自由民主党 総合政策集 J-ファイルから読み解く2025年の政策動向
自民党が毎年、J-ファイルという総合政策集を出しているのをご存じでしょうか?自民党が目指すべき多様な政策が書かれた「総合政策集」です。自民党内の多くの政策構築機関が作成した各種提言書の内容も取り込まれており、記載した政策項目は『選挙公約』よりも多種多様で、実現に向けては長期的な挑戦が必要な政策も含まれています。
具体化に向けた法的措置や財源確保について時を待たねばならない項目はあるものの、自民党が目指している各種政策の方向性を示した総合的な資料となります。キーワードを検索して該当箇所を読むだけでも、来年度の国の政策動向やビジネスの進むべき方向性が見えてくるかもしれません。
政策理解の総合的なガイドライン
J-ファイルは単なる選挙公約集以上の価値があり、日本の政策立案の羅針盤としての役割を果たしています。政府が目指す長期的なビジョンと具体的な施策を包括的に理解できる貴重な資料です。
特徴的な強み
幅広い政策カバレッジ
選挙公約よりもはるかに広範な政策領域をカバーしており、経済、社会保障、外交、環境など、多岐にわたる政策の詳細を知ることができます。
長期的視点
短期的な選挙対策だけでなく、日本の将来を見据えた長期的な政策課題や挑戦も含まれています。
実務的な価値
- 政策の方向性を具体的に示し、企業の経営戦略立案に活用できます
- 各省庁の予算要求の背景を理解する助けとなります
- 政策実現に向けたロードマップを把握できます
活用方法
政策研究
キーワード検索機能を活用することで、特定の政策分野における政府の取り組みを効率的に理解することができます。
ビジネス戦略への応用
将来の規制改革や支援策を予測し、企業戦略の立案に活かすことができます。成長戦略や産業政策の方向性を把握することで、ビジネスチャンスを見出すことも可能です。
このように、J-ファイルは日本の政策立案プロセスを理解し、将来の展望を描くための重要なツールとして活用することができます。
全て読むのは大変ですので、要点のみAI チャットボットに質問してみてください。
経済・成長戦略
1. 物価高に対する取組み
物価上昇を上回って、賃金が上昇し、設備投資が積極的に行われるといった成長と分配の好循環が確実に回りだすまでの間、足元で物価高に苦しむ方々への支援を行います。物価高への対応に加えて、成長分野に官民挙げての思い切った投資を行い、賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現に取り組みます。
2. 成長と分配の好循環の実現
全ての人々が安心と安全を感じられる未来を創るために、物価上昇を上回って賃金が上昇し、設備投資や人への投資が積極的に行われ、成長と分配の好循環が力強く回っていく経済を実現します。
3. 付加価値の創出
高付加価値のモノとサービスをグローバル市場において、適正な価格で売ることのできる経済を実現します。中堅・中小企業の賃上げ環境の整備として、省力化投資の促進や価格転嫁の徹底等を進めます。また、輸出企業の競争力を強化し、中小企業を中心とする高付加価値化、労働分配率の向上、官民挙げての思い切った投資を実現します。
4. 事業再構築のための法制の整備
経営者の判断により早期の事業再構築を容易にするため、多数決によって金融負債の整理を進めることができる法制について検討し、早期の成立を目指します。
5. 公正取引委員会の体制・執行の強化
公正取引委員会の体制及び執行の強化を図るため、量的・質的に人材面の充実を図ります。また、専門性の高い外部人材も活用しつつ、公正取引委員会による提言機能を強化します。
6. 危機に強靱な経済財政の実現
日本経済のデフレ脱却を確かなものとし、日本経済の未来を創り、日本経済を守り抜きます。その中で、「デフレ脱却」を最優先に実現するため、「経済あっての財政」との考え方に立った経済・財政運営を行い、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現しつつ、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強靱な経済財政をつくっていきます。
7. 原油高・物価高に対する取組み
原油価格の高騰を踏まえ、燃料油価格の激変緩和策を年内に限って継続し、経済対策の策定とあわせて、骨太2024を踏まえ、早期の段階的終了に着手すべく取り組むとともに、状況を丁寧に見極めながら、物価高の大きな影響を受ける低所得者や業種等への支援をきめ細かく行います。地方創生臨時交付金により、生活者や事業者の支援、給食費負担軽減など、地方の実情に応じた対応を図ります。国民生活や産業に不可欠な食料、物資・原材料、エネルギー等の安定供給確保を図るため、サプライチェーンの強靱化を図ります。労務費を含む価格転嫁の促進、強化した賃上げ促進税制の活用促進や省力化支援による生産性向上への支援、赤字でも賃上げする企業に対する補助金の補助率引上げなどにより、中小企業も含めた賃上げを後押しします。生活関連物資等の値上げについて注視し、「便乗値上げ」の防止に取り組みます。労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分について、中小企業の取引価格の転嫁対策を徹底します。資材費等の価格高騰等の影響を受ける中小企業の資金繰りを支えるとともに、過剰債務の軽減を含めた中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの支援を行います。
8. 成長志向の中小・中堅企業への支援
地域経済において需要と供給の好循環を起こし、地域に良質な雇用を生み出すためには、国内外の需要の開拓や積極的な投資を通じて、「稼ぐ力」を大きく伸ばす企業の存在が重要です。こうした役割を継続的に果たしていくためには、一定の企業規模が必要です。売上高100億円を超える会社は、それ以下の売上の企業と比べて、域内仕入額や直接輸出額、一人あたり賃金が高いというデータもあり、地域内の中小企業・小規模事業者の持続的発展に繋げていくためにも、各地域において中小企業から売上高100億円の企業へと成長する企業を創出していく必要があります。
また、中小企業から中堅企業、更にその先へとシームレスに成長していけるよう、中堅企業の課題にも対応した成長環境を構築することも重要です。このため、経営者の成長意欲を高め、企業の成長を実現するための様々な気づきを得る経営者ネットワークの形成や、飛躍的な成長につながる伴走支援の強化、成長志向の中小企業を応援する社会的機運の醸成など、売上高100億の企業を目指す経営者を継続的に増加させていく仕組みの構築を目指します。また、2024年を「中堅企業元年」として、「産業競争力強化法」で、初めて中堅企業を定義し、成長志向の中堅企業等に対して、複数の中小企業をM&Aする場合の税制措置等の集中的な支援措置を講じることとしました。
中堅企業の自律的な成長を実現するため、中堅企業の役割や課題を明らかにした上で、官民で取り組むべき事項をビジョンとしてとりまとめます。成長を後押しする資金調達手段の一つとして、資本性資金(エクイティ・ファイナンス及びメザニン・ファイナンス)の理解、認知の拡大、更なる活用の促進を図ります。また、中小・中堅企業の成長段階に応じて、販路開拓、設備投資、研究開発、組織・人材整備、M&A、資金調達等の政策支援をシームレスに講じていきます。加えて、地方の中小・中堅企業の更なる賃上げに向けて、大規模な成長投資に対する補助金を継続・強化します。
9. 中堅・中小企業の海外展開への支援
日本では生産性が高いにも関わらずグローバル化していない企業が多数あり、特に中小企業においてその傾向が顕著です。生産性が高く競争力のある企業がグローバル化することで、更に生産性は高まり、ひいては日本の経済成長を促進させ、国内の雇用も増加させます。中堅・中小企業の新たな輸出への挑戦を後押しするため、「新規輸出1万者支援プログラム」を通じ、海外事業戦略の立案、海外市場に適合する商品開発、商談機会の創出等、早期の輸出実現とその後の輸出継続・拡大に向け、事業者の多様な課題に応じた支援を実施します。また、中小企業は、海外展開のための支援者に出会うことが難しいことを踏まえ、海外進出のパートナーに出会えるような取組みを進めると共に、海外取引における企業のリスク軽減に貢献する貿易保険の利用拡大を促進します。
10. 新輸出大国コンソーシアム等を通じた支援
「新輸出大国コンソーシアム」を中心に、海外市場や現地のビジネス環境に詳しい専門家を国内外に配置し、一貫した伴走型支援を行うことで、中堅・中小企業の迅速かつ的確な情報収集と経営判断をサポートします。また、海外現地においてどのような商品が求められているのかという最新のニーズを収集し、その情報を中小企業の海外展開の成約率向上に活用するための取組みを構築します。さらに「ジャパンモール」などを通じて、海外のEC事業者等との連携を強化することで、中堅・中小企業の越境EC取引の活用を更に促進します。また、海外展開支援の担い手となる地域商社等が連携して行う中堅・中小企業の販路開拓の取組みを促進し、貿易手続きを円滑化するデジタル・プラットフォームの火曜・データの標準化等により貿易DXをはじめ輸出支援ビジネスの育成を推進します。また、EPAの利活用促進を通じた輸出促進にも取り組みます。海外展開の経験を積んだ中小企業に対しては、社長の右腕となる人物を育てるような人材育成を行い、海外進出の体制をより強固にしていくことを促進します。
11. 中小企業等の事業再構築
中小企業・小規模事業者等はGX、賃上げ、人手不足、サプライチェーンの再編等のポストコロナ時代の経済社会変化や産業構造転換への対応を迫られています。このような中、中小企業・小規模事業者等がこうした変化に大胆に対応し、リスクを取りながら新たな取組みにチャレンジして更なる成長を目指すための事業再構築を中小企業全体に促していくことは重要です。そこで、中小企業・小規模事業者等の新分野展開や業態転換を補助金を通じて切れ目なく支援していきます。
12. 事業再生の環境整備
コロナ禍を経て経営改善・事業再生のニーズが高まっていることを踏まえ、「再生支援の総合的対策」に基づき、増大する債務に苦しむ中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジ支援を着実に進めます。改正した信用保証協会向けの総合的監督指針を通し、保証付融資の割合が高い中小企業などに対する協会の主体的な支援や、中小企業活性化協議会への案件持込等を促進するとともに、活性化協議会の支援レベルの底上げなどを進めます。
13. 小規模事業者の持続的発展
2024年は小規模企業振興基本法の制定から10年、同基本法に基づく基本計画の改正から5年、小規模事業者支援法の改正から5年となる節目の年であり、小規模事業者の多様な課題を踏まえた小規模企業政策の見直しを行います。小規模事業者が自社の強みを強化し、事業拡大や持続的発展をしていくためには、経営者自らが中長期的な経営計画を策定し、経営の自走化を目指す必要があります。そのため、小規模事業者支援法に基づく経営発達支援計画や事業継続力強化支援計画、小規模事業者持続化補助金、マル経融資を通じ、商工会・商工会議所による伴走支援を一層進めます。そのためには、商工会・商工会議所による小規模事業者の支援体制の強化が必要であり、広域的な支援体制の構築、他の支援機関との連携強化、経営指導員の質・量の確保を含めた制度見直し、実効性を高める取組みを進めます。経営指導員の業務が質・量ともに急増しており、人件費等の絶対額が不足しているため、基準財政需要額の算出方法も見直す方向で検討します。多様な課題に対応するための個々の経営指導員のスキルアップを行い、身につけたスキルや得意分野を見える化しナレッジ・ノウハウを共有することに加え、高いスキルを持った経営指導員が広域的に活動していく取組みを広げていきます。
14. 中小企業・小規模事業者等の生産性向上
人口減少社会において一人当たりGDPの成長を目指すには、全就業者数の7割、付加価値の5割強を占める中小企業・小規模事業者の労働生産性の向上が必要です。また、中小企業・小規模事業者が持続的な賃上げを実現するにあたっても生産性向上は必要不可欠です。このため、中小企業・小規模事業者が生産性向上のために行う取組みを支援します。具体的には、生産性の向上を支援する補助金を充実させ、ものづくり補助金を通じた設備投資、オーダーメード型の高度な省力化、デジタル化のための腰を据えた投資、小規模事業者持続化補助金を通じた販路開拓、IT導入補助金を通じたIT導入、事業承継・引継ぎ補助金を通じた事業承継を切れ目なく継続的に推進します。加えて、人手不足に対応し、中小企業・小規模事業者にとって簡易で即効性のある省力化投資支援をカタログ型省力化補助金を通じて継続的に実施します。また、中小企業が画期的な製品・サービスを生み出すことで付加価値を増加させていくことも労働生産性向上のためには重要です。そこで、中小企業が行う研究開発を予算措置や税制で後押しし、新商品・サービスの開発・販路開拓の支援等を実施します。
15. 中小企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進
中小企業のDX推進のため、中小企業自身のデジタル化、DX化のみならず、中小企業を支える様々な補助金や行政手続もデジタル化、DX化を進めます。中小企業のデジタル化、DX化については、中小企業・小規模事業者をサポートする人員体制を整備します。加えて、クラウドツール等の購入を補助するIT導入補助金等を通じて、デジタル化、DX化を強力に推進します。更に、中小企業が利用しやすいサイバーセキュリティお助け隊サービスの普及支援などを通じ、セキュリティ対策も推進します。これらのデジタル化、DX化の取組みは、インボイス制度への対応にも資するものです。また、新たな中小企業支援コミュニティの活性化に向けて、ローカルベンチマークや地域経済分析システムを活用するとともに、中小企業の補助金申請データ等を一元化したデータ連携基盤である「ミラサポコネクト」を活用し、中小企業に対する支援機関や金融機関等による能動的な支援につながる、企業情報や支援ニーズを集約したマッチングプラットフォームの構築を進めていきます。併せて、中小企業のDX化をサポートする地域金融機関等の支援機関等が、中堅・中小企業等に対してDX支援を実施する際に考慮すべきことをまとめた「DX支援ガイダンス」を更に普及していきます。
16. 中小企業金融を支える金融支援
今なおコロナの影響に苦しむ中小企業や、資材費等の価格高騰等の影響を受ける中小企業の資金繰りの円滑化のため、信用補完制度の活用や政府系金融機関による融資等を通じて、セーフティネット機能を果たすとともに、経営改善・事業再生や安定的な事業継続・更なる事業成長に必要となる資金の供給も着実に行っていきます。特に、経済のコロナ禍からの回復が進む中で、金融規律の正常化を進める必要がある一方、「稼ぐ力」の向上に向けた中小企業の経緯努力を促しつつ、民間金融機関の経営支援を引き出し、中小企業の資金調達を円滑化していきます。
17. 個人保証に依存しない中小企業金融の促進
「経営者保証に関するガイドライン」、「事業承継に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」の一層の周知・普及を行うとともに、「経営者保証改革プログラム」に基づき、スタートアップ・創業、民間金融機関による融資、信用保証付融資、中小企業のガバナンス、の4分野に重点的に取り組みます。特に、本年3月に信用保証料上乗せにより経営者保証の提供を不要とする保証制度を創設したことを踏まえ、信用保証付融資における経営者保証の提供を不要とする取組みについての一層の周知と積極的な活用を促します。また、M&Aや事業承継時に経営者保証を解除する取組みを一層促進します。
18. 下請取引の適正化
頑張る中小企業・小規模事業者が、大企業との取引において、不当な発注・値引き、契約を余儀なくされることなく、労務費、原材料、エネルギーなどのコスト上昇分をサプライチェーン全体で適切に負担できるよう、公平・公正な取引環境を実現します。サプライチェーンの2次・3次以降の隅々にまで価格転嫁・取引適正化が構造的に行われるよう、下請法の改正を検討します。下請Gメンを活用して監督体制を強化し、下請代金法による厳正な執行等を通じて、下請取引の適正化を進めます。また、9月と3月の価格交渉促進月間を通じて、大企業と中小企業の価格交渉を促進します。更に、業界による自主行動計画の策定を加速するとともに、大企業と中小企業の連携強化を目指す「パートナーシップ構築宣言」について宣言企業の拡大・実効性強化に取り組みます。
19. 中小企業・小規模事業者の活性化、地域経済の発展につながる人材の育成・確保
経営者が「稼ぐ力」の向上に向けて経営戦略を実行するに当たっては、必要な人材の確保も不可欠です。人材は貴重な経営資源であり、中小企業が人材確保をコストではなく「未来への投資」と捉え、賃上げや、従業員一人ひとりが潜在力を十分に発揮するための環境整備に挑戦することが重要です。このため、経営戦略と人材戦略の一体的な構想・実践に資する人材活用ガイドラインの活用を促進するとともに、中小企業の経営層、経営幹部候補層等を対象とした中小企業大学校の研修プログラムの充実に取り組んでいきます。
20. 中小企業・小規模事業者における防災・減災対策の支援
近年、中小企業・小規模事業者に大きな影響を与える大規模な自然災害が頻繁に発生しています。災害発生時における事後の復旧・復興対策のみならず、今後、発生が予想される自然災害に備え、中小企業・小規模事業者においても事前の防災・減災対策を進めていくことが急務です。こうした状況を踏まえ、2019年7月に施行した「中小企業等経営強化法等」(中小企業強靱化法)に基づいて、事業者が策定した防災減災に係る取組みを「事業継続力強化計画」として認定する制度を実施しています。認定を受けた中小企業・小規模事業者に対し、税制優遇や金融支援などから多面的な支援を行い、事業継続力強化計画に関する制度の普及啓発、計画策定の支援等により防災・減災対策を後押ししていきます。更に、小規模事業者支援法に基づく「事業継続力強化支援計画」に基づき、商工会・商工会議所と関係市町村が一体となって、地域の災害リスクを踏まえた小規模事業者の事業継続力強化計画の策定支援やフォローアップの実施など、実効性のある取組みを進めます。
21. 地域のエリア価値向上に向けた商店街の活性化等
中小小売・サービス業者(中小商業者等)が集積する商店街等は、地域コミュニティの担い手として欠くことのできない重要な存在です。ライフスタイルや地域課題等が多様化する中、地域のエリア価値向上を図るべく、商店街組織等の収益力強化や事業推進体制の強化等を通じて地域経済の活性化を後押ししていきます。また、商店街等が持続的に発展するためには、地域経済を自律的に循環させる仕組みを構築していくことが重要であり、人口や地理的特性、必要とされるサービスの内容や性質を踏まえた地域の社会課題解決や地域のエリア価値の向上に向けた戦略を作り、地域資源を活かしたビジネスの実施を促進します。
22. 事業承継への集中支援
経営者の高齢化が進む中、休廃業・解散件数は約5万件程度と依然として高い水準です。中小企業・小規模事業者の貴重な技術や雇用などの経営資源が失われることのないよう、事業承継を進めることは「待ったなし」の課題です。このため、47都道府県に設置された「事業承継・引継ぎ支援センター」において、「親族内承継」、「従業員承継」、「第三者への引継ぎ(M&A)」といったあらゆる事業承継の相談にワンストップで対応します。また、事業承継時の贈与税・相続税の負担を実質ゼロとする「事業承継税制」や、「中小企業M&A税制(経営資源の集約化に資する税制)」の活用促進を図ります。更に、M&A後の成長に向けた円滑な経営統合(PMI:Post Merger Integration)の取組の定着を図るため、PMIにおけるポイントを解説する「中小PMIガイドライン」やPMIの実施時に活用できる「PMI実践ツール」の浸透を図ります。加えて、M&Aについても、選択肢の一つとして安心して行えるよう、基本的な指針であり、健全な取引環境を担保する「中小M&Aガイドライン」について、取引に関与する者に対する遵守の徹底を図ります。事業承継税制については、2024年度税制改正において、法人版個人版の特例承継計画等の提出期限を2年延長しましたが、事業承継の更なる加速化のため、特例措置の適用期限が到来するまでの間、本税制を最大限活用できるよう役員就任要件の見直し等を検討します。また、個人版事業承継税制において、同族会社や事業用資産を有しない個人との課税の公平性や制度の濫用を防止する観点等を踏まえつつ、青色申告書の貸借対照表に計上される事業用資産を対象とすることに関して、同税制の適用期間中の実施状況等を踏まえ検討します。
23. 小規模企業等に係る税制
小規模企業等に係る税制の在り方については、働き方の多様化を踏まえ、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得に対する課税の在り方等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、正規の簿記による青色申告の普及を含め、記帳水準の向上を図りながら、引き続き給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」の在り方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に早期に検討を進めてまいります。
24. 創業への集中支援
創業の手法が、ゼロからの創業だけでなく、第二創業・ベンチャー型事業承継や、経営資源引継ぎ型創業など、多様化してきています。こうした状況を好機と捉え、今後は、多様な担い手による、多様な手法での創業を促すべく、支援を加速していきます。将来的に創業者となる人材を輩出し、開業率向上につなげるため、進路選択の岐路にある高校生を中心に、新進気鋭の起業家の体験談に直接触れ、関心を持った層を更にプレイアップするような起業家教育を一気通貫で実施することによって、創業関心層の底上げを図ります。加えて、市区町村等が行う、創業支援や創業に関する普及啓発への取組みへの支援の一層の促進、成長志向の創業を行おうとする起業家への支援強化を行います。
25. 社会課題解決事業への支援
地域の社会課題の解決の担い手であり、収益性を確保し持続的に成長するローカル・ゼブラ企業を創出・育成するエコシステムを確立するべく、2024年3月に策定された「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」を着実に普及します。また、インパクト投融資を促進し、共感による人材の流れを取り込みながら、こうしたエコシステムを全国各地に構築していくに構築していくため、20の地域で実証事業を実施し、ローカル・ゼブラ企業の事業モデルの整理や、中小・小規模事業者でも取り組みやすい社会的インパクトの評価手法の確立に取り組むとともに、ローカル・ゼブラ企業への理解を広く普及し、チャレンジしやすい環境を整えます。
26. 約束手形の支払いの短縮化
中小企業等が受け取る約束手形については、2026年の利用廃止に向けて、①約束手形の支払い期間を60日以内へ短縮化する下請法の指導基準変更が確実に遵守されるよう取り組むとともに、②利用の廃止に向けたプロセスをロードマップとして示せるよう、産業界と政府が一体となって取組みを進めていきます。更に小切手の全面的な電子化も行います。
27. 賃上げに向けた環境整備
過去最大の最低賃金引き上げや人手不足の影響を大きく受ける中小企業・小規模事業者等が賃上げできるような事業環境を整備できるよう、労務費を含む価格転嫁の促進、強化した賃上げ促進税制の活用促進や、下請取引の適正化、中小企業の新分野展開や業態転換や省力化、生産性の向上を後押しする補助金による支援を強化します。
28. 地方や中小企業・小規模事業者への重点的な支援
最低賃金引き上げをはじめとした急速かつ大規模な経営環境の変化に直面している中小企業・小規模事業者は、新たな需要が喚起される領域・分野を適確に把握した上で、多様なニーズに対応した付加価値をきめ細かに提供できるよう、経営力を強化していく必要があります。このため、地域の特性に応じたよろず支援拠点の機能強化を図るとともに、よろず支援拠点と地域の支援機関との連携強化を通じた各地域の経営支援力の強化に取り組みます。また、中小企業・小規模事業者が自ら取り組むべき経営課題を設定して自己変革していけるよう、経営者等との対話を重視した伴走支援の更なる定着を推進します。
29. 標準化活動の加速化への支援
革新技術をいち早く社会に実装し、世界に普及させるためには、「国際標準」の獲得をはじめとする、世界に先駆けたルール形成が極めて重要です。このため、官民の適切な役割分担と、省庁や産業分野を越えた連携の下、企業の経営戦略に標準化を位置付け、標準化を加速化させるための体制整備を進めます。また、民間における、標準化を担う人材育成や持続的な国際標準化活動のための支援を拡充します。特に、AI、バイオ、マテリアル、半導体、Beyond 5G(6G)、健康・医療等、我が国の新しい成長エンジンとなる分野における国際標準化の獲得・活用に重点的に取り組みます。
研究開発成果の社会実装を進めるため、政府の研究開発事業において、社会実装戦略、国際競争戦略、国際標準戦略の明確な提示とその達成に向けた取組みへの企業経営層のコミットメントを求める事業運営やフォローアップ等の仕組みの拡充・横展開を進めます。加えて、改正産業競争力強化法において創設された、産学共同研究開発におけるオープン&クローズ戦略の策定・活用計画の認定制度を通じて、研究開発の初期段階からの市場創出を見据えた標準化活動や、経営層の標準化活動への積極的な関与を推進します。
30. 産業インフラの整備
地域の立地環境を整備するため、工業用水等の生産拠点を支えるインフラの有効活用、整備、強靱化を進めると共に、産業用地整備の迅速化に向けた措置を検討します。
31. デジタルインフラ基盤の整備
デジタルによる新たな価値創造を促進し、脱炭素社会・循環経済の実現といった社会課題の解決とイノベーションの両立を図るとともに、「Connected Industries」や DFFT の趣旨を実現するため、企業や業種を横断して、データやシステム連携を行うためのプラットフォーム構築等の取組である「ウラノス・エコシステム」を推進します。
具体的には、先行ユースケースである蓄電池サプライチェーンでのカーボンフットプリント算出に向けたデータ連携システムの運用を着実に進めるとともに、欧州Catena-X(欧州等における自動車のバリューチェーン全体でデータを共有する枠組み)をはじめとする海外プラットフォームとの相互運用性確保等にも取り組みます。これらの成果を踏まえた上で、ライフサイクル全体でデータ連携を行う情報流通プラットフォーム及び運用体制の構築を推進します。
今後 10 年を見据えたデジタル時代の社会インフラ整備を目的とする「デジタルライフライン全国総合整備計画」に基づき、先行地域における自動運転サービス支援道、ドローン航路、インフラ管理 DX のアーリーハーベストプロジェクトを本年度から開始するとともに、その成果の他地域への展開を図ります。その際、デジタルライフラインの共通の仕様や規格等を策定し、事業者等に遵守を求めることで、重複投資を回避します。加えて、災害からの創造的復興を目指し、石川県における奥能登版デジタルライフラインの整備を新たなアーリーハーベストプロジェクトの一つとして支援し、他地域への展開が可能な汎用モデルを実現します。
32. AI・半導体政策の推進
生成AIを巡る急速な技術革新を受け、その用途拡大によって、人手不足やGX等の社会課題を解決するとともに、革新的な製品・サービスを創出し、経済成長を実現することが期待されており、そのためにも、生成AIをあらゆる分野へ導入し、高度化させることが重要です。
これを実現するには、生成AIそのものの開発に加え、計算需要とともに増大する電力需要の抑制に不可欠な低消費電力性が重要であり、半導体・データセンター等のハードと、ソフト(生成AI)が、相互円滑に機能する技術基盤や産業基盤、人材基盤を国内に構築することが必要です。
こうした基盤構築に向け、国内の生成AIモデルの開発を進めるとともに、民間による計算資源(データセンター)やデータの整備及びその高度化に取り組みます。半導体については、AI等と親和的な最先端半導体の設計開発を支援します。特に、次世代半導体については、必要な出融資の拡大等、多様な手法を用いてその量産を実現するべく、積極的に支援を行います。
加えて、先端半導体のみならず、レガシー半導体や製造装置、素材を含めたサプライチェーン強靱化に向け、他国に比肩する規模で、長期にわたり、生産基盤拡充と研究開発を支援するとともに、人材育成やインフラ整備を支援します。
33. スタートアップの創出
コストカット型経済から高付加価値創出型経済への移行に向けて、スタートアップ支援を強化していきます。日本経済の構造改革を先取る存在として、ユニコーン企業などグローバルで活躍するスタートアップの創出を促進します。
スタートアップ・エコシステム(起業家、投資家、大企業、大学、独法、行政等が連携し、スタートアップが自律的、連続的に生み出される仕組み)の構築・強化を行います。また、人手不足対応で期待されるロボット分野において、様々な技術を有するスタートアップによる開発・実装を促す開発環境を構築します。
日本を代表するようなスタートアップの成長や海外展開を官民一体で集中支援する JStartup プログラムを推進します。スタートアップの新しいアイデア・技術を政府・地方自治体が積極的に活用し、社会課題の解決や経済の成長を図るよう、国や地方公共団体による公共調達を抜本的に強化します。高度かつ独自の新技術を有するスタートアップの調達促進に向けた仕組みの活用等を積極的に進めるとともに、SBIR制度を推進します。
スタートアップの新しいアイデア・技術を大企業が積極的に活用し、イノベーション創出を加速させるために、民間調達を促進するようなスタートアップと事業会社の調達の在り方を提示することなど、官民による連携を強化し、民間調達を促進します。
大規模かつ長期的な成長資金供給のために、国内外の機関投資家や事業会社の投資拡大のための環境整備をします。スタートアップが集積するシリコンバレーに拠点を設け、グローバル展開を目指すスタートアップ等を受け入れ、現地のアクセラレーター等からの指導・助言を受ける育成プログラムを提供するとともに海外展開を支援します。また、日本のスタートアップや起業家が海外での事業展開や資金調達を目指すプログラムなどを進めていきます。
スタートアップエコシステムの裾野拡大に向け、地域における成長志向の女性起業家のための支援体制の構築、事業計画相談や支援者とのマッチングイベントなどを支援します。大企業からスタートアップへの投資促進やM&A による事業の融合や連携を通じたオープンイノベーションを促進します。
最先端の研究開発成果を事業化し、イノベーションで世界に貢献するテック系スタートアップを創業時から成長段階に応じ、研究開発から量産の実現まで中長期的かつ一貫した支援を強化します。新技術や斬新なビジネスモデルで地域の課題を解決し、豊かな暮らしを実現する地方発スタートアップの創出を、地域の既存中核企業との連携や都市部との人材交流促進、企業と大学が連携したインキュベーション(創業支援)施設の活用・整備、実証フィールドの整備、地域の強みを活かした自治体や事業化支援機関、公設試、地域企業、地域大学、産総研などの協力体制の構築等により支援します。
また、大学等が持つ技術シーズの事業化を促進するため、研究者や起業直後のスタートアップと、外部経営人材とのマッチング支援を行います。大学の研究者など有為な人材が起業しやすいよう、兼業規定や報酬について大学ごとのルールの明確化に加え、共同研究や知的財産権についての規定の整備を促すなど、起業意欲を支える環境整備に取り組みます。
34. 「スタートアップ育成5か年計画」の着実な推進と強化
日本経済の活性化と成長を加速させるため、スタートアップ支援策を引き続き強化します。「スタートアップ育成5か年計画」を着実に進め、「アジア最大のスタートアップハブ」を実現します。
スタートアップ・エコシステムの強化、人材・事業・資金の好循環の創出に向けて、「スタートアップ育成5か年計画」を着実に進めつつ強化するとともに、政府における司令塔を設置し、スタートアップ政策の一元的・効率的な実行、海外を含めた積極的な情報発信等を行います。
35. スタートアップの創業等支援
スタートアップの成長にかかせない高度な経営人材や技術者を確保すべく、優れたアイデア・技術を持つデジタル人材等を発掘・育成するとともに、同様の取組みを地方でも実施し、地方のデジタル人材の育成・確保を推進します。
また、ディープテック等の分野においても同様に、優れた技術・アイデアを有する若手を含めた人材発掘・起業家育成を推し進めます。起業に関心がある層が考える失敗時のリスクとして個人保証が挙げられていることを踏まえ、創設した経営者による個人保証を不要とする創業時の新しい信用保証制度の活用を促進します。
アントレプレナーシップ教育を採り入れる高校・高専の重点的支援など、初等中等段階からの起業家教育を充実させます。若者が躊躇なくスタートアップに挑戦するとともに、社会課題解決と経済成長の二兎を追うため、インパクト・スタートアップを後押しします。そのため、投資家・金融機関、起業、自治体等の幅広い関係者が対話・発信するインパクト・コンソーシアムを進めていきます。また、資金調達の多様化など支援制度を充実します。
36. スタートアップへの資金供給の拡充
SBIR制度の推進や、入札参加資格要件の緩和やスタートアップ技術提案評価方式の活用等により、政府・自治体におけるスタートアップからの調達を大幅に拡充します。国内外のベンチャーキャピタルに対する有限責任投資による資金供給等やベンチャーキャピタルとも協調した助成を引き続き強化します。これにより、国内のベンチャーキャピタルの育成に加えて、海外の投資家・ベンチャーキャピタルからの投資を呼び込みます。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)等の公的投資機関からの大規模かつ長期的な成長資金供給のために、国内VCへの投資等のための環境整備を図ります。イノベーションで世界に貢献するテック系スタートアップ、特に宇宙・量子等やGX分野のスタートアップに対して、創業時から成長段階に応じ、一貫した支援を強化します。
更に、デュアルユース技術の防衛分野での迅速な活用に向けた基盤の整備など、「デュアルユース・スタートアップ・エコシステム」の構築に取り組みます。
37. スタートアップの創出・育成のための環境整備
