
1. GTMとは?

GTM(Go-To-Market)戦略とは、プロダクトを市場に届けるための計画を指します。しかし、それは単なる販売手法やマーケティング施策の話ではありません。GTMの本質は、「どの市場で、どの顧客に、どの順序で勝つのか」という成長の設計図を描くことにあります。
スタートアップは常に資源が限られています。資金も人材も時間も潤沢ではありません。その制約の中で成果を出すには、集中と選択が不可欠です。GTMとは、その集中を意図的に設計する戦略です。
プロダクトが優れているにもかかわらず売上が伸びない場合、その原因ほとんどは、GTM戦略が出来ていなかったり、有効に活用されていないことにあります。広告を打っても受注につながらない、営業を増やしても継続率が上がらない。こうした現象は施策の問題ではなく、「どこで戦うか」が曖昧であることから生じます。
2. なぜスタートアップにGTMが不可欠なのか
大企業はブランド力や資本力で市場を広くカバーできます。しかしスタートアップにはその余裕がありません。最初からすべての顧客を狙うことは、リソースを分散させるだけです。
GTMが重要なのは、勝てる領域に集中するためです。市場は均一ではありません。同じ業界でも、課題の深刻度や意思決定スピード、予算感は大きく異なります。どこから入るかによって、事業の立ち上がり方はまったく変わります。
GTMが明確であれば、組織の動きも揃います。マーケティングはどのリードを追うべきかが分かり、営業はどの顧客に時間を投資すべきかを判断できます。プロダクトチームも、誰の課題を最優先で解くのかを明確にできます。
3. ICPとGTMの関係 ―― 「誰に売るか」がすべてを決める
GTM戦略の出発点は、ICP(Ideal Customer Profile)の定義です。ICPとは、自社にとって最も成功確率の高い顧客像を指します。単に「売れそう」な顧客ではなく、導入後に成果を出しやすく、継続や拡張につながる顧客です。
例えば、課題の緊急度が高く、意思決定が速く、導入後の運用体制が整っている企業は、成功確率が高い傾向があります。逆に、課題はあるが優先度が低い企業や、稟議に時間がかかる企業は、成約までに多くのコストがかかります。
ICPが曖昧なままGTMを設計すると、獲得効率は悪化します。広告費は増え、営業工数も膨らみます。それでもLTVが伸びなければ、事業は持続しません。GTMとは、CACとLTVを構造的に改善するための前提条件でもあります。
4. 成長モデルの選択 ―― PLGか、SLGか、それともハイブリッドか

GTM戦略は、成長モデルの選択と密接に結びついています。プロダクト主導で成長するPLG(Product-Led Growth)を採用するのか、営業主導で拡張するSLG(Sales-Led Growth)を選ぶのかによって、設計は大きく変わります。
短時間で価値を体感でき、個人利用から自然に広がるプロダクトであれば、PLGは有効です。一方で、導入に複雑な要件定義や稟議が必要な場合は、営業主導のアプローチが適しています。
重要なのは、流行に合わせることではなく、自社のプロダクト特性と顧客特性に適したモデルを選ぶことです。GTMは戦術の選択ではなく、構造の選択です。
5. チャネル戦略はGTMの「結果」である
SEO、広告、アウトバウンド、パートナーセールス。どのチャネルを選ぶかはよく議論されますが、本来それはGTMの出発点ではありません。
顧客がどのように情報を収集し、どのタイミングで意思決定をするのかを理解した結果として、最適なチャネルが決まります。チャネルから考え始めると、戦略は断片化します。
GTMは、顧客の購買行動を起点に設計されるべきです。その上でチャネルが選ばれます。
6. 価格設計とGTMの接続
価格もまた、GTM戦略の一部です。従量課金モデルを採用すれば導入障壁は下がりますが、拡張を前提とした設計が必要になります。高額な年間契約モデルを採用すれば、営業プロセスは長くなりますが、単価は高まります。
価格は収益モデルであると同時に、市場への入り方を規定する戦略要素です。GTMを設計する際には、価格とチャネルと顧客を一体で考える必要があります。
7. フェーズごとに変化するGTM
GTMは固定的なものではありません。シード期では、再現性よりも学習が優先されます。どの顧客が本当に価値を感じるのかを探る段階です。
