新規事業担当者のための【リーンスタートアップ】事例や関連用語を徹底解説!
「リーンスタートアップ」(リーン・スタートアップ)とはスタートアップに限らず、様々な企業の新規事業でも取り上げられているマネジメント手法の1つです。経営者や新規事業担当者なら、事業に取り組む前に知っておく必要があります。リーンスタートアップが成功した事例や、関連用語である「MVP」や「ピボット」、「リーンキャンバス」なども含めて徹底解説していきたいと思います。
リーンスタートアップとは?
「リーンスタートアップ」とは、
「コストをかけずに最低限の機能を持った試作品を短期間でつくり、顧客の反応を的確に取得して、顧客がより満足できる製品・サービスを開発していくマネジメント手法」のことです。新規事業での無駄を出さないための手法で、自己満足で終わらない新規事業開発を可能にします。
2011年にアメリカでベストセラーとなった『The Lean Startup』を執筆したアメリカの実業家エリック・リース氏により提唱されました。「無駄がない」という意味の「リーン(英語: lean)」と、「起業」を意味する「スタートアップ(英語: startup)」を組み合わせた言葉です。この「リーン」という言葉は、トヨタが編み出したムダを徹底排除した生産方式が海外で紹介されるときに、「リーン生産方式」という形で使われています。
リーンスタートアップの手法
リーンスタートアップでは、仮説構築→計測・実験→学習→再構築までの4つの過程を繰り返します。PDCAサイクルに非常に似たプロセスとなっています。ある企業Dの例を見ていきましょう。
①仮説構築
まずは、「顧客のニーズに合わせて、どのような製品・サービスが望ましいのか」という仮説を立てます。企業Dは「複数のデバイスやチーム間での共有や同期が行えるクラウドストレージサービスを作り上げれば、利用する人が大勢いる」という仮説をたてました。
②計測・実験
この時点では、実際に利用する人がいるかまだわかりません。いきなりサービスを開発するのではなく、仮説を検証するためにMVPとして3分間のデモ動画を作成しました。この動画では企業Dのサービスについて大まかに説明されています。
③学習結果を測定すると、一晩で75,000人ものメール登録がありました。これにより仮説は立証されて、顧客の存在に確信を持って開発に踏み切ることができました。
今回のケースでは仮説が立証されたため、大きく再構築する必要はありませんでしたが、ここで全く見向きされなかったり改善ポイントを提示されれば、再構築の段階を経て、またこの過程を繰り返します。このようにプロダクト開発の前に顧客の反応を的確に取得することで、ムダなく顧客により支持されるサービスを構築できるのです。ちなみに企業Dとはアメリカの企業Dropboxでした。
リーンスタートアップ事例紹介
ここからは、いくつかのリーンスタートアップ事例を紹介していきます。
事例①Instagram
実は『Instagram』は『Burbn』という現在地×写真の共有ができるソーシャルチェックインのアプリとしてリリースされました。しかし、思った以上に人気が出なかったことから、アイデアの仮説構築・計測・実験・学習を繰り返し、「写真の共有機能が最も人気」なことに気付きました。その結果、『Burbn』は写真投稿をメインにしたSNSへとピボットし、写真投稿・コメント・いいねの3機能を含んだ『Instagram』を完成させました。
事例②食べログ
カカクコムグループが運営するグルメサイト『食べログ』は、当初はグルメ本の情報をもとにした手打ちのデータベースで、想定の30%の開発段階でリリースされました.。はじめはユーザー数が100人にも満たなかった食べログですが、改善要望の掲示板にあったフィードバックを頼りにピボットした結果、今日のような形へとサイトを改善していきました。
事例③YouTube
『YouTube』は男女のマッチングアプリとしてリリースされました。当初ユーザーは自分が求める相手の性別や年齢を選択することができるよう設計されていて、「自分のプロフィール動画をアップすることが多いだろう」と開発者は仮説をたてていました。しかし、徐々に出会いとは関係ない動画をアップする人が増え始めたことから、出会い系の路線を捨てて「動画の共有」にフォーカスを絞ったサービスへと方向転換しました。
