SaaSスタートアップが押さえるべき経営指標「ARPU」とは? 重要性と改善策
そもそもARPUとは何か
ARPUは”Average Revenue Per User“の頭文字を取った言葉で、1ユーザーあたりの平均売上高を表す重要な経営指標です。 ARPUの高い値を維持することは、サービスの収益性を左右する大きな要因となります。
ARPUとMRRは似た指標ですが、ARPUは1ユーザーあたりの平均収益を表し、MRRは月次の総収益を表すという違いがあります。
MRRとは、サブスクリプションビジネスなどで毎月繰り返し得られる収益のことを指し、事業の安定性や成長性を判断する上で重要な指標となります。詳細はこちら
ARPUの計算式
ARPUは以下の計算式で求められます。
ARPU = 売上金額 ÷ ユーザー数
具体例を挙げると、月間売上が3億円でユーザー数が6万人の場合、月間ARPUは次のように計算されます。
300,000,000円 ÷ 60,000人 = 5,000円
つまり、1ユーザーあたりの月間平均売上高は5,000円ということになります。
ARPUの活用分野
ARPUはもともと通信業界で使われていた指標でしたが、 現在では以下のようなサービスでも広く活用されています。
- スマホアプリ
スマホアプリ、特にゲームアプリではARPUを重要な指標として活用しています。無料アプリでも課金要素があり、ARPUを高めることで収益を最大化できます。 - 動画配信サービス
Netflix、Hulu、Amazonプライムビデオなどの動画配信サービスは月額課金制のため、ARPUが収益性を示す重要な指標となります。ARPUを分析し、プランの値上げや新サービスの投入などの施策を立案します。 - SaaSビジネス
クラウドサービスを提供するSaaSビジネスでは、ARPUを収益性と成長性を測る指標として活用しています。ARPUを高めるため、プレミアムプランの新設やクロスセル・アップセルを行います。 - その他の月額課金サービス
定期購入サービス、オンラインストレージサービス、音楽ストリーミングサービスなど、月額課金制のサービスではARPUが重視されています。
これらのサービスにおいて、ARPUを高めることが収益拡大の重要な鍵となっています。このように、ARPUは月額課金型のビジネスモデルにおいて、収益性を把握し、マネタイズ戦略を立案するための重要な指標として広く活用されています。
ARPUの重要性
新規ユーザー獲得の難易度
一般的に、サービスの普及が進むにつれて新規ユーザーの獲得は難しくなります。 市場が成熟期に入ると、新規ユーザーを増やすための広告費などのコストが高くなるためです。そのため、売上を伸ばすには既存ユーザーからの収益を高める必要があり、ARPUが重要な指標となってきます。
ARPUを高める方法
ARPUを高めるには、以下の方法があります。
購入頻度の向上
- 新サービスや新商品の投入
- キャンペーンの実施
- ユーザーエンゲージメントの強化
新しい付加価値を提供したり、購入インセンティブを設けることで、ユーザーの購買を促進し、購入頻度を高められます。また、ユーザーとのコミュニケーションを密にし、関与度を高めることも重要です。
単価の値上げ
- プレミアムプランの新設
- 定期的な価格改定
上位の有料プランを用意したり、適度な価格改定を行うことで、ARPUの向上が見込めます。ただし、過度な値上げはユーザーの離反を招くリスクがあるため、バランスが重要です。
アップセル / クロスセル
- 高付加価値サービスの案内
- 関連商品の同時購入促進
既存ユーザーに対し、より高付加価値のサービスやオプション、関連する他の商品を提案することで、ARPUを押し上げられます。
顧客ロイヤリティの向上
- 優待制度の導入
- カスタマーサポートの強化
顧客の満足度を高め、長期的な利用を促すことがARPU向上の鍵となります。ロイヤリティプログラムやサポート体制の充実化が有効な施策です。
適切な指標の選択(ARPPU、ARPAの活用)
- 無料ユーザーと課金ユーザーの区別(ARPPU)
- アカウント単位での分析(ARPA)
サービスの特性に合わせて、ARPUだけでなく、ARPPUやARPAなど適切な指標を選択し、分析することが重要です。このように、マーケティング施策から価格設定、サービス改善まで、様々な観点からARPUの向上を図る必要があります。
ARPUを分析することで、マネタイズの状況を把握し、上記のような適切な施策を立案できます。
ARPUと類似指標の違い
ARPUに似た類似の指標には以下のようなものがあり、それぞれ特徴が異なります。
ARR(Annual Recurring Revenue)
- 年間の経常収益を表す
- ARR = MRR × 12
- サブスクリプションビジネスの年間売上見込みを示す
ARPA(Average Revenue Per Account)
ARPA = 売上金額 ÷ アカウント数
ARPAはアカウント単位で収益性を測る指標です。1アカウントに複数のユーザーが紐付く可能性があるサービスで有用です。
- アカウント1つあたりの平均収益を表す
- ARPA = 総収益 / アカウント数
- 複数ユーザーが1アカウントを使う場合に適した指標
ARPPU(Average Revenue Per Paid User)
ARPPU = 売上金額 ÷ 課金ユーザー数
ARPPUは課金ユーザーのみを対象とした指標です。無料と有料プランが混在するサービスでは、ARPPUを用いることで有料ユーザーの収益性を正確に把握できます。このように、サービスの特性に合わせて、ARPUかARPAかARPPUかを使い分ける必要があります。収益性を適切に測るには、指標の定義を理解し、目的に合った指標を選ぶことが重要です。
- 課金ユーザー1人あたりの平均収益を表す
- ARPPU = 総収益 / 課金ユーザー数
- 有料会員の収益性を測る上で有用
ARPMau(Average Revenue Per Monthly Active User)
- 月次アクティブユーザー1人あたりの平均収益
- ARPMau = 総収益 / 月次アクティブユーザー数
- ユーザーの活性度を考慮した指標
このように、MRRは月次の総収益を表す一方、ARPPUやARPAなどの指標はユーザーやアカウント単位の収益性を測るものです。サービスの特性に合わせて、適切な指標を使い分ける必要があります。
まとめ
ARPUは収益性を測る重要な指標です。ARPUを適切に分析し、様々な施策を講じることで、マネタイズを強化し、サービスの収益拡大を実現できます。また、ARPUだけでなく、ARPAやARPPUなど目的に合った指標を選択し活用することが、収益性を正確に把握する上で重要となります。
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