自由民主党 総合政策集 J-ファイルから読み解く2024年の政策動向
自民党が毎年、J-ファイルという総合政策集を出しているのをご存じでしょうか?自民党が目指すべき多様な政策が書かれた「総合政策集」です。自民党内の多くの政策構築機関が作成した各種提言書の内容も取り込まれており、記載した政策項目は『選挙公約』よりも多種多様で、実現に向けては長期的な挑戦が必要な政策も含まれています。具体化に向けた法的措置や財源確保について時を待たねばならない項目はあるものの、自民党が目指している各種政策の方向性を示した総合的な資料となります。キーワードを検索して該当箇所を読むだけでも、来年度の国の政策動向やビジネスの進むべき方向性が見えてくるかもしれません。
経済・成長戦略
- 成長と分配の好循環の実現
成長戦略によって労働生産性を向上させ、その成果を働く人に賃金の形で分配し、労働分配率を向上させることで、国民の所得水準を持続的に向上させます。これにより、需要の拡大を通じた成長を図り、成長と分配の好循環を実現します。
- 付加価値の創出
日本企業が付加価値の高い新製品や新サービスを生み出し、高い売値を確保できる付加価値を創造することで、中小企業との取引関係の是正や賃金の引上げを図ります。
また、産学官における AI の活用により、生産性の向上や高付加価値な財・サービスの創出につなげていきます。
- Well-being を実感できる社会の実現
成長戦略を通じて、格差是正を図りつつ、一人一人の国民が結果的に Well-being を実感できる社会の実現を目指します。
- フリーランスの環境整備
「人」への投資を強化する。フリーランスとして安心して働ける環境を整備するため、事業者とフリーランスの取引について法制面の整備を早期に行います。また、コロナ禍で影響が生じている非正規雇用の方々を中心に、失業なく労働移動できる支援策を検討します。
- SPAC(特別買収目的会社)制度の検討
スタートアップを生み出し、かつ、その規模を拡大する環境を整備するため、新規株式公開(IPO)における価格設定プロセスの見直しやSPAC(特別買収目的会社)制度の検討を進めます。
- 私的整理利便性拡大のための法制面の検討
私的整理による事業再構築を円滑化するため、債権者保護に配慮しつつ、私的整理の利便性の 拡大に向けた法制面の検討を図ります。
- 公正取引委員会の体制・執行の強化
公正取引委員会の体制及び執行の強化を図るため、量的・質的に人材面の充実を図ります。また、専門性の高い外部人材も活用しつつ、公正取引委員会による提言機能を強化します。
- 経済活動に向けた接種証明・検査の充実
海外でも活用可能な標準を満たす「電子的ワクチン接種証明」、「無料 PCR 検査所」の設置、「抗原検査」など在宅検査手段の普及により、経済を動かします。
- 強い経済の実現
「強い経済」は、全世代型社会保障の構築に不可欠です。外交力や国防力、科学技術力や文化力の強化、そして豊かな教育の実現にも直結します。まずは、「金融緩和」「機動的な財政出動」「成長戦略」を総動員し、傷んだ日本経済を立て直し、「成長」の軌道に乗せます。
- 企業の長期的経営のための環境整備
企業が長期的な目線に立ち、「株主」のみならず、「従業員」「消費者」「取引先」「社会」にも配慮した経営ができるよう、環境整備を進めます。このため、コーポレート・ガバナンスや企業開示制度のあり方を検討します。四半期開示を見直し、長期的な研究開発や人材投資を促進します。
- スーパーシティの実現
国家戦略特区制度を基礎に、人口減少や超高齢化などの地域課題に的確に対応するため、住民が参画し、住民目線で、世界に先駆けて未来の生活を先行実現するスーパーシティの実現を目指し、区域指定を進めます。また、世界で一番ビジネスをしやすい環境を作ることを目的とする国家戦略特区について、更なる透明性の向上、運用の柔軟化、早期の全国展開などを通じ、岩盤規制改革を徹底的に取り組みます。
- Well-being を重視した政策実現
「たくさんお金を稼いで、たくさん物を買うのが幸せ」という物質社会はもう過去のものになりつつあります。夢や生きがい、健康や安らぎといった一人ひとりの多様な幸せ、Well- being を重視した政策実現にかじを切ります。
