インドスタートアップの市場規模と成長性
近年、インドのスタートアップ市場への投資額は大幅に増加し続けています。
ソフトバンクも、2021年だけでインドスタートアップ市場に計30億ドルを出資するなど、その市場は成長の一途を辿っています。
現在、インドはアメリカ、中国に次ぐ世界第3位のスタートアップ市場として注目され、世界中の投資マネーがインドへと集まっている状況です。
下図はインド国内における投資総額と件数を表しています。ご覧の通り、2021年はその数値が大きく跳ね上がっており、前年比では投資総額が353%、投資件数が166%増加しています。
2022年は昨今のハイテク株の状況を鑑みて調整局面に入りました。
そのためPwCインドのレポートによると、2022年インドのスタートアップへの投資額は240億ドルで、2021年と比較して33%減少しました。
しかし、この240億ドルという投資額は、2019年または2020年に記録された額のほぼ2倍の数値となり、増減を繰り返しながらも市場の成長は続いているといえます。
インドスタートアップ市場が伸びる理由とは?
では一体、なぜインドのスタートアップ市場は規模を拡大し続けているのでしょうか?
まず、優秀な人材が多いことが挙げられます。
数学の英才教育により数字に強い人材が生まれやすいインドでは、IT産業が盛んです。
英語も堪能であるため、アメリカなどの一流Tech企業で働いた経験のある優秀な人材が多いのも特徴です。
次に、人口大国であることが挙げられます。
インドは今年、中国を抜き、人口世界一の大国へと成長を遂げました。人口の増加は、そのまま市場規模の拡大へと繋がります。
そのためインドでは、他の国で成功したビジネスモデルをそのまま国内に向けて展開し、成功する例も多く見られ、今後はより一層発展する市場として、世界から注目されています。
インドスタートアップ市場の概要について
では次に、インドスタートアップ市場の概要について説明します。
2021年インドでは、スタートアップにおけるシード・ミドル・レイターの各ステージへの投資件数が2倍以上となっており、ここ2〜3年で急成長を遂げています。
また、下図の表す通りシードステージにおける100万ドル以下の小規模案件も1000件を超え、合計金額も10億ドル以上となりました。
では、インドのM&A市場についてはどうでしょうか?
下図が表すのは、インドのM&Aの合併・買収件数の推移です。
2022年はその件数が増加しており、M&Aが積極的に行われているということが分かります。
2022年、インドM&A市場では大規模な合併と買収が見られ、前年の1070億ドルを上回る1520億ドルの取引総額を記録しました。市場規模は拡大の一途を辿っています。
その主な事例として、インド最大の住宅金融会社HDFC Ltdは400億ドルでHDFC Bankとの合併を発表しました。
これにより、巨大な金融サービスが誕生しました。
さらに、インドにおけるユニコーン企業の総数も、下記のグラフが示す通り順調にその数を伸ばしています。
2022年、ついにその企業数は100社を超えて、世界第3位となりました。
そして現在は125社と、さらなる成長を見せ、今後も更にその数が増えることが期待されます。
今、インドで特に注目される4つの市場とは?
そのようなインドで今、最も注目されている具体的な市場には、どのようなものがあるのでしょうか?
