「スタートアップ庁」が創設?関連政策の司令塔組織として期待される可能性
2022年3月4日付の日刊工業新聞より『スタートアップ庁』の創設が報道として出ました。
一般社団法人日本経済団体連合会がまとめるスタートアップ振興に関する提言の最終案が明らかになり、関連政策を一元的に担う省庁横断の司令塔組織として「スタートアップ庁」を創設する可能性が示唆されています。岸田政権下においてスタートアップの強化は重要な施策の位置づけになっており、大規模かつ長期的な成長資金供給のために、国内外の機関投資家や事業会社の投資拡大のための環境整備を行い、スタートアップの成長にかかせない高度な経営人材や技術者を確保すべく、イノベーション人材育成や、国際経験豊かな人材のマッチング支援を強化することが自民党の総合政策集にもまとめられています。
その他GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)など機関投資家によるスタートアップ投資の促進を盛り込み、2027年までにスタートアップ数を約10万社とし、未上場で企業価値10億ドル超の「ユニコーン企業」を約100社とする目標が掲げられ、スタートアップ振興を日本経済活性化の切り札と位置付ける狙いです。
スタートアップ10万社、ユニコーン5年で100社に
経団連は3月11日の会見で南場智子副会長(ディーエヌエー会長)からスタートアップ企業の育成に向けた提言を発表し、現在日本に10社程度のユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)を2027年までに100社に増やすこと、またスタートアップ企業の数を10万社に増やす目標を掲げました。法人設立手続きの完全なワンストップ化など、起業しやすい環境整備を求めた。公共調達部門にスタートアップが入札しやすくするなどの具体策も盛り込み、それらを担う組織を「スタートアップ庁」と位置付けたい狙いのようです。
南場会長のTwitterに詳細も書かれています。
https://t.co/nzvDYv6aAS
こちらの発表について、少し長くなったので画像にして貼ります🙇♀️ pic.twitter.com/MdwKnFE1wy— 南場智子 (@tomochinski) March 12, 2022
経団連発表の【スタートアップ推進ビジョン】記載のスタートアップ庁
経団連(十倉雅和会長)から3月11日発表された提言「スタートアップ躍進ビジョン~10X10Xを目指して」をにあるスタートアップ庁の役割は以下の狙いが記載されています。
スタートアップ振興政策の司令塔(スタートアップ庁等)の創設
国のトップによる「スタートアップ立国」へのコミットメントに基づき、政府スタートアップ振興政策を遂行する司令塔としての機能を果たす組織(スタートアップ庁等)を創設することを提言する。司令塔の役割としては、①「スタートアップ立国」への継続的なコミットメント、②国のスタートアップ振興関連施策の一元的な遂行、③スタートアップに対する国の一元的な窓口が挙げられる。
(1)「スタートアップ立国」への継続的なコミットメント
これまで政府内の様々な省庁、部局でスタートアップ振興策の検討が行われてきたが、一過性の取り組みや類似した検討を繰り返した挙句、十分な成果を上げられずに現在に至る。こうしたことを繰り返さぬよう、「スタートアップ立国5か年計画」に推進すべき施策を体系的に定め、KPIを置いて司令塔組織にて実施状況をモニタリングすべきである。また、SBIRや公共調達におけるスタートアップの活用目標の設定機能、さらにその実現状況が芳しくない省庁への勧告権を司令塔組織へ付与する等、実効性の担保を図るべきである。
(2)国のスタートアップ関連施策の一元的な遂行
本提言に記載の各施策は非常に幅広く、所管する部局も各省庁にまたがっていることから、効果的な実行にあたっては、施策を一元的に方向付けし、推進する体制の構築が不可欠である。しかしながら、現在は、スタートアップに関する政策が経済産業省・文部科学省・内閣府はじめ各省庁に分かれ、予算・人材・情報発信面で分断・分散が生じており、一元的な施策実施が可能であるとは言い難い状況にある。司令塔組織に以下の施策を統合し、重複を廃し施策間の有機的な連携を図ることで予算・人材を有効に活用し、情報発信力も強化すべきである。
【機能統合すべき既存施策の例】
- 内閣府:スタートアップエコシステム拠点形成事業、規制のサンドボックス制度
- 文部科学省 次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)
