
変動金利型住宅ローンと日本銀行の利上げ
最近、日本銀行が短期金利を引き上げることを決定しました。これにより、変動金利型住宅ローンの基準金利も上昇する可能性があります。特に、変動金利型ローンを利用している人々にとっては、返済額が増加する可能性が懸念されています。ここでは、その影響と対応策について詳しく解説します。
日本銀行の利上げとその背景
日本銀行は、1月23日・24日の政策決定会合で短期金利を0.25%から0.5%に引き上げることを決定しました。この決定の背景には、賃金や物価の安定的な上昇、海外情勢の落ち着きなどがあります。
変動金利型住宅ローンの現状
住宅ローンは、変動金利型と固定金利型に分かれます。国土交通省の調査によると、2022年度の新規貸出では約78%が変動金利型を選択しています。変動金利型は、短期プライムレートに連動しており、短期金利が上がると基準金利も引き上げられることがあります。
返済額への影響
変動金利型住宅ローンの基準金利が上がると、返済額が増加する可能性があります。しかし、後述する 5年ルールと125%ルールによって、返済額の見直しは5年ごとに行われ、新しい返済額は旧額の125%以内に抑えられます。これにより、月々の返済額はすぐには大きく変わらないかもしれませんが、総支払額は増加する可能性があります。
そもそも金利とは何か?
そもそも金利とは何か?
住宅ローンを組もうと考えたとき、皆さんは何を基準に金融機関を選ぶでしょうか?
- 全国的に有名な銀行
- 担当者の対応が良かった銀行
- 給与口座がある地元の地方銀行や信用金庫
全国的に知名度の高い銀行を選ぶ人もいるでしょう。中には、「担当者の感じが良かった」という理由で選ぶ場合もあるかもしれません。はたまた、もともと給与口座がある地方銀行や信用金庫を選ぶという考え方もあるでしょう。
上記のように選択基準はいろいろあると思いますが、おそらく皆さんが強く関心を持つ要素は金利ではないでしょうか?
金利とは、お金を借りた際にその対価として支払う利息のことです。
金融機関が店頭やホームページで示しているのは、上図の【年利】にあたります。
例えば、3,000万円の住宅ローンで金利が1%変わると、返済総額は500万円以上も変わります。「数パーセントの違いなんて…」と軽視せず、しっかりと金利について理解し、金融機関を選ぶことが大切です。
金利の種類・特徴
金利は大きく、以下の2種類にわけることができます。
皆さんが住宅ローンを借りる際には、どちらかの金利タイプを選択しなくてはなりません。
いざという時に困らないためにも、この記事でそれぞれの違いや特徴をつかんでおいてください。
固定金利
あらかじめ決められた期間において、金利を固定することができます。固定期間中は世の中の金利がどれだけ上がっても(または下がっても)、金利が見直されることはありません。
- 期間選択型:固定期間を3年、5年、10年などから選択
- 全期間固定型:借入全期間を固定金利とする
期間選択型の場合、契約時に固定期間を3年、5年、10年といったように選ぶことができます。
これに対して、借入の全ての期間を固定金利とする商品を全期間型と呼んだりします。
<メリット>
- 市場金利の上昇による影響を受けない
- 返済額が一定なので、計画を立てやすい
- 心理的な安心感がある
<デメリット>
- 市場金利が下がっても、金利は下がらない
- 変動金利よりも金利水準が高め
変動金利
返済期間中、半年ごとに金利が見直されるタイプです。一般的に固定金利よりも低い利率が設定されています。
金利が下がれば返済額も減り、上がれば増える仕組みですが、返済額の変更は5年ごと(5年ルール)です。また、見直し後の返済額は前回の125%まで(125%ルール)という上限が設けられています。
<メリット>
- 固定金利よりも低金利
- 市場金利の低下により、返済額が減る可能性
<デメリット>
- 市場金利の上昇により、返済額が増えるリスク
- 金利変動による不安がある
住宅ローンは「複利計算」
住宅ローンは複利で計算されます。つまり、利息が元本に組み込まれ、その元本に対してさらに利息が計算されます。元本が大きい初期段階で、いかに低金利で借りるかが重要です。
ポイント:
- 複利効果により、利息が雪だるま式に増える
- 当初の金利選択が総返済額に大きく影響
- 専門家やローン電卓を活用してシミュレーションを
住宅ローンの借替を検討する
最近はオンラインで申し込みができるネット銀行も増えています。ネット銀行は金利が低い一方、手続きに時間がかかる場合もあります。対面でのサポートを希望する場合は、店舗を持つ銀行がおすすめです。
リアル店舗を持っており、対面で対応してくれる銀行の中では三井住友信託銀行が一番金利が安いと思います。またネットによる返済などサービスも充実しており、ネット銀行には抵抗のある方にはオススメです。
銀行店舗に来店するのも煩わしいとか、近くに三井住友信託銀行がない場合は、地元の地方銀行や信用金庫に相談しましょう。場合によっては訪問により対応してくれるケースもあります。
また借替を検討されている方には登記費用や住宅ローン利用手数料、保証料など金利メリット以外にも加味するファクターがたくさんありますので合わせて専門家に相談してください。
実際に選ばれているのは?
