スタートアップ・エコシステム拠点都市に選ばれた浜松市の魅力とは?
いまや起業は場所を選ばずどこでもできるようになりました。
しかし、実際には東京への一極集中が目立っており、特に地方での起業は資金調達や人材・設備など整えるための環境が整備されていないのではないかと、長らく問題視されてきました。
そんな中、内閣府は『スタートアップ・エコシステム拠点都市』を全国に設置し、経済面や技術面など様々な支援を行うことで、世界と同等に戦える日本企業の創出を目指しています。
そして2020年7月14日、浜松は愛知県・名古屋市と共に、「スタートアップ・エコシステム拠点都市」の中の全国で4拠点しかない「グローバル拠点」に選ばれました。
これにより、浜松市での起業は、資金調達や技術支援など、他の都市よりも手厚く受けることができるようになります。
本記事では、『スタートアップ・エコシステム拠点都市の形成』とは何か、また選出された浜松での起業は何が有利なのかを解説します。
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スタートアップ・エコシステム拠点都市とは何か
世界では、アメリカのシリコンバレーや中国の深圳、ポルトガルのリスボンやイスラエルのテルアビブといった様々な地域にスタートアップ・エコシステムが形成され、スタートアップ企業が破壊的なイノベーションを巻き起こしています。
時にイノベーションエコシステムとも呼ばれ、産官学にわたる多様な組織が相互に協働、競争を続け、イノベーションを誘発するように働くシステムのことを指します。このシステムは、基礎研究を始めとする科学的知識を新しい製品・サービスや新しい市場に転換し、経済社会的価値を増大させ、より良い社会を形成する役割を果たします。
エコシステムという言葉は、本来「生態系」を意味する科学用語ですが、現代においては、ITや経営の分野で「複数企業や人物が結びつくことで循環し、共創・共栄していくしくみ」という意味でも使用されます。イノベーションエコシステムでは、事業会社とベンチャーによる価値共創によって新たな付加価値を創出し、さらに、大学・国研の知識が産学「融合」によってシームレスかつ迅速に市場へと繋がります。その結果、グローバルに通用するサービスが創出され、その利益や人材が還流します。
また、イノベーションエコシステムは地域レベルでも形成されています。地域イノベーションエコシステムでは、行政、大学、研究機関、企業、金融機関などの様々なプレーヤーが相互に関与し、絶え間なくイノベーションが創出される環境・状態を作り出します。イノベーションエコシステムは、1企業の努力だけでは実現できず、多様なプレイヤーの相互関係の中で成立します。そのため、組織を超えて企業と地域や大学が協業し、国の支援を受けながら新しい技術やアイデアを創出することが重要となります。
一方日本では、オープンイノベーションが徐々に浸透しつつあるものの十分に機能しているスタートアップ・エコシステムが存在しているとは言えず、世界に大きな後れを取っています。
出典:内閣府「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」
戦略1:世界と伍するスタートアップ・エコシステム拠点都市の形成
戦略2:大学を中心としたエコシステム強化
戦略3:世界と伍するアクセラレーション・プログラムの提供
戦略4:技術開発型スタートアップの資金調達等促進
戦略5:政府、自治体がスタートアップの顧客となってチャレンジを推進
戦略6:エコシステムの「繋がり」形成の強化、気運の醸成
戦略7:研究開発人材の流動化促進
高度なディープテックを抱える大学機関や発想力豊かな人材など、日本の持つ縦のポテンシャル、それを横つなぎに束ねる存在として、「スタートアップ・エコシステム拠点都市」の形成を目指し、選定された拠点都市にヒト・モノ・カネの集中支援が行われます。
拠点都市には2つ種類があり、関係府省の施策による集中支援が行われる「グローバル拠点都市」と地方創生関連事業との連携が検討されている「推進拠点都市」があります。
グローバル拠点都市は浜松市を含む以下の4つの拠点が選定されました。
〇スタートアップ・エコシステム 東京コンソーシアム(東京都、川崎市、横浜市、和光市、つくば市、茨城県等)
〇Central Japan Startup Ecosystem Consortium(愛知県、名古屋市、浜松市等)
〇大阪・京都・ひょうご神戸コンソーシアム (大阪市、京都市、神戸市等)
〇福岡スタートアップ・コンソーシアム (福岡市等)
スタートアップ・エコシステム拠点都市のメリットとは
では、浜松市を含むコンソーシアムが選定されたスタートアップエコシステムグローバル拠点都市は、具体的にどのような支援を受けることができるでしょうか。
○ランドマーク・プログラムの招致
○アクセラレーション・プログラムの実施
○政府のスタートアップ関連支援の活用促進
○世界への情報発信・起業家・投資家等誘致活動
○規制緩和の推進
5つの柱が銘打たれています。中でも注目すべき支援をヒト・モノ・カネに分け、ご紹介いたします。
ヒト
起業手続きの一本化・簡素化が目指され、起業のハードルを下げることが目指されます。
経産省認定地域において最長1年のビザが認められる、スタートアップビザと呼ばれる外国人起業活動促進事業が拡充されます。