海外トップ大学の誘致も含め、当該大学と連携したスタートアップ・キャンパスを創設します。ストックオプション等の環境整備を図るとともに、スタートアップ関係税制において、税制の将来にわたる効果を見据えた動的思考を活用します。
スタートアップを未上場段階で大きく成長させ、次のイノベーションに繋げるため、未上場株式取引のためのプラットフォーム(セカンダリー・マーケット)を制度化します。大企業からスタートアップへの投資促進やM&Aによる事業の融合や連携を通じたオープンイノベーション、経営人材等のマッチングを促進します。
大学・国研等の技術シーズと大企業等の経営人材とのマッチング強化、大学が持つ知財の活用、大学ファンド等を活用した世界トップレベルの研究者呼び込み等に取り組みます。「地方発スタートアップ」の創出を積極的に支援するため、地域中核企業との連携や都市部との人材交流、地方大学が連携した創業支援施設やサテライトオフィス、福島浜通りでの実証フィールド、分散型自立組織(DAO)の整備等を行います。
日本を代表するようなスタートアップの成長や海外展開を官民一体で集中支援するJStartupプログラムを推進するとともに、地域において選定したJ-Startup地域版企業に対しても、重点的支援を行います。
スタートアップの新市場の創出を促進すべく、規制改革について知見を有する弁護士がスタートアップを支援する取組みを行い、グレーゾーン解消制度や規制のサンドボックス制度の活用を促進し、規制改革を推進します。
38. 組込みシステム関連産業のデジタル・トランスフォーメーション
あらゆる産業においてデータやデジタル技術を活用することが求められる時代を迎え、デジタル技術導入による競争力強化が不可欠となっています。中でも、競争力の源泉であるデータを取得し処理する、製品等の「頭脳」にあたる電子部品(組込みシステム)や、それをコントロールするソフトウェア(組込みソフトウェア)のレガシー刷新が求められています。そこで、こうした組込みシステム等のデジタル・トランスフォーメーションを推進する支援体制の構築を目指します。
39. 自動車・モビリティ産業の支援
自動車・モビリティ産業では、GXと並んでデジタル化が競争軸になりつつある中、SDVに必要な技術開発や自動運転の社会実装の早期実現、脱炭素やサプライチェーン強靱化に資するデータの利活用を促進し、地域における移動課題の解決と、2030年のSDV(Software Defined Vehicle)世界市場シェア3割獲得を目指します。
40. 地域未来牽引企業等への支援
地域未来牽引企業等の地域経済・社会を牽引する事業を行う企業に対して、地域未来投資促進法の更なる活用の促進をはじめ、予算、税制、金融、規制の特例等の支援策を重点投入することで、地域の支援機関と連携した新事業展開等への取組みを後押ししつつ、地域の特性を生かした付加価値の創出を促進し、地域に経済波及効果を生み出すことを目指します。また、地方公共団体等の地域内の関係主体と連携しつつ地域・社会課題解決と収益性との両立を目指す取組みを促進します。
41. 国内バイオ医薬品開発・生産体制の強化
製薬産業を我が国の基幹産業と位置付け、創薬力の強化を図るため、創薬ベンチャーの実用化開発支援や抗体医薬品・再生医療等製品などのバイオ医薬品の生産体制の整備を推進します。
42. バイオものづくり革命の実現
地球規模の社会課題の解決と、経済成長との「二兎を追うことができる」バイオものづくりの速やかな社会実装に向けて、この分野で世界をリードしていくとの明確な決意の下、大胆かつ重点的な投資を行い、微生物設計・開発プラットフォーム事業者の育成、異分野事業者との共同開発の推進、生産技術・能力の強化、基盤技術開発と拠点形成、グローバル市場の創出及び獲得等、総合的な取組みを加速していきます。
43. 医療上必要不可欠な医療機器の安定供給
新型コロナ感染症の教訓も踏まえ、医療上必要不可欠な医療機器の安定供給に万全を期すため、サプライチェーンを把握するとともに、開発支援などにより緊急時における供給量を高める等の取組みを平時から進めます。
44. 健康分野の成長産業の創出
高齢化・人口減少が進展する中で国民の健康増進の重要性は高まっており、これを支える予防・健康づくり分野の成長産業を創出・振興します。このため、健康経営を通じた投資を促進するとともに、PHRを活用したサービスのユースケースの創出、AMEDを中心としたエビデンスに基づくサービスの普及、介護保険外サービスの振興、ヘルステックスタートアップ振興の地域拠点の育成等を進めます。また、日本型インバウンドモデルの確立をはじめ、医療の国際展開の更なる推進を図ります。
45. 大阪・関西万博の成功へ
2025年大阪・関西万博を、AI、ロボット、ヘルスケア、GX、デジタル、モビリティ、スマートシティといった分野での新技術の社会実装を先行体験する「未来社会のショーケース」として活用し、イノベーションの力で変革し続ける日本を発信する絶好の機会とします。併せて、万博を契機としたビジネスマッチング、訪日観光客の拡大等にも取り組みます。
46. 対日直接投資の推進
対日直接投資促進のための政府横断的な機能を強化し、海外企業の国内立地等の諸手続きを大幅に簡素化しワンストップ化します。国の各省庁及び立地自治体の諸手続きを横断的にワンストップ化し、JETROの対内直接投資推進業務を更に拡充します。また、経済安全保障の観点にも留意しながら日本企業の経営力強化や地域活性化のための外資誘致・活用、日本企業と海外企業の協業を通じたイノベーション創出を推進します。
47. インフラ海外展開の推進
新興国を中心としたDX/GXや経済安全保障等の新たなインフラ需要を積極的に取り込み、我が国の経済成長につなげるため、積極的なトップセールスや案件形成・事業化への政策支援等を実施します。また、先進国においても、インフラの老朽化や経済安全保障への対応によるインフラ需要にも積極的に対応していきます。
また、国際情勢の変化に応じてニーズが高まる貿易保険のリスク対応能力強化を通じて、日本企業のインフラ海外展開を力強く後押しします。
48. 自由貿易体制の推進
WTOを中核とするルールベースの多角的貿易体制の維持・強化のため、紛争解決制度改革の実現やルールメイキング手段としてのプルリ交渉の活用等のWTO改革について取り組みます。また、公平な競争条件確保のため、過剰供給問題や、その背景にある市場歪曲的な措置への対応を進めます。
CPTPP協定の着実な実施を確保し、協定のハイレベルを維持するために、一般直しの議論を主導するとともに、RCEP協定の各国の透明性のある履行確保を進めます。インド太平洋経済枠組み(IPEF)の参加国間で連携し、地域の繁栄と経済秩序の構築に取り組むとともに、米国にはTPPの復帰を働きかけます。
更に、新規のEPA交渉や投資協定交渉の推進を通じ、自由で公正な経済秩序を維持・強化します。また、同志国との産業政策の協調に取り組みます。具体的には、経済版「2+2」等も活用し、米国との経済分野での連携深化を図ることを始め、EUやG7などの有志国と、半導体やGX、経済安全保障など重要分野における産業協力を進めます。
更に、アジア地域を中心にサプライチェーン強靱化を実現するため、地域大でのデータ共有・連携基盤の整備に向けて、企業によるデータ活用の実証支援を進めます。
49. グローバルサウス諸国との連携強化
地政学リスクが高まる今、グローバルサウス諸国との連携強化を通じて、成長する巨大市場の取り込み、脱炭素化と経済成長の両立、重要物資の確保やサプライチェーン強靱化などに資する取組みを進めます。具体的には、フィージビリティ調査や実証事業の実施に加えて、実証後の施設・設備の実装まで含めて強化し、必要な人材確保、案件発掘や伴走支援、貿易保険のリスク対応能力強化を通じた支援など政策パッケージを組成し支援していきます。
また、有志国との連携や第三国を経由した進出など、グローバルサウス諸国を中心に、面的な市場獲得を目指します。
50. ウクライナ復興支援の更なる推進
ロシアによるウクライナ侵略の情勢は変化しつつあり、日本企業の強みを活かす形でのウクライナ復興への一層の貢献が求められる中で、官民一体で「日本ならでは」の支援を継続して実施していきます。また、ウクライナはエネルギー供給等、周辺国との連携強化が重要であることから、東欧などの周辺国とも協力し、ウクライナ復興を推進していきます。
51. 経済のデジタル化に対応した新たな国際課税制度の整備
経済のデジタル化に対応した新たな国際課税制度に係る国際的な合意や国内法化、関連税制の見直しなどを通じて、日本企業に過度な負担を課さないように配慮しつつ、企業間の公平な競争環境を整備し、日本企業の国際競争力の維持・向上につなげます。
52. 知財・無形資産の投資・活用による「成長型経済」への変革
世界はデジタル化とグリーン化を基軸とした経済・社会変革競争に突入しており、日本もイノベーションによって差別化を図り、知的財産を活用して有利な地位を確保することが必要です。そのためには、知財戦略を経営戦略に組み込む日本企業の経営変革が重要です。
53. 国際標準の戦略的な獲得と活用
産業や技術における国際標準の獲得は大きな市場の獲得と経済安全保障上の戦略的価値を有します。統合イノベーション戦略推進会議の下に設置された「標準活用推進タスクフォース」を司令塔として、官民一体となった標準の形成・活用を推進するとともに、国際標準の戦略的な活用に向けた各省庁の取組みに対し、追加的な予算配分をすることができる枠組みを一層活用し、取組みの加速化を支援します。
更に、国際標準化に取り組む企業が国内でも優れた支援サービスが受けられるよう、国内の規格策定機関、認証機関、研究開発機関、アカデミア等の外部の機関を強化します。
54. デジタル社会に対応したデータ戦略の実行
デジタル社会で価値を生み出すデータについては、2021年に「包括的データ戦略」を策定しました。パーソナルデータを含むデータの取引における懸念・不安が払しょくされるようなルールの整備により、世界の先導役としてDFFT(信頼性のある自由なデータ流通)を実現します。そして、国民、行政機関、企業、アカデミアのデータ共有を進め、新たな価値の創出に取り組みます。その基盤としてのデータ標準、データ取引市場、プラットフォームの整備、人材育成を進めます。
併せて、競争力の源泉であるデータの流通・活用を円滑に行うためには、データ連携基盤やデータの流通・取引を行う上で必要となるデータ取扱いルール等の整備が必要です。そこで2022年に新たにデータ連携基盤におけるデータ取扱いルールの実装の際に踏まえるべき視点と検討手順を示したガイダンスを公表しました。これを参照し、データ連携基盤の構築に引き続き取り組みます。
55. コンテンツ戦略と海賊版対策
コンテンツ産業は、海外売上において約5兆円となり鉄鋼業や半導体産業の輸出額にも比肩する我が国の基幹産業の一つになっており、地方創生に資する高い波及効果を有しています。インバウンド需要などを通じた経済波及効果も高く、我が国のソフトパワーを高める手段としても有効な分野です。
官民の健全なパートナーシップのもと、コンテンツ産業の強化に向けて、関係省庁等及びコンテンツ関係者と議論を重ね、クリエイターが安心して持続的に働ける環境の整備や、クリエイターを中心とする海外展開・情報発信、デジタル化、エンタメ分野のスタートアップ支援等に対応したコンテンツ産業の改革等について取組みを進めていきます。
また、海賊版に対する対策強化として、日本のコンテンツの海賊版が生成AIにより学習されるおそれや、外国での被害も深刻化する中、国外犯処罰の導入検討も含め、国際執行を強化するとともに日本企業による海外プラットフォーム買収等も活用しつつ、海外への正規版の流通を促進します。
56. 「クールジャパン戦略」の推進
海外の人々が良いと思う日本の魅力をマーケットインの考え方に基づき効果的に発信し、インバウンドや輸出の拡大等にもつながるクールジャパン戦略を強化・拡充します。コンテンツ、インバウンド、食・食文化の各分野において政策を総動員して取組みを進めてまいります。
我が国の強いIP(コンテンツ、多様でおいしい食、様々な地域の自然・伝統など、広義の意味での知的資産)を活用し、新たな技術(Web3やNFT等)も取り入れて「イノベーション」を起こし、多層化・深化した「日本ファン」に対して高い「体験価値」を提供しながら、高い利益をあげて外貨を獲得し、関係者による再投資に回していくという好循環を確立していきます。
今後も取組みを更に強化することにより、今後5年間で30兆円以上(2028年)、10年間で50兆円以上(2033年)とすることを目指します。2025年大阪・関西万博を地域活性化につなげるべく、地域における機運醸成の取組みや、万博と日本各地をつなぐ観光資源の磨き上げや文化創造に向けた支援を行います。
海外においても、現地人材の活用等を通じて、在外公館やジャパン・ハウス等の発信・展開拠点を強化します。
57. 「クールジャパン」関連コンテンツの振興
世界的に動画配信サービスが普及していく中、アニメやゲームを中心に日本のコンテンツの人気は世界中で非常に高まっています。また、コンテンツ人気がインバウンドにも大きな波及効果をもたらしています。
製作現場のデジタル化、先進デジタル技術を活用したビジネスの創出、クリエイターやビジネス・プロデューサー等の、人材育成、エンタメ分野のスタートアップ支援を進め、コンテンツ産業の振興と海外展開を図ります。
併せて、東京国際映画祭などコンテンツの中心としての日本の魅力を高める取組みや日本のクリエイターの海外発信を進めます。また、国内への大型映像作品のロケ誘致は、作品を通じて日本の魅力を発信するだけにとどまらず、海外の映像製作のノウハウを日本のコンテンツ産業にもたらします。諸外国の制度も参考にしつつ、ロケ誘致の一層の推進を図ります。
文化芸術の需要の裾野を拡大し、クリエイターに資金を循環する環境を整備するため、企業・地域によるアートの積極的な活用の促進を図ります。
58. 「新たな成長の源泉へ」~ジョブ型人事とリスキリングの推進
DXの加速をはじめとするグローバルな競争激化や、人口減少社会の到来に対応し、日本社会・経済の回復を確実なものとするためには、企業・従業員の意識改革とリスキリングを合わせて促進することが不可欠です。
企業が個々の職務に応じて必要となるスキルを設定し、従業員が上司と相談をしつつ、自ら職務やリスキリングの内容を選択していく「ジョブ型人事」の普及・促進に取り組みます。
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「日本版O-NET(job tag)」の機能強化よる職業情報見える化の充実や、民間求人サイト等との連携を更に推し進めることで、人材マッチング機能の質を高めること等により、在籍型出向・兼業副業・転職・起業を応援し、人材流動化を促進することにより企業組織・企業文化の変革やキャリアアップ支援に取り組みます。
また、リスキリングによる能力向上支援として、在職期間中のリスキリングの強化、企業成長や労働移動につながる教育プログラムの開発、産学官連携での地域のリスキリングのプラットフォームの構築、大学・専門学校等における実践的・専門的な教育プログラムの開発・促進、「デジタル人材育成プラットフォーム」を通じた実践的な学びの場の提供、社会人の学びのポータルサイト「マナパス」による情報発信を通じた学習基盤の整備等を行います。
加えて、企業DXの更なる促進等のため、個人のスキルアップを促すためのスキル情報を蓄積・可視化する情報基盤の構築や地方における若手人材の育成・確保等、デジタル人材育成を加速します。
59. 放送コンテンツ産業の強化
日本発のコンテンツの海外市場規模を拡大すべく、放送コンテンツ産業の競争力強化、海外展開の推進に取り組みます。個々のクリエイターが4K・VFXなどの先進的なデジタル技術を用いた高品質の放送コンテンツを制作できるよう人材育成や設備の導入・利用を支援するとともに、権利処理の円滑化、日本の放送コンテンツを集約したオールジャパンの配信プラットフォームの整備に取り組みます。
60. 社会全体のICT化
5G、4K・8K放送をはじめとした世界最高水準のICTインフラの整備を目指します。国、地方、企業、個人、訪日する外国人も含め、それぞれがICTの恩恵を受けられるよう「社会全体のICT化」を進めてまいります。非居住地域も含めた5G等のエリア整備や5Gならではの通信サービスの実現、離島を含む光ファイバなどの未整備地域解消に向けて、通信事業者などによる情報通信インフラ整備を推進します。
また、データセンター、インターネット相互接続点(IX)の地方分散立地やオール光ネットワークの整備計画との連動、海底ケーブルの陸揚局の分散立地や多ルート化の推進を支援することで、急増するAIへの対応やGXの推進、地域DXの推進に対応するとともに、我が国の国際的なデータ流通のハブ機能を強化し、大規模なAI用データセンターを国内に立地することによる国際的なAI拠点を創設することを目指します。
更に、2030年代のAI社会を支えるため、電力消費を抑えた高速・低遅延のオール光ネットワーク等の次世代情報通信基盤「Beyond 5G」を早期に導入し、特定の分野に特化した複数のAIや、情報処理を担う各地のデータセンターを結ぶことにより、製造、交通、物流、インフラ管理、医療等、各分野におけるAIの開発・普及を促します。
61. ICT化による成功モデルの提示
テレワークや遠隔医療などに関するICT投資を拡大し、雇用の拡大や働き方改革の推進、医療・救急・介護・健康の連携、高度化に貢献するとともに、個人情報の取扱いにも留意しつつ、こうした諸課題の解決に向けた実証を通じ、新しい成功モデルの提示や標準化を速やかに進めます。
62. 多言語音声翻訳の普及・高度化
訪日・在留外国人数は増加傾向にあり、2025年大阪・関西万博では更なる来訪者が見込まれている中で、日常生活や行政手続き、観光等の分野において、「言葉の壁」が大きな問題となっています。また、企業活動の国際化により、ビジネスや国際会議でも「言葉の壁」が問題となっています。
ICTの発達により実現可能となった多言語の音声翻訳の幅広い普及やビジネスや国際会議にも対応した最先端のAI技術を用いた同時通訳の実現により、訪日・在留外国人との共生社会の実現、企業のビジネスチャンスの拡大や海外連携の促進を図り、国内外での経済・社会活動において日本の価値と魅力を高めていきます。
63. テレワークの普及推進
テレワークは、ICTを利用し時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方です。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、多くの企業・団体において緊急避難的にテレワークが導入された一方、急速な導入にこれまでの働き方の慣行や環境が対応しきれなかった面もあります。
今後、我が党において取りまとめた提言「多様な働き方と企業の成長を実現する良質なテレワークの推進に向けて」も踏まえつつ、コロナ後の「新たな日常」・「新たな生活様式」に対応した働き方として、生産性の向上や働く人の満足度につながる形で良質なテレワークが導入・定着されるよう、テレワーク月間などの取組みを後押しし、地方の雇用に資するよう、地方も含めたテレワークの普及を更に推進していきます。
64. パーソナルデータの利用の活性化
個人の生涯にわたる医療等のデータを時系列で管理し、本人の判断のもと多目的に活用する仕組みであるPHR(Personal Health Record)について、安心・安全な普及展開のための取組みを行います。また、個人の関与のもとでパーソナルデータの流通・活用を進める仕組みである情報銀行について、取り扱うデータの範囲に関する検討や、地方公共団体とのデータ連携に関する実証などを行うことにより、パーソナルデータの利用の活性化を推進していきます。
65. Society 5.0を支えるICT先端技術開発
Society5.0を支える「サイバー空間とフィジカル空間の融合」や社会全体のデジタル変革(DX)を加速するため、ICT分野の技術開発などを推進します。具体的には、Beyond 5G、AI、量子情報通信、宇宙通信などの先端技術の研究開発とその成果の社会実装、知財・国際標準化活動を支援します。
66. 情報通信産業における経済安全保障の確保と国際競争力強化
あらゆる社会活動・経済活動に不可欠なものとなっているデジタルインフラについて、安全性・信頼性を確保した強靱なインフラの整備・維持、セキュリティの確保や国際通信における自律性の向上を通じて、経済安全保障の確保を図ります。
また、将来のあらゆる産業や社会基盤となるBeyond 5Gについて、研究開発・国際標準化・社会実装・国際展開を一体的に推進し、将来的な海外市場の獲得などを通じた我が国の国際競争力の強化と経済安全保障の確保を目指します。
67. 安全性・信頼性を確保したデジタルインフラの海外展開
5G/オープンRAN、オール光ネットワーク、海底ケーブル、データセンター等、経済安全保障や次世代市場獲得の観点から重要なデジタルインフラについて、トップセールス、海外での実証実験やJICT(株式会社海外通言・放送・郵便事業支援機構)による出資等を通じて、我が国企業による海外展開の取組みを支援します。
グローバルサウスを含む海外の旺盛な需要を取り込み、グローバルなデジタルインフラの安全性・信頼性を確保するとともに、我が国企業の開発力・生産力の維持・向上による安定的な供給能力の確保を図ります。
68. 電波利用の推進
自動運転、ドローン利用、スマート農業、遠隔医療・高度医療等、技術の進展に伴い活用分野が拡大している電波の利用を推進するため、非地上系ネットワーク(NTN)の導入等に関する研究開発や制度整備、国際的な協調のもとでのドローン用周波数の確保、周波数の円滑な移行・再編・共用を実現するための制度整備に取り組みます。
69. 4K・8K放送の普及
2018年12月から開始された新4K・8K衛星放送は、2024年7月には視聴可能機器の出荷・設置台数が2000万台を超え、各家庭で臨場感あふれる高精細な映像を楽しむことができるようになりました。引き続き、4K・8K放送の普及に向け、周知・広報等を進めていきます。また、4K・8Kの高精細な映像技術は放送のみならず、幅広い分野への波及が期待されています。例えば医療分野においては、高精細映像を用いることで、内視鏡等の検査・手術の精度の向上のほか、遠隔地にいる専門医による診療といった遠隔医療の普及への寄与が期待されます。このような4K・8Kの高精細な映像技術について、様々な産業分野での活用を通じ、地方創生や社会の福祉の向上といった社会課題の解決を目指します。
70. 紛争解決拠点の整備
我が国が積極的に選ばれる仲裁地となることを目指し、仲裁人・仲裁代理人などの人材育成、特に中小企業を対象とする国内外における広報・意識啓発を行うとともに、我が国を拠点とする仲裁機関の国際的な認知度及び評価向上のために必要な取組みを官民の関係機関の緊密な連携により進め、我が国企業の国際進出の促進や海外からの対日投資の呼び込みにつなげます。
また、海外進出する日本企業などを法的側面から支援するため、法曹などによる日本企業などへの支援の在り方などを調査研究し、日本企業などが十分な支援を受けられる環境を整備します。
更に、日本企業などの海外進出や対日直接投資の促進等に向けた環境整備を行うため、AI翻訳を活用するなどして日本法令の外国語訳の公開の迅速化・内容の充実化を推進します。
71. Well-beingを重視した政策実現
「たくさんお金を稼いで、たくさん物を買うのが幸せ」という物質社会はもう過去のものになりつつあります。夢や生きがい、健康や安らぎといった一人ひとりの多様な幸せ、Well-beingを重視した政策実現にかじを切ることで、希望あふれるWell-beingが高い社会の実現を目指します。
働き方については、生産性だけでなく、社会や組織の中で、自分自身が楽しみながら、存分に能力を発揮できる働き方の実現を後押ししてまいります。経済効率だけを考えるのではなく、一人ひとりが幸せを感じることができる経済へとシフトし、人とのつながり、地域の特性を大切にした多様性のある幸せなまちづくり支援をしていきます。
GDPは経済成長を測る上で大切な指標ですが、GDPだけでは測れない社会の豊かさや人々の生活の質、満足度、幸福度などのWell-beingに関する統計・調査・分析を充実します。また、政府の各種基本計画などにおいて、Well-beingに関連するKPIを設定するとともに、「GDPからGDWへ」(WはWell-being)と、社会の動きを加速させ、国民一人当たりのGDPの増加と、満足度、幸福度の向上を優先する経済の実現を目指します。
72. 国家戦略特区制度の活用によるスーパーシティ等の推進
国家戦略特区制度を活用し、地域の実情に応じた規制・制度改革の実現、早期の全国展開などを進めるとともに、スーパーシティ、デジタル田園健康特区、連携“絆”特区、金融・資産運用特区等において、先端的サービスの実施やデータ連携等を通じて、少子高齢化、人手不足、ビジネス・生活環境整備等の地域課題の解決を進め、地方創生や日本全体の経済活性化に取り組みます。
科学技術
73. 量子コンピュータ等のフロンティア領域への大胆な投資
従来のコストカット型の経済から高付加価値創出型経済へと転換するために重要となる研究開発投資を官民で加速させていきます。将来の経済のパイを拡大させるために、新たな産業や輸出企業を創り出すべく、民間のみでは投資を進めることがディープテックを中心に、フロンティアとなる技術領域を探索し、研究開発政策とスタートアップ政策、知財・標準政策を連動させ、育成する仕組みを構築します。
また、具体的なフロンティア領域である量子コンピュータについて、量子コンピュータ開発、量子アプリケーション開発など研究基盤と社会実装を推進するための開発拠点整備を行い、産学官連携で技術革新と国際競争力を強化します。また、イノベーションを推進する上では人材の育成が不可欠です。大学において重点分野に特化した育成カリキュラムを整備するとともに、若手研究者と産業界のマッチングや共同研究への支援の拡充、博士人材の産業界における活躍促進に向けた支援に取り組みます。
加えて、イノベーション推進の基盤となる産業技術総合研究所などの国立研究開発法人については、国家戦略に基づく研究開発の中核を担う存在として、その機能強化を進めます。さらに、研究開発の成果を社会実装し、速やかに国際市場の獲得に結びつけていくため、産業界による戦略的な国際標準の開発や知的財産の獲得、それらの活用等を積極的に推進します。
74. 次世代航空機開発の技術基盤の強化
裾野が広い航空機産業を我が国の自動車産業に匹敵し得る成長産業とするためには、国が長期的な視点に立って、航空科学技術の施策を戦略的かつ強力に推進していくことが必要です。具体的には、国際競争力向上に直結する機体構造体の軽量化やエンジンの燃費性能の向上やサプライチェーンの自動化・効率化などの先進的な技術開発・実証を進め、国内産業基盤の強化を図るとともに、産官学が連携して我が国の技術力を結集する体制を構築し、イノベーションを創出することで、カーボンニュートラル達成に向けた次世代航空機について、国際連携の中で完成機事業を創出することを目指します。
75. 戦略的宇宙政策の推進
安全保障や経済社会で宇宙の重要性が高まっています。「宇宙基本計画」(2023年6月13日閣議決定)に基づき、戦略的に宇宙政策を推進し、宇宙利用を通じた安全保障、防災・減災、国土強靭化、地球規模課題への対応、宇宙科学・探査における新たな知と産業の創出、また、それらの宇宙活動を支える総合的基盤の強化に取り組みます。
特に、非宇宙のプレーヤの宇宙分野への参入促進や、新たな宇宙産業・利用ビジネスの創出、事業化へのコミットの拡大等の観点からスタートアップを含む民間企業や大学等の技術開発への支援を強化・加速するために、宇宙戦略基金による支援を拡大します。また、準天頂衛星システムの7機体制の確立および11機体制に向けた検討・開発、衛星データの利活用等を推進します。
加えて、急速な技術革新に伴う新たな輸送形態に対応した、宇宙活動法の見直しを含めた制度環境の整備や、世界的な宇宙利用の拡大に対応した円滑な審査を可能とする体制の整備に取り組みます。今後大きな成長が期待される宇宙分野について、政府による徹底した宇宙利用の推進と産業競争力の強化により、宇宙ビジネス拡大の好循環を生み出します。そのため、安全保障や気候変動対策・災害対策などの分野において、積極的に人工衛星等の宇宙の活用を拡大します。アンカーテナンシーやサービス調達等により民間の小型衛星コンステレーションや小型ロケットなどを積極的に利用し、民間の新たなサービスの開発やスタートアップの成長を促進するとともに、基幹ロケットH3の競争力強化や将来宇宙輸送系の実現に向けた開発、宇宙光通信の実証や量子暗号等の宇宙ネットワーク基幹技術の開発等の取組みなど、将来を見据えた戦略的な研究開発を推進します。また、大気の3次元観測機能等を搭載することで観測能力を大幅に強化した次期静止気象衛星の整備、衛星を活用した温室効果ガス観測インフラの構築、アルテミス計画やMMX(火星衛星探査計画)等の宇宙科学・探査を推進します。
76. 安全保障における宇宙利用の強化
我が国を取り巻く脅威に対応して安全保障を強化していくため、最新の宇宙技術を活用して、警戒・監視能力、指揮・通信能力を強化します。我が国の国家安全保障に関する政策判断をより的確に支え、関係機関の活動への一層の寄与を図るインテリジェンス機能を強化するため、情報収集衛星について、光学・レーダ衛星各4機及びデータ中継衛星を加えた機数増を着実に実施し、10機体制が目指す情報収集能力の向上を早期に達成します。
また、宇宙状況把握(SSA)、海洋状況把握(MDA)のための衛星データやAI等を活用したデータ解析、早期警戒衛星、ミサイル防衛のための衛星コンステレーション活用などの宇宙安全保障の強化に向けて、それぞれの施策の具体化を図ります。
77. 宇宙利用の拡大と競争力強化により宇宙産業の成長を促進
今後、世界的に急速な拡大が見込まれる宇宙分野について、利用の拡大と競争力強化により、我が国宇宙産業の成長を促進します。その一環として、我が国独自の小型のレーダー衛星コンステレーションの2025年までの構築に向けて、関係府省による利用実証を行い、国内事業者による衛星配備を加速するとともに、衛星データ利活用も推進します。
また、今後世界的に広く活用が見込まれる小型衛星コンステレーションによる光通信ネットワーク等の技術について、我が国が先行して獲得できるよう、早期に実証衛星を打ち上げるなどの取組みを進めます。さらに、政府によるサービス調達等により、民間小型ロケットの事業化を促進するなど、ベンチャー企業等の新たな取組みを促進します。また、衛星データを利用した新たなサービスの事業化を目指すベンチャー企業等への支援を強化し、宇宙利用の拡大を図ります。宇宙新興国との関係強化を図るなどにより、宇宙産業の海外市場開拓を目指します。
78. 宇宙利用による災害対策・国土強靭化や地球規模課題への対応
大規模災害への備えを強化するため、必要な宇宙システムを着実に整備します。民間の小型衛星コンステレーションなどを活用した災害監視宇宙システムを2025年度までに構築します。準天頂衛星システム7機体制を、2025年度めどに整備し、11機体制に向けた検討・開発を進めます。また、大気の3次元観測機能等を搭載することで観測能力を大幅に強化した次期静止気象衛星について、2029年度の運用開始に向けて着実に整備を進めます。衛星リモートセンシングデータの利活用を通じた、国土強靭化や地球規模課題への対応を促進します。
79. 宇宙3法を通じた宇宙産業の振興と宇宙利用の拡大
2016年に成立した「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」(宇宙活動法)及び「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律」、並びに2021年に成立した「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」を通じて、宇宙産業の健全な発展及び国際競争力の強化や、宇宙利用の拡大に取り組みます。特に、宇宙輸送分野においては、急速な技術革新に伴い、サブオービタル飛行(高速二地点間輸送)、宇宙往還機、再使用型ロケット、有人輸送など新たな輸送形態が出現しつつあることから、日本においても、こうした宇宙輸送サービスを早期に実現するために、宇宙活動法の見直しを含めた制度環境の整備や、円滑な審査体制の整備に取り組みます。
80. 政府研究開発投資の拡大に向けた取組みの推進
「第6期科学技術・イノベーション基本計画」(2021年3月閣議決定)に基づき、ここで掲げられた幅広い取組みを着実に実行していきます。特に、諸外国が科学技術投資を大幅に増やす中、このままでは科学技術先進国としての地位を失うおそれがあることに強い危機感を持ち、本基本計画で掲げられた5年間での官民合わせた研究開発投資の総額120兆円を達成すべく、諸外国の投資状況を踏まえた更なる予算の充実に向けて、官邸及び政治主導で毎年の科学技術予算を確実に措置し、未来投資を拡大するとともに、科学技術・イノベーション政策を強力に推進していきます。さらに、効果的な政府研究開発投資のため、エビデンスに基づく政策立案や指標による計画の進捗把握・評価を推進します。また、2026年度から開始となる次期基本計画に向けて検討を行います。
81. 科学技術政策の強力な推進力となる「司令塔」機能の強化
官邸の科学技術イノベーション政策に関する政治決定と科学的助言の機能強化を図るとともに、我が国の生命線である科学技術を国家戦略として推進するため、「統合イノベーション戦略推進会議」及び科学技術・イノベーション推進事務局の機能を最大限働かせ、関係府省の連携・協力のもと、政策の重複を排除して、効率的・効果的な政策推進を図ります。社会課題解決に向けた取組みを強力に推進するため、「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)を発展させた次期SIPを立ち上げるとともに、官民の研究開発投資拡大に向けた「官民研究開発投資拡大プログラム」(PRISM)を推進し、関係府省の連携・マネジメント体制を継続的に強化します。
82. 科学技術イノベーションの活性化
新たな技術革新を活用して経済成長と社会的課題の解決の両立を目指す「Society 5.0」の実現は、成長戦略の次なる最大のチャレンジであり、官民をあげた科学技術イノベーションの活性化が不可欠です。このため、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」に基づき、科学技術・イノベーション政策を抜本的に強化し、デジタル活用を前提とした持続可能かつ強靱な社会への構造改革や、価値創造の源泉となる研究力の強化に取り組みます。また、総合科学技術・イノベーション会議と、経済財政諮問会議や成長戦略会議などとを連携させるとともに、安保・外交、経済・財政、規制改革などを総合戦略的な科学技術イノベーション政策と位置づけ、官邸を司令塔として、こうした政策を強力に展開します。
