2022年、スタートアップへの注目が高まっています。岸田総理のスタートアップ支援策が徐々に形作られてきており、この記事ではその大きな動きやニュースをまとめていきます。2023年までアップデートしてますので順次ご覧ください!
2021年10月、自民党総合政策集「J-ファイル」に方針が記載される
自民党は毎年、自民党が目指すべき多様な政策が書かれた「総合政策集」、J-ファイルを出しています。各種提言書の内容が盛り込まれていて、記載の政策項目は『選挙公約』よりも多種多様で、実現に向けては長期的な挑戦が必要な政策も含まれています。具体化に向けた法的措置や財源確保について時を待たねばならない項目はあるものの、自民党が目指している各種政策の方向性を示した総合的な資料となります。
https://expact.jp/j-file_2022/
年頭記者会見で述べられたスタートアップ創出元年
2022年1月4日、岸田首相の年頭記者会見では、新しい資本主義を実現するための決意として、
①スタートアップの創出
②地方における官民のデジタル投資倍増
③気候変動問題への対応(エネルギー・脱炭素など)
の3つが挙げられました。その一番手に来ているのが「スタートアップの創出」であり、戦後の創業期に次ぐ日本の第2創業期を実現するため、「スタートアップ5か年計画」を設定して、公的出資を含めたリスクマネー供給の強化、公共調達等の大胆な開放、海外展開への徹底的支援、株式公開制度の在り方の見直しなどを通じてスタートアップ創出に強力に取り組むことが発表されました。
2022年2月、CICTokyoの視察
2022年2月10日には日本最大級のイノベーションセンターであるCIC Tokyoを視察するとともに、スタートアップ4社との意見交換を実施しました。視察では、イベントスペースやコワーキングスペースをはじめとしたコミュニティ構築のための様々な工夫を見学しました。意見交換では、起業家をはじめとした人材育成、政府支援や政府からの調達の意義について議論を行っています。
2022年3月、スタートアップ庁創設の報道
2022年3月4日付の日刊工業新聞より『スタートアップ庁』の創設が報道として出ました。
経団連のスタートアップ振興に関する提言の最終案が明らかになったもので、新たな事業モデルで起業するスタートアップ育成を目的とし、省庁横断的な「司令塔」を設ける方針です。スタートアップ支援が省庁ごとに進められている現状からそれぞれの支援策を調整して、効果的な育成につなげたい考えです。
なお、3月15日には、経団連から『スタートアップ推進ビジョン』も発表されています。
2022年4月、GPIF資金をVC・スタートアップに循環させる方針が報道
2022年4月12日、岸田総理は新しい資本主義実現会議で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの長期運用資金や個人金融資産が「ベンチャーキャピタル(VC)やスタートアップ(新興企業)に循環する流れを作る」と話したことが報道されました。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国内のスタートアップへの投資に乗り出し、独立系VCのグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)が組成するファンドに出資する契約を結んだ。国内スタートアップ向けファンドへのGPIFの出資が明らかになるのは初めてです。新ファンドはすでに500億円の資金を集めており、年内をめどに700億円規模にする。製造業や医療、建設といった業界の有望企業を探している。
日本のスタートアップ投資は事業会社と銀行が中心で、年金マネーは少なかった。VCファンドの出資者に占める年金の比率は2021年時点で3%と、米国(32%)の10分の1以下だ。結果としてVCファンドが大型化せず、スタートアップの資金需要に十分に応えられていない面があった。評価額が10億ドル(約1350億円)以上の未上場企業「ユニコーン」は米国が600社を超えるのに対し、日本は6社にとどまる。
この流れが今後も続けば一定のVC・スタートアップへの資金流入が期待できます。
2022年4月、東京大学学部入学式 総長式辞でもスタートアップへの期待が発言される
