
経営のリスクは様々なものがありますが、『災害』も避けられないリスクの一つです。
日本は特に災害大国であり、台風、地震、津波、噴火、豪雪、豪雨などその種類も豊富です。
2020年(令和2年)7月3日以降に熊本県を中心に九州や中部地方など日本各地で発生した集中豪雨や、2016年の熊本地震、2011年に起きた東日本大震災や今回のコロナ騒動も自然災害であり、記憶にも新しいのではないでしょうか。
災害時に、国から補助金や助成金が交付されるケースがあります。
あらゆる災害に交付されるものではありませんが、災害被害に遭われた企業様にとって参考になればと思います。
※本記事で紹介する補助事業・助成事業は終了している場合もあります。最新情報の確認をお願いいたします。
追記:令和3年(2021年)8月11日の大雨災害にかかる被災小規模共済契約者対策について
令和3年8月11日からの大雨による災害により被害を受けられた方に独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)から、長野県、島根県、広島県、福岡県、佐賀県及び長崎県の10市7町1村に特別相談窓口が設置されました。被災した小規模企業共済契約者に災害時貸付が適用されます。
<令和3年8月11日からの大雨による災害に関する特別相談窓口(令和3年8月17日現在)>
- 【中国本部】
特別相談窓口(企業支援部企業支援課) - Tel: 082-502-6555
住所: 広島県広島市中区八丁堀5-7 広島KSビル 3階
- 【九州本部】
特別相談窓口(企業支援部企業支援課) - Tel: 092-263-0300
住所: 福岡県福岡市博多区祗園町4-2 サムティ博多祇園BLDG.
- 【関東本部】
特別相談窓口(企業支援部企業支援課) - Tel: 03-5470-1620
住所: 東京都港区虎ノ門3-5-1 虎ノ門37森ビル
災害救助法適用地域(令和3年8月17日時点)
- 広島県
- 広島市(全区)(ひろしまし)
三次市(みよしし)
安芸高田市(あきたかたし)
山県郡北広島町(やまがたぐんきたひろしまちょう)
- 島根県
- 江津市(ごうつし)
邑智郡川本町(おおちぐんかわもとまち)
邑智郡美郷町(おおちぐんみさとちょう)
- 福岡県
- 久留米市(くるめし)
- 佐賀県
- 武雄市(たけおし)
嬉野市(うれしのし)
杵島郡大町町(きしまぐんおおまちちょう)
- 長野県
- 岡谷市(おかやし)
諏訪市(すわし)
上伊那郡辰野町(かみいなぐんたつのまち)
木曽郡上松町(きそぐんあげまつまち)
木曽郡王滝村(きそぐんおうたきむら)
木曽郡木曽町(きそぐんきそまち)
- 長崎県
- 雲仙市(うんぜんし)
セーフティネット保証4号の適用
災害救助法が適用された長野県、島根県、広島県、福岡県、佐賀県及び長崎県の各市町において、大雨の影響により売上高等が減少している中小企業・小規模事業者を対象に、信用保証協会が一般保証とは別枠の限度額で融資額の100%を保証するセーフティネット保証4号が適用されます。
信用保証協会においてセーフティネット保証4号の事前相談が開始されます。
既往債務の返済条件緩和等の対応
長野県、島根県、広島県、福岡県、佐賀県及び長崎県の日本政策金融公庫、商工組合中央金庫及び信用保証協会に対して、返済猶予等の既往債務の条件変更、貸出手続きの迅速化及び担保徴求の弾力化などについて、今般の大雨により被害を受けた中小企業・小規模事業者の実情に応じて対応されます。
小規模企業共済災害時貸付の適用
災害救助法が適用された長野県、島根県、広島県、福岡県、佐賀県及び長崎県の各市町において被害を受けた小規模企業共済契約者に対し、中小企業基盤整備機構が原則として、即日かつ低利で、融資を行う災害時貸付が適用されます。
災害対策に関する法制度とは
日本には災害対策基本法があり、災害対策の一般法になります。平時における防災計画の作成や各種災害予防策から応急対策、復旧・復興に至るまでの総合的な措置について規定されています。
