自由民主党 総合政策集 J-ファイルから読み解く2025年の政策動向
自民党が毎年、J-ファイルという総合政策集を出しているのをご存じでしょうか?自民党が目指すべき多様な政策が書かれた「総合政策集」です。自民党内の多くの政策構築機関が作成した各種提言書の内容も取り込まれており、記載した政策項目は『選挙公約』よりも多種多様で、実現に向けては長期的な挑戦が必要な政策も含まれています。
具体化に向けた法的措置や財源確保について時を待たねばならない項目はあるものの、自民党が目指している各種政策の方向性を示した総合的な資料となります。キーワードを検索して該当箇所を読むだけでも、来年度の国の政策動向やビジネスの進むべき方向性が見えてくるかもしれません。
政策理解の総合的なガイドライン
J-ファイルは単なる選挙公約集以上の価値があり、日本の政策立案の羅針盤としての役割を果たしています。政府が目指す長期的なビジョンと具体的な施策を包括的に理解できる貴重な資料です。
特徴的な強み
幅広い政策カバレッジ
選挙公約よりもはるかに広範な政策領域をカバーしており、経済、社会保障、外交、環境など、多岐にわたる政策の詳細を知ることができます。
長期的視点
短期的な選挙対策だけでなく、日本の将来を見据えた長期的な政策課題や挑戦も含まれています。
実務的な価値
- 政策の方向性を具体的に示し、企業の経営戦略立案に活用できます
- 各省庁の予算要求の背景を理解する助けとなります
- 政策実現に向けたロードマップを把握できます
活用方法
政策研究
キーワード検索機能を活用することで、特定の政策分野における政府の取り組みを効率的に理解することができます。
ビジネス戦略への応用
将来の規制改革や支援策を予測し、企業戦略の立案に活かすことができます。成長戦略や産業政策の方向性を把握することで、ビジネスチャンスを見出すことも可能です。
このように、J-ファイルは日本の政策立案プロセスを理解し、将来の展望を描くための重要なツールとして活用することができます。
全て読むのは大変ですので、要点のみAI チャットボットに質問してみてください。
経済・成長戦略
1. 物価高に対する取組み
物価上昇を上回って、賃金が上昇し、設備投資が積極的に行われるといった成長と分配の好循環が確実に回りだすまでの間、足元で物価高に苦しむ方々への支援を行います。物価高への対応に加えて、成長分野に官民挙げての思い切った投資を行い、賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現に取り組みます。
2. 成長と分配の好循環の実現
全ての人々が安心と安全を感じられる未来を創るために、物価上昇を上回って賃金が上昇し、設備投資や人への投資が積極的に行われ、成長と分配の好循環が力強く回っていく経済を実現します。
3. 付加価値の創出
高付加価値のモノとサービスをグローバル市場において、適正な価格で売ることのできる経済を実現します。中堅・中小企業の賃上げ環境の整備として、省力化投資の促進や価格転嫁の徹底等を進めます。また、輸出企業の競争力を強化し、中小企業を中心とする高付加価値化、労働分配率の向上、官民挙げての思い切った投資を実現します。
4. 事業再構築のための法制の整備
経営者の判断により早期の事業再構築を容易にするため、多数決によって金融負債の整理を進めることができる法制について検討し、早期の成立を目指します。
5. 公正取引委員会の体制・執行の強化
公正取引委員会の体制及び執行の強化を図るため、量的・質的に人材面の充実を図ります。また、専門性の高い外部人材も活用しつつ、公正取引委員会による提言機能を強化します。
6. 危機に強靱な経済財政の実現
日本経済のデフレ脱却を確かなものとし、日本経済の未来を創り、日本経済を守り抜きます。その中で、「デフレ脱却」を最優先に実現するため、「経済あっての財政」との考え方に立った経済・財政運営を行い、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現しつつ、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強靱な経済財政をつくっていきます。
7. 原油高・物価高に対する取組み
原油価格の高騰を踏まえ、燃料油価格の激変緩和策を年内に限って継続し、経済対策の策定とあわせて、骨太2024を踏まえ、早期の段階的終了に着手すべく取り組むとともに、状況を丁寧に見極めながら、物価高の大きな影響を受ける低所得者や業種等への支援をきめ細かく行います。地方創生臨時交付金により、生活者や事業者の支援、給食費負担軽減など、地方の実情に応じた対応を図ります。国民生活や産業に不可欠な食料、物資・原材料、エネルギー等の安定供給確保を図るため、サプライチェーンの強靱化を図ります。労務費を含む価格転嫁の促進、強化した賃上げ促進税制の活用促進や省力化支援による生産性向上への支援、赤字でも賃上げする企業に対する補助金の補助率引上げなどにより、中小企業も含めた賃上げを後押しします。生活関連物資等の値上げについて注視し、「便乗値上げ」の防止に取り組みます。労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分について、中小企業の取引価格の転嫁対策を徹底します。資材費等の価格高騰等の影響を受ける中小企業の資金繰りを支えるとともに、過剰債務の軽減を含めた中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの支援を行います。
8. 成長志向の中小・中堅企業への支援
地域経済において需要と供給の好循環を起こし、地域に良質な雇用を生み出すためには、国内外の需要の開拓や積極的な投資を通じて、「稼ぐ力」を大きく伸ばす企業の存在が重要です。こうした役割を継続的に果たしていくためには、一定の企業規模が必要です。売上高100億円を超える会社は、それ以下の売上の企業と比べて、域内仕入額や直接輸出額、一人あたり賃金が高いというデータもあり、地域内の中小企業・小規模事業者の持続的発展に繋げていくためにも、各地域において中小企業から売上高100億円の企業へと成長する企業を創出していく必要があります。
また、中小企業から中堅企業、更にその先へとシームレスに成長していけるよう、中堅企業の課題にも対応した成長環境を構築することも重要です。このため、経営者の成長意欲を高め、企業の成長を実現するための様々な気づきを得る経営者ネットワークの形成や、飛躍的な成長につながる伴走支援の強化、成長志向の中小企業を応援する社会的機運の醸成など、売上高100億の企業を目指す経営者を継続的に増加させていく仕組みの構築を目指します。また、2024年を「中堅企業元年」として、「産業競争力強化法」で、初めて中堅企業を定義し、成長志向の中堅企業等に対して、複数の中小企業をM&Aする場合の税制措置等の集中的な支援措置を講じることとしました。
中堅企業の自律的な成長を実現するため、中堅企業の役割や課題を明らかにした上で、官民で取り組むべき事項をビジョンとしてとりまとめます。成長を後押しする資金調達手段の一つとして、資本性資金(エクイティ・ファイナンス及びメザニン・ファイナンス)の理解、認知の拡大、更なる活用の促進を図ります。また、中小・中堅企業の成長段階に応じて、販路開拓、設備投資、研究開発、組織・人材整備、M&A、資金調達等の政策支援をシームレスに講じていきます。加えて、地方の中小・中堅企業の更なる賃上げに向けて、大規模な成長投資に対する補助金を継続・強化します。
9. 中堅・中小企業の海外展開への支援
日本では生産性が高いにも関わらずグローバル化していない企業が多数あり、特に中小企業においてその傾向が顕著です。生産性が高く競争力のある企業がグローバル化することで、更に生産性は高まり、ひいては日本の経済成長を促進させ、国内の雇用も増加させます。中堅・中小企業の新たな輸出への挑戦を後押しするため、「新規輸出1万者支援プログラム」を通じ、海外事業戦略の立案、海外市場に適合する商品開発、商談機会の創出等、早期の輸出実現とその後の輸出継続・拡大に向け、事業者の多様な課題に応じた支援を実施します。また、中小企業は、海外展開のための支援者に出会うことが難しいことを踏まえ、海外進出のパートナーに出会えるような取組みを進めると共に、海外取引における企業のリスク軽減に貢献する貿易保険の利用拡大を促進します。
10. 新輸出大国コンソーシアム等を通じた支援
「新輸出大国コンソーシアム」を中心に、海外市場や現地のビジネス環境に詳しい専門家を国内外に配置し、一貫した伴走型支援を行うことで、中堅・中小企業の迅速かつ的確な情報収集と経営判断をサポートします。また、海外現地においてどのような商品が求められているのかという最新のニーズを収集し、その情報を中小企業の海外展開の成約率向上に活用するための取組みを構築します。さらに「ジャパンモール」などを通じて、海外のEC事業者等との連携を強化することで、中堅・中小企業の越境EC取引の活用を更に促進します。また、海外展開支援の担い手となる地域商社等が連携して行う中堅・中小企業の販路開拓の取組みを促進し、貿易手続きを円滑化するデジタル・プラットフォームの火曜・データの標準化等により貿易DXをはじめ輸出支援ビジネスの育成を推進します。また、EPAの利活用促進を通じた輸出促進にも取り組みます。海外展開の経験を積んだ中小企業に対しては、社長の右腕となる人物を育てるような人材育成を行い、海外進出の体制をより強固にしていくことを促進します。
11. 中小企業等の事業再構築
中小企業・小規模事業者等はGX、賃上げ、人手不足、サプライチェーンの再編等のポストコロナ時代の経済社会変化や産業構造転換への対応を迫られています。このような中、中小企業・小規模事業者等がこうした変化に大胆に対応し、リスクを取りながら新たな取組みにチャレンジして更なる成長を目指すための事業再構築を中小企業全体に促していくことは重要です。そこで、中小企業・小規模事業者等の新分野展開や業態転換を補助金を通じて切れ目なく支援していきます。
12. 事業再生の環境整備
コロナ禍を経て経営改善・事業再生のニーズが高まっていることを踏まえ、「再生支援の総合的対策」に基づき、増大する債務に苦しむ中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジ支援を着実に進めます。改正した信用保証協会向けの総合的監督指針を通し、保証付融資の割合が高い中小企業などに対する協会の主体的な支援や、中小企業活性化協議会への案件持込等を促進するとともに、活性化協議会の支援レベルの底上げなどを進めます。
13. 小規模事業者の持続的発展
2024年は小規模企業振興基本法の制定から10年、同基本法に基づく基本計画の改正から5年、小規模事業者支援法の改正から5年となる節目の年であり、小規模事業者の多様な課題を踏まえた小規模企業政策の見直しを行います。小規模事業者が自社の強みを強化し、事業拡大や持続的発展をしていくためには、経営者自らが中長期的な経営計画を策定し、経営の自走化を目指す必要があります。そのため、小規模事業者支援法に基づく経営発達支援計画や事業継続力強化支援計画、小規模事業者持続化補助金、マル経融資を通じ、商工会・商工会議所による伴走支援を一層進めます。そのためには、商工会・商工会議所による小規模事業者の支援体制の強化が必要であり、広域的な支援体制の構築、他の支援機関との連携強化、経営指導員の質・量の確保を含めた制度見直し、実効性を高める取組みを進めます。経営指導員の業務が質・量ともに急増しており、人件費等の絶対額が不足しているため、基準財政需要額の算出方法も見直す方向で検討します。多様な課題に対応するための個々の経営指導員のスキルアップを行い、身につけたスキルや得意分野を見える化しナレッジ・ノウハウを共有することに加え、高いスキルを持った経営指導員が広域的に活動していく取組みを広げていきます。
14. 中小企業・小規模事業者等の生産性向上