これらにより、グローバル拠点都市では、文字通りグローバルに起業家が増え、スタートアップの成長を加速させる存在が増え、協奏的なネットワークが構築されます。
シーズ(モノ)
専門性を持った大学生や若手研究者がアイディアの創出やビジネスモデルの構築を実践的に身に着ける育成プログラムであるEDGENEXTやSCOREを拡充することで、技術シーズを産業にスピンアウトする道筋がよりオープンになります。
資金(カネ)
スタートアップ・エコシステムの体力となるカネが循環するための様々な施策が実施されます。
大学発ベンチャー創出促進を目的とする大学研究室単位に少額資金を行うGAPファンドが強化されます。シード期の研究開発型ベンチャーの支援を目的とするNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の伴走型支援も強化されます。中小・ベンチャー企業の研究開発等を支援する日本版SBIR制度(中小企業技術革新制度)は目標を「中小企業の経営強化」から「イノベーションの創出」にシフトされます。
グローバル拠点都市では、上記の資金面での支援が受けられることで、「スタートアップの種を生み、種を芽吹かせ、芽を大きく成長させる」ためのお金の循環が生まれます。
拠点都市に選ばれた浜松市そもそもの魅力とは
東京、大阪、名古屋、福岡とスタートアップで有名な都市が並ぶグローバル拠点都市に選定された浜松市の魅力とはなんでしょうか。
独自の取り組み
浜松ファンドサポート事業による資金調達支援や、会社設立支援補助金など各種補助金といった行政による資金援助が充実しています。
起業前後スタートアップ向けプログラム:
日本を代表する経験豊富なメンターによるメンタリング。起業を志す人材や創業間もないスタートアップ、企業内起業家に対してビジネスプランのブラッシュアップをサポート。
シード~アーリー期スタートアップ向けプログラム:
ベンチャーキャピタルや専門家によるメンタリング。浜松市を拠点とするスタートアップや企業内起業家に事業のさらなる加速を支援。
実証実験サポート事業:
独自の技術やアイデアを実証実験するプロジェクトを全国から募集。実証フィールドの提供やプロジェクトの経費支援などを通じて、社会的課題の解決と産業振興を促進。
ファンドサポート事業:
市内スタートアップに投資を行うベンチャーキャピタル等と協力。資金交付により、スタートアップの事業化を支援。
これらのプログラムは、製造業の集積とスタートアップの連携を強化し、モビリティ、インフラ、ヘルスケア、アグリ、光などの分野での共創プロジェクトを推進しています。
FUSE-ON CHALLENGE(チャレンジゲート)、Startup Weekend浜松といった起業家ネットワークの形成・活動が盛んです。
光や医療、AI・IoTなどシーズの強み
昔から産業の盛んであった浜松市。現在でも特色ある技術シーズを持つたくさんの企業や、工業、光産業、IT、医療様々な分野の大学機関が技術シーズを生み育てています。今後拡充されるEDGENEXT加盟大学もあるため、グローバル拠点都市となった今、浜松市の研究開発型スタートアップは更なる追い風を得ています。
この様に、浜松市ではスタートアップ・エコシステムの発展に向け産官学が熱量をもって連携していることが大きな魅力となっています。
これらのプログラムは、製造業の集積とスタートアップの連携を強化し、モビリティ、インフラ、ヘルスケア、アグリ、光などの分野での共創プロジェクトを推進しています。また、名古屋大学を中心とした大学群での起業家教育やデジタル教育を強化し、スタートアップ拠点「Station Ai」を整備しています。
これらの取り組みにより、浜松市はスタートアップ企業の成長を支援し、地域経済の発展に貢献しています。
浜松市で起業している企業とは
数ある浜松スタートアップの中からいくつかご紹介いたします。
リンクウィズ3次元形状処理エンジンを活用した産業用ロボットの自律化を展開するソフトウェア開発スタートアップ。経済産業省が推進する、世界で戦い、勝てるスタートアップ企業の育成支援プログラム「J-Startup」にも選定されています。
X線の波⻑を⾒分けることで材料識別を実現することが可能なセンサを活用した次世代放射線検出器を開発する静大発ベンチャー。
先日、シリーズBラウンドで10.8億円の資金調達を実施しました。
X線の波長から材料識別可能な次世代放射線検出器開発の株式会社ANSeeNがシリーズBラウンドで10.8億円の資金調達を実施
AI灌水システムなどアグリテックの開発製造販売を通して農業のNew Standardを築き上げる農業系テックベンチャー。
静岡大学の情報学部との産学連携、浜松市ファンドサポート事業選定企業など、地域に密着しながら、世界に大きなインパクトを与えるスタートアップです。
まとめ
これまで諸外国と比べ遅れをとっていた日本のスタートアップがついに国を挙げて大きく動き出しました。東京一極集中が緩和され、各地域の特性や強みを活かした日本のスタートアップ・エコシステムが形成されることに期待が高まっています。
地方都市には、都心にはない地場の強みを活かしたスタートアップが多く存在します。スタートアップ・エコシステム拠点都市の強みと、浜松市の支援を得て起業をご検討の方は、ぜひ弊社までご相談下さいませ。