
ファイナンスとは
ファイナンスは「資金の調達・運用・管理」を通じて価値を生むための考え方と手法の総称です。企業・個人・公共のあらゆる経済主体に関わり、意思決定の基準を数値で与えるのが本質です。
ファイナンスの基本軸
資金調達:株式・債券発行、借入など「どう集めるか」
投資判断:設備/新規事業など「どこへいくら投じるか」
リスク管理:変動への耐性設計(金利/為替/事業リスク等)
価値最大化:限られた資金で**将来キャッシュフロー(CF)**を最大化
ファイナンスの主な種類
種類 | 主な内容 |
---|---|
コーポレート・ファイナンス | 資金調達、投資、資本構成、配当、M&A、DCF評価など企業経営領域 |
パーソナル・ファイナンス | 家計管理、貯蓄、投資、保険、ローン、資産形成 |
公共ファイナンス | 政府・自治体の予算、税収、公共投資、国債発行 |
仕事で役立つ6つの主要ポイント
1. 投資の意思決定(何にお金を使うべきか)
ROI・NPV・IRR・回収期間で将来CFを定量評価
コスト削減の可否ではなく、**「生み出される価値」**で判断
代替案を**同一条件(期間・割引率・リスク)**で比較
2. 資金調達のバランス
**デット(借入・社債)とエクイティ(株式)**を使い分け
金利・返済条件・希薄化・税効果・柔軟性を総合評価
資本コスト(WACC)最小化が企業価値を押し上げる
3. キャッシュフローの重視
損益よりキャッシュの入出時期と規模を優先
売掛/買掛、棚卸、前受/前払で**運転資本(Working Capital)**を最適化
資金繰り表で短期の資金不足を未然に回避
4. 企業価値の最大化
すべての判断は将来CFの現在価値を増やすかが軸
**DCF(割引キャッシュフロー)**で事業・プロジェクトを選別
**捨てる(撤退)**意思決定も価値最大化の一部
5. リスクとリターンのバランス
事業リスクが大きいほど要求リターン/割引率は高く
感度分析(売上/コスト/為替)、シナリオ(Best/Base/Worst)で意思決定の頑健性を点検
6. ファイナンス的思考・定量フレーム
「数字で考える」習慣:効果を可視化→意思決定の納得感
KPI/KGIで目標と経路を明確化(例:LTV/CAC、回転期間、在庫日数)
会計とファイナンスの違い
会計:過去の事実を記録・報告(PL/BS/CF)
ファイナンス:将来の意思決定と資金の配分・最適化
→ 会計で「現状を把握」し、ファイナンスで「未来を設計」します。
指標と計算式(テンプレ)
ROI(投資利益率)=(投資による利益)÷(投下資本)
回収期間=投資額をCFで回収するまでの年数
NPV(正味現在価値)=将来CFの現在価値合計 − 初期投資
IRR(内部収益率)=NPVが0となる割引率
WACC(加重平均資本コスト)=株主資本コストと負債コストの加重平均
投資判定の原則:
NPV > 0 → 採用
IRR > WACC → 採用
回収期間が許容期間内 → 採用候補
ミニケース:設備投資の合否判定
前提:初期投資1,000万円、5年間の年間CF、割引率はWACCを採用
手順
各年CFを見積もる(保守・売上・運転資本の変動も反映)
割引率=WACCで現在価値に割引して合計
NPVを算出し、IRRで感度と整合性を確認
価格改定・需要変動・稼働率を感度分析で検証
判断:NPV>0かつIRR>WACC、回収期間が許容内ならGo。境界なら代替案と比較。
KPI/KGI設計の実務例
KGI:営業CFの黒字化、ROIC>WACC、事業価値の増大
KPI(例)
LTV/CAC比:≥3.0
在庫回転日数:目標△15%
売掛回収サイト:△10日
設備稼働率:≥85%
運用ポイント:KPIは**原因(先行)**に寄せ、月次でレビュー→意思決定に直結させる
よくある失敗と回避策
損益で判断してキャッシュを見落とす → CF基準へ
割引率が恣意的 → WACCの算出根拠を明示
投資効果を平均値だけで評価 → 感度・シナリオで幅を見る
デット偏重/希薄化過多 → 資本構成の最適点を検討
KPIが多すぎて形骸化 → 3~5指標に絞り、意思決定に紐づけ
まとめ
ファイナンスは「数値で未来を設計する技術」。
投資はDCFで選び、資金調達はWACCを下げ、運転資本とCFで事業を回し、リスクに応じた割引率で意思決定し、KPIで運用する。これが企業価値最大化への最短ルートです。
FAQ
Q1. ROI・NPV・IRR、どれを優先すべき?
A. 基本はNPV(価値の絶対額)。IRRは直感的だが複数解や規模比較に弱い。ROIは会計上の利益依存でCFを反映しづらい。
Q2. デットとエクイティはどちらが有利?
A. 状況次第。デットは希薄化がなく税効果でWACC低下に寄与、ただし返済固定でリスク増。エクイティは柔軟だが希薄化コストが高い。
Q3. キャッシュが黒字でも資金ショートは起こる?
A. 起こります。売掛・在庫・投資のタイミングで資金繰りが悪化します。資金繰り表で先読みしましょう。
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