今、なぜエンジェル投資家が注目されているのか?
エンジェル投資家が今、注目されています。その理由は、スタートアップ企業の増加や成功事例、スタートアップ投資の環境変化、そして政府のスタートアップ支援策などが挙げられます。
日本でスタートアップが注目されるようになった背景には、働き方の多様化や自律的なキャリア形成の増加、社会課題や地域課題の解決をビジネスで実現することに対する期待感が高まっています。また、日本経済の競争力低下への危機感があり、スタートアップ育成が経済再生の切り札となる可能性があると言われています。
日本政府は2022年をスタートアップ創出元年と位置付け、スタートアップ育成に向けた施策が数多く講じられており、スタートアップ投資がさらに増えることが期待されています。
エンジェル投資家は、スタートアップ企業やベンチャー企業などの新興企業に資金提供し、その成長を支援する役割を担っています。成功事例がニュース報道などでクローズアップされることで、エンジェル投資家の魅力が広く知られるようになり、ますます注目が集まっています。
また、世界的なインフレや株式市場の変化により、投資家たちはリスクを取り入れた投資先も求めており、エンジェル投資家が提供する創業段階のスタートアップ企業への投資が注目されています。
さらに、政府がエンジェル投資家を支援するための税制優遇措置なども設けており、節税や高いリターンを求めるエンジェル投資家がさらに増えることが期待されています。これらの背景から、エンジェル投資家は今後も続くスタートアップブームの中で、ますます重要な役割を担っていくことでしょう。
アメリカではエンジェル投資が盛んに行われており、成功事例も多く報道されています。スタートアップ企業が次々と誕生し、若い世代の投資意識が高まっていることから、エンジェル投資はますます一般的になっています。
このような状況を踏まえ、日本人もエンジェル投資家として活躍し、新しいビジネスやイノベーションを支援することで、日本経済に貢献し、かつ個々人の資産形成にも繋げる投資家が増えてくると思います。
エンジェル投資家についても詳しく知っておきましょう。
エンジェル投資家の由来とは?
そもそも「エンジェル」と呼ばれる理由については、エンジェル投資家(Angel Investor)という用語の由来は、欧米の演劇界や米国の映画業界で、事業を個人的に支援する資産家をエンジェルと称したことに由来しています。
1978年に、ニューハンプシャー大学 ベンチャーリサーチセンター創設者のウィリアム・ウェッテルが、創業間もないベンチャー、スタートアップ企業に投資する個人を「エンジェル」と呼んだこと呼んだことから始まったと言われています。エンジェル投資家は、未来の成功を期待されるアーリーステージのスタートアップ企業に対して資金提供を行う個人投資家です。
エンジェル投資家とは、創業直後の比較的アーリーステージのスタートアップへ出資等の資金提供を行う個人投資家のことを言います。急成長が見込まれ、IPOやM&Aの可能性があるベンチャー企業に投資を行い、普通株、優先株やCE(コンバーティブルエクイティ)を見返りに取得することが一般的です。
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アメリカでは俳優やスポーツ選手などの有名人セレブがエンジェル投資家としてスタートアップに投資するケースも増えています。また、日本人ではサッカー選手の本田圭佑氏などがエンジェル投資や個人でファンドを設立するなど、同様の事例も増えています。
日本でもスポーツ選手やモデル、アイドル、俳優、芸人などの芸能人などの有名人によるスタートアップ投資が増えています。芸能人がチャリティに加えて、スタートアップ投資を積極的に行う理由は、以下の点が挙げられます。
まず、将来的な利益の期待があり、成功すれば大きなリターンが得られること。次に、ブランドイメージ向上のためで、有名人がスタートアップに投資することで自身のブランド力を高めることもできます。また、社会貢献や環境保護などの分野で影響力を発揮できること。
最後に、引退後の職業として投資家や実業家として活動することが増えており、スタートアップへの投資はその一環となっています。さらに、自分が興味を持つ分野や業界に投資することで、現役のうちからその分野に関する知識や経験を深めることができます。
イギリスやアメリカでは日本以上にECF(Equity Crowdfunding、株式投資型クラウドファンディング)を通じた資金調達が一般的であり、インターネットを通じて個人投資家がエンジェル投資を行うことができます。ECF事業者がスクリーニングしたスタートアップにインターネットを通じて個人投資家がエンジェル投資を行うことができます。日本では、ファンディーノがシェア8割を誇っており、今後もECFマーケットの拡大が期待されています。
エンジェル投資家は、夢とビジョンを持つスタートアップ企業の成長を支援し、新しい価値創造の可能性を広げる存在として活躍しています。
エンジェル投資家の特徴は?