人口減少社会において一人当たりGDPの成長を目指すには、全就業者数の7割、付加価値の5割強を占める中小企業・小規模事業者の労働生産性の向上が必要です。また、中小企業・小規模事業者が持続的な賃上げを実現するにあたっても生産性向上は必要不可欠です。このため、中小企業・小規模事業者が生産性向上のために行う取組みを支援します。具体的には、生産性の向上を支援する補助金を充実させ、ものづくり補助金を通じた設備投資、オーダーメード型の高度な省力化、デジタル化のための腰を据えた投資、小規模事業者持続化補助金を通じた販路開拓、IT導入補助金を通じたIT導入、事業承継・引継ぎ補助金を通じた事業承継を切れ目なく継続的に推進します。加えて、人手不足に対応し、中小企業・小規模事業者にとって簡易で即効性のある省力化投資支援をカタログ型省力化補助金を通じて継続的に実施します。また、中小企業が画期的な製品・サービスを生み出すことで付加価値を増加させていくことも労働生産性向上のためには重要です。そこで、中小企業が行う研究開発を予算措置や税制で後押しし、新商品・サービスの開発・販路開拓の支援等を実施します。
15. 中小企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進
中小企業のDX推進のため、中小企業自身のデジタル化、DX化のみならず、中小企業を支える様々な補助金や行政手続もデジタル化、DX化を進めます。中小企業のデジタル化、DX化については、中小企業・小規模事業者をサポートする人員体制を整備します。加えて、クラウドツール等の購入を補助するIT導入補助金等を通じて、デジタル化、DX化を強力に推進します。更に、中小企業が利用しやすいサイバーセキュリティお助け隊サービスの普及支援などを通じ、セキュリティ対策も推進します。これらのデジタル化、DX化の取組みは、インボイス制度への対応にも資するものです。また、新たな中小企業支援コミュニティの活性化に向けて、ローカルベンチマークや地域経済分析システムを活用するとともに、中小企業の補助金申請データ等を一元化したデータ連携基盤である「ミラサポコネクト」を活用し、中小企業に対する支援機関や金融機関等による能動的な支援につながる、企業情報や支援ニーズを集約したマッチングプラットフォームの構築を進めていきます。併せて、中小企業のDX化をサポートする地域金融機関等の支援機関等が、中堅・中小企業等に対してDX支援を実施する際に考慮すべきことをまとめた「DX支援ガイダンス」を更に普及していきます。
16. 中小企業金融を支える金融支援
今なおコロナの影響に苦しむ中小企業や、資材費等の価格高騰等の影響を受ける中小企業の資金繰りの円滑化のため、信用補完制度の活用や政府系金融機関による融資等を通じて、セーフティネット機能を果たすとともに、経営改善・事業再生や安定的な事業継続・更なる事業成長に必要となる資金の供給も着実に行っていきます。特に、経済のコロナ禍からの回復が進む中で、金融規律の正常化を進める必要がある一方、「稼ぐ力」の向上に向けた中小企業の経緯努力を促しつつ、民間金融機関の経営支援を引き出し、中小企業の資金調達を円滑化していきます。
17. 個人保証に依存しない中小企業金融の促進
「経営者保証に関するガイドライン」、「事業承継に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」の一層の周知・普及を行うとともに、「経営者保証改革プログラム」に基づき、スタートアップ・創業、民間金融機関による融資、信用保証付融資、中小企業のガバナンス、の4分野に重点的に取り組みます。特に、本年3月に信用保証料上乗せにより経営者保証の提供を不要とする保証制度を創設したことを踏まえ、信用保証付融資における経営者保証の提供を不要とする取組みについての一層の周知と積極的な活用を促します。また、M&Aや事業承継時に経営者保証を解除する取組みを一層促進します。
18. 下請取引の適正化
頑張る中小企業・小規模事業者が、大企業との取引において、不当な発注・値引き、契約を余儀なくされることなく、労務費、原材料、エネルギーなどのコスト上昇分をサプライチェーン全体で適切に負担できるよう、公平・公正な取引環境を実現します。サプライチェーンの2次・3次以降の隅々にまで価格転嫁・取引適正化が構造的に行われるよう、下請法の改正を検討します。下請Gメンを活用して監督体制を強化し、下請代金法による厳正な執行等を通じて、下請取引の適正化を進めます。また、9月と3月の価格交渉促進月間を通じて、大企業と中小企業の価格交渉を促進します。更に、業界による自主行動計画の策定を加速するとともに、大企業と中小企業の連携強化を目指す「パートナーシップ構築宣言」について宣言企業の拡大・実効性強化に取り組みます。
19. 中小企業・小規模事業者の活性化、地域経済の発展につながる人材の育成・確保
経営者が「稼ぐ力」の向上に向けて経営戦略を実行するに当たっては、必要な人材の確保も不可欠です。人材は貴重な経営資源であり、中小企業が人材確保をコストではなく「未来への投資」と捉え、賃上げや、従業員一人ひとりが潜在力を十分に発揮するための環境整備に挑戦することが重要です。このため、経営戦略と人材戦略の一体的な構想・実践に資する人材活用ガイドラインの活用を促進するとともに、中小企業の経営層、経営幹部候補層等を対象とした中小企業大学校の研修プログラムの充実に取り組んでいきます。
20. 中小企業・小規模事業者における防災・減災対策の支援
近年、中小企業・小規模事業者に大きな影響を与える大規模な自然災害が頻繁に発生しています。災害発生時における事後の復旧・復興対策のみならず、今後、発生が予想される自然災害に備え、中小企業・小規模事業者においても事前の防災・減災対策を進めていくことが急務です。こうした状況を踏まえ、2019年7月に施行した「中小企業等経営強化法等」(中小企業強靱化法)に基づいて、事業者が策定した防災減災に係る取組みを「事業継続力強化計画」として認定する制度を実施しています。認定を受けた中小企業・小規模事業者に対し、税制優遇や金融支援などから多面的な支援を行い、事業継続力強化計画に関する制度の普及啓発、計画策定の支援等により防災・減災対策を後押ししていきます。更に、小規模事業者支援法に基づく「事業継続力強化支援計画」に基づき、商工会・商工会議所と関係市町村が一体となって、地域の災害リスクを踏まえた小規模事業者の事業継続力強化計画の策定支援やフォローアップの実施など、実効性のある取組みを進めます。
21. 地域のエリア価値向上に向けた商店街の活性化等
中小小売・サービス業者(中小商業者等)が集積する商店街等は、地域コミュニティの担い手として欠くことのできない重要な存在です。ライフスタイルや地域課題等が多様化する中、地域のエリア価値向上を図るべく、商店街組織等の収益力強化や事業推進体制の強化等を通じて地域経済の活性化を後押ししていきます。また、商店街等が持続的に発展するためには、地域経済を自律的に循環させる仕組みを構築していくことが重要であり、人口や地理的特性、必要とされるサービスの内容や性質を踏まえた地域の社会課題解決や地域のエリア価値の向上に向けた戦略を作り、地域資源を活かしたビジネスの実施を促進します。
22. 事業承継への集中支援
経営者の高齢化が進む中、休廃業・解散件数は約5万件程度と依然として高い水準です。中小企業・小規模事業者の貴重な技術や雇用などの経営資源が失われることのないよう、事業承継を進めることは「待ったなし」の課題です。このため、47都道府県に設置された「事業承継・引継ぎ支援センター」において、「親族内承継」、「従業員承継」、「第三者への引継ぎ(M&A)」といったあらゆる事業承継の相談にワンストップで対応します。また、事業承継時の贈与税・相続税の負担を実質ゼロとする「事業承継税制」や、「中小企業M&A税制(経営資源の集約化に資する税制)」の活用促進を図ります。更に、M&A後の成長に向けた円滑な経営統合(PMI:Post Merger Integration)の取組の定着を図るため、PMIにおけるポイントを解説する「中小PMIガイドライン」やPMIの実施時に活用できる「PMI実践ツール」の浸透を図ります。加えて、M&Aについても、選択肢の一つとして安心して行えるよう、基本的な指針であり、健全な取引環境を担保する「中小M&Aガイドライン」について、取引に関与する者に対する遵守の徹底を図ります。事業承継税制については、2024年度税制改正において、法人版個人版の特例承継計画等の提出期限を2年延長しましたが、事業承継の更なる加速化のため、特例措置の適用期限が到来するまでの間、本税制を最大限活用できるよう役員就任要件の見直し等を検討します。また、個人版事業承継税制において、同族会社や事業用資産を有しない個人との課税の公平性や制度の濫用を防止する観点等を踏まえつつ、青色申告書の貸借対照表に計上される事業用資産を対象とすることに関して、同税制の適用期間中の実施状況等を踏まえ検討します。
23. 小規模企業等に係る税制
小規模企業等に係る税制の在り方については、働き方の多様化を踏まえ、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得に対する課税の在り方等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、正規の簿記による青色申告の普及を含め、記帳水準の向上を図りながら、引き続き給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」の在り方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に早期に検討を進めてまいります。
24. 創業への集中支援
創業の手法が、ゼロからの創業だけでなく、第二創業・ベンチャー型事業承継や、経営資源引継ぎ型創業など、多様化してきています。こうした状況を好機と捉え、今後は、多様な担い手による、多様な手法での創業を促すべく、支援を加速していきます。将来的に創業者となる人材を輩出し、開業率向上につなげるため、進路選択の岐路にある高校生を中心に、新進気鋭の起業家の体験談に直接触れ、関心を持った層を更にプレイアップするような起業家教育を一気通貫で実施することによって、創業関心層の底上げを図ります。加えて、市区町村等が行う、創業支援や創業に関する普及啓発への取組みへの支援の一層の促進、成長志向の創業を行おうとする起業家への支援強化を行います。
25. 社会課題解決事業への支援
地域の社会課題の解決の担い手であり、収益性を確保し持続的に成長するローカル・ゼブラ企業を創出・育成するエコシステムを確立するべく、2024年3月に策定された「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」を着実に普及します。また、インパクト投融資を促進し、共感による人材の流れを取り込みながら、こうしたエコシステムを全国各地に構築していくに構築していくため、20の地域で実証事業を実施し、ローカル・ゼブラ企業の事業モデルの整理や、中小・小規模事業者でも取り組みやすい社会的インパクトの評価手法の確立に取り組むとともに、ローカル・ゼブラ企業への理解を広く普及し、チャレンジしやすい環境を整えます。
26. 約束手形の支払いの短縮化
中小企業等が受け取る約束手形については、2026年の利用廃止に向けて、①約束手形の支払い期間を60日以内へ短縮化する下請法の指導基準変更が確実に遵守されるよう取り組むとともに、②利用の廃止に向けたプロセスをロードマップとして示せるよう、産業界と政府が一体となって取組みを進めていきます。更に小切手の全面的な電子化も行います。
27. 賃上げに向けた環境整備
過去最大の最低賃金引き上げや人手不足の影響を大きく受ける中小企業・小規模事業者等が賃上げできるような事業環境を整備できるよう、労務費を含む価格転嫁の促進、強化した賃上げ促進税制の活用促進や、下請取引の適正化、中小企業の新分野展開や業態転換や省力化、生産性の向上を後押しする補助金による支援を強化します。
28. 地方や中小企業・小規模事業者への重点的な支援
