静岡市が主催する初のアクセレーションプログラム”Shizuoka City Acceleration Program 2023″とは?
皆さんは産学官金連携という言葉をご存知でしょうか?産学官金連携は、企業の新製品や新技術を開発したり技術的課題を解決するために、大学や高専、公的研究機関の研究者から技術指導を受けたり、研究者と一緒に共同研究などを行う取り組みに、産業支援機関や金融機関が、窓口相談や情報提供、伴走支援など一緒になって取り組むことを言います。日本のスタートアップ業界をさらに盛り上げるためには、この産学官金連携を強化していく必要があると言われています。
今回は、静岡市が初めて主催する産学官金連携プログラムの「Shizuoka City Acceleration Program 2023」について、プログラムの概要から、支援内容、最後に採択された企業について事業内容とともにご紹介いたします。
Shizuoka City Acceleration Program 2023とは?
Shizuoka City Acceleration Programは、静岡市が持続可能な街づくりを実現するために取り組むアクセレーションプログラムです。短期間に集中してスタートアップの事業成長を実現するためにさまざまな支援を実施し、スタートアップの成長を加速、静岡市の経済を発展させるとともに、新しい産業や雇用の創出を目指しています。2023年の7月から開催されたShizuoka City Acceleration Program 2023では、5社のスタートアップが採択され、2024年2月に開催される成果発表会(デモデイ)に向けて約5ヶ月間、大学や金融機関、民間企業等の支援チームからサポートを受けることができます。
Shizuoka City Acceleration Programでは、インキュベーションコースとPoC型アクセラレーションコースの二つのコースに沿ってビジネスプランを募集しました。2つのコースの対象企業や違い、詳細な内容について以下でご紹介します!
Shizuoka City Acceleration Program 公式HP: https://01booster.com/program/shizuoka-city/
動画:https://youtu.be/9gfqcK1THE4
PoC型アクセラレーションコース
PoC型アクセラレーションコースは、静岡市が持つ課題や、地域の特性を元に防災・BX・教育と福祉のテーマに合ったスタートアップやビジネスプランを募集しました。このコースでは主にアーリーやミドル期の企業や第二創業で、検証が可能なサービスまたはプロダクトを持つ企業、また新たな協業先を探している導入実績がすでにある企業を対象にしています。
テーマ①防災 / Disaster management
静岡市は豪雨や高潮に伴い発生する自然災害や、南海トラフ地震、富士山の噴火など今後も予想される災害に対する防災対策が必要であり、多くの静岡市民が高い防災意識を持っています。災害の未然防止や被害の拡大防止、災害が発生した際も迅速な復旧を実施できるような防災分野のビジネスプランを募集しました。
テーマ②BX / Blue transformation
Blue transformationは、増加する世界人口に食料を供給するために水産物が果たす役割、または水産資源と人びとの健康を守るための構造的な変革のことを意味します。このテーマに関連して海洋資源の持続的な活用と海洋産業を発展させるビジネスプランを募集しました。静岡市は、国内最深でさまざまな生態系を持つ駿河湾に面しており、海洋産業に従事している市民も多くいます。海洋環境の保全と静岡県の海洋産業発展を同時に実現できる事業を募集することで、静岡県の海洋産業のイノベーションの実現を目指します。