創業時は資金繰りで苦労するスタートアップ企業も多く、金融機関から融資を受けた場合は、短期的に毎月の返済が大きな負担になってしまうと言えます。資金繰りが厳しく、PMF手前の創業時に、返済義務がない資金を手に入れられるのは非常に大きいと言えます。
まだビジネスモデルもまだ固まりきっていない段階で、経営者の資質やビジネスプランをベースに投資検討するのは非常に難易度が高いですが、レイター投資に比べて、創業初期の段階で出資ができれば10倍以上のリターンを得やすいと言えます。エンジェル投資家の特徴や役割について以下に簡単に説明します。
資金提供: エンジェル投資家は、スタートアップや初期段階の企業に対して資金を提供します。これにより、企業は新しいプロダクトの開発や新たな市場への展開、組織拡大などに取り組むことができます。
経験と知識の共有: エンジェル投資家は、自身の経験や知識を活かして、投資先のスタートアップ企業の成長をサポートします。これには、戦略的アドバイスや業界のネットワークの紹介、経営陣とのコンサルティングなどが含まれます。
リスクの受容: エンジェル投資家は、スタートアップ投資のリスクを受け入れることができる立場にあります。成功すれば大きなリターンが得られる一方で、失敗すれば投資額を失う可能性もあります。
長期的な関与: エンジェル投資家は、投資先企業と長期的な関係を築くことが一般的です。彼らは企業の成長をサポートし、必要に応じて追加資金を提供することがあります。
一方で、エンジェル投資家は、投資先の失敗・倒産という非常に高いリスクを背負うことになるため、投資先の見極めが非常に重要になると言えます。
エンジェル投資家は、自分の判断で出資を決めることができるため、投資の意思決定の時間が短いため、必要な資金をすばやく出資できることがスタートアップの起業家に取っても大きなメリットになります。
エンジェル投資家は、資金提供だけでなく、知識や経験を活用することでスタートアップ企業の成功に貢献できます。エンジェル投資家は、スタートアップやベンチャーなどの新興企業にとって非常に重要なパートナーであり、ビジネスの成長や発展に大きく影響を与えることができます。
エンジェル投資家になるためには?
よりエンジェル投資が身近になる中で、どうやってエンジェル投資家になるのでしょうか?
エンジェル投資家になる個人の方には、主に2種類存在しています。1つは、元起業家でM&AでExitした起業家です。M&Aもメジャーとなり、数十億円から数百億円で売却する事例もニュースで目にする様になりました。
そうしたM&AでExitして得た資金を元手に、そうした経営ノウハウを活かしながらエンジェル投資を行う起業家も多いです。
もう1つは、個人株主からエンジェル投資をはじめるケースです。主に上場株式に投資する個人投資家は右肩あがりに増えています。(参照:東京証券取引所資料)
基本的には、上場企業のIR資料を見ながら株式投資を行い、配当かキャピタルゲインで投資した資金を増やしていく活動のことです。特に東証グロースはスタートアップにとって上場しやすい市場であり、SaaSやDXなど爆発的な成長可能性がある新規性の高いビジネスに投資をするマーケットになります。
そうしたボラティリティの高い市場に投資をしている投資家がより高いリターンを目指して、上場株式で得た利益を元手に未上場株式に投資をすることで未上場のベンチャー、スタートアップが上場した時に数十倍から数百倍のリターンを得ることを目指して投資を行うケースです。
エンジェル投資家になるためには、①投資する資金、②スタートアップの見極め、③スタートアップとのネットワークの3つが必要です。①投資する資金 を得た投資家は、個人の経験やノウハウを活かして②スタートアップの見極めを行うケースがほとんどです。
スタートアップを売却してリターンを得て資金を獲得したエンジェル投資家は、スタートアップに関して見極める力が高いと言えます。
一方で、上場株式投資からエンジェル投資家を目指す場合は、上場企業ほど財務資料や成長戦略に関する資料が整っていないため、スタートアップの見極めが非常に難しいといった課題があります。エンジェル投資家側もスタートアップ側に対して、資金以外にどういったリソースやノウハウを提供できるかが重要です。
経営ノウハウやマーケティング、採用などスタートアップの起業家サイドが足りないリソースを合わせて提供できるとより起業家から選ばれるエンジェル投資家になれると思います。
エンジェル投資家のメリットは?