最低賃金引き上げをはじめとした急速かつ大規模な経営環境の変化に直面している中小企業・小規模事業者は、新たな需要が喚起される領域・分野を適確に把握した上で、多様なニーズに対応した付加価値をきめ細かに提供できるよう、経営力を強化していく必要があります。このため、地域の特性に応じたよろず支援拠点の機能強化を図るとともに、よろず支援拠点と地域の支援機関との連携強化を通じた各地域の経営支援力の強化に取り組みます。また、中小企業・小規模事業者が自ら取り組むべき経営課題を設定して自己変革していけるよう、経営者等との対話を重視した伴走支援の更なる定着を推進します。
29. 標準化活動の加速化への支援
革新技術をいち早く社会に実装し、世界に普及させるためには、「国際標準」の獲得をはじめとする、世界に先駆けたルール形成が極めて重要です。このため、官民の適切な役割分担と、省庁や産業分野を越えた連携の下、企業の経営戦略に標準化を位置付け、標準化を加速化させるための体制整備を進めます。また、民間における、標準化を担う人材育成や持続的な国際標準化活動のための支援を拡充します。特に、AI、バイオ、マテリアル、半導体、Beyond 5G(6G)、健康・医療等、我が国の新しい成長エンジンとなる分野における国際標準化の獲得・活用に重点的に取り組みます。
研究開発成果の社会実装を進めるため、政府の研究開発事業において、社会実装戦略、国際競争戦略、国際標準戦略の明確な提示とその達成に向けた取組みへの企業経営層のコミットメントを求める事業運営やフォローアップ等の仕組みの拡充・横展開を進めます。加えて、改正産業競争力強化法において創設された、産学共同研究開発におけるオープン&クローズ戦略の策定・活用計画の認定制度を通じて、研究開発の初期段階からの市場創出を見据えた標準化活動や、経営層の標準化活動への積極的な関与を推進します。
30. 産業インフラの整備
地域の立地環境を整備するため、工業用水等の生産拠点を支えるインフラの有効活用、整備、強靱化を進めると共に、産業用地整備の迅速化に向けた措置を検討します。
31. デジタルインフラ基盤の整備
デジタルによる新たな価値創造を促進し、脱炭素社会・循環経済の実現といった社会課題の解決とイノベーションの両立を図るとともに、「Connected Industries」や DFFT の趣旨を実現するため、企業や業種を横断して、データやシステム連携を行うためのプラットフォーム構築等の取組である「ウラノス・エコシステム」を推進します。
具体的には、先行ユースケースである蓄電池サプライチェーンでのカーボンフットプリント算出に向けたデータ連携システムの運用を着実に進めるとともに、欧州Catena-X(欧州等における自動車のバリューチェーン全体でデータを共有する枠組み)をはじめとする海外プラットフォームとの相互運用性確保等にも取り組みます。これらの成果を踏まえた上で、ライフサイクル全体でデータ連携を行う情報流通プラットフォーム及び運用体制の構築を推進します。
今後 10 年を見据えたデジタル時代の社会インフラ整備を目的とする「デジタルライフライン全国総合整備計画」に基づき、先行地域における自動運転サービス支援道、ドローン航路、インフラ管理 DX のアーリーハーベストプロジェクトを本年度から開始するとともに、その成果の他地域への展開を図ります。その際、デジタルライフラインの共通の仕様や規格等を策定し、事業者等に遵守を求めることで、重複投資を回避します。加えて、災害からの創造的復興を目指し、石川県における奥能登版デジタルライフラインの整備を新たなアーリーハーベストプロジェクトの一つとして支援し、他地域への展開が可能な汎用モデルを実現します。
32. AI・半導体政策の推進
生成AIを巡る急速な技術革新を受け、その用途拡大によって、人手不足やGX等の社会課題を解決するとともに、革新的な製品・サービスを創出し、経済成長を実現することが期待されており、そのためにも、生成AIをあらゆる分野へ導入し、高度化させることが重要です。
これを実現するには、生成AIそのものの開発に加え、計算需要とともに増大する電力需要の抑制に不可欠な低消費電力性が重要であり、半導体・データセンター等のハードと、ソフト(生成AI)が、相互円滑に機能する技術基盤や産業基盤、人材基盤を国内に構築することが必要です。
こうした基盤構築に向け、国内の生成AIモデルの開発を進めるとともに、民間による計算資源(データセンター)やデータの整備及びその高度化に取り組みます。半導体については、AI等と親和的な最先端半導体の設計開発を支援します。特に、次世代半導体については、必要な出融資の拡大等、多様な手法を用いてその量産を実現するべく、積極的に支援を行います。
加えて、先端半導体のみならず、レガシー半導体や製造装置、素材を含めたサプライチェーン強靱化に向け、他国に比肩する規模で、長期にわたり、生産基盤拡充と研究開発を支援するとともに、人材育成やインフラ整備を支援します。
33. スタートアップの創出
コストカット型経済から高付加価値創出型経済への移行に向けて、スタートアップ支援を強化していきます。日本経済の構造改革を先取る存在として、ユニコーン企業などグローバルで活躍するスタートアップの創出を促進します。
スタートアップ・エコシステム(起業家、投資家、大企業、大学、独法、行政等が連携し、スタートアップが自律的、連続的に生み出される仕組み)の構築・強化を行います。また、人手不足対応で期待されるロボット分野において、様々な技術を有するスタートアップによる開発・実装を促す開発環境を構築します。
日本を代表するようなスタートアップの成長や海外展開を官民一体で集中支援する JStartup プログラムを推進します。スタートアップの新しいアイデア・技術を政府・地方自治体が積極的に活用し、社会課題の解決や経済の成長を図るよう、国や地方公共団体による公共調達を抜本的に強化します。高度かつ独自の新技術を有するスタートアップの調達促進に向けた仕組みの活用等を積極的に進めるとともに、SBIR制度を推進します。
スタートアップの新しいアイデア・技術を大企業が積極的に活用し、イノベーション創出を加速させるために、民間調達を促進するようなスタートアップと事業会社の調達の在り方を提示することなど、官民による連携を強化し、民間調達を促進します。
大規模かつ長期的な成長資金供給のために、国内外の機関投資家や事業会社の投資拡大のための環境整備をします。スタートアップが集積するシリコンバレーに拠点を設け、グローバル展開を目指すスタートアップ等を受け入れ、現地のアクセラレーター等からの指導・助言を受ける育成プログラムを提供するとともに海外展開を支援します。また、日本のスタートアップや起業家が海外での事業展開や資金調達を目指すプログラムなどを進めていきます。
スタートアップエコシステムの裾野拡大に向け、地域における成長志向の女性起業家のための支援体制の構築、事業計画相談や支援者とのマッチングイベントなどを支援します。大企業からスタートアップへの投資促進やM&A による事業の融合や連携を通じたオープンイノベーションを促進します。
最先端の研究開発成果を事業化し、イノベーションで世界に貢献するテック系スタートアップを創業時から成長段階に応じ、研究開発から量産の実現まで中長期的かつ一貫した支援を強化します。新技術や斬新なビジネスモデルで地域の課題を解決し、豊かな暮らしを実現する地方発スタートアップの創出を、地域の既存中核企業との連携や都市部との人材交流促進、企業と大学が連携したインキュベーション(創業支援)施設の活用・整備、実証フィールドの整備、地域の強みを活かした自治体や事業化支援機関、公設試、地域企業、地域大学、産総研などの協力体制の構築等により支援します。
また、大学等が持つ技術シーズの事業化を促進するため、研究者や起業直後のスタートアップと、外部経営人材とのマッチング支援を行います。大学の研究者など有為な人材が起業しやすいよう、兼業規定や報酬について大学ごとのルールの明確化に加え、共同研究や知的財産権についての規定の整備を促すなど、起業意欲を支える環境整備に取り組みます。
34. 「スタートアップ育成5か年計画」の着実な推進と強化
日本経済の活性化と成長を加速させるため、スタートアップ支援策を引き続き強化します。「スタートアップ育成5か年計画」を着実に進め、「アジア最大のスタートアップハブ」を実現します。
スタートアップ・エコシステムの強化、人材・事業・資金の好循環の創出に向けて、「スタートアップ育成5か年計画」を着実に進めつつ強化するとともに、政府における司令塔を設置し、スタートアップ政策の一元的・効率的な実行、海外を含めた積極的な情報発信等を行います。
35. スタートアップの創業等支援
スタートアップの成長にかかせない高度な経営人材や技術者を確保すべく、優れたアイデア・技術を持つデジタル人材等を発掘・育成するとともに、同様の取組みを地方でも実施し、地方のデジタル人材の育成・確保を推進します。
また、ディープテック等の分野においても同様に、優れた技術・アイデアを有する若手を含めた人材発掘・起業家育成を推し進めます。起業に関心がある層が考える失敗時のリスクとして個人保証が挙げられていることを踏まえ、創設した経営者による個人保証を不要とする創業時の新しい信用保証制度の活用を促進します。
アントレプレナーシップ教育を採り入れる高校・高専の重点的支援など、初等中等段階からの起業家教育を充実させます。若者が躊躇なくスタートアップに挑戦するとともに、社会課題解決と経済成長の二兎を追うため、インパクト・スタートアップを後押しします。そのため、投資家・金融機関、起業、自治体等の幅広い関係者が対話・発信するインパクト・コンソーシアムを進めていきます。また、資金調達の多様化など支援制度を充実します。
36. スタートアップへの資金供給の拡充
SBIR制度の推進や、入札参加資格要件の緩和やスタートアップ技術提案評価方式の活用等により、政府・自治体におけるスタートアップからの調達を大幅に拡充します。国内外のベンチャーキャピタルに対する有限責任投資による資金供給等やベンチャーキャピタルとも協調した助成を引き続き強化します。これにより、国内のベンチャーキャピタルの育成に加えて、海外の投資家・ベンチャーキャピタルからの投資を呼び込みます。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)等の公的投資機関からの大規模かつ長期的な成長資金供給のために、国内VCへの投資等のための環境整備を図ります。イノベーションで世界に貢献するテック系スタートアップ、特に宇宙・量子等やGX分野のスタートアップに対して、創業時から成長段階に応じ、一貫した支援を強化します。
更に、デュアルユース技術の防衛分野での迅速な活用に向けた基盤の整備など、「デュアルユース・スタートアップ・エコシステム」の構築に取り組みます。
37. スタートアップの創出・育成のための環境整備
海外トップ大学の誘致も含め、当該大学と連携したスタートアップ・キャンパスを創設します。ストックオプション等の環境整備を図るとともに、スタートアップ関係税制において、税制の将来にわたる効果を見据えた動的思考を活用します。
スタートアップを未上場段階で大きく成長させ、次のイノベーションに繋げるため、未上場株式取引のためのプラットフォーム(セカンダリー・マーケット)を制度化します。大企業からスタートアップへの投資促進やM&Aによる事業の融合や連携を通じたオープンイノベーション、経営人材等のマッチングを促進します。
大学・国研等の技術シーズと大企業等の経営人材とのマッチング強化、大学が持つ知財の活用、大学ファンド等を活用した世界トップレベルの研究者呼び込み等に取り組みます。「地方発スタートアップ」の創出を積極的に支援するため、地域中核企業との連携や都市部との人材交流、地方大学が連携した創業支援施設やサテライトオフィス、福島浜通りでの実証フィールド、分散型自立組織(DAO)の整備等を行います。
日本を代表するようなスタートアップの成長や海外展開を官民一体で集中支援するJStartupプログラムを推進するとともに、地域において選定したJ-Startup地域版企業に対しても、重点的支援を行います。