働き方については、生産性だけでなく、社会や組織の中で、自分自身が楽しみながら、存分に能力を発揮できる働き方の実現を後押ししてまいります。経済効率だけを考えるのではなく、一人ひとりが幸せを感じることができる経済へとシフトし、人とのつながり、地域の特性を大切にした多様性のある幸せなまちづくり支援をしていきます。GDP は経済成長を測る上で大切な指標ですが、GDP だけでは測れない社会の豊かさや人々の生活の質、満足度などの Well- being に関する統計・調査・分析を充実します。政府の各種基本計画などにおいて、Well-being に関連する KPI を設定していきます。
- 中小企業の海外展開への支援
日本では生産性が高いにも関わらずグローバル化していない企業が多数あり、特に中小企業においてその傾向が顕著です。生産性が高く競争力のある企業がグローバル化することで、更に生産性は高まり、ひいては日本の経済成長を促進させ、国内の雇用も増加させます。
しかし、コロナ禍に伴うビジネス環境の変化を始め、越境 EC 取引の拡大、RCEP の発効など、海外展開を巡る環境は大きな変化に直面しています。
そうした中、中小企業の海外展開を支援するために、「JAPAN ブランド育成支援等事業」等によって、各種環境変化を踏まえた販路開拓や商品・サービスの開発、マーケティング等に対する支援を実施します。また、中小企業は、海外展開のための支援者に出会うことが難しいことを踏まえ、海外進出のパートナーに出会えるような取組みを進めます。
- 新輸出大国コンソーシアム等の伴走型支援
「新輸出大国コンソーシアム」を中心に、海外市場や現地のビジネス環境に詳しい専門家を国内外に配置し、一貫した伴走型支援を行うことで、中小企業の迅速かつ的確な情報収集と経営判断をサポートします。
また、海外現地においてどのような商品が求 められているのかという最新のニーズを収集し、その情報を中小企業の海外展開成約率向上に活 用するための仕組みを構築します。
更に「ジャパンモール」などを通じて、海外のEC 事業者等との連携を強化することで、中小企業の越境 EC 取引の活用を更に促進します。
海外展開の経験を積んだ中小企業に対しては、社長の右腕となる人物を育てるような人材育成 を行い、海外進出の体制をより強固にしていく ことを促進します。
- 新型コロナ感染症の影響を受ける事業者への支援
中小企業・小規模事業者は、日本経済・地域経済を支える柱です。引き続き、コロナ休業要請等の影響を受ける事業者への協力金や月次支援金等を迅速に支給するとともに、本年末まで継続する政府系金融機関による実質無利子・無担保融資、新事業展開等を支援する事業再構築補助金や返済猶予の要請などの支援策により、企業の事業継続・再構築を支え、強靱な地域経済を実現します。
特に、飲食、宿泊、文化芸術・エンターテインメントなどの業種は、コロナ禍の多大な影響を受けていることから、事業継続を着実に支援するとともに、コロナ後に向けた新たな取組みを支援します。
- 中小企業等の事業再構築
コロナの影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、コロナ後の経済社会の変化に対応するために、中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことが必要です。また、第 4 次産業革命により社会・技術が高度化するとともに、グローバル化や気候変動、新型コロナ感染症の蔓延により経済社会の不確実性が高まっていることから、コロナによる打撃を受けたかどうかにかかわらず、こうした変化に大胆に対応し、リスクを取りながら新たな取組みにチャレンジして更なる成長を目指すための事業再構築を中小企業全体に促していくことも重要です。
そこで、中小企業・小規模事業者等の新分野展開や業態転換を支援するため、事業再構築補助金を拡充し運用を改善します。
- 事業再生の環境整備
