エクイティ・ストーリーとは
エクイティストーリーは、投資家に対して自社の魅力を伝えるこ必要があります。金融用語では「コーポレートストーリー」とも呼ばれます。
エクイティストーリーとは、投資家や株主に向けて会社の強みや特長、成長戦略などをわかりやすく伝えるためのストーリーをまとめたもので、エクイティファイナンスを実施する際に、調達完了後の資金使途や事業戦略、成長戦略を投資家に説明するものにもなります。
投資家に自社の魅力を伝え、自社の企業価値を向上させる最も基本的な手段であるため、エクイティストーリーを構築し、投資家とのコミュニケーションを通じて継続的に磨き上げていくことが重要となります。
エクイティ・ストーリーの重要性
経営者は、ビジネスアイデアやビジョン策定、組織作りなど経営において考えるべき事項が多くありますが、その中でもエクイティ・ストーリーは“資金調達の要”と言って過言ではありません。
エクイティストーリーは将来の株価を決める重要な要素であり、多くの投資家が納得し、出資するメリットを感じられるものであるほど期待値が高まり、結果として株価の上昇につながることが多いためです。従って、エクイティ・ストーリーは「事業の魅力」と「実現可能性」をバランスよく考慮したうえで構築することが必要となります。
事業の魅力を伝えるストーリーでは、潜在的に考えられる市場規模はどの程度のサイズ(*TAM/SAMの大きさ)か、またその市場の成長可能性や成長率に関しても説明が必要です。その上で自社サービスがどの程度のマーケットシェアが取れるか、競合の状況や競合優位性に関しても説明する必要があります。
エクイティストーリーの実現可能性については、技術的に開発可能なプロダクトやサービスなのか、チーム(CEOやCTO)がプロダクトやサービス開発に関連するスキルや経験を有しているかも重要になります。その上で、実現可能なマイルストーンや事業計画、実施スケジュール、Exitまでにどれくらいの資金調達が必要かなど先を見通した計画策定が必要です。
また資金調達以外の場面では、IPO時の主幹事証券決定の際にもエクイティストーリーを説明する必要があります。その際には、ビューティコンテスト(ビューコン)という、主幹事を決めるためのプレゼンを行います。(実施しない場合もありますが、行われるケースがほとんどです。)
プレゼンのポイントはエクイティ・ストーリーが終始一貫していることが重要です。
- ミッションとビジョン
- 業界と会社の課題とソリューション
- 市場規模(企業が目指す市場の規模や機会、成長性を示す)
- 成長ストーリー(企業の魅力やポテンシャルを強調)
- 競合優位性(市場で他社と差別化される要因や独自性を示す)
- 収支計画(投資家に対して透明かつ詳細な情報を提供し、信頼関係の構築)
- 上場時のバリュエーション(会社評価)
- エクイティ・ストーリー(投資家への成長戦略〜Exitプランまで)
IPOでは、主幹事の証券会社がどこであっても作業そのものは大差がなく、差がつくポイントとしては上場承認後の投資家プレゼンで、想定発行価格に納得感が生まれるかどうかが重要であり、その説明に使われるのがエクイティ・ストーリーとなります。
IPOフェーズではないスタートアップであっても、まずはシリーズAでのエクイティ・ストーリーを考えることはとても重要です。事業の成功を前提にIPO時のエクイティ・ストーリーまで構成できれば、「なぜその資金が必要なのか?」投資家や金融機関に説明することが出来、資金調達の実現性が高まるからです。
例えば、東京証券取引所のグロース市場では、「事業計画及び成長可能性に関する事項の開示」において下記のような項目の開示が求められます
①ビジネスモデル
・事業の内容:製商品・サービスの内容・特徴、事業ごとの寄与度、今後必要となる許認可等の内容やプロセス
・収益構造:収益・費用構造、キャッシュフロー獲得の流れ、収益構造に重要な影響与える条件が定められている契約内容
②市場環境
・市場規模:具体的な市場(顧客の種別、地域等)の内容及び規模
・競合環境:競合の内容、自社のポジショニング、シェア等
③競争力の源泉
・競争優位性:成長ドライバーとなる技術・知的財産、ビジネスモデル、ノウハウ、ブランド、人材等
④事業計画
・成長戦略:経営方針・成長戦略、それを実現するための具体的な施策(研究開発、設備投資、マーケティング、人員、資金計画等)
※事業計画の対象期間については、上場会社各社の事業内容に応じて異なることを想定。
・経営指標:経営上重視する指標(指標として採用する理由、実績値、具体的な目標値など)
・利益計画及び前提条件:(中期利益計画を公表している場合)その内容及び前提条件
