投資・貿易・将来成長の展望を探る
はじめに:太平洋を繋ぐニつの経済
日本とカナダは長きにわたり、強固な貿易・投資関係を築いてきました。太平洋を隔ててはいるものの、東京とバンクーバーといった商業拠点は、両国経済を結ぶ自然なゲートウェイとして機能しています。世界銀行によれば、両国はいずれも「行政の有効性」「政治的安定性」「法の支配」においてG7諸国の中で常に上位3位にランクされています。さらに、カナダは米国との国境を直接接しており、包括的な自由貿易協定に裏打ちされたその地理的優位性は、世界最大の経済圏への玄関口としての役割を強化しています。こうした利点を背景に、日本とカナダの経済交流をさらに深める余地は大きいといえます。
本記事では、両国間の投資・貿易の現状を概観します。本稿は二部構成の第1部であり、第2部ではカナダにおけるスタートアップ・イノベーション分野に焦点を当てます。
カナダの投資と貿易の現状
カナダ政府によると、2024年時点で日本の対カナダ直接投資(FDI)残高は482億米ドル(約7兆円)に達し、インド太平洋地域では第2位、カナダ全体の投資相手国としても第4位に位置しています。カナダ国内の日系子会社・関連企業は数千人のカナダ人を雇用し、地域社会に大きく貢献しています。投資は主に製造業、輸送・物流、エネルギー・鉱業に集中しており、これはカナダの資源と先端産業の強みを反映しています。
一方、カナダから日本への直接投資残高は38億米ドル(約5,500億円)で、自動車、情報通信技術、金融サービス、林業といった分野で活動が展開されています。これらは、日本の成熟した産業と成長するイノベーション・エコシステムへのカナダ投資家の関心を示しています。
さらに、2024年におけるカナダの対日輸出額は150億米ドル(約2.2兆円)、輸入額は214億米ドル(約3.1兆円)となっています。貿易構造は相互補完的であり、カナダは主にエネルギー・鉱物・農産食品を輸出し、日本からは自動車・機械・精密機器を輸入しています。これはカナダの天然資源優位性と日本の先端製造業の強みを如実に表しています。
貿易協定:市場開放とパートナーシップ拡大
カナダと日本はいずれも環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)の加盟国です。CPTPPは現在、英国を含む12か国体制となっており、オーストラリア、マレーシア、シンガポール、ベトナムなども主要メンバーに含まれます。同協定は加盟国間輸出の最大98%にかかる関税を撤廃または削減します。カナダにとって、農産物、水産物、林産物、工業製品における恩恵は特に大きく、英国の加盟によって太平洋と大西洋をまたぐ市場機会が一層広がっています。
また、カナダは世界最大の自由貿易圏であるカナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA)の加盟国でもあります。デジタルサービスにおいては、企業収益が2,000万ドル(約30億円)以下の場合、デジタル売上税(DST)が免除される特例があり、この規定が北米におけるIT・デジタルサービス分野でカナダの競争優位を高めています。ただし、デジタル貿易をめぐる議論は現在も進行中で、枠組みは発展を続けています。
まとめ:テクノロジー分野に眠る可能性
こうした統計の分析から、日本の投資家・企業はカナダ市場に高い信頼を寄せていることが明らかです。しかしながら、取引は依然として製造業、資源、エネルギー、輸送といった伝統的産業に偏っています。両国がそれぞれ活発なスタートアップ環境を有しているにもかかわらず、テクノロジー分野における資本・知識の交流は十分に活用されていません。
こうしたギャップを埋める存在として、EXPACTは日加間の新たな可能性を切り拓く最適なパートナーとなります。市場参入のガイダンス、パートナーシップ構築の促進、資金調達アドバイザリーなどを通じ、新たなビジネス機会を最大限に引き出す支援を行います。こうした具体的な可能性については、次回の記事で取り上げます。
EXPACTについて
本記事は、EXPACTグローバル部門が国内外の投資家・海外スタートアップ企業に向けて発信した英語版記事をもとに、日本語に翻訳・再構成したものです。海外視点でまとめられた情報や分析を、日本国内の読者にも共有し、国際的なビジネス機会や市場動向の理解に役立てることを目的としています。
EXPACTは、国内外のスタートアップに対して多様な運営支援を提供しています。
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注記:本稿に記載されている投資統計および貿易協定に関する情報は、公開時点で入手可能な範囲で合理的に精査した内容に基づいています。なお、地政学的状況の変化により、今後修正される可能性があります。
執筆:Pramod Sharma、Hana Miyagi
参考資料:
https://www.international.gc.ca/country-pays/japan-japon/relations.aspx?lang=eng
https://international.canada.ca/en/global-affairs/corporate/reports/chief-economist/state-trade/2024
https://www.jetro.go.jp/world/n_america/ca/gtir/
https://www.conferenceboard.ca/insights/trade-partner-profile-japan/
https://www.investcanada.ca/FDIReport2024