83. 学術研究・基礎研究の振興や若手研究者の育成などの基盤強化
我が国は、2000年以降では、米国に次ぐ世界第2位のノーベル賞受賞者を輩出してきました。こうした画期的な研究成果を生み、またイノベーションの源泉となる学術研究・基礎研究を一層強力に推進していきます。このため、研究者の自発性や独創性に基づいて行われる学術研究を支える科学研究費助成事業について、現在展開している抜本的な改革を着実に進めながら、国際競争力を有する研究や若手研究者支援の質的・量的拡充を図ります。
加えて、学術研究から生まれた優れた成果を踏まえ、イノベーションの源泉となる基礎研究を戦略的に推進する「戦略的創造研究推進事業」を強化していくとともに、「未来社会創造事業」を推進し、実用化が可能かどうか見極められる段階を目指した研究開発を実施します。「創発的研究支援事業」について、好事例の横展開や定常化を推進します。また、「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」を一層発展させていきます。世界と伍する研究大学の実現に向けて、大学ファンドの支援対象となる国際卓越研究大学の選定プロセスを着実に進めるとともに、大学ファンドの運用益を活用することにより、博士課程学生を育成する取組みを推進します。
併せて、地域の中核となる大学や特定分野の高い研究力を持つ大学等が、特色ある強みを発揮し、社会変革を牽引する取組みを強力に支援する「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」に基づき、各施策を引き続き強力に推進します。更に、組織・分野の枠を超えた共同利用・共同研究体制を強化することにより、全国の研究者のポテンシャルを引き出し、我が国の研究の厚みを大きくします。また、競争的研究費について、その多様性や連続性を確保しつつ、間接経費30%を措置するとともに、大幅に拡充します。
84. 持続的なイノベーションの創出に向けたシステム改革
新たな社会や経済への変革が世界的に進む中、デジタル技術も活用しつつ、未来を先導するイノベーション・エコシステムの維持・強化が不可欠です。このため、企業の事業戦略に深く関わる大型共同研究の集中的マネジメント体制の構築、政策的重要性が高い領域や地域発のイノベーションの創出につながる独自性や新規性のある産学官共創拠点の形成を推進します。
更に、スタートアップの創出・成長支援や小中高校生から大学生等までのアントレプレナーシップ教育などを推進します。また、地域発のイノベーション創出に向けて、地域の様々なプレイヤーが事業化に向けたチームとして活動を行い、事業化の成功事例を蓄積する取組みを推進します。我が国の人材育成及び学術研究の中心的役割を担う国公私立大学の抜本的改革を確実に進めるとともに、運営費交付金や施設整備費補助金、私学助成などの基盤的経費を拡充します。
「研究成果の最大化」を使命とする国立研究開発法人の基盤的経費を充実するとともに、2025年までに大学・研究開発法人などに対する企業の投資額を2014年の水準の3倍とする目標を踏まえ、600兆円経済の実現に向けて科学技術イノベーションの活性化を図り、経済の好循環を実現するため、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律に基づく研究開発法人による出資業務を推進します。
更に、研究開発税制や寄附金税制をはじめとするイノベーション促進に向けた税制改革や、革新的な技術シーズの事業化のためのリスクマネー供給などの政策金融の改革、特許などの知的財産の迅速な保護及び円滑な利活用を促進するための知的財産制度の改革、イノベーションの隘路となっている規制や社会制度などの改革や新技術に関する優先的な政府調達の実現、中小企業などに対する産学官連携などを強力に推進します。
国際標準の獲得を目指す各国の動きが一層活発化していることから、官民協働による戦略的な国際標準化活動を着実に推進します。また、我が国が優れた先端技術を持つ基幹インフラについて、建設から運用、人材養成への寄与までを一体システムとして捉え、官民協働による海外輸出・展開活動を大幅に強化します。
85. 国の経済成長と安全保障の基盤となる基幹技術の推進
自然災害観測・予測・予防・対応・復旧技術、海域監視・観測技術、海洋資源調査技術、宇宙探査技術(「はやぶさ2」などの無人探査、有人探査)、次世代ロケット・衛星技術、核融合技術(ITER計画、先進超伝導トカマク装置JT-60SAなど)、次世代スーパーコンピュータ開発・利用技術、光・量子技術、気候変動高精度予測・影響評価技術などは、研究開発に長期間要し、大きな開発リスクを伴う技術であり、民間企業では対応が難しい技術です。これらの技術は、総合的な安全保障を含め国の存立基盤を確固たるものにするばかりか、産業の競争力の維持・発展、安全・安心な社会の実現に寄与する技術です。
最近の安全保障環境の変化と対応、グローバルな環境での競争激化の観点からも、国自らが戦略的かつ長期的視点に立って、このような基幹技術の研究開発を今後強力に推進していきます。更に、日本が強みを有する分野であるマテリアルや省エネ・再エネ技術については、我が国の基幹産業を支える要であり、多様な研究領域・応用分野を支える基盤であることから、革新的な材料開発や窒化ガリウム(GaN)などを活用したデバイスなどの開発に向けた研究をオールジャパンで強力に推進します。
86. 量子技術による社会変革に向けた取組みの強力な推進
将来のコンピューティング、センシング、通信性能等の飛躍的な向上を実現し、多様な分野において産業の成長機会の創出や社会課題解決の実現に貢献することが期待される量子技術について、「量子未来社会ビジョン」を踏まえ、最先端の量子技術の利活用促進や新産業/スタートアップ企業の創出・活性化に向けた取組みを政府全体で強力に進めます。
特に、国際競争が激化する量子コンピュータについては、2022年度に国産の初号機を整備し、利用ニーズ等を踏まえたテストベッドの高度化や必要な研究開発を着実に推進するとともに、多様な分野との融合によるソフトウェア研究を強力に推進します。また、量子チップや周辺機器等の試作・製造・評価、サービスを含むユーザー市場開拓支援や標準化支援等、グローバルな視点で将来の事業化を見据えて産業界を総合的に支援する拠点を産業技術総合研究所に整備します。
また、量子セキュリティ・ネットワークについては、量子暗号通信ネットワークのオープンテストベッドの拡張・充実を図り、商用化に向けて幅広いユーザーが参加できる利用実証を拡大するとともに、将来の量子コンピュータの大規模化や量子暗号通信の高度化等を実現する量子通信基盤として量子インターネットの要素技術の研究開発を推進します。さらに、基礎研究から技術実証、オープンイノベーション、知的財産管理、人材育成等に至るまで産学官で一気通貫に取り組む量子技術イノベーション拠点について、新たな拠点の形成やヘッドクォーター機能の抜本的な強化など、拠点体制の強化に取り組みます。
87. G空間(地理空間情報)プロジェクトの推進による新産業創出
G空間社会実現のため政府の総合司令塔機能の強化、産学官連携の一層の強化を図り、自治体のICT化も含め更なるG空間情報の利活用を促進するとともに、2023年度を目途として、日本単独で持続・自律的測位を可能とする準天頂衛星システムについて、7機体制を確立するとともに、後継機開発整備および機能・性能向上と、これに対応した地上設備の開発・整備及びセキュリティ強化を着実に行い、防災・農業・交通等の様々な分野で新たな産業やサービスを実現します。
88. G空間(地理空間情報)プロジェクトによる強靱な社会基盤インフラの構築
地理情報と衛星測位情報を統合活用したG空間情報は、領土、領海、領空統治の基本情報です。国、地方、民間が保有する様々なG空間情報を集約・提供するG空間情報センターの活用、ベース・レジストリに指定された電子国土基本図の継続的な整備・更新、天候や昼夜を問わず地表面を観測可能なSAR衛星の活用等を通じ、我が国の外交・経済・防衛上の安全保障の確保、国土の強靱化等に役立てます。
また、準天頂衛星システム等の基盤を活用し、国内外の関係機関と連携することで、我が国及びASEAN諸国等の安全保障、災害対策、海洋監視、国土管理の強化にも貢献します。
89. 「地理空間情報活用推進基本計画」の効果的な推進
「第4期地理空間情報活用推進基本計画」に基づき、G空間情報基盤の整備・充実とともに、自然災害・環境問題への対応、経済・産業の活性化、豊かな暮らしの実現等の様々な分野において、自動走行システムの開発・普及、無人航空機等の空モビリティの社会実装、まちづくりDXのデジタルインフラとなる3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化など、G空間情報を活用したプロジェクトを推進します。
その進捗状況のフォローアップを行い、技術進展、社会のニーズ変化に応じて必要な対応をとることで、G空間ビジネスの社会への実装に取り組みます。この際、個人情報の保護や国の安全確保の観点から、データ悪用リスクの低減等に取り組みます。
90. G空間(地理空間情報)プロジェクトによる資源確保と海の防災システム高度化の促進
我が国は世界第6位と言われる排他的経済水域を持つ国土大国です。「海洋基本法」、「宇宙基本法」と「地理空間情報活用推進基本法」を連携推進することで、我が国近海の地形をメートル単位で正しく把握し、正確な位置情報のもとで大陸棚や深海に眠るエネルギーやレアメタル資源等の発掘、水産資源の確保等に努めます。
また、今後想定される南海トラフ巨大地震をはじめとした、津波による甚大な被害が予想される地震への対策として、沖合の海底プレートの移動や津波の高さをセンチメートル単位で常時監視するシステムを開発することで、地震・津波を早期に検知する技術の高度化等も図り、防災・減災に役立てます。
91. 地理空間情報を活用した自然災害からの復旧・復興支援、防災・減災対策
東日本大震災発災直後から、津波浸水状況の把握や地籍整備をはじめ、大規模な津波リスクを考慮した浸水想定区域の設定やハザードマップの策定等、初動対応や復旧・復興支援等の様々な局面で地理空間情報が有効活用されてきました。そこで得られた教訓を踏まえ、今後想定される南海トラフ巨大地震等の大規模災害に備えるため、先進的技術とICTの連携活用を行うことで、安心・安全な社会の実現を目指します。
また、準天頂衛星システムの災害・危機管理サービス、衛星安否確認サービス等を含むG空間情報を高度に活用した防災・減災に係る技術「G空間防災技術」の社会実装の推進と、Lアラート(災害情報共有システム)の活用等を通じ、住民等への情報伝達の充実を図ります。
91. 地理空間情報を活用した自然災害からの復旧・復興支援、防災・減災対策
東日本大震災発災直後から、津波浸水状況の把握や地籍整備をはじめ、大規模な津波リスクを考慮した浸水想定区域の設定やハザードマップの策定等、初動対応や復旧・復興支援等の様々な局面で地理空間情報が有効活用されてきました。そこで得られた教訓を踏まえ、今後想定される南海トラフ巨大地震等の大規模災害に備えるため、先進的技術とICTの連携活用を行うことで、安心・安全な社会の実現を目指します。
また、準天頂衛星システムの災害・危機管理サービス、衛星安否確認サービス等を含むG空間情報を高度に活用した防災・減災に係る技術「G空間防災技術」の社会実装の推進と、Lアラート(災害情報共有システム)の活用等を通じ、住民等への情報伝達の充実を図ります。
93. 東京電力福島第一原発の廃炉研究に向けた国内外の英知の結集
福島原子力発電所の事故対策において、環境モニタリングや放射性物質の環境動態調査、地元住民の支援などの現行施策を引き続き実施するとともに、原発事故の後処理や廃棄物の処理・処分、放射線可視化技術などの廃炉現場等で必要とされる技術を早急に確立、普及します。世界でも経験のない燃料デブリの取り出しや放射性廃棄物の処理処分などを着実に進め、廃炉を加速していくため、日本原子力研究開発機構廃炉環境国際共同研究センターの機能を強化し、福島県富岡町に整備された国際共同研究棟のほか、楢葉遠隔技術開発センターや大熊分析・技術センターなども活用した国内外の大学・研究機関との共同研究などを推進することにより、世界の英知を結集した国際的な廃炉研究拠点を形成します。
94. 未来社会創造に向けた取組みの推進
「Society 5.0」の実現に向けて、AIやビッグデータ、IoT、サイバーセキュリティなどの基礎研究から社会応用まで一貫した研究開発、それを活かした新しい価値やサービスの創出、人文社会科学の知見も活用した経済・社会制度の整備・構築、AI技術者やデータサイエンティスト、サイバーセキュリティ人材といった関連する人材の育成などを強力に推進します。また、革新的なAIやビッグデータ、IoT、サイバーセキュリティなどの数理・情報科学技術のみならず、AIロボット技術やバイオテクノロジー、マテリアル、光・量子科学技術など、未来社会創造の基盤となる研究開発などに戦略的に取り組みます。
95. マテリアル分野の研究開発促進
日本が強みを有し、経済的・社会的・国家的な重要課題解決に幅広く貢献するマテリアル分野について、強みを維持するための研究開発力の強化や人材育成、産学連携を強力に進めるとともに、全国の共用設備の高度化、全国から創出されるマテリアルデータの統合・管理・AI解析を含む利活用を可能とするデータ基盤の強化や、データも活用した脱炭素などの社会課題解決に向けた革新的マテリアル研究開発を強力に進めます。
96. チャレンジングな研究開発と研究DXの推進
「ムーンショット型研究開発制度」について、目標達成に向け大胆かつ重点的な投資とともに、欧米等との国際連携の強化や社会実装の担い手となる産業界との連携充実など、研究開発を強力に推進していきます。加えて、意欲ある研究者が自由にアイディアを試すことができるよう、全国的な研究設備・機器の共用体制の強化、研究交流のリモート化や、研究設備・機器への遠隔からの接続、スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステムをはじめとした研究デジタルインフラや先端共用設備、大型研究施設も活用したデータ駆動型研究の拡大など、研究活動のデジタルトランスフォーメーション(研究DX)を推進します。特に、気候変動・レジリエンス、マテリアル、ライフサイエンス、人文・社会科学等の分野において研究データの創出・統合・利活用を一体的に進めユースケース形成に係る取組みを強化します。
97. 研究人材の育成、確保、支援等
ノーベル経済学賞につながるような優れた人材の養成に向けて、データやAIを活用したデータ駆動型研究を含む人文社会科学の研究に対する支援も大幅に拡充します。将来を担う博士後期課程学生の処遇向上と研究環境の確保、大学の人事制度の抜本的改革を含む大学改革などを通じた優秀な若手研究者の育成・確保、研究マネジメント人材などの多様な人材の育成・確保、即戦力社会人や企業マインドを持つ人材の育成、女性研究者の活躍促進に向けた支援の充実、更には次代を担う人材の育成などを進めます。
海外に出る研究者などへの支援や、優れた外国人研究者の受入れを一層促進しつつ、種々の研究開発事業における国際共同研究を更に強化します。
98. 大型研究施設・設備の整備
世界の学術フロンティア等を先導する国際共同研究プロジェクトを推進するとともに、世界最先端のスーパーコンピュータ、大型放射光施設SPring-8/SACLAやNanoTerasu、大強度陽子加速器施設J-PARCなどの先端的な研究施設・設備などの戦略的な整備・高度化を進めつつ、こうした施設などの産学官の幅広い利用を促進します。特に、現行の約100倍の明るさを誇る世界最高峰の放射光施設として、科学的・産業的に飛躍的なイノベーション創出が期待されるSPring-8-Ⅱの整備を推進します。
素粒子物理学分野の大規模プロジェクトである「国際リニアコライダー(ILC)」にも資する加速器技術の更なる向上に日本が主導的に役割を果たすため、しっかりと議論してまいります。
99. 経済的・社会的・国家的な重要課題への対応
2050年カーボンニュートラル達成に向けて、画期的な省エネにつながる次世代半導体・フィジカルインテリジェンスや、蓄電池、水素等の重要技術領域において、革新的GX技術創出のための研究開発を進めるとともに、化石燃料の高効率利用、原子力施設の安全確保や試験研究炉・革新炉の整備を含めた原子力の利用に資する研究開発、核融合などの革新的技術の研究開発などオールジャパンで進めます。
更に、経済成長と社会課題解決の二兎を追えるバイオものづくりに関する基盤技術の研究開発を進めるとともに、資源や食料の安定的な確保に向けた研究開発にも取り組みます。また、気候変動の予測やその影響・対策の評価を行うための信頼できるデータの創出・蓄積や技術の研究開発、地球環境情報をビッグデータとして捉え経済・社会的課題の解決に活用するための情報基盤である「データ統合・解析システム(DIAS)」を通じた研究開発を強力に推進します。
100. 健康長寿社会の実現に向けた研究開発
健康長寿社会の実現に向けて、健康・医療戦略推進本部のもと、日本医療研究開発機構を中心に、我が国の強みを最大限に活かし、医薬品、医療機器・ヘルスケア、再生・細胞医療・遺伝子治療やゲノム・データ基盤など世界最先端の医療の実現、がん、精神・神経疾患、老年医学・認知症、難病、感染症・ワクチンなどの現在および将来の我が国において社会課題となる疾患領域に関する研究開発などを強力に推進します。
101. 国家安全保障研究への対応強化
宇宙空間や海洋・サイバー空間、テロ・災害対策も含めた国家安全保障への対応を強化します。インターネットやGPSを生み出した米国の国防高等研究計画局(DARPA)を参考に、国家安全保障に関する研究が先端的・挑戦的な研究開発を牘引し、成果が社会に還元されていることを踏まえ、我が国でも技術の多義性や両義性(いわゆるデュアルユース性)も念頭に、研究開発支援(ハイリスク研究支援)を強化します。
102. 経済安全保障に資する戦略的取組みの強化
AIや量子など革新的かつ進展が早い技術が出現する中、経済と安全保障を横断する領域で国家間の競争が激化し覇権争いの中核が科学技術・イノベーションとなっています。そのような状況の中、我が国の戦略的不可欠性(優位性)を確実に確保し、経済安全保障を強化・推進するため、政府に政策提言を行うシンクタンクを創設するとともに、経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)により、先端的な重要技術を強力に守り育てるための研究開発を複数年度にわたり支援し、その成果の適切な活用を推進します。
103. 本格的な産学官連携とスタートアップの創出、科学技術イノベーションによる地方創生
国連の持続可能な開発目標(SDGs)に基づく未来のありたい社会像を拠点ビジョンとして掲げ、その達成に向けたバックキャストによるイノベーションに資する研究開発及びその社会実装と産学官連携マネジメントシステムの構築をパッケージで進めることで、本格的な産学官連携を推進します。更に、スタートアップの創出支援・成長や小中校生から大学生等までのアントレプレナーシップ教育などを推進します。
また、地域発のイノベーション創出に向けて、地域の様々なプレイヤーが事業化に向けたチームとして活動を行い、事業化の成功事例を蓄積する取組みを推進し、科学技術イノベーションを駆動力とした地方創生を実現します。
104. 大学における世界最高水準の教育・研究水準の向上とイノベーション創出の強化
国立大学については、基盤的経費である運営費交付金を拡充するとともに、客観的な成果指標に基づく資源配分の仕組みや財務基盤の強化などの大学改革を推進します。私立大学等経常費補助金についても、教員数の維持や施設・設備の管理・運用などで、多大な困難が生じているとの指摘は未だ解消されていないため、我が国の基礎科学を強化する観点からも、これらの基盤的経費を拡充するとともに、効果的で質の高い教育研究に取り組む私立大学等を重点的に支援します。
105. 国立研究開発法人の基盤的経費の確実な措置と出資の推進
「研究成果の最大化」を使命とする国立研究開発法人の基盤的経費を確実に措置するとともに、2025年までに大学・研究開発法人などに対する企業の投資額を2014年の水準の3倍とする目標を踏まえ、600兆円経済の実現に向けて科学技術イノベーションの創造・活性化を図ります。また、経済の好循環を実現するため、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」に基づく研究開発法人による出資業務を推進します。
106. 持続的なイノベーション創出に向けた制度改革
研究開発税制や寄附金税制をはじめとするイノベーション促進に向けた税制改革や、革新的な技術シーズの事業化のためのリスクマネー供給などの政策金融の改革、特許などの知的財産の迅速な保護及び円滑な利活用を促進するための知的財産制度の改革、イノベーションの隘路となっている規制や社会制度などの改革や新技術に関する優先的な政府調達の実現、大学等の研究成果の技術移転、中小企業などに対する産学官連携などを強力に推進します。
107. 国際標準化活動と基幹インフラ輸出の推進
国際標準の獲得を目指す各国の動きが一層活発化していることから、官民協働による戦略的な国際標準化活動を着実に推進します。また、我が国が優れた先端技術を持つ基幹インフラについて、建設から運用、人材養成への寄与までを一体システムとして捉え、官民協働による海外輸出・展開活動を大幅に強化します。
108. 科学技術外交の戦略的展開
科学技術イノベーションを積極的に平和外交や経済外交に活用し、「科学技術のための外交」及び「外交のための科学技術」の双方に取り組みます。このため、先進国・新興国・途上国との重層的な連携・協力の構築や、自然災害や感染症など、地球規模で発生する深刻な課題の解決に向けた共同研究・人材育成の推進、ODAを活用した科学技術イノベーションに関する支援・協力などを推進します。
また、次のブレークスルーにつながる先端研究及び国際頭脳循環を欧米等先進国と柔軟・機動的かつ戦略的に強化します。加えて、ASEANやインドを含むグローバル・サウスなどとの戦略的な協働も進めます。国連「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に、科学技術イノベーションが大きな役割を果たすとの認識に基づき、国内外の社会的課題の解決に科学技術を一層活用するために、国連機関との連携等を通じた実証を継続します(STI for SDGsの推進)。
109. 科学技術外交・研究交流の推進と研究インテグリティの確保
外務省科学技術顧問などが主導して、科学技術イノベーションに関する国際会議におけるアジェンダ設定や政策誘導などに取り組むとともに、国際会議の誘致や主催などによる対外発信・ネットワークの強化に取り組みます。優秀な若手研究者等の海外との間の戦略的な派遣・招へいや、国内外に研究拠点を構築することなどにより国際的なネットワークを強化します。
更に、海外動向の収集・分析を進めるとともに、安全保障に関わる技術などの管理を強化し、諸外国と調和した研究の健全性・公正性(研究インテグリティ)の自律的確保を促進します。国際的な核不拡散体制の強化に向けて、我が国の技術を積極的に活用し、これに貢献します。
110. H3ロケットの開発及び革新的将来宇宙輸送システムの実現に向けた取組みの推進
我が国の宇宙活動の自立性の確保と産業基盤の維持のためには、国際競争力の高い宇宙輸送システムが必要です。このため、官民一体となって、H3ロケットの安定した打上げを実現し、早期に初号機を打ち上げます。更に、複数の衛星を同時に打ち上げることができる機能の追加や、種子島宇宙センターなどの地上システムの改良により打上げ高頻度化を図るなど、更なる競争力強化を進めます。
また、宇宙輸送システムの抜本的な低コスト化等を目指した革新的将来宇宙輸送システムの実現に向け、官民連携による研究開発を進めます。
111. 防災・災害対策や、地球環境問題解決等のための衛星開発及び宇宙デブリ対策
カーボンニュートラルの実現やグリーン成長に貢献する温室効果ガス観測技術衛星や、次世代通信衛星技術等の獲得を目指した技術試験衛星、世界の気象や防災情報の高度化を図る降水レーダ衛星等の開発を進めます。また、衛星コンステレーションを含む衛星開発において、官民で活用可能な挑戦的な技術や新たな開発・製造方式等に関する研究開発を進めます。さらに、各国の先頭で宇宙デブリ対策に取り組み、世界に貢献します。
112. 宇宙科学・探査の戦略的推進
宇宙科学・探査分野においても日本が主体的な役割を担います。その一環として、国際協力のもとで、「はやぶさ」「はやぶさ2」に続き、人類初の火星圏からのサンプルリターン実現に向けた火星衛星探査計画(MMX)や、我が国が強みを持つX線天文観測による宇宙の構造と進化にかかる数々の謎の解明を目指すXRISMを推進します。
113. アルテミス計画等の推進
国際宇宙探査「アルテミス計画」に参画し、ゲートウェイ(月周回有人拠点)の機器開発や有人与圧ローバ(宇宙服なしで長期間搭乗できる月面探査車)の民間との協働による開発を進めるとともに、2030年以降の国際宇宙ステーション退役後を見据えた技術開発を行う等、月探査・地球低軌道利用に向けた取組みを加速していきます。また、米国人以外で初となることを目指し、2020年代後半に日本人の月面着陸を実現します。
114. 海洋研究開発の戦略的推進
「海洋基本法」の理念と海洋基本計画及び海洋開発等重点戦略に基づき、海洋研究開発を戦略的に推進します。船舶による観測や、漂流フロート、人工衛星などの観測機器の展開、自律型無人探査機(AUV)などを活用した無人海洋観測システムなど、海洋の総合的な観測体制を構築します。
また、気候変動予測の高精度化を図り、カーボンニュートラルの実現に貢献するとともに、東日本大震災の知見を活かしつつ、海底地殻変動等のリアルタイム観測など海域地震発生帯における動的挙動を総合的に把握し、国民の安全・安心の確保に役立てます。更に、2021年から開始した「国連海洋科学の10年」等の枠組みに基づく国際連携・協力や海洋分野のDXを積極的に進めます。加えて、海洋分野における観測・研究への市民参加を進め、地域における社会課題の解決や人文・社会科学と自然科学を含む多様な知を総合的に活用する「総合知」の創出を図ります。
沖縄振興
626 沖縄の更なる発展と県民生活の向上に向けた沖縄振興の実現
沖縄が我が国のフロントランナーとして飛躍的な発展を遂げるため、国家戦略として総合的・積極的に沖縄振興を推進します。沖縄振興特別措置法、沖縄振興予算、税制上の特例措置、沖縄振興開発金融公庫等の政策手段を最大限に活用し、強い沖縄経済を実現してまいります。
627 沖縄の未来を担う世代への支援
沖縄が長期的に発展するためには、こども達が、身体的・精神的に幸せな状態(well-being)で生活を送れる環境のもとで能力を最大限発揮できることが重要であり、EBPMの観点から必要な取組みを着実に進めます。深刻なこどもの貧困の問題に対し、支援員やこどもの居場所等を通じた支援に加え、ひとり親や若年妊産婦への支援等の充実に取り組むとともに、その連鎖を断ち切る根本療法として、教育・医療・福祉が融合した取組みを展開します。
各界の未来を支える人材の育成・確保策を講じていくため、沖縄の歴史的、地理的特性等も活かしつつ、国際交流の促進を通じた国際理解のある人材の育成等を進めます。
628 沖縄の自立型経済の構築に向けた産業振興の強化
沖縄のリーディング産業である観光業について、「量」から「質」への転換を進め、観光産業全体の高付加価値化と「稼ぐ力」を向上させるとともに、スポーツ観光や伝統文化など新たな観光コンテンツを育ててまいります。
化石燃料への依存度低下や2050カーボンニュートラル実現に向け、水素エネルギーの利用等の新たな技術の後押しに加え、離島の特性を生かしたクリーンエネルギー導入のための取組み等を推進します。
グローバルな社会課題の解決と沖縄の産業振興に貢献するスタートアップの育成を進めるべく、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究成果をスタートアップと結びつける取組みに加え、地元の企業や金融機関等を含め官民一体となったスタートアップ支援を行います。
高付加価値の情報通信産業・製造業・航空関連産業・物流産業の誘致・育成など、アジア・太平洋地域との地理的近接性をはじめとする沖縄の優位性・潜在力を活かした新たな産業の創出・高度化を支援します。
629 沖縄における社会資本整備の推進、北部・離島の振興、駐留軍用地跡地利用の推進
産業の振興・県民の豊かな生活の実現を図るため、那覇空港の機能強化等をはじめとした空港・港湾・道路等の整備、モノレールを含む県内交通網の充実に向けた検討、住環境の改善に取り組みます。また、沖縄の誇りであり世界遺産でもある首里城について、「見せる復興」による復元整備を進めます。
本島北部地域について、来年度の「JUNGLIA OKINAWA」の開園に伴って人の流れや地域の産業構造が大きく変化することが想定されており、メリットを最大限享受し、持続可能な形で地域の振興が図られるよう、北部振興事業に取り組みます。
我が国の領海の保全等に大きな役割を果たしている沖縄の離島について、基幹産業である第一次産業を振興していくため、高付加価値化や販売力強化、物流コスト軽減などを進めるとともに、住民の移動コスト支援など移住・定住環境の整備を通じ、離島振興の取組みを進めます。更に、安全・安心の観点から、台風による長時間の停電に備えた無電柱化の取組みを始めとする生活基盤の整備も加速します。
大規模な基地跡地の有効活用は今後の沖縄振興において極めて重要であり、「GW2050 PROJECTS」への支援や、基地跡地の先行取得等を強力に後押ししてまいります。
経済安全保障
630 重要な機微技術の流出防止
重要な機微技術の国外への流出を防止すべく、国際情勢の変化を踏まえた厳格な輸出管理の実施や同志国との連携強化、外為法に基づき官民が対話をしながら技術流出対策を強化する新たな枠組みの導入、投資管理の審査の強化等、機微技術の管理を強化します。また、新たな貿易管理の在り方の検討も進めます。経済安全保障推進法に基づくサプライチェーンの強靱化や先端分野における重要技術の育成に係る施策とも統合的に進めることを通じて、我が国の戦略的自律性と技術的優位性の維持・獲得を進めます。
631 ビジネスと人権への取組強化
我が国企業が積極的に人権尊重に取り組めるよう、予見可能性を高める国際協調、中小を含めた企業にとって分かりやすい人権デュー・ディリジェンスのためのガイドラインの普及、輸出管理の検討等を進めます。
632 基本的価値に基づく国際秩序強化
経済安全保障の観点も考慮し、気候変動や人権等も含めた基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持・強化や、その実現に向けた国内の体制・環境整備を図ります。
633 経済安全保障の推進
自由、民主主義、人権といった価値を守り、有志国と連携して法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現しつつ、我が国の生存、独立、繁栄を経済面から確保するために経済安全保障政策を推進します。
634 経済安全保障推進法の着実な実施
2022年5月に成立した「経済安全保障推進法」の4分野について、制度の着実な実施と不断の見直し、更なる取組みの強化を行います。具体的には、サプライチェーン強靱化については、半導体や抗菌薬など、国民の生存や経済活動にとって重要な物資の安定供給確保に向けて、引き続き不断の点検・評価を行い、これまでの措置の効果を踏まえた上で、実効性のある対応を講じます。電気、ガス、水道等を対象とした基幹インフラの事前審査制度については、2024年5月より、重要設備の導入・維持管理等の委託に関して国による事前審査を開始したところであり、これを着実に実施し、基幹インフラ産業の自律性を高め、強靱化を図ります。先端的な重要技術の開発支援については、経済安全保障重要技術育成プログラムの研究開発ビジョンで示された重要技術について、協議会による伴走支援を引き続き実施するなど、我が国の技術優位性を確保できるよう努めます。特許出願の非公開制度については、具体的な保全審査等に際して、出願人との丁寧な意思疎通を行うなど、円滑な制度運用に引き続き万全を期します。
635 サプライチェーンの強靭化
半導体・電子部品、銅やレアメタルなどの鉱物、電池、医薬品等をはじめとする重要な物資について、国内の生産基盤強化や、権益確保や生産プロジェクトの形成、他国に依存する物資の生産技術・代替品開発等による安定供給を早急に確保すべく、重要な物資の供給途絶リスクを将来も見据えて分析し、諸外国における巨額の措置も念頭に置きつつ、中長期的な支援を可能とする基金の設置も含め、金融支援や助成などの必要な支援措置を整備します。
また、我が国のサプライチェーンの強靱化及び持続可能性を強化する観点から、重要物資に係る政府調達や補助金支援制度を再度、見直します。すなわち、これまでのように調達時点での価格のみで判断するのではなく、価格以外の「強靱化」や「持続可能性」といった要素も考慮していきます。
636 先端分野における重要技術の育成
我が国の戦略的不可欠性の強化・獲得のために、宇宙、海洋、量子、AI、バイオ等の分野における先端的な重要技術について、官民パートナーシップ(協議会)を活用しつつ、開発・技術盤強化を進め、実用化に向けた強力な支援を行うプロジェクトを早急に強化し、これを速やかに実行していきます。
637 半導体製造基盤・計算資源整備の強化
先端ロジック半導体や先端メモリの製造基盤の強化・発展を進めるとともに、我が国が強みを持つレガシー半導体や製造装置・部素材について、世界に対する供給責任を果たすべく、生産能力の増強を強力に進めます。また、生成AI時代に鍵となるデータの国内における確保に向け、AI用データセンターの国内整備を進めます。併せて、国外の関係機関と共に、産官学が連携してイノベーション・生産に不可欠な技術人材の育成・確保に取り組みます。
638 次世代コンピューティング技術の推進
AIの利活用にも不可欠な次世代半導体について、米国・欧州をはじめとする同盟国・有志国と連携しつつ、2027年の量産を目指します。量子・AI技術とも連携した次世代計算基盤の構築に向け、次世代半導体の実装化に併せて、必要となるクラウド・ソフトウェアの産業基盤の維持・強化や技術開発を進めます。
639 基幹インフラ産業の自律性・強靭化
いかなる状況下においても国民生活の基盤を維持するために、基幹インフラ産業(情報通信、エネルギー、医療、金融、交通・運輸等)の自律性を高め、強靭化を図ります。
640 重要土地等調査法の着実な執行
