こんにちは、EXPACTのWEB担当、遠藤です。
起業する際に、まずは、会社の基本原則「定款」を作成することになります。「定款」に記載すべき事項には必ず記載すべき「絶対的記載事項」があります。絶対的記載事項の記載がなければ、定款全体が無効となってしまうので注意が必要です。今回は、事業目的についてまとめてみたいと思います。
事業目的
会社を設立するとき、定款で会社の目的を定めなければなりません。また会社の目的は、商業登記簿謄本(履歴事項
定款認証を受け、登記までしてしまうと、定款の「目的」を変更するには株式会社の場合、わざわざ株主総会を開いて定款変更決議をしなくてはなりません。そうした重要な決定事項になるため、専門家(司法書士・行政書士等)の先生にご相談されることをオススメします。
会社は定款に記載していないことを事業として行ってはいけません。よって、設立時に行わなくても、将来的に行う可能性のある事業も記載しておくほうがよいでしょう。それでは、会社は定款に記載された目的以外の事業や活動はしてはいけないのでしょうか?
取締役が定款に記載している目的外の取引をすべて禁じられているわけではなく、目的の達成に必要、または有効な行為をも広く含むと考えられています。事業目的の最後に「前各号に附帯または関連する一切の業務」 と入れることにより、事業目的に関連するほぼ全ての取引活動(許認可事業以外)を行うことができるとも言えます。
■Point 定款の目的の最後に、「前各号に附帯または関連する一切の業務」と記載していれば、新しい業務をはじめる場合でも、目的に関連したものであれば定款を変更する必要はありません。 |
目的の決め方
どのように事業目的を決めていけばよいでしょうか?
結論的には、モデルになるような同業他社の商業登記簿謄本(履歴事項
1.経営、事業、金融、M&A、知的財産、IT及び地域活性化に関する調査、情報提供及びコンサルティング業務
2.ベンチャー企業への投資及び育成支援に関する調査、情報提供及びコンサルティング業務
3.人材採用に関する事務の代行、情報提供及びコンサルティング業務
4.各種研修会、勉強会、会議、イベント、セミナー及び就業体験の主催、企画及び運営
5.各種電子部品、情報処理・通信機器の開発、製造、販売、動作検証及びコンサルティング業務
6.インターネット、携帯電話網、その他通信システムを利用したデジタルコンテンツ(文字・音声・画像・動画コンピュータソフトウェア等)の企画、設計、開発、制作、配信、広告及びメンテナンス業務
7.フランチャイズチェーンシステムの企画、立案及び運営
8.卸売業、小売業、古物売買業、観光業及び輸出入の仲介業務
9.不動産の賃貸、売買、管理及び仲介業務
10.各種保険代理業
11.仮想通貨その他電磁的価値情報、ブロックチェーン技術等を利用した業務
12.前各号の業務請負業
13.前各号に附帯する一切の業務
これらの記載は、定型で決まっているものもありますので会社目的検索で検索したり、定款を公開している企業も多くありますのでそれらを参考にしてみるのもよいかと思います。
事業目的を考える際の注意点
事業目的とは、「あなたの会社は何をしている会社なのか」ということを示すものです。事業目的には、実際に行う予定のある事業を記載する必要があります。事業目的の記載の仕方は、ある程度決まりがありますので注意してください。
①許認可を受ける予定がある場合は必要な事業目的を入れましょう ・・・事前に許認可の監督官庁に、必要な事業目的の記載方法を確認しておきましょう。必要な事業目的を入れておかないと、許認可が下りない可能性もあります。 ②行う予定のない事業目的を多く記載しないようにしましょう ・・・金融機関や取引先に「何の会社かわからない」と疑問を待たせる可能性があります。銀行での口座開設や融資取引、また新規取引先と契約する場合など金融機関や取引先に商業登記簿謄本(履歴事項 ③これを事業目的に記載すると口座開設や融資が難しくなります ・・・金融業・風俗営業業種・遊興娯楽事業・仮想通貨に関する事業を事業目的に入れると、金融機関での口座開設や融資を受けるのが難しくなります。 ④営利性のあるものでなければ記載できない ・・・慈善団体への寄付やボランティア活動等の営利性がない目的を記載することはできません。 |
【補足】許認可事業の場合
建設業許可、宅建業免許など、許可・免許取得が必要となる事業に関しては、定款にその旨の目的記載がないと、いけません。許認可を得るためには、その取得したい許認可に適合した事業目的を定款に記載するため、記載がなければ事業目的の変更登記が必要となります。
目的に記載が必要な事例(一部のみ抜粋)は以下の通りです。
一般労働者派遣事業 | 労働者派遣事業 |
職業紹介事業 | 有料職業紹介事業 |
