スーパーシティ法案成立
人工知能(AI)やビッグデータなど先端技術を活用した都市「スーパーシティ」構想を実現するための法律「改正国家戦略特区法」が5月27日の参院本会議で与党などの賛成多数で成立しました。自動運転やキャッシュレス、遠隔医療やドローンの自動配送、遠隔教育など、生活全般をスマート化した“未来都市”を構築し、高齢化社会や人手不足の解決につなげるのが狙いです。
テクノロジーを活かした持続可能で住みやすいまちづくりとして注目される「スーパーシティ」。日本政府は、ICT技術の活用でインフラなどのマネジメントを高度化することで、さまざまな課題解決や新たな価値創出につなげるスーパーシティの取り組みを推進し、政府が描く未来社会像「Society5.0」の実現を目指している。その上で官民の連携は重要であり、新たなビジネスを推進するスタートアップへの注目も年々高まっている。企業がスマートシティ構想にどう貢献し、ビジネスを展開できるチャンスがあるのか。
特区指定を受けた地方自治体は国や民間企業と区域会議を設け、必要な規制緩和を含む事業計画書を作成。住民の同意を得た上で国に申請すると、首相が担当省庁に規制緩和の特例を求めることができる。例えば先端技術を活用した高度な医療機関の設置や通院予約、通院のためのタクシーの配車予約を連動させることなども可能になります。
政府は今夏にもスーパーシティ構想を進めたい自治体などを公募し、早ければ年内に選定する予定である。すでに大阪府・大阪市は2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の会場となる区域で空飛ぶ車やドローンなどの活用も検討されており、一部の自治体では既にスーパーシティ申請に向けて動き出しているところもある。
スーパーシティとは
スーパーシティとは何なのか。内閣府が20年3月に公表した構想案によると、「移動、物流、支払い、行政、医療・介護、教育、エネルギー・水、環境・ゴミ、防犯、防災・安全の10領域のうち少なくとも5領域以上をカバーし、生活全般にまたがること」「2030年頃に実現される未来社会での生活を加速実現すること」「住民が参画し、住民目線でより良い未来社会の実現がなされるようネットワークを最大限に利用すること」という3要素を満たす都市と定義されています。特に、特徴的なのは住民目線、住民目線でよりよい未来を目指す点でも、従来の街づくりとは違っているというところ。
従来のように個別分野に特化して実証実験を進めるのではなく、自動運転や完全キャッシュレス決済、ドローン配送、行政手続のワンスオンリー化(一度提出した資料は、再提出する必要がない仕組み)、遠隔教育や遠隔医療など、暮らしに直結する複数の分野にまたがってデジタル化を推進することで「2030年の暮らし」を先取り、全体最適を目指しています。
少子高齢化や過疎、空き家問題といった地域が抱える諸課題を、日本の最先端技術と大胆な規制改革を同時に進めることで解決しようという試みです。
海外で進む未来都市構想
AIやビッグデータを駆使して未来都市を築くのは、世界の潮流でもあります。とりわけ大きなインパクトを与えたのは、カナダ最大の都市トロントを舞台にした「Sidewalk Toronto(サイドウォークトロント)」プロジェクト。米グーグルの親会社であるアルファベット傘下のSidewalk Labs(サイドウォークラボ)が名乗りを上げ、19年6月に「マスター・イノベーション・アンド・デベロップメント・プラン(MIDP)」と題した基本計画を発表しました。
キーサイド(Quayside)と呼ばれるウォーターフロント地区で、自動運転を前提とした街づくりを進めていました。歩行者や自転車、公共交通と用途に応じて道路を分け、公共交通やライドシェアなどの移動サービスを定額制で乗り放題。クルマを組立てるように規格化されたパーツを組合せて木造住宅を建築するなど、数々の先進的な内容を盛り込んていましたが、新型コロナの感染拡大が広がる20年5月7日、突如、プロジェクトの中止が発表されたました。街中にセンサーを配置し、行動データを収集することに対しては、住民から「プライバシーが侵害される」と反発の声が上がっていたことが大きな要員です。
スーパーシティで変わる我々の生活
自動ゴミ収集
曜日を問わずゴミ出し。 センサーで満杯を感知し自動収集。
自動走行・自動配送
いつでも、どこでも、 自動走行車両がご案内。 必要な時に必要なものを 即時にお届け。 宅配ボックスはもう不要。
キャッシュレス
ランチから買い物まで すべてキャッシュレス。 お得なポイントも 顔認証などで一括処理。 家計簿管理も、楽々。
行政手続ワンスオンリー
最初の手続を行えば、 その後の全ての申請・手続は、 個人端末からネットで簡単に処理。
遠隔教育
一人ひとりに即したコンテンツを、 子供から大人まで、いつでもどこでも 誰にでも、ネットで必要な時に配信。
遠隔医療・介護
AIも活用し、 症状の軽いうちから しっかりケア(「AIホスピタル」)。 夜間の心配な急病も ネットで簡単に受診。 いつでも見守られ、 安心を提供。
スーパーシティで生まれるビジネスチャンス
スーパーシティとは、AI・ICT等の先端技術と都市(自治体)が保有する様々なデータを有効活用することで、地域課題の解決と新産業の創出を図り、都市の分野横断的なマネジメントによる全体最適化と市民生活の質の向上を目指す持続可能な都市をいいます。
そこで地方自治体は、セキュリティを確保しながらデータをオープン化していく必要があります。加えて、それらのデータをセキュリティを保ちながら民間企業側がそのデータを利活用するため、システム同士をAPI連携し、住民の利便性を向上させるようなソフトウェアやサービスを開発する必要があります。
参考:https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/digitalsmartcity/documents/dai1kaishiryo.pdf
トヨタ Woven City周辺自治体である静岡県裾野市でもトヨタを中心にモビリティ(MaaS)の在り方を再定義するような新しい都市設計が進んでいくと考えています。
すなわち、これまで以上に都市のDX化は加速していくため、
①自治体のDXを支援するIT企業
②自治体のデータを活用して住民のQOLを高めるIT企業
上記の企業にチャンスが出てくると考えています。
実際に、国家レベルでDXを進めている国としては、北欧のエストニアが挙げられます。エストニアは、人口130万人程度の小国で、財政難に悩んでいました。ソ連からの独立をきっかけに行政の効率化を進め、様々な行政サービスがデジタル化しています。現在は教育、医療、選挙をはじめ多様な分野でデジタル化が進み、行政手続きの面でも政府が立ち上げたデータプラットフォームが機能し、国民は一つのIDでさまざまな行政サービスにアクセスできます。
シンガポールもデジタル化が進んでいる国の1つです。スマートフォンからさまざまな行政サービスにアクセスできるほか、国土全体を3D化(デジタルツイン化)する「バーチャル・シンガポール」の取り組みを進め、土地・建物や交通の流れをリアルタイムに可視化することを目指しています。このデータをオープン化し、防災、渋滞緩和といった都市問題の解決につなげる考えです。
日本も国・都道府県・市区町村と、同様の手続きを各行政組織に個別に行わなければならず、書式もバラバラ、オンライン化されていない業務も数多くあり、あまりに非効率です。都市のDXによって、さまざまな手続きがワンストップで行えるようになれば、エストニアやシンガポールのように、新たな日本の未来も見えてくるのではないでしょうか。
お問合せはこちらからお願いします!