安全保障上重要な施設の周辺や国境離島等における土地の取得・利用実態を国が的確に把握し適切に対処するため、重要土地等調査法の執行を着実に進めます。
641 セキュリティクリアランス制度
2024年5月に成立した「重要経済安保情報保護活用法」の施行に向けて、政令や統一的な運用基準の策定を進めるとともに、必要な体制や予算を講じることで、円滑な制度運用が行えるよう準備を進めます。
642 国際デジタル秩序形成の主導
DFFTルールの具体化において、EUと米国を連結する中核的役割を果たし、国際デジタル秩序の形成を主導します。また、デジタル時代におけるデータの法的権利に係る法整備を検討します。
643 経済インテリジェンス能力の強化
経済安全保障上の脅威・リスクに備え、経済分野におけるインテリジェンスの能力及び有志国政府、シンクタンク、産業界、アカデミアとの連携の強化を進めるとともに、経済安全保障に係る各省庁の体制強化を図ります。併せて、事業者の適切な情報管理、情報保全のために必要な設備導入を推進します。また、機微な技術を保有する企業や大学等における適切な技術管理を推進するとともに、連携を強化します。これらにより、国際的な官民コミュニティの構築を進めるとともに、経済安保専門人材の育成に本格的に取り組み、官民での戦略対話に加えて戦略人事交流等(リボルビングドア型)を進めます。
644 サイバーセキュリティの強化
サプライチェーン全体でのサイバーセキュリティ対策強化に向けて、安全なIoT製品の流通を促進するための制度整備や、中小企業へのセキュリティ支援を行います。
外交
645 ロシアによるウクライナ侵略への対応
ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙です。力による一方的な現状変更の試みを決して認めてはならず、ロシアによる核の威嚇、使用は決してあってはなりません。今日のウクライナは明日の東アジアとなりうる中で、力による一方的な現状変更を認めず、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとの我々の決意を行動で示していくことは不可欠です。ロシアによる侵略を止め、一日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和を実現するため、領土一体性の確保のためのウクライナの努力を引き続き支持し、G7と連携し、厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援を推進します。我が国は、地雷対策も含めたウクライナへの確固たる支援と共に、今後とも官民を挙げてウクライナの自立的発展と復興を支援します。
646 普遍的価値に基づく国際秩序の安定・強化に貢献する外交の展開
自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値や原則に基づいた国際秩序の安定・強化は、我が国を含むインド太平洋地域、そして、世界の平和と安定のために死活的に重要であり、「自由で開かれたインド太平洋」の一層の推進に向け、日米同盟を基軸に、豪、韓国、台湾、ASEAN、印、欧州など普遍的価値や原則を共有するパートナーとの連携を強化します。
また、より多くの国・地域とともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のため、法の支配や航行の自由等の維持、海洋安全保障や人道支援・災害救援分野といった社会課題に取り組み、質の高いインフラ推進などの支援に取り組むことで、連結性の強化を通じた経済発展への貢献をします。
647 同志国の安全保障能力・抑止力向上のためのOSAの更なる推進
我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれる中、力による一方的な現状変更の抑止、インド太平洋地域における平和と安定の確保、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出のため、我が国自身の防衛力の抜本的強化に加え、同志国の抑止力を向上させることが不可欠です。同志国の安全保障上のニーズに応え、資機材の供与やインフラの整備等を行う政府安全保障能力強化支援(OSA)を更に推進し、既に実績のあるフィリピンをはじめとする、価値観を共有する国々への支援を行います。
648 北朝鮮の拉致・核・ミサイル問題の解決
北朝鮮による拉致問題は時間的制約のある人道問題です。制裁措置の厳格な実施など、国際社会と結束して圧力を最大限に高め、あらゆる手段、様々なルートを通じた様々な働きかけに全力を尽くし、拉致被害者全員の即時一括帰国を実現します。
国連安保理決議の明白な違反である北朝鮮の核・ミサイル開発に対し、米韓をはじめとする関係国・機関との連携を深め、完全廃棄を迫ります。
649 「核兵器のない世界」に向けた取組み
我が国には、唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」の実現に向け国際社会の取組みをリードしていく責務があります。その一方で、現下のウクライナ情勢が示しているように、核軍縮の進め方をめぐって、核兵器国と非核兵器国との間において立場の違いがあるのも現実です。
このような状況を踏まえつつ、「核兵器のない世界」に向け、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進や核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉開始に向けた働きかけ、効果的な核軍縮検証の実現に向けた議論・演習といった核兵器国も参加する現実的な取組みなども積み重ねることを通じ、核兵器不拡散条約(NPT)体制の維持強化など、現実的かつ実践的な取り組みを進めます。国際的な軍縮・不拡散の取組みに積極的に貢献します。
650 領土・主権・歴史に係る取組み
中国による透明性を欠いた軍事力の強化や尖閣諸島周辺の領海への侵入を含む東シナ海・南シナ海での一方的な現状変更の試み、我が国のEEZ内でのブイの設置、邦人拘束を含む懸念すべき人権状況、経済分野の諸問題等に対し、具体的かつ実効的な措置の検討を不断に行いつつ、適切に対処します。
また、旧朝鮮半島出身労働者問題や慰安婦問題等について、国際法違反の状態や歴史認識等を巡るいわれなき非難といった、我が国の主権や名誉、国民の生命・安全・財産に関わる多くの課題に毅然とした対応を取ります。
竹島・北方領土・尖閣諸島をはじめ、我が国固有の領土・領海・主権を断固守り抜くために第三者研究機関を設置し、歴史的・学術的な調査研究を進め、我が国の戦略的対外発信を強化します。また、我が国の領土・主権の研究・広報・啓発活動の拠点である「領土・主権展示館」のナショナルセンターとしての充実に努め、自治体との連携による移動型の展示活動も支援します。
我が国固有の領土である北方領土問題については、領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針は不変です。現下のウクライナ情勢を踏まえれば、今後の展望を語れる状況にはないものの、我が党として、最善を尽くして元島民の方々の思いに応えていく気持ちにはいささかも変わりありません。北方領土返還要求運動の拠点である北方領土隣接地域の振興を更に地域一体で進める取組みを推進します。
我が党が策定した「海洋基本法」に基づき、エネルギー資源等の海洋資源の開発・利用促進、排他的経済水域の開発や大陸棚の延長及び海洋調査の推進など、我が国の海洋権益を確保するとともに、排他的経済水域に関する包括的な法整備に取り組みます。また、我が国排他的経済水域内で繰
651 人権外交の推進
人権は普遍的価値であるとの立場を一層鮮明にし、中国における懸念すべき人権状況、ミャンマーにおける軍事クーデター等の問題に適切に対応します。人権擁護に歩みを進める国には寄り添って支援していくとの立場を堅持し、人権状況の実際の改善に貢献する日本らしい外交を主体的かつ積極的に推進します。
短期的には、ジェノサイド条約の取扱いの検討、外為法等の積極的運用改善、総合的外交判断のもとでの人権侵害制裁法など新たな法令上の枠組みの実現に向け取り組みます。また、企業の人権デュー・ディリジェンスの支援強化、ODAによる人権支援、国連の活動におけるイニシアティブの発揮、厳しい立場に置かれる在留外国人等への支援強化等を検討・実現します。
中長期的には、二国間の「人権対話」の推進、権威ある国際NGOとの人権外交に関する対話枠組みの創設、外国人労働者との共生のための制度の強化、国際的に保護を必要とする難民等の受入れ改革等を追求します。
政府の情報収集能力の強化、人権関連部局の体制の拡充や議員外交に取り組みます。
652 国際法の活用を通じた国益の確保
国際法が誠実に遵守される国際秩序は、平和と安全を支える重要な基盤です。様々な国際会議の場や二国家間での枠組み等で法の支配の重要性を多くの国々と共有し、国際司法機関の役割を支持することを通じて、我が国の国益の確保に努めます。
653 太平洋島嶼国との関係強化
太平洋島嶼国の安定と繁栄のため、また「自由で開かれたインド太平洋」の実現や、海洋における法の支配、我が国にとって重要なシーラインに位置すること等の観点から、我が国と太平洋島嶼国との関係は極めて重要であり、一層の関係強化が必要です。PALM10の成果を土台として、自然災害や気候変動対策、ODA等の具体的分野について連携を強化し、太平洋島嶼国との一層の関係構築を行います。
特に、気候変動に伴う海面上昇は、太平洋島嶼国にとって死活問題です。既に領海基線維持の立場を表明している国々と協力して、未だ立場を決めていない国の理解を得るよう粘り強く取り組むことで国際世論の形成をリードします。
654 台湾との関係強化
台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値や原則を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人です。「自由で開かれたインド太平洋」の外交方針に従い、台湾が国際社会における確固たる存在を維持すべく、WHO、TPP11協定、ICAO、COP等の国際機関・国際的枠組みへの参加を主導します。
日台関係の深化に向け、自民党青年局による公式チャネルの維持・強化に加え、一昨年から始まった外交・防衛分野を中心とする政策担当議員間(日台2+2)、日米台三極議員による戦略対話を含む対話プラットフォームの構築等、必要な施策・制度の検討・準備を加速します。更に、様々なレベルでの実務協力も進めていきます。
また、安全保障も見据えた緊密な経済連携の観点から、我が国が強みを持つ半導体産業と世界有数のファウンドリ技術を有するTSMCをはじめとする台湾企業が共同でサプライチェーンを構築できる環境整備、DFFT(信頼ある自由なデータ流通)等の我が国のデジタル戦略における連携強化、日台間の貿易・インフラ輸出の拡大等を進めます。
台湾の危機は我が国の危機であり、価値観を共有する同志国との連携を深化させ、抑止力を強化します。防災・海難救助等の安全保障に資する日台間の非軍事的な交流実績を積み上げ、絆を強固にします。
655 UHC達成に向けた取組みの主導
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)は我が国が強みを有する分野であり、これまで積み上げてきた実績を踏襲しながら、次なるパンデミックの予防・備え・対応を効果的に実施できるグローバルヘルス・アーキテクチャーを築・強化していくことが重要です。そのUHCの達成のために、民間企業やアカデミア、市民社会等の知見・経験も取り込みつつ、企業や投資家の積極的な関与を得ること、日本国内の人材育成にも資する互恵的なパートナーシップを発展途上国との間で実現すること、能力構築支援や組織間連携を通じた効果的な多国間協力も強化することなど、一つ一つ実績を積み重ねていきます。
具体的には、健康安全保障の観点から、グローバル・サウス諸国がUHCを達成し、質の高い保健・栄養サービスへの普遍的アクセスを実現するために、強靭な保健システムの構築に向けた技術的・資金的支援を推進します。また、昨年立ち上げたグローバルヘルスのためのインパクト投資イニシアティブ(Triple I)を着実に進めつつ、持続可能かつ効率的な資金調達についても引き続き検討していきます。
656 新たな時代における国際協力の実施
本年は国際協力70周年に当たる節目の年です。これまで国際協力を通じて培ってきた国際的な信頼は、我が国の外交力の源泉となる重要な資産です。我が国を取り巻く国内外の経済社会情勢が厳しい中で、時代に即した「新しい組織」を構築し、政府開発援助(ODA)の成果を我が国経済・社会へ還元しながら、国民の理解を得た国際協力を推進していくことは急務です。こうした観点から、途上国の課題解決、民間企業を含めた我が国の国益の確保、地球規模課題の解決という「三方良し」となるODAを推進します。更に、ODAを効果的・戦略的に活用するためオファー型支援等我が国の強みを活かした支援を進めます。
また、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向け、開発途上国の支援や地球規模課題への取組みを拡充します。2050年までの「カーボンニュートラル」を含む世界の脱炭素化の実現、防災、教育、貧困撲滅、女性、国際保健、難民・避難民など各分野で、SDGs達成に向け一層取り組みます。
更に、自然災害が世界各地で頻発化・大規模化しており、国際緊急援助隊の派遣をはじめ人的・物的・資金的な緊急人道支援など、災害時における国際的な支援活動を積極展開します。また、防災・減災・避難救援体制等、我が国が災害対応によって得た教訓・知見をソフトパワーとして世界に発信し、国際社会における防災の主流化を更に促進します。
657 国益に即した経済外交の推進
自由貿易の推進は我が国の通商政策の柱です。多角的貿易体制の強化・改善に向け、日米貿易協定、TPP11協定、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定、日EU経済連携協定や日英包括的経済連携協定を着実に実施します。TPP11協定については、参加を希望する国・地域に対して協定の高いレベルや基本的価値を守りつつ、戦略的な観点や国民の理解も踏まえながら一層の拡大を目指します。
こうした取組みを通じて、各国の利益に資する貿易・投資を更に拡大させ、公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展等を実現します。国益確保の観点から、WTO改革、デジタル分野での国際ルール作りを含め、自由で開かれた国際経済社会システムの強化に向け、経済外交を展開します。
日本企業支援では、情報共有・法的支援体制の強化、輸入規制・風評被害対策等を着実に進め、中小企業を含む日本企業及び地方自治体の海外展開支援を強化します。
658 総合的な安全保障の推進
エネルギー、先端技術を用いた製品に不可欠な重要鉱物資源、食料、医療等、国民生活に甚大な影響を与える分野において、普遍的価値を共有する国・地域との連携を強化し、鯨類を含む生物資源の持続可能な利用に関する取組みを進める等、安定的な供給を確保するために総合的な安全保障を推進します。
659 投資協定・租税条約締結の促進
海外市場で得た利益を国内の新たな付加価値創造へと向かわせるため、二国間の投資関連協定(投資章を有するEPA/FTAを含む)や租税条約等により、資本移動の自由化等を促進します。海外子会社の配当、ロイヤリティ等に対する進出先国での課税を可能な限り縮小することを目指します。
そのため、他の先進国に比べて締結数で遅れを取っている日本の投資協定について、経済界の実需に併せて、アフリカ等も視野に入れ、戦略的に展開するとともに、協定の質の向上にも努めます。
660 中東・アフリカ地域への積極的関与
中東情勢の緊張の高まりが深刻に懸念される中、我が国独自の取組みを通じてこれまでに築いてきた中東各国との良好な関係を活かし、関係国とも緊密に連携しながら、中東の緊張緩和と情勢安定化に積極的に取り組みます。資源の安定的かつ安価な供給の確保は日本経済・暮らしの基盤です。要人往来、在外公館による日常的な働きかけ、国際的な枠組みの活用、ODAを含む外交ツールを活用し、主要な資源国との関係強化に努め、供給国の多角化を図るなど資源外交に力を入れます。
また、成長が著しい一方、多くの課題を抱えるアフリカ地域については、「アジェンダ2063」等のアフリカ側の取組みを踏まえながら、アフリカと共に革新的課題解決を共創していきます。継続的な議員外交や2025年に行われる第9回アフリカ開発会議(TICAD9)も活用しつつ、未来志向の課題解決、若者と女性の重視、人材交流・人材育成の促進、ビジネス環境整備や人権・労働・環境等の基準を含むガバナンス強化に資する支援を推進することで「開かれた世界の資源市場」の実現に取り組みます。
661 国際社会における我が国のプレゼンスの強化
存在感の高まるグローバル諸国の抱える経済的な課題に加え、環境・国際保健・教育・WPSなどの地球規模課題に対し、我が国が積極的に協力を進めることで、我が国の国際社会におけるプレゼンスを高めていきます。関係国と連携して実効性ある新たな国際秩序構築と国連改革に取り組み、我が国の安保理常任理事国入りを目指します。国際社会における我が国のプレゼンス強化のため、国連関係機関の我が国邦人職員を2025年までに1,000人とするとの目標も念頭に、国際機関の選挙対策、 人材育成、博士人材の活用を含め、国際機関の邦人職員(ハイレベルを含む。)の増強に向けた取組みを強化するとともに、国際機関の戦略的活用を進めます。
662 戦略的対外発信の更なる強化
情報戦が恒常的に生起する中で、我が国の外交・安全保障政策や歴史・領土に関する立場・取組みに対する理解・支持、我が国への関心を高めるための戦略的対外発信はこれまで以上に重要となっています。特に、我が国の領土・主権・歴史等について、情報収集や調査・研究・分析を強化するとともに、国内への啓発を強化し、国際社会において客観的事実に基づく正しい認識が形成され、我が国の基本的立場やこれまでの取組みが正当な評価を受けるよう、戦略的に対外発信を強化し、いわれなき中傷には毅然と対応せねばなりません。
また、我が国の多様な魅力の発信や人的ネットワークの構築等を通じ、我が国の立場や国民が好意的に受け入れられる国際環境を醸成することも重要です。それらの観点も踏まえ、在外公館や国際交流基金の海外事務所等の海外発信拠点を拡充しつつ、招へいを含む知的・文化・人的交流の更なる推進、ジャパン・ハウス、SNS、国際放送等の効果的な活用を通じ、他の政府関係機関や民間企業・団体等とも連携しながら、訴求対象や目的を意識した発信を強化していくほか、発信能力の強化に向けた人材を確保・育成します。また、情報戦を戦っていく上で、シンクタンク等と連携した第三者発信は極めて重要であり、力強く後押ししていきます。世界遺産や無形文化遺産分野においても、我が国推薦案件の登録推進に向け、国際社会に対して更なる情報発信等に努めていきます。
663 在外公館等を活用した日本企業の海外展開支援
在外公館施設等を活用したインフラ輸出、中小企業を含む我が国企業や地方自治体の海外展開を積極的に支援することにより、民間の貿易投資を促進します。トップセールスを更に強化するとともに、これまでの成果を着実にフォローアップします。
海外進出する日本企業の支援を在外公館の本来業務として位置づけ、人脈形成・情報提供など官民連携を一層強化します。
664 外交領事実施体制の抜本的強化、専門性のある人材の確保
在外公館は、我が国の「顔」であり、最後の「砦」です。厳しさを増す国際情勢を踏まえ、緊急事態対応や邦人保護、領事サービスの向上、情報保全対策等に万全を期すため、新設・修繕を含む営繕予算や人員体制の増強を念頭に、老朽化している施設への対策はもとより、経済合理性の高い施設を国有化するなど、中長期的な取組みが必要な在外公館の強靭化について引き続き計画的かつ強力に推進します。また、在外公館については、我が国の経済・文化の発信拠点として日本らしさにも留意しつつ整備していきます。
情報・政策・発信の各部門の有機的な連携によりAI等を活用した情報収集・分析を強化するために、情報セキュリティ分野の高度な専門性を有する人材の育成や、情報システムの開発・運用で中核的な役割を担う人材の育成・確保を推進します。
665 新たな政策領域での対応強化
経済安全保障、宇宙、サイバーといった新たな政策領域において、関連情報の収集や分析、国際的な規範形成などに取り組みつつ、経済的威圧への対応を含め、同盟国・同志国との連携を強化します。
666 国際裁判への態勢の整備
国際社会における法の支配の確立や国際法に基づく紛争解決の重要性の高まりを踏まえ、国際裁判手続きに関する知見の増進や国内外の法律家との関係強化に努め、国際裁判への態勢を一層強化します。
667 宇宙デブリ対策の推進
我が国の得意分野を活かし、世界をリードして、人工衛星等の安全な運行のためのルール作りや宇宙デブリ問題に取り組んでいくことで、宇宙空間の持続的かつ安定的な利用の門を開き、国際社会に貢献します。
668 国際協力等を通じた宇宙空間の安定的・効果的な活用の推進
各国との国際協力等を通じて宇宙空間の安定的・効果的な活用を推進します。具体的には、準天頂衛星システムについて、7機体制を確立するとともに、宇宙状況把握能力の向上に向けた米国のセンサを搭載するなどの日米協力を推進します。また、高精度測位や防災に係るサービスのアジア・オセアニア地域での海外展開を戦略的に進めます。地理情報と衛星測位情報を統合活用したG空間情報(地理空間情報)を国として保有し、利活用するための社会基盤インフラを構築することで、我が国の安全保障上の利益の確保に努めます。
宇宙に関する対話・協議の促進や宇宙状況把握における協力の強化など、米国をはじめ各国との間で国際的な協力を推進します。宇宙空間における法の支配の実現・強化に向けても、国際的ルール作りに関する議論に積極的に貢献していきます。
669 有人国境離島地域の保全・地域社会の維持
我が国の領海等の保全等にとって極めて重要な意義を有する有人国境離島地域の保全及び指定有人国境離島地域の地域社会の維持を引き続き推進します。
670 安全保障上重要な土地等の管理
我が国の国土の適切な管理等の観点から、安全保障上重要な施設の周辺や国境離島等における土地等の利用の実態を国が的確に把握するため、2021年に成立した「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」等に基づき、速やかかつ着実に土地等利用状況調査等を進める等、国民生活の基盤の維持並びに我が国の領海等の保全及び安全保障の確保に努めてまいります。
安全保障
671 防衛力の抜本的な強化
尖閣・台湾周辺等における軍事活動の活発化や力による一方的な現状変更を試みる中国、核・ミサイル開発を進展させる北朝鮮、そして、戦後最大の危機ともいえるウクライナ侵略に踏み切ったロシア等、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中、抑止・対処を実現するため、「安全保障三文書」に基づき防衛力の抜本的な強化を推進します。
672 宇宙・サイバー・電磁波領域における体制強化の加速
宇宙・サイバー・電磁波領域における体制強化に向けた取組みを加速化します。宇宙分野においては、「宇宙基本計画」に基づき、衛星コンステレーションの構築に必要な措置を進めるなど、宇宙の安全保障に関する総合的な取組みを強化します。サイバー分野については、「国家安全保障戦略」を踏まえ、能動的サイバー防御を導入するなど、欧米主要国と同等以上にサイバー安全保障分野での対応能力を向上させます。 そのための関連法案を早期に国会提出するとともに、「自衛隊サイバー防衛隊」の体制強化、今年改編された陸自システム通信・サイバー学校をはじめとする部内教育の拡充、高度な知見を有する部外の人材の登用や教育・研究基盤の拡充・強化等を進めます。また、能動的サイバー防御の実施に向けて、不正アクセス禁止法等の現行法令等との関係の整理及びその他の制度的・技術的双方の観点、インテリジェンス部門との連携強化の観点から、早急に検討を行います。 電磁波分野については、「電子作戦隊」の拡充やゲーム・チェンジャーとなり得る将来の技術の研究等により、電磁波領域における能力を強化します。
673 能動的サイバー防御導入に向けた体制強化等
高度なサイバー攻撃から我が国のインフラ機能を保護し、安全保障を確保するための政府と基幹インフラ事業者等の間の情報共有枠組みや、基幹インフラ事業者による政府へのサイバー攻撃の被害等の報告義務づけなどの仕組みを創設します。 外国政府主体等が関与する高度かつ重大なサイバー攻撃に対処するため、政府が通信情報を収集・分析する必要があります。その際、重大なサイバー攻撃への対処という公共の福祉の観点から必要最小限の通信情報の利用を可能とし、欧米主要国を参考に、サイバー攻撃防止の実効性を確保しつつ、国民の権利との関係が整理された制度とします。 被害が瞬時かつ広範に拡散するというサイバー攻撃の特性を踏まえ、攻撃の未然防止や被害拡大防止のため、被害発生のおそれを認知し次第、被害防止措置をとれる権限整備を検討します。 また、重大なサイバー攻撃に対し我が国の持つ能力を最大限活用するため、内閣官房を司令塔として機能させつつ、警察、防衛省・自衛隊が必要に応じ、的確に措置を実施できる制度とします。その際、平素から柔軟に対応できるよう「事態認定方式」ではない新たな自衛隊の行動類型を整備することを検討します。 サイバーセキュリティ戦略本部の機能を強化することに加え、司令塔組織への権限付与等、政府全体の予算・体制・能力を抜本的に強化します。また、キャリアパスの明示、官民人材交流、国際的な官民枠組みへの参画、国内外の演習への参加などを通じて、サイバー分野における魅力あるキャリアを描ける人材育成・確保策を検討します。
674 “戦い方”の変化に応じた能力強化と態勢構築
AI、無人機、量子技術等の先端技術、軍事や非軍事の境界を曖昧にするハイブリッド戦、偽情報の見破りや戦略的な情報発信が肝となる情報戦への対応として、宇宙関連技術やドローン、AI、量子技術などの先端民生技術の専門機関と防衛省・自衛隊の連携を深め、急速な技術革新による“戦い方”の変化に応じた能力強化と態勢構築を進めます。また、政府全体として一次情報の収集能力を強化することに加え、インテリジェンスの集約・共有・分析等を更に統合的に実施する体制の構築も検討します。
675 弾薬・維持整備のための費用確保、優れた装備品の数量確保、後方分野の能力強化
事態発生から終結まで我が国を守り抜くために必要なかつ十分な量の弾薬の整備や装備品の維持整備に係る費用を確保し、特に、自衛隊の弾薬・燃料等については、より柔軟な保管・輸送を行うことができるよう、各種規制について関係省庁間で十分な調整を進めます。また、急激に拡大する周辺国との戦力格差を一刻も早く埋めるため、領域横断作戦を通じて我が国を守り抜くために必要な、優れた正面装備品(艦艇、航空機等)の数量を確保します。加えて、輸送力や衛生機能を含む後方分野における能力の抜本的強化や、事態の兆候を迅速に察知し、有効に対処するための情報機能の強化、自衛隊施設の強靱化に取り組みます。 近年増加が著しい災害対処や感染症対応など、国民を守るための活動に自衛隊が十分な態勢で臨めるよう、万全を期します。
676 弾道ミサイル攻撃を含む我が国への武力攻撃に対する反撃能力の保有
極超音速滑空兵器、変則軌道弾道ミサイル、無人機・スウォームといった多様化・深刻化する経空脅威からの防衛に万全を期すため、領域横断的な統合防空ミサイル防衛能力を強化するともに、イージス・システム搭載艦の整備を着実に進めます。また、度重なる北朝鮮によるミサイル発射など、我が国周辺のミサイル能力の増強に対し、ミサイル防衛網の質・量を強化するとともに、相手の攻撃を抑止する反撃能力にも活用可能なスタンド・オフ防衛能力を向上させます。反撃能力の対象範囲は、相手国のミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮統制機能等も含むものとします。
677 島嶼部への攻撃や尖閣諸島周辺の事態など、不測事態に対処し得る体制の整備
我が国の島嶼部に対する攻撃への対応に万全を期し、常時警戒監視体制を強化するために、新型護衛艦(FFM)・哨戒艦やF35戦闘機等の整備を引き続き進めます。加えて、12式地対艦誘導弾能力向上型の研究開発等を通じ、相手方の脅威圏の外から対処可能なスタンド・オフ・ミサイルの整備を進めます。 尖閣諸島周辺において、我が国に対する圧力が一層強まり、事態がエスカレートすることも予想される中、我が国の正当性について国際社会に対する発信力を強化し、実践的なシナリオに基づく共同訓練等を通じ、自衛隊と警察・海上保安庁との連携を強化するとともに、我が国の領域侵害に対して政府機関が十分に対処できるよう、法整備も含め、速やかに必要な措置を講じます。ハイブリッド戦や様々な複合事態に対しても、装備や法律上の権限などを十分に付与して、万全の体制を構築します。 また、自衛隊部隊の円滑かつ効果的な活動のため、南西地域の空港・港湾や通信等のインフラ整備を推進するとともに、有事における民間飛行場の航空管制機能維持、更には電波利用や周波数割り当て、防衛・風力発電調整法に基づく取組等について、政府全体で緊密に調整を進めます。 更に、衛星や海底ケーブルなど、国防上重要な施設等の防護を強化します。
678 防衛生産・技術基盤(防衛装備移転を含む)
防衛生産・技術基盤はいわば我が国の「防衛力そのもの」であり、抜本的な強化を進めます。「防衛力そのもの」の担い手たる防衛産業が適正な利益を継続的に確保することは必要不可欠であることを踏まえつつ、防衛生産基盤強化法等により、国内の防衛生産・技術基盤に対して重点的に投資及び支援を行っていきます。 その際、スタートアップ企業をはじめとした新規参入を促進し、競争入札の見直しを推進します。また、人手不足への対応を含む、装備品等のサプライチェーン上のリスクに適切に対応するため、製造工程の高度化・効率化の取組みを一層推進するとともに、強靱なサプライチェーンを構築します。加えて、サイバーセキュリティ対策を含む産業保全の抜本的強化を進めます。 更に、世界的な防衛需要の高まりを踏まえ、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出などのために重要な防衛装備移転を含む防衛装備・技術協力に、より一層積極的に取り組み、基金の活用を含めた積極的な対応を検討します。 また、グローバル戦闘航空プログラム政府間機関を通じ、次期戦闘機の共同開発を推進します。 今後、我が国の防衛産業が様々な課題を乗り越えて、我が国の防衛力の抜本的強化に対応する、持続可能な基盤を構築することと併せ、官民が防衛事業の市場拡大と国際競争力の強化に取り組む環境を整えることで、防衛産業において生産性の向上とイノベーションの創出を実現します。これらの取組みを中長期的かつ戦略的に進めていくための戦略を策定し、我が国が目指す将来の防衛産業の在り方を打ち出します。
679 防衛分野の研究開発
我が国の技術力を結集し、将来の戦い方を実現する研究開発へと変革するため、防衛省の研究開発費を増額するとともに、研究開発に要する期間を大幅に短縮する新しい手法を研究開発プロセスに取り込み、将来の戦いにおいて実効的に対処する能力を早期に実現します。その上で、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の議員に防衛大臣を正式に追加するなど、関係省庁の取組みと連携し、産業界とアカデミアの力を大胆に活用して民生先端技術を防衛分野に取り込み、安全保障分野における産学官の研究開発エコシステムを構築します。未知の技術領域に対して果敢に挑戦することにより、将来の新しい戦い方を創出する防衛イノベーションを実現する機能の抜本的強化や、研究職技官をはじめとする増員など人的リソースの拡充も含め、防衛装備庁を中心として、防衛省の必要な体制を強化します。更に、顕著な貢献のあった防衛産業、研究機関やその関係者に対する表彰等を積極的に検討します。
680 同盟・友好国との協力強化
日米同盟及び地域の安全保障を一層強化するために、我が国の防衛力を強化し、また、サイバー・宇宙を含む、全ての領域を横断する日米防衛協力を深化させます。また、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止のあり方を不断に検討するとともに、米国が提供する拡大抑止の信頼性を一層確保するべく、政治のリーダーシップの下、しっかり協議していきます。 「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを維持・強化するため、日米同盟を基軸としつつ、豪州やインド、ASEAN・欧州諸国並びにNATO及びAUKUS等との連携、QUADでの協力等を通じ、人的交流や部隊間交流、共同訓練、防衛装備・技術協力を含む二国間・多国間の防衛協力・交流を推進するとともに地域の安全と安定を一層確保するための取組みを主導します。
681 処遇改善、募集施策強化、再任用活用や女性活躍の推進等、人的基盤の強化
人的基盤を一層強化するため、給与面を含む処遇改善、勤務環境の改善、人材育成システム、退職・再就職支援の強化等により、防衛省・自衛隊が魅力ある職場となるような施策を早急に推進します。また、募集施策の強化を図るとともに、予備自衛官を含むいわゆる予備役制度の見直し・体制強化にも取り組みます。その際、女性活躍の積極的な推進など、人材のより一層の活用を図ります。また、血液の自律的な確保等の衛生機能の強化に引き続き取り組みます。
682 国際社会の平和と安定への貢献
アジアと欧州・中東を結ぶ海上交通の要衝であるソマリア沖・アデン湾での海賊対処行動や、中東地域における平和と安定及び日本関係船舶の安全確保のための中東地域での情報収集活動を着実に実施します。 また、シナイ半島における多国籍部隊・監視団(MFO)や南スーダンにおける国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)への司令部要員の派遣といった取組みを通じ、国際社会の平和と安定に一層積極的に貢献します。
683 地域コミュニティーとの連携の推進
