市場参入のために知っておくべき関税・特恵制度・FTA活用法
はじめに:日本の貿易と関税の現状
関税とは、輸入国政府が輸入品に課す税金であり、国家財源となると同時に、国内産業を保護するための政策手段でもあります。従来、関税は「輸入代替」を促し、特定の品目の国内生産を支援する役割を担ってきました。世界貿易機関(WTO)のもとでは、多くの国が最恵国待遇(MFN)の原則に従い、公平で非差別的な国際貿易を行っています。
このような国際的な枠組みの中で、日本の関税制度は、市場参入を狙う企業にとって重要な意味を持ちます。日本における関税は単なる「輸入税」ではなく、収益源であると同時に産業保護の仕組みでもあります。そのため、海外企業にとっては、関税・免除制度・FTAの仕組みを理解することが、競争力ある参入戦略を立てる上で欠かせません。
本記事では、日本の関税制度を整理し、関税の種類、特恵的な制度、そして主要な自由貿易協定(FTA)が日本市場へのアクセスをどのように形づくるかを解説します。
日本における関税の種類
日本は農産品、繊維製品、機械類、輸送機器など幅広い輸入品に対して関税を課しています。主に以下の3種類があります:
- 一般税率:関税定率法に基づく基本的な税率
- 暫定税率:特定の品目に一定期間だけ適用される税率
- WTO協定税率:WTOの約束に基づき設定された税率
小規模取引への配慮として、課税価格が10万円(約680米ドル)未満の商品は原則として免税扱いになります。また、20万円(約1,361米ドル)以下の輸入品は簡易税率の対象となる場合があります(ただし一部例外あり)。
特恵関税制度:コスト削減のチャンス
日本では、一定の条件を満たす輸入品に対して関税を減免する仕組みも用意されています。これを活用することで、輸入コストを大幅に抑えることが可能です。
- 経済連携協定(EPA)税率
二国間・多国間のEPAに基づき、関税が削減または撤廃されます。原産地規則などの条件を満たすことが必要です。 - 一般特恵関税制度(GSP)
発展途上国からの一定品目に対し、通常より低い税率を適用します。
後発開発途上国(LDC)特恵
指定された後発開発途上国からの輸入品は、条件を満たせば関税がゼロとなります。
複数地域から調達する企業にとって、これら制度を戦略的に活用することで大きなコスト削減につながります。ただし、実際に恩恵を受けるには、日本の通関手続きを遵守し、関税率や品目分類を適切に申告する必要があります。必要に応じて事前教示制度を利用し、関税率や原産地の扱いについて確認することも可能です。
日本の自由貿易協定(FTA):市場拡大の鍵
日本は積極的に自由貿易協定を推進しており、関税削減だけでなく、通関手続きの簡素化や投資促進、デジタル貿易の支援など、幅広い効果をもたらしています。
主なFTAと対象品目:
- 包括的かつ先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)
英国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、マレーシア、シンガポール、ベトナムなどを含む11か国
対象:半導体、自動車部品、食品、農産品、デジタル貿易、再生可能エネルギー
- 地域的な包括的経済連携協定(RCEP)
ASEAN加盟国、中国、韓国、オーストラリアなど16か国
対象:電子機器、自動車部品、繊維、鉄鋼、再生可能エネルギー
- 日EU経済連携協定(EPA)
ドイツ、フランス、スウェーデン、スペインを含むEU27か国
対象:自動車、食品、医薬品、機械・工具、電子機器、再生可能エネルギー
これらの協定は、単なる関税削減にとどまらず、ルールの明確化や投資促進、貿易の効率化を後押しする点で、企業の市場展開に大きなメリットであるといえます。
まとめ:複雑さを競争優位に変える
日本の関税制度は一見複雑ですが、制度を理解し活用すれば、参入障壁を下げ、競争力を高めることが可能です。関税の種類、特恵制度、FTAの仕組みを戦略的に取り入れることで、日本市場での成功確率を大きく高めることができます。
こうした戦略を実行に移すうえで、EXPACT株式会社は信頼できるローカルパートナーとして、グローバル企業の日本進出を支援しています。独自の「ソフトランディング」プログラムを通じて、関税分類やFTA活用、参入戦略立案、財務アドバイザリー、現地パートナー形成などを包括的にサポートします。
EXPACTは、規制に強い知見と現地での実行力を組み合わせ、複雑に見える関税制度を成長のチャンスへと転換します。
EXPACTについて
本記事は、EXPACTグローバル部門が国内外の投資家・海外スタートアップ企業に向けて発信した英語版記事をもとに、日本語に翻訳・再構成したものです。海外視点でまとめられた情報や分析を、日本国内の読者にも共有し、国際的なビジネス機会や市場動向の理解に役立てることを目的としています。
EXPACTは、国内外のスタートアップに対して多様な運営支援を提供しています。特に、グローバル部門では日本市場への進出を目指す海外企業に向けて、市場参入戦略に関するアドバイザリーサービスを展開しています。
主なサービス内容:
- ビザおよび制度に関するアドバイス:外国人起業家向けに適切なビザや政府プログラム(例:スタートアップビザ)に関するガイダンスを提供
- 市場調査支援:製品やサービスの潜在的な市場規模や需要を評価
- 地理的評価(ターゲットに応じた分析):スタートアップのニーズに基づき、最適な地域・都道府県・都市を特定するロケーション分析
- 資金援助制度の申請支援:利用可能な補助金・助成金の情報提供および申請プロセスのサポート
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- 事業計画アドバイス:日本市場の視点からの事業計画レビュー
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さらに、EXPACTはスタートアップアドバイザリーからファイナンス、PR、採用、人材戦略、EXIT支援までをワンストップで提供しています。
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執筆:Pramod Sharma、Hana Miyagi