これらの事例は、顧客の反応を頼りに、サービスを方向転換し続けていった結果、より多くの顧客に支持されるようになった例です。特に『食べログ』は日本を代表する『リーンスタートアップ事例』となっています。
リーンスタートアップの特徴
リーンスタートアップの戦略を選択する上でのメリットやデメリットをいくつか挙げます。
メリット①コストや時間がかからない
製品・サービスを完璧に完成させてから都度改善していくやり方に比べると、必要最低限の機能のみで検証するリーンスタートアップの方がコストも時間も節約できます。
メリット②いち早く商材を市場に送り出せる
スタートアップは「未だ市場に出回っていない、価値の高い新しい商材」を提供する必要があることから、開発段階に完璧を求めないリーンスタートアップの方が競合他社に優位を保てます。
メリット③顧客のシンプルな反応が早く拾える
競合他社に比べて市場に早く送り出せるので、その分いち早く顧客の声を拾うことができます。さらに必要最低限の機能しかないため、顧客の反応がシンプルであり、改善ポイントが明確です。
デメリット①顧客の声を聞きすぎる
リーンスタートアップでは、プロトタイプを複数回市場に提供し、顧客の声をできる限り聞くことが重要とされています。しかし、顧客の声を聞きすぎることによって当初の商材イメージとはかけ離れたものになり、長期的な成功が見込めなくなることがあります。
デメリット②スタートアップにしては堅実すぎる
リーンスタートアップは非常に堅実的なビジネスモデルですが、失敗を恐れるようになります。その結果、イノベーションと呼べるほどの大きな成功に繋がらないのではと考える人もいます。
デメリット③近年のスタートアップの傾向にあっていない
そもそもスタートアップに向いているのかと疑問の声があります。近年、技術力でのイノベーションや差別化が多いため、最初の開発段階にできるだけ時間とコストを割くべきと唱える人もいます。
スタートアップ用語をまとめて解説
リーンスタートアップを実行するにあたって、知っておきたい用語をまとめました。
リーンキャンバス(Lean Canvas) リーンキャンバスとはいわば“ビジネスモデルキャンバスのスタートアップ版”。事業計画書のようなモノです。9つの要素から自社のビジネスモデルを俯瞰的に分析することで「やるべきこと」が明確になるうえ、ステークホルダーにも共有しやすくなります。
▼リーンキャンバスのテンプレート(弊社作成)
MVP (Minimum Viable Product) 「必要最小限の価値を備えた商品やサービス」
MVPキャンバス 仮説検証の内容を明確化するためのフレームワークで、「仮説は何か?」「検証すべき項目は?」「MVPとして何をつくる必要があるのか?」などという疑問に対して、MVPキャンバスを使うと整理することができます。
▼MVPキャンバスのテンプレート(弊社作成)
ピボット(Pivot) 本来「回転軸」を意味する英語で、転じて近年は企業経営における「方向転換」や「路線変更」を表す用語としてもよく使われます。とりわけスタートアップ企業が当初の事業戦略に行き詰まって、大きな軌道修正を余儀なくされたり、まったく別のアイデアに取り組んだりすること、またそうした経営判断そのものを「ピボット」と呼んでいます。
リーン生産方式 トヨタ生産方式のムダを徹底排除した生産方式のことです。1980年代に日本からアメリカに大量の自動車が輸出されるようになると、ジェームズ・P・ウォマックらは日本の自動車産業業界の研究を行いトヨタ生産方式のムダを徹底排除した生産方式に着目しました。製造工程の「ぜい肉」を落としたスリムな生産方式を「リーン生産方式」と名付けて、著書『リーン生産方式が、世界の自動車産業をこう変える。―最強の日本車メーカーを欧米が追い越す日』で紹介したことで広まりました。
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まとめ
リーンスタートアップは様々な企業の新規事業でも取り上げられているマネジメント手法です。ぜひ参考にしてみてください。
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