自衛隊施設や在日米軍施設・区域が所在する地元の負担軽減を図るとともに、特定防衛施設周辺整備調整交付金の交付、防音工事や民生安全施設への助成など防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策を推進します。また、地元調達にも十分な配慮を行います。 在日米軍の施設・区域については、日米同盟の抑止力を維持しつつ、地元の負担軽減を図るため、日米で連携して、訓練移転を含め在日米軍再編に全力で取り組みます。特に、在日米軍施設・区域が集中する沖縄の負担軽減は重要な課題であり、在日米軍施設・区域の返還等を一層推進します。 また、普天間飛行場の危険性を一刻も早く除去するため、現行の日米合意に基づく名護市辺野古への移設を着実に進めるとともに、自治体への重点的な基地周辺対策を実施します。 地域住民の方々の安全・安心の確保を最優先の課題として、米国政府と緊密に連携の上、在日米軍による事件・事故の防止を徹底し、日米地位協定のあるべき姿を目指します。
684 国民保護の一層の強化
原子力発電所をはじめとする重要インフラの抗たん性を強化します。特に、グレーゾーンの事態に備え、警察機関と自衛隊との間でシームレスな対応ができるよう、より実践的な共同訓練の実施等の取組みにより、平素からの連携体制を一層強化します。とりわけ原子力発電所においては、自衛隊による対処が可能となるよう、警護出動を含め法的な検討を行います。 国民の生命・身体・財産を守るため、武力攻撃災害を含む各種災害を念頭に、シェルターをはじめとする様々な避難施設や輸送手段の確保、空港・港湾などのインフラ整備や今あるアセットの最大限の活用、図上訓練に加えた実動訓練の追求など、迅速な避難のため、国民保護の実効性ある体制整備を進めます。 まずは、全国に先駆けて先島諸島約12万人の避難受入れの基本形を早期に策定し、避難経路、避難先の多重化等、中長期的な課題にも取り組みます。 また、北朝鮮によるミサイル発射が頻発するなど、国民の生命・身体・財産に対する深刻な脅威が現実味を帯びる中、関係省庁と地方自治体との平素からの緊密な連携の確保や、実践的な訓練の実施、地方自治体の危機管理監等への退職自衛官の採用などを通じ、あらゆる事態を想定した国民保護の態勢を確立します。 在外邦人保護の観点から、在外公館の人員・機材を含む体制を強化するとともに、邦人等の保護や退避、避難民に対する支援に全力を尽くします。
685 気候変動への対応
異常気象の多発に伴う自衛隊の災害派遣等の増加、訓練計画への影響、将来的な脱炭素シフト・エネルギーシフトが与える自衛隊の装備品への影響、気候変動の影響に直面する地域の国々に対する人道支援・災害救援(HA/DR)分野での協力のための任務増、我が国周辺海域のシーレーン及び北極海航路を利用する日本関係船舶の安全確保等、気候変動が安全保障に及ぼす重大な影響を考慮し、自衛隊の訓練・任務の持続可能性を確保できる体制を不断に検討します。
686 我が国の安全保障に資する宇宙利用の促進
各国の動向を注視しつつ、我が国の安全保障に資する宇宙利用の促進、研究開発等を推進します。具体的には、高分解能・高頻度の情報収集衛星や早期警戒衛星等、我が国の安全保障に資する研究開発を加速し、自衛隊をはじめ中央省庁・関係機関等が利用する通信、気象観測、偵察等、様々な用途の衛星システムの開発を推進します。 また、輸送系システム、射場の新設・整備を含む地上系システム、宇宙関連技術基盤の維持・強化等を図るため、デュアルユースの観点も踏まえた宇宙システムの開発を推進し、宇宙状況把握に係る国内の体制を整備するとともに、ミサイル防衛等のための衛星コンステレーションについて、米国との連携可能性も念頭に検討を行い、先行的な技術研究に着手します。 情報収集衛星については、財源確保策の検討を進めつつ、10機体制が目指す情報収集能力の向上を早期に達成し、情報収集能力の強化を図ります。
治安・テロ対策・海上保安
687 総合的なサイバーセキュリティ対策の強化
デジタル・トランスフォーメーションにより、サイバー空間と実空間の融合が進み、社会経済活動のあらゆる領域において、サイバーセキュリティの確保が必要な時代が到来しています。また、国境を越えたサイバー攻撃により、政府や企業の機微情報や技術情報の窃取や国民生活に直結する重要インフラ分野への攻撃、IoT を悪用した脅威等が益々深刻化しています。我が党は、サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、「サイバーセキュリティ基本法」の制定や改正に主導的に取り組んできました。今後とも、同法の理念に則り、政府内の体制を更に強化するとともに、IoT セキュリティの総合的な対策をはじめ、通信ネットワークの安全性や信頼性の確保等を通じ、ICT の利活用による豊かで便利な社会を作るための総合的サイバーセキュリティ対策を推進します。
688 我が国独自のセキュリティ技術の開発とサイバーセキュリティ人材の育成等
国家安全保障の観点も踏まえつつ、サイバー先進国である米国に比べてはるかに劣る予算を充実させ、我が国独自のサイバーセキュリティ技術の開発や高度なサイバーセキュリティ人材の育成等に大胆に予算を配分します。とりわけ、サイバー攻撃に対する我が国の自律的な対処能力を高めるため、サイバー攻撃に関する多様なデータを国内で大規模に収集・蓄積・分析・提供し、国産のセキュリティ技術の開発や社会全体での人材育成を進めるための産学の結節点となる拠点を構築・運用します。加えて、特に、警察庁や防衛省、海上保安庁においては、サイバー防衛隊等を拡充し米国並みの動的防御システムやバックアップシステムを早急に構築します。
689 国民の情報を守るためのサイバーセキュリティ
行政機関等の保有する国民の情報を守り、国民に対する安定的な行政サービスの提供に資するため、NICT の大規模演習基盤の活用等により、政府機関や地方自治体等の情報システムのサイバーセキュリティを担う人材の育成を強力に推進します。政府機関などの情報機器や複合機等の調達に際しては、サイバーセキュリティの観点から、より一層サプライチェーン・リスクに対応するなど、適切な製品等が調達される仕組みを推進します。 我が国の産業界をサイバー攻撃から守るため、サイバーセキュリティ対策等を整理したフレームワークの策定とその産業分野への実装を進めるとともに、産業サイバーセキュリティセンターの模擬プラントの活用等による人材育成を進めます。更に、データの管理・処理を担う半導体を中心に、信頼あるサプライチェーンの確保に努めます。
690 電気通信事業者による積極的セキュリティ対策の推進
国民生活や経済活動に必要な多くのやり取りが電気通信事業者のネットワークを通じて行われています。日々、高度化する攻撃リスクに効果的に対処するには、電気通信事業者において、データの取扱い等に関するガバナンスを強化するとともに、より積極的なサイバー攻撃対策を実施していくことが重要です。こうした対策を実施するため、必要となる関係法令の整理や実証事業を推進します。
691 国際社会における法の支配の定着
京都コングレスで採択された「京都宣言」の実施にリーダーシップを発揮し、レガシーの確立に係る取組みの積極的な展開などを通じ、国際社会における法の支配の定着を図ります。 また、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の要であるASEAN地域・各国や、国際社会における重要な課題について連携して取り組むG7各国との間で、「法の支配」や「基本的人権の尊重」といった価値の重要性を共有し、2023年に開催した司法外交閣僚フォーラムの成果展開を通じて、より一層の連携強化を図ります。
692 法の支配の定着に向けた法制度整備支援の推進
法の支配を定着させ、その国の持続的な成長に貢献するとともに、ビジネス環境改善にも資するため、引き続きアジア地域を中心とした国々において、法令の起草、運用改善及び司法実務家の人材育成などの支援を様々なアクターと連携しながら戦略的・多面的に推進します。 また、アジア・アフリカ諸国などにおける法の支配やグッドガバナンス(良い統治)の実現及び安全・安心な社会の確立のため、刑事司法実務家の人材育成などの支援を推進します。このような法制度整備支援の取組みを太平洋島しょ国、中央アジア、ウクライナ等にも広げていきます。
693 司法外交の推進と国際ルール形成
法の支配の定着に向けて重点的に連携を図るべき国・地域に対して戦略的に司法外交を展開するとともに、その担い手の裾野を広げるべく、法曹などの国際機関への派遣などを通じ、国際司法人材の養成に取り組みます。司法外交の土台を形成するものとして、国際広報発信も引き続き推進します。 また、国際的な法的紛争発生時には、重要な国益の保護を図るため、国際的な法的紛争への実践的な対応能力を更に強化し、国際裁判等へ的確に対応します。 更に、民商事法分野の法の支配に裏付けられた国際秩序の形成を主導するため、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)などにおける国際的な商取引及びその法的紛争解決に係るルール形成のプロセスに積極的に関与するほか、ハーグ国際私法会議(HCCH)などの国際機関とも連携を強化し、活動に貢献していきます。
694 性犯罪への対応と多様な法的需要に応える支援態勢の充実強化
性犯罪について、児童や精神に障害を有する性犯罪被害者からの聴取に関する多機関連携による司法面接などの取組みや、再犯防止の強化を進めます。 また、2024年4月に施行された「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」に基づき、困難な問題を抱える女性一人ひとりのニーズに応じて、包括的な支援を実施できるよう、女性相談支援センターや女性自立支援施設の機能強化、女性相談支援員の人材養成・処遇改善、困難な問題を抱える女性への支援に取り組む民間団体の掘り起こしや事業継続への支援、民間団体と地方公共団体との協働の促進等を図ります。 更に、性犯罪を含む深刻な犯罪の被害者等に対し、早期の段階から弁護士による包括的かつ継続的な援助を行う「犯罪被害者等支援弁護士制度」の早期かつ着実な運用開始に向けた取組みを推進するとともに、高齢者、障害者、被災者、ひとり親、DV・児童虐待や霊感商法の被害者等の社会的・経済的に弱い立場にある方々等の多様な法的ニーズを的確に把握・分析し、デジタル技術を利活用するなど、日本司法支援センター(法テラス)による法的支援の充実・強化を進めます。
695 再犯防止施策の推進
「『世界一安全な日本』創造戦略」に基づき、多機関と連携しつつ、組織犯罪、児童虐待、外国人犯罪などへの対策を推進します。 また、新たな被害者を生まない「安全・安心な社会」の実現に向けて、「第二次再犯防止推進計画」(2023年3月閣議決定)に盛り込まれた施策を国・地方公共団体・民間が一体となって着実に推進します。そのため、地方公共団体や民間の取組みを財政面も含めて支援していきます。
696 地域社会や民間団体と連携した就労支援再犯防止と社会復帰に重要な就労の確保・継続に向けて、職業訓練・指導の充実やコレワークなどのマッチング機能の強化など、矯正施設在所中から地域社会や民間団体などと連携した就労支援を推進するほか、きめ細かな就職活動支援や寄り添い型の職場定着支援を行う「更生保護就労支援事業」を拡充し、協力雇用主への支援の充実などに取り組みます。
697 更生保護の充実
持続可能な保護司制度の確立のため、保護司の安全確保対策を含む支援の強化に取り組みます。 また、犯罪をした者などのうち、特に行き場のない者の立ち直りを支援するため、更生保護施設の運営基盤の強化や老朽化した施設の計画的な整備などに取り組みます。 更に、犯罪をした者などに対する“息の長い”支援の更なる推進に向け、地域に密着した支援ネットワークの構築や支援者支援等を実施する「更生保護地域連携拠点事業」の拡充、更生保護施設退所者等に対する「訪問支援事業」の拡充など官民が連携した継続的支援体制の整備にも取り組みます。 加えて、犯罪被害者等の心情等を十分考慮し、保護観察を受けている者にその被害の回復等に誠実に努めるよう指導監督することなどにより、犯罪被害者等の思いに応える更生保護の取組みを推進します。
698 包摂的なコミュニティづくり
「社会を明るくする運動」をはじめとする広報啓発活動を一層強化し、立ち直ろうとする人を受け入れ、支え続けられるような包摂的なコミュニティづくりに取り組みます。 また、社会内処遇におけるアセスメントを強化するとともに保護観察所による地域援助の取組みを推進し、更生保護に関する民間ボランティアの活動に対する支援を充実させるとともに、犯罪をした者等に対する継続的な支援に関する地方公共団体による取組みへの支援を行います。
699 更生保護行政のデジタル化
「刑事手続における情報通信技術の活用」に対応して更生保護業務のデジタル化を促進し、より効果的な再犯防止対策を充実させます。特に、保護司活動の負担を軽減し、時代の流れに対応したものとするため、保護司活動のデジタル化を強力に推進するとともに、更生保護行政のデジタル化を迅速に進めます。
700 矯正施設の充実
矯正施設におけるアセスメント・効果検証能力の強化や対象者の特性に応じた指導・支援の充実を図るとともに、地方公共団体・民間団体などとの連携を一層推進します。 また、地域の犯罪・非行を防止するため、少年鑑別所(法務少年支援センター)における非行・犯罪心理に関する専門的知見を活用した相談体制を強化します。 更に、「国土強靱化基本計画」に基づき、矯正施設などの耐災害性を更に強化し、地方公共団体などの避難場所に指定するといった地域との連携の深化により、地域の混乱リスクの低減に資する取組みを推進します。
701 矯正施設における再犯防止機能の充実
刑事施設において、拘禁刑の創設の趣旨を踏まえた矯正処遇を推進するほか、社会復帰支援の充実等を図ります。 また、少年法の改正等を踏まえ、特定少年を含む若年受刑者の改善更生のため適切な処遇を一層推進します。少年院において、特定少年を含む少年院在院者の改善更生のため、入院早期の段階から地域社会や民間団体などと連携した社会復帰後の地域での生活を見据えた矯正教育・修学支援などを推進します。 更に、刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・伝達制度を、引き続き犯罪被害者等の方々に寄り添い、適切に運用します。受刑者等の矯正処遇や矯正教育にも犯罪被害者等の方々の心情等を反映します。これらを通じ、そのお立場やその心情等に一層配慮します。
702 インテリジェンス機能の強化
国内外の悪意ある主体によるサイバー攻撃や偽情報の拡散など、深刻化する脅威に対応するため、サイバー空間における不審動向などに関する情報収集・分析体制を強化します。 また、北朝鮮に対する制裁措置の実効性確保や北朝鮮による拉致事案などの解決に向けて、外国機関との連携を強化しつつ、情報収集・分析体制を強化します。 更に、テロの未然防止や国家安全保障政策に資するため、外国機関との連携を強化しつつ、サイバー空間を含む人的情報収集・分析を中心としたインテリジェンス機能を強化します。経済安全保障分野の政策判断に不可欠なインテリジェンス能力を向上させるため、公安調査庁をはじめとする関係省庁における情報収集・分析に係る能力・体制を更に強化します。 加えて、来日した外国人材に関し、「安心して暮らせる国 日本」に向けた対応に必要な情報収集・分析体制を強化します。
703 テロの未然防止とサイバーセキュリティの確保
2025年大阪・関西万博及び2027年国際園芸博覧会をはじめとする大規模国際イベント開催や観光立国実現を見据え、テロの未然防止やサイバーセキュリティの確保に向けた情報収集・分析体制を強化するとともに、水際対策の徹底や観光客などに対する円滑な出入国審査に取り組みます。
704 領土・領海の堅守
領土・領海を断固として守り抜くため、新たな国家安全保障戦略の取り組みの中で、我が国周辺海域での海上保安庁の対応力向上のための体制拡充・強化等により、領域侵害対処に万全の措置を講じます。具体的には、尖閣領海警備能力、広域海洋監視能力、大規模・重大事案の同時発生に対応できる事案対処能力、自衛隊等関係機関との連携・支援能力、海洋調査能力、人材確保・育成・定員の増員・教育施設拡充等の業務基盤能力といった海上保安業務の遂行に必要な能力強化を進めます。また、国境画定の起点等遠隔離島における活動拠点の整備等を推進します。
705 海上における治安の維持・安全の確保
老朽船の更新等「足腰」にかかる予算も十分に配分されるようにするほか、無操縦者航空機等の新たな技術の活用により海洋状況把握の能力強化の取組みを進めるとともに、大和堆周辺海域における外国漁船の取締り強化のための体制を強化するなど、離島・遠方海域における治安の維持・安全の確保に努めます。また、異常気象時における船舶の走錨に起因する事故の防止を図るなど、海上交通の安全の確保を推進します。更に、激甚化する自然災害に対しても、人命救助を基本に、関係機関と連携して被災地のニーズに柔軟に応えられるよう努めます。
706 諸外国の海上保安機関との連携強化
南シナ海・東シナ海等における法の支配、共通の価値に対する挑戦については、アジア諸国をはじめとした海外の海上保安機関間の枠組みや、地域の枠組みを越えた「世界海上保安機関長官級会合」等の多国間の枠組み等を活用し、能力向上支援や国際連携等の強化を図ります。
707 世界一安全安心な日本に向けた取組みの充実強化
全ての国民が安全に安心して生活できる社会を実現するため、「『世界一安全な日本』創造戦略2022」に基づき、テロ、サイバー事案、不法入国・不法滞在者、再犯防止、特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺、ストーカー・DV・性犯罪・児童虐待等への対策のほか、AI等の先端科学技術を活用した治安活動の高度化など、世界一安全安心な日本に向けた取組みを充実強化し、治安関係の基盤の強化に取り組みます。 「大阪・関西万博」を見据え、テロ等を未然に防止する取組みを促進しつつ、国内の組織・法制のあり方について研究・検討を不断に進めるとともに、関係省庁の人的・物的基盤を拡充するなど、情報収集・分析体制を強化します。
708 サイバー事案に対応するための体制強化
高度化・複雑化するサイバー事案に対応するため、関係省庁における資機材の整備や高度な知見を有する専門人材の確保・育成に力を注ぎ、サイバー事案に対する捜査・対処態勢の強化、攻撃の予兆、攻撃主体・方法等に関する情報収集及び情報技術解析に関する態勢を強化します。 また、我が党は、サイバー空間における違法・有害情報の排除、日本サイバー犯罪対策センター(JC3)の積極的な活用、捜査手法の高度化などに取り組みます。
709 サイバーセキュリティ対策に係る連携の強化
地方自治体について、サイバー攻撃が急速に複雑・巧妙化している中、地方自治体の行政に重大な影響を与えるリスクも想定されることから、その情報セキュリティ対策の抜本的強化を推進します。 また、中小企業におけるセキュリティ対策の抜本強化に向け、中小企業が利用しやすいサイバーセキュリティお助け隊サービスの普及支援を行います。こうした地域単位の事業者のセキュリティ対策の強化のため、政府と地方自治体や地域企業の連携により情報共有やサイバー演習を行うための地域に根付いたセキュリティコミュニティである「地域SECUNITY(セキュニティ)」の形成及び強化支援に取り組んでまいります。 更に、諸外国等との効果的な連携を図り、サイバー分野における日米、日米韓及び日ASEAN、QUAD等の政府間の対話をはじめ二国間・多国間での政策対話・取組みや国際会議への参画、能力構築支援等を通じた国際協調による協力体制の構築を図ります。
710 重要インフラ等におけるペネトレーションテスト等の継続的な実施
重要インフラやIoT システムにおけるサイバーセキュリティ対策が継続的に実施されるためには、日々、高度化する攻撃リスクを把握することが重要です。継続的なペネトレーションテスト等の実施を通じ、経営者を含めた攻撃リスクの認識を共有し、セキュリティ対策を推進します。
711 対日有害活動やテロ等への対策強化
北朝鮮による核実験・ミサイル発射等を受けて採択された国連安保理決議等の実効性の確保及び北朝鮮による拉致容疑事案の真相解明等の対日有害活動への対策並びに技術流出防止対策等の経済安全保障に関する取組みの推進に向けて、人的・物的基盤の拡充や外国治安・情報機関との情報交換の推進等を通じて、情報収集分析体制を強化します。 また、現在も市民生活を脅かす暴力団による抗争事件の発生がみられるほか、国際テロ・原発テロ・スポーツイベントにおけるテロなどの脅威への対応が求められています。こうした情勢を踏まえ、海外などにおける情報収集体制や警備体制の強化など、サイバー犯罪対策、組織犯罪対策やテロ対策に万全を期します。
712 テロリスト等の入国を阻止する水際対策、情報収集・分析体制の強化
テロリスト等の入国を阻止するため、出入国管理体制の強化、出入国管理に係るインテリジェンス機能の強化、本邦渡航前におけるスクリーニングの強化、顔画像照合機能の活用等により水際対策を強化します。国際テロ情勢や安全保障環境が厳しさを増す中、海外の関係機関との連携を一層緊密にし、関係省庁の専門人材の確保及び育成を強化するなど、我が国の情報収集・分析体制を強化します。テロへの関与が疑われる外国人が、日本への帰化によって日本人として我が国に潜伏することを防止するため、より慎重に帰化許可申請の審査を行うとともに、関係機関との連携強化を図ります。
713 緊急事態対処体制の強化
尖閣諸島及び周辺海域のように警戒警備の強化が急務な場合があるため、国家・国民の安全を断固として守るために必要な法務・警察部門の体制強化を図り、頼りがいのある治安インフラの確立を目指します。
714 国民の安全安心の確保
高齢者が特殊詐欺や悪質商法の被害に遭ったり、ストーカー事案により国民の安全が脅かされたり、刑務所等の出所者が再び犯罪を犯したりするような国民の安全・安心を脅かす事案が相次いでいます。我が党は、相談事案従事者のスキルアップや広域的な情報管理体制の確立、交番及び通信指令の機能強化、矯正職員の技能向上など、市民生活の安全を確保するために必要な体制の強化を図っていきます。特に、特殊詐欺については、金融機関、関係事業者等の協力を得て未然に防止するための取組みを強化するとともに、高齢者のみならず、その子供・孫世代を対象に、家族や地域の絆による被害予防を呼びかける広報啓発に取り組むなど官民一体となった予防活動を推進します。
教育
715 改正教育基本法に基づく教育改革
誰もが日本に生まれたことを誇りに思える品格ある国家を目指して、2006年の「教育基本法」の改正以降、人格の完成を目指し、国家及び社会の形成者を育成するという理念を踏まえ、いわゆる教育3法の改正や、教育振興基本計画の策定、学習指導要領の実施による伝統・文化に関する教育や道徳教育の充実など、教育再生を総合的に推進し、教育内容の抜本的な改善・充実や、切れ目のない教育費負担の軽減、次世代の学校・地域の創生を行ってきました。今後は、Society5.0の実現に向けて、学習指導要領の着実な実施や学校における働き方改革、高大接続改革、教育費負担軽減やリカレント教育の推進など、新時代に対応した教育改革に取り組みます。
716 教育再生の着実な実行
「教育基本法」の理念に基づき、「自助自立する国民」「家族、地域社会、国への帰属意識を持つ国民」「良き歴史、伝統、文化を大切にする国民」「自ら考え、判断し、意欲にあふれる国民」を育成します。そのため、「教育基本法」に則り策定した「第4期教育振興基本計画」や学習指導要領などを踏まえ、これまで進めてきた教育再生の歩みを緩めることなく着実に実行します。
717 教育投資の充実と安定的な財源確保策の検討
「家庭の経済状況や発達の状況などにかかわらず、学ぶ意欲と能力のある全ての子供・若者・社会人が質の高い教育を受けることができる社会」を実現します。また、少子化を解決し、「格差の再生産」を食い止めることは、我が国にとって喫緊の課題です。これらの課題解決に向けて、OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考とし、教育投資をこれからの時代に必要な「未来への先行投資」と位置づけ、その抜本的拡充と財源確保、民間資金の更なる活用などに取り組みます。
718 若者の夢や志を実現する学校教育への抜本的転換
変化が激しく先の予測が困難な時代の中で、全ての若者が夢や志を抱き、チャレンジし、それを実現していくことができるよう、学校教育の在り方を抜本的に見直すことが必要です。このため、一人ひとりの状況に応じた質の高い教育を提供するため、小学校における35人学級を計画的に推進し、その効果検証を踏まえ、中学校での対応を検討します。また、小学校における教科担任制の拡大などの指導体制の充実と未来の創り手となる子供たちに必要な資質・能力の育成を目指す学習指導要領の着実な実施に取り組みます。
719 グローバルに活躍できる人材の育成
日本人としてのアイデンティティ、歴史や伝統、文化に対する教養、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度、豊かな語学力、異なる文化・価値を乗り越えて関係を構築するためのコミュニケーション能力などを備え、高い志や意欲、社会貢献への意識を持つ自立した人間としてグローバルに活躍する創造的な人材を育成することは重要な課題です。このため、AIの活用、教師の英語力・指導力の向上、小学校の英語専科教師や外国語指導助手(ALT)配置等の学校指導体制の充実、教材・指導資料の配布等の環境整備、中学校における英語の全国的な学力調査の実施とともに、「話すこと」「書くこと」の力の強化や英語力の地域間格差等の課題を解消し、英語教育を抜本的に強化します。
また、WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアムの構築を支援するとともに、希望する生徒全員が海外留学できるよう、留学支援の充実を図ります。また、共通必履修科目「地理総合」「歴史総合」において地理歴史や伝統・文化に関する教育の推進を図ります。併せて、帰国生の公立学校における受け入れ態勢を充実します。
720 理数教育の大幅な充実
将来、イノベーションの担い手として世界を牽引していくリーダーとなるような子供の育成に向けて、先進的な理数系教育を行う「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」を推進するとともに、理数好きな子供を増やすため、体験活動や実験教室の充実、理工学部の学生や企業関係者などの外部人材の活用、理科設備などの環境整備、更には理数教育に携わる教師の指導力向上、理数専科教員の増員などを推進し、初等中等教育段階での理数教育を大幅に充実します。また、全国学力・学習状況調査で、国語・算数(数学)に加え、理科の調査を定期的に実施します。
721 理工系人材の育成
子供の多様性を尊重し、創造性を育むとともに、優れた資質を伸ばし、育てる才能教育を強化します。学校を超えた才能教育の場を確保するための「次世代科学技術チャレンジプログラム」を推進するとともに、中学・高校生の「科学の甲子園・科学の甲子園ジュニア」などの活躍の場の充実などを推進し、国際科学オリンピックに参加する児童生徒数の大幅な増加を促進し、国際的な交流機会を拡大します。また、高等教育段階において、入学時に必要な学力として文系においても論理的思考力や表現力などの理数の力を重視する取り組みや、文理横断型教育プログラムの開発、デジタル・半導体などの成長分野を含む理工系人材の育成などを支援します。
722 国際バカロレアの更なる普及と活用の促進
国際的に通用する大学入学資格を取得でき、グローバル人材の育成に有益な国際バカロレアの教育効果を検証し、全国的なコンソーシアムによる成果の発信を通じて認知度の向上を図ります。また、導入・活用に関心のある自治体・学校・大学等への支援を一層強化することにより、認定校等の増加を図り、国内外で活躍できる多様な人材の育成に取り組みます。
723 教育の情報化の推進
GIGAスクール構想によって子供たち1人1台の端末が整備され、全国的に端末の利活用が進んでいます。今後、端末等を活用した個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実のための専門家派遣など自治体・学校に対する伴走支援の取り組みの推進や、情報モラル教育の充実とともに、子供たちが互いに切磋琢磨しながら一人ひとりの力を最大限引き出す教育環境の整備を行います。
また、教師がデジタルの恩恵を実感できるよう、校務のDXを環境整備も含めて集中的に支援し、業務の効率化や学校における働き方改革につなげます。更に、すべての小・中学校等における学習者用デジタル教科書の活用を促進し、子供たちがデジタルの良さを生かした学習を実感できるようにするとともに、教育データの活用等による教育DXを推進します。
724 GIGAスクール構想の更なる前進
GIGAスクール構想で整備した一人一台端末を活用し、教育DXにより公教育を質的に向上させ、全国どこでも誰もが取り残されない教育を実現していきます。また、ネットワークアセスメントの徹底やその結果を受けた通信ネットワークの着実な改善を図るとともに、地方自治体の発意に基づく地域固有の課題に応じた取り組みや生成AI等の活用も含む先進的な取り組みを支援します。
725 日本人学校などのグローバル人材育成能力の強化
海外で暮らす子供たちは将来のグローバル人材の原石です。そうした子供たちが安心して学べるよう、国内同等の教育環境を整備する観点から、日本人学校などへの教師派遣の拡充や教師の質の向上に向けた取り組みを進めるとともに、教育DXの推進や安全対策に取り組みます。また、魅力ある在外教育施設づくりに向け、先導的で特色ある取り組みを推進するとともに、海外での我が国に対する理解の増進が図られるよう、在外教育施設を拠点とする国際的な交流を促進します。
726 日本型教育の海外展開の推進
高い基礎学力とともに協調性や行動規範を重視する小学校・中学校教育や、実践的で高度な技術者教育を行う高等専門学校制度などの「日本型教育」を学びたいという要望が、諸外国から寄せられており、我が国の教育それ自体がソフトパワーの源泉となっています。こうした日本型教育の海外展開をNPO、大学、企業等の参画を得ながら積極的に行い、相互理解の促進と国際社会への貢献、日本の経済成長への還元、日本の教育の国際化など教育の質向上につなげていきます。
727 公教育における国の責任体制の確立
義務教育については国が責任を果たすとの理念に立ち、教育の正常化を図った上で、子供が日本のどこで生まれ育ったとしてもふるさとで頑張っていれば必ず夢が実現できる環境を整えるため、教育の地域間格差が生じないよう、公教育の底上げに徹底的に取り組みます。
経済状況をはじめとした家庭環境や地方自治体の財政力によって教育格差が生じないよう、教育費負担の軽減などに取り組みます。
728 教育の質の保証
義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国学力・学習状況調査を悉皆かつ毎年度継続的に実施し、全ての子供の課題把握、学校の指導改善に生かします。また、保護者への調査や学力の経年変化を継続的に把握するための調査などを定期的に実施して、学力の状況を多角的に把握・分析し、次代を担う子供たちが確かな学力を身につけるための取り組みを一層推進します。
更に、GIGAスクール構想が進む中でエビデンスに基づく学習指導の重要性はより一層高まっており、国際学力調査のCBT(コンピュータ使用型調査)による実施の流れなどを踏まえ、全国学力・学習状況調査のCBT化を推進します。国際的な学力調査の結果を見ても、日本の子供の学力はトップレベルにあります。ただし、応用力や活用力の面に課題があり、また、発展的な学習の実施や、実社会とのつながりを意識しつつ、教育課程や方法を改善していく必要もあります。これからも全ての子供の能力を最大限に伸ばし、未来を切り拓いていく力を身につけさせ、公教育の使命を果たします。
729 学校の指導・運営体制強化と働き方改革
障害のある子供、経済的困窮家庭の子供、日本語指導が必要な子供、不登校傾向のある子供、特定分野に特異な才能のある子供など、特別な支援を必要とする子供たちの自立と社会参加を目指し、真の「共生社会」や「一億総活躍社会」の実現のため、多様な子供たち一人ひとりの状況に応じ、それぞれが持つ能力を最大限に伸ばすため、きめ細かい教育を提供していくことが必要です。
このような観点から、学習指導要領を着実に実施し、教育の質を保証するため、小学校35人学級の計画的な整備や小学校における教科担任制の拡大など教職員定数の改善、教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ)や副校長・教頭マネジメント支援員、校内教育支援センター支援員、部活動指導員等の支援スタッフの一層の充実などにより、学校の指導・運営体制の強化・充実を図ります。
また、児童生徒や学校を取り巻く問題に関して法的側面からの助言や保護者との面談の同席等を行うスクールロイヤーの体制を充実するとともに、学校だけでは解決が難しい事案の解決を、行政が支援する体制の構築を進めます。こうした取り組みを通じて、世界的に大きな成果を上げてきた、質の高い我が国の学校教育を持続可能なものとし、更に発展させるため、勤務時間管理の徹底、学校及び教師が担う業務の明確化・適正化等を通して、教師の時間外在校等時間を徹底して削減し、学校における働き方改革を併せて推進します。
730 教師の処遇改善
我が国の未来を切り開く子供を育てるという崇高な使命と高度な専門性・裁量性を有する専門職である教職の特殊性や、喫緊の課題である教師不足解消の必要性などを踏まえ、教師に優秀な人材を確保し、頑張っている教師の士気を高め、教職の魅力向上を図るため、「人材確保法」の初心に立ち返り、教職調整額の率を10%以上を目指して大幅に引き上げるなど、教師の処遇を抜本的に改善します。
731 我が国を愛する心を養う教育と体験活動などの推進
国旗・国歌を尊重し、我が国の将来を担う主権者を育成する教育を推進します。不適切な性教育やジェンダーフリー教育、自虐史観偏向教育などは行わせません。
中学校・高等学校でボランティア活動やインターンシップを積極的に推進し、公共心や社会性を涵養します。キャリア教育や職業教育、また、豊かな体験に裏打ちされた子供の力強い成長を促す農山漁村地域での自然体験活動や長期宿泊体験学習などを推進します。併せて、地域に根差した伝統・文化(伝統文化親子教室など)や、スポーツクラブ、サークル活動などの地域の絆を守り、困難な状況にある家庭も対象とした取り組みを支援(幼児期からの運動習慣作りの促進、親子参加型自然体験活動の充実など)します。
732 規範意識を養う教育の推進と「公共」の着実な実施
人が人として生きる上で必要な規範意識や社会のルール、マナーなどを学ぶ道徳教育については、家庭や地域との連携を図りながら、学校の教育活動全体を通じて行うものであり、その要となる特別の教科 道徳での、検定教科書を用いた指導の着実な実施などにより、更なる充実を図ります。全国の優れた取り組みを発信(道徳教育アーカイブの拡充など)するとともに、都道府県が実施する研修や家庭・地域との連携強化のための取り組みを支援します。