古物商 | 古物営業法に基づく古物商 |
飲食店 | 飲食店の経営 |
宿泊施設運営 | ホテル・旅館その他宿泊施設の経営 |
酒類販売 | 酒類の販売業 |
旅行業 | 旅行業法に基づく旅行業及び旅行業者代理業 |
建設業 | 建設業 土木建築工事 |
宅地建物取引業 | 不動産の売買、賃貸、管理及びそれらの仲介 |
運送業 | 一般貨物自動車運送事業(トラック等) 貨物軽自動車運送事業(軽トラック等) 一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー、福祉車両等) |
薬局の開設 | 薬局の経営 |
介護事業 | 介護保険法に基づく居宅サービス事業 介護保険法に基づく地域密着型サービス事業 |
理容業 | 理容業 理容室の経営 |
美容業 | 美容業 美容室の経営 |
ちなみに、事業目的を後で追加する場合には、登録免許税が3万円ほどかかります。それでは、これに違反したときの罰則と、その対策について注意点を踏まえ、さらに詳しく説明していきます。
定款の事業目的に違反した場合のペナルティについて
会社が事業目的に反するような内容の取引を行った場合、その取引が果たして有効なのか?が問題となります。ここでは会社が定款記載の事業目的に違反した場合、どのような罰則やペナルティが生じるのかについて解説していきます。
会社が定款記載の事業目的に違反する取引行為などを行ったとしても、刑事罰や行政罰を課されることはありません。一方で、民法のルールでは、会社が事業目的に違反する行為を行った場合には、その行為は無効と定められています。会社が行った行為が無効となった場合、その行為によって得た利益は不当な利得と判断されることになってしまいます。不当利得とされた利益については取引関係者や、それ以外の人から原状回復を求められた場合は返還しなくてはなりません。取引関係が極めて不安定な状態になり信用も失う可能性があります。
定款の事業目的に違反しないための対策
定款記載の事業目的に違反する行為を会社がしてしまうと、会社の利害に関係を持つ人からその行為の無効を主張されてしまう可能性があります。取引が無効となってしまうと、会社や取引先は不安定な立場に置かれてしまうことになります。こうした事態はできるだけ避けなくてはなりません。会社が事業目的に違反しないようにするためには、以下のような対策をしておくのが一般的です。
■将来的に展開する予定の事業を含める
会社設立時には事業として開始するめどが立っていないものの、将来的には展開していきたいと考えている事業については、事業目的に記載しておくのが良いでしょう。例えば、中古本の販売をメインで行う会社が、将来的にはカフェの併設も行う予定であるような場合にはカフェの運営に関しても事業目的に定めておくといった具合です。もちろん、直近で展開する予定の事業とは全く異なる事業を事業目的に定めておくことも問題はありません(中古車販売業者が衣料品の販売を事業目的に定めるなど)会社設立の時点での事業の実態と、定款記載の事業目的に関連性があるかどうかは問題にならないということです。
■営利目的のものにすること
会社は営利を目的として運営されることが大前提となります。そのため、営利を目的としてない慈善事業だけを事業目的に掲げることは適切ではありません。営利を目的としない事業だけを行う法人を設立したい場合には、公益法人を設立するのが一般的です。ただし、実際には営利目的の事業を行いながらも、同時に慈善活動などに出資を行うことなどは問題ありません。
■事業目的の最後に挿入しておく一文
冒頭でもご説明した通り、定款には事業目的を一覧で列挙する形をとるとともに、「前各号に付帯関連する一切の事業」といった一文を挿入しておくのが適切です。この一文を定めておくことによって、会社の事業目的を非常に解釈する余地を持たせることが可能となります。トヨタ自動車やヤフーなど、事業を広く行っている大企業も、定款の事業目的にはこの一文を定めている会社がほとんどです。
事業目的に違反した行為を会社がしても刑事罰などを受けることはありません。一方で、事業目的に違反する会社の行為は、取引の相手先や株主、債権者などからその効力の無効を主張されてしまう可能性があります。取引の安定性を確保するためにも、会社設立時には事業目的の記載方法に注意しておくようにしましょう。
■専門家へ相談すること
これらを参考に自分自身で定款をつくることも可能かとは思いますが、やはり専門家に相談することをオススメします。後から変更登記をするのも費用が掛かることなので、変なところでつまずかない用に行政書士・司法書士の先生に相談しながら手続きを進めていきましょう。知り合いの専門家がいない場合には、弊社顧問の先生方をご紹介いたします。
ご覧いただきありがとうございました。