エンジェル税制
メリットの1つとしてエンジェル税制が挙げられます。中小企業庁の資料によるとエンジェル税制とは、一定の要件を満たしたベンチャー企業に対して個人が投資をした年において、個人が所得税の優遇を受けることができる税制です。民法組合・投資事業有限責任組合等のいわゆるファンドを通じて個人が株式を取得した場合や株式投資型クラウドファンディング業者の電子募集取扱業務により個人が株式を取得した場合についても対象となります。
ベンチャー企業に対して、個人投資家が投資を行った場合、投資時点と売却時点のいずれの時点でも税制上の優遇措置を受けることができます。
①投資時点 | ||||||
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措置の種類 | 控除対象 | 控除先 | 措置内容 | 控除上限額 | 設立年数 | 外部資本比率 |
起業特例 | 企業設立時の自己資金による出資額全額 | その年の株式譲渡益から控除 | 非課税 | 上限なし (非課税となるのは20億円の出資までで、それを超える分は課税繰延) | 1年未満 | 1/100以上 |
優遇措置A | (対象企業への投資額全額-2,000円) | その年の総所得金額から控除 | 課税繰延 | 総所得金額×40% と800万円のいずれか低い方 | 5年未満 | 1/6以上 |
優遇措置A-2 | 1/20以上 | |||||
優遇措置B | 対象企業への投資額全額 | その年の株式譲渡益から控除 | 上限なし | 10年未満 | 1/6以上 | |
プレシード・シード特例 | 非課税 | 上限なし (非課税となるのは20億円の出資までで、それを超える分は課税繰延) | 5年未満 | 1/20以上 |
②株式売却時点:譲渡損失の繰越控除 |
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未上場スタートアップ株式の売却により生じた損失を、その年の他の株式譲渡益と通算(相殺)できるだけでなく、その年に通算(相殺)しきれなかった損失については、翌年以降3年にわたって、順次株式譲渡益と通算(相殺)ができます。 ※スタートアップが上場しないまま、破産、解散等をして株式の価値がなくなった場合にも、同様に翌年以降3年にわたって損失の繰越ができます。 |
エンジェル投資家のデメリットは?
エンジェル投資家は、投資先の失敗・倒産という非常に高いリスクを背負うことになるため、初期投資の10倍以上の収益を5〜7年以内に得られるような投資案件を好む傾向にあります。
一般の上場株式に投資する個人投資家は、企業成長によるキャピタルゲインに加えて株式の配当で継続的に利益を得ることができます。
一方、エンジェル投資家は、配当ではなく企業が成長して株式上場したり、M&AされるExitのタイミングで利益を得ることができます。そのため、投資回収に、5〜7年の時間を要するため資金の流動性が低く、投資回収の可能性も低いため、余裕資金で投資を行う必要があります。
エンジェル投資家と起業家の間でトラブルが生じるケースとしては、契約書まわりがあります。
①バリュエーションやシェアなどの投資条件
②投資契約書の内容が履行されない(定例MTGの有無や情報開示)
③契約書以外の部分でも、経営に関与(口出し)される
こうしたトラブルを避けるため投資家と起業家が相互に相性を見極めて出資を受け入れるようにしましょう。
エンジェル投資の期待リターンは?
エンジェル投資家は、元本を失うリスクが伴うため、それに見合ったリターンを見込む必要があります。例えば、シード期に1億円のバリュエーションで100万円を投資し、約1%の株式を取得した場合、5億円でM&Aが行われると、100万円が500万円に増え、400万円のキャピタルゲインが得られますが、その20%が税金として引かれます。
IPOの場合は、2013年から2019年に日本の新興市場(マザーズ、ジャスダック)に上場した企業の株価時価総額の中央値は、IPO直後期が83億7500万円で、直近(2021年3月30日)では95億2600万円と言われています(参照:上場後の成長の谷に関する共同研究レポート)
1億円のバリュエーションで100万円を投資し、IPO時の時価総額が100億円で株式持分が仮に0.1%になると、株式持分の時価総額は1,000万円となり、900万円のキャピタルゲインが得られますが、20%が税金として引かれます。
エンジェル投資の成功の鍵は、スタートアップ企業の成長性を早期に見極め、低いバリュエーションで投資し、適切なフォローオン投資を行って株式希薄化を防ぎながら、エグジット(IPO、M&A等)を目指すことです。現在の株式市場は、アフターコロナの消費動向や金融緩和、ウクライナやロシアなどの世界情勢、物価動向や為替などの影響で波乱含みであり、個人投資家のリスクマネーの動向が非常に注目されています。
エンジェル投資家の成功率は?
