
1. 交渉の経緯(タイムライン)
2025/4/2:米政権が「相互関税」を宣言(大統領令14257)。後に基準率や国別率の調整を示唆。The White House
2025/7/23:ホワイトハウスが日米戦略的通商・投資合意のファクトシートを公表。日本からの輸入は原則15%、日本の対米投資5,500億ドル、日本市場での米製品アクセス拡大を明記。自動車は米側の関税低減が柱。発表当日、日本の自動車株が上昇。The White HouseReuters
2025/7/31:**「相互関税のさらなる修正」**を発令、日本=15%を付表で明示。適用開始は8/7(一部経過措置)。The White House
2025/8/7以降:適用段階で二重課税(既存関税+15%)の解釈が問題化。日本側の働きかけで重複適用の是正・返金方針を米側が示唆。米紙は文書化不足を指摘。ReutersThe Washington Post
足元の業界ムード:製造業景況は改善も先行きは慎重、企業の7割超が合意を概ね評価との調査。Reuters+1
2. 合意の骨子
関税率:日本からの原則15%。**自動車は27.5%→15%**に引き下げ(従来MFNは2.5%)。**鉄鋼・アルミは50%**が継続。The White HouseReuters+1
投資パッケージ:日本が**5,500億ドル(約80兆円)**の対米投資枠を供給する新スキーム。The White House
市場アクセス:米側の主張を受け、日本の農産品受け入れ拡大や自動車規格面の開放などを打ち出し。The White House
注:発表から適用にかけて運用細目の不一致が生じ、日米で調整が継続。実務では適用開始日・品目別扱い・重複課税の有無を最新告示で要確認。ReutersThe Washington Post
3. 主要セクターへの影響
項目 | 主な影響 |
---|---|
自動車・部品 | 15%で確定。直前の**27.5%(2.5%+25%)**からは低減だが、**旧来2.5%**に比べれば負担増。価格競争力・利益率に下押し。現地生産・価格転嫁・サプライ網再編が論点。Reuters |
農産品 | 日本の一部市場開放で米農産品の流入増。国内農家は価格下落・シェア侵食リスク、需給調整と高付加価値化が課題。The White House |
鉄鋼・アルミ | 50%関税が継続。自動車の低減と対照的に重荷は据え置き。Reuters |
投資・雇用 | 5,500億ドル投資は米国内の雇用・インフラに寄与、日本企業は米市場での事業継続性・サプライチェーン強靭化を確保。The White House |
他国・国際交渉 | 15%枠は他地域交渉にも波及。アジア競合との条件差が戦略に影響。制度変更の随時見直しに備えたシナリオ設計が必要。Trade Compliance Resource Hub |
4. 短期・長期のマクロ影響
短期(発表直後〜数か月)
自動車株などにポジティブ反応。一方で企業の収益影響は「プラス/マイナス」見方が交錯。Reuters+1
日本政府は実質成長率見通しを1.2%→0.7%へ下方修正(2025年度)。急落は回避も下押し圧力が残存。Reuters
長期(1〜3年)
25%案に比べ景気後退リスクは後退したが、15%でもGDPの押し下げが続く見通し。民間推計では25%関税なら**▲0.6〜0.8%程度**の成長押し下げ試算(15%では縮小するが負の影響は残る)。DirMainichi
自動車・耐久財中心に現地化・再編が進む一方、研究開発やブランド力の強化が価格プレミアムの鍵。政策は輸出依存度の分散と国内投資の加速が柱に。Reuters
5. 企業の実務対応チェックリスト
品目別の最終税率・発効日をCBP/税番単位で再確認(二重課税の是正・返金プロセス含む)
価格転嫁シナリオ:15%を前提にグロスマージン感度(±5%/±10%)を試算
サプライチェーン再設計:現地化、NA含む二国間・地域協定の関税差最適化
契約条項:Force Majeure/ハードシップ/価格調整条項のアップデート
投資判断:米国内CAPEX・M&AのNPV/IRR再計算、WACC・関税を反映
農産・素材:原料コスト・需給に合わせた在庫/調達戦略と代替ソース開拓
(※上記は2025/8/14時点の公表情報に基づく。実務は通関当局・官報・連邦公示の最新更新を必ず確認してください。)The White HouseReuters
6. FAQ
Q1. 自動車の最終関税は?
A. 米国の日本車への合意水準は15%。直前までの**27.5%(2.5%+25%の積み上げ)**からは低減したが、**従来の2.5%**よりは高い。適用開始・細目は順次整理中。ReutersThe White House
Q2. 鉄鋼・アルミはどうなった?
A. 本合意の適用外で、50%関税が継続。Reuters
Q3. 「二重課税」問題は解決したの?
A. 8月上旬に重複適用の是正と返金方針で調整が進んだと日本側が説明。米側の正式文書整備は引き続き注視。