会社設立準備コラム 法人設立登記編
本日は『商号』と『本店所在地』、『事業目的』が決まった後で、『法人設立』する際に、具体的にどういう手順を踏む必要があるかということをご説明します。まだ『商号』や『本店所在地』、『事業目的』などが決まっていない場合は以下の記事を参照ください。
会社設立準備編の記事一覧
法人設立とは
まず法人とは、民法および会社法に規定されています。本店の所在位置を管轄する法務局にて登記申請を行うことで会社を設立することが可能です。
- 民法 第34条(法人の能力)
- 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
- 会社法 第3条(法人格)
- 会社は、法人とする。
会社が「法律上、権利や義務の主体となり得る地位・資格」のことを「法人格」といいます。自然人と同様に、会社も権利能力を有しています。
「法人は、法律によらなければ成立することができない」(民法33条)のですが「会社は、すべて法人」とされ、「設立登記」をすることによって法人格を得ます。そして、会社の法人格は法令の規定に従い、定款に定めた目的の範囲内において認められるものです。
法人設立の流れ
会社設立の流れと手続きの概要をご説明します。
①商号・本店所在地 決定
商号・本店所在地の決定については下記の記事をご参照ください。
②印鑑作成
商号と本店所在地が決定したら印鑑を発注しましょう。即日出荷のところもありますが、数日かかるケースもありますので早めに発注いただくのがよいかとも思います。
ちなみに印鑑は実印、銀行印、角印、場合によっては認印が必要になる会社もあるかもしれません。使い分けとしては、実印は契約書への押印や融資取引、銀行印は口座の開設および入出金等に利用します。同一の印鑑でも登録は可能ですが、事務員さん等に銀行への引き出しをお願いする場合に実印を預けるのは不安ですよね?実印と銀行印は分けて作られることをオススメします。
銀行での口座開設や融資取引を希望される会社では、横判(ゴム印)をつくることをオススメします。会社の横判はバネ付きのクッション性が高いもので、a.郵便番号と登記住所、b.会社の商号(法人格含む)、c.役職および代表者名、d.電話番号の4段を分割できるもので作りましょう。横判(ゴム印)で銀行での口座開設や融資取引の押印時間を大幅に短縮できます。また契約書等にも押印することができ、書き損じ等を大幅に軽減できます。
③定款作成(商号・本店所在地・出資金・発行可能株式総数等)
定款とは会社の目的や業務執行、組織などの基本規則を記したものです。定款は、それに記されているかどうかで法的効力が大きく異なる内容も含まれており、会社を設立する手続きの際には必ず作成・認証されなければなりません。以前は書面による定款のみでしたが、PDF化された電子定款が認められるようになりました。
電子定款のメリットは、紙の定款の作成時には必要な印紙代がかからないことです。印紙税は4万円にもなりますので経費節約になります。
電子定款は認証申請を一度してしまうと、訂正や再申請に手間がかかりますので、注意してください。株式会社を設立する際には、再度約5万円の申請料を支払うことにもなりかねませんので、訂正がないように、念には念を重ねておくことが必要です。
④定款認証
法務省登記・供託オンライン申請システム上で無料配布されているPDF署名プラグインソフトを使って、保存した電子証明書を電子定款に埋め込み、電子定款を送信します。なお、電子定款への電子署名は代表者の署名のみで有効となります。
電子定款の送信後、公証役場で定款を受け取る際には、あらかじめ電話で訪問日時を伝えておく必要があります。また、以下の物を持っていかないと、定款を受け取れません。
・USBメモリなどの記録媒体
・電子定款をプリントアウトしたもの2通
・発起人など、全員の印鑑証明書
・電子署名をした発起人以外の委任状
・認証手数料 5万円
・身分証明書
・印鑑
以上のものを持って公証役場に行き、定款を受け取りましょう。この手順を終えることで、無事、定款の作成が完了します。
