ソラコムの成功事例
ソラコムは2017年にKDDIの傘下に入り、2024年に独立上場を果たしました。この成功は、スイングバイIPOの効果を如実に示しています。2022〜23年の市況は厳しく、同社は一度IPO申請を取り下げる事態に直面しました。しかし、KDDIの信用力があったことで、最終的に上場を実現することができました。
KDDIの子会社となって以降、ソラコムは急成長を遂げ、IoTの契約回線数は2年で10倍の100万回線を突破し、2023年末には600万回線に到達しました。大手企業の一員となったことで信用力が増し、大口顧客の獲得にも成功しました。
今後のソラコムの成長を占う上で鍵となるのがグローバル展開です。すでに海外売上比率は3割を超えており、数年内に過半を目指しています。スイングバイIPOを経験したソラコムは、買収はもはや脅威ではなく、むしろ飛躍のチャンスと捉えています。
yutoriのスイングバイIPOの事例
yutoriは、2018年4月に設立された人材紹介サービスを提供するスタートアップです。2020年7月にZOZOと資本業務提携を結び、その後急成長を遂げました。
片石社長の経歴と成果
yutoriの片石貴展社長は、スイングバイIPOの成功例として注目を集めています。片石社長は、アパレル企業として最短での上場を果たし、また社長としても最年少での上場を実現しました。
- 1993年12月25日生まれの30歳
- 2018年4月にyutoriを創業
- 2020年7月にZOZOと資本業務提携を締結
- 2023年12月27日に東京証券取引所グロース市場に上場
yutoriの成長過程
yutoriは、設立からわずか2年3ヶ月でZOZOと資本提携し、そこから3年5ヶ月後に上場を果たしました。
- 2018年4月: 設立
- 2020年7月: ZOZOと資本業務提携契約を締結
- 2023年12月: 東京証券取引所グロース市場に株式上場
yutoriの成長戦略
片石社長は、yutoriの今後の戦略について以下のように述べています:
- 「日本で一番ブランドを持つ会社になりたい」
- 1年で10ブランドずつ増やし、5年後には70ブランドを目指す
- 多面的なコミュニティの熱量と偏愛を内包する会社を目指す
ZOZOとの提携によるメリット
ZOZOとの資本業務提携により、yutoriは以下のような恩恵を受けました。これらの要因が、yutoriの急速な成長と早期上場の実現につながりました。
- 信用力の向上
- 資金調達の円滑化
- 事業拡大のための支援
- 人材や技術などのリソースへのアクセス
スイングバイIPOの成功例としてのyutori
片石社長は上場会見で「やったぜ。好きなことを、好きな人とやってきた。その結果、資本主義ど真ん中の”上場”を達成できた」とコメントし、今後の成長への意欲を示しました。また、10年後の目標として「アパレルのなかで時価総額トップ5に入っていきたい」と述べ、数値的な目標も掲げています。
yutoriの事例は、大企業との提携を通じて成長し、その後独立上場を果たすというスイングバイIPOの典型的な成功例と言えます。ZOZOという「大きな惑星」の引力を利用して加速し、最終的に独立した企業として市場に登場しました。
この事例は、スタートアップが大企業との戦略的提携を通じて成長を加速させ、同時に独立性を維持しながら上場を目指すという新しい成長モデルの有効性を示しています。
yutoriの成功は、ソラコムの事例と並んで、日本におけるスイングバイIPOの代表的な成功例として注目されています。今後、この手法を採用するスタートアップが増加する可能性があり、日本のスタートアップエコシステムに新たな選択肢を提供しています。
片石社長の事例は、若手起業家がスイングバイIPOを活用して急成長を遂げた好例として、今後のスタートアップ業界に大きな影響を与える可能性があります。
カンムのスイングバイIPOの事例
カンムの概要
カンムは2011年に八巻渉氏が創業しました。同社はスマホでチャージと支払いが完結するVisaプリペイドカード「バンドルカード」や、資産形成に活用できるクレジットカード「Pool」などの金融サービスを提供しています。
カンムの成長
カンムは2018年にフリークアウト・ホールディングスとの資本業務提携を結び、2023年には三菱UFJ銀行の連結子会社となりました。現在、MUFGのもとでスイングバイIPOに向けて歩みを進めています。
八巻氏は「データ×金融」で起業したものの、最初のプロダクトは成功せず、いくつかの事業を試しては断念する経験を積みました。しかし、プリペイドカード「バンドルカード」を成功させることで、M&Aによる成長の道を切り開きました。M&Aを通じて、フリークアウト・ホールディングスや三菱UFJ銀行との連携を深め、資金繰りやビジネスモデルの課題を解決しました。
