定款作成の発行可能株式総数について
皆さんこんにちは。
本日は会社設立準備関連で、発行可能株式総数についてです。
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「発行可能株式総数」というのは、そのままですが、株式会社が発行可能な株式総数のことです。「株式の譲渡制限」を設ける場合には、発行可能株式総数に決まりはありません。
「株式の譲渡制限」とは
自由に株式の売買を認められると会社の経営上望ましくない人物に株式及び決議権を取得されてしまう恐れがあります。株式の譲渡を自由にできない規定を置くというのが、株式の譲渡制限になります。
株式譲渡を受けるためには定款に「当会社の株式の譲渡により取得するには株主総会の承認を受けなくてはならない」と記載することになりますが、これがあると株主が株式譲渡を行う際に承認期間の承認決議を要することになるわけです。
中小企業にはメリットが多いため、譲渡制限を設ける会社のほうが多いです。取締役1名で、任期を10年にしたい場合も、株式の譲渡制限を定めなければいけません。
株式の譲渡制限を設けることのメリットは??
①取締役会の設置義務がない(任意) ②取締役・会計参与・監査役の任期が10年まで延長可能。延長しなければ、任期を終えるごとに役員変更登記(登録免許税1万円)が必要。 ③相続での株の分散を防止できる(会社にとって不都合な人に株式がわたらない) |
株式の譲渡制限を設ける場合、定款には「当会社の株式を譲渡により取得するには、○○の承認を受けなければならない」と記載する必要があります。この○○には「代表取締役」「株主総会」などが入ることになります。
発行可能株式総数の求め方
1株当たりの株式の価格にも上限はありませんが、一般的には1万円か5万円に設定する会社が多いようです。
「株式の譲渡制限」を設けない場合には、設立時に発行する株式数は、発行可能株式総数の4分の1を下回ることができないという決まりがあります。
例えば設立時の株式数が300株だとすると、発行可能株式総数は1200株以下でなくてはいけません。
スタートアップ向けに発行可能株式総数の求め方を説明します。まず、設立時の株式数を求めるには、資本金を1株当たりの株式価格で割ります。
設立時の株式数=資本金÷1株当たりの株式の価格
まずは、設立時の株式数を求めます。
例えば1株当たりの株式の価格が1万円、資本金が300万円であれば、設立時に発行する株式は300株ということになります。
次に、発行可能株式総数は設立時の株式数の4倍となります。この例では、発行可能株式総数は1200株になります。スタートアップは成長に応じて資金調達や従業員へのインセンティブのために株式を発行することがあります。
発行可能株式総数=設立時の株式数×4
設立時の発行株式数が300株であれば、発行可能株式総数の上限は4倍の1200株になります。
そのため、設立段階で発行済株式数を多めに設定しておくことが、後の株主総会での手間を省くことができます。例えば、1万株〜100万株の発行済株式数を設定しておくことがおすすめです。
発行可能株式総数については、定款認証時に定めておく必要はありません。定款に定めない場合は、会社の成立のときまでに、(発起設立→発起人全員の同意により募集設立→創立総会の決議により)定款を変更して、その定めを設けることになります。
ベンチャー / スタートアップの発行済株式数の考え方
ベンチャー/スタートアップの発行済株式数の考え方について説明します。設立時には株主が少数であるため、100株しか発行しないケースがよくあります。しかし、企業が成長するにつれて、資金調達のために株式を発行したり(第三者割当増資)、従業員へのインセンティブとしてストックオプションを発行したりすることが一般的です。
発行済株式数が少ないと、VC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家の持株比率を細かく設定できないことや、例えば100株しか発行していない場合、従業員に1%以上のストックオプションしか付与できないといった問題が生じることがあります。これらの問題を回避するためには、設立段階から発行済株式数を多めに設定しておくことが望ましいです(例えば1万株や100万株以上など)。
株式分割するにも株主総会が必要となったり、登記手続や登記費用も発生します。結論的には、設立段階からある程度発行済株式数を多めに設定しておきましょう。
株主間契約
万が一創業者間でトラブルが発生した場合に備えて、事前に契約書に定めてリスクヘッジしておきましょう。ポイントは「買取条項」を設定し、退任するメンバーから創業者の誰かが株式を買い取ることができるようなルールにしておきましょう。
AZX総合法律事務所さんの雛形をご参照ください(AZX総合法律事務所 書式/雛形集)
創業者間契約を結んでいないと、高いシェアを持っている共同創業者が突然退職して類似事業を始めるなど、株式を買い戻すことができなかった場合に大きなトラブルとなるケースもあります。
持ち株比率と出資比率の違いとは?
持ち株比率と出資比率は何が違うのでしょうか?
これらは両方とも株式の割合を示す経営指標ですが、計算の対象が異なります。持ち株比率は、特定の株主が保有する株式数が発行済み株式総数に占める割合を示します。計算式は次のようになります。
持ち株比率 = (保有株式数 ÷ 発行済株式総数) × 100
例として、発行済株式数が100株の会社で、株主A氏が50株を保有している場合、持ち株比率は(50÷100)×100=50%です。
出資比率は、特定の株主の出資金額が全株主の出資金額に占める割合を示します。計算式は次のようになります。
出資比率 = (特定株主の出資金額 ÷ 全株主の出資金額) × 100
例として、全株主の出資金額が1,000,000円で、株主A氏の出資金額が500,000円であれば、出資比率は(500,000÷1,000,000)×100=50%となります。
ただし、会社が普通株式のみを発行している場合、出資比率(持ち株比率)が議決権比率と同じになります。しかし、優先株式などの種類株式が含まれている場合は、権利が異なるため、出資比率と議決権比率が同じではない場合があります。
持ち株比率と出資比率は、株主の権利(支配権)を示す重要な経営指標です。ただし、持ち株比率は保有株式数に基づく割合を示し、出資比率は出資額に基づく割合を示す点で違います。この違いに注意しましょう。
スタートアップが気を付けるべき持ち株比率
スタートアップが気を付けるべき持ち株比率について、以下のような権限が株主に認められています。
- 持ち株比率が1%を超える株主: 株主総会における議案提出権が認められます。経営に関する提案や疑問点を指摘することができます。
- 持ち株比率が3%を超える株主: 株主総会招集の請求権や会社の帳簿閲覧の請求権が認められます。また、業務の執行を検査する検査役の選任を請求できます。
- 持ち株比率が33.3%(3分の1)を超える株主: 特別決議を単独で阻止する権利が認められます。特別決議は、定款変更や取締役の解任、合併や解散などの重要な意思決定に必要です。
- 持ち株比率が50%(2分の1)を超える株主: 株主総会の普通決議を単独で可決する権限が認められます。過半数以上を保有すると、ほとんどの意思決定ができます。
- 持ち株比率が66.6%(3分の2)を超える株主: 株主総会における特別決議を単独で可決させる権利が認められます。定款変更や取締役の選任・解任、事業譲渡や会社の合併・解散などの重要な事項を決定できます。
経営者にとっては、持ち株比率が3分の2以上を目指すことが安定的な経営に重要です。ただし、経営者単独で3分の2を保有する必要はなく、信頼できる創業メンバー等と合わせて保有しても良いでしょう。
まとめ
これらを参考に自分自身で定款をつくることも可能かとは思いますが、やはり専門家に相談することをオススメします。後から変更登記をするのも費用が掛かることなので、変なところでつまずかない用に行政書士・司法書士の先生に相談しながら手続きを進めていきましょう。知り合いの専門家がいない場合には、弊社顧問の先生方をご紹介いたします。
ご覧いただきありがとうございました。
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