2022年4月、東京大学の総長式辞でもスタートアップへの可能性、業界の現状、課題に触れながら、この先の日本の未来のために東京大学として起業や実業を支援すること、また女性の活躍を推進することなどが盛り込まれてます。自己利益の追求にとどまるものではなく、経済活動を通じて他者へのケアを実践し、公共性や社会における連帯を担うスタートアップとなるために、大学で学び、社会が必要としていることを理解し、その重みと責任を担える学生、職業人、そしてグローバルシチズン(地球市民)として入学した生徒が活躍することを期待する内容です。
2022年6月 経済産業省『スタートアップ支援一覧』が発表
経済産業省と関係独立行政法人等が行っているスタートアップ関連の支援策まとめが公表されました。補助金や融資などスタートアップの成長を直接サポートする支援策や、スタートアップの成長を応援される投資家・研究機関・大学・自治体の活動を支援する税制や制度など、総計69の支援策が盛り込まれています。
https://expact.jp/startupshiensakumatome/
2022年7月スタートアップ支援を目的に経営者の『個人保証』を免除する方針に
政府が、創業間もない「スタートアップ企業」支援のため、金融機関から融資を受ける際に創業5年未満は経営者の個人保証を免除する方針である報道が流れました。
日本政策金融公庫が個人保証を不要とする期間について、現行の「創業2年未満」から2倍程度に延ばす方向。信用保証協会も創業5年未満の企業に求める規則を見直し、保証を不要とする制度を新設するとのこと。商工中金は個人保証と原則不要にする方向で、民間金融機関にも財務情報が適切に開示されていれば、個人保証を取らないよう改めて文書で要請する方針です。
実際の稼働のためにはさまざまなリスクはありますが、スタートアップが創業期に資金調達しやすい環境が後押しされそうです。
2022年9月 岸田首相ニューヨーク証券取引所で講演
(一部抜粋:全文はこちら)
日本は本当に大きな変化を成し遂げられるのか。私はそれができると申し上げるためにここに来た。我々の歴史がそれを示している。明治維新と戦後の経済的奇跡が、その能力の証拠である。
そして今、再び日本で変革が起き始めている。私は我々が直面する様々な社会課題を成長のエンジンへと転換することを提案している。
そして、成長の果実を分配し、さらなる成長へとつなげていく。こうした挑戦に向け、予算、税制、規制改革といったあらゆる政策を総動員する。
とても大切な政策の一つはコーポレートガバナンス(企業統治)改革だ。日本がこの10年で行った様々な改革によって日本企業の行動は大きく変わった。企業の自己資本利益率(ROE)は顕著に上昇し、ほぼ全ての会社に独立社外取締役が入った。女性や外国人のボードメンバーへの登用も増えていくだろう。ノンコア事業の切り出し、新分野へのピボットといった大胆な企業変革に踏み切る企業も出てきている。
近々、世界中の投資家から意見を聞く場を設けるなど、日本のコーポレートガバナンス改革を加速化し、さらに強化する。
これからの課題は未来への投資を進め、次々と新たな価値が創造される経済をつくり上げることだ。日本の5つの優先課題を紹介する。
第1に「人への投資」だ。デジタル化・グリーン化は経済を大きく変えた。これから大きな付加価値を生み出す源泉となるのは、有形資産ではなく無形資産。中でも人的資本だ。だから人的資本を重視する社会をつくりあげていく。
第2はイノベーションへの投資だ。人工知能(AI)、量子、バイオ、デジタル、脱炭素の分野の研究開発について国家戦略づくりを進めている。私が特に重視するのがスタートアップだ。現状への多様な挑戦者が生まれ始めている。
大切なのは、日本にスタートアップを生み育てるエコシステム(生態系)をつくり上げること。そのために株の売却益を元手にスタートアップ投資を行う場合の税優遇措置や、ストックオプション(株式購入権)税制の拡充が必要だ。
また、スタートアップ教育に定評のある米国大学の日本への誘致などにも取り組んでいく。今、新興企業市場は厳しい状況にあるが、そんな時だからこそスタートアップ支援を一層強化していく。
第3はグリーントランスフォーメーション(GX)への投資だ。2050年のカーボンニュートラル実現に向け、日本は経済、社会、産業の大変革に挑んでいる。この大変革は日本経済復活の大きなチャンスとなりブースターとなる。
年末までに今後10年のロードマップを公表する。「成長志向型カーボンプライシング」と投資支援の組み合わせにより、まず国内において今後10年間150兆円超のGX投資を実現する。
