人材開発支援助成金とは
事業主が労働者に対して訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。今回は、その「事業展開等リスキリング支援コース」についてご紹介します。
本コースは、新たな事業展開等を図る事業主に対し、人材育成を支援する制度です。
事業展開等リスキリング支援コースとは
本コースは、企業の持続的発展のため、「新製品の製造」や「新サービスの提供」等により新たな分野に展開する、
または、「デジタル・グリーン」といった成長分野の技術を取り入れ業務の効率化等を図ろうとする事業が対象となります。
当該事業所が新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を実施した場合に、
「訓練経費」や「訓練期間中の賃金」の一部が助成される制度です。
企業が取り組む事業展開等とは
本コースでは、次のような事業展開等に取り組む企業が対象となります。
■事業展開
新たな製品を製造し又は新たな商品もしくはサービスを提供すること等により、新たな分野に進出すること。
このほか、事業(※1)や業種(※2)を転換することや、既存事業の中で製品又は商品若しくはサービスの
製造方法又は提供方法を変更する場合も事業展開にあたる。
※1 総務省が定める日本標準産業分類に基づく大分類の産業をいいます。
※2 総務省が定める日本標準産業分類に基づく中分類、小分類又は再分類の産業をいいます。
(例)
・新商品や新サービスの開発、製造、提供又は販売を開始する
・日本料理店が、フランス料理店を新たに開業する
・繊維業を営む事業主が、医療機器の製造等、医療分野の事業を新たに開始する
・料理教室を経営していたが、オンラインサービスを新たに開始する 等
■デジタル化
ビジネス環境の激しい変化に対応し、デジタル技術を活用して、業務の効率化を図ることや、顧客や社会のニーズを基に、
製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
(例)
・ITツールの活用や電子契約システムを導入し、社内のペーパーレス化を進めた
・アプリを開発し、顧客が待ち時間を見えるようにした
・顔認証やQRコード等によるチェックインサービスを導入し手続きを簡略化した 等
■グリーン化(省エネ等により温室効果ガスの排出をゼロにする活動)
徹底した省エネ、再生可能エネルギーの活用等により、CO2等の温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること。
(例)
・農薬の散布にトラクターを使用していたが、ドローン化を導入した
・風力発電機や太陽パネルを導入した 等
支給要件
■対象訓練
①対象の訓練時間数が10時間以上であること
②OFF-JTであること
③事業展開のための新たな分野で必要となる専門的な知識及び技術、又はデジタル・デジタルトランスフォーメーション化や
グリーン・カーボンニュートラル化を進めるための専門的な知識及び技術の習得をさせるための訓練
■助成率・助成額
①助成率・助成額
経費助成率 | 賃金助成額(1人1時間あたり) | 1事業所1年度あたりの上限額 | ||
75%(60%) | 960円(480円) | 1億円 |
*( )は中小企業以外の助成率・助成額
②受講者1人あたりの経費助成限度額
10時間以上100時間未満 | 100時間以上200時間未満 | 200時間以上 |
30万円(20万円) | 40万円(25万円) | 50万円(30万円) |
*( )は中小企業以外の限度額
詳細は、厚生労働省のリーフレットをご覧ください。
出典|人材開発支援助成金 (事業展開等リスキリング支援コース) のご案内(詳細版)
受給手続きの流れ
本助成金受給の手続きは、①準備、②計画書等の提出、③訓練の実施、④支給申請書の提出の4ステップです。
1.準備
本助成金を申請するためには、「職業能力開発推進者の選任」及び「事業内職業能力開発計画の策定」が必要です。
■職業能力開発推進者の選任
社内での職業能力開発の取組を推進する人物として、職業能力開発推進者を選任します。
具体的には以下の役割を遂行する責任を負います。
①事業内職業能力開発計画の作成・実施
②職業能力開発に関する労働者への相談・指導 など
<選任のポイント!> ・事業内職業能力開発計画の作成・実施や労働者への適切な相談・指導が行えるよう、当該企画や訓練実施に関する権限を有するものを選任する ・事業所ごとに1名以上選任する |
■事業内職業能力開発計画の策定
自社の人材育成における基本的な方針などを記載した事業内職業能力開発計画を策定します。
本策定にあたっては、労働局又はハローワークで相談を受け付けています。
2.計画書等の提出
訓練開始から起算して1か月前までに「訓練実施計画届・年間職業能力計画」等を労働局へ提出します。
3.訓練の実施等
訓練については、以下のQ&Aが公開されています。以下の内容を参考に、必要な訓練を選定してください。
Q.デジタル・デジタルトランスフォーメーション化やグリーン・カーボンニュートラル化 を進める場合に必要となる訓練とは、どのような訓練なのでしょうか。 A.情報通信、情報セキュリティ、クリーンエネルギー等に関する部署を強化するなど、デジタル化等の推進を図ることに伴い人員の増加を図る場合、当該職務に従事することとなる労働者に 必要となる訓練スーパーに自動化のセルフレジを新たに導入する、土木や建築工事にドローンによる測量を取 り入れる等デジタルの導入による効率化、省力化などデジタル化の推進を図ることに伴い、当 該職務に従事することとなる労働者に必要となる訓練 |
Q.通学制の訓練を実施している間に、隙間時間に定額制サービスによる訓練を組み合わせて実施しても助成対象になりますか。 A.定額制サービスによる訓練を実施する場合は、通学制の訓練など他の方法で実施される訓練と組み合わせて実施することはできません。定額制サービスによる訓練のみで実施する必要があります。 |
Q.既に契約済みの定額制サービスの利用が始まっている場合についても、助成対象になりますか。 A.契約期間の初日が令和4年12月2日以後の定額制サービスは助成対象となります。助成される期間は、計画届を提出した日から起算して1ヶ月後を契約期間の初日とみなし助成しますので、契約期間の初日とみなした日から最終日の期間となります。 |
4.支給申請書の提出
訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に「支給申請書」等を労働局へ提出します。提出後は、助成金の支給・不支給の審査が行われます。
まとめ
「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」において、デジタル分野の新たなスキルの習得と成長分野への円滑な労働移動を
同時に進めることが閣議決定されたことに伴い、「人への投資」の施策の予算が3年間に4,000億円規模から、5年間で1兆円に拡充されました。
それを背景に、本助成金の新しいコースが創設されています。人材育成に対して、岸田政権が力を入れていることを感じます。
弊社では、以下のご相談について各種専門コンサルタントが相談を承っております。
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