スタートアップ、平均年収700万円超え 上場企業上回る
2023年12月13日の日経新聞に上記タイトルの記事が出ました。いまやスタートアップは給与を犠牲にしてやりがいや社会的意義を取りに行くものではなく、社会貢献を行いながらしっかりと稼ぎを得るものとなっていきそうです。この記事ではスタートアップの給与事情についてまとめました。
日本のスタートアップの調達環境は堅調に推移か?
2022年〜2023年初旬にかけて世界的に見るとスタートアップを含むハイテク銘柄の景気減速懸念から株価も軟調に推移しているものの、日本のスタートアップにおける資金調達環境はそれほど減速感は、まだ見られてはいません。
<Initial: Japan Startup Finance Report 2022h1>
足元では、昨年度に匹敵するペースで資金調達が進んでおり、概ね8,000億円程度の市場規模と推定される一方で、調達社数は減少しており、調達できるスタートアップは年々選別されており、1社が大型の資金調達を行うケースが増えています。
スタートアップの人財獲得競争は激化
そうした資金調達環境の中、スタートアップ同士の競争環境も激化しており、新たな市場における事業の成功は時間との戦いとなっており、そのためスタートアップの人材獲得競争もヒートアップしています。
そうした背景からスタートアップ従業員の給与水準も改善傾向にあり、スタートアップと大手企業の給与格差がなくなりつつあります。そのため、大手企業からスタートアップへの転職が急速に伸びており、加えて、有名大学を卒業した若手や一流企業出身のエリートサラリーマンがスタートアップの社長やCxOになる流れも加速しています。
岸田政権も労働市場の改革に本腰を入れており、年功的な職能給の仕組みを、個々の企業の実情に応じてジョブ型の職務給中心の日本に合ったシステムに見直していくことで労働移動を円滑化し、高い賃金を払えば高いスキルの人材が集まり、その結果労働生産性が上がり、さらに高い賃金を払うことができるというサイクルを生み出していく戦略を掲げています。人的資本経営が重視されるなど、政府の後押しもあり「人への投資」が加速していく見込みであります。
実際、経営資源が限られるスタートアップの中で即戦力を求める企業は多い。加えて最近では新卒を積極的に採用する動きも目立ってきており、若者にとって事業展開や意思決定のスピードや経営幹部との距離感の近さも魅力的に映ります。
スタートアップの給与水準が上場企業を上回る
日本経済新聞社が行った2022年「NEXTユニコーン調査」では、NEXTユニコーン調査に回答した184社のうち、77社が正社員の平均年収の21年度実績や22年度見通しなどを開示しました。
回答企業の21年度の平均年収は650万円(20年度比8%増)、上場企業の平均を45万円(7%)上回る水準となった。22年度見通しはさらに30万円多い680万円となっています。
184社に優秀な人材を獲得するための施策を複数回答で聞いたところ、101社が「報酬の引き上げ」を挙げた。「パーパス・ミッション・バリューの共有」(132社)に次ぐ2番目の多さだった。手厚い待遇や高い給与水準が人材獲得の手段として定着しているといいます。
東京商工リサーチの調査によると、上場企業3213社の平均年収は21年度に2%増の605万円だったことから、スタートアップが上場企業を45万円上回ったことになります。
上場企業の平均年齢は40歳台であり、スタートアップの平均年齢は30歳台の企業も多く若手でも実力があれば高待遇が得られるチャンスがあると言えます。
一方で、スタートアップは離職率が高いケースもあり、雇用や給与の安定性は大企業ほど保証されていません。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC28A4K0Y3A121C2000000/
ITや医療、財務など専門性の高い職種の給与が高い
平均年収の増加ペースが鈍い上場企業に対し、スタートアップは平均給与の伸びが目立っています。平均年収が高いスタートアップをみると、医薬関連やソフト関連が多かった模様です。
医薬業界やソフトウエア関連のスタートアップでは、好待遇で優秀な専門性の高い人材の獲得を狙う動きが目立っています。しかし、高い報酬を維持するには、獲得した人材をうまく活用した収益力向上が課題になります。
またスタートアップの場合、投資銀行や証券会社などの金融機関での勤務経験があり、IPOを見据えたエクイティストーリーを描けるCFO人材やバックオフィスのポジションも人が足りていません。大手企業の経理や財務、法務などの経験がある人材もスタートアップへの転職が増えています。
スタートアップの採用人数も増加傾向にある
日本経済新聞社の「NEXTユニコーン調査」によると2022年度の合計採用計画数は前年度に比べ22%増の3561人でした。中途人材を求める傾向が強く、加えて新卒採用ニーズも高まっています。23年度計画は22年度に比べ8%増の3,860人となっています。
スタートアップへの転職は、事業の新規性や裁量の大きさが魅力でありますが、年収の低下がハードルになるケースが多いのがこれまででした。待遇面の改善が続けば、日本の課題として指摘されてきた人材の流動性向上やレガシー産業のDXにつながる可能性もあります。
参照記事:スタートアップ年収、上場企業を7%上回る 650万円(NEXTユニコーン調査)
まとめ
安定した大企業からスタートアップへの転職は、かなりの覚悟が必要です。また、大企業での経験を生かしながら即戦力で働けるスタートアップを探すのも一苦労です。
しかし、自らの成長を志向する若手の中にはスタートアップへ挑戦する人も増えています。30代は、家族を持っているため転職したくても転職できない若手サラリーマンの相談も多く受けます。
そのため、20代のうちにスタートアップを一度経験したいと新卒や第二新卒でスタートアップへ転職するケースも増えています。