また、高等学校において、主体的な社会参画に必要な力を実践的に育むよう新しく設置された科目「公共」について、着実な実施に取り組みます。更に、小・中・高等学校を通じて、学校に新聞の複数紙配備を進め、併せて主権者教育を推進します。
733 依存症予防教育の総合的な推進
近年、喫煙、飲酒、薬物、インターネット、ギャンブルなどに関する依存症が社会的な問題となっており、将来的な依存症患者数の逓減や、青少年の健全育成の観点から、国、学校、地域が一体となって予防教育を行っていくことが必要です。具体的には、啓発資料の活用など、各学校段階における依存症に関する予防教育の取り組みを充実するとともに、社会教育施設などを活用した保護者、地域住民向けの「依存症予防教室」などの学校外の取り組みを推進します。
734 令和の日本型学校教育をはじめとする、激動の時代に対応する新たな教育改革
世界トップの教育立国とするため、結果の平等主義から脱却し、社会状況や子供の多様な成長の実態などに応じた、学校制度の多様化・複線化、教員免許制度改革や小学校教科担任制の拡大などによる義務教育改革、普通科改革の推進や探究・文理横断・実践的な学びの推進を図る高校教育改革、高大連携の推進、社会変革の原動力となる高等教育改革、大学院の充実、産学連携、社会人の学び直しなど、学校制度全体を通じた改革に取り組みます。
小中一貫教育を地域の実情に応じて積極的に推進するとともに、フリースクールやインターナショナルスクール、フリーアクセスができる教育クラウドの作成などの学校外教育の環境整備、夜間中学の設置促進・教育活動の充実、飛び級の制度化など、個人の志や能力・適性に応じ、様々な挑戦を可能とする学びの保証システムを実現します。
735 高等学校教育改革の推進
高校生の学習意欲を喚起し、能力や可能性を最大限引き出すため、普通科改革の推進や、地域における人材の定着・還流に向けた高等学校と地元の市町村や産業界等との連携強化、地方の小規模校における教育の充実や不登校生徒等の学習機会の確保のための遠隔授業や通信教育の活用の促進など、高等学校教育改革を推進します。
更に、後期中等教育の複線化を図り、若者が自らの夢や志を考え、目的意識を持って実践的な職業能力を身につけられるようにするとともに、産業構造等の変化に対応するため、専門高校と専攻科を活用した5年一貫の職業教育や、専門高校と産業界等が一体となり、最先端の業務人の育成推進を図る「マイスター・ハイスクール(次世代地域産業人材育成刷新事業)」を通じて支援を強化します。自動車や造船をはじめとした地場にある産業界との連携を強化して、実践的なキャリア・職業教育、社会制度教育等を推進していきます。
736 高校段階におけるデジタル人材育成強化
大学等におけるデジタル分野への学部転換等の取り組みが進む中、高等学校段階からのデジタル人材育成の抜本的な強化が必要であり、DXハイスクール事業として、ICTを活用した文理横断的・探究的な学びを強化する学校等に対して、必要な環境整備に係る支援を着実に進めていきます。更に、これらの学校における取り組みが確実かつ発展的に成果を挙げ、実践的な職業教育を行う専門高校においても、高度な専門教科指導を実施することができるよう、専門的な外部人材の活用や大学等との連携などの支援を一層強化するとともに、デジタル人材育成に資するDXハイスクールの更なる拡大を図ります。その際、産業界等と連携した最先端の職業人材育成の取り組み、グローバルな取り組み、普通科改革を行う学校を重点的に支援します。
737 何歳になっても学び直しのできる社会の実現
何歳になっても、スキルアップ、職種転換などに役立つ学び直しができるよう、意欲のある学習者への経済的支援を充実するとともに、放送大学の機能強化などにより、学びやすい環境整備を推進します。また、大学・大学院・専修学校などにおける、社会人や企業などのニーズを踏まえたデジタル・グリーン等成長分野におけるプログラムの開発支援、「職業実践専門課程」や「キャリア形成促進プログラム」、「職業実践力育成プログラム(BP)」の認定拡大、産学官等で人材ニーズを把握し、開発するプログラムを議論する場の設置促進、社会人の学習を後押しする情報アクセスの改善や、大学等での学び直しの履歴のデータ化など、就職氷河期世代も含めた社会人が再び学べる環境を整備し、産業構造の変化に対応したキャリアアップの機会保障と再チャレンジを促進します。
738 オンラインによる学びの機会の充実
様々な困難を抱える人々も含め全国民の学びを保障するため、子供向けから大人向けまで多様な動画教材や学習講座を紹介するポータルサイトを整備し、地域・障害・言語などの壁を越えて学びの機会を提供します。
739 女性や高齢者の学び直しや活躍の機会の創出
特に女性については、大学などにおける保育環境の整備を含め、子育てなどで離職した女性の学び直しと再就職やリカレント教育を一体的に行う仕組みづくりなど、地域と教育機関などの連携によるキャリア形成支援を充実します。
高齢者については、地域における関係機関が連携し、学び直しが地域活動や就労・起業などと連動する仕組みづくりを推進します。
740 教育委員会改革の推進、町村教育委員会への支援強化
地方分権を受けて、地方自治体の教育政策決定や教育行政運営において、首長や地方議会の役割が高まっています。いじめ問題では教育委員会に対し形骸化や名誉職化といった批判があったため、2014年に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」を改正しました。教育の政治的中立性を確保しつつ、地方自治体の教育行政に民意を反映させ、効率的・迅速な運営を可能とすることを目指した法改正の趣旨に則り、引き続き、教育委員会改革を推進します。
また、様々な課題を抱えているにもかかわらず、事務局体制が十分でない教育委員会に対する支援策を検討するとともに、教育委員会の運営の活性化のための教育委員への研修を実施します。
741 真に教育基本法・学習指導要領に適った教科書の作成
「教育基本法」が改正され、学習指導要領が改訂された後も、自虐史観に立つなど、偏向した記述の教科書が存在したことから、安倍政権において、教科書検定基準を改正しました。政府見解があるものについてはきちんと書かせ、特定の学説のみを記載して子供たちが誤解するといったことがないように抜本的改革を進め、全体的に記述の大幅な増加や内容の充実が見られました。また、学習指導要領を改訂し、領土に関する記述が大幅に増加しました。
また、学習指導要領の改訂に併せて、検定基準の更なる見直しを行いました。加えて、教科書調査官は、学習指導要領に基づいた良い教科書を作っていく上で、教科書検定における大変重要な役割を担っており、優れた人材の登用が必要であることから、教科書調査官の採用における公募制を導入しており、この方向性を一層推し進めます。
742 教科書採択の公正確保
義務教育諸学校の教科書採択の制度に関しては、各教育委員会や国立大学附属学校や私立学校に、採択した結果や理由などの公表に努めることを義務付けており、高等学校等に関しても、採択の結果や理由を公表すべく、設置者に働きかけを行っていきます。教科書採択にあたっては、国民から疑念をもたれないように、今後とも、採択権者の権限と責任により適切な採択が行われるよう、教科書発行者、教育委員会・学校関係者に対し、採択における公正確保などを徹底します。
743 人材育成の強化
Society5.0の時代に子供たちが必要な資質・能力を育むために、教材のオンライン図書館である「オンラインSTEAMライブラリ-」の拡充・活用促進等により、STEAM教育を推進するとともに、子供たちの多様な才能を開花させるための民間教育プログラムを提供する「サードプレイス」(学校でも家庭でもない「第三の場」)の全国ネットワークを創設し、大学、高校、小中学校、経営者・企業等と連携し、地域ベースで多様な才能育成・異能発掘に取り組みます。
744 格差克服のための教育の推進
貧困の連鎖を断ち切るとともに「地方創生」を実現するためには、教育における格差を克服し一人ひとりの能力を向上させることは喫緊の課題です。そのため、学校が全ての子供に基礎学力を保障できるよう、学力課題校の解消やいじめ・不登校・中退などの課題を抱える子供への支援に取り組みます。
また、幼児期から高等教育段階まで切れ目なく教育費負担の軽減を図るため、無償化を実現した幼児教育については更に質を向上させるための財源を確保し、就学援助に係る補助の充実、高校生等の授業料以外の教育費支援の拡充や安定財源を確保した高校教育の無償化の拡大などの高校生等への修学支援の充実、高等教育段階では、大学などの授業料・入学金の無償化の対象を更に拡大するなど、経済的支援の充実を図ります。
更に、日本版HECSとして在学中は授業料を徴収せず卒業(修了)後の所得に連動して返還・納付を可能とする新たな制度について、修士を対象に先行導入するとともに、学部生等への対象拡大を目指します。
745 貧困家庭に対する教育支援
国及び基礎的自治体に、教育支援も含めた貧困家庭に対する支援を行う総合的なワンストップ窓口を整備するとともに、「教育格差克服モデル都市」を設け、取り組みを確立・発信していきます。また、格差克服が様々な社会的便益をもたらすというエビデンスを整備し、教育財源を確保するとともに、民間資金を含む多様な資金を活用するため新たな制度の導入も検討します。
更に、困難を抱える家庭に寄り添った伴走型の家庭教育支援員の養成・配置促進による訪問型家庭教育支援の充実や親の相談・交流の居場所の提供、原則無料の学習支援の充実や図書館を活用した読書や自然体験活動を通じた親子の学びの推進などにより、学校だけでなく、家庭や地域の教育力向上を図ります。
746 多様な個性を最大限に伸ばす教育の実現
全ての子供の可能性を伸ばし活躍できる社会の実現に向け、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実します。保護者の不安を解消し一人ひとりの個性への理解を深め、子供たちを温かく見守ります。
一人ひとりの学習状況にきめ細かく対応するため、1人1台端末の下、ICT等の活用と少人数学級の推進、放課後を活用した補充的・発展的な学習などを拡充します。教育支援センターの充実や高校中退者などの高卒資格取得等に向けた学習相談・支援、特別の教育課程を編成する学校の整備など、また、隠れた能力を引き出すためのICTなどの活用も推進します。
747 特に優れた能力を更に伸ばす教育、リーダーシップ教育
多様な個性が長所として肯定され生かされる教育の実現には、一人ひとりの長所や強みを最大限に生かす視点が重要です。このため、社会の理解を醸成しつつ、国内外の実践事例について幅広く知見を収集し、大学などとの連携も含め、各学校、地方自治体などで、特に優れた能力やリーダーシップなどの資質を最大限に伸ばす多様な教育を推進します。
748 地域と学校の連携・協働による社会総掛かりでの教育の実現
学校が地域の人々と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子供たちを育む「地域ともにある学校」に転換するとともに、「学校を核とした地域づくり」を推進していくため、コミュニティ・スクール(学校運営協議会を置く学校)と地域学校協働活動の一体的推進が不可欠です。全ての公立学校がコミュニティ・スクールになることを目指し、教育委員会や学校などの取り組みを強力に支援します。
また、地域住民などの協力による放課後や土曜日の学習・体験活動などの地域と学校が連携・協働して地域全体で子供を育てる活動(地域学校協働活動)や、家庭教育支援、図書館なども活用した読書活動などを推進します。地域住民などのネットワーク化と学校との連絡調整を図る「地域学校協働活動推進員」の配置の充実などにより、「地域学校協働本部」を整備し、豊富な知識・経験を持つ地域の退職者、企業・団体など外部の人材が、放課後などの学習、総合的な学習の時間や道徳などにおいて、その社会体験を活かした支援を行う体制を構築します。特に、経済的な理由や家庭の事情により、学習が遅れがちな子供たちへの原則無料の学習支援(地域未来塾)の取り組みを積極的に推進します。
749 地域から学校を支え、地域を活性化
地域から学校を支えるとともに、地域の活性化を図るため、高齢者をはじめ地域住民などがボランティアや地域活動に参画しやすい環境を整備することが必要です。このため、高齢者などの地域住民などが活躍するための学びと実践の場を創生するなど、地域社会において全ての世代が活躍できる環境を充実します。
750 深刻ないじめを無くし、一人ひとりを大切に
「いじめは絶対に許されない」との意識を日本全体で共有し、児童生徒を加害者にも、被害者にも、傍観者にもしない教育を実現します。第一に守るべきは、いじめの被害者です。加害生徒への厳正な対応・指導や行為が犯罪に該当する場合は警察に通報する、道徳教育の徹底など、今すぐできる対策を断行するとともに、いじめ対策に取り組む地方自治体を、国が協働しつつ指導を徹底し、財政面などで強力に支援します。
751 総合的・組織的ないじめ対策の推進
いじめが背景にあると疑われる痛ましい自殺事案が後を絶ちません。「いじめ防止対策推進法」に基づく総合的ないじめ対策が全国で確実に実施されているか点検するとともに、学校内のいじめ対策組織や教育委員会会議、総合教育会議を活用した組織的ないじめ対策を推進できるような方策を講じます。また、インターネット内での問題行動に対する取り組みを強化するとともに、いじめの予防及び早期解決に向けて地方自治体を支援するため、緊急時にいじめ・自殺など対策の専門家を派遣するなど国の体制を整備します。
752 不登校の子供に対する支援の強化
不登校の子供に対する支援を強化するため、不登校の子供に配慮した特別の教育課程を編成する学校である学びの多様化学校(不登校特例校)の設置促進や、学校内の別室を活用して指導・相談支援を行う校内教育支援センターの充実を図るとともに、教育支援センターの機能強化やスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置充実、学校外で学ぶ子供たちへのオンラインを活用した指導・支援の推進等、専門家を活用した教育相談体制の整備や関係機関との連携強化を推進します。
また、夜間中学の設置促進・教育活動の充実と就学希望者への積極的支援などの施策を一体的に実施します。
753 高等学校卒業程度認定試験の実施における地方との協働
高等学校段階の不登校者及び中途退学者の支援策として不可欠な高等学校卒業程度認定試験について、例えば都道府県による受験生への試験案内や進路変更に係る教育相談、試験会場の提供など、国と都道府県が互いの役割を果たしながら緊密に連携し、試験を実施していきます。
754 公私間格差の是正・私学助成の拡充
公教育において私学が果たしてきた重要性に鑑み、私学の建学の精神を尊重しつつ、「私立学校振興助成法」の目的の完全実現(教育条件の維持・向上、修学上の経済的負担の軽減、経営の健全性向上)により、公私間格差の解消を図ります。また、私立大学等については少子化を見据えた経営改革や社会からの要請と期待に応える抜本的な変革を行うとともに、2分の1を目標に私学助成を拡充します。併せて、幼稚園、小・中・高等学校、特別支援学校の私学助成についても、経常的経費の拡充など更なる充実を図ります。
755 教育の政治的中立性の徹底的な確立
政治的中立性を厳に確保し、間違っても学校教育に政治的なイデオロギーが持ち込まれることがないよう、教育公務員の政治的行為の制限違反に罰則を科すための「教育公務員特例法」の改正、及び法の適用対象を義務教育諸学校限定から高等学校などに拡大する「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」の改正を行います。
756 教師力の一層の向上
教師力の一層の向上を図るため、2022年の中央教育審議会における「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等のあり方についての答申も踏まえながら、既存のあり方に囚われることなく基本的なところに遡って必要な改革を進めます。具体的には、教師に求められる資質能力の再定義や多様な専門性を有する質の高い教職員集団のあり方についての検討を踏まえ、質の高い教師の確保・育成に向け、地域枠の活用や多様な専門性や強みを発揮する質の高い教師の養成、学部・大学院一貫プログラムの活用等により教員養成大学・学部、教職大学院の機能強化・高度化を図ります。
また、第208回国会で成立した改正教育公務員特例法及び教育職員免許法を踏まえ、教師の個別最適で協働的な学びの充実を通じた主体的・効率的で深い学びを支える仕組みを構築するとともに、デジタル技術の活用を含めた教師の研修の更なる高度化を図りつつ、教員の効果的・効率的な資質向上と負担軽減等を進めます。
757 適性・人物重視の採用システムの整備と教師の地位向上
大学・大学院における学修成果、社会経験やボランティア活動等諸活動の実績等を多面的な方法・尺度を用いて総合的かつ適切に評価することにより、一層適性重視・人物重視の採用システムの整備を進めるほか、各教育委員会が教職養成に一定の責任を持つ「教師塾」の全国展開を促進します。また、教員採用選考試験の早期化・複線化も含めた実施時期のあり方や、特別免許状の活用による多様な人材の登用などについても検討を進め、あらゆる手段を講じて質の高い教師の確保に取り組みます。更に、教師の社会的地位の向上及び子供や保護者、地域住民などが教師の担う職務への理解を深める日として、近代教育制度を定めた学制の発布日である9月4日を「教師の日」として制定し顕彰することにより教職の重要性に関する認識を深めるとともに、教職を肯定的に表現しうる教師という用語の通用性を高めるための取り組みの一環として、「教師」という用語を用いることを一層推進します。
758 教育職員等による児童生徒等に対する性暴力等の防止等の推進
2022年4月に施行された「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」が適切に運用され、児童生徒等の権利利益の擁護に資するよう、同年3月に策定された「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する基本的な指針」を踏まえ、この問題に関する取り組みを総合的に推進します。
759 チーム学校の実現
校長の適切なマネジメントのもと、学校に多様な人材が参画し、教師と教師以外の多様な人材がそれぞれの専門性を十分に発揮して教育活動を行う「チーム学校」を実現します。そのため、「チーム学校」を実現していく上で何よりも重要な学校教育の中核を担う教師をはじめとする教職員体制の充実など、優秀な人材を確保するための総合的な方策を講じます。また、学校全体の教育力を高めるため、教師と専門スタッフが連携・分担して教育活動にチームとして取り組むことができる環境を整備するとともに、コミュニティ・スクール及び地域学校協働活動の一体的取り組みを通じて地域と学校が連携・協働できる体制を構築します。
760 学校と地域の連携・協働の強化と校長のリーダーシップの発揮
子供たちの教育を更に充実させていくためにも、学校と地域が目標やビジョンを共有し、学校・地域人材によるチームを形成することが重要です。そのため、コミュニティ・スクールの必置化を見据えた導入を加速させるとともに、地域住民などの協力による放課後や土曜日の学習・体験活動などを推進するための体制を整備することにより、学校と地域の連携・協働を強化します。
「チーム学校」が有効に機能するためには、校長のリーダーシップが重要です。教職大学院等も活用しながら、管理職や主幹教諭、指導教諭の育成を進めます。また、校長がリーダーシップを十分に発揮できるためには、校長を補佐する体制を充実させることが必要です。そのため、主幹教諭を倍増させ全校に配置するとともに、学校の経営企画機能を飛躍的に強化するため、事務職員の職務の見直しや適正な配置などの事務体制の効率的な強化を行います。
761 学校環境の向上と安全・安心な学校環境の一体的な構築
学校施設は、子供たちの学習・生活の場のみならず、災害時には避難所としての役割(命を守るシェルター機能)も果たし、また、地域コミュニティの拠点として高齢者や障害者なども利用するものであり、地方創生、国土強靱化、国民保護のための拠点となる重要な施設です。
このため、長寿命化改修等を通じた老朽化対策による安全・安心な学校施設の実現と新しい時代の学びに対応した教育環境の向上を一体的に推進するとともに、「防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策」に盛り込まれた防災拠点としての整備の観点も踏まえつつ、非構造部材を含めた耐震対策、トイレ環境の改善、空調整備、バリアフリー化など喫緊の課題にしっかりと取り組みます。加えて、LED照明や太陽光発電設備の整備等のネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)化により地域の脱炭素化にもつながる学校施設整備を支援するとともに、学校施設と他の公共施設等との複合化・共用化を推進します。更に、これらの整備需要に対応するため、実態に即した国庫補助単価への引上げを図ります。
763 学校施設の防災機能の充実
災害時においては学校施設が避難所となることから、天井材などの非構造部材を含めた耐震対策にしっかりと取り組みます。また、学校施設の防災拠点としての機能をより充実させるため、トイレの洋式化、体育館等への空調整備、独立して域外と連絡可能な通信設備の設置や、自家発電設備、備蓄倉庫、井戸や給水槽、入浴設備の設置、避難所へ炊き出しを提供する給食施設の整備などを進めます。更に、地方自治体が財政上、困窮していることに鑑み、国からの支援の強化に努めます。加えて、国公立に比べ遅れている私立学校施設の耐震化について、早期の完了に向けて集中的に支援するとともに、大規模地震などの災害時には地域の避難所として重要な役割を果たしている体育館などについても、天井材などの非構造部材を含めた耐震化などの老朽化対策や空調整備を加速します。
764 学校保健の充実
生涯を通じて心身ともに健康を維持できるよう、健康教育などの学校保健事業を推進します。
765 学校における安全確保
東日本大震災の教訓を生かし、保護者が帰宅困難になった際などに、子供を学校に留め置いて安全を確保するなど、保護者や子供の立場に立った災害対応体制を、国公私立を通じて整備します。地震・台風・火災などの災害を身近な危険として認識し、日頃から備え、災害の被害を防ぐため、地域の実情に合った「防災教育」を充実します。併せて、通学路の安全を確保するなど、子供が安心して通学できる学校環境を整備します。
また、あってはならないことですが、弾道ミサイルによる武力攻撃事態やテロ攻撃に対しても、設置者や学校長が「国民保護法」に基づく国民保護計画に即して、学校の危機管理マニュアルを不断に見直し、地方自治体が開催する訓練に参加することなどにより、Jアラートを通じて緊急情報が発信された際に適切に対応できるよう、学校における安全を確保する万全の取り組みを促していきます。
766 学校の適正規模・適正配置の推進
今後、少子化の更なる進展による学校の小規模化に伴い、児童生徒が集団の中で切磋琢磨しながら学んだり、社会性を高めたりすることが難しくなるといった課題が顕在化することが懸念されています。子供たちのことを第一に考え、教育的な視点からこうした課題の解消を図っていく必要があります。こうした中、公立学校の設置者である地方自治体が、学校統合により魅力ある学校づくりを行い、地域の活性化を図ることができるよう、統合による学校の魅力化に関する好事例を創出するとともに、学校の小規模化への対応について各地方自治体の積極的な検討を促し、支援します。
なお、地域コミュニティの核としての学校の役割を十分に考慮し、地域の総力を挙げて、小規模校のメリットを活かしデメリットを緩和しながら学校の存続を図る場合についても支援します。
767 幼児期及び幼保小接続期の教育の質的向上と幼児教育の無償化
幼児期の教育は、「教育基本法」に定めるとおり、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり、小学校以降の教育との学びの連続性にも配慮しつつ、全ての子供に質の高い幼児教育を保障することは極めて重要です。2019年10月に実現した幼児教育・保育の無償化の次なるステップとして、地方自治体における幼児教育推進体制の充実や、全ての子供たちの多様性にも配慮した上で学びや生活の基盤を育む「幼保小の架け橋プログラム」促進のための体制構築への支援、質の高い幼児教育を科学的に明らかにするための大規模縦断調査の実施、幼稚園教諭、保育士等の処遇改善、人材確保・キャリアアップ支援、ICT環境整備支援等の教育環境整備支援などを図ることで、幼児期及び幼保小接続期の教育の質の向上に取り組みます。子供たちが無償化により確保した教育機会で健やかに学べるよう、更なる質の向上のための財源を確保します。
768 青少年の健全育成
青少年健全育成のための社会環境の整備を強化するとともに「青少年健全育成基本法」を制定します。またITの発達等による非行や犯罪から青少年を守るための各種施策を推進します。
769 「幼児教育振興法」の制定
幼児教育の振興に関する施策を総合的に推進するための「幼児教育振興法」の制定に向けて取り組みます。
770 家庭教育の支援体制強化
家庭教育は全ての教育の出発点であり、「教育基本法」では、保護者が子供の教育について第一義的責任を有すること、国や地方自治体が家庭教育の自主性を尊重しつつ、家庭教育支援に努めるべきことを定めています。親子の育ちを応援する学習機会を充実させるとともに、地域の人材の力を活用して、学校などとの連携により家庭教育に関する保護者の悩みや不安を解消し、家庭教育の充実につなげる「家庭教育支援チーム」の全市町村への普及を図り、家庭教育の支援体制を強化します。また、妊娠期から学齢期までの切れ目のない支援を実現するため、子育て支援や保健などの福祉サービスと家庭教育支援とを一体的に提供する体制の整備を図ります。更に、家庭教育支援に関する施策を総合的に推進するため、「家庭教育支援法」を議員立法で制定します。
早寝早起きや朝食摂取などの子供の望ましい基本的な生活習慣を育成するために、企業と連携した取り組みや、中高生以上の世代も含めた普及啓発を推進します。
771 読解力を高める国語教育
国語科は各教科等の学習の基盤であり、小・中・高等学校を通じて国語教育の一層の充実を図ること、特に、読解力の向上を通じて、各教科等における知識・技能や、思考力・判断力・表現力の育成を重視することが必要です。そのため、国語科について、「子供の言語能力を育てる授業」へと改善するとともに、高等学校においては、実社会・実生活に生きて働く国語の能力や、多様な文章などを多角的な視点から理解し、創造的に思考して自分の考えを形成し、論理的に表現する能力の育成を目指します。併せて、発達段階に応じた作文や論文の指導等の論理的思考や課題解決能力を伸ばす教育を推進します。
772 外国人の子供が日本社会で活躍するための日本語教育等
日本に在住する外国人が社会に溶け込み、また活躍する環境を整備するため、外国人の子供の就学を促進するよう、地方自治体における多言語の就学案内の送付や就学状況把握などの取り組みを支援します。また、公立学校における外国人の子供の日本語能力や学力を保障するための指導を行う教師や指導補助者・通訳等の配置やICT機器・教材の活用など、学習者の日本語能力に応じたきめ細かな受け入れ体制を構築します。更に、高校・大学等への進学の促進を行うともに、キャリア教育支援を充実することにより、将来、我が国の社会での活躍を目指した学習意欲の向上を図り、日本人の子供と外国人の子供がお互いに学び合い、切磋琢磨し合う環境づくりに取り組みます。
773 真に外国人との友好を築く日本語教育
外国人労働者の増加や、日本語学習のニーズの多様化を踏まえ、第211回国会で成立した「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」に基づく認定日本語教育機関及び登録日本語教員の活用を含めた日本語教育環境の整備を進めるとともに、「地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業」などを継続的に実施・充実させるなど、真に外国人との友好を育むための環境整備を行います。また、海外における日本語の普及にも取り組みます。
774 一人ひとりを大切にし、充分に力を伸ばす特別支援教育
全ての子供の可能性を伸ばし活躍できる社会の実現に向け、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実します。保護者の不安を解消し一人ひとりの個性への理解を深め、子供たちを温かく見守ります。
一人ひとりの学習状況にきめ細かく対応するため、1人1台端末の下、ICT等の活用と少人数学級の推進、放課後を活用した補充的・発展的な学習などを拡充します。教育支援センターの充実や高校中退者などの高卒資格取得等に向けた学習相談・支援、特別の教育課程を編成する学校の整備など、また、隠れた能力を引き出すためのICTなどの活用も推進します。
775 特に優れた能力を更に伸ばす教育、リーダーシップ教育
多様な個性が長所として肯定され生かされる教育の実現には、一人ひとりの長所や強みを最大限に生かす視点が重要です。このため、社会の理解を醸成しつつ、国内外の実践事例について幅広く知見を収集し、大学などとの連携も含め、各学校、地方自治体などで、特に優れた能力やリーダーシップなどの資質を最大限に伸ばす多様な教育を推進します。
776 地域と学校の連携・協働による社会総掛かりでの教育の実現
学校が地域の人々と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子供たちを育む「地域ともにある学校」に転換するとともに、「学校を核とした地域づくり」を推進していくため、コミュニティ・スクール(学校運営協議会を置く学校)と地域学校協働活動の一体的推進が不可欠です。全ての公立学校がコミュニティ・スクールになることを目指し、教育委員会や学校などの取り組みを強力に支援します。
また、地域住民などの協力による放課後や土曜日の学習・体験活動などの地域と学校が連携・協働して地域全体で子供を育てる活動(地域学校協働活動)や、家庭教育支援、図書館を活用した読書活動などを推進します。地域住民などのネットワーク化と学校との連絡調整を図る「地域学校協働活動推進員」の配置の充実などにより、「地域学校協働本部」を整備し、豊富な知識・経験を持つ地域の退職者、企業・団体など外部の人材が、放課後などの学習、総合的な学習の時間や道徳などにおいて、その社会体験を活かした支援を行う体制を構築します。特に、経済的な理由や家庭の事情により、学習が遅れがちな子供たちへの原則無料の学習支援(地域未来塾)の取り組みを積極的に推進します。
777 地域から学校を支え、地域を活性化
地域から学校を支えるとともに、地域の活性化を図るため、高齢者をはじめ地域住民などがボランティアや地域活動に参画しやすい環境を整備することが必要です。このため、高齢者などの地域住民などが活躍するための学びと実践の場を創生するなど、地域社会において全ての世代が活躍できる環境を充実します。
778 若者の自立・自活を促すキャリア教育の推進
産業構造の変化や社会経済情勢の変化に伴い、国民が自ら主体的に生きることができる能力及び態度を養うことができるようにキャリア教育を推進します。そのためキャリア教育推進の理念や基本事項などを定める「キャリア教育推進法」を議員立法で制定します。そのうえで、総合的、体系的かつ効果的な推進を図るための連絡調整を行うために、文部科学省、厚生労働省、経済産業省その他の関係行政機関の職員をもって構成するキャリア教育推進会議を設置します。
779 キャリア教育の効果的な推進
インターンシップが事実上の就職活動とならないように配慮するとともに、学生の学修時間の確保や留学などの多様な機会を確保し、大学等における人材育成と両立した適切な就職活動の定着に取り組みます。
780 国立大学法人改革を通じた教育研究の質の向上
国立大学については、地方創生への貢献、グローバル化への対応やイノベーション創出等の社会からの期待に応えるため、学部・研究科などを越えた予算や人材などの学内資源配分の最適化、年俸制やクロスアポイントメント(混合給与)の導入、年功序列などの現行人事・給与システムの抜本的改革、戦略的な施設マネジメントの取り組みを進めるとともに、運営費交付金や施設整備費補助金などを通じた戦略的・重点的な支援を強化します。
また、国立大学の教育研究の質の向上や経営基盤の充実を図るため、開かれた教育と研究体制をつくり、学長のリーダーシップの強化を引き続き進めるとともに、ステークホルダーの信頼を得られる自浄作用を持つガバナンス体制の構築を進め、出資対象範囲の拡大といった規制緩和や一法人複数大学制を推進します。
781 私立学校の振興
私立学校に在学する学生生徒等の割合は、大学・短大で約7割、高等学校で約3割、幼稚園で約9割を占めており、私立学校は質及び量の両面から我が国の学校教育を支えています。少子化の進展など、私立学校を取り巻く環境が厳しさを増す中であっても、私立学校が社会の信頼と支援を得て一層発展していくため、学校法人の沿革や多様性にも配慮しつつ、かつ、社会の要請にも応え得る、実効性のあるガバナンス改革や定員割れ大学に対する厳格な対応を進めます。
また、私立大学等については少子化を見据えた経営改革や社会からの要請と期待に応える抜本的な変革を行うとともに、2分の1を目標に私学助成を拡充します。併せて、幼稚園、小・中・高等学校、特別支援学校の私学助成についても、経常的経費の拡充など更なる充実を図ります。
782 大学と地域の共創の推進
大学同士だけでなく、地域共創(大学と地方・地域社会、産業の連携)運動を積極的に推進するとともに、大学の多様な取り組みについて情報の国内外への発信を推進します。地域の中核となる大学が、“特色ある強み”を十分に発揮し、社会変革を牽引する取り組みを政府が総力を挙げて強力に支援します。特定分野の高い研究力の強化、人材育成や産学連携活動を通じた地域の経済社会、日本や世界の課題解決への貢献のため、「知と人材の集積拠点」である多様な大学の強みや特色を最大限に活かし、発展できるような大学のミッション・ビジョンに基づく戦略的運営の実現を推進します。
783 新たな時代を生き抜く真の学ぶ力を育成する高大接続改革の推進
世界トップの教育立国とするため、結果の平等主義から脱却し、社会状況や子供の多様な成長の実態などに応じた、学校制度の多様化・複線化、教員免許制度改革や小学校教科担任制の拡大などによる義務教育改革、普通科改革の推進や探究・文理横断・実践的な学びの推進を図る高校教育改革、高大連携の推進、社会変革の原動力となる高等教育改革、大学院の充実、産学連携、社会人の学び直しなど、学校制度全体を通じた改革に取り組みます。
