多くの企業がDX(Digital Transformation)の取り組みを進めることで業務の
そうした中で新規事業やスタートアップにおいて、いま注目されている業種の一つが「ドローン」です。
経済産業省も「空の産業革命に向けたロードマップ」というガイドラインを作成するなど、成長産業の一つとしてドローンを位置付けています。業界では2022〜2023年を境にドローンがより身近な存在となって、全国的に普及するという見方もあり、2022〜2023年に向けた事業計画や戦略を組んでいるところも多いと聞きます。
日本では、ドローンを使った新規事業やドローンスタートアップが急速に増えています。日本のドローンスタートアップは、映像制作、商品の配送、広告プロモーションなどの様々な形で利用されています。
これらの会社が提供しているサービス(アプリ)としては、ドローンの飛行や鉄塔の点検、レポートの作成などを自動で行うサービスや、産業用ドローンの導入・活用を検討中の人向けの相談・問い合わせにも対応しているサービスなどがあります。
ドローンと一言で言っても種類は様々で、小型ドローンや物流や点検を行う産業用ドローン、水中で点検を行う水中ドローンなどがあります。
ドローンの規制緩和も進んでおり、国もドローン事業を推進しています。このコラムが新規事業やスタートアップでドローンを検討される方の参考になれば幸いです。
スタートアップで注目を集めるドローン
ドローンと言えば、よくテレビ番組などの映像制作で、空撮されている映像を見る機会が一番身近なところかと思います。
映像制作の分野ではかなり定着しているように感じますが、実はいま様々な産業でドローンが使われ研究開発されています。
例えば商品などの無人配送、建物や構築物などの点検、地形や斜面などの3D測量、土木工事の出来形の測量、都市開発や災害時の被害状況調査、気象観測など、業界内の人でも把握しきれないほど、多様な用途で使われています。
また日本郵便もドローンによる配送サービスの実用化に向けた取り組みを進めており、配送人員の不足や過疎地域への配送効率化を目指しています。
一つの産業でドローンサービスが実用化されれば、立ち上げたドローンスタートアップだけではなく、サービス提供するためのアプリケーション開発や映像配信プラットフォームの構築、周辺の解析ソフトやハードの整備など、派生した周辺ビジネスにも市場が広がる可能性を秘めています。
ドローン新規事業・スタートアップでまず抑えるべきこと
興味はあるけど、何からはじめていいかわからない方のために、まず抑えるべき3つのポイントを紹介します。
①ドローンとは何かをまず知る
業界に携わるならまず知識や技能を身に付けなければなりません。
ドローンの基礎知識に加えて、操縦方法を知る、実際に操縦できる、関連する法律・規制を理解する、仕組みを理解するなど、知らなければならないことは山積みです。クルマに携わる仕事をするために、クルマの知識もなく運転もできない、法律も知らない、となるとなかなかうまく行くとは思えません。ドローンに携わっていくのであれば、お金儲けが一番の目的であったとしても、正しい知識を持つことは重要です。
自動車に運転免許があるように、ドローンの操縦にも運転免許が必要になります。今後、無人航空機(ドローン、UAV)を飛行させるために必要な知識及び能力を有することを証明する制度(技能証明)が創設されます。技能証明は、一等(レベル4相当)及び二等に区分され、技能証明の試験は、国が指定する者(指定試験機関)が行います。国の登録を受けた講習機関の講習を修了している場合は、学科・実地試験の全部又は一部が免除される予定です。技能証明の有効期間は3年とし、更新の際は登録更新講習機関が実施する講習を修了しなければならないとされています。
今後は、弊社パートナー企業である株式会社スカイピークと連携し、ライセンス取得のための講習実施や機体認証を取得した機体の調達など補助金等を活用しながら、効率的なドローン事業の立ち上げを支援していく計画です。
