こんにちは、EXPACTの松本です。
これまで公共交通についての記事を連載してきました。今回は、公共交通を利用してもらうための取り組みの中でも、特に成果があったものを2つご紹介します。御殿場市と熊本県の取り組みです。
御殿場市の取り組み「路線バスを育てよう」
御殿場市では未来プロジェクト課の旗振りの下で、「路線バスを育てよう」を合言葉に公共交通利用促進運動を行ってきました。その成果が「広報ごてんば」に掲載されていましたので紹介します。
(参考) 広報ごてんば 6月5日号8ページ(外部リンク)
御殿場市では「路線バスを年3回利用する」ことを呼びかけ続けてきました。令和元年度は前年度比7万人増加となる85万人が路線バスを利用したとのことです。人口9万人弱の地方都市にしては相当の努力をしてきたことがわかります。
市内企業の中には「ノーカーデー」を設定し、従業員に徒歩や公共交通機関での通勤を呼びかけている企業もあります。また小学生向けに「バス教室」を開催したり、イベント出展を行うなどして、周知を広げてきた成果が出ていると思われます。
↑JR三島駅に入る富士急シティバスの路線バス。2014年6月筆者撮影。
熊本県の取り組み「県内バス・電車無料の日」
熊本県では2019年9月14日(土)、「県内バス・電車無料の日」が実施されました。
本企画の背景などはこちらの記事をご参照ください。(外部リンク)
この企画は、熊本県などで交通事業を展開する九州産交グループが主導で行ったもので、県内の路線バスや市電などを無料で利用できるというものです。
この取り組みの主な成果は、
・バス、電車の利用者数は2.5倍に
・中心市街地の来訪者は1.5倍に
・渋滞の長さが59%減少
・経済効果は5億円
だったとのことです。こちらは全国ニュースや、公共交通のセミナーなどでもしばしば取り上げられる話題です。一事業者のキャンペーンではなく、行政や大学、警察やIT企業なども巻き込み、収集したビッグデータを分析したというところに価値があります。
↑桜町バスターミナル付近を走る九州産交の高速バス。2019年6月筆者撮影
おわりに
自動車が生活の中心になっている地方都市では、公共交通を利用してもらうための障壁が高くなっています。それと同時に、中心市街地の衰退も起こっています。今回紹介した取り組みのように、
- 公共交通に対する理解や意識を醸成する
- 中心市街地を訪れ回遊する
といった点を踏まえた施策が必要です。「事業者が生き残ればいい」「住民が乗るだけ」「補助金出すから路線が残っていればいい」といった一方向の考えではなく、「三方良し」に近づく計画を立てていくべきです。
前回の記事にでも述べたように事業者・住民・行政が、「本当に必要なことはなにか、根本的な改善につながるか」を考えることが必要です。
今後も定期的に公共交通に関する情報を提供してまいります。