
はじめに
――「使われる」から「語られる」プロダクトへ
Product-Led Growth(PLG)は、スタートアップの成長戦略としてすでに広く知られるようになりました。プロダクトそのものを起点にユーザーを獲得し、利用体験を通じて価値を理解してもらい、その延長線上で自然な拡張やアップセルを生み出していくアプローチです。営業やマーケティングの前にプロダクトが立つ、という点で、非常に合理的で再現性の高いモデルでもあります。
一方で、PLGを実践する企業が増えるにつれ、ある共通した壁に突き当たるケースも目立つようになってきました。利用開始のハードルは下がっているものの、継続率が思ったほど伸びない。アクティブユーザー数は増えているのに、プロダクトに対する熱量が高まらない。さらには、価値がユーザー自身の言葉として整理されず、結果として紹介や口コミが生まれにくい、といった課題です。
こうしたPLGの限界を補完し、次の段階へ押し上げる考え方が、Community-Led Growth(CLG)です。
PLGの本質的な強みと、その裏にある限界
PLGの最大の強みは、プロダクト体験そのものが営業やマーケティングの役割を果たす点にあります。無料トライアルやフリーミアム、セルフオンボーディング、Usage-Based Pricingといった仕組みは、いずれもユーザーが「誰かに説明されなくても、自分で価値を理解できる状態」を作るためのものです。
しかしこの構造は、本質的に「個人とプロダクトの一対一の関係」に依存しています。そのため、学習コストが高いプロダクトや、使い方次第で成果が大きく変わるプロダクトでは、体験が分断されやすくなります。ユーザーが価値にたどり着けるかどうかが、その人の試行錯誤に委ねられてしまうのです。
この分断を埋める役割を果たすのが、コミュニティです。
Community-Led GrowthがPLGをどう補完するのか
PLGが「使ってみて理解する」モデルだとすれば、Community-Led Growthは「他者の使い方を見て理解する」モデルだと言えます。ユーザー同士が活用事例を共有し、つまずきやすいポイントを補完し合い、成果の出た使い方を言語化する。こうしたやり取りを通じて、プロダクトの価値は個人の体験を超えて、集合知として蓄積されていきます。
ここで重要なのは、価値が企業から一方的に語られるのではなく、ユーザーの言葉で再定義されていく点です。これはPLG単体では生まれにくい効果です。
Community × PLGが生む成長ループ
PLGとCommunity-Led Growthを組み合わせると、成長は直線ではなく循環構造を持ち始めます。低摩擦で利用が始まり、コミュニティを通じて活用知が共有されることで、利用価値の理解が深まります。その結果、継続率や利用頻度が向上し、成果事例が生まれやすくなります。そして、その成果が再び共有されることで、新規ユーザーにとっての参入障壁が下がっていく。
このループが回り始めると、企業が細かく説明しなくても、プロダクトが「どう使われ、なぜ価値があるのか」が自然に伝わる状態に近づいていきます。
なぜ「コミュニティ」がPLGに効くのか
コミュニティがPLGに効く理由の一つは、オンボーディングを分散できる点にあります。PLGではオンボーディング設計が極めて重要ですが、すべてをUIやチュートリアルで完結させるには限界があります。コミュニティがあれば、「この機能はこう使うと良い」「自分はこうやって成果が出た」といった生の知見が自然に補完されます。
また、コミュニティは利用の“正解”を可視化する場でもあります。暗黙知だった成功パターンが共有されることで、ユーザーは迷わず価値に到達しやすくなります。さらに、そこで生まれる要望や違和感は、実際の利用文脈に根ざしているため、プロダクトの進化にも直結します。結果として、PLGに不可欠な「本当に使われる機能」への集中が可能になります。
うまく機能している企業の共通点
Community × PLGが機能している企業には、いくつかの共通した設計思想があります。コミュニティをサポート組織の延長として扱わず、参加を義務化しない。そして、貢献が自然に可視化され、ユーザーの言葉がマーケティングやプロダクト改善に再利用されていることです。
特に重要なのは、「コミュニティを管理しようとしない」姿勢です。場を整え、流れを作ることは必要ですが、コントロールし始めた瞬間に熱量は下がります。
よくある失敗パターン
よくある失敗の一つは、「コミュニティを作ればPLGが回る」と考えてしまうことです。場を用意しただけでは何も起きません。初期は運営側が会話の種を丁寧に育て、価値あるやり取りが生まれるまで支える必要があります。
また、売上導線を前に出しすぎるのも危険です。PLGと相性が良いからこそ、商業色が強くなると信頼を失いやすくなります。さらに、短期的な数値KPIで評価しすぎると、コミュニティ本来の価値を見誤ります。効果は、継続率やNRRといった遅行指標として現れるものです。
PLGの次の進化形としてのCommunity
PLGは「プロダクトが売る」モデルでした。Community-Led Growthを組み合わせることで、それは「プロダクトとユーザーが一緒に売る」モデルへと進化します。
競争が激しい市場では、機能差はすぐに埋まります。最後に残る差は、使い方の知と関係性です。
まとめ
Community-Led Growth × PLGは、短期的な成長を爆発させる戦略ではありません。しかし、継続率やNRR、自然な拡張、そしてブランドの耐久性といった、スタートアップにとって本当に重要な指標に、静かに、しかし確実に効いてきます。
PLGを「獲得の仕組み」で終わらせず、長く使われ、語られるプロダクトへ進化させられるか。その鍵を握るのが、Community-Led Growthです。
参考資料
・Community Led Growth(コミュニティ主導の成長) ––みんなで組織を変える力の価値と未来の可能性を事例に学ぶ | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
・Community-led Growth:コミュニティがテック企業の成長に不可欠なワケ|Tomo Shikata
・Community-Led Growthとは?コミュニティを成長エンジンにする戦略ガイド | FanLoop
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