骨太の方針とは
政権の重要課題や翌年度予算編成の方向性を示す方針で、正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」。各省庁の利害を超えて官邸主導で改革を進めるため、首相が議長を務める経済財政諮問会議で毎年6月ごろに策定されます。小泉政権時の2001年度に始まり、かつての宮沢喜一財務相が同会議の議論を「骨太」と表現したことから、骨太の方針と呼ばれるようになりました。
【骨太方針2023】スタートアップ企業のための経済財政運営と改革の基本方針2023まとめ
2023年度の「骨太の方針」は経済、社会、ジェンダーの3分野を重視し、2023年6月に閣議決定されました。この方針は5つの章で構成されています。
第1章では、新しい資本主義の下での経済社会の変革と持続可能な成長を目指す考え方が示されています。賃金と物価の好循環を促進するための政策、人への投資、国内投資の促進などが提案されています。
第2章では、労働市場改革による構造的賃上げの実現、人への投資の強化、投資の拡大と経済社会改革の実行、少子化対策・子育て政策の抜本強化、地域・中小企業の活性化などが提案されています。社会政策では、少子化対策と「子供の未来戦略方針」の策定を予定し、岸田首相は子ども・子育て世帯への切れ目ない支援と財源の確保・実行について強調しています。
第3章では、国際環境変化への対応や防災・減災、国土強靱化、復興、国民生活の安全・安心についての方針が示されています。防衛面では、北朝鮮の脅威や台湾問題を考慮し、防衛施設の整備や革新的な装備品の研究開発に取り組むことが明記されています。また、サイバーセキュリティも重視され、対応能力の向上と「能動的サイバー防御」システムの実装が計画されています。
第4章では、持続可能な経済財政運営や社会保障制度の構築、社会資本整備の強化、教育・研究活動の推進についての方針が示されています。経済社会の活力を支えるために、経済財政の適切な運営や社会保障制度の充実、教育・研究活動の推進が重要視されています。
第5章では、当面の経済財政運営と予算編成に向けた考え方が示されています。マクロ経済運営や持続的な成長を目指すために、政府と日本銀行の緊密な連携や投資の拡大、労働市場改革、少子化対策の強化などが取り組まれる予定です。
2023年度の「骨太の方針」におけるスタートアップ関連のトピックスは、以下の通りです。
スタートアップの育成: スタートアップの育成は日本経済の復活に不可欠とされ、岸田首相の看板政策「新しい資本主義」の柱にも掲げられています。新しいビジネスモデルや技術を生み出すスタートアップが、経済の活性化に大きく寄与するとの考えに基づいています。
社会的起業家の支援強化: 政府は、気候変動や少子化などの社会課題の解決に取り組む「社会的起業家」の支援強化を計画しています。これは、社会的な課題解決に向けた新しいビジネスモデルを提供する企業や個人を指します。特に社会課題の解決に寄与するスタートアップに対しては、支援を手厚くする姿勢を明確にする予定です。これにより、社会的な課題解決に向けた取り組みが加速されることが期待されます。
認証制度の創設: 社会的起業家を認証する制度を創設し、資金調達がしやすい環境を整備することを検討しています。これにより、社会的起業家が事業を展開しやすい環境が整備されることが期待されます。
休眠預金の活用: 10年以上出し入れがない休眠預金を利用し、社会に有益な取り組みを行うスタートアップ企業の支援に活用することも計画しています。これにより、新たな資金源がスタートアップ企業に提供されることになります。
政府調達の見直し: 政府はスタートアップ企業が政府調達に参入しやすい環境整備を進めている。具体的には、政府は調達システムを見直し、スタートアップ企業がより容易に参入できるようにする。入札が不成立となった場合などには、経済産業省が認定したスタートアップ企業(J-Startup)を含む特定パートナーと、入札を経ずに直接契約(随意契約)を結ぶことを奨励する方針。スタートアップが持つ独自の技術やサービスは、行政の業務効率を向上させる可能性があると考えている。経産省は今秋に通達を改正し、各府省に対応を促す予定。
ジェンダー政策では、「女性版骨太の方針2023」を策定し、女性の社会進出の促進、多様性の確保、イノベーションの推進を目指しています。
企業の女性役員の比率を2030年までに30%以上にし、そのための短期目標設定と行動計画を策定しています。また、女性の所得向上と経済的自立の推進、労働の多様性と柔軟性の促進、非正規雇用の正規化、女性のデジタルスキルの向上なども進められる見込みです。
骨太方針2022
2022年(令和4年)6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(骨太方針2022)が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されました。人や社会、環境に対する内外の課題解決への取り組みに加えて、スタートアップ企業支援にも触れられており、こちらの記事ではスタートアップ支援についての部分をピックアップします。
骨太方針2022の考え方