第4に資産所得倍増プランだ。日本には2000兆円の個人金融資産がある。現状、その1割しか株式投資に回っていない。資産所得を倍増し老後のための長期的な資産形成を可能にするためには、個人向け少額投資非課税制度(NISA)の恒久化が必須だ。
第5に世界と共に成長する国づくりだ。日本はこれからも世界に開かれた貿易・投資立国であり続ける。日本は世界と人、モノ、カネの自由な往来を通して繁栄してきた国だ。
日本は世界各国と重層的な貿易・投資関係を持ち、包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)やインド太平洋経済枠組み(IPEF)を含む経済連携を積極的に推進している。これは今後も変わらない。
2022年10月スタートアップの事業化を支援する基金(1,000億円規模)設立
政府は、革新的な技術で成長を狙うスタートアップの事業化を支援する基金を新設。2022年度中にも立ち上げ、研究開発のあとの実証実験の取り組みを対象に5年間の支援を想定。基金の規模は1000億円超で、実用化までを後押しする見込み。高速通信規格「5G」や半導体や蓄電池、人工知能(AI)、量子技術といった重要技術を駆使した企業を育成し、産業競争力の強化をめざしている。国立研究開発法人(NEDO?)に基金を設ける方向で調整している。
米国は中小企業技術革新制度(SBIR)などを通じ、政府がスタートアップの研究開発を後押ししている。日本は1999年に米国の制度を参考に日本版SBIRを立ち上げた。2021年に中小企業庁から内閣府に事務局を移し、中小企業に重点を置いていた従来の制度から、技術革新を生み出す新興企業を長期に支援できる制度に変えた。
支援対象は研究開発段階までで、多額の費用を要するその後の実証実験などを手当てできていなかった。新たな基金は研究開発を終えたスタートアップに支援を絞る。従来の研究開発までの枠組みは事業総額が年70億円にとどまっていた。
政府はスタートアップを5年で10倍に増やす目標をかかげ、年内に5カ年計画を策定する。新たな基金はその計画の柱に位置づける。岸田文雄首相は4日の「新しい資本主義実現会議」で「スタートアップの振興のためSBIR制度を抜本拡充する」と表明していた。
2022年11月 スタートアップ育成5か年計画が発表
岸田政権は、「新しい資本主義」の実現に向けた取組を進めており、特にスタートアップは、社会的課題を成長のエンジンに転換して、持続可能な経済社会を実現する、まさに「新しい資本主義」の考え方を体現するものである。
これまで、スタートアップ担当大臣を設置し、実行のための一元的な司令塔機能を明確化し、本年度の物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策及び補正予算において過去最大規模の1兆円のスタートアップ育成に向けた予算措置を閣議決定したところであるが、これを活用しつつ、人材・ネットワーク構築の観点、事業成長のための資金供給や出口戦略の多様化の観点、オープンイノベーションの推進の観点から、多年度にわたる政策資源の総動員のため、官民による我が国のスタートアップ育成策の全体像を5か年計画として取りまとめることとする。
2022年12月 東京証券取引所の大納会にて
岸田首相は12月30日、東京証券取引所の大納会に出席し、「上場審査のあり方を見直すなど、政府とともに市場改革を進めて頂きたいと期待している」と述べた。また「日本が直面する様々な社会課題の解決を担う主役は『スタートアップ』であると考えている。来年はその育成に一段と力を入れていきたい」と強調した。
「来年は新しい資本主義を本格起動させていく年だ。多くの政策課題もあるが一つ一つ乗り越えて、成長と分配の好循環を実現し、新しい日本を切り開いていく」と決意を語った。
2023年1月 岸田総理大臣 年頭所感
(要約:本文はこちら)この時代の大きな転換期にあって、その場に立ちすくむのではなく、皆の努力で、我々自らを変えることで、新しい時代にふさわしい日本を創り上げ、この困難な時代を乗り越えていく決意です。
私が進めてきた新しい資本主義は、持続可能で包摂的な、新たな経済モデルを作りあげるための挑戦です。社会課題を成長のエンジンへと転換し、社会課題の解決と経済成長を同時に実現していきます。