- 経済産業省 グローバル起業家等育成プログラム、オープンイノベーション促進税制、エンジェル税制、J-Startupプログラム、新事業特例制度
- 総務省:起業家甲子園・起業家万博
- スタートアップ支援機関連携協定(Plus “Platform for unified support for startups”)#91
(3)スタートアップに対する国の一元的な窓口
現状、スタートアップの側からは、各省庁が提供する支援策や規制制度に関する相談窓口が分散しているために、必要な支援や相談をどこで受けられるかがきわめてわかりにくい。結果として必要な支援が必要なところに届かない。司令塔組織において、スタートアップ振興に関する政府の全ての支援策を一元的にわかりやすく発信するとともに、スタートアップが何か困ったことがあればまず駆け込み、相談から申請、回答まで一気通貫して行えるワンストップ窓口を、オンラインも含めUI/UXにも配慮して設置すべきである。
岸田政権下で強化されるスタートアップ施策
岸田政権は、スタートアップ創出に力を入れており、「スタートアップ5カ年計画」を2022年6月までに策定する方針が出ています。経団連としても同提言を基に計画策定に協力する方針のようです。
3月中旬をめどに現状のスタートアップに関する政策が経済産業省や文部科学省、総務省、内閣府などにまたがり、予算や人材、情報発信面で分断・分散が生じ、一元的な施策が実施しにくいとして司令塔組織の創設の位置づけで『スタートアップ庁』が設立される可能性があり、実現すればスタートアップ振興に関する政府の支援策を一元的に発信するとともに、相談から申請、回答まで一気通貫して行えるワンストップ窓口が生まれる可能性があります。
スタートアップのM&Aも今後強化の方針
岸田首相はスタートアップの注力を掲げていますが、その中でオープンイノベーションの手段として「大企業等の事業会社とスタートアップのM&A」も今後注目が高まるものと予想されます。
イノベーションの担い手であるスタートアップは社会にとって重要な存在であり、今後の新しいビジネスがスタートアップを中心として次々に創造されていくことが期待されているためです。
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岸田総理のスタートアップ支援活動
2022年は「スタートアップ創出元年」として、官民を挙げてのスタートアップ支援強化を岸田総理大臣自身が表明しており、2022年2月10日に日本最大級のイノベーションセンターであるCIC Tokyoを視察するとともに、スタートアップ4社との意見交換を実施しました。視察では、イベントスペースやコワーキングスペースをはじめとしたコミュニティ構築のための様々な工夫を見学しました。意見交換では、起業家をはじめとした人材育成、政府支援や政府からの調達の意義について議論を行っています。
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スタートアップのための補助金制度(通年)
2022年に個人事業主や創業間もないスタートアップ、ベンチャーなども利用できる補助金の1つである 「ものづくり補助金(通称:もの補助)」は通年の募集とみられます。令和4年度は応募期間を約2ヶ月、審査期間を約1ヶ月として、6月・9月・12月・3月の四半期ごとに採択発表が行われる予定です。不採択でも、事務局に不採択理由を確認した上で複数回のリライト、再申請が可能となっておりますので、一度であきらめず採択されるまで応募にチャレンジしましょう。
IT導入補助金とは、日々のルーティン業務を効率化させるITツールや情報を一元管理するクラウドシステム等、生産性の向上のため業務プロセスの改善と効率化に資する汎用的なITツールの導入に活用できる補助金です。特に、複数の業務⼯程を広範囲に⾮対⾯化する業務形態の転換が可能なIT ツールの導⼊を⽀援します。
個人事業主や創業間もないスタートアップ、ベンチャーなどの小規模事業者が経営計画を作成して取り組む販路開拓等に加え、賃上げや事業規模の拡大(成長・分配強化枠)や創業や後継ぎ候補者の新たな取組(新陳代謝枠)、インボイス発⾏事業者への転換(インボイス枠)といった環境変化に関する取組に対して支援を受けることが可能です。
まとめ
スタートアップ庁に関するニュース、報道はまだ少なく公式の発表は2022年3月10日時点ではまだありません。
今後の情報発表があり次第更新して参ります。