➀EdTech市場
EdTechとは「Education(教育)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語であり、学校教育の現場から生涯学習、企業の人材育成・研修まで、あらゆる領域に「学び」の仕組みを提供できるビジネスやサービス、ベンチャー企業などを指します。
インドのEdtech市場は、今後5年間で3.7倍に成長し、投資額は2020年の28億米ドルから2025年には104億米ドルになると予測されています。
学生の割合が人口の30%以上を占めるインドでは、その膨大な市場から教師やインフラの不足などの課題も多くありました。
しかし、パンデミックによりあらゆるものがオンライン化されつつあることから、この分野では起業家の活動が活発化し、投資家も続々と現れています。
そのため、Byju’s社やUnacademy社といった注目のスタートアップ企業がインドで今、数多く誕生しています。
➁FinTech市場
FinTechとは「Finance(金融)」と「Technology(技術)」を掛け合わせた造語で、銀行や証券、保険などの金融分野に、IT技術を組み合わせることで生まれた新しいサービスなどを指します。
インドのFinTech市場規模は、2019年で650億米ドル、2023年には1400億米ドルに達すると予想されています。
インドのFinTech市場には現在、2100社以上の企業が存在し、うち67%は過去5年以内に設立されています。
インドでは今、スマートフォンの普及率が高まったこともあり、安価な高速インターネットの普及も進み、金融エコシステム全体が変革しつつあります。
また、マクロ環境の変化とパンデミックにより、この1年でFinTechの導入がより進みました。
この流れに乗ったPayTM、Groww、Zerodha等のインド大手企業は、オンライン金融ソリューションの普及により、ユーザー数を増加させました。
➂Eコマース市場
Eコマースとは、「Electric(電子)」と「 Commerce(商取引)」の略称であり、さらに簡略的に「EC」とも呼ばれます。
電子商取引とは、電子的に行われる取引のこと全般を指し、ネットショッピングだけでなく、EDIのような専用回線を通した取引や、ネットオークション、イートレードなども含まれています。
インドのEコマース市場は、2026年には2,000億米ドルにまで成長すると予想されており、2017年の385億米ドルと比較すると5倍以上の水準です。
さらにインドでは、パンデミックによるロックダウン明けにIT産業への消費者需要が高まったことを背景に、スマートフォンの出荷台数が1億5,000万台を超え、2020年には5Gスマートフォンの出荷台数が400万台を超えるなど、さらなる成長が期待されています。
➃AgriTech市場
AgriTechは「Agriculture(農業)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語であり、
ドローンやAI、IoT、ビッグデータなど、農業領域でICT技術を活用し、農業の活性化に向けた取り組みなどを指します。
インドのAgriTech市場規模は、2021年時点で2億4000万米ドルと報告されています。
この数字は、2025年までに到達見込みである241億米ドルの1%ほどで、将来的な成長が期待されている市場でもあります。
インドでは、全人口の約60%が農業および関連産業に従事していますが、農業はインドのGDPの約16%にしか寄与していません。
農業従事者の多くは技術や事業改善のための資金が不足しており、農業のサプライチェーンも非常に非効率で、生産物の約40%が廃棄されています。
そのため政府も、農業関連の収入には課税しないなど、社会的地位や収入を向上するための政策を打ち出しており、現在多くの起業家がこの問題に取り組んでいます。
インドへの投資機会と日本の関わり
インドは、ソフトウェア、エデュケーション、農業、テクノロジーなど、多岐にわたる分野で魅力的な投資機会を提供しています。特に、デジタルヘルスケアプラットフォームやフリーメディカルプランなど、成長中のスタートアップ企業が注目されています。
日本の大手企業や政府機関も、戦略的な投資をサポートするために、LP(Limited Partner)として参加しています。インドのスタートアップシーンは、特に若い世代がテクノロジーを活用して新しいビジネスを展開することで成長を続けています。
インドのスタートアップへの投資機会は、アーリーステージからレイトステージまで幅広く、特にアーリーステージでの投資機会が豊富にあります。スタートアップエコシステムは、若い人々や新しいビジネスモデルに焦点を当てて成長し、従来の業界に新しいアプローチをもたらしています。
デジタルインフラが整備されたことで、インドから国内外市場へのビジネス展開が容易になりました。仮想通貨(暗号資産)やブロックチェーン技術に関しては、規制が進行中で不透明ですが、一部の投資家はこの分野にも関心を寄せています。
日本から投資家やCVCや事業会社にも、インド市場への参入機会があり、多岐にわたる投資機会が存在しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?規模・成長性において、インドは今、最も成果が期待できるスタートアップ市場であるということが分かります。
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