
スタートアップ・ベンチャー企業、また小規模事業者の皆様はテレワーク(リモートワーク)を導入されていますでしょうか。
今回の記事では、今さら人に聞くことができない「テレワーク」について解説していきたいと思います。テレワークとはそもそも何か?語源は?リモートワークとの違いは?日本でどれくらい浸透しているの?といった疑問を解決していきたいと思います。さらに、政府によるテレワークやそれに伴う地方移住の制度・助成金についても触れていますので、まだ導入していない企業様はぜひ検討してください。
そもそもテレワークとリモートワークの語源は?違いは?
テレワークの”tele”は「遠隔の、遠方の」という意味です。”telework”で「遠隔で働く、遠方で働く」を意味しています。
テレワークの起源は、1973年にアメリカの物理学者 Jack Nilles 氏が自宅から作業を行ったことを「テレコミューティング(telecommuting)」と呼んだこととされています。また、1990年代からアメリカでは石油ショックや大気汚染対策としてテレワークが推進されてきました。オバマ政権下で2010年12月に制定されたテレワーク推進法(Telework Enhancement Act)では、”telework”を「指定された勤務地の職場以外の承認された場所から従業員が職務・責任を果たせるようにするための柔軟な勤労形態」と定義しています。
英語の似ている言葉との使い分けについても解説すると、”telework”はあくまでも「オフィスでの勤務がメイン」であることを指します。それ以外ですと、”remotework” (リモートワーク)は「オフィス以外での勤務がメイン」、”telecommute”は「通勤時間0」、”WFH(work from home)”は「在宅勤務」を意味しています。
日本では、1984年にNECが吉祥寺にサテライトオフィスを設けたことで、テレワークが導入されました。その後、1990年に通商産業省が分散型オフィスの推進委員会を設置、翌1991年には日本テレワーク協会が設立されました。国や自治体は”テレワーク”で統一していて、「テレワーク」を「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義しています。
ちなみに”テレワーク”と”リモートワーク”の違いがわからない方もいらっしゃると思いますが、日本では明確な意味の違いはありません。国や自治体は”テレワーク”で統一しているのに対し、IT業界やベンチャー界隈では”リモートワーク”の方がよく使われています。
日本では、従来、仕事を中心とした生き方が主流でしたが、新型コロナウイルスの影響で働き方が大きく変化し、「ワーク・イン・ライフ」という考え方も普及しつつあります。
「ワーク・イン・ライフ」とは、仕事と人生を切り離すのではなく、人生の中で仕事を組み込んで調和させる新しい働き方の考え方です。これまでのワークライフバランスを超えた概念として、人生の目標を達成するための手段としての仕事という「ワーク・イン・ライフ」の考え方も注目されています。
ワーク・イン・ライフを具体的に取り入れ、社員が働く時間や場所を自由に選択できる人事制度を設計している企業もあります。
テレワークの方法
テレワークの方法は大きく3つあります。
1.在宅勤務
自宅のインターネット環境を利用して働く方法です。介護や育児などをしながら仕事をしたい方に向いています。ただ、プライベートとの切り替えが苦手な方や、自宅の周辺環境に問題がある方には向いてないかもしれません。
2.モバイルワーク
自宅以外のインターネット環境を利用して働く方法です。近年、ホテルやカフェ、公共交通機関などでインターネット環境が整備されてきて、いつでもどこでも働くことができるようになってきています。営業職など出張や外出が多い方は、移動や空き時間を有効活用できるため向いています。懸念点としては、持ち運べる機器や書類は限られていることや、セキュリティにリスクがあることです。
3.サテライトオフィス・コワーキングスペース
サテライトオフィスやコワーキングスペースへ移動して働く方法です。インターネット環境や周辺環境も整備されていますし、大抵アクセスしやすい場所にあります。
サテライトオフィスとは、「企業本社や、官公庁・団体の本庁舎・本部から離れた所に設置されたオフィス」のことです。サテライトオフィスは会社で契約するため、大企業に多いです。
コワーキングスペースと呼ばれる「共用のワークスペース」を個人で契約して仕事をするという人も増えています。コワーキングスペースは個人で契約することから、スタートアップ・ベンチャー企業・小規模事業者の方に多いです。
またハイブリッドワークという言葉も存在しています。ハイブリッドワークとは、従来のオフィスでの勤務と自宅やシェアオフィス、コワーキングスペースなどの場所でのリモートワークを組み合わせた新しい働き方です。
ハイブリッドワークは、週のうち数日は出社して残りの日は自宅やリモートワークで働くことが可能で、ライフスタイルや環境に合わせた柔軟な働き方が可能です。また、ハイブリッドワークでは、出社、在宅勤務、コワーキングスペースなど、働く場所を自由に選択することができます。
ハイブリッドワークは、企業が社員に柔軟な働き方を提供することで、生産性向上や従業員のワークライフバランスの改善を目的としているケースが大半です。マイクロソフトなど多くの企業が、ハイブリッドワークを導入することで、従業員エクスペリエンスの向上や、より柔軟な職場環境の提供を目指している。
ハイブリッドワークには、出社日と在宅勤務の組み合わせ、フレックスタイム制、テレワーク・オフィスの組み合わせ、会議の日のみ出社が可能など、様々な働き方を選択可能です。マイクロソフトでは、リモートワークは勤務時間の50%までとしており、ハイブリッドワークについて明確なポリシーを示している。(参照:https://blogs.windows.com/japan/2021/)
日本のテレワークの現状は?テレワークをするべき理由とは?