今後、レベル4と呼ばれる自律飛行や複数機制御を前提とした有人地帯の目視外飛行の社会実装に向けては、そうした操縦ライセンスに加えて高度な運航管理が求められます。
簡単に説明すると従来は、ラジコンのようにマニュアル操縦で飛行させていたドローンを自律飛行に移行していく必要があります。加えて、パイロットが肉眼で確認できる目視内飛行に変わって、ビルの裏側に回り込む際にも適切な安全管理が求められる目視外飛行を前提とした飛行スタイルに大きく変化していきます。また事業化の視点ではいかに運航にかかる人手を最小化できるかがポイントです。機体:パイロットが1対1の運航から10:1の運航を行うことでドローンオペレーションにかかるコストを大幅に縮減できる可能性があります。
弊社は、ドローンソリューションの事業化に当たってはこうした運航管理手法の高度化が必要であると考えており、株式会社トラジェクトリーと連携して運航管理システム(UTM)のPoCへの実装を進めています。運航管理システム(UTM)を活用することにより①リモートコントロール、②目視外飛行、③オペレーションの省人化 の3つを同時に実現できると考えております。
②ドローンを用いてどの産業(市場)に参入するかを選択する
ドローンは映像や物流、移動、農業、建設、測量など、あらゆる産業で活用の可能性があります。
ビジネスチャンスとしてドローンを始めるにあたって、興味があったり、今ある知見や財産を活かせる部分があるなど、特定の産業に絞ってビジネスを組み立てることが重要です。
例えば、
・映像制作であれば、よりきれいな映像を撮れるようになる
・農業であればムラなく農薬散布できるようになる
・測量であれば土地の起伏や地形なども正確に測れるようになる
など目的が異なります。
横展開で応用できる場面もあると思われますが、まずは一つの製品や技術に突き詰めてビジネスにすることをおすすめします。しかしながら、単にドローンが持つ標準機能を活かした事業では他社と差別化を図ることはできません。すなわち強みを持つ既存事業×ドローンにより業務の省人化や業務DXを実現することで、初めてドローンを活用した新規事業にスケーラビリティを持たせることが可能になります。
参入される市場を見極めるには、①既存ビジネスとのシナジー、②市場の成長性、③競合優位性の3つの軸から検討する必要があります。マーケットサイズだけ見れば点検領域の市場規模が大きく橋梁、鉄塔、基地局、発電施設、プラント、工場やビル、船舶といったインフラや設備点検の現場で、ドローンの活用が普及していくと考えられます。そうした中で、一部のドローンサービス事業者からソリューションが提供されている現状です。
一方で、近接撮影時の自律飛行(非GPS環境)やカメラ解像度によっては検知できないクラックがあったり、またそれらのクラック等点検箇所の検知への画像解析技術の実装などドローン点検の普及にも様々な課題があり、ハードおよびソフト両面での技術開発が必要になると考えられています。
また、ドローン物流も最適な産業用物流機がない、ペイロードやバッテリーの問題から一般化しておりませんが、今後量産型で安価かつ信頼性の高い物流機の登場によって急速に市場が立ち上がる可能性があります。物流業界は、ドライバー不足や交通状態、再配達の非効率性また過疎地域では積載率の低下など多くの課題が山積しています。
物流業界においてドローンが実装されることで過疎地域での物流網の維持や災害発生時の緊急支援物資の配送など様々なニーズに対応できると考えています。ドローンによる物資輸送の事業化には早期に、信頼性が高く、安価な物流用ドローンの開発が望まれています。
③ドローンを活用した事業計画の構築
ここが最も重要な部分です。
参入するビジネス領域の情報収集と分析を行い、いま自社の現地点はどこで、目的地はどこなのか?