小中一貫教育を地域の実情に応じて積極的に推進するとともに、フリースクールやインターナショナルスクール、フリーアクセスができる教育クラウドの作成などの学校外教育の環境整備、夜間中学の設置促進・教育活動の充実、飛び級の制度化など、個人の志や能力・適性に応じ、様々な挑戦を可能とする学びの保証システムを実現します。
784 高等学校教育改革の推進
高校生の学習意欲を喚起し、能力や可能性を最大限引き出すため、普通科改革の推進や、地域における人材の定着・還流に向けた高等学校と地元の市町村や産業界等との連携強化、地方の小規模校における教育の充実や不登校生徒等の学習機会の確保のための遠隔授業や通信教育の活用の促進など、高等学校教育改革を推進します。
更に、後期中等教育の複線化を図り、若者が自らの夢や志を考え、目的意識を持って実践的な職業能力を身につけられるようにするとともに、産業構造等の変化に対応するため、専門高校と専攻科を活用した5年一貫の職業教育や、専門高校と産業界等が一体となり、最先端の業務人の育成推進を図る「マイスター・ハイスクール(次世代地域産業人材育成刷新事業)」を通じて支援を強化します。自動車や造船をはじめとした地場にある産業界との連携を強化して、実践的なキャリア・職業教育、社会制度教育等を推進していきます。
785 社会の変化を踏まえた大学改革
大学の持つ教育機能を抜本的に強化し、学生を鍛え上げ社会に送り出していくための教育改革を加速します。そのため大学における教育研究の質の更なる高度化を図るために、アクティブ・ラーニングの推進など授業方法の質的な転換や、学修成果の可視化、大学間の適正な競争を導くための情報公表の強化、質の保証を徹底するための全体的な制度の充実、大学改革に取り組む大学や教員への支援を強化します。
また、18歳人口の減少を踏まえ、大学の機能強化を図るため、大学の連携、統合・再編、縮小・撤退などに向けた支援を充実するとともに、地域における質の高い高等教育を受けられる機会を確保するための改革構想を明確にします。
786 デジタルやグリーン等の成長分野への高等教育人材投資と分野再編
文理横断や成長分野への貢献など未来を支える人材育成の中核を担うことが期待される大学等の機能強化を図っていくことが重要です。そのため、意欲ある大学や高専がデジタルやグリーン等の成長分野への学部転換等の改革に予見可能性をもって取り組めるよう、基金が創設された大学・高専機能強化支援事業を通じて、学部再編等に必要な経費について、継続的な支援を行います。
787 理系を学ぶ女性の活躍促進
理工系分野の学問を専攻する女子学生の割合を高めていくために、女子中高生の理工系分野への興味・関心を高める取り組みを推進するとともに、理工系分野の女子など入学者の多様性を確保する選抜の促進などを推進してまいります。
788 「三つの方針」に基づく個別大学の教育改革、大学入学者選抜改革
各大学において、教育理念に基づき、①「卒業認定・学位授与の方針」、②「教育課程編成・実施の方針」、③「入学者受入れの方針」のそれぞれの方針が一貫性を持つ明確なものとして策定されるようにするとともに、これらの3つの方針に基づく充実した大学教育の実現を推進します。
大学入学者選抜改革では、大学全入時代を迎え、大学と進学希望者が双方を選択するという観点から、進路選択に必要な情報を積極的に提供することや、志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価する入学選抜への転換に取り組みます。
789 Society5.0時代の到来を見据えたデジタル人材の育成
Society 5.0時代に必要となる基礎的なデジタルに関する知識・技能の修得と、それを活用した社会課題の解決が求められています。この観点から、文理を問わずリベラルアーツ教育や数理・データサイエンス・AI教育を進めることにより、幅広い知識と深い専門性をもった人材を育成する大学教育を推進してまいります。
790 専門職大学などにおける専門職業人の養成
専門職大学などにおいて、産業界や地域社会と密接に連携した実践的な職業教育を推進することで、高度な実践力と豊かな創造力を備え、成長分野をけん引する人材や地域の担い手となる専門職業人の養成を進めます。また、高度専門職業人養成を目的とする専門職大学院においても、産業界等と協働し、社会人が学びやすい環境を整備しつつ、学生が専門的・実践的な知識や幅広い知見・視野等を獲得できるよう、教育の質的向上を図ります。
791 高等専門学校の機能強化
実践的技術者の育成機関として国内外から高い評価を受けている高等専門学校について、時代の変化や進歩に対応した教育機関として財政面も含め更なる支援を行い、技術立国日本にふさわしい人材育成を実現します。特に、地域の産業や半導体・デジタル等の成長分野をけん引する人材育成を強化するとともに、アントレプレナーシップ教育や大学・大学院との連携を推進するなど、教育の高度化を進めます。同時に、学生の海外派遣・留学生の受入れの推進や、日本型高専教育制度の海外展開を継続し、教育の国際化も推進します。
792 地方大学などの活性化を通じた人口減少克服
若年層人口の東京一極集中を解消するためには、地方の大学・高等専門学校が一層魅力ある存在となることが不可欠です。このため、地域の知の拠点としての大学が自治体や地方企業などと連携して行う人材育成などの取り組みを支援するとともに、国立大学や私立大学に対する地域の強みを活かした教育研究の機能強化、公立大学の教育・研究・社会貢献機能のより一層の強化を図ります。更に、大学生が地方企業へのインターンシップなどに参加する取り組みを支援するとともに、都市部の優れた大学が行う授業を地方においても受講できるようにするための取り組みへの支援を行います。加えて、初等中等教育段階においても、地域に愛着と誇りを持って地域を支える人材を育てるとともに、地域学校協働活動など、学校を核として、学校と地域の連携・協働により地域力を強化します。
793 大学の教育研究活動を支える基盤的経費の拡充
我が国の高等教育や基礎科学の中核を担っているのは、多様な人材が集い、教育活動や研究活動を行っている大学です。近年、その安定的な教育研究活動を支える基盤的経費(国立大学法人運営費交付金及び施設整備費補助金、私学助成)は減少傾向にあります。我が国の人材育成及び学術研究の中心的役割を担う国公私立大学の抜本的改革を確実に進めるとともに、運営費交付金や施設整備費補助金、私学助成などの基盤的経費を拡充します。
794 社会変革や地域の課題解決を主導する国立大学への変革
国立大学については、2022年度から始まる第4期中期目標期間において、各大学のミッション実現のために必要な取り組みの推進や、社会的なインパクト創出のための戦略的な強化を後押しするとともに、共通指標に基づくメリハリある資源配分の仕組みにより、自らのミッションに基づき、自律的・戦略的な経営を進め、社会変革や地域の課題解決を主導する国立大学への変革を実現します。また、キャンパス全体のソフト・ハード一体となった共創拠点(イノベーション・コモンズ)化を目指します。
795 評価制度の抜本的改革と情報公開
大学の教育研究活動の質を保証し、向上させていくためには、評価制度を抜本的に改革することが不可欠です。大学が自律的に改革を行うインセンティブを働かせるため、学修時間や卒業生の満足度をはじめとする成果指標を定め、教育成果の「見える化」、情報公開を進めます。
796 大学院教育の抜本改革
知識集約型社会における知の生産、価値創造を先導する「知のプロフェッショナル」を育成する大学院が果たす役割は非常に重要であり、国内外の様々な機関や産業界と連携し、徹底した国際化と産学連携の促進、組織改革・推進体制等の基盤構築を通じて博士人材の育成機能を強化し、世界トップレベルの大学院教育拠点の形成を支援します。併せて、社会における博士人材の多様なキャリアパス構築や、大学院教育の質保証や円滑な学位授与などの教育改善、学生等への支援、博士課程進学への動機付けを高める取り組みを推進します。
797 若手・女性研究者の活躍促進
若手研究者への支援に重点化して安定的なポストを大幅に増やすとともに、大学院生への多様な財源による経済的支援を行います。特に、我が国の科学技術・イノベーションの将来を担う博士後期課程学生について、処遇向上と研究環境の確保を進めます。また、優秀な研究者が大学や公的研究機関、産業界の枠を超えて活躍できる環境を整備します。加えて、キャリアパスを多様化するため、産業界と連携した若手研究者や大学院生に対する企業家・イノベーション人材育成を実施するとともに、産業界の研究職や知的財産管理などの研究支援に携わる専門職などでの活躍を促進します。若手研究者が自立して研究に専念できるようにするため、プロジェクト雇用における専従義務の緩和や研究以外の業務の負担軽減等を進めます。
また、女性研究者の活躍促進に向けても、出産や育児等のライフイベントと研究の両立、女性研究者の研究力向上、女性研究者の上位職への登用などの取り組みを支援します。
798 グローバル人材の育成強化
日本経済を再生するには、グローバルに活躍できる「強い」日本人の育成が必要であり、意欲と能力に富む全ての学生に留学の機会を与える環境整備を進めます。このため、初等中等教育段階における国際交流・海外留学支援の充実や大学段階における奨学金単価の充実等の段階に応じた海外留学支援の強化や、企業や地方公共団体の参画により若者の海外留学促進を図る「トビタテ!留学JAPAN」の継続的発展などにより、グローバル人材の育成強化に取り組みます。
799 優秀な留学生の戦略的な獲得・活躍推進
外国人留学生は我が国の教育・研究分野や外交において重要な存在であることから、優秀な留学生の戦略的な獲得に取り組みます。世界的な留学生の獲得競争の中で、日本で学ぶ留学生が増え社会で活躍できるよう、海外拠点を活用した教育研究活動に関する情報発信の強化や現地入試などの促進、留学生の適切な在籍管理、奨学金の充実や受入れ機関の体制整備、周辺の生活環境の整備、地方自治体や大学、民間団体、NPOなどが連携したインターンシップの実施、卒業・修了後の就職支援など産業界をはじめとする社会の受け入れの推進を図ります。また、受け入れから定着まで外国人留学生受け入れの玄関口となる我が国発信のオンライン国際教育プラットフォームを運用するとともに、時代・社会のニーズを踏まえた多様な国際交流を推進し、質の高い国際流動性の実現を目指します。
800 海洋立国に相応しい海洋教育の充実
我が国は四方を海に囲まれ、世界第6位の領海・排他的経済水域を持ち、海外との貿易によって成り立つ海洋立国です。海洋基本法が制定され、海洋基本計画に基づき、各種海洋施策が推進されています。その中で、海洋立国を担う海洋人材の育成、海洋教育の充実が課題となっています。小・中・高等学校においては、発達の段階に応じて、関係教科や総合的な学習の時間等を通じ海洋教育を推進します。専門的人材の育成と確保のために、産学連携を強化しつつ、高等教育機関での海洋教育の充実を図ります。学校と社会教育施設、産業施設、各種団体などとの有機的な連携を促進し、学協会などとの協力のもと、アウトリーチ活動を重視した取り組みなどを推進します。
801 アート市場活性化の推進
アート市場の活性化をはじめとする文化産業の振興、パブリックアートによる空間の価値向上、観光客の増加や他の産業や地域経済への波及を一層促進し、文化を通じて日本経済の活性化(文化によるGDPの拡大)を進めます。特にアートについては、その学術的評価と市場評価が車の両輪であるという認識の下、国内美術館の体制整備や国際的なアートフェア・オークション等の国内誘致などを通じ、我が国アートシーン・アート市場の活性化・国際拠点化を図り、アートによる生活の質向上、観光振興及び新たな市場・産業を創造します。また、アートの「受け手(鑑賞者・購入者)」育成に向けた鑑賞教育等の抜本的な充実を図ります。
802 文化庁の京都移転と機能強化
明治以来初となる中央省庁の移転として、2023年3月に京都に移転した文化庁を中核として、地域の絆であり、我が国の誇るべき宝である文化資源を活用した文化観光の推進や食文化の更なる振興、文化財の強靱化と持続可能な保存・活用のモデルの構築、文化芸術の国際発信とグローバル展開など、魅力ある日本文化の創造と発信に取り組み、インバウンドにも繋げ、文化芸術を通じた地方創生、文化芸術立国の実現を図ります。
803 文化芸術による地方創生
「文化芸術推進基本計画(第2期)」も踏まえ、世界に誇るべき「文化芸術立国」を実現するため、官民による文化投資を拡大して、文化芸術の振興を我が国成長の原動力とします。文化芸術基本法に基づき、文化芸術活動への支援や、伝統文化の継承・発展や文化財の保存・修理・活用、国立劇場の再整備を含む美術館・博物館、劇場・音楽堂等への支援や、メディア芸術ナショナルセンター(仮称)の整備を含む文化芸術の各分野におけるセンター機能の強化クリエイター・アーティストを含む芸術家等への支援などに取り組むとともに、観光やまちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の幅広い関連分野との連携を図ります。また、新たな文化や価値を創造していくための社会的な基盤とするため、文化芸術のアーカイブ化の取り組みを推進します。
「日本遺産(Japan Heritage)」については、これまでに47都道府県において計104件が認定されたところ、今後も、日本遺産全体の底上げを図り、日本遺産ブランドを維持・強化していくための取り組みを推進します。また、国際観光旅客税も活用しつつ、日本遺産や2024年2月に策定した「文化財を活用した文化観光の推進による地方創生パッケージ」のほか、博物館での特色ある取り組みへの支援などを通じて文化芸術資源を磨き上げ、観光振興やまちづくり、地方創生につながる文化資源の活用を進めます。更には、「文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律」等を活用し、文化観光拠点・地域の整備の促進や、日本遺産等の文化資源の魅力向上や発信強化を行うとともに、地域の文化施設や文化資源等について、文化観光資源としての高付加価値化を図り、文化の振興を起点として、観光の振興と地域の活性化につなげ、これによる経済効果が文化の振興へと再投資される好循環を創出します。
804 世界遺産・無形文化遺産などの保存・活用
ユネスコの「世界遺産」について、我が国には、21件の文化遺産、5件の自然遺産があり、このうち、「佐渡島の金山」については、今年7月に開催された世界遺産委員会で世界遺産に登録されました。今後「飛鳥・藤原の宮都」のを世界文化遺産登録を目指します。また、「無形文化遺産」については、2022年に登録された「風流踊り」など合わせて22件が登録されており、「伝統的酒造り」と「書道」を提案中です。更に、「世界農業遺産」には、新潟県佐渡市、石川県能登半島などが登録されています。これらの保存・活用を図ることによって、海外への日本文化の発信及び諸外国との相互理解の増進や、我が国の文化を再認識し、歴史と文化を尊ぶ心の育成、文化財の次世代への継承などを積極的に推進します。
805 文化芸術活動の基盤強化と自律的活動の促進
芸術家や技術スタッフ等が安心・安全な環境で文化芸術活動ができるよう、契約の書面化の推進や適正な契約関係の構築について促進するとともに、文化芸術団体が自律的・持続的に活動を継続できるよう、伴走型支援に取り組むとともに、寄附文化の醸成を図るための環境を整備し、税制上の優遇措置の利用を促進します。
806 国立劇場の再整備と機能強化
1966年の開場以来長年にわたり我が国伝統芸能の「顔」として機能してきた「国立劇場」は、公演の場としてだけでなく、伝統芸能を継承する次の世代を育てる場としても大きな役割を担ってきましたが、老朽化のため2023年10月末に閉場し、現在一刻も早い再整備・再開場が求められています。新しい国立劇場では、海外からのインバウンドを含め国内外から多くの方々が来場することで、我が国が世界に誇る歌舞伎・文楽・能楽をはじめとするコンテンツが後世にわたって世界に発信・継承され、我が国の経済成長をも牽引する文化の拠点としての機能を強化すべく、一刻も早く、品格を備えた国立劇場の再整備を国が責任をもって推進します。
807 アート市場活性化の推進
アート市場の活性化をはじめとする文化産業の振興、パブリックアートによる空間の価値向上、観光客の増加や他の産業や地域経済への波及を一層促進し、文化を通じて日本経済の活性化(文化によるGDPの拡大)を進めます。特にアートについては、その学術的評価と市場評価が車の両輪であるという認識の下、国内美術館の体制整備や国際的なアートフェア・オークション等の国内誘致などを通じ、我が国アートシーン・アート市場の活性化・国際拠点化を図り、アートによる生活の質向上、観光振興及び新たな市場・産業を創造します。また、アートの「受け手(鑑賞者・購入者)」育成に向けた鑑賞教育等の抜本的な充実を図ります。
808 文化庁の京都移転と機能強化
明治以来初となる中央省庁の移転として、2023年3月に京都に移転した文化庁を中核として、地域の絆であり、我が国の誇るべき宝である文化資源を活用した文化観光の推進や食文化の更なる振興、文化財の強靱化と持続可能な保存・活用のモデルの構築、文化芸術の国際発信とグローバル展開など、魅力ある日本文化の創造と発信に取り組み、インバウンドにも繋げ、文化芸術を通じた地方創生、文化芸術立国の実現を図ります。
809 文化芸術による地方創生
「文化芸術推進基本計画(第2期)」も踏まえ、世界に誇るべき「文化芸術立国」を実現するため、官民による文化投資を拡大して、文化芸術の振興を我が国成長の原動力とします。文化芸術基本法に基づき、文化芸術活動への支援や、伝統文化の継承・発展や文化財の保存・修理・活用、国立劇場の再整備を含む美術館・博物館、劇場・音楽堂等への支援や、メディア芸術ナショナルセンター(仮称)の整備を含む文化芸術の各分野におけるセンター機能の強化クリエイター・アーティストを含む芸術家等への支援などに取り組むとともに、観光やまちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の幅広い関連分野との連携を図ります。また、新たな文化や価値を創造していくための社会的な基盤とするため、文化芸術のアーカイブ化の取り組みを推進します。
「日本遺産(Japan Heritage)」については、これまでに47都道府県において計104件が認定されたところ、今後も、日本遺産全体の底上げを図り、日本遺産ブランドを維持・強化していくための取り組みを推進します。また、国際観光旅客税も活用しつつ、日本遺産や2024年2月に策定した「文化財を活用した文化観光の推進による地方創生パッケージ」のほか、博物館での特色ある取り組みへの支援などを通じて文化芸術資源を磨き上げ、観光振興やまちづくり、地方創生につながる文化資源の活用を進めます。更には、「文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律」等を活用し、文化観光拠点・地域の整備の促進や、日本遺産等の文化資源の魅力向上や発信強化を行うとともに、地域の文化施設や文化資源等について、文化観光資源としての高付加価値化を図り、文化の振興を起点として、観光の振興と地域の活性化につなげ、これによる経済効果が文化の振興へと再投資される好循環を創出します。
810 海洋立国に相応しい海洋教育の充実
我が国は四方を海に囲まれ、世界第6位の領海・排他的経済水域を持ち、海外との貿易によって成り立つ海洋立国です。海洋基本法が制定され、海洋基本計画に基づき、各種海洋施策が推進されています。その中で、海洋立国を担う海洋人材の育成、海洋教育の充実が課題となっています。小・中・高等学校においては、発達の段階に応じて、関係教科や総合的な学習の時間等を通じ海洋教育を推進します。専門的人材の育成と確保のために、産学連携を強化しつつ、高等教育機関での海洋教育の充実を図ります。学校と社会教育施設、産業施設、各種団体などとの有機的な連携を促進し、学協会などとの協力のもと、アウトリーチ活動を重視した取り組みなどを推進します。
811 アート市場活性化の推進
アート市場の活性化をはじめとする文化産業の振興、パブリックアートによる空間の価値向上、観光客の増加や他の産業や地域経済への波及を一層促進し、文化を通じて日本経済の活性化(文化によるGDPの拡大)を進めます。特にアートについては、その学術的評価と市場評価が車の両輪であるという認識の下、国内美術館の体制整備や国際的なアートフェア・オークション等の国内誘致などを通じ、我が国アートシーン・アート市場の活性化・国際拠点化を図り、アートによる生活の質向上、観光振興及び新たな市場・産業を創造します。また、アートの「受け手(鑑賞者・購入者)」育成に向けた鑑賞教育等の抜本的な充実を図ります。
812 文化庁の京都移転と機能強化
明治以来初となる中央省庁の移転として、2023年3月に京都に移転した文化庁を中核として、地域の絆であり、我が国の誇るべき宝である文化資源を活用した文化観光の推進や食文化の更なる振興、文化財の強靱化と持続可能な保存・活用のモデルの構築、文化芸術の国際発信とグローバル展開など、魅力ある日本文化の創造と発信に取り組み、インバウンドにも繋げ、文化芸術を通じた地方創生、文化芸術立国の実現を図ります。
813 文化芸術による地方創生
「文化芸術推進基本計画(第2期)」も踏まえ、世界に誇るべき「文化芸術立国」を実現するため、官民による文化投資を拡大して、文化芸術の振興を我が国成長の原動力とします。文化芸術基本法に基づき、文化芸術活動への支援や、伝統文化の継承・発展や文化財の保存・修理・活用、国立劇場の再整備を含む美術館・博物館、劇場・音楽堂等への支援や、メディア芸術ナショナルセンター(仮称)の整備を含む文化芸術の各分野におけるセンター機能の強化クリエイター・アーティストを含む芸術家等への支援などに取り組むとともに、観光やまちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の幅広い関連分野との連携を図ります。また、新たな文化や価値を創造していくための社会的な基盤とするため、文化芸術のアーカイブ化の取り組みを推進します。
「日本遺産(Japan Heritage)」については、これまでに47都道府県において計104件が認定されたところ、今後も、日本遺産全体の底上げを図り、日本遺産ブランドを維持・強化していくための取り組みを推進します。また、国際観光旅客税も活用しつつ、日本遺産や2024年2月に策定した「文化財を活用した文化観光の推進による地方創生パッケージ」のほか、博物館での特色ある取り組みへの支援などを通じて文化芸術資源を磨き上げ、観光振興やまちづくり、地方創生につながる文化資源の活用を進めます。更には、「文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律」等を活用し、文化観光拠点・地域の整備の促進や、日本遺産等の文化資源の魅力向上や発信強化を行うとともに、地域の文化施設や文化資源等について、文化観光資源としての高付加価値化を図り、文化の振興を起点として、観光の振興と地域の活性化につなげ、これによる経済効果が文化の振興へと再投資される好循環を創出します。
814 世界遺産・無形文化遺産などの保存・活用
ユネスコの「世界遺産」について、我が国には、21件の文化遺産、5件の自然遺産があり、このうち、「佐渡島の金山」については、今年7月に開催された世界遺産委員会で世界遺産に登録されました。今後「飛鳥・藤原の宮都」のを世界文化遺産登録を目指します。また、「無形文化遺産」については、2022年に登録された「風流踊り」など合わせて22件が登録されており、「伝統的酒造り」と「書道」を提案中です。更に、「世界農業遺産」には、新潟県佐渡市、石川県能登半島などが登録されています。これらの保存・活用を図ることによって、海外への日本文化の発信及び諸外国との相互理解の増進や、我が国の文化を再認識し、歴史と文化を尊ぶ心の育成、文化財の次世代への継承などを積極的に推進します。
815 文化芸術活動の基盤強化と自律的活動の促進
芸術家や技術スタッフ等が安心・安全な環境で文化芸術活動ができるよう、契約の書面化の推進や適正な契約関係の構築について促進するとともに、文化芸術団体が自律的・持続的に活動を継続できるよう、伴走型支援に取り組むとともに、寄附文化の醸成を図るための環境を整備し、税制上の優遇措置の利用を促進します。
816 国立劇場の再整備と機能強化
1966年の開場以来長年にわたり我が国伝統芸能の「顔」として機能してきた「国立劇場」は、公演の場としてだけでなく、伝統芸能を継承する次の世代を育てる場としても大きな役割を担ってきましたが、老朽化のため2023年10月末に閉場し、現在一刻も早い再整備・再開場が求められています。新しい国立劇場では、海外からのインバウンドを含め国内外から多くの方々が来場することで、我が国が世界に誇る歌舞伎・文楽・能楽をはじめとするコンテンツが後世にわたって世界に発信・継承され、我が国の経済成長をも牽引する文化の拠点としての機能を強化すべく、一刻も早く、品格を備えた国立劇場の再整備を国が責任をもって推進します。
817 アート市場活性化の推進
アート市場の活性化をはじめとする文化産業の振興、パブリックアートによる空間の価値向上、観光客の増加や他の産業や地域経済への波及を一層促進し、文化を通じて日本経済の活性化(文化によるGDPの拡大)を進めます。特にアートについては、その学術的評価と市場評価が車の両輪であるという認識の下、国内美術館の体制整備や国際的なアートフェア・オークション等の国内誘致などを通じ、我が国アートシーン・アート市場の活性化・国際拠点化を図り、アートによる生活の質向上、観光振興及び新たな市場・産業を創造します。また、アートの「受け手(鑑賞者・購入者)」育成に向けた鑑賞教育等の抜本的な充実を図ります。
818 文化庁の京都移転と機能強化
明治以来初となる中央省庁の移転として、2023年3月に京都に移転した文化庁を中核として、地域の絆であり、我が国の誇るべき宝である文化資源を活用した文化観光の推進や食文化の更なる振興、文化財の強靱化と持続可能な保存・活用のモデルの構築、文化芸術の国際発信とグローバル展開など、魅力ある日本文化の創造と発信に取り組み、インバウンドにも繋げ、文化芸術を通じた地方創生、文化芸術立国の実現を図ります。
819 文化芸術による地方創生
「文化芸術推進基本計画(第2期)」も踏まえ、世界に誇るべき「文化芸術立国」を実現するため、官民による文化投資を拡大して、文化芸術の振興を我が国成長の原動力とします。文化芸術基本法に基づき、文化芸術活動への支援や、伝統文化の継承・発展や文化財の保存・修理・活用、国立劇場の再整備を含む美術館・博物館、劇場・音楽堂等への支援や、メディア芸術ナショナルセンター(仮称)の整備を含む文化芸術の各分野におけるセンター機能の強化クリエイター・アーティストを含む芸術家等への支援などに取り組むとともに、観光やまちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の幅広い関連分野との連携を図ります。また、新たな文化や価値を創造していくための社会的な基盤とするため、文化芸術のアーカイブ化の取り組みを推進します。
「日本遺産(Japan Heritage)」については、これまでに47都道府県において計104件が認定されたところ、今後も、日本遺産全体の底上げを図り、日本遺産ブランドを維持・強化していくための取り組みを推進します。また、国際観光旅客税も活用しつつ、日本遺産や2024年2月に策定した「文化財を活用した文化観光の推進による地方創生パッケージ」のほか、博物館での特色ある取り組みへの支援などを通じて文化芸術資源を磨き上げ、観光振興やまちづくり、地方創生につながる文化資源の活用を進めます。更には、「文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律」等を活用し、文化観光拠点・地域の整備の促進や、日本遺産等の文化資源の魅力向上や発信強化を行うとともに、地域の文化施設や文化資源等について、文化観光資源としての高付加価値化を図り、文化の振興を起点として、観光の振興と地域の活性化につなげ、これによる経済効果が文化の振興へと再投資される好循環を創出します。
820 世界遺産・無形文化遺産などの保存・活用
ユネスコの「世界遺産」について、我が国には、21件の文化遺産、5件の自然遺産があり、このうち、「佐渡島の金山」については、今年7月に開催された世界遺産委員会で世界遺産に登録されました。今後「飛鳥・藤原の宮都」のを世界文化遺産登録を目指します。また、「無形文化遺産」については、2022年に登録された「風流踊り」など合わせて22件が登録されており、「伝統的酒造り」と「書道」を提案中です。更に、「世界農業遺産」には、新潟県佐渡市、石川県能登半島などが登録されています。これらの保存・活用を図ることによって、海外への日本文化の発信及び諸外国との相互理解の増進や、我が国の文化を再認識し、歴史と文化を尊ぶ心の育成、文化財の次世代への継承などを積極的に推進します。
821 文化芸術活動の基盤強化と自律的活動の促進
芸術家や技術スタッフ等が安心・安全な環境で文化芸術活動ができるよう、契約の書面化の推進や適正な契約関係の構築について促進するとともに、文化芸術団体が自律的・持続的に活動を継続できるよう、伴走型支援に取り組むとともに、寄附文化の醸成を図るための環境を整備し、税制上の優遇措置の利用を促進します。
822 地域における文字・活字文化の振興等
地域における文字・活字文化の振興に向けた地域モデルの創出を通じて、地域活性化を図ります。また、DX時代におけるAI開発等に資するものとして、現代日本語のデジタルによる大規模データベース化を推進します。
823 公民館1万4000を含む社会教育ネットワークの活用
社会教育施設として全国各地に公民館が約14,000か所設置されています。各地の教育委員会の社会教育主事が中心となって講座などの利用が進められてきました。しかしながら、社会教育主事の配置が十分ではなく、デジタル化が遅れている、学習コンテンツがともすれば個人の趣味嗜好に限定されがちになっているのではないかとの課題が指摘されていました。
そこで、本来の社会教育の在り方を検討しつつ、地域の課題を模索し解決するための社会貢献型に展開すべきです。デジタル技術を活用し、学習コンテンツを多様化・豊富化させるとともに、スポーツ庁と連携して健康増進活動や、厚生労働省と連携してのボランティア活動、法務省と連携しての終活など、各地の好事例を収集し、ブロックごとに周知を図るための支援を充実します。
824 スポーツ・インテグリティの確保とドーピング防止
スポーツ活動が公正かつ適切に実施されるよう、スポーツ・インテグリティ確保に向けたアクションプランを推進し、関係団体と連携した「スポーツ政策の推進に関する円卓会議」において、ガバナンス確保の取り組みを進めます。併せて、スポーツ団体が遵守すべき原則・規範を定めたスポーツ団体ガバナンスコードに基づく取り組みを推進します。また、フェアプレーに徹するアスリートを守り、スポーツにおける公平性・公正性を確保するため、世界アンチ・ドーピング規程や国際基準等に基づいた、ドーピング検査体制の充実及びドーピング防止に関する教育・研修及び研究活動を実施します。
アスリートが安心して競技に取り組める環境を守るため、アスリートに対するSNS等での誹謗中傷や、写真や動画による性的ハラスメントの問題にも取り組みます。
825 国際スポーツ大会の成功に向けた取り組み・招致
国際的なスポーツ大会を我が国において開催して、国内におけるスポーツ活動、スポーツ教育の活性化を図るとともに、スポーツを通じた国際交流、文化・観光の魅力発信等につなげていきます。2025年に東京で開催される夏季デフリンピック競技大会や世界陸上競技選手権大会、2026年に愛知・名古屋で開催のアジア競技大会やアジアパラ競技大会、2027年に関西全域で開催のワールドマスターズゲームズの成功に全力を尽くしてまいります。また、国際スポーツ大会の招致にも取り組んでまいります。
826 「スポーツ基本法」に基づく「スポーツ立国」の実現
スポーツ立国の実現に向けて、2024年5月にスポーツ立国調査会で取りまとめた提言を踏まえ、第三期スポーツ基本計画の着実な推進、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック・パラリンピック競技大会等に向けた国際競技力の向上とガバナンスの確保、新しい地域スポーツの創造と部活動改革の着実な実行、スポーツの成長産業化の推進、スポーツコンプレックスの推進、スポーツを通じた健康増進、障害者スポーツの振興、スポーツ振興のための「eスポーツ」の活用等に取り組んでまいります。
827 スポーツを通じた国際交流・協力
我が国の国際的なプレゼンスを高めるため、スポーツ国際団体の日本人役員の更なる獲得に向けた支援を強化するとともに、東京2020大会に向けた国際公約として実施した「Sport for Tomorrow(SFT)」プログラムを継承した、オールジャパンのスポーツ国際交流・協力の取り組みを進めてまいります。
828 子供の体力向上の取り組み推進
ICT活用も含め、学校における体育活動や地域におけるスポーツ環境の充実を図るとともに、子供達が障害の有無等にかかわらず、共に学べる環境を整えてまいります。加えて、子供達の安全・安心を確保するため、学校体育活動中の事故防止に取り組みます。また、子供の体力・運動能力、運動習慣について調査を悉皆で行うともに、調査の結果を活用することで、子供の体力向上の取り組みを推進します。
829 部活動の地域連携・地域移行等の推進
少子化が進む中、子供たちが将来にわたって継続的にスポーツ・文化芸術活動に親しむ環境を確保するためには部活動の地域連携・地域クラブ活動への移行が重要であり、地域の実情を踏まえながら、地域と学校の一体化による多様な機会提供等に取り組みます。具体的には、地域のスポーツ・文化芸術団体等への支援充実、指導者の確保、低所得世帯への支援をはじめとする保護者の負担軽減等に取り組むとともに、生徒の多様なニーズに対応した活動機会の充実、体罰の根絶や事故防止など適切な指導の徹底、大会の在り方の見直し等にも取り組みます。
830 地域スポーツ・民間スポーツの充実
