大企業等人材による新規事業創造促進事業(出向起業補助金)とは
大企業等の人材が所属企業を辞職せずに外部資金の調達等により自らスタートアップを起業し、その立ち上げたスタートアップ企業に出向等を通じて当該スタートアップで行う新規事業「出向起業」が支援されます。 ⼤企業内では育てにくい新事業を社員が辞職せずに資⾦調達を経て起業し、出向を通じて新事業を開発する補助⾦となります。
2024年1月25日の日経新聞の記事では、その実際の成果や働き方が紹介されており、スタートアップの新形態として今後も注目が集まります。
令和5年度の募集は終了しております。※令和6年度の募集については発表次第更新いたします
https://co-hr-innovation.jp/wpcms/wp-content/uploads/2020/12/gaiyousetsumei_202007.pdf
現在、経済産業省は、新規事業創出に係るリソースの⼀つである⼈材に着⽬して、⼤企業等の⼈材が新規事業創出に挑戦することができる「出向起業」を後押しするための⽀援を⾏っています。「出向起業」は社員のセーフティーネット(収⼊、福利厚⽣等)が確保された状態で新規事業創出に従事することができる仕組みであり、同時に⼤企業等としても外部資⾦を活⽤して新規事業を試すことができる点にメリットがあります。
これまで十分に活用されてこなかった、大企業・既存企業の経営資源(人材・知財含む)の開放を促し、新規事業に係る経営人材育成、新規事業創造を促進する観点から、令和元年度補正予算事業「大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金(中小企業新事業創出促進対策事業)」を通じて、こちらに出向起業の手引きなども公開されています。手引きには、「出向起業とは何か」を紹介するとともに、「出向起業」を行うにあたり想定される障壁とその解決策や先行事例が提示されており、作成には弁護士や公認会計士の監修が入っています。
大企業の課題
⽇本では、ヒト・モノ・カネのリソースは、⼤企業に集中しています。
新型コロナ感染症の影響により、⼤企業等による新規事業へのリソース投下や⼤企業⼈材個⼈による起業が実現しにくくなる兆候が⽣じており、新規事業創出機会が減少する可能性が指摘されています。新規事業創出の担い⼿の数的増加を⽀援する必要があるという背景もあります。
一方で⼤企業の環境は、⼤企業⼈材による新事業創出には必ずしも向いているわけではありません。
⼤企業⼈材⾃⾝がフルタイムで新事業を創出する場には、類型があります。
新しい起業⼿段としての”出向起業”、それは出向の状態で起業し、⼤企業の管理から離れる類型が、⼤企業⼈材による新事業 創出のための、⼀つの最適な環境である可能性。
新規事業創出機会が急速に減少する可能性を踏まえ、低リスクな起業である出向起業を⽀援し、新規事業創出の担い⼿の数的増加を誘起する必要。
出向起業のメリット
①独立のために退職しなくてよい
出向起業は大企業に籍を置きながら新規事業創出ができるようになることから、社員が独立のために退職しなくても良いというのがまず大きなポイントです。これによって収入も安定し、福利厚生などのセーフティネットを確保しながら挑戦ができるようになります。心理的安全性なども確保して独立・起業が出来る点はこれまでになかった新しい形態とも言えます。
②決裁権を持って経営することができる
出向起業で補助を受けるためには出向元企業からの出資が20%未満でなければならないため、経営判断などの決定権を出向元企業によって大きく左右されない=自由度が高く経営に携わることができます。
③新規事業創出ができる
いま、大企業の新規事業創出は活発になってきています。既存事業に寄りかかることなく多くの収益の柱をつくりだし、企業の成長を促すにあたって有益に使える制度です。
公募要件
自社内では新規事業に挑戦できる環境・機会が得られにくい課題が存在する大企業などに所属している人材が、自社の通常業務から切り離して新規事業創造に挑戦する取り組みのなかで、下記を満たすもの。
- 新規事業創造を行うために、大企業等に所属する人材が、所属元企業以外の資本(経営者の個人資本含む)を80%以上活用して会社を設立すること。(所属企業が保有する新会社の資本の比率が議決権ベースで20%未満であること)
- 大企業等に所属する人材が、自ら設立した新会社への出向等によりフルタイムで経営者として新規事業創造に向けた実務に従事すること。
- 設立した新会社および出向等により従事する経営者に対しては、そのまま独立する、または所属企業へ戻る(買い戻される)計画・オプションが用意されていること。
公募について
【一般枠】
補助率:1/2
補助上限額:500万円~1,000万円(注1)/件
※注1 ハードウェア開発を伴う事業の場合
条件
・⼤企業⼈材が所属⼤企業を辞職せずに⾃ら起業し出向するスタートアップであること
・当該スタートアップの議決権のうち、当該出向者の出向元⼤企業が有する議決権⽐率が20%未満であること 等
【MBO企業枠】
補助率:2/3
補助上限額:2,000万円/件