コロナ禍による中小企業等の過剰債務への対応に向けて、事業再生を支援するため、中小企業の実態を踏まえた私的整理等のガイドラインを策定します。また、倒産時に、個人保証を行う経営者が個人破産となるケースが多い問題についても対応します。加えて、事業再生に取り組む中小企業等の事業再構築についても、積極的に支援します。
- 「中小企業基本法」の改正
「中小企業基本法」の定める線引きにより、各種施策の対象外となったり、逆に規模拡大の壁となったりするなど、法制度が産業構造の変化に十分に対応できていませんでした。そのため、2013 年に「中小企業基本法」を一部改正し、小規模企業の基本理念や施策の方針を明確化するとともに、海外展開の推進等、中小企業施策として今日的に重要な事項を新たに規定し、意義ある第一歩を踏み出しました。
改正された「中小企業基本法」に基づいて、企業の成長段階に応じて伸びる力のある企業が成長にメリットを感じ、伸びようとするベンチャーを含めた中小・小規模企業や分野に資金・人材が集まりやすくします。
中堅企業へ成長し海外で競争できる中小企業を増やしていく観点から、2021 年度には、「中小企業等経営強化法」を改正し、「中小企業基本法」で定義される中小企業から一歩踏み出して、中小企業から中堅企業への成長途上にある企業群に支援施策の対象を拡大しました。これにより、規模拡大を通じた労働生産性の向上を促進していきます。
- 「小規模企業基本法」の制定
地域経済の担い手である小規模事業者は、資金繰り、海外展開、新規開業など様々な面で弱い立場に置かれていることから、小規模事業者に特化した支援が着実に実行されるよう 2014 年に「小規模企業基本法」を制定しました。これに基づき、小規模事業者の方々が次の一歩を踏み出す“羅針盤”となる小規模企業振興基本計画を閣議決定するとともに、商工会及び商工会議所による伴走型の小規模事業者支援を強化する「小規模事業者支援法」の改正を行いました。引き続き、小規模企業振興基本法の精神を具体化した小規模企業振興基本計画に基づき、小規模事業者施策を着実に実行していきます。特に、人口減少をはじめとする地域経済の構造変化の中で、買い物弱者対策や海外展開を含め商圏を広げようとする小規模事業者の販路開拓や働き方改革への対応も含む生産性向上は極めて重要です。これを幅広く支援する「小規模事業者持続化補助金」により、地域経済の担い手である小規模事業者に対して充実した支援策引き続きを講ずるとともに、地方自治体とも連携しながら小規模事業者の競争力を強化し、地域の稼ぐ力の向上を後押ししていきます。
また、小規模事業者支援法の改正に基づき、地域の総合経済団体である商工会・商工会議所が、地方自治体と連携し、小規模事業者に伴走型の支援を着実に講じることができるよう、支援体制を充実していきます。
- 中小企業・小規模事業者等の生産性向上
人口減少社会において一人当たり GDP の成長を目指すには、全就業者数の 7 割、付加価値の5 割強を占める中小企業・小規模事業者の労働生産性の向上が必要ですが、中小企業の労働生産性は長年にわたって低迷しており、大企業との格差も拡大しています。また、経済のグローバル化、脱炭素化、デジタル化などが急速に進みつある中、不確実性を増すコロナ後の経済社会の変化への対応が求められている一方で、中小企業は、人手不足等の構造変化に加え、働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入など複数年度にわたり相次ぐ制度変更に対応することが求められています。
そこで、中小企業・小規模事業者が生産性を向上させるために行う取組みを支援します。具体的には、生産性革命補助金を拡充し、ものづくり補助金を通じた設備投資、小規模事業者持続化補助金を通じた販路開拓、IT 導入補助金を通じた IT 導入を推進します。
また、中小企業が画期的な製品・サービスを生み出すことで付加価値を増加させていくことも労働生産性向上のためには重要です。そこで、中小企業が行う研究開発を予算措置や税制で後押しし、新商品・サービスの開発・販路開拓の支援等を実施します。
- 中小企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進