テーマ③教育・福祉 / Education・Welfare
静岡市は暖かい気候と豊かな自然を保有しており、そのような自然環境の元で、教育DXの推進や子育て支援、健康長寿のための地域活動を積極的に行っています。その一方で、静岡市の少子高齢化は深刻であり、政令指定都市の中で第2位の高齢化率を記録するなど、静岡市が抱える重大な課題の一つです。静岡市の教育・福祉分野を盛り上げ、少子高齢化の課題解決に役立つビジネスプランを募集しました。
以上の3テーマの他にも、多文化共生やDX推進、ジェンダー平等など多様化・複雑化する静岡市の地域課題を解決に貢献し持続可能な社会の構築につながるさまざまなアイデアを募集しました。
インキュベーションコース
インキュベーションコースは、地域資源を最大限に活用しまちづくりを進めるために子育てと健康、アートとスポーツ、歴史文化など5つのテーマを元に、このテーマに共感し、魅力のあるまちづくりを目指すスタートアップや事業者を募集しました。このコースでは、起業を目指している方や、プレシード・シード期の企業を対象に、顧客課題の明確化やビジネスモデルの構築、MVP作成等のワークショップを行いながら、ビジネスアイデアをよりブラッシュアップさせます。
テーマ①子どもの育ちと長寿を支えるまちの推進
子どもから高齢者までが自分らしく活躍し、暮らせるまちを築くためのアイデアを募集しました。人口減少と少子高齢化に対応し、静岡市が将来も活気に満ちた場所となるよう、子どもの安心な成長環境や健康な生活環境の構築に焦点を当てています。
テーマ②アートとスポーツがあふれるまちの推進
このテーマでは、文化芸術とスポーツの力を結集し、国内外の活発な交流を促進するアイデアを募集しました。静岡市では演劇や音楽、伝統芸能といった文化芸術と、サッカーなどのスポーツが暮らしに深く根ざしています。これらを一層発展させ、まちづくりに生かしていく取り組みを進めます。
テーマ③城下町の歴史文化を守り抜くまちの推進
静岡市は静岡都心に位置する駿府城公園をはじめとして数多くの歴史資源を保有しています。このテーマでは、市民が歴史文化に誇りを持ち、愛することでまちの賑わいを増すアイデアを募集し、徳川氏などにまつわる歴史資源と都市機能が融合したこのエリアを活かして独自の城下町の特徴を生かした静岡市ならではのまちづくりを推進します。
テーマ④海洋文化を磨き上げるまちの推進
物流・人流の玄関口となる清水港を中心に、国際的な海のまちを実現するためのビジネスプランを募集しました。清水港は国際拠点港湾であり、コンテナ取扱量やクルーズ船入港数で国内有数であるとともに、大学・研究機関、そして三保松原などの観光資源も充実しています。これらのポテンシャルを最大限に生かし、「みなと」と「まち」を一体化させ、環境と経済が調和するまちづくりを進めます。
テーマ⑤森林文化を育てるまちの推進
静岡市の約80%を占める中山間地域の奥静岡は「オクシズ」の愛称で親しまれているように、豊かな自然と伝統文化と農林業の人々が共存している地域です。地域の魅力を活かし、安心して住み続けられる「オクシズ」の実現に向けたアイデアを募集しています。豊かな暮らしと自然環境の調和を追求し、まちの未来を築き上げていきます。
以上の5つのテーマ以外にも、みかん、わさび、お茶など静岡市の持つ特産物のブランド強化や、インバウンドの強化など、静岡市をさらに発展させるアイデアも募集されました。
Shizuoka City Acceleration Program 2023で得られるサポートと参加するメリットとは?