目的に着くまでのロードマップ(スケジュール)と必要な資金調達や人材採用、研究開発内容など、事業計画の構築はビジネスの成功に大きく関わってきます。
これまでに存在しない全く新しいビジネスを始める場合も、既存ビジネスが存在する場合も同じで、実現可能な事業計画をつくることで、周囲の協力や金融機関の支援を得ることができます。特にドローンの社会実装が十分に進んでいない市場環境において参入する市場の見極めや競合他社の分析、自社の強みの定義など事前準備が重要です。競合分析や事業化までの時間軸をしっかりと整理し、必要な資金をしっかり確保した上でドローン事業に新規参入する必要があります。
ドローン事業はいまどのような会社があるのか(競合分析)
〇ソフトバンク /「SoraSolution」
ソフトバンクが提供するドローンサービスが「SoraSolution」です。
さまざまな社会課題を「空で解決」し、豊かな社会を創るためのドローン事業を提供しています。
空撮を利用した目視作業の自動化、高所作業の代替や、ドローンで取得したデータのAIを活用した自動解析などを展開しており、
今後リアルタイム伝送の対応や空のインフラ化に向けた機能拡張が展開される予定です。
(※2020年5月時点のソフトバンク社ホームページを参照)
〇楽天ドローン
楽天のドローンは物流領域で、まさに楽天で注文した荷物が無人で自動で届く。
そんなドローン開発を行っています。ACSL社と共同開発し、オリジナルのマルチコプター型ドローン「天空」を展開。
最大の特徴は、完全自律飛行による配達です。コントローラで操作する必要はなく離陸してから目的地で荷物を下ろし、
帰還するまで全てが自動になるドローンになっています。
(※2020年5月時点の楽天ドローン社HPを参照)
〇楽天AirMap
楽天はAirMap社(https://www.airmap.com/)と連携。AirMap社は、1日に10万回以上のフライトを支えている世界有数のドローン向け空域管制プラットフォームを提供しています。数百万というドローン、そして数百ものドローン関連企業がプラットフォームを活用し、低高度で安全に飛行するために必要なデータを共有。同社が持つUTM、ジオフェンシング、ドローンのリモート識別、衝突回避システムなどのソリューションが航空業界へ新たな領域をもたらします。
(※2020年10月時点の楽天AirMapHPを参照)
〇トラジェクトリー
2019年に総額1.2億円の資金調達を実施した、ドローンのAI管制プラットフォーム(UTM)開発と長時間飛行可能な産業用ドローンの機体販売を行う会社です。
トラジェクトリーは、ドローンのAI管制プラットフォーム、AI監視クラウドサービス、4Dトラジェクトリーシミュレーターなどドローンやエアモビリティなどの無人航空機に関する管制プラットフォームを提供しており、誰もが簡単かつ安全にUAV(無人航空機)の恩恵を享受できる社会を実現し、人々のQoL(Quality of Life)向上に貢献している企業です。
独自のAI管制システムをはじめとしたソフトウェアの開発実績を重ね、気候変動や大規模災害、物流、監視、点検といった各産業分野の人手不足やインフラ老朽化を始めとした社会問題に対して、ドローンが当たり前のように空を飛び、誰もが空の恩恵を享受できる社会の実現に取り組んでいます。
クルマに道路があるように、無人航空機には航路が必要であり、無人航空機同士が安全に航行可能な飛行ルートを提供しています。無人航空機の航路整備は、今後必要となる空のインフラとして事業展開しています。
(※2020年5月時点のトラジェクトリー社HPを参照)
〇スカイピーク(SkyPeak)
同社は、ドローンの社会実装を支援することで産業の更なる発展を推進するドローン人材を養成する会社です。
同社は、トラジェクトリーが提供する航空管制システム開発で培った経験やドローン運用における実務経験やノウハウを体系化しドローン4Dトラジェクトリーシミュレーターをすることで、「レベル4」(有人地帯での目視外飛行)運用を前提とした適切な空域管理と指示ができる管理責任者(オペレーター)の人材育成を促進し、ドローン業界の健全な発展に貢献していきます。
また、同社による、実務経験を基にした質の高いノウハウの体系化のみならず、大企業の新規事業開発に向けてAI管制プラットフォームやドローンAI監視クラウドサービスを活用した民間企業の私有地内や自治体単位でのドローン自律航行を想定した導入支援にも対応しています。
(※2020年10月時点のスカイピーク社HPを参照)
〇センシンロボティクス(SENSYN ROBOTICS)
同社は2018年に総額約12億円の資金調達に成功した
ドローンソリューション会社です。