中小企業の DX 推進のため、中小企業自身のデジタル化、DX 化のみならず、中小企業を支える様々な補助金や行政手続もデジタル化、DX 化を進めます。まず、中小企業・小規模事業者をサポートする人員体制を整備します。加えて、クラウドツール等の購入を補助する IT 導入補助金等を通じて、デジタル化、DX 化を強力に推進します。
また、中小企業・小規模事業者の受発注、請求、記帳及び決済といった一連の取引プロセスでのバックオフィス業務について、電子システムの導入促進のための検討を進めるとともに、産業分野を横断した受発注等が可能となるシステム基盤の検討を行います。
これらのデジタル化、DX 化の取組みは、導入が予定されているインボイス制度への対応にも資するものです。
まず、全ての補助金、行政手続の電子化を早急に実現し、中小企業・小規模事業者が電子的に申請できる環境を整備します。また、中小企業、小規模事業者からの申請や相談データ等を蓄積し、中小企業、小規模事業者をサポートする仕組みの検討や、企業が新たな事業展開に繋げられる仕組みの検討を行います。
これらの動きと並行して、民間企業と連携し、プッシュ型で情報を得られる仕組みを構築し、中小企業、小規模事業者の新しい事業展開をサポートします。
- 中小企業金融を支える金融支援
新型コロナ感染症により影響を受けている中小企業の資金繰りの円滑化のため、信用補完制度の活用や政府系金融機関による融資等を通じて、セーフティネット機能を果たすとともに、コロナ後に向けた事業再構築のための成長リスクマネーの供給を着実に行っていきます。
- 個人保証に依存しない中小企業金融の促進
「経営者保証に関するガイドライン」、事業承継に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドラインの特則の一層の周知・普及に取り組むとともに、全国の経営者保証コーディネーターや専門家による支援を拡充し、広く経営者保証の解除を希望する中小企業・小規模事業者等に対して経営者保証ガイドラインの充足状況の確認、財務内容の改善等を支援します。
併せて、金融機関に対しては、事業承継時に、原則として新旧経営者の両方から二重に経営者保証を求めないことや、事業承継への影響も考慮した柔軟な判断を行うことなどを促します。更に、政府系金融機関による経営者保証に依らない融資・保証をより一層促進するとともに、民間金融機関ごとに、事業承継時の二重徴求や新経営者から保証を徴求しなかった割合等の公表を促すことにより、金融機関の取組み状況の「見える化」を図ります。
- 下請取引の適正化
頑張る中小企業・小規模事業者が、大企業との取引において、不当な発注・値引き、契約を余儀なくされることのないよう、公平・公正な取引環境を実現します。そのための下請取引に対する監督体制を強化します。
下請業者への取引価格などのしわ寄せを防ぐため、下請 G メンを増員して監督体制を強化し、下請取引の適正化を進めるとともに、業界による自主行動計画の策定を加速します。また、大企業と中小企業の連携強化を目指す「パートナーシップ構築宣言」の宣言企業増加に向け、働きかけを強化します。
- 中小企業・小規模事業者の活性化、地域経済の発展につながる人材の育成・確保
事業者を取り巻く環境は、確実にデジタル化対応、DX 化対応が求められている状況です。中小企業、小規模事業者自身の活性化、地域経済の発展に繋がる人材の育成、確保の観点においては、デジタル人材をいかに確保し、育成していくかが重要です。
まず、デジタル分野における人材育成支援の重点化を行います。既に、中小企業大学校においては、特に企業の経営層、経営幹部候補層向けに、デジタル化対応の研修を提供してきているところ、研修内容の強化(IT 活用の多様化、高度化等)やオンライン講座の拡大等を通じて、より多くの方に受講いただけるようにします。
また、どのようにデジタル化や DX 化に取り組めば良いのか知見のない地域の中小企業、小規模事業者が専門家のサポートを受けられる支援を充実させます。
