策
コロナと共存する世界において、各国がデジタル・グリーン・レジリエンスを軸にした戦略競争を展開する 「ガバメント・リーチ」の拡張、「経済安全保障」の定着、環境・人権等の「共通価値」への関心の高まり等が進展している。こうした国際的な新たな要請に対応するため、DFFT、貿易保険や国際課税等の新たな制度・ルールの構築や、信頼あるバリューチェーンの確立、あわせて「自由貿易」のあり方をアップグレードしていく方針が示されています。
(1)信頼あるバリューチェーンの確立【269 億円(237 億円)+JETRO 交付金 265 億円(253 億円)】
(2)自由貿易のアップグレード【26 億円(24 億円)+JETRO 交付金 265 億円(253 億円)】
Ⅱ-4.最重要課題:廃炉・汚染水・処理水対策/福島の復興を着実に進める
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉の完遂と、福島の復興を、経済産業省の最重要課題として進めていく方針が示されています。
・廃炉・汚染水・処理水対策 【181 億円(新規)】
・福島の復興を着実に進める 【1,521 億円(1,464 億円)】
まとめ
経済産業省の令和4年度概算要求を踏まえ、全体的な方針としては、コロナを乗り越え、新たな付加価値の創造と中長期的に持続的成長を遂げるための産業構造転換を図っていくことが伺えました。令和3年度からの継続トレンドとして、コロナ禍で影響を受けた事業者支援を中心とした経済回復への取り組み、またDXを通じた生産性向上の推進が進められていきます。また令和4年度の大きな特徴としては、アフターコロナに向けてカーボン・ニュートラル実現のためのグリーンイノベーションへの予算配分が重点的に置かれている点でしょう。
また既存事業のほとんどが予算拡大されていくことが予測されるため、毎年実施されている補助金の採択率・補助率・上限額の引き上げが期待できるかもしれません。尚、詳細について経済産業省HPをご確認ください。
■参考URL
令和4年度経済産業省概算要求のPR資料一覧:https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2022/pr/ippan.html
令和4年度経済産業政策の重点、概算要求・税制改正要望について:https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2022/index.html
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