分野は3つで設備点検・災害対策・警備監視が主力です。
上場企業との取引実績も多数あり、社会課題の解説に取り組んでいます。
(※2020年5月時点のセンシンロボティクス社HPを参照)
〇Spiral
2020年に数千万円単位の資金調達に成功した、
屋内特化型のドローン自律飛行システムの会社です。
非GPS環境下での屋内用ドローン自律飛行での測量や監視サービスを提供。
非GPS環境下というのは、例えば長いトンネルの中や地下倉庫施設など、
遠隔操作が難しい環境下でもドローンが稼働できることで、
省人化、効率化を実現しています。
(※2020年5月時点のSpiral社HPを参照)
Anduril Industries社は、VR/ARを含む様々な先端技術を用いて、米国の国防分野に関する製品開発を行っている。
情報プラットフォーム「Lattice」やAI搭載の小型ドローン「Ghost 4」、対UAS(無人航空機)技術「Anvil」などを開発している。
Anvilは、国境を監視し、敵のドローンを空からノックアウトすることも可能です。
〇Manna Drones Inc. (アイルランド)
Mannaは、レストランチェーンやフードデリバリープラットフォーム、ダークキッチン(ゴーストレストラン)事業者にドローンによるオンデマンド物流サービスを提供しています。物流ドローンは全天候型のモジュール式ドローンを活用しています。ドローン配達を普及させ、二酸化炭素排出量の削減のみならず、雇用創出にも貢献します。
〇Zipline(米国)
医薬品のドローン配送スタートアップであるZiplineは、最初に道路状況の悪いルワンダやガーナで固定翼ドローンを活用して血液、ワクチン、救命薬等の必需品を配送したことで有名です。垂直統合型のビジネスモデルでハードの開発から物流ソフトウェアおよび発射および着陸システムの開発等の設計から開発までを行っています。パンデミックに苦しんだ多くの企業とは異なり、Ziplineは、COVID-19ワクチンも提供するなど、事業をさらに加速させています。
〇Wing(米国)
Alphabet(Googleの親会社)のドローン配送子会社であるWingは、OpenSkyアプリをリリースしています。民間航空安全機関(CASA)の支援を受けて、趣味のドローンパイロットと商用ドローンパイロットに向けて2019年にオーストラリアで発売開始されました。米国版は、低高度認可および通知機能(LAANC)空域での運用のためにFAAからの入力を使用して作成されました。このアプリを使用すると、ドローンオペレーターは、周辺エリアでのドローン運航の承認申請を行うことができ、従来は数日から数週間かかるプロセスを迅速に行うことができます。
2022年にドローンは爆発的に広がる?!
経済産業省は、2022年度からの「有人地帯での目視外飛行」の実現に向け急ピッチで動いています。
「有人地帯での目視外飛行」 とはつまり、人がいるところでもドローンを安全に使えるようにルールづくりと実践を行う。という意味です。
日本の課題として、グローバル経済で戦うためには、人口減少の未来が確実に待つ中で深刻化する
「労働力不足」「技術者の不足」の解説が急務です。
次なる成長産業の中枢としてドローンをはじめ、ロボットを使った自動化・省人化を本気で推進していく姿勢がとても強く見てとれます。官民一体となって同じ方向を向いている追い風を、いま活かしていこうという経営者が多くいるということがうかがえます。2022年になれば、街や公的施設など、私たちの生活圏でドローンが飛び回る世界が広がっているかもしれません。
まとめ
ドローンを使った新規事業・スタートアップは非常に増えています。
今後の参入を検討されている方は、新規事業の立ち上げ、あるいはM&Aを活用することも手段の一つです。
EXPACTでは、ドローンのハード/ソフト両面の進化、スーパーシティの取り組みや規制緩和など様々な要因から時代の変化をいち早く捉え、最短でキャッチアップしていくため、ドローン関連企業である株式会社トラジェクトリーや株式会社スカイピーク などドローン事業にて先端を走る企業と連携しながら、まずは静岡県内におけるドローン事業の立ち上げを行うとともに、従来通りドローン関連の新規事業を模索する中小企業やスタートアップの支援も継続していきたいと考えております。また実証実験等を行うパートナー企業も募集しておりますので、興味がある事業者様は是非ともお問い合わせいただければ幸いです。
実際の事例や、新規参入時に気を付けるべきポイント、事業についてご興味のある方や、ドローンなどの設備投資を検討される企業様に補助金等の資金調達のご支援を含めてサポートさせていただきます。ぜひ一度お気軽にご相談ください。初回のご相談を無料にて行っております。