スタートアップの新市場の創出を促進すべく、規制改革について知見を有する弁護士がスタートアップを支援する取組みを行い、グレーゾーン解消制度や規制のサンドボックス制度の活用を促進し、規制改革を推進します。
38. 組込みシステム関連産業のデジタル・トランスフォーメーション
あらゆる産業においてデータやデジタル技術を活用することが求められる時代を迎え、デジタル技術導入による競争力強化が不可欠となっています。中でも、競争力の源泉であるデータを取得し処理する、製品等の「頭脳」にあたる電子部品(組込みシステム)や、それをコントロールするソフトウェア(組込みソフトウェア)のレガシー刷新が求められています。そこで、こうした組込みシステム等のデジタル・トランスフォーメーションを推進する支援体制の構築を目指します。
39. 自動車・モビリティ産業の支援
自動車・モビリティ産業では、GXと並んでデジタル化が競争軸になりつつある中、SDVに必要な技術開発や自動運転の社会実装の早期実現、脱炭素やサプライチェーン強靱化に資するデータの利活用を促進し、地域における移動課題の解決と、2030年のSDV(Software Defined Vehicle)世界市場シェア3割獲得を目指します。
40. 地域未来牽引企業等への支援
地域未来牽引企業等の地域経済・社会を牽引する事業を行う企業に対して、地域未来投資促進法の更なる活用の促進をはじめ、予算、税制、金融、規制の特例等の支援策を重点投入することで、地域の支援機関と連携した新事業展開等への取組みを後押ししつつ、地域の特性を生かした付加価値の創出を促進し、地域に経済波及効果を生み出すことを目指します。また、地方公共団体等の地域内の関係主体と連携しつつ地域・社会課題解決と収益性との両立を目指す取組みを促進します。
41. 国内バイオ医薬品開発・生産体制の強化
製薬産業を我が国の基幹産業と位置付け、創薬力の強化を図るため、創薬ベンチャーの実用化開発支援や抗体医薬品・再生医療等製品などのバイオ医薬品の生産体制の整備を推進します。
42. バイオものづくり革命の実現
地球規模の社会課題の解決と、経済成長との「二兎を追うことができる」バイオものづくりの速やかな社会実装に向けて、この分野で世界をリードしていくとの明確な決意の下、大胆かつ重点的な投資を行い、微生物設計・開発プラットフォーム事業者の育成、異分野事業者との共同開発の推進、生産技術・能力の強化、基盤技術開発と拠点形成、グローバル市場の創出及び獲得等、総合的な取組みを加速していきます。
43. 医療上必要不可欠な医療機器の安定供給
新型コロナ感染症の教訓も踏まえ、医療上必要不可欠な医療機器の安定供給に万全を期すため、サプライチェーンを把握するとともに、開発支援などにより緊急時における供給量を高める等の取組みを平時から進めます。
44. 健康分野の成長産業の創出
高齢化・人口減少が進展する中で国民の健康増進の重要性は高まっており、これを支える予防・健康づくり分野の成長産業を創出・振興します。このため、健康経営を通じた投資を促進するとともに、PHRを活用したサービスのユースケースの創出、AMEDを中心としたエビデンスに基づくサービスの普及、介護保険外サービスの振興、ヘルステックスタートアップ振興の地域拠点の育成等を進めます。また、日本型インバウンドモデルの確立をはじめ、医療の国際展開の更なる推進を図ります。
45. 大阪・関西万博の成功へ
2025年大阪・関西万博を、AI、ロボット、ヘルスケア、GX、デジタル、モビリティ、スマートシティといった分野での新技術の社会実装を先行体験する「未来社会のショーケース」として活用し、イノベーションの力で変革し続ける日本を発信する絶好の機会とします。併せて、万博を契機としたビジネスマッチング、訪日観光客の拡大等にも取り組みます。
46. 対日直接投資の推進
対日直接投資促進のための政府横断的な機能を強化し、海外企業の国内立地等の諸手続きを大幅に簡素化しワンストップ化します。国の各省庁及び立地自治体の諸手続きを横断的にワンストップ化し、JETROの対内直接投資推進業務を更に拡充します。また、経済安全保障の観点にも留意しながら日本企業の経営力強化や地域活性化のための外資誘致・活用、日本企業と海外企業の協業を通じたイノベーション創出を推進します。
47. インフラ海外展開の推進
新興国を中心としたDX/GXや経済安全保障等の新たなインフラ需要を積極的に取り込み、我が国の経済成長につなげるため、積極的なトップセールスや案件形成・事業化への政策支援等を実施します。また、先進国においても、インフラの老朽化や経済安全保障への対応によるインフラ需要にも積極的に対応していきます。
また、国際情勢の変化に応じてニーズが高まる貿易保険のリスク対応能力強化を通じて、日本企業のインフラ海外展開を力強く後押しします。
48. 自由貿易体制の推進
WTOを中核とするルールベースの多角的貿易体制の維持・強化のため、紛争解決制度改革の実現やルールメイキング手段としてのプルリ交渉の活用等のWTO改革について取り組みます。また、公平な競争条件確保のため、過剰供給問題や、その背景にある市場歪曲的な措置への対応を進めます。
CPTPP協定の着実な実施を確保し、協定のハイレベルを維持するために、一般直しの議論を主導するとともに、RCEP協定の各国の透明性のある履行確保を進めます。インド太平洋経済枠組み(IPEF)の参加国間で連携し、地域の繁栄と経済秩序の構築に取り組むとともに、米国にはTPPの復帰を働きかけます。
更に、新規のEPA交渉や投資協定交渉の推進を通じ、自由で公正な経済秩序を維持・強化します。また、同志国との産業政策の協調に取り組みます。具体的には、経済版「2+2」等も活用し、米国との経済分野での連携深化を図ることを始め、EUやG7などの有志国と、半導体やGX、経済安全保障など重要分野における産業協力を進めます。
更に、アジア地域を中心にサプライチェーン強靱化を実現するため、地域大でのデータ共有・連携基盤の整備に向けて、企業によるデータ活用の実証支援を進めます。
49. グローバルサウス諸国との連携強化
地政学リスクが高まる今、グローバルサウス諸国との連携強化を通じて、成長する巨大市場の取り込み、脱炭素化と経済成長の両立、重要物資の確保やサプライチェーン強靱化などに資する取組みを進めます。具体的には、フィージビリティ調査や実証事業の実施に加えて、実証後の施設・設備の実装まで含めて強化し、必要な人材確保、案件発掘や伴走支援、貿易保険のリスク対応能力強化を通じた支援など政策パッケージを組成し支援していきます。
また、有志国との連携や第三国を経由した進出など、グローバルサウス諸国を中心に、面的な市場獲得を目指します。
50. ウクライナ復興支援の更なる推進
ロシアによるウクライナ侵略の情勢は変化しつつあり、日本企業の強みを活かす形でのウクライナ復興への一層の貢献が求められる中で、官民一体で「日本ならでは」の支援を継続して実施していきます。また、ウクライナはエネルギー供給等、周辺国との連携強化が重要であることから、東欧などの周辺国とも協力し、ウクライナ復興を推進していきます。
51. 経済のデジタル化に対応した新たな国際課税制度の整備
経済のデジタル化に対応した新たな国際課税制度に係る国際的な合意や国内法化、関連税制の見直しなどを通じて、日本企業に過度な負担を課さないように配慮しつつ、企業間の公平な競争環境を整備し、日本企業の国際競争力の維持・向上につなげます。
52. 知財・無形資産の投資・活用による「成長型経済」への変革
世界はデジタル化とグリーン化を基軸とした経済・社会変革競争に突入しており、日本もイノベーションによって差別化を図り、知的財産を活用して有利な地位を確保することが必要です。そのためには、知財戦略を経営戦略に組み込む日本企業の経営変革が重要です。
53. 国際標準の戦略的な獲得と活用
産業や技術における国際標準の獲得は大きな市場の獲得と経済安全保障上の戦略的価値を有します。統合イノベーション戦略推進会議の下に設置された「標準活用推進タスクフォース」を司令塔として、官民一体となった標準の形成・活用を推進するとともに、国際標準の戦略的な活用に向けた各省庁の取組みに対し、追加的な予算配分をすることができる枠組みを一層活用し、取組みの加速化を支援します。
更に、国際標準化に取り組む企業が国内でも優れた支援サービスが受けられるよう、国内の規格策定機関、認証機関、研究開発機関、アカデミア等の外部の機関を強化します。
54. デジタル社会に対応したデータ戦略の実行
デジタル社会で価値を生み出すデータについては、2021年に「包括的データ戦略」を策定しました。パーソナルデータを含むデータの取引における懸念・不安が払しょくされるようなルールの整備により、世界の先導役としてDFFT(信頼性のある自由なデータ流通)を実現します。そして、国民、行政機関、企業、アカデミアのデータ共有を進め、新たな価値の創出に取り組みます。その基盤としてのデータ標準、データ取引市場、プラットフォームの整備、人材育成を進めます。
併せて、競争力の源泉であるデータの流通・活用を円滑に行うためには、データ連携基盤やデータの流通・取引を行う上で必要となるデータ取扱いルール等の整備が必要です。そこで2022年に新たにデータ連携基盤におけるデータ取扱いルールの実装の際に踏まえるべき視点と検討手順を示したガイダンスを公表しました。これを参照し、データ連携基盤の構築に引き続き取り組みます。
55. コンテンツ戦略と海賊版対策
コンテンツ産業は、海外売上において約5兆円となり鉄鋼業や半導体産業の輸出額にも比肩する我が国の基幹産業の一つになっており、地方創生に資する高い波及効果を有しています。インバウンド需要などを通じた経済波及効果も高く、我が国のソフトパワーを高める手段としても有効な分野です。
官民の健全なパートナーシップのもと、コンテンツ産業の強化に向けて、関係省庁等及びコンテンツ関係者と議論を重ね、クリエイターが安心して持続的に働ける環境の整備や、クリエイターを中心とする海外展開・情報発信、デジタル化、エンタメ分野のスタートアップ支援等に対応したコンテンツ産業の改革等について取組みを進めていきます。
また、海賊版に対する対策強化として、日本のコンテンツの海賊版が生成AIにより学習されるおそれや、外国での被害も深刻化する中、国外犯処罰の導入検討も含め、国際執行を強化するとともに日本企業による海外プラットフォーム買収等も活用しつつ、海外への正規版の流通を促進します。
56. 「クールジャパン戦略」の推進
海外の人々が良いと思う日本の魅力をマーケットインの考え方に基づき効果的に発信し、インバウンドや輸出の拡大等にもつながるクールジャパン戦略を強化・拡充します。コンテンツ、インバウンド、食・食文化の各分野において政策を総動員して取組みを進めてまいります。
我が国の強いIP(コンテンツ、多様でおいしい食、様々な地域の自然・伝統など、広義の意味での知的資産)を活用し、新たな技術(Web3やNFT等)も取り入れて「イノベーション」を起こし、多層化・深化した「日本ファン」に対して高い「体験価値」を提供しながら、高い利益をあげて外貨を獲得し、関係者による再投資に回していくという好循環を確立していきます。
今後も取組みを更に強化することにより、今後5年間で30兆円以上(2028年)、10年間で50兆円以上(2033年)とすることを目指します。2025年大阪・関西万博を地域活性化につなげるべく、地域における機運醸成の取組みや、万博と日本各地をつなぐ観光資源の磨き上げや文化創造に向けた支援を行います。
海外においても、現地人材の活用等を通じて、在外公館やジャパン・ハウス等の発信・展開拠点を強化します。
57. 「クールジャパン」関連コンテンツの振興
世界的に動画配信サービスが普及していく中、アニメやゲームを中心に日本のコンテンツの人気は世界中で非常に高まっています。また、コンテンツ人気がインバウンドにも大きな波及効果をもたらしています。
製作現場のデジタル化、先進デジタル技術を活用したビジネスの創出、クリエイターやビジネス・プロデューサー等の、人材育成、エンタメ分野のスタートアップ支援を進め、コンテンツ産業の振興と海外展開を図ります。
