シードラウンドってなに?資金調達で注意するべき3つのポイントとは?
投資ラウンドの中で「シードラウンド」というステージがあります。創業前または創業後間もない企業が行う資金調達のことを指しています。
シードラウンドの前段階で「エンジェルラウンド(=プレシードラウンド)」などもありますが、エンジェルラウンドから一歩進んだステージとなります。この記事ではシードラウンドについて、また気を付けるべきポイントや資金調達方法について解説します。
そもそも投資ラウンドとは
投資ラウンドとは、「投資家が企業に対して投資(出資)をする段階」のことを意味します。これはもともと、投資する側の人間が投資先企業のファイナンスステージを把握しやすいように、アメリカで生まれたファイナンス(資金調達)の仕組みで、商品・サービスやビジネスモデルが確立しつつあるミドルステージ以降の段階で行われることが多いです。
企業は、事業を維持/拡大する上で“運転資金”が必要になってきます。このため、経営者は“Debt デット(お金を借りて資金を調達する方法)”、“Equity エクイティ(新株の割当と引き換えに資金を調達する方法)”、“補助金(国や自治体などから開発資金等を支援してもらう方法)”などを行うことで資金を調達します。
例えば、エクイティでの資金調達の場合、ハイリターンを狙う投資会社であるVC(ベンチャーキャピタルやCVC)や、個人投資家であるエンジェル投資家などが資金調達したい企業へ投資する際に「投資ラウンド」という概念が出てきます。
投資ラウンドの種類
投資ラウンドの種類には、エンジェル、シード、シリーズA、B、C..などがありますが、それぞれシード、アーリー、ミドル、レイターの4つの事業ステージ内に属するものです。
シードラウンドとは
エンジェルラウンドを経由していなければ、スタートアップが行う初めての資金調達ラウンドとなります。
プレ・シードラウンドやシードラウンドは、事業や製品・サービスのプロトタイプを完成させようと考える起業家が持つアイデアやコンセプトの実現や製品・商品・サービスのプロトタイプを開発することを目的としたエクイティファイナンスの段階を意味します。(参考:スタートアップのPre-Money Valuationの 決定に関する展望)ほとんどのケースで数百万円〜数千万円程度の資金調達が行われ、創業後の製品開発や研究、人材確保や販売リソース確保などが主な資金使途となります。
資金調達先としては、ベンチャーキャピタル、エンジェル投資家、アクセラレーターなどがあります。資金調達の額は500万円から5,000万円程度が一般的で、スタートアップの成長に必要なベーシックなコスト(会社設立費用、人件費、開発費など)を賄うためのものです。連続起業家など事業売却(M&A等)のトラックレコードがある起業家であればシードラウンドから億円単位の資金調達を実施するケースもあります。
シードラウンドの主な目的は、アイデアやコンセプトを実現することであり、MVPの作成や仮説検証などが行われます。シードラウンド企業への投資を専門としたVC(ベンチャーキャピタル)も多数存在するほど需要があり、ほぼすべてのスタートアップが通過するポイントと言えそうです。
他のラウンドとの違い
- エンジェルラウンド:個人投資家からの小規模な資金調達
- シリーズA以降:事業の拡大や収益化を目指す段階での資金調達
シードラウンドの資金調達はスタートアップ企業の早期の成長を支援し、次のステージに進むための資金調達の足がかりとなります。シードラウンドに続く資金調達ラウンドとして、シリーズA、シリーズB、シリーズCなどがあります。
シードラウンドの特徴
シードラウンドの特徴をより具体的に説明します。
- 調達金額:通常500万円から5,000万円程度
- 主な投資家:ベンチャーキャピタル、エンジェル投資家、アクセラレーター
- 資金使途:プロトタイプ開発、市場調査、初期チーム構築
- 企業価値評価:アイデアや創業チームの能力が重視される
ステージ | 主な目的 | 調達金額の目安 |
---|---|---|
エンジェル | アイデア検証 | 数百万円 |
シード | プロトタイプ開発 | 500万円〜5,000万円 |
シリーズA | 事業モデル確立 | 1億円〜10億円 |
シリーズB | 事業拡大 | 10億円〜50億円 |
シリーズC以降 | さらなる成長・上場準備 | 50億円以上 |
”調達金額の相場”については、2019年~2022年におけるスタートアップの資金調達情報のうち、当社が運営するSTARTUP LOGが取り扱った国内版データがありますので、ぜひ以下をご参照下さい。
バリュエーションに関しては、以下の記事を参照ください。
シードステージの資金調達方法とは
基本的には前述の“Debt デット(お金を借りて資金を調達する方法)”、“Equity エクイティ(新株の割当と引き換えに資金を調達する方法)”、“補助金(国や自治体などから開発資金等を支援してもらう方法)”また、最近であればクラウドファンディング(CF)も手段の一つです。
エクイティ(株式)
- メリット:負債を負わない、長期的な資金調達が可能
- デメリット:株式の希薄化、経営権の一部譲渡
デット(借入)
- メリット:経営権を維持できる、返済後は関係が終了
- デメリット:返済義務がある、担保が必要な場合がある
コンバーティブルエクイティ
- メリット:企業価値評価を先送りできる、柔軟な条件設定が可能
- デメリット:将来の株式希薄化が不透明
クラウドファンディングについてはこちら
日本ではまだ知名度が低く、シードラウンド時の活用が多いですが「コンバーティブルエクイティ/コンバーチブルエクイティ/J-KISS」の有効性にも注目が集まっています。
シードの資金調達手法 J-KISS (日本版 Keep It Simple Security,コンバーティブルエクイティ)とは?