その他、大雨や地震、河川の氾濫など個別の法律が定められています。
災害救助法が適用された地域に講じられる中小企業支援施策
経済産業省では、同法が適用された地域に対し、以下の中小企業支援が実施されます。
①特別相談窓口の設置
・日本政策金融公庫
・商工組合中央金庫
・信用保証協会
・商工会議所
・商工会連合会
・中小企業団体中央会
・よろず支援拠点
・全国商店街振興組合連合会
・中小企業基盤整備機構
・各経済産業局
など様々な場所で相談窓口が設置されます。
②災害復旧貸付の実施
・中小企業事業:別枠で1億5,000万円
・国民生活事業:各貸付制度の限度額に上乗せ3,000万円
③セーフティネット保証4号の適用
・保証割合:100%保証
・保証限度額:一般保証とは別枠で2億8,000万円を融資(普通保証2億円、無担保保証8,000万円)
④既往債務の返済条件緩和等への柔軟な対応の要請
日本政策金融公庫、商工組合中央金庫及び信用保証協会に対して、返済猶予等の既往債務の条件変更、貸出手続きの迅速化及び担保徴求の弾力化などに柔軟に対応するよう要請。
⑤小規模企業共済災害時貸付の適用
貸付限度額:原則として納付済掛金の合計額に掛金納付月数に応じて7割~9割を乗じて得た額と1,000万円のいずれか少ない額)
貸付期間:貸付金額500万円以下は36ヵ月 、505万円以上は60ヵ月
※①・②・④は、災害救助法の適用を受けた市町村がある都道府県が対象。③・⑤は、災害救助法の適用を受けた市町村が対象。
中小企業向けに災害時の対応、法律なども用意がされています。
では、実際に2021年6月現在で補助事業としてどのような補助金・助成金があるのか、以下にまとめました。
なりわい再建資金利子補給事業(2020年・熊本豪雨)
対象者は、熊本県において、2020年(令和2年)7月豪雨により被害を受け、特定の貸付けを受けた被災中小企業者等のうち、中小企業特定施設等災害復旧費補助金(なりわい再建支援事業)事業を完了した被災中小企業者等です。
【事業内容】
なりわい再建支援事業を活⽤し復旧を図る被災中小企業事業者等に対して、補助金の自己負担額部分を日本政策金融公庫による特別貸付及び熊本県による制度融資で借り入れた場合に、最大3年間の利子相当分を熊本県を経由して助成させるというものです。令和3年4月1日からの事業開始になっています。
復興支援アドバイザー制度(2019年東日本台風/2020年7月豪雨)
被災した中小企業者等の復旧・復興に向けた事業を地元支援機関等とともにサポートするため、各種専門家を無料で派遣し、アドバイスを受けられる事業です。
対象者は
(1) 令和元年東日本台風により被災した中小企業者、自治体及び支援機関(主に宮城県、福島県、栃木県、長野県内)
(2) 令和2年7月豪雨により被災した中小企業者、自治体及び支援機関(熊本県内)
です。
【事業内容】
(1) 中小企業者に対して、地元支援機関等とともに、復旧・復興に関するアドバイスが行われる
(例:事業再建計画の策定、資金調達の検討、販路回復・販売力強化、各種補助金申請等に関する助言、その他復旧・復興に向けた様々経営課題に対する助言を受けることができる)
(2) 市町村、商工会、商工会議所等が開催する相談会等にアドバイザーを派遣します。
警戒区域等地域の復興に向けた賑わい回復支援事業(福島第一原子力発電所事故)
対象者は、福島県において警戒区域等が設定された12市町村(=富岡町、浪江町、川俣町、葛尾村、飯舘村、川内村、楢葉町、広野町、双葉町、大熊町、南相馬市、田村市)です。
【事業内容】
福島第一原子力発電所事故に伴い、福島県において警戒区域等が設定された12市町村を対象として、住民の帰還や賑わいの回復を通じて、地元中小企業者等の活性化を図るための「復興イベント」を実施するために必要な経費が助成(上限1,000万円/回)されます。
仮設施設整備事業(東日本大震災)
対象となるのは「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」に定める特定被災区域その他政令で定める地域の市町村です。
