
インドのスタートアップエコシステムの台頭:2024年の投資動向と今後の展望
インドが今、新たなスタートアップの成長の地として注目を集めているのをご存じでしょうか?
インドのスタートアップと聞いてもあまりピンと来ないという方も多いかもしれません。しかし、インドのスタートアップは近年急成長を遂げ、今やアメリカ、中国に続く世界第3位のスタートアップ大国となっています。
国内には77,000社以上のスタートアップが存在し、ユニコーン企業(評価額10億ドル超の未上場企業)は100社を超えます。
2024年にはスタートアップへの投資額が前年から20%以上増加し、約120億ドル(約1.7兆円)に到達。インドのスタートアップは近年その存在感を急速に高めてきました。
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【EXPACT作成】
本記事では、今注目の「インドのスタートアップエコシステム」の最新動向や投資トレンド、今後の展開について、最新のレポートをもとに解説していきます!
地方からイノベーションを起こす鍵は「スタートアップエコシステム」にあり
インドのスタートアップの資金調達概況
2024年のインドにおけるスタートアップ資金調達額は前年から約20%増加し、総額で120億ドルを突破しました。投資件数も993件と前年比11%増加しており、停滞していた2023年からは顕著な回復が見られています。投資1件あたりの平均調達額は約270万ドルに達し、前年より23%増加したことは、投資家が有望なスタートアップに対してより一層まとまった資金を提供する傾向が強まったことを示しています。
特筆すべき点として、インドでは女性創業者によるスタートアップへの投資が大きく伸びています。2024年は女性起業家のスタートアップが調達した資金が前年より93%増加し、ほぼ倍増しました。
それに加え、資金が集中した主要分野として電子商取引(eコマース)、フィンテック(金融テクノロジー)、エンタープライズ向けテクノロジー(企業向けソフトウェア/SaaS)が挙げられ、これらの分野は引き続き投資家の関心を集め、インドのデジタル経済を牽引していくと思われます。
成長するスタートアップ都市とその影響
現在インドにおけるスタートアップ資金調達の中心地となっている「バンガロール」。2024年に国内最多の資金調達件数を達成し、「インドのシリコンバレー」としての地位を確立しました。ムンバイとデリー首都圏(NCR)も多くの投資を呼び込んでおり、この3都市がインドのスタートアップ・エコシステムを牽引しています。
【5 most funded Indian startup hubs of 2024 – EXPACT作成 】
一方、アーメダバードやジャイプールなどの新興都市も台頭してきています。両都市は2024年にそれぞれ約4〜5億ドルの調達額を達成し、調達件数でトップ5入りを果たしました。
それに加えて地方都市からも有望なスタートアップが続々と誕生しており、インドの起業エコシステムは主要都市から地方へと着実に広がりを見せています。
このような地域の多様化は、各都市の特性を活かしたイノベーションを促進し、全国規模でスタートアップの成長を後押ししています。
ユニコーン企業とM&Aの動向
2024年にはインドで新たに6社のスタートアップが評価額10億ドルを突破し、ユニコーン企業の仲間入りを果たしました。電動スクーター製造のAther Energyや、Ola創業者が手掛けるAIスタートアップのKrutrim AIなどが例に挙げられます。これによりインドのユニコーン企業数は累計で120社を超え、2025年には130社以上に達する見込みです。
分野別にデータを見ていくと、Deeptechに続いてフィンテックやAI・SaaS分野が今後もユニコーン創出を牽引すると予測できます。
その一方で、スタートアップ関連のM&Aの動向には陰りが見られます。特にeコマース分野では76%の落ち込みを記録し、スタートアップ企業のM&A件数は前年比42%減と大幅に減少しました。この傾向の主な要因は、景気減速と評価額調整により買収によるEXITの機会が減少し、投資家が資金回収に慎重な姿勢を示していることであるとみられています。
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ただし2025年にはAI、フィンテック、電気自動車(EV)、ヘルステックといった成長分野での企業買収の活発化によって市場再編が進展する見込みであり、これによってこの停滞期も終わりを迎え、スタートアップのM&A件数は58%増加すると予測されています。
IPO市場の回復と新たなトレンド
ムンバイにあるボンベイ証券取引所(BSE)のビル。2024年、インドの新興テック企業によるIPO市場は勢いを取り戻しました。年間で13社のスタートアップが新規株式公開(IPO)を果たし、この数は前年の約2.6倍に上ります。
2023年はIPO件数が低迷していましたが、2024年は投資家の期待を背にテクノロジー企業の上場が相次いだ形となりました。実際、新規上場した13社のうち10社は公募価格を上回る初値を付けるなど、市場から好意的に迎えられています。これによりベンチャーキャピタルやプライベートエクイティにとってもIPOが主要な出口戦略として浮上しつつあります。
2025年には少なくとも25社以上のスタートアップが株式公開を計画しており、年間のIPO件数として過去最多を更新する勢いでこのIPOラッシュは今後も続くとみられています。
上場予定企業はZetwerk(製造業向けプラットフォーム)やOfBusiness(B2B金融)、PayU(フィンテック)など多岐にわたり、消費者向けサービスやSaaS企業も含まれる見込みです。このIPO市場の回復は、優良スタートアップへの資金流入をさらに促し、エコシステム全体の資金循環を改善する好循環を生み出していると言えます。
今後の展開とインドのスタートアップ市場の未来
【EXPACT作成】
2025年のインドスタートアップへの年間投資額は150億ドル(約2兆円)を超える見込みで、今後も高成長が期待されています。
「Indian Tech Startup Funding Report 2024」によると、投資件数は増加傾向にあり、特にAI関連のスタートアップが資金流入を牽引すると予想されています。実際に、インドのAIスタートアップへのベンチャー投資額は、2020年から2024年にかけて2.77億ドルから12億ドル超へと4.4倍に拡大しました。このAI関連の成長が今後数年の市場を活性化させると予想されています。さらにフィンテックやSaaS領域も引き続き投資の中心となる見通しです。
EXIT面では、M&Aの再活性化やIPOの増加が見込まれており、特に2025年のM&A件数は前年比約58%増と大幅な伸びが予測されています。これにより市場の流動性が高まり、スタートアップ投資家の資金回収機会も増加します。新たな投資サイクルへの資金再投入が促進されると予想されています。インド政府のスタートアップ支援策やマクロ経済の堅調さも相まって、インドのスタートアップエコシステムはさらに成熟度を増しつつあります。
このような成長トレンドは、世界経済におけるインドの存在感を高めると同時に、グローバルなイノベーションの潮流にも影響を与えていくと考えられます。
まとめ: インドのスタートアップの可能性
インドのスタートアップエコシステムは2024年から顕著な回復と成長を遂げ、さらなる拡大が期待されています。
インドのAIやフィンテック分野における革新的企業は、投資家にとって魅力的な投資機会になります。急速な人口増加とデジタル化が進むインドは、世界の経済成長を牽引する潜在力を持ち、そのスタートアップが生み出すイノベーションは目覚ましいものがあります。日本企業や投資家にとっての有望なビジネスチャンスとして、今後もインドのスタートアップから目が離せません!
参考:
indianstartupnews.com
tice.news
https://inc42.com/reports/indian-tech-startup-funding-report-2024/