スイングバイIPOを目指すカンム
三菱UFJ銀行の子会社化を発表した際、カンムは100%の買収ではなく、将来的なIPOを見据えた資本政策であることを示唆しました。MUFGのもとでスイングバイIPOに向けて歩みを進めており、このExitのゴールを持つことで、純粋なM&Aバリュエーションではなく、IPO Exitを想定した価値評価がなされています。
カンムの評価額と今後の展望
2023年、MUFGが250億円の評価額でカンムを子会社化しました。スイングバイIPOを経験したソラコムの事例に続き、カンムも第2、第3の事例となることが期待されています。大企業との連携を活かしながら、さらなる成長を遂げ、最終的には独立上場を目指しています。
カンムの事例は、スタートアップが大企業との資本業務提携やM&Aを通じて成長し、最終的にはスイングバイIPOを目指すという新しい成長モデルを示しています。八巻氏の経験や資本政策からは、スタートアップ経営者がM&Aを活用して事業の課題を解決し、成長を加速させる方法を学ぶことができます。今後、カンムがソラコムに続くスイングバイIPOの成功事例となるかどうか、その動向が注目されます。
スイングバイIPOの他の成功事例
ソラコム以外にも、スイングバイIPOを用いた成功事例がいくつかあります。以下にいくつかの事例を紹介します。
1. Arm Holdings
買収元: SoftBank
再上場: 2023年9月、NASDAQ
英国の半導体設計会社Arm Holdingsは、2016年にSoftBankによって買収されました。SoftBankの支援を受けて事業を拡大し、2023年9月にNASDAQへの再上場を果たしました。この再上場は、Armの技術革新と成長を加速させるための重要なステップとなりました。
2. VMware
買収元: EMC Corporation
再上場: 2007年8月、NYSE
仮想化ソフトウェアのリーダーであるVMwareは、2004年にEMC Corporation(現Dell Technologies)に買収されました。買収後、EMCの傘下で急成長を遂げ、2007年8月にNYSEに再上場しました。この再上場により、VMwareは独立した企業としての地位を再確立しました。
3. Seagate Technology
買収元: Private equity consortium led by Silver Lake Partners
再上場: 2002年12月、NASDAQ
ハードディスクドライブメーカーのSeagate Technologyは、2000年にシルバーレイク・パートナーズを中心とするプライベートエクイティコンソーシアムによって買収されました。買収後、Seagateは事業を再編し、2002年12月にNASDAQに再上場しました。この再上場は、同社の経営基盤を強化する重要な転機となりました。
4. Alibaba.com
買収元: Alibaba Group
再上場: 2014年9月、NYSE
中国の電子商取引企業Alibaba.comは、2007年に香港証券取引所に上場しましたが、2012年に親会社のAlibaba Groupによって買収されました。再編後、Alibaba Groupは2014年9月にニューヨーク証券取引所(NYSE)に再上場し、史上最大のIPOを達成しました。
5. Dell Technologies
買収元: Michael Dell and Silver Lake Partners
再上場: 2018年12月、NYSE
Dell Technologiesは、2013年にMichael Dellとシルバーレイク・パートナーズによる買収で非公開企業となりました。その後、企業の再構築と成長を経て、2018年12月にNYSEに再上場しました。この再上場は、Dellの新たな成長フェーズの始まりを示しています。
これらの事例は、スイングバイIPOが企業にとって成長と拡大の機会を提供する効果的な手法であることを示しています。大企業の支援を受けながらも、最終的には独立して再上場することで、さらなる飛躍を遂げることができます。
まとめ
スイングバイIPOは、スタートアップM&Aの手法の一つとして、その可能性を広げています。スタートアップと大企業が協力し、イノベーションを加速させるこの手法は、今後も多くの成功事例を生み出すことでしょう。ソラコムやカンムの今後の戦略から目が離せません。彼らの更なる飛躍が、日本のスタートアップシーンに新たな風を吹き込んでくれることでしょう。
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