テレワークが定着するなか、本社など主要拠点を都市部から地方に移転・分散する動きが急速に進んでいます。こうしたなか、首都圏から地方へ本社を移した企業の数は昨年351社となり過去最多、首都圏として11年ぶりの転出超過となりました。
PR TIMES掲載の「首都圏・本社移転動向調査(2021年)」によると、
- 2021年に本社移転を行った企業は、全国で2258社。このうち、首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)から地方へ、本社または本社機能を移転した企業は351社判明、前年から2割超の大幅増加となった。転出企業が300社を超えるのは2002年以来19年ぶりで、これまで最多だった1994年の328社を大幅に上回り、過去最多を更新した。
- 地方から首都圏へ本社を移転した企業は328社。この結果、2021年における首都圏の本社移転動向は、転出社数が転入を23社上回る「転出超過」となった。首都圏で転出超過となるのは2010年以来11年ぶり。
- 首都圏からの移転先では、最も多いのは「大阪府」の46社。「北海道」は33社で、コロナ前の19年(7社)から約5倍に急増した。首都圏から北海道への移転社数としては過去最多となる。
- 首都圏への移転元では、最も多いのは「大阪府」の67社。首都圏からの転出企業を売上高規模別にみると、最も多かったのは「1億円未満」(176社)で、多くが小規模な企業だった。なかでも、5000万円未満の小規模企業、設立間もないスタートアップの割合はコロナ前を大きく上回る。
テレワークが普及・浸透したことでオンライン上でも業務可能となった企業(特にスタートアップ・ベンチャー企業・小規模事業者)では、首都圏におけるオフィス維持のメリットが薄れるなど、前向きな移転需要が増えています。また、研究開発型のスタートアップを中心に、研究施設の拡大などを目的として首都圏外に移転するケースもありました。今後も、多様な働き方を取り入れる企業が多いIT産業やスタートアップをはじめ、比較的移転が容易な小売業やサービス業といった企業では、首都圏外を有力な候補地として移転の検討や計画策定などの動きが活発化すると見られています。そのため、スタートアップ・ベンチャー企業・小規模事業者は今こそテレワークを検討するべきです。
政府は「集中から分散へ」を新たな政策の柱に掲げています。少子高齢化・人口流出に悩む地方の活性化につなげる目的で、政府や自治体による移転の優遇税制や補助金といった支援策が打ち出されています。地方への移住や企業移転に向けた具体策に取り組むほか、自治体によるサテライトオフィスや住居の整備、休暇先からリモートワークをする「ワーケーション」の誘致など、支援内容も多様化。これまでのまとまった工業団地の整備や助成金といった「モノ・カネ」中心の企業誘致策から、「働く“ヒト”」に焦点を当てた受け皿の整備が各地で進んでいます。
地方創生テレワーク推進運動
弊社は、内閣府・内閣官房が推進する「地方創生テレワーク推進運動」の趣旨に賛同しています。詳しくは以下の記事をご覧ください。
その他テレワークに関する制度
政府主導のテレワークにやそれに伴う地方移住に関する制度は以下の通りです。これ以外にも自治体ごとに行っているものもありますので、詳しく知りたい方はこちらからお問合せください。
人材確保等支援助成金(テレワークコース)
厚生労働省が主導の助成金です。良質なテレワークを制度として導入・実施することにより、労働者の人材確保や雇用管理改善等の観点から効果をあげた中小企業事業主が助成対象となります。
支給対象となる経費
- 就業規則・労働協約・労使協定の作成・変更
- 外部専門家によるコンサルティング
- テレワーク用通信機器等の導入・運用
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修
受給額
機器等導入助成と目標達成助成において、下表のとおり支給されます。
助成 |
支給額 |
機器等導入助成 | 1企業あたり、支給対象となる経費の30% ※ただし以下のいずれか低い方の金額を上限とする。 ・1企業あたり100万円 ・テレワーク実施対象労働者1人あたり20万円 |
目標達成助成 | 1企業あたり、支給対象となる経費の20% <生産性要件を満たす場合35%> ※ただし以下のいずれか低い方の金額を上限とする。 ・1企業あたり100万円 ・テレワーク実施対象労働者1人あたり20万円 |
参考:厚生労働省
移住支援金/地方移住金
内閣官房・内閣府が主導の支援金です。移住直前の10年間で通算5年以上、東京23区に在住または通勤していた人が地方に移住し、就業や起業する場合、地方創生「移住支援金」「起業支援金」が支給されます。2021年度からは、テレワークで東京の仕事を続けながらでも支給されることになりました。移住は最大100万円、社会的事業で起業すると最大200万円を合わせて最大300万円が支給されます。
デジタル田園都市国家構想推進交付金
内閣府地方創生推進室が主導の交付金です。デジタルを活用した、意欲ある地域による自主的な取組を応援するため、デジタルを活用した地域の課題解決や魅力向上の実現に向けて、国が交付金により支援しています。IT企業、スタートアップ・ベンチャー企業の方々はぜひ地方移住をご検討してみてください。
まとめ
今回はテレワークについて、徹底解説させていただきました。ぜひスタートアップ・ベンチャー企業・小規模事業者の方々は検討してください。テレワークに関する補助金・助成金について詳しく知りたい方は気軽にお問い合わせください。
EXPACTでは、特にスタートアップ企業への補助金活用や資金調達を強みとしており、実績・経験も多数ございます。資金調達成功に向けて、パートナーを探している、また詳しく話を聞いてみたいという方はお問い合わせください。