併せて、東京国際映画祭などコンテンツの中心としての日本の魅力を高める取組みや日本のクリエイターの海外発信を進めます。また、国内への大型映像作品のロケ誘致は、作品を通じて日本の魅力を発信するだけにとどまらず、海外の映像製作のノウハウを日本のコンテンツ産業にもたらします。諸外国の制度も参考にしつつ、ロケ誘致の一層の推進を図ります。
文化芸術の需要の裾野を拡大し、クリエイターに資金を循環する環境を整備するため、企業・地域によるアートの積極的な活用の促進を図ります。
58. 「新たな成長の源泉へ」~ジョブ型人事とリスキリングの推進
DXの加速をはじめとするグローバルな競争激化や、人口減少社会の到来に対応し、日本社会・経済の回復を確実なものとするためには、企業・従業員の意識改革とリスキリングを合わせて促進することが不可欠です。
企業が個々の職務に応じて必要となるスキルを設定し、従業員が上司と相談をしつつ、自ら職務やリスキリングの内容を選択していく「ジョブ型人事」の普及・促進に取り組みます。
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「日本版O-NET(job tag)」の機能強化よる職業情報見える化の充実や、民間求人サイト等との連携を更に推し進めることで、人材マッチング機能の質を高めること等により、在籍型出向・兼業副業・転職・起業を応援し、人材流動化を促進することにより企業組織・企業文化の変革やキャリアアップ支援に取り組みます。
また、リスキリングによる能力向上支援として、在職期間中のリスキリングの強化、企業成長や労働移動につながる教育プログラムの開発、産学官連携での地域のリスキリングのプラットフォームの構築、大学・専門学校等における実践的・専門的な教育プログラムの開発・促進、「デジタル人材育成プラットフォーム」を通じた実践的な学びの場の提供、社会人の学びのポータルサイト「マナパス」による情報発信を通じた学習基盤の整備等を行います。
加えて、企業DXの更なる促進等のため、個人のスキルアップを促すためのスキル情報を蓄積・可視化する情報基盤の構築や地方における若手人材の育成・確保等、デジタル人材育成を加速します。
59. 放送コンテンツ産業の強化
日本発のコンテンツの海外市場規模を拡大すべく、放送コンテンツ産業の競争力強化、海外展開の推進に取り組みます。個々のクリエイターが4K・VFXなどの先進的なデジタル技術を用いた高品質の放送コンテンツを制作できるよう人材育成や設備の導入・利用を支援するとともに、権利処理の円滑化、日本の放送コンテンツを集約したオールジャパンの配信プラットフォームの整備に取り組みます。
60. 社会全体のICT化
5G、4K・8K放送をはじめとした世界最高水準のICTインフラの整備を目指します。国、地方、企業、個人、訪日する外国人も含め、それぞれがICTの恩恵を受けられるよう「社会全体のICT化」を進めてまいります。非居住地域も含めた5G等のエリア整備や5Gならではの通信サービスの実現、離島を含む光ファイバなどの未整備地域解消に向けて、通信事業者などによる情報通信インフラ整備を推進します。
また、データセンター、インターネット相互接続点(IX)の地方分散立地やオール光ネットワークの整備計画との連動、海底ケーブルの陸揚局の分散立地や多ルート化の推進を支援することで、急増するAIへの対応やGXの推進、地域DXの推進に対応するとともに、我が国の国際的なデータ流通のハブ機能を強化し、大規模なAI用データセンターを国内に立地することによる国際的なAI拠点を創設することを目指します。
更に、2030年代のAI社会を支えるため、電力消費を抑えた高速・低遅延のオール光ネットワーク等の次世代情報通信基盤「Beyond 5G」を早期に導入し、特定の分野に特化した複数のAIや、情報処理を担う各地のデータセンターを結ぶことにより、製造、交通、物流、インフラ管理、医療等、各分野におけるAIの開発・普及を促します。
61. ICT化による成功モデルの提示
テレワークや遠隔医療などに関するICT投資を拡大し、雇用の拡大や働き方改革の推進、医療・救急・介護・健康の連携、高度化に貢献するとともに、個人情報の取扱いにも留意しつつ、こうした諸課題の解決に向けた実証を通じ、新しい成功モデルの提示や標準化を速やかに進めます。
62. 多言語音声翻訳の普及・高度化
訪日・在留外国人数は増加傾向にあり、2025年大阪・関西万博では更なる来訪者が見込まれている中で、日常生活や行政手続き、観光等の分野において、「言葉の壁」が大きな問題となっています。また、企業活動の国際化により、ビジネスや国際会議でも「言葉の壁」が問題となっています。
ICTの発達により実現可能となった多言語の音声翻訳の幅広い普及やビジネスや国際会議にも対応した最先端のAI技術を用いた同時通訳の実現により、訪日・在留外国人との共生社会の実現、企業のビジネスチャンスの拡大や海外連携の促進を図り、国内外での経済・社会活動において日本の価値と魅力を高めていきます。
63. テレワークの普及推進
テレワークは、ICTを利用し時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方です。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、多くの企業・団体において緊急避難的にテレワークが導入された一方、急速な導入にこれまでの働き方の慣行や環境が対応しきれなかった面もあります。
今後、我が党において取りまとめた提言「多様な働き方と企業の成長を実現する良質なテレワークの推進に向けて」も踏まえつつ、コロナ後の「新たな日常」・「新たな生活様式」に対応した働き方として、生産性の向上や働く人の満足度につながる形で良質なテレワークが導入・定着されるよう、テレワーク月間などの取組みを後押しし、地方の雇用に資するよう、地方も含めたテレワークの普及を更に推進していきます。
64. パーソナルデータの利用の活性化
個人の生涯にわたる医療等のデータを時系列で管理し、本人の判断のもと多目的に活用する仕組みであるPHR(Personal Health Record)について、安心・安全な普及展開のための取組みを行います。また、個人の関与のもとでパーソナルデータの流通・活用を進める仕組みである情報銀行について、取り扱うデータの範囲に関する検討や、地方公共団体とのデータ連携に関する実証などを行うことにより、パーソナルデータの利用の活性化を推進していきます。
65. Society 5.0を支えるICT先端技術開発
Society5.0を支える「サイバー空間とフィジカル空間の融合」や社会全体のデジタル変革(DX)を加速するため、ICT分野の技術開発などを推進します。具体的には、Beyond 5G、AI、量子情報通信、宇宙通信などの先端技術の研究開発とその成果の社会実装、知財・国際標準化活動を支援します。
66. 情報通信産業における経済安全保障の確保と国際競争力強化
あらゆる社会活動・経済活動に不可欠なものとなっているデジタルインフラについて、安全性・信頼性を確保した強靱なインフラの整備・維持、セキュリティの確保や国際通信における自律性の向上を通じて、経済安全保障の確保を図ります。
また、将来のあらゆる産業や社会基盤となるBeyond 5Gについて、研究開発・国際標準化・社会実装・国際展開を一体的に推進し、将来的な海外市場の獲得などを通じた我が国の国際競争力の強化と経済安全保障の確保を目指します。
67. 安全性・信頼性を確保したデジタルインフラの海外展開
5G/オープンRAN、オール光ネットワーク、海底ケーブル、データセンター等、経済安全保障や次世代市場獲得の観点から重要なデジタルインフラについて、トップセールス、海外での実証実験やJICT(株式会社海外通言・放送・郵便事業支援機構)による出資等を通じて、我が国企業による海外展開の取組みを支援します。
グローバルサウスを含む海外の旺盛な需要を取り込み、グローバルなデジタルインフラの安全性・信頼性を確保するとともに、我が国企業の開発力・生産力の維持・向上による安定的な供給能力の確保を図ります。
68. 電波利用の推進
自動運転、ドローン利用、スマート農業、遠隔医療・高度医療等、技術の進展に伴い活用分野が拡大している電波の利用を推進するため、非地上系ネットワーク(NTN)の導入等に関する研究開発や制度整備、国際的な協調のもとでのドローン用周波数の確保、周波数の円滑な移行・再編・共用を実現するための制度整備に取り組みます。
69. 4K・8K放送の普及
2018年12月から開始された新4K・8K衛星放送は、2024年7月には視聴可能機器の出荷・設置台数が2000万台を超え、各家庭で臨場感あふれる高精細な映像を楽しむことができるようになりました。引き続き、4K・8K放送の普及に向け、周知・広報等を進めていきます。また、4K・8Kの高精細な映像技術は放送のみならず、幅広い分野への波及が期待されています。例えば医療分野においては、高精細映像を用いることで、内視鏡等の検査・手術の精度の向上のほか、遠隔地にいる専門医による診療といった遠隔医療の普及への寄与が期待されます。このような4K・8Kの高精細な映像技術について、様々な産業分野での活用を通じ、地方創生や社会の福祉の向上といった社会課題の解決を目指します。
70. 紛争解決拠点の整備
我が国が積極的に選ばれる仲裁地となることを目指し、仲裁人・仲裁代理人などの人材育成、特に中小企業を対象とする国内外における広報・意識啓発を行うとともに、我が国を拠点とする仲裁機関の国際的な認知度及び評価向上のために必要な取組みを官民の関係機関の緊密な連携により進め、我が国企業の国際進出の促進や海外からの対日投資の呼び込みにつなげます。
また、海外進出する日本企業などを法的側面から支援するため、法曹などによる日本企業などへの支援の在り方などを調査研究し、日本企業などが十分な支援を受けられる環境を整備します。
更に、日本企業などの海外進出や対日直接投資の促進等に向けた環境整備を行うため、AI翻訳を活用するなどして日本法令の外国語訳の公開の迅速化・内容の充実化を推進します。
71. Well-beingを重視した政策実現
「たくさんお金を稼いで、たくさん物を買うのが幸せ」という物質社会はもう過去のものになりつつあります。夢や生きがい、健康や安らぎといった一人ひとりの多様な幸せ、Well-beingを重視した政策実現にかじを切ることで、希望あふれるWell-beingが高い社会の実現を目指します。
働き方については、生産性だけでなく、社会や組織の中で、自分自身が楽しみながら、存分に能力を発揮できる働き方の実現を後押ししてまいります。経済効率だけを考えるのではなく、一人ひとりが幸せを感じることができる経済へとシフトし、人とのつながり、地域の特性を大切にした多様性のある幸せなまちづくり支援をしていきます。
GDPは経済成長を測る上で大切な指標ですが、GDPだけでは測れない社会の豊かさや人々の生活の質、満足度、幸福度などのWell-beingに関する統計・調査・分析を充実します。また、政府の各種基本計画などにおいて、Well-beingに関連するKPIを設定するとともに、「GDPからGDWへ」(WはWell-being)と、社会の動きを加速させ、国民一人当たりのGDPの増加と、満足度、幸福度の向上を優先する経済の実現を目指します。
72. 国家戦略特区制度の活用によるスーパーシティ等の推進
国家戦略特区制度を活用し、地域の実情に応じた規制・制度改革の実現、早期の全国展開などを進めるとともに、スーパーシティ、デジタル田園健康特区、連携“絆”特区、金融・資産運用特区等において、先端的サービスの実施やデータ連携等を通じて、少子高齢化、人手不足、ビジネス・生活環境整備等の地域課題の解決を進め、地方創生や日本全体の経済活性化に取り組みます。
科学技術
73. 量子コンピュータ等のフロンティア領域への大胆な投資