新型コロナウイルス感染症やロシアのウクライナ侵略、権威主義的国家による民主主義・自由主義への挑戦や気候変動問題など日本を取り巻く環境に構造変化が生じています。日本においては、回復の足取りが依然脆弱な中での輸入資源価格高騰による海外への所得流出、コロナ禍で更に進む人口減少・少子高齢化、潜在成長率の停滞、災害の頻発化・激甚化など、内外の難局が同時に、そして複合的に押し寄せており、こうした社会課題の解決に向けた取組、それ自体を付加価値創造の源泉として成長戦略に位置付け、官民が協働して重点的な投資と規制・制度改革を中長期的かつ計画的に実施することにより、課題解決と経済成長を同時に実現しながら、経済社会の構造を変化に対してより強靱で持続可能なものに変革する「新しい資本主義」を起動することで資本主義をバージョンアップし、自由で公正な経済体制を一層強化する必要があるという考え方のもとに作成されています。
「経済財政運営と改革の基本方針2022」において示されていること
①当面の難局を乗り越えるためのマクロ経済運営の方針を示す
②成長と分配をともに高める「人への投資」を始め、科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップ企業への投資、グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資を柱とする「新しい資本主義」の実現に向けた重点投資分野についての官民連携投資の基本方針を示す
③新しい資本主義が目指す民間の力を活用した社会課題解決に向けた取組や多様性に富んだ包摂社会の実現、一極集中から多極化した社会をつくり地域を活性化する改革の方向性を示す
④世界に開かれた貿易・投資立国であることをこれからも維持しつつ、厳しさを増す東アジア情勢や権威主義的国家の台頭など国際環境の変化に応じた戦略的な外交・安全保障や同志国との連携強化、経済安全保障等についての方向性を示す
⑤強靱で持続可能な経済社会に向けた防災・減災、国土強靱化の推進や東日本大震災等からの復興、国民生活の安全・安心に向けた基本的な方針を示す
⑥政策遂行の基盤となる強固で持続可能な経済・財政・社会保障制度の構築に向けた経済・財政一体改革の取組方針を示し、短期と中長期の整合性を確保した経済財政運営の方針と令和5年度予算編成の考え方を提示する
スタートアップへの投資
本書の第2章「新しい資本主義に向けた改革」の中でスタートアップ企業への投資について触れられています。簡略して重要なポイントをピックアップします。
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スタートアップ企業は、経済成長の原動力であるイノベーションを生み出すとともに、環境問題や子育て問題などの社会課題の解決にも貢献しうる、新しい資本主義の担い手である。こうしたスタートアップ企業が新たに生まれ、飛躍を遂げることができる環境を整備することにより、戦後の日本の創業期に次ぐ「第二創業期」の実現を目指す。このため、実行のための司令塔機能を明確化し5年10倍増を視野にスタートアップ育成5か年計画を2022年末に策定し、スタートアップ政策を大胆に展開する。
具体的には、スタートアップ企業が直面する資金調達の困難さの解消を図るため、新規上場の際に十分な資金調達を行うことを可能にすべくIPO10プロセスの見直しを進めるとともに、事業化までに時間を要するスタートアップ企業の成長を図るためのストックオプション等の環境整備を行う。また、海外のベンチャーキャピタルの誘致も含めて、国内外のベンチャーキャピタルに対する公的資本の有限責任投資等による投資拡大を図るとともに、エンジェル投資家等の個人や年金・保険等の長期運用資金がベンチャーキャピタルやスタートアップ企業に循環する流れの形成に取り組む。加えて、個人保証や不動産担保に依存しない形の融資への見直しや事業全体を担保とした成長資金の調達を可能とする仕組みづくり等を通じて、成長資金の調達環境を整備する。
あわせて、起業を支える人材の育成や確保を行う。具体的には、成長分野において前人未踏の優れたアイデア・技術を持つ人材に対する支援策を抜本的に拡充するとともに、家庭や学校とは別に子供の才能を発掘・育成する場の整備を支援する。情報開示等を通じた副業・兼業の促進等により円滑な労働移動を図るほか、大学等の研究者と外部経営人材とのマッチングを支援する。また、スタートアップ企業の経営を支援する専門家等の相談窓口整備を推進する。
スタートアップ企業の研究開発や販路開拓を支援するため、既存企業がM&Aや共同研究開発等によりスタートアップ企業の有する知見を取り入れるオープンイノベーションの活性化を図るとともに、SBIR制度11の強化を始めとし、公共調達の活用を推進する。ベンチャーキャピタルとも連携した支援の拡充や創薬ベンチャーへの支援の強化を行うほか、革新技術の研究開発とスタートアップ創出を行う拠点づくりを海外の大学等とも連携し、民間資金を基盤として運営される形で進める。
以上のほか、起業拠点の整備を含めて大学等も存分に活用しつつ、知的財産の保護・活用の推進、規制・制度改革等を通じて世界に伍するスタートアップエコシステムを作り上げ、大規模なスタートアップ企業の創出に取り組む。
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スタートアップ企業に対しての期待感が伺える内容です。大胆な投資によって事業へのサポートも期待できるので、スタートアップ企業の皆様は情報を的確に入手して、支援策を活用していきましょう。
https://expact.jp/subsidy2023/
まとめ
2022年、岸田総理のスタートアップ企業の支援策は徐々に形作られてきており、大きな動きやニュースは以下にまとめていきます。
EXPACTでは、特にスタートアップ企業への補助金活用や資金調達を強みとしており、実績・経験も多数ございます。資金調達成功に向けて、パートナーを探している、また詳しく話を聞いてみたいという方はお問い合わせください。