皆様は「スタートアップ関連税制」についてご存じでしょうか?
この記事では、スタートアップ企業や個人投資家の方に向けて、「スタートアップ関連税制」について解説していきます。
スタートアップ関連税制とは
「スタートアップ関連税制」とは、新しいビジネスや起業家を支援するために、政府が導入する税制のことです。スタートアップ企業の成長を促進し、経済活動を刺激することを目的としています。
最近では、岸田首相が「スタートアップ5カ年計画」を発表し、大きな注目が集められているため、起業家や投資家の間でもホットトピックとなっています。
スタートアップ関連税制には以下のようなものがあります。
1.資金調達に関する税制:スタートアップ企業に対して、投資家からの出資に対する税制優遇措置が取られるケースです。例えば、投資家がスタートアップ企業に出資した場合に、一定期間内に税金を減免する制度などがあります。
2.研究開発に関する税制:スタートアップ企業が新しい製品や技術を開発するための研究開発にかかる費用を支援する税制です。例えば、研究開発費用の一部を減税する制度や、税金が免除される制度などがあります。
3.従業員の雇用に関する税制:スタートアップ企業が従業員を雇用する際に、インセンティブとなるような優遇税制もあります。例えば、雇用している従業員に対して、自社株式を他の人と比べて、有利に取得が出来る制度などがあります。
以上3つの観点から、それぞれに関連する税制を紹介していきます。
スタートアップの資金調達を手助けする「オープンイノベーション促進税制」
オープンイノベーション促進税制とは、対象の企業・法人とスタートアップ企業とのオープンイノベーションを促進するものです。具体的には、国内の事業会社またはその国内 CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)が、スタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、その株式の取得価額の25%が所得控除される税制です。
この制度は、スタートアップ企業への投資を行うことで節税につながるため、スタートアップ企業への資金調達を手助けを促す制度となっています。
また、本制度が指す「オープンイノベーション」とは、対象法人がスタートアップ企業の革新的な経営資源を活用して、高い生産性が見込まれる事業や新たな事業の開拓を目指す事業活動を指します。
出典:経済産業省「オープンイノベーション促進税制」参考に作成
オープンイノベーション促進税制の対象企業は?
対象法人は、青色申告書を提出する株式会社かつスタートアップ企業とのオープンイノベーションを目指す法人であることが必須条件です。
次にスタートアップ企業側の要件は以下の通りです。
①株式会社である
②設立10年未満である
③未上場・未登録である
④すでに事業を開始している
⑤対象法人とのオープンイノベーションを行なっている又は行う予定がある
⑥1つの法人グループが株式機の過半数を有していない(法人グループにおける出資割合の算定対象は、子会社、孫会社、曾孫会社まで)
⑦LPS、民法上の組合、個人など、法人以外のものが3分の1の株式を有している
⑧風俗営業又は性風俗関連特殊営業でない
⑨暴力団員等が役員または事業活動を支配する会社でない
また外国法人であっても、これら9つの要件を満たす法人に類するものとして認められると、出資対象となります。
研究開発を支援する「特別試験研究費税額控除制度」
特別試験研究費税額控除制度とは、大学や国の研究機関、また他企業等との共同研究及び委託研究等に要した試験研究費の額に一定の控除率(20%、25%または30%)を乗じて計算した金額を、当該事業年度の法人税額から控除できる制度です。
具体的には、特別研究期間等もしくは大学等との共同研究またはこれに対する委託研究では30%、新規事業開拓事業者等との共同研究またはこれに対する委託研究では25%、それ以外は20%とります。
なお、その上限額は、総額型税額控除制度による控除額とは別枠で、法人税額の10%相当額です。
出典:経済産業省「研究開発税制の概要」
特別試験研究の種類は?
特別試験研究は、主に以下のように分類されます。
①特別期間等との共同試験研究
②大学等との共同試験研究
③新規事業開拓事業者等との共同試験研究
④民間企業・民間研究所・公設試験研究期間等との共同試験研究
⑤技術研究組合の組合員が行う共同試験研究
⑥特別研究期間等への委託試験研究
⑦大学等への委託試験研究
⑧特定中小企業等への委託試験研究
⑨新規事業開拓事業者等への委託試験研究
⑩特定中小企業者等から知的財産権の設定又は許諾を受けて行う試験研究
以上の研究に対する税額候補を設けることで、企業が様々な組織と連携し、今までにないオープンイノベーションの創出になるでしょう。
スタートアップ企業の従業員雇用を支援する「ストックオプションへの税優遇」
ストックオプションとは、会社が自社または子会社の従業員、役員等に対して付与する自社株式を一定の期間内にあらかじめ定められた権利行使価格で購入することができる権利のことです。
例えば、X社が自社の株価が1株500円時点でストックオプションを始め、「5年間の間は自社株を500円で買うことができる」と社員に伝えたとします。その3年後に,X社の株価が1株2000円まで成長したとすると、社員は現在1株2000円の株を1株500円で購入することができます。そして、すぐに売却すると1株につき1500円の利益を得ることができるのです。
ただし、購入できる期間や数量に一定の規定は設けられているので、注意が必要です。
出典:PERSOL「ストックオプション制度とは?」参考に作成
税優遇の詳細を解説
そもそもこのストックオプションについては、ストックオプション税制の適用を受けて取得するもの(税制適格ストックオプション)とその適用を受けないで取得するもの(税制非適格ストックオプション)があります。
出典:SOICO株式会社「税制非適格ストック・オプション」参考に作成
税制適格ストックオプションは、租税特別措置法に定められているストックオプションのひとつです。ストックオプションが税制適格ストックオプションとして扱われるためには、以下の要件を満たさなければなりません。
① 発行価額 | 無償発行 |
② 行使価額 | 発行時の時価以上 |
③ 付与対象者 | 会社及びその子会社の取締役・執行役・使用人 |
④ 権利行使期間 | 付与決議日後、2年を経過した日から10年を経過する日まで |
⑤ 権利行使限度額 | 年間1200万円まで |
⑥ 譲渡制限 | 譲渡禁止 |
⑦ 保管委託 | 証券会社または金融機関等による保管・管理信託等 |
出典:株式会社Stand by C「税制適格ストック・オプション」参考に作成
そして、税制適格ストックオプション最大のメリットは、税金が発生するタイミングが少ないことと税率が低いことです。まず前者に関しては、上記の図のように株式を売却した時点でしか課税されません。それに対して、税制非適格ストックオプションでは、株式を購入(権利を行使)した時点と、売却時点の2度課税されます。
なお、株式売却時の計算式は、(株式売却価格−株式購入価格)×売却株数−手数料で求めることができます。課税タイミングが一度で計算も煩雑ではないこともメリットだといえるでしょう。
次に後者ですが、税制適格ストックオプションでは、売却時点でしか課税がされず、その税率は一律で20%と定められています。それに対して、税制非適格ストックオプションでは、売却時に20%の税金が取られることは変わりませんが、株式購入時には給与所得として課税されるので、最大で55%の税率となる場合があります。これらのことから、税制適格ストックオプションを利用することで、スタートアップ企業の活性化を推し進めることができます。
まとめ
最後までご覧いただき、ありがとうございました。スタートアップ関連税制の概要から、細かい制度内容についてご紹介いたしました。かなり複雑な部分もありましたが、少しでも理解を深めることができましたでしょうか?
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