新型コロナウイルスを発端とした緊急事態宣⾔により、売上急減に直⾯する企業の事業継続を⽀えるため、家賃負担軽減を⽬的として給付⾦を⽀給する制度が、令和2年度第2次補正予算案に盛り込まれました。約2兆円以上に上る大型支援となりそうです。
給付対象者
中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業者等であって、5月~12月において以下のいずれかに該当する者に、給付金を支給。
※「持続化給付金」の給付対象は、資本金の額もしくは出資総額が10億円未満、または資本の額などの定めがない場合は、常時使用する従業員数が2000人以下の法人。個人事業主はフリーランスなどを含んでいる。
①いずれか1カ月の売上高が前年同月比で50%以上減少
②連続する3ヶ月の売上高が前年同期比で30%以上減少
【更新】7月3日に経済産業省HPで家賃支援給付金に関するパンフレットが公開されました。
基本的には「今年(令和2年)5月以降売上が急減した事業主」となります。
以下の①②③を全て満たす事業者要件に該当する中小企業や小規模事業者、個人事業主(フリーランス)です。
①資本金10億円未満の中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者
②2020年5月~12月の間で、売上高が1カ月で前年同月比で50%以上の落ち込みがあったか、連続する3カ月の合計で前年同期比で30%以上の落ち込みがあった。
③自らの事業のために占有する土地・建物の賃料を支払っている。
給付額
申請時の直近の支払家賃(月額)に基づき算出される給付額(月額)の 6倍(6カ月分)を支給。また、複数の店舗を運営している場合などには、例外措置として中堅・中小企業は最大100万円、個人事業主は最大50万円まで引き上げます。賃料の3分の2に相当する額を中堅・中小企業はひと月当たり50万円、個人事業主は25万円を上限に、半年分、現金で支給します。
※飲食や小売の店舗に限らず事務所などオフィスの賃料も対象とします。
法人の場合
出典:経済産業省「令和2年度第2次補正予算案の事業概要」
個人の場合
個人事業者の場合、1カ月分の給付の上限額は50万円です。下図の通り、支払家賃(月額)37.5万円までの部分が2/3給付、37.5万円を超える部分が1/3給付になるため、支払家賃(月額)112.5万円で上限の給付額(月額)50万円になります。6カ月分では300万円が給付の上限額です。
出典:経済産業省「令和2年度第2次補正予算案の事業概要」
今から申請に向けて準備できること
経済産業省は第2次補正予算案の成立を経て来月下旬の受け付け開始を目指していて、原則オンラインでの申請とする方針です。既に実施されている「持続化給付金」では、2020年1月以降のいずれか1カ⽉の売上⾼が前年同⽉⽐で50%以上減少していることが、基本的な給付要件になっていますが、「家賃支援給付金」では2020年5月以降が基準となっている点に注意しましょう。
緊急事態宣言の休業要請等で、5月の売上が大きく減少した事業者は多いと思われます。まずは、昨年5月の売上高と本年5月の売上高とを比較してみましょう。
また、「持続化給付金」では、前年の月別売上高を、法人は「法人事業概況説明書2枚目」、個人事業者は「青色申告決算書2枚目」で確認しています。「家賃支援給付金」の詳細な申請要項等は未定ですが、「持続化給付金」同様に、「対象月の売上台帳等」「前年同月の売上高がわかる資料(法人事業概況説明書や青色申告決算書)」が手元に用意されているかを確認するとともに、「申請時の直近の⽀払家賃(⽉額)がわかる資料」(賃貸借契約書や家賃の支払・引落を証明する資料等)が手元にあるか確認しましょう。売り上げ台帳のほか家賃の契約書など必要な書類が多くなるため、審査期間が2週間程度とされている「持続化給付金」よりも長くなることが予想されるということです。
「家賃支援給付金」の事業は、今後国会で審議されるため、申請開始はどんなに早くても6月下旬以降、給付は7月以降になると思われます。都市部を中心に支払家賃の固定費負担は非常に大きいため、給付開始が遅れたとしても大丈夫なように、他の給付金・助成金、また、コロナ禍対策の融資制度等の活用によって、手元の資金が枯渇しないように準備しておくことが極めて大切です。
家賃の融資制度(実質無利子・無担保・元本返済の据置最大5年の融資
また、自民党の提言概要には「ハイブリッド型の家賃支援制度の創設」に触れており、日本政策金融公庫などによる実質的な無利子融資、民間金融機関の制度融資などを家賃向けに積極化することも提言されています。「特別家賃支援給付金」などを盛り込んだ第2次補正予算は5月中に閣議決定した後、今国会での成立をめざしています。
○ 実質無利子・無担保・元本返済の据置最大5年の融資
① 日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付 上限3億6000万円(無利子上限1億3000万円、当初3年間(※1)) ※ 上記の上限は公庫の国民生活事業と中小企業事業を併用した場合 (生活衛生関係営業者向け) 〇 生活衛生関係営業新型コロナウイルス感染症特別貸付 上限6000万円(上記と併用可能)(無利子上限3000万円、当初3年間(※1))
② 商工組合中央金庫の危機対応融資 上限3億円(無利子上限1億円、当初3年間(※1))
③ 民間金融機関による無利子融資 各都道府県等の制度融資:無利子上限3000万円、当初3年間(※2) (※1)・・売上減少要件(個人事業主5%減、小規模事業者15%減、中規模事業者20%減) (※2)・・売上減少要件(個人事業主5%減、小・中規模事業者15%減) (参考)賃貸借契約の考え方 【法務省民事局】
〇 日本の民法の解釈では、賃料不払を理由に賃貸借契約を解除するには,賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されて いることが必要です。最終的には事案ごとの判断となりますが, 新型コロナウイルスの影響により3カ月程度の賃 料不払が生じても、不払の前後の状況等を踏まえ、信頼関係は破壊されておらず、契約解除(立ち退き請求)が認 められないケースも多いと考えられます
※今後詳細が明らかになり次第、内容を随時更新します。