
スタートアップ設立の手続き簡素化への道
日本政府は、スタートアップの設立を容易にするため、株式会社設立手続きの簡素化を目指しています。公証人による面前確認手続きをデジタル化し、設立手続き期間を短縮する案が含まれます。これにより、設立手続きの負担が軽減され、スタートアップの増加が期待されます。
株式会社設立手続きの簡素化
政府は、公証人が設立者の意思を確認する際に対面確認を不要とする方向で検討しており、意思確認を動画などで代替する案が提案されています。これにより、登記を含めた設立手続きの期間が従来の2週間程度から3日程度に短縮される可能性があります。
48時間・72時間特別処理の全国展開
2025年3月3日から、法務省は全国でスタートアップ支援のための新たな取り組みを開始しました。この制度により以下が実現されています:
定款認証の48時間特別処理:定款作成支援ツールを利用した定款は、原則48時間以内に認証手続きを完了
設立登記を含む72時間処理:定款認証から設立登記まで、原則72時間以内に全工程を完了
この取り組みは2024年9月から一部地域で実施されていましたが、2025年3月に全国展開されました。
定款認証の手続き
株式会社の設立には、名称や事業目的などを記した定款の認証が必要で、これは法相が任命する公証人が担当します。この手続きは、反社会的な勢力によるダミー会社の設立や犯罪への悪用を防ぐ目的もあります。
定款認証の手続きは年間約10万件あり、設立者は対面またはオンラインで公証人と面会する必要があります。面会は5〜30分程度ですが、公証役場への赴く負担を改善する要望があります。対面手続きを省略するために、設立者の意思表明を撮影した動画を提出させる仕組みや、本人確認をシステム上で行う方法が検討されています。これにより、起業の障壁を低くし、スタートアップの増加を目指しています。
定款作成支援ツールの導入
法務省は2025年度から、インターネットを用いた簡易な定款作成ツールを導入しています。これにより
起業手続きが最短24時間に短縮可能
従来の2週間程度の手続き期間が大幅に短縮
進行中の制度改革
公証人法の抜本改正に向けた動き
2025年秋には公正証書の電子化が予定されており、公証人法の改正が進められています。
この改正により
リモート公証の本格導入:オンライン会議による公証手続きが可能に
画面共有による手続き簡素化:事前の本人確認書類提出と面談時の画面確認で完結
面前確認手続きの見直し
法務省の有識者検討会が2024年1月31日に公表した「議論の取りまとめ」では、以下の方向性が示されています:
A案:発起人の宣明動画提供等による新たな確認方法
B案:eKYCの活用等によるシステム完結型の確認手続き
これらのアプローチにより、従来の対面での面前確認を省略し、デジタル技術を活用した本人確認と真意確認が可能になる予定です。
外国人起業家向けの制度改善
経営管理ビザ要件の緩和
2025年1月から施行された改正により
特定活動44号ビザが全国で利用可能に
資本金500万円要件の撤廃
外国人起業家にとっての参入障壁が大幅に軽減
法改正のスケジュール
2025年秋:公証人法改正による電子公正証書の本格導入
2025年内:関連法改正案の国会提出が検討されている状況
期待される効果
これらの改革により
設立手続き期間の3日程度への短縮が現実的に
起業コストの削減(現在の最低20万円からさらなる軽減)
日本のスタートアップ創出環境の大幅改善
起業の手間と費用
日本の起業にかかる手続きの手間や費用は他国に比べて重いとされており、定款認証と登記の費用は税金も含め最低20万円ほどかかります。公証役場は全国に約300カ所、公証人は約500人います。こうした費用負担を低減することでより起業を促進できると考えています。
まとめ
これらの案は、起業時の法的手続きを簡素化し、起業家の負担を減らすことを目的としています。以上の改革により、スタートアップの設立がより容易になり、新たなビジネスの創出が期待されます。
特に48時間・72時間処理制度の全国展開は大きな進歩であり、起業家の皆様には既に恩恵を受けられる状況となっています。
今後は公証人法の抜本改正により、さらなる手続き簡素化が期待され、日本のスタートアップエコシステムの発展に大きく寄与すると考えられます。