従来のコストカット型の経済から高付加価値創出型経済へと転換するために重要となる研究開発投資を官民で加速させていきます。将来の経済のパイを拡大させるために、新たな産業や輸出企業を創り出すべく、民間のみでは投資を進めることがディープテックを中心に、フロンティアとなる技術領域を探索し、研究開発政策とスタートアップ政策、知財・標準政策を連動させ、育成する仕組みを構築します。
また、具体的なフロンティア領域である量子コンピュータについて、量子コンピュータ開発、量子アプリケーション開発など研究基盤と社会実装を推進するための開発拠点整備を行い、産学官連携で技術革新と国際競争力を強化します。また、イノベーションを推進する上では人材の育成が不可欠です。大学において重点分野に特化した育成カリキュラムを整備するとともに、若手研究者と産業界のマッチングや共同研究への支援の拡充、博士人材の産業界における活躍促進に向けた支援に取り組みます。
加えて、イノベーション推進の基盤となる産業技術総合研究所などの国立研究開発法人については、国家戦略に基づく研究開発の中核を担う存在として、その機能強化を進めます。さらに、研究開発の成果を社会実装し、速やかに国際市場の獲得に結びつけていくため、産業界による戦略的な国際標準の開発や知的財産の獲得、それらの活用等を積極的に推進します。
74. 次世代航空機開発の技術基盤の強化
裾野が広い航空機産業を我が国の自動車産業に匹敵し得る成長産業とするためには、国が長期的な視点に立って、航空科学技術の施策を戦略的かつ強力に推進していくことが必要です。具体的には、国際競争力向上に直結する機体構造体の軽量化やエンジンの燃費性能の向上やサプライチェーンの自動化・効率化などの先進的な技術開発・実証を進め、国内産業基盤の強化を図るとともに、産官学が連携して我が国の技術力を結集する体制を構築し、イノベーションを創出することで、カーボンニュートラル達成に向けた次世代航空機について、国際連携の中で完成機事業を創出することを目指します。
75. 戦略的宇宙政策の推進
安全保障や経済社会で宇宙の重要性が高まっています。「宇宙基本計画」(2023年6月13日閣議決定)に基づき、戦略的に宇宙政策を推進し、宇宙利用を通じた安全保障、防災・減災、国土強靭化、地球規模課題への対応、宇宙科学・探査における新たな知と産業の創出、また、それらの宇宙活動を支える総合的基盤の強化に取り組みます。
特に、非宇宙のプレーヤの宇宙分野への参入促進や、新たな宇宙産業・利用ビジネスの創出、事業化へのコミットの拡大等の観点からスタートアップを含む民間企業や大学等の技術開発への支援を強化・加速するために、宇宙戦略基金による支援を拡大します。また、準天頂衛星システムの7機体制の確立および11機体制に向けた検討・開発、衛星データの利活用等を推進します。
加えて、急速な技術革新に伴う新たな輸送形態に対応した、宇宙活動法の見直しを含めた制度環境の整備や、世界的な宇宙利用の拡大に対応した円滑な審査を可能とする体制の整備に取り組みます。今後大きな成長が期待される宇宙分野について、政府による徹底した宇宙利用の推進と産業競争力の強化により、宇宙ビジネス拡大の好循環を生み出します。そのため、安全保障や気候変動対策・災害対策などの分野において、積極的に人工衛星等の宇宙の活用を拡大します。アンカーテナンシーやサービス調達等により民間の小型衛星コンステレーションや小型ロケットなどを積極的に利用し、民間の新たなサービスの開発やスタートアップの成長を促進するとともに、基幹ロケットH3の競争力強化や将来宇宙輸送系の実現に向けた開発、宇宙光通信の実証や量子暗号等の宇宙ネットワーク基幹技術の開発等の取組みなど、将来を見据えた戦略的な研究開発を推進します。また、大気の3次元観測機能等を搭載することで観測能力を大幅に強化した次期静止気象衛星の整備、衛星を活用した温室効果ガス観測インフラの構築、アルテミス計画やMMX(火星衛星探査計画)等の宇宙科学・探査を推進します。
76. 安全保障における宇宙利用の強化
我が国を取り巻く脅威に対応して安全保障を強化していくため、最新の宇宙技術を活用して、警戒・監視能力、指揮・通信能力を強化します。我が国の国家安全保障に関する政策判断をより的確に支え、関係機関の活動への一層の寄与を図るインテリジェンス機能を強化するため、情報収集衛星について、光学・レーダ衛星各4機及びデータ中継衛星を加えた機数増を着実に実施し、10機体制が目指す情報収集能力の向上を早期に達成します。
また、宇宙状況把握(SSA)、海洋状況把握(MDA)のための衛星データやAI等を活用したデータ解析、早期警戒衛星、ミサイル防衛のための衛星コンステレーション活用などの宇宙安全保障の強化に向けて、それぞれの施策の具体化を図ります。
77. 宇宙利用の拡大と競争力強化により宇宙産業の成長を促進
今後、世界的に急速な拡大が見込まれる宇宙分野について、利用の拡大と競争力強化により、我が国宇宙産業の成長を促進します。その一環として、我が国独自の小型のレーダー衛星コンステレーションの2025年までの構築に向けて、関係府省による利用実証を行い、国内事業者による衛星配備を加速するとともに、衛星データ利活用も推進します。
また、今後世界的に広く活用が見込まれる小型衛星コンステレーションによる光通信ネットワーク等の技術について、我が国が先行して獲得できるよう、早期に実証衛星を打ち上げるなどの取組みを進めます。さらに、政府によるサービス調達等により、民間小型ロケットの事業化を促進するなど、ベンチャー企業等の新たな取組みを促進します。また、衛星データを利用した新たなサービスの事業化を目指すベンチャー企業等への支援を強化し、宇宙利用の拡大を図ります。宇宙新興国との関係強化を図るなどにより、宇宙産業の海外市場開拓を目指します。
78. 宇宙利用による災害対策・国土強靭化や地球規模課題への対応
大規模災害への備えを強化するため、必要な宇宙システムを着実に整備します。民間の小型衛星コンステレーションなどを活用した災害監視宇宙システムを2025年度までに構築します。準天頂衛星システム7機体制を、2025年度めどに整備し、11機体制に向けた検討・開発を進めます。また、大気の3次元観測機能等を搭載することで観測能力を大幅に強化した次期静止気象衛星について、2029年度の運用開始に向けて着実に整備を進めます。衛星リモートセンシングデータの利活用を通じた、国土強靭化や地球規模課題への対応を促進します。
79. 宇宙3法を通じた宇宙産業の振興と宇宙利用の拡大
2016年に成立した「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」(宇宙活動法)及び「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律」、並びに2021年に成立した「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」を通じて、宇宙産業の健全な発展及び国際競争力の強化や、宇宙利用の拡大に取り組みます。特に、宇宙輸送分野においては、急速な技術革新に伴い、サブオービタル飛行(高速二地点間輸送)、宇宙往還機、再使用型ロケット、有人輸送など新たな輸送形態が出現しつつあることから、日本においても、こうした宇宙輸送サービスを早期に実現するために、宇宙活動法の見直しを含めた制度環境の整備や、円滑な審査体制の整備に取り組みます。
80. 政府研究開発投資の拡大に向けた取組みの推進
「第6期科学技術・イノベーション基本計画」(2021年3月閣議決定)に基づき、ここで掲げられた幅広い取組みを着実に実行していきます。特に、諸外国が科学技術投資を大幅に増やす中、このままでは科学技術先進国としての地位を失うおそれがあることに強い危機感を持ち、本基本計画で掲げられた5年間での官民合わせた研究開発投資の総額120兆円を達成すべく、諸外国の投資状況を踏まえた更なる予算の充実に向けて、官邸及び政治主導で毎年の科学技術予算を確実に措置し、未来投資を拡大するとともに、科学技術・イノベーション政策を強力に推進していきます。さらに、効果的な政府研究開発投資のため、エビデンスに基づく政策立案や指標による計画の進捗把握・評価を推進します。また、2026年度から開始となる次期基本計画に向けて検討を行います。
81. 科学技術政策の強力な推進力となる「司令塔」機能の強化
官邸の科学技術イノベーション政策に関する政治決定と科学的助言の機能強化を図るとともに、我が国の生命線である科学技術を国家戦略として推進するため、「統合イノベーション戦略推進会議」及び科学技術・イノベーション推進事務局の機能を最大限働かせ、関係府省の連携・協力のもと、政策の重複を排除して、効率的・効果的な政策推進を図ります。社会課題解決に向けた取組みを強力に推進するため、「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)を発展させた次期SIPを立ち上げるとともに、官民の研究開発投資拡大に向けた「官民研究開発投資拡大プログラム」(PRISM)を推進し、関係府省の連携・マネジメント体制を継続的に強化します。
82. 科学技術イノベーションの活性化
新たな技術革新を活用して経済成長と社会的課題の解決の両立を目指す「Society 5.0」の実現は、成長戦略の次なる最大のチャレンジであり、官民をあげた科学技術イノベーションの活性化が不可欠です。このため、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」に基づき、科学技術・イノベーション政策を抜本的に強化し、デジタル活用を前提とした持続可能かつ強靱な社会への構造改革や、価値創造の源泉となる研究力の強化に取り組みます。また、総合科学技術・イノベーション会議と、経済財政諮問会議や成長戦略会議などとを連携させるとともに、安保・外交、経済・財政、規制改革などを総合戦略的な科学技術イノベーション政策と位置づけ、官邸を司令塔として、こうした政策を強力に展開します。
83. 学術研究・基礎研究の振興や若手研究者の育成などの基盤強化
我が国は、2000年以降では、米国に次ぐ世界第2位のノーベル賞受賞者を輩出してきました。こうした画期的な研究成果を生み、またイノベーションの源泉となる学術研究・基礎研究を一層強力に推進していきます。このため、研究者の自発性や独創性に基づいて行われる学術研究を支える科学研究費助成事業について、現在展開している抜本的な改革を着実に進めながら、国際競争力を有する研究や若手研究者支援の質的・量的拡充を図ります。
加えて、学術研究から生まれた優れた成果を踏まえ、イノベーションの源泉となる基礎研究を戦略的に推進する「戦略的創造研究推進事業」を強化していくとともに、「未来社会創造事業」を推進し、実用化が可能かどうか見極められる段階を目指した研究開発を実施します。「創発的研究支援事業」について、好事例の横展開や定常化を推進します。また、「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」を一層発展させていきます。世界と伍する研究大学の実現に向けて、大学ファンドの支援対象となる国際卓越研究大学の選定プロセスを着実に進めるとともに、大学ファンドの運用益を活用することにより、博士課程学生を育成する取組みを推進します。
併せて、地域の中核となる大学や特定分野の高い研究力を持つ大学等が、特色ある強みを発揮し、社会変革を牽引する取組みを強力に支援する「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」に基づき、各施策を引き続き強力に推進します。更に、組織・分野の枠を超えた共同利用・共同研究体制を強化することにより、全国の研究者のポテンシャルを引き出し、我が国の研究の厚みを大きくします。また、競争的研究費について、その多様性や連続性を確保しつつ、間接経費30%を措置するとともに、大幅に拡充します。
84. 持続的なイノベーションの創出に向けたシステム改革
新たな社会や経済への変革が世界的に進む中、デジタル技術も活用しつつ、未来を先導するイノベーション・エコシステムの維持・強化が不可欠です。このため、企業の事業戦略に深く関わる大型共同研究の集中的マネジメント体制の構築、政策的重要性が高い領域や地域発のイノベーションの創出につながる独自性や新規性のある産学官共創拠点の形成を推進します。