更に、新型コロナ感染の影響等により先行きが不透明な中で、事業再構築等で成長・拡大を志向する中小企業、小規模事業者にとって、経営課題の見つめ直し、その課題に必要な人材の確保を戦略的に進めていくことが必要です。そのために、中小企業・小規模事業者が、自ら経営
課題に気付き、女性、高齢者、外国人等の多様な人材の活用するためのノウハウ定着の支援や、併せて、地域支援機関の人材確保支援能力の向上や支援ネットワークの構築を実証し、横展開しながら、地域の実情に即した人材の確保、育成を支援します。
- 中小企業・小規模事業者における防災・減災対策の支援
近年、中小企業・小規模事業者に大きな影響を与える大規模な自然災害が頻繁に発生しています。災害発生時における事後の復旧・復興対策のみならず、今後、発生が予想される自然災害に備え、中小企業・小規模事業者においても事前の防災・減災対策を進めていくことが急務です。
こうした状況を踏まえ、2019 年 7 月に施行した「中小企業等経営強化法等」(中小企業強靱化法)に基づいて、事業者が策定した防災減災に係る取組みを「事業継続力強化計画」として認定する制度を実施しています。
認定を受けた中小企業・小規模事業者に対し、税制優遇や金融支援などから多面的な支援を行い、事業継続力強化計画に関する制度の普及啓発、計画策定の支援等により防災・減災対策を後押ししていきます。
更に、商工会及び商工会議所に対しては、地方財政措置等を通じて、関係市町村と商工会・商工会議所が一体となって、事業継続力強化も含め、地域の課題に応じた小規模事業者支援を実施できる体制が構築されるよう、努めていきます。
- 国内外の観光需要等の取り込みによる商店街の活性化等
中小小売・サービス業者(中小商業者等)が集積集積する商店街等は、地域コミュニティの担い手として欠くことのできない重要な存在です。新型コロナ感染症による観光需要の低迷や外出自粛等の影響により、甚大な影響を受けている商店街等に対して、感染拡大防止を徹底しながら需要を喚起する取組みを支援し、地域経済の活性化を後押ししていきます。
また、地域における来街者の消費動向や需要の変化等を踏まえ、新たな需要の創出に繋がる魅力的な施設の整備等を行う中小商業者等のグループに対して、地方自治体と連携を図り、最適な供給体制(テナントミックス)の構築に向けた支援を行うとともに、商店街等のエリア全体での生産性、魅力や価値向上等に繋げるため、データマーケティング(デジタル化)の活用等を支援することにより、地域の持続的発展を促進します。
- 事業承継への集中支援
経営者の高齢化が進む中、コロナ禍により、昨年の休廃業・解散件数は過去最多の約 5 万件に上りました。中小企業・小規模事業者の貴重な技術や雇用などの経営資源が失われることのないよう、事業承継を進めることは「待ったなし」の課題です。このため、47 都道府県に設置された「事業承継・引継ぎ支援センター」において、「親族内承継」、「従業員承継」、「第三者への引継ぎ(M&A)」といったあらゆる事業承継の相談にワンストップで対応します。
また、事業承継時の贈与税・相続税の負担を実質ゼロとする「事業承継税制」や、「中小企業M&A 税制(経営資源の集約化に資する税制))の活用促進を図るとともに、コロナ禍等を踏まえた措置を検討します。後継者による新たな挑戦に必要な費用等についても、「事業承継・引継ぎ補助金」による支援を進めます。
加えて、中小企業・小規模事業者が事業承継の歩みを着実に進められるよう、現状を踏まえて「事業承継ガイドライン」を改訂します。M&A についても、選択肢の一つとして安心して行えるよう、基本的な指針となる「中小 M&A ガイドライン」の徹底を図るとともに、M&A 後の成長に向けた円滑な経営統合に関するガイドラインを策定します。
事業承継税制については、2021 年度税制改正において、事業承継税制における適用要件の見 直しのほか、個人事業者の事業用の乗用自動車 を特定事業用資産に含めるなど拡充を図りまし たが、事業承継の更なる加速化のため、個人事 業者の事業用資産に係る納税猶予制度について、同族会社や事業用資産を有しない個人との課税 の公平性や制度の濫用を防止する観点等を踏ま えつつ、青色申告書の貸借対照表に計上される 事業用資産を対象とすることなどを検討します。