・進捗状況:前回記載事項の達成状況、前回記載した事項からの更新内容、次に開示を行うことを予定している時期
⑤リスク情報
・認識するリスク及び対応策:成長の実現や事業計画の遂行に重要な影響を与えうる主要なリスク及びその対応策
出典:経済産業省スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンスより
エクイティ・ストーリー策定の流れ
経営者や主要メンバーにヒアリングを行い大筋のシナリオを組み立て、細部を詰めていくのがオーソドックスな流れです。ビジョンやミッションの構築、事業戦略の仮説と検証、成長ストーリーのロードマップなど、何度も議論を重ねていきながら、社内外できちんと納得のいくものを作成していきます。
重要なポイントは“企画”にあります。
企業は、いいもの(サービス)をつくり、いい売り方(マーケティング)で顧客に届け、いい広め方(PR)で世の中へ広げていくことになりますが、その実現の可能性や再現性など、かなり細かな点まで追求していき細部まで落とし込む計画表づくりが“企画”です。
最終的には経営者自身に成長ストーリーが明確にイメージ出来ていて、それを起承転結の流れで描けなければなりません。
エクイティ・ストーリーでは、投資家に対して自社の魅力を伝えることが重要である一方で、当該ラウンドで高いバリュエーションでの資金調達を実現できたとしても、事業計画が達成できない場合、次ラウンド以降投資家の事業計画に対する信頼感が低下し、資金調達が難しくなるケースも存在することから、エクイティストーリーは「事業の魅力」と「実現可能性」をバランスよく考慮したうえで構築することが必要です。また最適なタイミングで最適な資金量をフェアバリューで調達する必要があります。
事業の魅力を伝えるストーリーの例
【潜在的な市場規模の大きさ】
• 潜在的に考えられる市場はどの程度の大きさか(*TAM/SAMの大きさ)
• 今後のその市場はどの程度成長するか(市場の成長率)
【自社技術/サービスの優位性】
• 自社の技術/サービスがその市場においてどの程度優位性を持つか
実現可能性のあるストーリー例
【事業計画の蓋然性】
• 無理があり未達になる可能性が高い収益計画になっていないか
• 成長の余地の残る計画になっているか
出典:経済産業省スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンスより
ストーリーは経営者自身が策定することもありますが、外部の協力者を得て制作する方が具体的なストーリーを組むことができます。理由は第三者の公平な立場で、誰のための何のストーリーなのか軸をぶらさずに策定できるためです。スタートアップ企業の悩みとして、人手不足や、(特に経営者の)リソース不足、経験不足などバックアップを必要とする場面が多くあります。経験豊富なサポートをつけて、納得のいくエクイティ・ストーリーをつくりましょう。
最近では、上場企業においても投資家に対してIRを通じて、こうしたエクイティストーリー(成長ストーリー)を語る必要も増えています。更には人的資本経営と言われる事業計画、事業戦略に加えてそれらを人材の採用計画や育成計画まで落とし込む必要性も出てきており、重要性が再認識されるとともに、ストーリーの一貫性や人事戦略への落とし込みや女性管理職や外国人材など多様な人材を積極登用するようなダイバーシティ経営、機関投資家からの投資を受けるためには、ESG投資の観点からも投資家から選ばれるように環境や社会に配慮した高度な経営が求められています。
これらの考え方は、スタートアップから上場企業まで根本的に同じであり、成長すればするほど、そうした高度な事業計画策定が求められるようになってきます。
スタートアップのチャンスは無限大
資金の調達、そして活用次第で、事業のスケールを大きく描くことが出来ます。
ストーリーがあるからこそ、なぜその資金が必要なのか?投資家や金融機関が資金を投じなければならないのか、理由が出来、多くの資金が集めるだけではなく、会社の社会的存在意義や世の中の課題の解決策、新たな価値提示を示すことになります。エクイティストーリーを整理することで副次的な効果として従業員やエンドユーザーへの事業戦略の浸透や説明資料にもなります。
EXPACTでは、特にスタートアップ企業への資金調達を強みとしており、実績・経験も多数ございます。資金調達成功に向けて、パートナーを探している、また詳しく話を聞いてみたいという方はお問い合わせください。
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