【解説】6つの分析方法で現状と問題点を把握する財務諸表分析とは?
財務諸表は、企業の財務体質や収益性などをみるための重要な情報です。財務諸表分析によって現状と問題点を把握することで、収益性や安全性の改善、事業拡大のヒントや、競合他社と比較など様々なことがわかります。この記事では財務諸表分析について、大きく6つの分析方法を解説していきます。
財務諸表分析の目的
はじめに、そもそも財務諸表とは一言で表すと、会社の状況を映し出す鏡のような存在であると言えます。
財務諸表は3つの柱で構成されており、1つ目は、会社のある一時点での財産や債務などのストックの状態を示す貸借対照表、2つ目は、ある一定期間の業績の状況を示す損益計算書、3つ目は、ある一定期間の現金の増減を活動ごとに示すキャッシュフロー計算書です。
投資者は、これらの財務諸表から企業の経営状態を分析することによって、その企業の株式や社債への投資や融資の意思決定をより的確に行うことが可能となります。
6つの分析方法
財務諸表分析における分類の方法は複数存在していますが、ここでは6つに分類して順番に解説を行います。
①収益性分析
一般的に投資を検討する際に、最もポイントとなるのは企業の収益力の高さです。そこで、収益性分析に用いられているのが資本利益率と売上高利益率になります。
具体的には、以下のような指標があります。
資本利益率
- 自己資本利益率(%)=当期(純)利益÷自己資本(期首・期末平均)×100
- 総資本利益率(%)=当期(純)利益÷総資本(期首・期末平均)×100
- 資本金(純)利益率(%)=当期(純)利益÷資本金(期首・期末平均)×100
売上高利益率
- 売上高(純)利益率(%)=当期(純)利益÷(純)売上高×100
- 売上高総利益率(%)=売上総利益÷(純)売上高×100
- 売上高営業利益率(%)=営業利益÷(純)売上高×100
- 売上高経常利益率(%)=経常利益÷(純)売上高×100
②生産性分析
生産性分析とは、企業に投入された経営資源(ヒト・モノ・カネ)から、どれだけのものをつくり出したかを表す分析のことです。
具体的には、以下のような指標があります。
- 付加価値=総生産高-前給付費用(または、人件費+賃料費+税金+他人資本利子+当期純利益)
- 労働生産性=付加価値額÷平均従業員数
③安全性分析
安全性分析では、企業の資金繰りにおける健全度や債務不履行などで倒産に至る危険性の程度を分析します。
具体的には、以下のような指標があります。
流動性分析
- 流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100
- 当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100
財務健全性分析
- 固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100
- 固定長期適合率(%)=固定資産÷(自己資本+非支配株主持分+固定負債)×100
- 負債比率(%)=(流動負債+固定負債)÷自己資本×100
- 自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100
④効率性分析
効率性分析とは、資本がどれだけ効率的に運用されているかを判定するものであり、回転率や回転期間を利用します。
具体的には、以下のような指標があります。
- 総資本回転率(%)=年間の(純)売上高÷総資本(期首・期末平均)
- 総資本回転期間(月)=総資本(期首・期末平均)÷年間の(純)売上高×12
⑤成長性分析
成長性分析とは、売上高や利益などの変化から企業がどれくらい成長しているのかを測る分析方法です。
具体的には、以下のような指標があります。
- 売上高成長率(%)=当期売上高÷前期売上高×100
- 利益成長率(%)=当期利益÷前期利益×100
⑥損益分岐点分析
企業が将来の利益計画を策定する場合、売上の増減による費用と利益の変動を把握しなければなりません。このような売上高、費用、利益相互間の分析に用いられるのが損益分岐点分析です。
具体的には、以下のような指標があります。
- 損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費÷売上高)
- 損益分岐点比率(%)=損益分岐点売上高÷売上高×100
- 変動費率=変動費÷売上高×100
- 限界利益率=1-変動費率
まとめ
財務諸表分析として、収益性分析、生産性分析、安全性分析、効率性分析、成長性分析、損益分岐点分析の6つをご紹介しました。分析における注意点として、各企業の財務諸表を比較する際には各々の企業が採用している会計処理方法の差異を認識し、適切に調整を加える必要があります。どのような情報を得たいのかによって、使用すべき指標も異なってくるため、各々の目的に沿った適切な分析方法を吟味して有効に活用していきましょう。
ほかのお役立ちコラムはこちらもご覧下さい。