更に、スタートアップの創出・成長支援や小中高校生から大学生等までのアントレプレナーシップ教育などを推進します。また、地域発のイノベーション創出に向けて、地域の様々なプレイヤーが事業化に向けたチームとして活動を行い、事業化の成功事例を蓄積する取組みを推進します。我が国の人材育成及び学術研究の中心的役割を担う国公私立大学の抜本的改革を確実に進めるとともに、運営費交付金や施設整備費補助金、私学助成などの基盤的経費を拡充します。
「研究成果の最大化」を使命とする国立研究開発法人の基盤的経費を充実するとともに、2025年までに大学・研究開発法人などに対する企業の投資額を2014年の水準の3倍とする目標を踏まえ、600兆円経済の実現に向けて科学技術イノベーションの活性化を図り、経済の好循環を実現するため、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律に基づく研究開発法人による出資業務を推進します。
更に、研究開発税制や寄附金税制をはじめとするイノベーション促進に向けた税制改革や、革新的な技術シーズの事業化のためのリスクマネー供給などの政策金融の改革、特許などの知的財産の迅速な保護及び円滑な利活用を促進するための知的財産制度の改革、イノベーションの隘路となっている規制や社会制度などの改革や新技術に関する優先的な政府調達の実現、中小企業などに対する産学官連携などを強力に推進します。
国際標準の獲得を目指す各国の動きが一層活発化していることから、官民協働による戦略的な国際標準化活動を着実に推進します。また、我が国が優れた先端技術を持つ基幹インフラについて、建設から運用、人材養成への寄与までを一体システムとして捉え、官民協働による海外輸出・展開活動を大幅に強化します。
85. 国の経済成長と安全保障の基盤となる基幹技術の推進
自然災害観測・予測・予防・対応・復旧技術、海域監視・観測技術、海洋資源調査技術、宇宙探査技術(「はやぶさ2」などの無人探査、有人探査)、次世代ロケット・衛星技術、核融合技術(ITER計画、先進超伝導トカマク装置JT-60SAなど)、次世代スーパーコンピュータ開発・利用技術、光・量子技術、気候変動高精度予測・影響評価技術などは、研究開発に長期間要し、大きな開発リスクを伴う技術であり、民間企業では対応が難しい技術です。これらの技術は、総合的な安全保障を含め国の存立基盤を確固たるものにするばかりか、産業の競争力の維持・発展、安全・安心な社会の実現に寄与する技術です。
最近の安全保障環境の変化と対応、グローバルな環境での競争激化の観点からも、国自らが戦略的かつ長期的視点に立って、このような基幹技術の研究開発を今後強力に推進していきます。更に、日本が強みを有する分野であるマテリアルや省エネ・再エネ技術については、我が国の基幹産業を支える要であり、多様な研究領域・応用分野を支える基盤であることから、革新的な材料開発や窒化ガリウム(GaN)などを活用したデバイスなどの開発に向けた研究をオールジャパンで強力に推進します。
86. 量子技術による社会変革に向けた取組みの強力な推進
将来のコンピューティング、センシング、通信性能等の飛躍的な向上を実現し、多様な分野において産業の成長機会の創出や社会課題解決の実現に貢献することが期待される量子技術について、「量子未来社会ビジョン」を踏まえ、最先端の量子技術の利活用促進や新産業/スタートアップ企業の創出・活性化に向けた取組みを政府全体で強力に進めます。
特に、国際競争が激化する量子コンピュータについては、2022年度に国産の初号機を整備し、利用ニーズ等を踏まえたテストベッドの高度化や必要な研究開発を着実に推進するとともに、多様な分野との融合によるソフトウェア研究を強力に推進します。また、量子チップや周辺機器等の試作・製造・評価、サービスを含むユーザー市場開拓支援や標準化支援等、グローバルな視点で将来の事業化を見据えて産業界を総合的に支援する拠点を産業技術総合研究所に整備します。
また、量子セキュリティ・ネットワークについては、量子暗号通信ネットワークのオープンテストベッドの拡張・充実を図り、商用化に向けて幅広いユーザーが参加できる利用実証を拡大するとともに、将来の量子コンピュータの大規模化や量子暗号通信の高度化等を実現する量子通信基盤として量子インターネットの要素技術の研究開発を推進します。さらに、基礎研究から技術実証、オープンイノベーション、知的財産管理、人材育成等に至るまで産学官で一気通貫に取り組む量子技術イノベーション拠点について、新たな拠点の形成やヘッドクォーター機能の抜本的な強化など、拠点体制の強化に取り組みます。
87. G空間(地理空間情報)プロジェクトの推進による新産業創出
G空間社会実現のため政府の総合司令塔機能の強化、産学官連携の一層の強化を図り、自治体のICT化も含め更なるG空間情報の利活用を促進するとともに、2023年度を目途として、日本単独で持続・自律的測位を可能とする準天頂衛星システムについて、7機体制を確立するとともに、後継機開発整備および機能・性能向上と、これに対応した地上設備の開発・整備及びセキュリティ強化を着実に行い、防災・農業・交通等の様々な分野で新たな産業やサービスを実現します。
88. G空間(地理空間情報)プロジェクトによる強靱な社会基盤インフラの構築
地理情報と衛星測位情報を統合活用したG空間情報は、領土、領海、領空統治の基本情報です。国、地方、民間が保有する様々なG空間情報を集約・提供するG空間情報センターの活用、ベース・レジストリに指定された電子国土基本図の継続的な整備・更新、天候や昼夜を問わず地表面を観測可能なSAR衛星の活用等を通じ、我が国の外交・経済・防衛上の安全保障の確保、国土の強靱化等に役立てます。
また、準天頂衛星システム等の基盤を活用し、国内外の関係機関と連携することで、我が国及びASEAN諸国等の安全保障、災害対策、海洋監視、国土管理の強化にも貢献します。
89. 「地理空間情報活用推進基本計画」の効果的な推進
「第4期地理空間情報活用推進基本計画」に基づき、G空間情報基盤の整備・充実とともに、自然災害・環境問題への対応、経済・産業の活性化、豊かな暮らしの実現等の様々な分野において、自動走行システムの開発・普及、無人航空機等の空モビリティの社会実装、まちづくりDXのデジタルインフラとなる3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化など、G空間情報を活用したプロジェクトを推進します。
その進捗状況のフォローアップを行い、技術進展、社会のニーズ変化に応じて必要な対応をとることで、G空間ビジネスの社会への実装に取り組みます。この際、個人情報の保護や国の安全確保の観点から、データ悪用リスクの低減等に取り組みます。
90. G空間(地理空間情報)プロジェクトによる資源確保と海の防災システム高度化の促進
我が国は世界第6位と言われる排他的経済水域を持つ国土大国です。「海洋基本法」、「宇宙基本法」と「地理空間情報活用推進基本法」を連携推進することで、我が国近海の地形をメートル単位で正しく把握し、正確な位置情報のもとで大陸棚や深海に眠るエネルギーやレアメタル資源等の発掘、水産資源の確保等に努めます。
また、今後想定される南海トラフ巨大地震をはじめとした、津波による甚大な被害が予想される地震への対策として、沖合の海底プレートの移動や津波の高さをセンチメートル単位で常時監視するシステムを開発することで、地震・津波を早期に検知する技術の高度化等も図り、防災・減災に役立てます。
91. 地理空間情報を活用した自然災害からの復旧・復興支援、防災・減災対策
東日本大震災発災直後から、津波浸水状況の把握や地籍整備をはじめ、大規模な津波リスクを考慮した浸水想定区域の設定やハザードマップの策定等、初動対応や復旧・復興支援等の様々な局面で地理空間情報が有効活用されてきました。そこで得られた教訓を踏まえ、今後想定される南海トラフ巨大地震等の大規模災害に備えるため、先進的技術とICTの連携活用を行うことで、安心・安全な社会の実現を目指します。
また、準天頂衛星システムの災害・危機管理サービス、衛星安否確認サービス等を含むG空間情報を高度に活用した防災・減災に係る技術「G空間防災技術」の社会実装の推進と、Lアラート(災害情報共有システム)の活用等を通じ、住民等への情報伝達の充実を図ります。
91. 地理空間情報を活用した自然災害からの復旧・復興支援、防災・減災対策
東日本大震災発災直後から、津波浸水状況の把握や地籍整備をはじめ、大規模な津波リスクを考慮した浸水想定区域の設定やハザードマップの策定等、初動対応や復旧・復興支援等の様々な局面で地理空間情報が有効活用されてきました。そこで得られた教訓を踏まえ、今後想定される南海トラフ巨大地震等の大規模災害に備えるため、先進的技術とICTの連携活用を行うことで、安心・安全な社会の実現を目指します。
また、準天頂衛星システムの災害・危機管理サービス、衛星安否確認サービス等を含むG空間情報を高度に活用した防災・減災に係る技術「G空間防災技術」の社会実装の推進と、Lアラート(災害情報共有システム)の活用等を通じ、住民等への情報伝達の充実を図ります。
93. 東京電力福島第一原発の廃炉研究に向けた国内外の英知の結集
福島原子力発電所の事故対策において、環境モニタリングや放射性物質の環境動態調査、地元住民の支援などの現行施策を引き続き実施するとともに、原発事故の後処理や廃棄物の処理・処分、放射線可視化技術などの廃炉現場等で必要とされる技術を早急に確立、普及します。世界でも経験のない燃料デブリの取り出しや放射性廃棄物の処理処分などを着実に進め、廃炉を加速していくため、日本原子力研究開発機構廃炉環境国際共同研究センターの機能を強化し、福島県富岡町に整備された国際共同研究棟のほか、楢葉遠隔技術開発センターや大熊分析・技術センターなども活用した国内外の大学・研究機関との共同研究などを推進することにより、世界の英知を結集した国際的な廃炉研究拠点を形成します。
94. 未来社会創造に向けた取組みの推進
「Society 5.0」の実現に向けて、AIやビッグデータ、IoT、サイバーセキュリティなどの基礎研究から社会応用まで一貫した研究開発、それを活かした新しい価値やサービスの創出、人文社会科学の知見も活用した経済・社会制度の整備・構築、AI技術者やデータサイエンティスト、サイバーセキュリティ人材といった関連する人材の育成などを強力に推進します。また、革新的なAIやビッグデータ、IoT、サイバーセキュリティなどの数理・情報科学技術のみならず、AIロボット技術やバイオテクノロジー、マテリアル、光・量子科学技術など、未来社会創造の基盤となる研究開発などに戦略的に取り組みます。
95. マテリアル分野の研究開発促進
日本が強みを有し、経済的・社会的・国家的な重要課題解決に幅広く貢献するマテリアル分野について、強みを維持するための研究開発力の強化や人材育成、産学連携を強力に進めるとともに、全国の共用設備の高度化、全国から創出されるマテリアルデータの統合・管理・AI解析を含む利活用を可能とするデータ基盤の強化や、データも活用した脱炭素などの社会課題解決に向けた革新的マテリアル研究開発を強力に進めます。
96. チャレンジングな研究開発と研究DXの推進
「ムーンショット型研究開発制度」について、目標達成に向け大胆かつ重点的な投資とともに、欧米等との国際連携の強化や社会実装の担い手となる産業界との連携充実など、研究開発を強力に推進していきます。加えて、意欲ある研究者が自由にアイディアを試すことができるよう、全国的な研究設備・機器の共用体制の強化、研究交流のリモート化や、研究設備・機器への遠隔からの接続、スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステムをはじめとした研究デジタルインフラや先端共用設備、大型研究施設も活用したデータ駆動型研究の拡大など、研究活動のデジタルトランスフォーメーション(研究DX)を推進します。特に、気候変動・レジリエンス、マテリアル、ライフサイエンス、人文・社会科学等の分野において研究データの創出・統合・利活用を一体的に進めユースケース形成に係る取組みを強化します。