Shizuoka City Acceleration Program 2023で採択されるためには、書類選考や面談選考の選考ステップを通過する必要があります。選考基準としては、対象とする市場の魅力や規模・成長性や、ビジネスプランの新規性や実現可能性・収益性、熱意やチームワーク、最後に静岡という地域との親和性や相乗効果を含めて総合的に評価、採択が決定されます。
選考プロセスを経て採択された事業者・企業には、大学や金融機関、民間企業等の支援チームから様々なサポートを受けることができます。
採択後のサポート
- 事業創造における基本的な知識を学ぶ場の提供
- 各業界に精通した専門家等によるメンタリング機会の提供
- 実証実験の実施に向けた協力者の調整や交渉
- 販路拡大や資金調達等を目的としたネットワークや商談機会の提供
- プレスリリース等の配信によるPR機会の提供
- 静岡市内及び東京都(有楽町)に拠点を置くコミュニティスペースの利用機会の提供
静岡市という行政が主催するプログラムに採択されることで、社会的信用の向上に繋がり、活動場所の提供、このプログラムを通して静岡市だけでなく東京圏の支援者・企業、他プログラム採択企業などとの交流機会を得られるなど、先輩起業家や、VC、多様な専門家などから受けることができる幅広いサポートを通して得られるメリットも大きいです。
Shizuoka City Acceleration Program 2023の採択5社を事業内容とともにご紹介
今回開催されたShizuoka City Acceleration Program 2023では、総計60件の企業とビジネスプランが集まり、その中からインキュベーションコースに3社、PoC型アクセラレーションコースに2社、計5社が採択されました。
インキュベーションコース:株式会社GooZENラボ(静岡県)
インキュベーションコースで採択された株式会社GooZENラボは、就活生や求職者向けの企業紹介動画配信アプリを展開しています。30分の企業紹介動画を日替わりで配信し、企業や職場の雰囲気を周知する機会を提供することで、就活生や求職者は、やりたい仕事や自分に向いている仕事に出会えない、企業説明会では企業の表面的な内容しか知ることができない、地元で就職したいが地元の企業について知る機会が無いなどの悩みを解決することができます。また企業側は低価格で企業紹介動画を配信することができるため、掲載料が高い求人サイトに掲載することに負担を感じていたり、採用しても早期に離職してしまう採用水マッチなど採用分野の課題の解決に繋がります。
インキュベーションコース:ジオ・マーク株式会社(東京都)
ジオ・マーク株式会社は、目的に特化したデジタルマップをノーコードで作成する「GEOMARK MAP ENGINE」と、スポット情報を複数のユーザーで分散管理できるデータベース「GEOMARK Wiki DataBase」の2種類のクラウドサービスを提供しており、独自性の高いデジタル地図の製作・管理を可能にします。特定の用途・目的に特化した地図をノーコードツールで変換でき、スマホやPCを通じて、ユーザーにサービス提供できることが特長です。アプリのインストールが不要なWEBアプリのため、アクセス性が高く、これまで複数の自治体で採用実績があります。現在は、バスの運行状況等の情報を地図上に可視化するサービスを開発中で、移動と体験の価値を最大化することを目指しています。
インキュベーションコース:合同会社ノーエン(福岡県)
インキュベーションコースに採択された3社目の合同会社ノーエンは、農産物の生産から農業及び気象関連データの分析、気象データを中心とした農業向けシステム・アプリケーションの開発を行うアグリテック企業です。気象と農業を繋げるプラットフォーム「AgriC」や農作物生育状況を可視化させるアプリ「AgriClue」を展開しています。「AgriC」は現場に計測機器を置く必要がないため、面倒なメンテナンス作業が一切なく、アメダス等のオープンデータを利用して利用者の圃場にピンポイントで気象データを取得することができます。またAgriClueは、生産者のスマートフォンをセンサーに農業に必要な3つの情報である環境情報、管理情報、生育情報を記録し、記録したデータを気象情報と合わせグラフ化させることで生育の現在地を見える化することができます。これらのツールで真の農業DXの実現を目指しています。
PoC型アクセラレーションコース:リッパー株式会社(静岡県)