今年も、グリーン、デジタル、スタートアップ、イノベーションなどの分野に、官民が連携して、我が国の人とカネを大きく集中させ、大胆な投資と改革を進めてまいります。
今、我が国が直面する困難も皆が力を合わせることで必ず乗り越えられると確信しています。共に、日本の明るい未来を切り拓き、心豊かな日本を未来に引き継ごうではありませんか。
https://expact.jp/subsidy2023/
2023年6月 骨太の方針2023発表
2023年7月17日・UAEイノベーション・パートナーシップ(JUIP)
2023年7月17日、岸田文雄内閣総理大臣はUAEのムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領と首脳会談を行い、「日・UAEイノベーション・パートナーシップ(JUIP)」を提案し、その提案が賛同されました。このパートナーシップには以下の3つの主要な枠組みが含まれます。
①「日・UAE先端技術協力スキーム(JU-CAT)」: この枠組みは、日本の先端技術スタートアップとUAE投資家の連携を推進し、UAEの脱炭素化と産業発展・人材育成に貢献するものです。
②「エネルギー安全保障と産業の加速化枠組み(ESIA)」: これは産業・先端技術省と経済産業省の間の包括的な産業協力の枠組みで、気候変動対策やエネルギー安全保障の強化、先進的な産業活動の加速化を目的としています。
③「半導体・電池対日投資協力枠組み」: この枠組みは、UAEのムバダラとの間で、日本の半導体事業への投資を促進するためのものです。
これにより、日本とUAEは先端技術分野での協力をさらに強化する予定です。
2023年8月 処理水の海洋放出を決断
政府は専門家の報告書を基に、処理水の海への放出を開始する方針を決定。岸田首相は、福島県沿岸で9月1日に再開される沖合底引き網漁の期間中を避け、休漁期間である8月中に放出を開始するとの決断を下した。
2023年9月 岸田内閣改造
岸田文雄内閣は、9月の内閣改造で、政権中枢のポストは留任が多く、新閣僚は11人が初入閣、女性は過去最多の5人が起用された。しかし、2001年から導入された副大臣・政務官においては、初めて「女性ゼロ」となった。人事は「安定感」と「刷新感」の両立を試みている。
人事後の焦点は、衆議院の解散・総選挙の時期に移っている。
2023年10月 萩生田政務調査会長が岸田総理に経済対策申し入れ
自由民主党の政務調査会は、新たな経済対策に関して提言をまとめ、「新たな総合経済対策に向けた提言」として、10月17日に萩生田光一政務調査会長が岸田文雄総理に申し入れを行った。
提言の中で、「日本経済を新たな成長ステージに移行させる」として、物価高の克服と成長力の強化に関する対策が取り上げられている。現在の日本経済の状況は「コストカット経済からの脱却」として位置付けられ、成長と分配の好循環の実現が強調されている。
物価高対策として、ガソリンや電気・都市ガス料金の変動緩和措置の継続、地方公共団体への交付金の拡充などが提言されている。また、持続的な賃上げや国内投資促進などの対策が5つの柱としてまとめられている。
スタートアップ支援等の科学技術・イノベーションへの投資が重要視されています。
スタートアップのグローバル展開支援や、業種・分野特化スタートアップ支援、大企業等の技術のカーブアウト加速を含むスタートアップとのオープンイノベーション等の支援が検討されています。また、スタートアップの資金調達に関する環境整備が行われ、株式投資型クラウドファンディングにおける企業の発行総額上限の拡充や、特定投資家向けの非上場株式等の私設取引システム(PTS)に係る認可要件の緩和、「経営者保証改革プログラム」の推進などが検討されています。
スタートアップ支援に関する提言として、グローバル・スタートアップ・キャンパスの創設や、イノベーションを牽引するスタートアップを支援することが挙げられています。
まとめ
岸田内閣総理大臣の発言からもスタートアップ育成にかける意気込みがひしひしと伝わってきます。スタートアップ施策のニュースが日々増えてきており、今後動きが加速していきそうです。
新しいニュースは随時更新して参ります。
EXPACTでは、特にスタートアップ企業への補助金活用や資金調達を強みとしており、実績・経験も多数ございます。資金調達成功に向けて、パートナーを探している、また詳しく話を聞いてみたいという方はお問い合わせください。