※令和3年度以降は、福島第一原子力発電所事故に伴い福島県において警戒区域等が設定された12市町村(=富岡町、浪江町、川俣町、葛尾村、飯舘村、川内村、楢葉町、広野町、双葉町、大熊町、南相馬市、田村市)が対象。
【事業内容】
(1) 東日本大震災で被災した中小企業者等の早期事業再開を支援するため、被災事業者の要望をとりまとめた市町村からの要請に基づき、中小機構が仮設店舗や仮設工場等を整備。
(2) 完成後仮設施設を市町村に無償譲渡し、市町村が具体的な入居条件、入居者を決定して被災事業者に貸与。
各災害案件ごとに、補助金や助成金事業が構成される場合があります。
特徴としては、発生後すぐに出るというよりは、災害発生後に予算が組まれて事業がスタートするので、実際の災害発生から少し時間が経過してでてくるものが普通かと考えられます。
防災に備えて申請、自主防災組織活動事業費補助金とは
一言で言うと、災害に備えることでももらえる補助金です。
防災訓練を実施する自主防災組織に対して、防災資機材の備蓄、防災知識の普及、防災訓練の実施等にかかる経費を補助します。 災害時要配慮者への避難支援体制作りを行う自主防災組織に対して、活動にかかる経費を補助されます。
ご注意いただきたいのはこれは自治体によって微妙に内容や条件が異なります。
例えば、大分県大分市の運営する補助事業の条件は以下になります。あくまで参考程度にご覧下さい。
①防災知識の普及及び防災訓練に要する経費で次に掲げるもの(大分県大分市の場合)
・講習会等の資料、看板、ポスターの作成経費
・講師や訓練指導者等への謝礼
・防災パンフレット作成経費
・防災士養成経費
・水消火器、消火器、ヘルメット(文字代を含む)、誘導旗、メガホン、三角巾、炊き出し用の食材、飲料水(お茶・スポーツドリンク)等の購入経費
・放送機器、テント、椅子、机等の借上げ経費
・会場借上げ経費
・その他防災知識の普及及び防災訓練に要する経費として特に必要と認められるもの
②次に掲げる備蓄資機材の購入及び修繕に要する経費(大分県大分市の場合)
・情報収集伝達用具(携帯ラジオ、トランシーバー、拡声器、メガホン等)
・初期消火用具(消火器、バケツ等)
・救出用具チェーンブロック、チェーンソー、ハンマー、カッター、ゴムボート、バール、ジャッキ、ノコギリ、ペンチ、スコップ、ナタ、オノ、梯子、掛矢、クリッパー、ワイヤロープ等
・救護用具(担架、救急用品、毛布、リヤカー、テント等)
・避難誘導用具(懐中電灯、標旗、警笛、メガホン等)
・給食給水用具(3年以上保存可能な食糧・飲料水、浄水器、ポリタンク、鍋、釜、カッセットコンロ等)
・機材収納用具 収納庫(10 ㎡以下・文字代含む)等
・防災衣服防災服(ベルトを含む)、防寒衣、雨着、ヘルメット(文字代を含む)、帽子、腕章、安全靴、ゴム長靴、皮手袋、軍手等
・その他防炎・防水シート、簡易トイレ、コードリール、ローソク、可搬ポンプ、電池類、発電機、土のう、投光機、ロープ、非常持出し袋、AE
・ガソリン携行缶、カーインバーター、ウェットティッシュ
・その他備蓄資機材で購入又は修繕の必要があると認められるもの
などなど、幅広く災害への備えに補助金が付与されます。自治体によって上限額や申請の流れが異なりますので、各自治体のホームページを必ずチェックして下さい。
まとめ
一番は日常から危機管理体制強化を行い、経営者は企業防災に積極的に取り組み、従業員の安全を保つ責任と義務があります。(労働契約法第5条「労働者の安全への配慮」)
企業にとって災害が起きたとき、情報を正確に収集・分析・判断し、事業継続ができるように動くために補助金の活用や、事前の準備が重要です。
準備が足りていないと感じた方。災害に強い企業はすぐにできるものではありませんので、日ごろから意識を高め、ぜひ他記事もご参照のうえ、備えを整えていただければと思います。
補助金の利用や検討に関しては下記のCONTACT USから是非ご相談ください。