- 小規模企業等に係る税制
小規模企業等に係る税制のあり方については、働き方の多様化を踏まえ、個人事業主、同族会 社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得 に対する課税のあり方等にも配慮しつつ、個人 と法人成り企業に対する課税のバランスを図る ための外国の制度も参考に、正規の簿記による 青色申告の普及を含め、記帳水準の向上を図り ながら、引き続き給与所得控除などの「所得の 種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全 体として見直すことを含め、所得税・法人税を 通じて総合的に早期に検討を進めてまいります。
- 創業への集中支援
創業の手法が、ゼロからの創業だけでなく、第二創業・ベンチャー型事業承継や、経営資源引継ぎ型創業など、多様化してきています。こうした状況を好機と捉え、今後は、多様な担い手による、多様な手法での創業を促すべく、支援を加速していきます。
進路選択の岐路にある高校生を中心に、新進気鋭の起業家の体験談に直接触れ、関心を持った層を更にプレイアップするような、一貫した起業家教育を実施することによって、創業関心層の底上げを図ります。加えて、市区町村等が行う、創業支援や創業に関する普及啓発への取組みへの支援の一層の促進、成長志向の創業を行おうとする起業家への支援強化を行います。更に、既存税制の活用促進を含め、地域のエンジェル投資家等による地元の中小企業等への資金拠出を促すための取組みを行います。
- 約束手形の支払いの短縮化
中小企業等が受け取る約束手形については、5 年後(2026 年)の利用廃止に向けて、①3 年後(2024 年)までに約束手形の支払い期間を 60 日以内へ短縮化するとともに、②5 年後の利用の廃止に向けて、各業界が今年改定した自主行動計画に基づき、産業界と政府が一体となって取組みを進めていきます。更に小切手の全面的な電子化も行います。
- 最低賃金の引上げへの価格転嫁
中小企業・小規模事業者等が賃上げできるような事業環境を整備できるよう、生産性の向上や下請取引の適正化に取り組みます。具体的には、事業再構築補助金や中小企業生産性革命推進事業について、「特別枠」の設定や、経営規模を踏まえた運用見直しを実施し、最低賃金引上げの影響を大きく受ける者や積極的な賃上げに取り組む者への支援を強化します。
また、生み出した付加価値が着実に中小企業に残るよう、下請取引におけるしわ寄せ防止など、大企業との取引環境の改善を進めます。具体的には「パートナーシップ構築宣言」を行う企業の増加に向けた周知等を行うとともに、9 月を「価格交渉促進月間」とし、下請 G メンによる調査等を徹底することで、最低賃金を含む労務費等の上昇分の価格転嫁協議を促進します。
- 地方や中小企業・小規模事業者への重点的な支援
国民の生活の基盤である地方創生は、一億総活躍社会の前提となるものであり、中小企業・小規模事業者は、日本経済・地域経済を支える柱です。全国津々浦々、地方の隅々まで、各種の政策支援を届けます。また、成長の果実を、大企業から中小企業・小規模事業者にいたるまで行き渡らせるため、下請等中小企業の取引条件改善などに総合的に取り組みます。
- 国際標準の戦略的な活用
革新技術をいち早く社会に実装し、世界に普及させるためには、「国際標準」の獲得をはじめとする、世界に先駆けたルール形成が極めて重要です。
このため、官民の適切な役割分担と、省庁や産業分野を越えた連携の下、国際標準の戦略的な活用のための体制整備を進めます。また、民間における、標準化を担う人材育成等の体制構築への支援を拡充します。特に、自動運転などの異業種間連携が重要な分野やカーボンニュートラル等、わが国の新しい成長エンジンとして重要な分野における国際標準化の獲得・活用に重点的に取り組みます。
- 「Connected Industries」の実現に向けた取組み
