ブランドがどのように社会貢献していくのか、経営者が考えるべきパーパスとは?
VUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況)と呼ばれるこの不確実性の高く変化が激しい時代、先が見えない中で未来を切り拓き、新たな挑戦をし続けるには、自らの志が羅針盤となることも多いです。成長の限界に挑戦している今こそ、企業は少し立ち止まって、旗を掲げ直す必要があると考えています。
企業ブランディングにおいてパーパス(英:Purpose)の意味は、一般的に「何のためにこの会社があるのか」というその企業の意義を問う「Why」を結晶化したものと考えられています。パーパスとは、企業の存在意義や社会にどのようなインパクトを与えるのかを示すものです。
パーパスは、SDGsやESG投資のように外から借りてきた目標ではなく、自らの思いが凝縮されたものでなければなりません。
そのためには、パーパスの本質理解が必須であると考えています。
人は何をするか(What)ではなく、なぜやるのか(Why)に深く共感します。しかしながら「なぜそのビジネスをやるのか?(Why)」の答えを持ってる企業は多くありません。その答えであるパーパスを設定し、パーパスを原点とすることで、意思決定がより長期的で戦略的になる、従業員の意識が変わる、といった変化が起きています。パーパス経営は、VUCA時代に、企業が成長するために欠かせない経営手法となりつつあリます。
まずは、ミッション、ビジョン、バリューといった、類似した用語と区別していきたいと思います。
ミッション、ビジョン、バリューとは?
【ミッション – Mission – 】
企業が存続する目的、達成すべき使命。社会との約束。
何を行うべきかという方向性など、「What」と定義する。
【ビジョン – Vision – 】
ミッションに基づき企業や組織が何年後にどのような姿でありたいかを表す。
「こうありたい」という具体的な姿、「Where」と定義する。
【バリュー – Value – 】
望まれる組織風土・文化、組織の価値観、行動指針。
まとめると、ミッションは、「企業が果たすべき使命」であり、そのミッションを果たすために目指す、将来の理想の状態・具体的なゴールが、ビジョンとなり、そのビジョンを目指す上で従業員に求められる「思考や行動の指針」がバリューとなります。
では、「パーパス」は上記の用語とどう関連し、またどのように区別されるべきでしょうか?
ミッションとパーパスの違いは?
ミッションは、企業が一人称で、
企業が目指すところ、社会の中で自社がどう「あるべき」かということを言語化したものであり、
パーパスは、社会が一人称で、
社会がどうあるべきか、その社会の中でなぜ自社が存在すべきなのかという、ミッションよりもさらに俯瞰的に捉えた大きな視点で自社の存在を定義する概念であると考えています。
MVV(意味:ミッション、ビジョン、バリューの省略形)は綺麗事になりがちですが、パーパスは、社会にどんないいことを増やすブランドなのか、どんなimpactを与えたいか、どのようにユーザー(顧客)から共感されたいかなどと考えるとわかりやすいかもしれません。
なぜパーパス経営が必要になってくるか?
VUCAと言われる不確実性の高い時代の真っ只中で、存在する企業のうち70%は必要ではなくなり、淘汰されていくといわれています。
これは、「なぜ、この会社が存続していかなければいけないのか」という明確な説得材料がない限り、ステークホルダーから支持を得られにくい世の中になるということです。
私たちの企業活動が社会やユーザーに対して「何か」が受け入れられてこそ、企業は持続的に存在できます。それを今、表現してきたものが何かについて、言語化しなければならない時が来ています。
- 価値観の変化
あらゆるものを取り巻く環境が目まぐるしく変化し、将来の予測が困難な状態が続いている時代になり、既存の価値観やビジネスモデルなどが通用しなくなってきました。LinkedInが米国で3,000人ものビジネスパーソンを対象に行った調査によると、約半数が「社会に対してポジティブな『パーパス』を発信する企業で働くのであれば、年収が下がっても構わない」と回答しているそうです。特に、ミレニアル世代と呼ばれる若い層でその傾向が顕著です。
就職先を選ぶにあたって売上や利益、規模以上に企業文化、価値観、社会貢献度のウェイトが大きくなっています。「働く意味」や「自らの存在意義」、すなわち「パーパス」が求められています。このように、価値観が多様化し、大きく変化しつつあると言えます。 - 投資家の変化
二つ目は、投資家の評価基準の変化です。従来、投資家が企業を評価する際に最も重視してきた基準は収益性でした。しかし、SDGsやESGへの関心が高まるにつれて、「社会的な課題解決に貢献できるかどうか」という評価基準が新たに追加されています。海外VCからは、スタートアップの取り組みがSDGsのどの項目にimpactする取り組みなのか必ず聞かれるそうです。また、世界最大の資産運用会社BlackRockのCEOラリー・フィンク氏が、2019年に取引先のCEOに送ったレターに、「パーパス」が投資における判断基準の一つになるとも述べられています。 - 消費志向の変化
三つ目は、消費志向の変化があります。モノがありふれ、もはやモノを所有することよりも、魅力あるコト(体験・経験)に消費者が価値を感じ始めています。モノならば何をどう売るかだけを考え、ひたすら消費していれば良かったものが、コトとなると「どういった価値観なのか」を企業が定義・発信し、消費者から共感され、選ばれなければならなりません。それには、どうしても「パーパス」を明確(言語化)しておくことが不可欠であると考えています。
パーパスを経営のセンターピンに