シードステージの資金調達で注意するべき3つのポイントとは
デットもエクイティも、投資家や金融機関がいます。お金を出す側から考えると『貸しても返ってくる先に投資したい』というのは普通ですよね。そのために、経営者として注意しておきたいポイントを解説します。
〇MVVの策定
企業のミッション、ビジョンが明確になっていないと”共感”が生まれにくく、投資家は「なぜその事業に投資するのか」という重要なポイントが抜けてしまうことになります。またシードラウンドでは資金調達後の人材確保も行うことがほとんどなので、ビジョンが明確でない、またビジョンがあってもそれを実現するストーリーが描けていないといずれにしても大きくスケールすることが難しいと考えられます。
〇事業計画書の作成
ビジョンやストーリーが出来ていれば、その後事業計画書(エクイティ・ストーリー)をつくっておきましょう。銀行や金融機関からも融資が受けやすいです。アイデア段階で先々の計画が見えていない企業もあるかと思いますが、ここの計画書が出来上がっていると補助金や助成金の申請がスムーズになったり、採択確率も上がります。
投資家にアプローチする場合、プレゼン資料が必要です。プレゼン資料は、企業のビジョンや製品・サービスの説明、市場の分析、競合他社との違い、財務状況などを記載します。シードラウンドでの資金調達は、スタートアップ企業にとって重要なステップですが、それだけでは十分ではありません。資金調達後は、その資金をどのように使って企業を成長させていくか、具体的な経営計画が必要です。
計画書が出来たら、出来れば投資家やVCの面談(ピッチ)準備もできていると望ましいです。
〇創業メンバーの確保
事業が一定の軌道に乗るかどうかは、社長をはじめとした創業メンバーの影響を受けるケースが多くあります。利益もさることながら志や理念を共有し、ともに困難や課題を乗り越えられる仲間がいることは事業成功の要因にもなり、かつ投資家としてもある程度『人に投資する』部分はあるので、創業メンバーも重要です。
〇投資家へのアプローチ
資金調達をするためには、投資家へのアプローチが必要です。しかし、投資家には多くの企業がアプローチしているため、どのようにアプローチするかが重要です。エンジェル投資家や起業家の知り合いづてに紹介をしてもらうのが得策です。
以上のように、シードラウンドでの資金調達には、投資家へのアプローチ方法、プレゼン資料の作成、資金調達後の経営計画の策定が必要となります。
まとめ:シードステージは「準備」が重要
シードステージにおける資金調達について解説しました。シードラウンドは、スタートアップ企業の成長における重要な一歩です。十分な準備と戦略的なアプローチが成功の鍵となります。投資家との良好な関係構築、明確なビジョンの提示、そして実行力のあるチームの構築が、資金調達成功の要因となります。
起業前や創業間もない時期で資金調整方法にも限りがあります。自力の資金だけで運転できれば良いのですが、なかなか自己資金のみでの経営は難しいため、補助金や助成金などの国からの支援、また銀行や金融機関からの融資を中心に、組み立てていきましょう。
事業計画書を作成するときは将来性や年度ごとの目標などを、客観的視点も含め考えながら作成することが望ましいです。
EXPACTでは、特にスタートアップ企業への補助金活用や資金調達を強みとしており、実績・経験も多数ございます。資金調達成功に向けて、パートナーを探している、また詳しく話を聞いてみたいという方はお問い合わせください。