日本政策金融公庫「新創業融資制度」とは?
日本政策金融公庫のアンケート調査によると”開業費用の平均値は1,077万円、中央値は550万円”です。そうした創業期の資金調達を検討する場合に、真っ先に検討すべきがが新創業融資制度です。
日本政策金融公庫は2024年4月から、スタートアップ向けの無担保・無保証人融資の限度額を従来の2.4倍の7,200万円(うち運転資金4,800万円)に引き上げると発表しました。創業期のスタートアップへの支援を一層強化する狙いがあります。
無担保・無保証人で利用できる上に、制度融資に比べて融資速度も速い。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)と拡大しています。
2023年度(令和5年度) | 2024年4月1日以降(令和6年度) New! | |
概要 | 新しく事業を始められる方の事業計画を審査して、無担保・無保証で開業資金を融資する制度。 | |
対象業種 | 金融業、投機的事業、一部の娯楽業等を除くほとんどの業種 | |
融資の対象 | 詳細は こちら | |
資金使途 | 設備資金、運転資金 | |
自己資金 | 創業時において、創業資金総額の1/10以上 の自己資金があること等 | なし |
貸付限度額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
貸付利率 | 基準利率。ただし、次の要件に該当する方が必要とする資金(原則として土地にかかる資金を除く。)は特別利率。なお、ご融資後に利益率や雇用に関する一定の目標を達成した場合に利率を0.2%引下げる「創業後目標達成型金利」については、こちらをご覧ください。 | |
返済期間 | 設備資金 20年以内 運転資金 7年程度(原則) | 設備資金 20年以内 運転資金 10年程度(原則) |
据置期間 | 2年以内 | 5年以内 |
保証人・担保 | 原則不要 ※原則、無担保無保証人の融資であり、代表者個人には責任が及ばないものとなっております。法人でご希望される場合は、代表者(実質的な経営者や共同経営者を含む)が連帯保証人となることも可能です。その場合は利率が0.1%低減されます。 | |
併用できる 特例制度 | ||
問合せ先 |
新創業融資制度の概要(2023年度以前)
新創業融資制度は、日本政策金融公庫が提供する創業時の資金調達支援制度です。主な特徴は以下の通りです。
- 対象者: 新たに事業を始める方、または事業開始後で税務申告を2期終えていない方
- 無担保・無保証人: 原則として担保や保証人は不要
- 自己資金要件: 創業資金総額の10%以上の自己資金が必要
- 融資限度額: 3,000万円(うち運転資金は1,500万円まで)
- 返済期間: 設備資金20年以内、運転資金7年程度
- 据置期間: 設備資金2年以内、運転資金1年以内で据置可能
2024年4月1日以降の変更点 New!
2024年4月1日以降、新創業融資制度の融資限度額が7,200万円(うち運転資金4,800万円)に引き上げられる予定です。スタートアップ向けの資金調達支援を強化する狙いです。
返済期間の延長
- 設備資金は従来通り20年以内
- 運転資金は従来の7年程度から10年程度に延長
据置期間の延長
- 設備資金は2年以内から5年以内に延長
- 運転資金は1年以内から5年以内に延長
自己資金要件の撤廃
- 従来は創業資金総額の10%以上の自己資金が必要だったが、この要件が撤廃される
利用のメリット
- 無担保・無保証人で創業資金を調達できる
- 民間金融機関より低利な固定金利
- 審査から融資実行まで最短約1か月とスピード感がある
- 長期の返済期間が設定可能
- 創業後の目標達成で金利が0.2%引き下げられる制度あり
新創業融資制度の利率について
新創業融資制度の基本的な利率は「基準利率」ですが、以下の特定要件に該当する方は「特別利率」が適用されます。
特別利率A
- 創業塾や創業セミナー等を受講して新規開業する方
- 35歳未満または55歳以上の女性起業家
特別利率B
- 過疎地域でUターン起業する方
- 地方創生交付金を活用して起業し、移住支援金も受給する方
- 新規性のある技術・ノウハウを有する方
特別利率C
- ベンチャーキャピタルや機関投資家から出資を受けている方
さらに、融資後に一定の利益率や雇用目標を達成した場合、「創業後目標達成型金利」により利率が0.2%引き下げられる特例制度があります。つまり、新創業融資制度では起業家の属性や事業内容、投資の有無等に応じて利率が決定されます。特に女性・若年層・UIJターン・新規性のある事業には有利な金利が設定されています。
申請要件
実績のない企業にとっては貴重な資金調達源であり、厳正な審査が行われます。実現可能性の高い事業計画を持って審査に臨みましょう。一般論として運転資金で10百万円調達する場合、年商20~30百万円は必要です。通常創業時には3百万円~8百万円程度の利用が一般的です。
新創業融資制度を利用するためには、「創業の要件」、「雇用創出等の要件」、「自己資金要件」の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 創業の要件:創業前または開業後2期未満の場合に限ります。
- 雇用創出等の要件:事業計画に基づき、一定の雇用を創出する計画が必要です。また、地域経済に貢献することや、新しい技術やサービスの開発など、社会的に意義のある事業であることが求められます。
- 自己資金要件:事業計画に基づき、一定の自己資金を投入することが必要です。具体的な金額は、融資を受ける金融機関や事業の種類によって異なりますが、一般的には融資額の10%程度以上を自己資金として用意することが求められます。 2024年度より自己資金要件が撤廃
以上の要件をクリアすることで、日本政策金融公庫から新創業融資制度を利用することができます。
また、一般社団法人でも新創業融資制度を利用することができます。しかし、一般社団法人によっては、中小企業融資制度の対象外になる場合があるため、利用可能かどうか具体的な要件については個別に確認する必要があります。
まとめ
運用上、融資上限額で借入できることは稀だと思いますが、ベンチャーキャピタル等からの出資や国のSBIRやアーリーハーベストプロジェクトなど資金の後ろ盾がある場合には、大きな融資額で借入できる可能性が広がりました。
この制度変更により、スタートアップがより手厚い資金調達支援を受けられるようになります。一方で、無担保・無保証人での大口融資となるため、事業計画の実現可能性などが厳しく審査される見込みです。
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