2021年、パーパスという言葉がビジネスパーソンの間でバズワードのように流行りました。ただ、PRのためにパーパスを掲げているだけでは何の意味もありません。優れたパーパスは、「原点」がブレない。なおかつ、未来を見据えて「進化」する。いったん原点に戻って企業のコアを見つけた上で、しっかりとブレずに、もう一歩踏み出す。これが一つの成功パターンです。
役員陣のみや広報といった部署がパーパス策定を担当して、他の部署は関係なく活動しているだけでは、社員ひとりひとりにパーパスを理解・共感してもらうことはできないからです。そのため、次世代を担う人材を交えて作ることをおすすめしています。
長期的な視点でコミットしていく自覚を持っている人、圧倒的当事者意識を持てる次世代の人と作りましょう。なにより、パーパスを追求して中長期的に、利益につなげるケースもあります。
例えば、アパレルブランドのPatagoniaでは、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。ビジネスを手段として、環境危機へのより良い解決策を実行していく。」というパーパスの元、”売上の100パーセント、すなわち全額を、未来の世代のために空気や水や土を守ろうとローカルコミュニティで活動する草の根環境保護団体に寄付します。“ とキャンペーンを打ち出し、予想していた売り上げの5倍を超える金額を売り上げました。
パーパス経営を実践する企業(大企業編)
例えば、ソニーのパーパスは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」です。
その言葉の通り、ソニーは「テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニー」として、人々を感動させるコンテンツを次から次へと生み出しています。
パーパスの内容は自社のビジネスの価値観やブランドに直結するため現実的な内容で、社員はもちろん、取引先や顧客にも共感が得られるものである必要があります。
■事例
TESLA|持続可能なエネルギーへの世界レベルでの移行を加速させる。
GOOGLE|世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにする。
Amazon|地球上でもっともお客様を大切にする企業であること。
P&G|現在そして未来の、世界の消費者の生活を向上させる。
Coca-Cola|コカ・コーラ独自のおいしさを通じて、楽しい時間や空間を共有し、世代や人種を超えてさまざまな人を繋ぐこと。
Patagonia|私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。ビジネスを手段として、環境危機へのより良い解決策を実行していく。
パーパス経営を実践する企業(スタートアップ編)
またサイバーエージェントのパーパスは「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」です。
そのため「あらゆる産業のデジタルシフトに貢献する」、「新しい未来のテレビABEMA、いつでもどこでも繋がる社会インフラに」、「テクノロジーとクリエイティブの融合で世界に挑戦する」などといった目標を掲げています。
「貧富の格差」や「環境問題」など社会問題を解決しながらも、自社のビジネスに直結したパーパスとなっています。
■事例
サイバーエージェント|新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する
ぐるなび|食でつなぐ。人を満たす。私たちぐるなびは食の可能性を信じ、世界中のヒト・モノ・コトをつなげ、人々が満たされる場を創出します。
EXPACTのパーパスとは?
EXPACTのパーパスは、「新たな挑戦へ 旗を掲げよう」です。
新たな挑戦とは企業における新規事業の取り組みであり、スタートアップの立ち上げに他なりません。
自身が起業した際にも、挑戦を応援してくれる方もいましたが、「本当に大丈夫なのか?」「大企業に務めなくて大丈夫なのか?」など心配の声もいただきました。
我々は、リスクを取って挑戦する起業家を全力で応援し、サポートすることで起業家が掲げるゴール(旗印)を一緒に目指していきたいと考えています。
自分なりの「パーパス」はどうやって見つける?
自分なりのパーパスを見つけるとき、「あなたの幸せは何ですか?」、また「どうやって周囲を幸せにしますか?」という問いかけをするのがいいかもしれません。
自分の幸せを追求し始めたら、自分らしく社会のために何か行動することに繋がっていくと考えています。
まずは自分自身を満たすことに集中しなければ、自分を満たさずに他人を満たすことはできません。
その視点を持つことで、幸せを実現するために自らの仕事のあり方を見つめ直すようになり、仕事を通じて自分と社会とのつながりを感じることができるようになると思います。
自社のプロダクトやサービスが社会により良い影響をもたらすことで、幸せを実感できるようになると思います。
受け身の姿勢ではなく、自分なりのパーパス(価値観)を探り、より良い将来を実現していく必要があります。
まとめ
パーパスは「策定」するだけではその目的を果たすことはできません。
まずは、社員ひとりひとりにパーパスを理解・共感してもらい、日々の活動に繋げていく「浸透」活動が必要不可欠です。そして浸透活動の中でも特に重要になるのが、「共感・自分ごと化」です。
パーパスは、事業計画やアクションプランなど「やること」が明確に定義されているものとは異なり、非常に抽象度の高い概念です。だからこそ、社員自身の強い「共感・自分ごと化」を図る施策やブランディングを継続的に行っていく必要があります。
弊社では、企業ブランディングから採用支援、従業員の定着支援まで幅広く支援しております。
お気軽にお問合せください。