銀行借入(デット・ファイナンス)とは?
起業はもちろん、事業を拡大していくにも「資金調達」は避けて通れません。そして、資金調達と聞いてまず思い浮かぶのは、昔ながらの「銀行借入」という方も多いのではないでしょうか?今回は、そんな銀行借入について、その種類やメリット・デメリットをわかりやすく解説していきます。
銀行借入とは?
銀行借入とは、銀行などの金融機関からお金を借り入れる資金調達方法のこと。返済期限を設け、金利とともに返済する義務が生じます。
資金調達には、大きく分けて「デット・ファイナンス」と「エクイティ・ファイナンス」の二つがあり、銀行借入は「デット・ファイナンス」に分類されます。
デット・ファイナンスとは「借入 / 借金」による資金調達方法です。大まかに以下の3つがあげられます。※あまり一般的でない私募債等社債引き受けによる借入は説明から除外します。
①銀行/信用金庫等からの借入
②親族や知人等、個人からの借入
③公的機関からの借入(新創業融資制度・資本性ローン等)
④ベンチャーデット
⑤社債・私募債の発行
⑥シンジケートローン
⑦ソーシャルレンディング
デット・ファイナンスのメリットは、後述のエクイティ・ファイナンスと違い金融機関等が経営に直接関与することがない点が挙げられます。デメリットは期限までに利息の払い込みや元金の返済義務が生じる点や、自己資本比率が下がる点に注意が必要です。
銀行借入の種類
銀行借入には、さまざまな種類があります。ここでは代表的なものを5つご紹介します。
- 証書貸付
手形や担保を必要としない、申込企業の信用力を元に融資を行う方法。
審査が厳しく、主に優良企業が対象。 - 当座貸越
企業の当座預金口座残高が不足した場合に、一定限度額まで自動的に融資を行う方法。
事業に必要な短期資金の調達に適している。 - 手形割引
取引先への支払いで受け取った約束手形を、銀行が割引くことで現金化する融資方法。
短期資金の調達に適しており、運転資金の確保に役立つ。 - ファクタリング
売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、資金を調達する方法。
短期資金の調達に適しており、資金繰りの改善に効果的。 - 不動産担保ローン
不動産を担保として提供することで、低金利で長期の融資を受ける方法。
設備投資や事業拡大など、まとまった資金が必要な場合に利用される。
せっかく起業するのだから経営の自由度を高めるために、デット・ファイナンスを選ぶベンチャー/スタートアップも多いと思います。しかし起業前や起業直後のタイミングでは、「銀行からの融資」を受けるのは困難なケースもあります。銀行審査に耐えうる事業計画や実行体制、売上(受注)の見込みを数字を交えて説明する必要があります。IPOを目指す上で、まずは創業時にオススメしたい創業融資制度をご案内します。
・日本政策金融公庫の「新規開業資金」(新創業融資は廃止)
ご利用いただける方 | 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方(注1) | |
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資金のお使いみち | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金(注2) | |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) | |
ご返済期間 | 設備資金 | 20年以内 <うち据置期間5年以内> |
運転資金 | 10年以内 (注2) <うち据置期間5年以内> | |
利率(年) | 基準利率。ただし、次の要件に該当する方が必要とする資金(原則として土地にかかる資金を除く。)は特別利率。なお、ご融資後に利益率や雇用に関する一定の目標を達成した場合に利率を0.2%引下げる「創業後目標達成型金利」については、こちらをご覧ください。 | |
1. 女性の方、35歳未満または55歳以上の方 2. 外国人起業活動促進事業における特定外国人起業家の方で新たに事業を始める方 3. 創業塾や創業セミナーなど(産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業)を受けて新たに事業を始める方 4. 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用しているまたは適用する予定の方であって、自ら事業計画書の策定を行い、認定経営革新等支援機関(税理士、公認会計士、中小企業診断士など)による指導および助言を受けている方 5. 地域おこし協力隊の任期を終了した方であって、地域おこし協力隊として活動した地域において新たに事業を始める方 6. Uターン等により地方で新たに事業を始める方 | [特別利率A] ・3に該当する方のうち、女性の方または35歳未満の方は[特別利率B] ・6に該当する方のうち、過疎地域で新たに事業を始める方は[特別利率B] | |
7. デジタル田園都市国家構想交付金(旧:地方創生推進交付金を含む。)を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める方 | [特別利率B] | |
8. デジタル田園都市国家構想交付金(旧:地方創生推進交付金を含む。)を活用した起業支援金および移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める方 | [特別利率C] | |
9. 日本ベンチャーキャピタル協会の会員(賛助会員を除く。)等または中小企業基盤整備機構もしくは産業革新投資機構が出資する投資事業有限責任組合等から出資を受けている方(見込まれる方を含む。) | [特別利率B] | |
10. 技術・ノウハウ等に新規性がみられる方(注3) | [特別利率A・B・C] | |
担保・保証人 | お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます。 | |
併用できる特例制度 |
(注1)「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」に限ります。
なお、創業計画書のご提出等をいただき、事業計画の内容を確認させていただきます。
(注2)「廃業歴等があり、創業に再チャレンジする方」は、前事業に係る債務を返済するために必要な資金もお使いいただくことができ、運転資金は15年以内(うち据置期間5年以内)までご利用いただけます。