補助対象事業者:MBO型企業を2022年1月以降に実施、または2022年10月までに実施する計画がある事業者であること等
条件
・⼤企業等が新規事業創造を⽬的として設⽴した⼦会社・ジョイントベンチャー・関連会社等であったこと
・MBO等により、当該⼤企業等が有する議決権⽐率を20%未満に減少させること
・MBO等により経営に参画する者に、当該⼤企業等から出向等をしていた者が含まれること 等
※ 当該取組を補助対象事業とする際は、当該経費を負担する主体(経営に参画する個⼈またはその者が設⽴する特別⽬的会社等)との共同申請等とする必要があるため、
予め事務局に相談すること。なお、当該費⽤を⼤企業等が負担する場合は、補助対象にはならない
採択企業
本支援事業開始前は、創設が確認されていた出向起業スタートアップは数社程度でしたが、令和2年4月の事業開始以来、出向起業によるスタートアップの創設を促進し、徐々に、大企業等が人材を出向起業に拠出する動きが広がっています。
採択事業者名 | 出向元企業名 | 事業内容 |
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株式会社レジリエンスラボ | 株式会社明電舎 | 企業向け非常用電源・燃料等の備蓄シェアリング |
株式会社zooba | 株式会社ディー・エヌ・エー | クラウドサービスのライセンス一括管理サービス |
株式会社ウィズカンパニー | 株式会社ディー・エヌ・エー | アプリ連動型オンラインパーソナルトレーニングサービスの運営 |
株式会社Mobirta | 株式会社デンソー | シェアリング・レンタカーの軽微なキズを検出証明するセンシングシステム開発・データ収集 |
株式会社Officefaction | 株式会社ジェイアール 東日本企画 | オフィスの遊休資産(空きスペース)とコンテンツ事業者をつなげるプラットフォーム |
eyeForklift株式会社 | 富士通株式会社 |
事業者名 | 補助事業の名称 |
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株式会社GAZIRU | 画像認識サービスによる商品トレーサビリティ実証事業 |
株式会社休日ハック | 休日行動変容実証事業 |
株式会社CyberneX | イヤホン型脳波計の用途開発に向けた実証事業 |
株式会社トイエイトホールディングス | 才能分析システム実証事業 |
株式会社TRULY | 女性の「更年期や閉経」に寄り添う、オンライン相談プラットフォーム |
事業者名 | 補助事業の名称 |
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株式会社EMOSHARE | いま湧きあがるキモチのキャッチボールフィールド “EMOSHARE” |
株式会社Every Buddy | ミュージカルライフサポーター |
サイトロニクス株式会社 | 再生医療向け細胞培養プラットフォーム開発事業 |
株式会社CyberneX | Ear Brain Interface技術におけるUX向上施策の実証事業 |
SpoLive Interactive株式会社 | 競技団体向けファンエンゲージメント強化支援事業 |
ターンザタイド株式会社 | 中小企業の財務内容改善・新規ビジネス・SGDs等に関する支援事業 |
Blue Farm株式会社 | 企業のESG対応を促進するお茶栽培環境提供事業 |
Life Ship株式会社 | 派遣社員向け評価/福利厚生システムの実証事業 |
株式会社リアコネ | メーカーと生活者をつなぐ、商品ロス削減に向けた販売支援サービス |
株式会社リバース | バスで創る新たな移動空間サービスの提案 |
株式会社LAWN | デジタルの力でプレーヤーと施設をつなぐテニスプラットフォーム事業 |
まとめ
新規事業に挑戦したいと思いつつ大企業のなかでくすぶっている人材が「出向起業」という形で会社を設立し、資本独立性のあるスタートアップとして活動していけるよう支援する仕組みを提供することで、大企業の新規事業創出を促進しようと経済産業省が取り組んでいます。従業員でありながら、起業と言う形で経営を実践することによって経営者としてのマインドやなども育てられるため、将来の人材確保や育成と言う意味でも有益と感じられます。これをきっかけに新規事業のアイデア募集や、社内リソースの洗い出しなどを行い、起業家マインドを育てるところから実践していきましょう。
スタートアップの資金調達環境としては、まだまだ十分に整備が整っているわけではありませんので、こうした手段も選択肢として認識しながら、社会課題の解決を推進するスタートアップが多く輩出されることを期待したいですね。起業後にも使える補助金も多々ありますので、外部調達に加えて補助金なども有効活用することで事業の成功確率を高めていきましょう。
EXPACTはスタートアップ企業への補助金活用や資金調達を強みする企業です。実績・経験も多数ございます。
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