
静岡の未来を変える大型プロジェクト – ベルテックス静岡の新アリーナ構想
静岡市の新たなランドマークとなる多目的アリーナ計画が、いよいよ具体的な形を見せ始めています。バスケットボールBリーグのベルテックス静岡を中心としたこのプロジェクトは、単なるスポーツ施設を超えた静岡の未来を担う重要な都市開発として注目を集めています。
最新の建設計画と特徴
東静岡の新たなシンボルへ
2024年10月25日、静岡市は東静岡駅北口市有地に建設予定の新アリーナの基本計画案を正式に発表しました4。この場所は県立中央図書館やグランシップなどの文化施設に近接し、交通アクセスに優れた立地です。難波喬司市長は「アクセスがよくて、気軽に行ける所に造ります」と明言しており1、市民が利用しやすい施設を目指しています。
特筆すべきは、当初の想定を大きく上回る規模感です。収容人数は8,000席以上となり14、Bリーグの試合だけでなく、大規模コンサートやMICE(国際会議・展示会)など多様なイベントに対応できる設計となっています。
先進的な施設設計と運営方式
アリーナと東静岡駅、静岡鉄道の長沼駅をデッキでつなぎ、歩行者と車を分離する計画も盛り込まれています1。また、災害時に避難できる防災機能も備える予定で、単なるエンターテイメント施設を超えた公共インフラとしての役割も期待されています。
運営方式については「BTコンセッション方式」の採用が検討されています1。これは民間事業者が自ら提案した設計でアリーナを建設(Build)し、完成後は市が保有(Transfer)するものの、運営権は事業者に有償で譲渡するという官民連携方式です。この方式により、民間のノウハウを活かした効率的な運営と、公共性の確保を両立させる狙いがあります。
B1昇格への切符 – ベルテックス静岡の挑戦
現実味を帯びるB1ライセンス取得
ベルテックス静岡は2023年12月に2025-26シーズンに向けたB1クラブライセンスを申請しました2。同チームは昨シーズンの売上高が9.3億円とB1ライセンスの経営基準(3億円以上)を十分に満たしていますが、5,000席以上のアリーナ確保という施設基準が大きな課題でした。
静岡市の新アリーナ計画が具体化したことで、この条件も満たせると判断し申請に踏み切ったのです。B1ライセンスの交付可否は2025年4月に決定する見通しで、まさに今が重要な局面となっています。
2024年12月16日には、Bリーグの島田慎二チェアマンが難波市長を表敬訪問し、アリーナ計画の進捗状況を確認しました35。この訪問にはベルテックス静岡の松永康太代表も同席し、「このタイミングで改めて島田チェアマンにも進捗の確認の意味も込めて本日の訪問につながりました」と述べています3。
B1昇格への期待と課題
B1ライセンス申請に関して注目すべき点は、新アリーナは交付決定から「3年以内の着工か、5年以内の完成」が求められている点です7。2030年春の開業予定はこの条件に合致しており、難波市長も「順調にいけば2030年3月には間に合うのではないかなというところで、それがB1ライセンスのタイミングにもちょうどいい」と述べています3。
また、ベルテックス静岡は2024-25シーズン後半戦に向けて「B1昇格に向け、さらに熱いホームアリーナで選手を応援しよう」というキャンペーンを展開しており8、チーム側も昇格を強く意識していることがうかがえます。
地域社会への波及効果と課題
経済効果と地域活性化
静岡市の試算によれば、アリーナ建設と運営による30年間の経済波及効果は5,000億円以上と見込まれています。この数字は決して過大評価ではなく、近年各地で建設された大規模アリーナが地域経済に与えた影響を考慮すると、十分に現実的な予測といえるでしょう。
難波市長は「アリーナは市長に就任して以来、この街に必要な施設だと考えています。それはBリーグのためというものではなく、なにより静岡市民の誇り、地域を愛する力、あるいは絆といったところで非常に大きな効果を発揮する施設だからです」と述べています。
合意形成と持続可能性への取り組み
一方で、JR東静岡駅北口のアリーナ計画に対しては、周辺住民から交通渋滞を懸念する声も上がっています。難波市長は「地元にも説明して理解をいただいている状況ではありますが、まだまだ市民の共感が十分ではないところもある」と認めており、丁寧な合意形成を進めています。
また、松永代表は「ベルテックス静岡のためだけのアリーナ計画ではないことは、承知しております」としつつも、「この地域の未来のためにも今後も猛烈に成長せねばなりません。今後持続可能的に成長していくためには夢のアリーナの実現は避けては通れないプロジェクトです」と述べています。
今後の展望と考察
静岡スポーツ文化の転換点
この新アリーナ計画は、静岡におけるスポーツ文化の大きな転換点になると考えられます。従来の「体を育てる」施設から、エンターテイメントとしてのスポーツを楽しむ場への進化です。難波市長も「(開場50年以上の)中央体育館は、基本は『体を育てる』施設。ベルテックスが”アリーナ風”にして盛り上げて、みんな盛り上がっている。だけど、盛り上がるためにはいい施設が必要」と述べています。
興味深いのは、静岡県内では他にも浜松市の県営野球場、JR清水駅付近の新スタジアムの建設構想があることです。これは静岡県全体でスポーツを核とした都市開発が進んでいることを示しており、県内の都市間競争と協調が今後のカギとなるでしょう。
2030年以降を見据えた戦略的視点
松永代表が「2030年春の完成目標とされていますが、そこは決してゴールではありません」と述べているように、このアリーナは完成後の運営と発展が本当の勝負となります。全国各地で新アリーナ建設が進む中、いかに差別化し、持続可能な運営を実現するかが課題です。
島田チェアマンも「静岡市は人口67万人という大きな都市であり、この地にアリーナができるということは、もちろんBリーグにとってだけということではなく、アリーナのもたらす地域への価値という点において、非常に魅力的なことだと思っています」と述べています。
まとめ
ベルテックス静岡の新アリーナ建設構想は、単なるスポーツ施設の建設を超えた、静岡の未来を形作る重要なプロジェクトです。2030年春の開業を目指し、総事業費約300億円、収容人数8,000人超の多目的アリーナとして計画が進行しています。
このアリーナはベルテックス静岡のB1昇格を支えるだけでなく、静岡市の新たなシンボルとして、スポーツ振興、文化発展、経済活性化の核となることが期待されています。地域住民との合意形成や持続可能な運営モデルの構築など課題はありますが、官民一体となった取り組みにより、静岡の新たな誇りとなる施設が誕生することを期待したいと思います。
参考記事
静岡市アリーナ誘致方針 概要版(静岡県公式サイト)
新アリーナ計画で判断 ベルテックス静岡が「B1ライセンス」を申請(静岡朝日テレビ)
2025-26シーズン B1ライセンス取得に向けた施設基準の充足(ベルテックス静岡公式サイト)
東静岡駅前の新アリーナ案 300億円かけ8千席超(日本経済新聞)