幼児から高齢者まで誰もがスポーツに親しむことができる環境を整備することは重要であり、国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会、指導者養成事業、スポーツの裾野を広げるための地域スポーツの基盤強化など各種スポーツ振興事業の充実を図るとともに、スポーツを通じた健康増進等を図るため、トップアスリートへのサポートで得られたスポーツ医・科学の知見などに基づく運動・スポーツ等による国民のライフパフォーマンスの向上やスポーツ無関心層に興味・関心を喚起する取り組みへの支援、地域スポーツコミッションなどによるスポーツと地域資源を掛け合わせた地域活性化・まちづくりの取り組みを促進します。併せて、スポーツ団体の発展基盤の強化に向けて、スポーツ団体ガバナンスコードに基づくガバナンスの強化やアスリートキャリア支援などに取り組みます。また、大学スポーツ協会(UNIVAS)の円滑な事業運営のための必要な支援を行い大学スポーツの振興を図ります。地域の住民が学校や地域のグラウンドや体育館等を利用しやすい環境の整備についても検討を進めます。
831 学校や社会体育施設を中心にした生涯スポーツ振興
国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営むため、生涯にわたってスポーツをする場の提供を推進してまいります。具体的には、総合型地域スポーツクラブの登録・認証などの制度を整備するとともに、都道府県レベルでの中間支援組織の整備及び当該組織によるクラブの自立的な運営を促進する事業などを支援することで、クラブの質的な充実を図る取り組みを推進します。また、総合型地域スポーツクラブをはじめ地域の住民がスポーツをする場として、学校のグラウンドの芝生化や照明の整備、社会体育施設の整備などを進めるとともに、学校開放事業の運用の在り方についても検討を進め、生涯スポーツの振興に向けた環境の整備を推進します。
832 障害者スポーツの振興
共生社会を実現するため、障害者等が必要な支援を受けて文化芸術や伝統芸能を鑑賞することができる機会の拡充や、障害者等が自ら芸術を創造できる環境の整備、障害者等の制作した作品等を広く発信するための機会の確保を図るとともに、障害者等の芸術作品等が広く世間に認識され、適正な評価を受けることができるよう、博物館や美術館をはじめとする公的な文化施設等における展示の促進など、障害の有無を問わず、全ての国民が、文化芸術や伝統芸能を身近に感じ、親しむことを可能とする環境の整備を図ります。
833 デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策
DXの推進は、文化芸術における創作・流通・利用にも大きな影響を与えており、DX時代における社会・市場の変化やテクノロジーの進展に柔軟に対応したコンテンツ創作の好循環を実現する必要があります。そのため、DX時代に対応した簡素で一元的な権利処理方策の着実な実施に加え、コンテンツの利用円滑化とそれに伴う適切な対価の還元について取り組みます。また、著作権侵害に対する実効的な海賊版対策の実施、我が国の正規版コンテンツの海外における流通促進、デジタルプラットフォームサービスに係るいわゆるバリューギャップ等への対応、著作権制度・政策の普及啓発・教育方策を進め、コンテンツの権利保護を図ります。
834 地域における文字・活字文化の振興等
地域における文字・活字文化の振興に向けた地域モデルの創出を通じて、地域活性化を図ります。また、DX時代におけるAI開発等に資するものとして、現代日本語のデジタルによる大規模データベース化を推進します。
835 障害者スポーツの振興
共生社会を実現するため、障害者等が必要な支援を受けて文化芸術や伝統芸能を鑑賞することができる機会の拡充や、障害者等が自ら芸術を創造できる環境の整備、障害者等の制作した作品等を広く発信するための機会の確保を図るとともに、障害者等の芸術作品等が広く世間に認識され、適正な評価を受けることができるよう、博物館や美術館をはじめとする公的な文化施設等における展示の促進など、障害の有無を問わず、全ての国民が、文化芸術や伝統芸能を身近に感じ、親しむことを可能とする環境の整備を図ります。
836 武道の振興
各種武道大会などの開催や中学校における武道指導の充実、指導者の資質向上、武道場の整備、武道の国際交流などを通じて、我が国固有の伝統文化である武道の更なる振興、発展を図ります。
837 公共放送の改革と放送の将来像についての検討
あまねく日本全国において豊かで良質な放送番組を放送するなど、NHKが公共放送としての使命を引き続き果たしていくため、不断の改革に取り組んでいきます。インターネット空間においても、信頼できる情報を国民・視聴者が継続的・安定的に入手することができるよう、NHKのインターネット配信を強化してまいります。我が国に対する正しい認識を培い、国際親善の増進等を図る重要な役割を有する国際放送について、NHKが放送法で定められた責務を果たすことができるようガバナンスの強化を促してまいります。
また、スマートフォンの普及や視聴スタイルの変化など、放送を取り巻く環境が急速に変化する中においても、信頼性の高い情報が国民にあまねく届けられるよう、小規模中継局等による放送をブロードバンド等で代替することや放送の将来像について検討を行います。
838 携帯電話市場の公正競争促進
国民生活に不可欠な携帯電話サービスについて、「安く」「わかりやすく」「納得感のある」料金やサービスの実現に向け、通信料金と端末代金の完全分離や、事業者による利用者の行き過ぎた「囲い込み」を禁止するための電気通信業法の改正をはじめとして、公正競争を促進するための政策を進めてきました。こうした取り組みの結果、国際的に遜色のない携帯電話料金が実現し、低廉な料金プランの契約者も増加しています。多くの国民が納得感のある料金・良質なサービスを利用できるよう、中古端末を含む端末市場の更なる活性化の対策や一層の公正な競争環境の整備などに取り組みます。
839 情報アクセシビリティの向上
本格的なIoT・AI時代の到来に向け、障害者の皆さんがより豊かな生活を送ることができるようにするため、必要な情報に円滑にアクセスできるよう、利便性に優れた情報通信機器・サービス等の企画、開発、提供の促進や、字幕放送・解説放送・手話放送の更なる普及に向けた取り組みを通じて、情報アクセシビリティの向上を推進します。
840 ネット上の誹謗中傷等の対策推進
SNS等のネット上における偽・誤情報や誹謗中傷等に対応するため、情報流通プラットフォーム対処法の円滑な施行、プラットフォーム事業者の積極対応の促進、利用者のリテラシー向上や相談体制の充実、偽・誤情報対策技術の研究開発など、表現の自由を最大限考慮しつつ、制度整備を含め、総合的な対策を推進します。また、会社法の外国会社登記の徹底、捜査機関の体制強化などにも取り組みます。
841 マイナンバーカードを活用した救急業務の迅速化・円滑化
救急隊がマイナンバーカードを活用して傷病者情報を正確かつ早期に把握することによる救急業務の迅速化・円滑化について、2024年度に先行実施している全国規模の実証事業の結果を踏まえて、2025年度に全国展開を推進します。
842 養育費不払いと無戸籍者の解消
子の利益の実現に向けて、改正民法(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)の内容の周知を徹底するとともに、関係府省庁や裁判所等が連携して必要な体制整備に取り組みます。また、親によって出生の届出がされておらず、無戸籍となっている方々について、徹底した実態把握に努めるとともに、改正民法の周知を含め、無戸籍者の解消に全力で取り組みます。
843 遺言及び船荷証券等のデジタル化
情報通信技術の進展等に鑑み、遺言制度を国民にとってより一層利用しやすいものとする観点から、現行の自筆証書遺言の方式に加え、情報通信技術を活用した新たな遺言の方式に関する規律を整備することを中心として、遺言制度の見直しに関する法制度の検討を進めます。また、近年の情報通信技術の進展に伴う電子商取引の拡大に対応するため、商法上の船荷証券等の電子化に関する法制度の検討を進め、早期の法整備を実現します。
更に、改正戸籍法に基づき、国民の戸籍に振り仮名を正確に記載することで、行政のデジタル化基盤の整備を促進し、行政手続の情報連携を高度化します。
844 訟務機能の強化と法曹人材の確保
法の支配を徹底し国民の権利や国益を守るため、国内外の法的紛争の未然防止に向けた予防司法機能を充実させるなど、国の訟務機能を強化します。また、多様化する国民のニーズを把握し、法曹の役割等についての積極的な情報発信や司法試験のデジタル化に取り組むなどして、多様な分野で活躍する法曹を多数輩出できる環境を実現します。
845 法教育と人権啓発活動の推進
成年年齢や裁判員対象年齢が引き下げられ、社会における若者への期待がますます高まっていることを踏まえ、社会の一員としての自覚をしっかりと持ち、社会参画していけるよう、法曹と教育機関をはじめとする地域の関係団体との連携を抜本的に強化するなどして、法教育をより一層充実させる取り組みを進めてまいります。また、児童虐待やいじめ、インターネット上の誹謗中傷や差別など、様々な人権問題を解消するため、人権啓発活動を推進するとともに、早期発見・救済に取り組みます。
846 交通安全教育の充実と徹底
交通事故の発生を未然に防止し、交通安全を徹底すべく、心身の発達段階に応じて、また生涯にわたって、段階的かつ体系的な交通安全教育を充実します。高校では「三ない運動(免許を取らせない、バイクを買わない、乗せない)」の見直しを進め、全国の高校の好事例の普及を支援してまいります。若者の「車離れ」が叫ばれる中で、道路交通法規の教育の徹底を支援します。
847 交通事故死傷者数を半減
近年、交通事故死者数は減少を続けていますが、未だ多くの方が交通事故によって命を落とされており、その半数は高齢者となっています。さらに、2019年4月には東京都池袋で高齢者の運転する車が歩行者をはね、母子2人が亡くなる事故が、2019年5月には滋賀県大津市で保育園児の列に車が衝突し、園児2人が亡くなる事故が、2021年6月には千葉県八街市で下校中の小学生の列にトラックが衝突し、小学生2人が亡くなる事故が起こるなど、痛ましい事故が相次いで発生しております。
このため、我が党はボランティアの方々とも連携しつつ、生活道路は幹線道路と機能分化させ、通学路を含めた点検の実施やビッグデータの活用による効果的な生活道路等の対策を行うとともに、高齢者等への交通安全教育などの交通安全対策、高齢者の移動手段の確保、高齢運転者の交通事故防止に資する衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)など一定の安全運転支援機能を備えた車(サポカーS)の普及、自動運転による移動サービスの社会実装を推進することにより、道路交通の安全と円滑を確保し、誰もが安全・安心に暮らすことができる社会の実現を目指します。
同時に高度道路交通システム(ITS)の推進による安全性を高めるための安全運転支援システムの実現や、交通事故が起こりにくい街づくり、スクールバス導入等による子供の移動経路における交通安全の確保、大会の在り方の見直し、自転車に対する対策、バス等の公共交通の安全性向上、踏切対策、高速道路の逆走防止対策など、総合的な交通安全対策を推進します。
848 消費者行政の強化・充実
自然災害に便乗した悪質商法被害の防止や孤独・孤立した環境に置かれた消費者への対応など、消費者の安全・安心を脅かす様々な課題に機動的に対処すべく、消費者庁創設時の理念に基づき、消費者庁、消費者委員会、国民生活センターの連携の強化等によりそれぞれの機能の充実を図るとともに、スピード感を持って執行の強化や制度の見直しなどの施策を推進します。
同時に、消費者の安全で安心な暮らしを守るために、地方消費者行政への財政的支援も活用しながら、どこに住んでいても質の高い相談・救済を受けられる、デジタル化にも対応した相談体制の強化に取り組むほか、孤独・孤立の状況にある方、高齢者、障害者等の配慮を要する消費者の被害防止のための「地域の見守りネットワーク」を全国に整備していくことなどにより、地方消費者行政の充実・強化を目指します。
849 消費者保護・育成施策の充実
デジタル化や高齢化の進展等を踏まえ、インターネット通信販売を始めとする様々な取引における消費者の保護や取引環境の変化に対応した消費者法制度のパラダイムシフト(考え方の大きな転換)に向けた検討を進めます。不当な表示を防ぎ、消費者の利益を保護するため、デジタル広告の表示の適正化に取り組むとともに、保健機能食品制度の信頼性確保も含む、食品表示制度の適切な運用に努めます。
若年者や高齢者など特に被害が懸念される消費者へのきめ細かな注意喚起や啓発を行うとともに、引き続き、消費者被害の未然防止や迅速な救済を実現するため、消費者団体訴訟制度の実効性向上に努めます。
更に、消費者教育を通じて消費者被害を防止し、自主的かつ合理的に行動できる自立した消費者を育成するとともに、事業者の消費者志向経営の促進や公益通報者保護制度の改革を通じた実効性向上により、消費者と事業者双方の信頼関係を構築し、持続可能な社会の形成と経済の活性化を図ります。
850 女性の安全と安心
女性の安全と安心を守ることは重要であり、女性を含めた全ての人々がお互いに人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会を目指します。
851 不当寄附勧誘の防止
不当な寄附の勧誘による被害者を増やさないため、2022年に整備した「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」などの制度を活用し、被害の防止に努めます。
852 匿名・流動型犯罪グループに対する戦略的な実態解明・取締りの強化等
国民の大きな不安となっている、SNSを利用して実行犯を募集する、いわゆる「闇バイト」等の手口による強盗等について、「闇バイト」等の情報の削除等の犯行に加担させないための対策を推進するとともに、被害に遭わない環境を構築するための対策や、首謀者を含む被疑者を早期に検挙するための対策等を推進します。
これらの強盗のほか、特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺、組織的窃盗・盗品流通事犯、悪質ホストクラブ事案、風俗関係事犯等への関与がうかがわれ、国民にとって治安上の大きな脅威となっている匿名・流動型犯罪グループに対する戦略的な実態解明・取締りを強化します。
また、国民に多額の被害をもたらしているSNSを利用した詐欺やフィッシング等に対し、「国民を詐欺から守るための総合対策」に基づき、官民が連携して各種施策を強力に推進します。
853 孤独・孤立対策の推進
「望まない孤独・孤立」を放置しておくことはできません。孤独・孤立は人生のあらゆる場面で、誰にでも起き得るものです。孤独・孤立に悩む方々に寄り添い、実態把握の全国調査結果を踏まえ、一人ひとりを支えていく支援策の体系を構築します。
私たちが住む地域を、望まない孤独・孤立に至らない、また、至ったとしても速やかに支えられる社会にしていくことが重要です。「予防」の観点を重視しつつ、多様な居場所を確保すること等により人と人との「つながり」を実感できる地域づくりを進めます。
854 助けを求める声を切れ目のない相談支援につなげる
様々な相談に的確に対応するため、電話やSNSなどの特性を生かしたワンストップの相談窓口、24時間対応の相談体制の整備等を進めます。相談者と同性や同世代の相談対応者を配置するなど、相談者が相談しやすい環境整備を行います。誰もが「孤独・孤立に至っても支援を求める声を上げやすく、周囲が声をかけやすい社会」にしていけるよう、広報・情報発信、SOSの出し方の普及啓発を行うとともに、支援策を網羅したポータルサイトにより、必要なタイミングでタイムリーに情報が得られる環境づくりを進めます。
支援を必要とする方々の目線に立ち、積極的に支援を届けるアウトリーチ型の支援の推進により、支援策を確実に届けます。地方において支援団体の連携基盤づくりを推進し、社会福祉協議会、民生委員・児童委員、保護司等の活動環境を整備するとともに、地方自治体への伴走支援、NPO等へのきめ細かな支援及びNPO等を支援する中間支援団体への支援を行います。
855 孤独・孤立に陥らない取り組みの推進
「社会的処方」の取り組みを推進するため、医療保険者とかかりつけ医の協働による保健指導等の取り組みへの支援に加え、国立公園や美術館・博物館などの公的施設の魅力発信・活用を積極的に進めます。
生活の基本である「食」と「住」の確保について、フードバンク等の食品提供のコーディネートの支援や政府備蓄米等の活用を行うとともに、人とのつながりを生み出す共用空間がある住まいの確保など孤独・孤立の解消に対応できる居住支援を推進します。こども食堂をはじめ多様で身近な居場所づくりをきめ細かく支援するとともに、ソーシャルワーカー、スクールソーシャルワーカーなど地域資源との連携を推進します。
856 成年後見制度の見直しに向けた検討
尊厳のある本人らしい生活の継続や地域社会への参加等のノーマライゼーションの理念のより一層の実現を図るため、「第二期成年後見制度利用促進基本計画」に基づき、成年後見制度の見直しに関する法制度の検討を進めます。
857 在留管理と多文化共生社会の実現
外国人の適正な在留管理の徹底を図るとともに、多文化共生社会の実現のため、一元的相談窓口の設置、行政・生活情報の多言語化などの受け入れ環境整備を進めます。また、国と地方公共団体、全国の一元的な相談窓口などとの連携を充実させるなど、効果的・効率的な支援の実施を推進します。
更に、行政・生活情報について、我が国を訪れる外国人の国籍や使用言語などの多様化を踏まえ、多言語対応を推進しつつ、所要の体制整備を行います。国民と外国人の双方からの継続的な意見聴取や、基礎調査の実施などを通じ、外国人の生活上の諸問題を的確に把握し、共生社会の実現に向けた施策に反映させていきます。
858 不法・偽装滞在者対策に資する体制の整備
安全・安心な社会を実現するため、関係機関等との連携強化などにより、出入国在留管理におけるインテリジェンス機能の強化を図ります。また、関係省庁が連携し、在留カードの偽造事案に厳格に対応するなど不法・偽装滞在者対策を推進しつつ、入管法違反者の円滑な送還のための体制整備を進めます。日本人と外国人がともに安心して暮らせる社会の実現に向け、改正された入管法も適切に運用し、在留が認められない外国人の迅速な送還に取り組みます。
859 出入国審査と在留手続の円滑化
訪日外国人6,000万人時代を見据えて、顔認証技術などの最新技術の活用や、電子渡航認証制度の導入等、円滑かつ厳格な出入国審査の実現に向けた取り組みを進めます。また、在留外国人の在留手続の円滑化・迅速化を図るとともに、外国人の利便性を向上させるため、マイナンバーカードと在留カードの一体化や在留関係手続のデジタル化の推進等に係る施策の充実を図ります。
860 留学生・技能実習生の適切な在籍・在留管理
留学生の適切な在籍管理を図るため、上陸準備省令の改正に基づく運用を着実に行い、在籍管理が不適切な大学などに対して厳格な対応を行います。また、技能実習生の適切な在留管理を図るため、実地検査のための体制や送出国を含む関係機関の連携の強化などを通じて、不適切な受け入れ機関や送出機関などに対して厳格な対応を行うことにより、制度の改善及び運用の適正化を図ります。
861 特定技能制度の活用
特定技能制度が深刻な人手不足の解消策としてより一層活用されるよう、2024年3月の新規分野の追加等を踏まえ、技能試験の整備や制度の周知活動、各分野の実情を踏まえたマッチング支援等、特定技能外国人の円滑な受け入れに向けた取り組みを推進します。
また、特定技能外国人の受け入れに当たっては、受け入れ企業と地方公共団体とが意思疎通しやすい環境を整えるなど共生社会の実現に資する取り組みを進めてまいります。更に、特定技能外国人の大都市圏などへの集中を防止するため、地方における受け入れ環境整備や、地方定着のノウハウ、優良事例の共有などを積極的に行います。
862 育成就労制度の円滑な施行
我が国が魅力ある働き先として選ばれる国となるように、外国人が日本で就労しながらキャリアアップできる分かりやすい制度として人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度を創設しました。育成就労制度の円滑な施行に向けて、必要な体制整備、受入れ対象分野や受入れ見込数の設定、監理支援機関等の要件厳格化に関する方針の具体化等に取り組みます。
863 難民等の迅速かつ適正な保護・支援
2023年12月に開始された補完的保護対象者認定制度を適切に運用するとともに、補完的保護対象者として認定された方には、条約難民と同様に我が国での自立支援策の一環として、日本語教育や生活ガイダンスを受講できる「定住支援プログラム」を提供します。難民等の保護すべき方々を一層確実、迅速かつ安定的に保護するとともに、保護された方への適切な支援に取り組みます。
864 司法分野のデジタル化
適正かつ迅速な裁判の実現を図り、民事裁判を国民にとって一層利用しやすいものとするため、当事者の裁判を受ける権利にも配慮しつつ、民事裁判手続のIT化を実現します。併せて、デジタル化された判決書等の活用を促進するため、紛争解決手続に関するAIの開発等の基盤ともなり得る民事裁判情報のデータベース化を早期に実現します。また、デジタル技術を活用した紛争解決手段であるODR(オンライン型民間調停)の社会への浸透を進めてまいります。
更に、刑事手続において、情報通信技術を活用することにより、円滑・迅速な手続の実施等を通じて安全・安心な社会を実現するとともに、関与する国民の負担軽減等を図るため、刑事手続のデジタル化の実現のための法整備に関し、2024年度中のできる限り早期に国会に法案を提出し、高い情報セキュリティを備えたIT基盤の整備を強力かつ迅速に推進します。
865 犯罪被害者等施策の抜本的強化
今なお、犯罪被害の回復・軽減がほとんどなされず経済的に困窮して苦しみ、また、シームレスなサポートを受けられずに孤独・孤立に苦しむ犯罪被害者等の切実な声が届いていることに鑑み、犯罪被害者等にきめ細かで充実した支援が行われるよう、「第4次犯罪被害者等基本計画」及び「犯罪被害者等施策の一層の推進について」の着実な推進を図ります。
866 性的マイノリティの理解増進
性的マイノリティの社会生活上の困難を軽減するため、地域・学校・職場等社会の様々な場面における理解増進を図ります。また性別不合等に関しては、令和5年最高裁判決を踏まえ、生命の尊厳を守る観点から必要な法制度等の見直しを行います。
867 氏制度について
夫婦の氏制度の在り方については、旧氏使用ができない事で不便を感じられている方に寄り添い、運用面で対応する形で一刻も早い不便の解消に取り組みます。また、今後の夫婦の氏制度の在り方については、氏制度の社会的意義や運用上の課題等を整理しつつ、どのような形が相応しいかを含め合意形成に努めます。
868 障害者の方への施策の推進
2024年4月に施行された改正「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」の周知を図るほか、障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けて、取り組みを強化します。また、障害者スポーツや、障害者の芸術・文化活動の更なる推進にも取り組みます。
障害福祉施策について、強度行動障害への対応も含め、障害者の重度化・高齢化に対応し、障害者が希望する地域での自立生活の実現・継続を支援するため、地域生活支援拠点等や基幹相談支援センターの整備促進などを進めます。また、障害福祉人材の確保に向けて、処遇改善に取り組みます。
「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」を踏まえ、医療的ケア児やその家族等への支援を進めます。また、児童発達支援センターの機能強化などにより、地域における障害児支援の充実を図ります。
障害特性や就労ニーズの多様化が進む中で、精神、発達障害者等の就労支援やテレワーク等の推進を通じ、雇用の質の向上を図ります。障害者雇用と福祉の連携を強化し、2025年10月から創設される就労選択支援の円滑な施行や障害者就労を支える専門人材の育成強化など、効果的で切れ目のない支援体制の構築を進めます。我が党が主導した「障害者優先調達推進法(ハート購入法)」の着実な実施に努めます。
「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」を踏まえ、意思疎通支援が必要な障害者等に対する手話その他のコミュニケーション支援の充実に努めます。併せて、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」を踏まえ、読書環境の整備を進めます。
引き続き、障害のある人の自立と社会参加のための基盤整備や人材の確保を積極的に推進してまいります。
869 総合的なアイヌ施策の推進
アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するため、ウポポイの充実強化を図るとともに、アイヌ政策推進交付金等を活用し、アイヌ文化振興施策、生活向上施策、地域振興、産業振興、観光振興等を含めた施策を総合的かつ効果的に推進します。
憲法改正
870 憲法改正の実現
「現行憲法の自主的改正」は結党以来の党是 であり、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和 主義」の3 つの基本原理は堅持し、憲法改正実 現に向けて、取組みを更に強化します。 技術革新、安全保障環境、時代や社会生活の 変化など、時代の要請に応えられる「日本国憲 法」に改正するため、力を尽くします。 自民党は現在、憲法改正の条文イメージとし て、①自衛隊の明記、②緊急事態対応、③合区解 消・地方公共団体、④教育充実の4 項目を提示 しています。衆参の憲法審査会を安定的に開催 し、憲法の本体論議及び国民投票法について積 極的に議論を進めます。 憲法及び憲法改正に関する国民の幅広い理解 を得るため、全国各地で対話集会などを積極的 に開催し、憲法改正の必要性を丁寧に説明して いきます。 衆参両院の憲法審査会において憲法論議を深 め、憲法改正原案の国会提案・発議を行い、国民 投票を実施し、「日本国憲法」の改正を早期に実 現します。
政治改革・行政改革
871 選ばれる組織であり続けるための公務員制度改革
霞が関の本省庁だけではなく、現場をもつ地方支分部局や自衛隊、海上保安庁等の機関も含めた、広い意味での国家公務員組織が、社会のために働こうとする意欲ある者たちに「選ばれる組織」であり続けるため具体策を実施します。
- 行政の重要課題に柔軟に対応するメリハリある公務員組織・定員管理を実現するため、災害対策、食料安全保障、外交安全保障、感染症対策など重点分野を担う業務については、大胆な増員を図るなど、定員の純増を実現します。
- 限られた人的リソースの中でスクラップアンドビルドも必要であることから、デジタル化の推進による人員削減に取り組むことや、特に地方支分部局の個別の出先機関ごとに配置されている総務・経理などの管理部門について大胆な統合を図り、1箇所で多くの出先機関の管理部門の実務を担うなどの共通化によって、行政機関全体のスリム化を図ります。
- 勤務する省庁を固定するのではなく、より各自の能力・意欲を活かせる省庁に移る省庁間異動を可能とし、民間人材の積極的登用、一度公務員から民間に転職したスキルを有する人材の国家公務員への再度採用を推し進めるなど、柔軟性のある任用制度を実現します。
- 各省庁の地方支分部局相互の人事交流の拡大により、転居せず異動できる職場の選択肢を広げ、それぞれの事情に配慮した人事異動を可能とすることで、地域の優れた人材の処遇を図ります。また、各自のライフプランに基づき選択的な地域限定・ブロック限定異動を実現します。
872 過疎地域における生活インフラ維持と人材確保に向けた規制改革
都市部とは全く切迫度が異なる地方における人口減少と高齢化は、地域住民による共助ではカバーできる局面の限界を迎えました。全国一律の規制によっては困難さを抱える地方は救えないとの問題意識のもと、規制改革に取り組みます。
- 過疎地域におけるガソリンスタンドの存続支援を図るため、現在、危険物規制に関する政令により進んでいない可搬式給油機の設置を消防長・消防署長の特例承認によることなく、一律に認めることができるように取り組みます。また、可搬式給油機を対象とした補助事業を地域を限定することなく設け、緊急防災減災事業債の対象に加えるなどして、普及を促進します。
- 日本で学ぶ留学生の25%が専門学校に在籍し、人材育成に大きな役割を果たしている一方、実際に就職したのは4割程度にとどまっています。 在留資格などの厳格な基準により、特に保育や調理など、国家資格を取得したにもかかわらず、その職に就くことができない事例については早急な是正が必要です。「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」の適切な運用等を通じて、留学生本人と就職先企業のニーズに応え、とりわけ地方における人材育成・確保を促進します。
873 アップデートの視点を携えた行政手続き改革の実現
行政内部における業務手続きについては、社会・経済情勢の変化やデジタル化の進展等に伴い、現在の国際的な水準で見た際、我が国の行政サービスの水準として精査が必要な手続きもあり、更なる品質向上に向けて臨機応変に不断の見直し等が必要です。
- 行政文書について、当該電子文書が作成されるタイミングにおいて作成者や作成時期を確認できるようにするとともに、保存の際に非改変性を担保するための措置を講ずることができるよう環境を整備します。また、行政手続きなどにおいて民間企業から提出される電子文書の非改変性の担保についても、手続きなどの内容、対象事業者、電子文書の性質等を踏まえ、取り組みを進めます。
- **金融機関が許認可・登録等の申請・届出を行う際に添付が求められる、公的機関が発行する書類(住民票など)については、原本での提出のみではなく、デジタル化を通じた提出方法も認めるよう、監督指針の改正など、デジタル化を積極的に進めます。また、「金融・資産運用特区」の創設などを通じ、海外の金融事業者などの日本への進出や日本での業務拡充を促進します。
- ビジネス・プロセス・リエンジニアリング (BPR)の手法を用いて、「旅費業務に関する標準マニュアル」の改定などを通じて、各府省の旅費業務の合理化を図ります。法人名義のクレジットカードによる決済などを認めることにより、精算業務の効率化を図るなど、キャッシュレス決済の特徴や課題も踏まえながら、旅行者・経理担当者の双方にとって効率的な業務プロセスを整備します。
874 将来にわたる高い品質の統計の提供、ビッグデータ、デジタル技術等の利活用
将来にわたって高い品質の統計を提供するために、必要な体制整備や人材育成を行いつつ、ビッグデータ、デジタル技術等も活用し、統計精度の向上に引き続き取り組むとともに、報告者負担の軽減による効率化等に取り組みます。
また、統計情報を国民が容易に利用し、合理的な意思決定や新たなアイデアの創出につなげることができるよう、データ利活用の利便性を向上させます。また、これらと両輪のものとして、限られた予算のもとで政策効果を最大限に発揮するため、証拠=エビデンスに基づく政策立案(EBPM)を一層推進します。
875 国民目線に立った行政の見直しの推進
国民本位の効率的で質の高い行政を実現するためには、行政自らが、国民目線に立った評価・分析を徹底した上で、その結果を政策の改善につなげていくことが重要です。このため、政策評価が、政策の企画立案や見直しプロセスにおいて、より一層活用されるものとなるよう、改善を図ります。また、従来の社会環境を前提とする仕組みそのものの見直しを要する施策、府省横断的な見直しを要する施策などについて、国民目線に立って見直します。
876 郵便等投票制度の対象者の拡大等
在宅介護を受ける歩行が困難で自ら投票所に行けない方の投票機会確保のため、郵便等投票制度の対象拡大を図ります。在外選挙インターネット投票の導入について、論点を検討し、公正・公平が確保された制度に向けて幅広く議論を重ねていきます。選挙権年齢が引き下げられたことを踏まえ、被選挙権年齢も引下げの方向で検討します。適用年齢・対象選挙は若者団体など、広く意見を聴いた上で結論を出します。また、衆議院選挙制度協議会の報告を踏まえ、一票の較差の是正と地方の有権者の声の反映の両立等の観点から、衆議院議員選出のための望ましい選挙制度の在り方等について、具体的な結論を得るよう議論を続けていきます。更に、選挙運動規制等の公選法全般の見直しを進めます。
選挙の公営掲示板用のポスターについて、候補者の情報を有権者に伝えるという本来の目的を果たすため、品位保持規定、営業宣伝に関する罰則を設けるなど、公選法の見直しを行い、早期の法改正を目指します。
877 選ばれる組織であり続けるための公務員制度改革
基金や特別会計等についても不断の見直しを行い、基金の余剰資金の国庫返納や、特別会計の積立金・余剰金等の一般会計等の財源としての活用、独立行政法人の独自財源収入の増加や事業費抑制等を通じての国の一般会計からの繰り入れや運営費交付金の抑制を進めます。また、これまでの独立行政法人制度改革の成果を踏まえ、引き続き業務運営の効率化を進めつつ、独立行政法人の持つ専門性やノウハウを、国の政策課題の解決のために最大限活用してまいります。
878 人事院勧告制度の尊重
人事院勧告は、国家公務員において憲法上の労働基本権が制約されていることの代償措置として、国家公務員に対し、適正な給与、勤務時間・休暇等の勤務条件を確保するという機能を有するものであり、人事院勧告を尊重します。
879 党改革
党運営の新たな指針「自民党ガバナンスコード」に基づき、自ら党改革を進めます。特に、政治資金の透明化と厳正なコンプライアンス対応などに取り組みます。
多様で包括的な社会を実現するため、2033年までに国政における我が党の女性議員の割合を、現在の12%から30%まで引き上げることを目標に取り組みを強化します。昨年導入した新人候補者への子育て・介護支援制度、女性候補者支援金制度、ハラスメント相談窓口を推進し、女性が国政選挙に立候補しやすい環境整備に取り組みます。
国政に挑む新人支部長が抱える課題を解決するために先輩の国会議員が指導・助言を行うメンター制度を充実させるなど、政策集団に代わる新たな人材育成を推進します。党所属国会議員の経歴や専門分野などの情報を定期的にヒアリングし、公正で適材適所の人事を一層推進します。
880 政治制度改革
政治への信頼回復を実現するため、厳しい反省と強い倫理観のもと、新たに設置した「政治改革本部」を中心に、不断の政治改革、党改革に取り組みます。
将来的な廃止も念頭に、政策活動費の在り方や透明性の確保、その監査に関する「第三者機関」の設置、政党交付金の交付停止等の制度創設など政治資金制度改革に取り組みます。
調査研究広報滞在費の使途の明確化、使途の公開、未使用分の国庫返納などに取り組むともに、当選無効となった議員の歳費返納等を義務付ける法改正の実現を図ります。
これまでの国政選挙、地方選挙で明らかになった課題を踏まえ、有権者目線で選挙制度を見直す議論・改革を進めます。