(注3)次のいずれかの事業を行う方が対象となります。
- 他企業において利用されていない知的財産権に係る技術を利用して行う事業
- SBIR制度における指定補助金等または特定新技術補助金等の交付決定を受けて、開発した技術を利用して行う事業
- 新規中小企業者(エンジェル税制の一定の要件を満たす方)が行う事業
- 国の技術ニーズに関するフィージビリティスタディ調査等を踏まえて研究開発に取り組む事業
- J-StartupプログラムまたはJ-Startup地域版プログラムに選定された方が取り組む研究開発やその事業化に関する事業(一定の要件を満たす方は特別利率、満たさない方は基準利率となります。)
※お使いみち、ご返済期間、担保の有無などによって異なる利率が適用されます。
※審査の結果、お客さまのご希望に沿えないことがございます。
【東日本大震災の影響により離職し、福島復興再生特別措置法に定める避難指示・解除区域が所在した市町村内において創業する方・福島復興再生特別措置法に定める避難指示・解除区域が所在した市町村内において創業する方へ】こちらをご覧ください。
・日本政策金融公庫の「新創業融資制度」※2024年3月に廃止済
特に、創業資金の調達先として第一の選択肢に挙げられるのが新創業融資制度です。無担保・無保証人で利用できる上に、制度融資に比べて融資速度も速い。融資限度額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)となっています。
概要 | 新しく事業を始められる方の事業計画を審査して、無担保・無保証で開業資金を融資する制度。 |
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対象業種 | 金融業、投機的事業、一部の娯楽業等を除くほとんどの業種 |
融資の対象 | 詳細は こちら |
資金使途 | 設備資金、運転資金 |
貸付限度額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
貸付利率 | 詳細はこちら |
返済期間 | 運転資金7年程度 |
保証人・担保 | 原則不要 ※原則、無担保無保証人の融資であり、代表者個人には責任が及ばないものとなっております。法人でご希望される場合は、代表者(実質的な経営者や共同経営者を含む)が連帯保証人となることも可能です。その場合は利率が0.1%低減されます。 |
問合せ先 |
実績のない企業にとっては貴重な資金調達源であり、厳正な審査が行われます。実現可能性の高い事業計画を持って審査に臨みましょう。一般論として運転資金で10百万円調達する場合、年商20~30百万円は必要です。通常創業時には3百万円~8百万円程度の利用が一般的です。
・信用保証協会の「制度融資」
全国統一保証制度である全国小口資金の場合
概要 | 小規模企業向け融資 |
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融資の対象 | 従業員数が製造業等 20 人以下(卸・小売・サービス業は 5 人以下)の事業者等であって、この融資を含め、全国の信用保証協会の保証付融資の合計残高が 2,000 万円以下のもの |
資金使途 | 設備資金、運転資金 |
貸付限度額 | 2,000万円以内 |
貸付利率 | 金融機関所定の利率 |
返済期間 | 運転資金7年程度(上限:証書貸付 10年以内(据置期間は1年以内を含む)) |
保証割合 | 100%保証(負担金方式) |
保証人・担保 | 原則として法人の代表者のみ(組合の場合は代表理事) |
問合せ先 | 各都道府県の信用保証協会、金融機関等 |
・オンライン レンディング
オンライン・レンディングサービスは、決算書だけでなく銀行口座の入出金情報など過去の取引履歴(トランザクション)や、信用スコア(売上や利益など)から、総合的に審査するトランザクションレンディングを採用しております。今後このようなストレスなく借入できるオンライン銀行が増えてくると思います。住信SBI銀行など、
・ベンチャーデット
2024年、日本のスタートアップ金融において、ベンチャーデットが新たな選択肢として注目を集めています。
成長が期待されるベンチャー企業へのデットファイナンスを通じて、ベンチャーキャピタル(エクイティ投資)から、一般的な銀行融資へと繋いでいく”橋渡し”役を担い、ベンチャー企業の成長をサポートするファイナンススキームと言えます。
- 低金利での資金提供
- 株式希薄化リスクの低減
- 転換社債や新株予約権付融資などの柔軟な形態
メリット
- 資金調達のハードルが低い
上場企業などと比べて、ベンチャー企業などにとっては、エクイティ・ファイナンスと比較して資金調達のハードルが低い点がメリットとして挙げられます。 - 返済計画が立てやすい
返済期間や金利が決まっているため、計画的に返済を進めやすい。 - 経営の自由度が維持できる
エクイティ・ファイナンスとは異なり、株式の発行を行わないため、経営権を維持したまま資金調達を行うことができます。
デメリット
- 返済義務が発生する
借り入れた資金は、金利をつけて返済する義務があります。業績が悪化した場合でも、返済義務は免れません。 - 担保や保証人が必要になる場合がある
融資を受ける際に、担保や保証人を求められる場合があります。 - 審査に時間がかかる場合がある
銀行の審査は厳しいため、時間がかかるケースがあります。
最新の活用事例
株式会社クアンドの事例(2024年6月)
- 総額2.4億円のデットファイナンス実施
- 三菱UFJ銀行、日本政策金融公庫などから調達
- 無担保・無保証・株式希薄化なしの条件で実現
<デット・ファイナンスのメリット>
・金融機関が経営に直接関与しない(決算内容の報告義務やモニタリングは必要)
<デット・ファイナンスのデメリット>
・利息および元金を期限までに返済しなければならない
・自己資本が棄損する
・エクイティファイナンスとは?
エクイティファイナンスとは、企業が新株を発行して、事業のために資金を調達することを意味します。「エクイティ」(日本語:株式資本、自己資本)を増加させる資金調達方法のため、このような呼び名になっています。エクイティファイナンスで資金調達すると貸借対照表の資本が増加するのに対して、デットファイナンスで資金調達すると負債が増加するといった違いがあります。
まとめ
今回は、資金調達の方法として、銀行借入について解説しました。銀行借入は、資金調達の方法として一般的ですが、メリット・デメリットを理解した上で、自社の資金調達ニーズに合致した方法を選択することが重要です。