97. 研究人材の育成、確保、支援等
ノーベル経済学賞につながるような優れた人材の養成に向けて、データやAIを活用したデータ駆動型研究を含む人文社会科学の研究に対する支援も大幅に拡充します。将来を担う博士後期課程学生の処遇向上と研究環境の確保、大学の人事制度の抜本的改革を含む大学改革などを通じた優秀な若手研究者の育成・確保、研究マネジメント人材などの多様な人材の育成・確保、即戦力社会人や企業マインドを持つ人材の育成、女性研究者の活躍促進に向けた支援の充実、更には次代を担う人材の育成などを進めます。
海外に出る研究者などへの支援や、優れた外国人研究者の受入れを一層促進しつつ、種々の研究開発事業における国際共同研究を更に強化します。
98. 大型研究施設・設備の整備
世界の学術フロンティア等を先導する国際共同研究プロジェクトを推進するとともに、世界最先端のスーパーコンピュータ、大型放射光施設SPring-8/SACLAやNanoTerasu、大強度陽子加速器施設J-PARCなどの先端的な研究施設・設備などの戦略的な整備・高度化を進めつつ、こうした施設などの産学官の幅広い利用を促進します。特に、現行の約100倍の明るさを誇る世界最高峰の放射光施設として、科学的・産業的に飛躍的なイノベーション創出が期待されるSPring-8-Ⅱの整備を推進します。
素粒子物理学分野の大規模プロジェクトである「国際リニアコライダー(ILC)」にも資する加速器技術の更なる向上に日本が主導的に役割を果たすため、しっかりと議論してまいります。
99. 経済的・社会的・国家的な重要課題への対応
2050年カーボンニュートラル達成に向けて、画期的な省エネにつながる次世代半導体・フィジカルインテリジェンスや、蓄電池、水素等の重要技術領域において、革新的GX技術創出のための研究開発を進めるとともに、化石燃料の高効率利用、原子力施設の安全確保や試験研究炉・革新炉の整備を含めた原子力の利用に資する研究開発、核融合などの革新的技術の研究開発などオールジャパンで進めます。
更に、経済成長と社会課題解決の二兎を追えるバイオものづくりに関する基盤技術の研究開発を進めるとともに、資源や食料の安定的な確保に向けた研究開発にも取り組みます。また、気候変動の予測やその影響・対策の評価を行うための信頼できるデータの創出・蓄積や技術の研究開発、地球環境情報をビッグデータとして捉え経済・社会的課題の解決に活用するための情報基盤である「データ統合・解析システム(DIAS)」を通じた研究開発を強力に推進します。
100. 健康長寿社会の実現に向けた研究開発
健康長寿社会の実現に向けて、健康・医療戦略推進本部のもと、日本医療研究開発機構を中心に、我が国の強みを最大限に活かし、医薬品、医療機器・ヘルスケア、再生・細胞医療・遺伝子治療やゲノム・データ基盤など世界最先端の医療の実現、がん、精神・神経疾患、老年医学・認知症、難病、感染症・ワクチンなどの現在および将来の我が国において社会課題となる疾患領域に関する研究開発などを強力に推進します。
101. 国家安全保障研究への対応強化
宇宙空間や海洋・サイバー空間、テロ・災害対策も含めた国家安全保障への対応を強化します。インターネットやGPSを生み出した米国の国防高等研究計画局(DARPA)を参考に、国家安全保障に関する研究が先端的・挑戦的な研究開発を牘引し、成果が社会に還元されていることを踏まえ、我が国でも技術の多義性や両義性(いわゆるデュアルユース性)も念頭に、研究開発支援(ハイリスク研究支援)を強化します。
102. 経済安全保障に資する戦略的取組みの強化
AIや量子など革新的かつ進展が早い技術が出現する中、経済と安全保障を横断する領域で国家間の競争が激化し覇権争いの中核が科学技術・イノベーションとなっています。そのような状況の中、我が国の戦略的不可欠性(優位性)を確実に確保し、経済安全保障を強化・推進するため、政府に政策提言を行うシンクタンクを創設するとともに、経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)により、先端的な重要技術を強力に守り育てるための研究開発を複数年度にわたり支援し、その成果の適切な活用を推進します。
103. 本格的な産学官連携とスタートアップの創出、科学技術イノベーションによる地方創生
国連の持続可能な開発目標(SDGs)に基づく未来のありたい社会像を拠点ビジョンとして掲げ、その達成に向けたバックキャストによるイノベーションに資する研究開発及びその社会実装と産学官連携マネジメントシステムの構築をパッケージで進めることで、本格的な産学官連携を推進します。更に、スタートアップの創出支援・成長や小中校生から大学生等までのアントレプレナーシップ教育などを推進します。
また、地域発のイノベーション創出に向けて、地域の様々なプレイヤーが事業化に向けたチームとして活動を行い、事業化の成功事例を蓄積する取組みを推進し、科学技術イノベーションを駆動力とした地方創生を実現します。
104. 大学における世界最高水準の教育・研究水準の向上とイノベーション創出の強化
国立大学については、基盤的経費である運営費交付金を拡充するとともに、客観的な成果指標に基づく資源配分の仕組みや財務基盤の強化などの大学改革を推進します。私立大学等経常費補助金についても、教員数の維持や施設・設備の管理・運用などで、多大な困難が生じているとの指摘は未だ解消されていないため、我が国の基礎科学を強化する観点からも、これらの基盤的経費を拡充するとともに、効果的で質の高い教育研究に取り組む私立大学等を重点的に支援します。
105. 国立研究開発法人の基盤的経費の確実な措置と出資の推進
「研究成果の最大化」を使命とする国立研究開発法人の基盤的経費を確実に措置するとともに、2025年までに大学・研究開発法人などに対する企業の投資額を2014年の水準の3倍とする目標を踏まえ、600兆円経済の実現に向けて科学技術イノベーションの創造・活性化を図ります。また、経済の好循環を実現するため、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」に基づく研究開発法人による出資業務を推進します。
106. 持続的なイノベーション創出に向けた制度改革
研究開発税制や寄附金税制をはじめとするイノベーション促進に向けた税制改革や、革新的な技術シーズの事業化のためのリスクマネー供給などの政策金融の改革、特許などの知的財産の迅速な保護及び円滑な利活用を促進するための知的財産制度の改革、イノベーションの隘路となっている規制や社会制度などの改革や新技術に関する優先的な政府調達の実現、大学等の研究成果の技術移転、中小企業などに対する産学官連携などを強力に推進します。
107. 国際標準化活動と基幹インフラ輸出の推進
国際標準の獲得を目指す各国の動きが一層活発化していることから、官民協働による戦略的な国際標準化活動を着実に推進します。また、我が国が優れた先端技術を持つ基幹インフラについて、建設から運用、人材養成への寄与までを一体システムとして捉え、官民協働による海外輸出・展開活動を大幅に強化します。
108. 科学技術外交の戦略的展開
科学技術イノベーションを積極的に平和外交や経済外交に活用し、「科学技術のための外交」及び「外交のための科学技術」の双方に取り組みます。このため、先進国・新興国・途上国との重層的な連携・協力の構築や、自然災害や感染症など、地球規模で発生する深刻な課題の解決に向けた共同研究・人材育成の推進、ODAを活用した科学技術イノベーションに関する支援・協力などを推進します。
また、次のブレークスルーにつながる先端研究及び国際頭脳循環を欧米等先進国と柔軟・機動的かつ戦略的に強化します。加えて、ASEANやインドを含むグローバル・サウスなどとの戦略的な協働も進めます。国連「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に、科学技術イノベーションが大きな役割を果たすとの認識に基づき、国内外の社会的課題の解決に科学技術を一層活用するために、国連機関との連携等を通じた実証を継続します(STI for SDGsの推進)。
109. 科学技術外交・研究交流の推進と研究インテグリティの確保
外務省科学技術顧問などが主導して、科学技術イノベーションに関する国際会議におけるアジェンダ設定や政策誘導などに取り組むとともに、国際会議の誘致や主催などによる対外発信・ネットワークの強化に取り組みます。優秀な若手研究者等の海外との間の戦略的な派遣・招へいや、国内外に研究拠点を構築することなどにより国際的なネットワークを強化します。
更に、海外動向の収集・分析を進めるとともに、安全保障に関わる技術などの管理を強化し、諸外国と調和した研究の健全性・公正性(研究インテグリティ)の自律的確保を促進します。国際的な核不拡散体制の強化に向けて、我が国の技術を積極的に活用し、これに貢献します。
110. H3ロケットの開発及び革新的将来宇宙輸送システムの実現に向けた取組みの推進
我が国の宇宙活動の自立性の確保と産業基盤の維持のためには、国際競争力の高い宇宙輸送システムが必要です。このため、官民一体となって、H3ロケットの安定した打上げを実現し、早期に初号機を打ち上げます。更に、複数の衛星を同時に打ち上げることができる機能の追加や、種子島宇宙センターなどの地上システムの改良により打上げ高頻度化を図るなど、更なる競争力強化を進めます。
また、宇宙輸送システムの抜本的な低コスト化等を目指した革新的将来宇宙輸送システムの実現に向け、官民連携による研究開発を進めます。
111. 防災・災害対策や、地球環境問題解決等のための衛星開発及び宇宙デブリ対策
カーボンニュートラルの実現やグリーン成長に貢献する温室効果ガス観測技術衛星や、次世代通信衛星技術等の獲得を目指した技術試験衛星、世界の気象や防災情報の高度化を図る降水レーダ衛星等の開発を進めます。また、衛星コンステレーションを含む衛星開発において、官民で活用可能な挑戦的な技術や新たな開発・製造方式等に関する研究開発を進めます。さらに、各国の先頭で宇宙デブリ対策に取り組み、世界に貢献します。
112. 宇宙科学・探査の戦略的推進
宇宙科学・探査分野においても日本が主体的な役割を担います。その一環として、国際協力のもとで、「はやぶさ」「はやぶさ2」に続き、人類初の火星圏からのサンプルリターン実現に向けた火星衛星探査計画(MMX)や、我が国が強みを持つX線天文観測による宇宙の構造と進化にかかる数々の謎の解明を目指すXRISMを推進します。
113. アルテミス計画等の推進
国際宇宙探査「アルテミス計画」に参画し、ゲートウェイ(月周回有人拠点)の機器開発や有人与圧ローバ(宇宙服なしで長期間搭乗できる月面探査車)の民間との協働による開発を進めるとともに、2030年以降の国際宇宙ステーション退役後を見据えた技術開発を行う等、月探査・地球低軌道利用に向けた取組みを加速していきます。また、米国人以外で初となることを目指し、2020年代後半に日本人の月面着陸を実現します。
114. 海洋研究開発の戦略的推進
「海洋基本法」の理念と海洋基本計画及び海洋開発等重点戦略に基づき、海洋研究開発を戦略的に推進します。船舶による観測や、漂流フロート、人工衛星などの観測機器の展開、自律型無人探査機(AUV)などを活用した無人海洋観測システムなど、海洋の総合的な観測体制を構築します。
また、気候変動予測の高精度化を図り、カーボンニュートラルの実現に貢献するとともに、東日本大震災の知見を活かしつつ、海底地殻変動等のリアルタイム観測など海域地震発生帯における動的挙動を総合的に把握し、国民の安全・安心の確保に役立てます。更に、2021年から開始した「国連海洋科学の10年」等の枠組みに基づく国際連携・協力や海洋分野のDXを積極的に進めます。加えて、海洋分野における観測・研究への市民参加を進め、地域における社会課題の解決や人文・社会科学と自然科学を含む多様な知を総合的に活用する「総合知」の創出を図ります。