PoC型アクセラレーションコースに採択されたリッパー株式会社は、海洋環境を守るBXホワイトタイヤ実証実験事業を行っています。この企業はマイクロプラスチック問題(流出する微粒のプラスチックが海に流出することで海洋環境に影響を与える問題)に注目し、この問題を解決する低速モビリティ用のBXタイヤの研究開発に注力しています。リッパー株式会社が開発中であるタイヤは電動キックボードや電動アシスト自転車などのマイクロモビリティ用のタイヤで、耐摩耗向上および亀裂発生抑制で長寿命によるマイクロプラスチックの削減を目指しています。今後も新しい移動ツールのための環境素材開発を行い、人々の短距離の移動をおしゃれに、女性でも子どもでもお年寄りでも乗れるやさしいモビリティプロダクトづくりに貢献することを目指しています。
PoC型アクセラレーションコース:株式会社ジャパンサイクルリーグ(東京都)
Shizuoka City Acceleration Program 2023に採択された最後の企業は、子ども・シニア向けの新Eスポーツ事業を展開する株式会社ジャパンサイクルリーグです。この企業は、日本のサイクルロードレース文化をさらに豊かにすることを目標に、ジャパンサイクルリーグのロードレースを体感できるアプリを展開しています。このアプリではJCLのレース動画ライブラリーや、選手ドキュメントを楽しむことができ、また試合当日はレース開始前から生配信を見ることができます。さらにフィットネスバイクとアプリのVRを組み合わせたバーチャルレースも楽しむことができ、自宅で実際の競技ルートの走行を体験することが可能です。全ての機能を月額1,000円で利用することができます。
デモデイの様子
静岡市イノベーションデイ2023は、若者や市内企業の起業機運を醸成し、新事業創出を促進するイベント。2024年2月22日に、静岡市駿河区のあざれあで開催されました。内容は、アントレプレナーシップセミナーとShizuoka City Acceleration Program 2023のデモデイ(成果報告会)です。代表の髙地もアントレプレナーシップセミナーに登壇させていただきました。
終わりに
いかがでしたでしょうか?今回はEXPACTもサポーター企業として参画している静岡市が初めて主催するアクセレーションプログラム「Shizuoka City Acceleration Program 2023」について、プログラムのコースやテーマ、サポート内容や採択された企業についてご紹介いたしました。
このような産学官金連携の支援を得られるプログラムの開催が増えれば、日本のスタートアップの盛り上がりがより一層期待できますね。
EXPACTでは、特にスタートアップ企業への補助金活用や資金調達を強みとしており、実績・経験も多数ございます。
資金調達成功に向けてパートナーを探している方、詳しく話を聞いてみたいという方は、ぜひこちらからお問い合わせください。
EXPACTは静岡市において、スタートアップ支援を通じて地域の起業家たちの成長を促進しています。以下にその具体的な取り組みを示します。
具体的な支援内容
資金調達支援
EXPACTは、融資やベンチャーキャピタル(VC)、エンジェル投資家との連携を通じて、スタートアップに最適な資金調達手段を提供しています。これにより、起業家が資金面での不安を軽減し、事業に専念できる環境を整えています。
新規事業創出とDX推進
静岡市では、オープンイノベーションやデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を通じて、新たな価値創造を支援しています。これにより、スタートアップは地域資源を活用し、革新的なビジネスモデルを構築する機会を得ています。
人材育成とPR支援
スタートアップの成長に欠かせない人材の採用や広報活動を支援し、メディアリレーションやコミュニティの構築を行っています。また、地域の若者を対象にしたアントレプレナーシップ教育を通じて、次世代の起業家育成にも力を入れています。
地域課題解決型プロジェクト
「静岡版起業家発掘 TOMOLプロジェクト」などを通じて、地域課題の解決を目指す社会的事業を支援しています。このプロジェクトでは、若手クリエーターを対象にした起業体験合宿やメンタリングを提供し、彼らの情熱とアイデアを社会実装する手助けをしています。
インパクト
地域経済の活性化
EXPACTの支援を受けたスタートアップは、地域を超えて成長し、静岡市の経済活性化に寄与しています。これにより、静岡市がスタートアップにとって魅力的な拠点であることを証明しています。
社会的価値の創出
インパクト評価とインパクト投資を通じて、スタートアップが地域の社会的・環境的課題に対する効果的なアプローチを可能にし、持続可能な成長を支援しています。
EXPACTは、これらの取り組みを通じて、静岡市の未来を形作る重要な役割を果たし続けています。彼らの支援は、スタートアップの成功確率を高め、地域全体に新たな価値をもたらすことを目指しています。