
「共創の未来を創る」— Creww Capital の挑戦(中編)
オープンイノベーションをリードする存在として、日本のスタートアップと企業をつなぐCreww株式会社。その新たな事業として誕生した「Creww Capital」は、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)支援とファンド運営を専門に手がける新会社です。
Creww Capitalは、投資にとどまらず、企業とスタートアップのシナジー創出を重視し、CVCの立ち上げから戦略策定、ファンド運営、事業共創までを包括的に支援しています。
今回のインタビューでは、Creww Capitalの設立背景や事業戦略、CVC支援の独自性について、代表の伊地知 天さんと松本 直人さんにお話を伺いました。日本と海外のスタートアップエコシステムをつなぎ、オープンイノベーションの新たな潮流を生み出すCreww Capitalの挑戦とは?
なお、本記事は3部構成の中編です。
前編はこちら:https://expact.jp/crewwcapital-interview1/
Creww Capitalが提供するサービス
── 改めて、Creww Capitalの提供サービスについて教えていただけますか?
伊地知氏:Creww Capitalが提供するサービスは、大きく分けて「ファンドGP業務と関連サービス」、そして「海外投資案件の紹介・支援」の2つです。
1. ファンドGP業務と関連サービス
まず1つ目は、CVCファンドのGP(ゼネラルパートナー)業務や、それに付随するコンサルティングサービスです。これは国内のCVC支援にも当てはまりますし、レアル・マドリードのようなアクセラレーター・ファンドにも適用される領域です。
具体的には、企業がCVCファンドを立ち上げる際の支援や、ファンド運営に必要なノウハウの提供を行います。また、企業の投資戦略策定や、スタートアップとの協業に向けた事業開発サポートなど、CVC運営に関連する包括的なサービスも提供します。
2. 海外投資案件の紹介・支援
もう1つのサービスが、海外の投資案件の紹介と支援です。これはオープンイノベーションの延長線上にある事業ですが、特に金融機関などのパートナーと協力しながら進めるものです。
レアル・マドリードプログラムを実施して以来、海外、特にアメリカのスタートアップからの問い合わせが増えています。その中には、バリエーションが1兆円を超えるような「ユニコーン企業の次のラウンド」に対して、投資枠を獲得できるケースもあります。例えば、「日本から50億円の投資枠を確保できる」というような話が出てくることがあります。
── それは、日本のCVCや企業にとって非常に貴重な機会ですね。
伊地知氏:そうですね。ただし、こうした案件をCreww Capital単独で対応するのは難しいため、CVC支援先の企業や、海外投資に関心を持つ金融機関と連携しながら機会を提供していく形をとっています。また、日本企業がアメリカを含む海外の有望スタートアップに投資し、情報を得ることは、エコシステム全体の発展にとって非常に意義があると考えています。
たとえば、スペースXのような企業に早い段階で投資できる機会があれば、それを日本企業につなぐ役割を担いたい。そのための橋渡しをすることが、この2つ目の事業の大きな目的です。
── こうしたグローバルな投資機会を提供できる企業は、確かに限られていますね。
伊地知氏:そう思います。Creww Capitalの強みを生かしながら、これからも日本企業のグローバル展開を支援していきます。
Creww CapitalのCVC支援の特徴
── 既存のCVC支援と比べて、Creww Capitalの特徴はどのような点にありますか?
松本氏:大きな特徴の一つは、オーダーメイド型でCVCを設計できることです。企業ごとに目的は異なります。ファイナンシャルリターンを重視するのか、それともスタートアップとのシナジーを追求するのか、そうしたKPIの設定から自由に設計し、各企業が本当に実現したいオープンイノベーションの形を具現化します。
また、ファンド規模に関しても制限はなく、小規模なCVCファンドからの立ち上げも支援可能です。Creww Capitalとしては、現在1本目のファンドの準備を進めている段階ですが、どの企業でも柔軟にCVCを設計できる環境を整えています。
加えて、先ほどの伊地知さんの内容と被りますが、海外投資案件の紹介や、グローバル投資機会の提供も可能です。例えば、アメリカのユニコーン企業が次のラウンドで投資枠を開放する際、日本企業がそこに参画できる機会を提供するといった取り組みもCVC支援の一環として行っています。こうした多様な選択肢を組み合わせることで、オリジナリティのあるCVCを実現できると考えています。
── 他にも、Creww CapitalがCVC支援で重要視している点はありますか?
松本氏:もう一点、重要なのはCVCの内製化支援です。多くの企業は、CVCの運営ノウハウが不足しているため、まずはCreww Capitalが支援する形になります。しかし、最終的には企業自身が自立してCVCを運営できるようになることが理想です。そのため、キャピタリストの育成や、CVC運営のノウハウ提供にも注力しています。
── Creww Capitalは、単なるCVCの立ち上げ支援ではなく、企業が将来的に自走できる仕組みづくりまでを視野に入れているのですね。
松本氏:その通りです。企業ごとに異なる目的や状況に合わせ、最適なCVCの形を設計し、最終的には自社で運営できるよう支援していきます。
CVCにおけるシナジー創出の重要性
── CVCにおいて「シナジーの創出」は重要なテーマの一つかと思います。企業が求めるシナジーの実現に向けた取り組みについて、どのように考えていらっしゃいますか?
松本氏:シナジーを生み出す上で、大きなポイントになるのが時間軸の考え方です。アクセラレーションプログラムでは、半年から1年といった短期間で成果を検証することが多いですが、本当にシナジーを生み出し、事業として確立させるには、もっと長い期間が必要です。そのため、単なるアクセラではなく、投資という形をとることで、スタートアップと長期間コミットしながらシナジーを創出していくことが重要になります。
また、CVCを通じて得られる成果は、必ずしもすぐに数値化できるものだけではありません。「どの技術が、どの市場に適用できるか」という仮説をスタートアップと共に検証し、その中で「活用が難しい市場」を見極めることも、非常に価値のある情報です。
── 事業会社にとっては、成長の可能性がある市場を見極めることも、CVCの大きな価値になり得るということですね。
松本氏:まさにそうです。例えば、特定の技術を活かせる市場が3つあったとして、スタートアップとの協業を通じて「この市場では技術が活かしにくい」という結論が出た場合、それだけでも企業にとっては非常に有益な情報です。どこにリソースを集中させるべきかを見極める材料となるため、CVCの投資判断だけでなく、事業戦略の意思決定にも活用できます。
オープンイノベーションの取り組みが続かない理由の一つに、「目に見える大きな成果が生まれないからやめてしまう」というケースがあります。しかし、実際には日々の活動を通じて多くの貴重な情報が蓄積されているのです。だからこそ、シナジー創出のプロセスを適切に可視化し、企業の意思決定に役立つ形でフィードバックすることも、CVC運営の重要なポイントになります。短期的な成功だけにとらわれず、長期的な視点でシナジーを生み出す取り組みが求められると考えています。
後編へ続く・・・https://expact.jp/crewwcapital-interview3/
<本記事で紹介させていただいたCreww Capital様>
会社名:Creww Capital株式会社
所在地:〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-19-9 4F
HP:https://creww.in/global/ja/capital
CONTACT:https://spot.creww.me/creww-capital/contact