『VCの教科書』によると専業で投資を行っているVCの成功確率でも下記のようになっています。
1.投資の50%は「十分に役目を果たさない」
2.投資の20〜30%は、「シングルヒット」か「ツーベースヒット」
3.投資の残り10〜20%──VCにとってのホームラン。
またベンチャービジネスの成功確率は、業界では3/1000とも言われている。1,000社のうちの僅か3社が成功を納めると言われています。そうなるとVCの成功確率よりもさらに下がり、僅か0.3%にしかなりません。
つまりイノベーションというのは、正確に予測ができないと言えます。市場の変化も激しく、市場に出してみるまでニーズがあるかどうかわかりません。誰も予測できなかったコロナウィルスの蔓延によって衰退したビジネスもあれば大きく成長したビジネスも数多く存在しています。
投資を意思決定するときに重要なのは、経営者の資質やそのビジネスにどれだけ共感できるかが重要になると考えています。社会課題に対して、こうあるべきという道筋を示し、目の前の投資家を惹きつけることができる起業家にお金が集まってくるのだと思います。
エンジェル投資家の成功確率を上げるためには?
IPOを目指す場合、0.3 ~10%だとすると非常に投資の成功確率が低くなります。そこに自信の経験や市場の読み解き、市場の成長性、経営者や経営チーム、ビジネスモデルの見極めを行い、成功確率を高めていく必要があります。
その上で、IPOを目指しながらもこのビジネスならM&Aでこういった上場企業から買収オファーが来るかもしれないといったM&Aのオファーがかかるか、かからないかというのも非常に重要な視点です。M&Aにより全額ないし、一部の投資が回収できればそれを再度投資に振り向けることができます。
スタートアップの業界動向を常に注視しておくのも非常に重要です。弊社で新規事業を考える場合は、まずは国内や海外で類似のサービスが行われていないか徹底的にリサーチを行います。その上で、それぞれのビジネスモデルを比較し、参考になる部分は大いに参考にした上でどうやって差別化を図っていくか、既存事業があればどういったシナジーが見込めるか見込めないかなども含めて検討する必要があります。
弊社で運営する「スタートアップログ」は、毎日スタートアップの資金調達情報を配信しています。特に海外の資金調達したスタートアップのビジネスモデルを学ぶことで、どういったビジネスモデルが流行っているか、キャッシュポイントがどこかということを知れば、自ら事業を行ったり、投資を行ったりする際にも大きな助けになると考えています。
中々そうしたリサーチに時間を避けない投資家の皆様は、専門家に相談するのも良いかも知れません。知人、友人から出資を頼まれているが、事業の見極めができない。余剰資金の一部をスタートアップやベンチャー企業に投資したいがそうした経営者と接点がないという方は是非とも弊社にご相談いただければ幸いです。今後は、定期的に勉強会等も開催していきたいと思います。
エンジェル投資家が求めるビジネスモデル
エンジェル投資家が求めるビジネスモデルは、将来性や成長可能性があり、新たな市場を切り拓くスケーラブルなビジネスモデルであることが重要です。
魅力的なリターンが設計されていることはもちろん、スタートアップ起業家が定量的にその魅力や可能性を説明できることが求められます。また、起業家自身の魅力や経験、解決を目指す社会課題、事業のビジョンやチームメンバーの資質も、エンジェル投資家にとって重要なポイントです。
エンジェル投資家が注目するビジネスモデルは、以下の4つの要素が調和し、相互に強化し合うものです。
革新性: 将来の高い収益性や市場拡大が期待できる革新的なアイデアを持つビジネスモデルが求められます。特にスケーラブルなビジネスモデルが重視され、新しい市場を切り開く可能性が高まります。
成長可能性: 魅力的なリターンが期待できるだけでなく、起業家がその事業の潜在力や独自性を明確に説明できることが重要です。そのために、事業の市場規模や競合との差別化が明確にされていることが望ましいです。
社会貢献: 起業家が取り組む社会課題の解決がエンジェル投資家にとって魅力的な要素となります。そのため、事業の成長が社会全体にポジティブなインパクトをもたらすことが大切です。
チーム力: 起業家の個性や経験、事業のビジョン、そしてチームメンバーの能力がエンジェル投資家にとって重要なポイントです。優れたチーム力は、事業の成功確率を高め、投資家に安心感を与える要素となります。
これらの要素が整ったビジネスモデルが、エンジェル投資家にとって最も魅力的であると言えるでしょう。
まとめ
今回は、エンジェル投資のメリット、デメリットなどについてまとめました。興味はあるがまずは何をしたらいいかわからないという方は、まずはスタートアップ経営者との接点を作るところから始めるのはいかがでしょうか?スタートアップやベンチャー企業を支援する中で、共感するスタートアップがいれば投資に発展させるというのが良い投資方法になると考えています。