では、世の中の皆さんはいったいどちらの金利タイプを選んでいるのでしょうか?
出典:住宅金融支援機構 「2023年度 民間住宅ローン利用者の実態調査」
図をみていただくとわかるように、近年では半数以上の人が変動金利を選んでいるようです。短期的に見た場合には変動金利のほうが低金利に設定されているため、変動を選ぶ人が多いのでしょう。また金融機関側も、特別の事情が無い場合には変動金利をオススメしているようです。
絶対的な正解はありませんが、皆さんもぜひ参考にしてみてください。
金利タイプの選び方
自分に合った金利タイプを選ぶためのポイントをまとめました。
- 将来の収入見通し:収入が安定しているなら変動金利も検討
- リスク許容度:リスクを避けたいなら固定金利が安心
- 返済期間:短期返済を目指すなら変動金利で金利メリットを享受
- 市場の金利動向:経済ニュースをチェックして判断
金利変動への対応策
返済額が増加しても余裕を持って返済できるように、日頃の家計管理を徹底しましょう。特に、総支払額が増加する可能性があるため、予定していた返済プランを見直すことが重要です。
5年ルールと125%ルールについて
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5年ルール
基準金利の見直しは基本的に半年に一度ですが、元利均等返済方式では返済額の見直しは5年ごとに行われます。 -
125%ルール
基準金利の見直しにより返済額が増加しても、新しい返済額は旧額の125%以内に抑えられます。
これらのルールは、元金均等返済方式には適用されないため、ローンの種類によっても影響が異なります。
専門家への相談
住宅ローンは人生の大きな選択です。金利タイプの選択や借り換えの検討など、不安な点があれば専門家に相談することをおすすめします。ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーなど、専門知識を持つプロにアドバイスを受けることで、より安心して住宅ローンを組むことができます。
将来の金利動向は予測が難しいですが、変動金利を選択した場合、市場の金利動向を常に注視し、必要に応じて対応できる準備が必要です。
返済額が増加しても余裕を持って返済できるように、日頃の家計管理を徹底し、予定していた返済プランを見直すことが重要です。また、専門家に相談することも有効です。
日本銀行の利上げの影響
短期金利の引き上げ
日本銀行の短期金利引き上げは、変動金利型住宅ローンの基準金利を上昇させる可能性があります。これにより、約78%の新規貸出が変動金利型を選択している住宅ローン利用者に影響が及ぶ可能性があります。例えば、35年間で35百万円を借り入れた場合、金利が0.5%から0.65%に上昇すると、月々の返済額が約3,000円増加する可能性があります。
まとめ
日本銀行の利上げにより、変動金利型住宅ローンの基準金利が上昇する可能性があります。5年ルールや125%ルールによって月々の返済額はすぐには大きく変わらないかもしれませんが、総支払額が増加する可能性があるため、家計管理を徹底し、予定していた返済プランを見直すことが重要です。
将来の金利動向は誰にも予測できません。そのため、「固定金利と変動金利のどちらが良いか」という問いに絶対的な答えはありません。
重要なのは、住宅ローンを組んだ後も市場の金利動向を注視し続けることです。特に変動金利を選択した場合、金利変動リスクを常に意識し、必要に応じて対応できるよう準備しておきましょう。