PMFに近づくにつれ、再現可能なパターンを見つけ、そこに集中する戦略へ移行します。スケール期では、組織として効率的に拡張できる構造を整えることが重要になります。
フェーズごとに問いは変わりますが、常に共通しているのは「どこで勝つか」を明確にすることです。
GTM戦略を“設計図”にする
スタートアップのための具体的GTM設計ステップGTM戦略が重要だと理解していても、実際にどう設計すればよいのかが曖昧なまま走り出してしまうケースは少なくありません。ここでは、スタートアップが実務で使える形に落とし込んだ、具体的なGTM設計ステップを提示します。
STEP1:ICPを「理想像」ではなく「勝ちパターン」で定義する
最初に行うべきはICPの明確化ですが、ここで重要なのは「売りたい顧客」ではなく、「最も成功確率が高い顧客」、つまり、ターゲットを定めることです。
実務では、すでに受注している顧客の中から、
「立ち上がりが早かった企業」「導入後に利用が拡張した企業」「サポート負荷が低い企業」
を抽出し、共通項を洗い出します。業界や従業員規模といった表面的な属性だけでなく、➀課題の緊急度②導入前の業務プロセス③意思決定構造④予算化の背景、といった「構造的条件」を言語化します。ここが曖昧なまま次に進むと、GTMはぶれてしまいます。
STEP2:課題と提供価値の「一点突破」を設計する
ICPが定義できたら、次は「どの課題にフォーカスするか」を決めます。スタートアップが失敗しやすいのは、「多機能=広い市場に刺さる」と考えてしまうことです。しかしGTM初期では、価値は絞るほど強くなります。実務的には、「その顧客が今すぐ解決したいものは何か」「既存手段でなぜ解決できていないのか。」「なぜ今、必要があるのか。」の3つの課題を徹底的に詰めます。この“今すぐ性”が弱い場合、商談は進みません。
STEP3:購入プロセスを逆算する
次に行うのは、顧客の購買プロセスの可視化です。
「誰が最初に情報を探すのか」「誰が稟議を通すのか」「誰が最終決裁者なのか」
BtoBの場合、ここを曖昧にすると営業効率は激減します。PLG型であれば「現場主導→拡張」モデルになりますし、SLG型であれば「決裁者起点→導入推進」モデルになります。GTMは、プロダクト特性だけでなく、購買構造から逆算する必要があります。
STEP4:チャネルを「顧客行動」から選ぶ
チャネル選定は戦略の出発点ではなく、結果です。「ICPがどこで情報を収集しているのか。」「どのメディアを信頼しているのか。」「営業接触を歓迎するタイミングはいつか。」
例えば、
・顕在課題が強い → SEO・検索広告
・教育が必要 → ウェビナー・コンテンツ
・高単価 → ABM・アウトバウンド
このように、顧客行動と整合するチャネルを選びます。
STEP5:価格モデルを成長構造に接続する
価格は収益モデルであると同時に、GTMの重要構成要素です。低単価・セルフサーブ型であればPLGが機能しやすくなります。高単価・年間契約型であれば営業主導が前提になります。さらに、従量課金は拡張を促進させ、席課金はチーム展開を促進します。価格設計は、どのように拡張させたいかという成長モデルと直結します。
STEP6:成功指標をフェーズ別に定義する
GTMが機能しているかを測るためには、適切なKPIが必要です。
初期フェーズでは、「商談化率」「初期利用率「価値実感までの時間」、スケールフェーズでは、「CAC回収期間」「LTV/CAC」「NRR」が重要になります。指標がフェーズと一致していない場合、正しい判断ができません。
9. まとめ
GTM戦略とは、単なる市場投入計画ではありません。市場で勝つための設計図です。良いプロダクトを作ることは出発点にすぎません。それを誰に、どの順序で、どの方法で届けるのか。その設計がなければ、成長は偶然に左右されます。スタートアップにとって最も重要な問いは、「どの市場で、どの顧客に、どうやって勝つのか」です。その問いに答えるものこそが、GTM戦略なのです。
参考資料
・【入門】Googleタグマネージャー(GTM)とは?仕組みや用語解説、使い方、GA4設定まで – ミエルカマーケティングジャーナル
・GTM(Googleタグマネージャー)の仕組みと使い方【初心者向け解説】|Bookmark&Light_細川
・GTM(Googleタグマネージャー)とは?基礎知識と導入・初期設定 – マーケティングオートメーションツール SATORI
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