ここまでの作り方を確認して、手順が大変だと思われた人も多いかもしれませんが、専門家や電子定款の作成代行サービスなどもあるようです。自身で行うのが難しく感じた場合は、プロに依頼するのもひとつの手です。
会社設立登記の依頼は、意外と費用は高くありません。基本的には1万円から数万円の費用で引き受けてくれる業者がほとんどですので、依頼をしたほうが、確実で安心かもしれません。
⑤出資金払込み
はじめに用意するのは「発起人個人の銀行口座」です。資本金払込をする時点ではまだ会社は設立されていないので、会社の銀行口座は存在しません。そのため用意するのは発起人個人の銀行口座となります。発起人が複数人いる場合は発起人代表の銀行口座を使用します。
銀行口座の種別は普通預金口座で問題ありませんが、通帳コピーを作成する必要があるので、ネット銀行やインターネット支店ではなく、通帳タイプの銀行口座を用意しましょう。また会社設立にあたって新たに銀行口座を開設する必要はなく、発起人が現在使用している銀行口座で問題ありません。
銀行口座が用意できたら次は「資本金の振り込み」です。このときに重要な点は「資本金の預け入れ」ではなく「資本金の振り込み」である点です。各発起人は設立事項の段階で、誰がいくら出資するかを決められています。この時決めた金額と同額かそれ以上の金額を、各発起人が確かに払っているかどうかを証明するためには、通帳に払い込んだ発起人の氏名が記載される「振込」でなくてはならないのです。ただし発起人が1人の場合は、預け入れでも問題ありません。
通帳コピーは各発起人が銀行口座に所定の金額を確かに振り込んだということを証明するために作成します。この時のために発起人個人の銀行口座は通帳のある銀行口座でなくてはなりません。通帳のうち、コピーするのは次の3カ所です。
・表紙
・表紙裏
・振り込み内容が記帳されているページ
表紙裏は支店名・支店番号、銀行印などが記載されているページを指します。コピー用紙のサイズに特に決まりはありませんが、会社設立登記の書類と同じA4で作成するのが一般的です。また「振り込み内容が記帳されているページ」に関しては、わかりやすいように発起人の名前と金額にマーカーで印をつけておきます。
⑥登記書類作成
どこの事務所に依頼するにしても、まずは設立する会社の基本情報を伝える必要があります。商号(社名)や本社所在地、事業の目的など手続きに必要な書類に記載する情報です。既に定款を作成・認証されているようであればそちらを司法書士に提出ください。もしくは、会社設立支援をインターネット上で完結できるサービスも多数出ておりますのでそちらもご検討ください。
書類作成が終わったら、会社の印鑑と登記費用を持って事務所に行きます。仕上がった書類を確認しながら押印をし、登記費用を司法書士に預けます。
⑦登記申請
司法書士が法務局に出向き会社設立の登記申請を行います。この司法書士が会社設立の登記申請を行った日が「会社設立日」となります。
ここまでの流れを踏むと、ついに設立登記が完了です。申請した法務局によって異なりますが、目安としては登記申請から1週間〜2週間後となります。設立登記を完了させると「登記簿謄本」や「会社の印鑑証明書」を取得できるようになり会社を設立したと認定されます。
まとめ
法人登記が完了し、商業登記簿謄本を取得したら銀行口座の開設を行いましょう。銀行口座がないと、取引先への送金や売上の受け取りができません。
しかし、法人の銀行口座の開設は個人の口座開設と比べても審査が厳しく、なかなか開設できないということも起こり得ます。
審査の厳しいメガバンクでの口座開設よりは、即日口座開設が可能な最寄りの信用金庫や地方銀行での口座開設をオススメします。ジャパンネット銀行とは利便性が高いですが、口座開設まで数週間時間を要するケースがありますのでご注意ください。まずは地元の金融機関で口座開設したのちネット銀行等の口座開設を行うようにしましょう。
以上、ご覧いただきありがとうございました。