IoT・ビッグデータ・人工知能の更なる進展によって、世界は第 4 次産業革命というべき変革期を迎えています。わが国がこのグローバル競争を勝ち抜くには、日本の強みである「現場」に蓄積されたリアルデータを利活用して、いち早く「Connected Industries」を実現することが鍵となります。データを介して、人、技術、機械など様々なものがつながることによる新たな付加価値の創出と社会課題の解決により、産業競争力強化に繋げます。
このため、自動走行・モビリティサービス、契約・決済、ものづくり・ロボティクス、バイオ・素材、プラント・インフラ保安、スマートライフといった個別分野における検討を深めるとともに、重要分野における協調領域のデータ共有を促進するなど、産業構造の変革を進めていきます。
デジタル社会を支える先端半導体の設計やそ の製造技術の開発を積極的に支援するとともに、先端半導体の生産拠点の国内立地を推進するこ とで、確実な供給体制の構築を図ります。今後のデジタル需要・データ通信量の急増に対応するとともに、データ保護や災害に対する強靱性を高めるため、高性能・低消費電力のデータセンターの国内における最適配置を図ります。
- スタートアップの創出
日本経済の新しい担い手として、ユニコーン企業などグローバルで急成長するスタートアップの創出を促進します。スタートアップ・エコシステム(起業家、投資家、大企業、大学、独法、行政等が連携し、スタートアップが自律的、連続的に生み出される仕組み)の構築・強化を行います。日本を代表するようなスタートアップの成長や海外展開を官民一体で集中支援する J-Startup プログラムを推進します。
大規模かつ長期的な成長資金供給のために、国内外の機関投資家や事業会社の投資拡大のための環境整備をします。スタートアップの成長にかかせない高度な経営人材や技術者を確保すべく、イノベーション人材育成や、国際経験豊かな人材のマッチング支援を強化します。
大企業からスタートアップへの投資促進やM&A による事業の融合や連携を通じたオープンイノベーションを促進します。
https://expact.jp/startupmama/
最先端の研究開発成果を事業化し、イノベーションで世界に貢献するテック系スタートアップを創業時から成長段階に応じ、一貫して支援する仕組みを構築します。
新技術や斬新なビジネスモデルで地域の課題を解決し、豊かな暮らしを実現する地方発スタートアップの創出を、地域の既存中核企業との連携や都市部との人材交流促進、企業と大学が連携したインキュベーション(創業支援)施設の整備等により支援します。スタートアップの新市場の創出を促進すべく、グレーゾーン解消制度や規制のサンドボックス 制度など規制改革を推進します。
- 組込みシステム関連産業のデジタル・トランスフォーメーション
あらゆる産業においてデータやデジタル技術を活用することが求められる時代を迎え、デジタル技術導入による競争力強化が不可欠となっています。中でも、競争力の源泉であるデータを取得し処理する、製品等の「頭脳」にあたる電子部品(組込みシステム)や、それをコントロールするソフトウェア(組込みソフトウェア)のレガシー刷新が求められています。そこで、こうした組込みシステム等のデジタル・トランスフォーメーションを推進する支援体制の構築を目指します。
- 地域未来牽引企業への支援
地域未来牽引企業等の地域経済・社会を牽引 する事業を行う企業に対して、地域未来投資促 進法をはじめ、予算、税制、金融、規制の特例等の支援策を重点投入することで、デジタル技術 を活用したビジネスモデルの変革等を促しつつ、地域の特性を生かした付加価値の創出を促進し、地域に経済波及効果を生み出すことを目指します。
- 重要物質の国内生産基盤の強化
半導体・リチウム電池といった安全保障の観点から重要な物資の確保や技術開発を進めるとともに、国内生産基盤を強化します。また、重要な機微情報等の国外への流出を防止すべく、輸出管理・投資管理等、機微技術の管理を強化します。これらの施策を統合的に進めることを通じて、わが国のサプライチェーンの強靱化と、技術的優位性の維持・獲得を進めます。
- 重要医薬品の製造・開発体制の強化
平時から有事にも備えた重要医薬品の国内開発・製造に万全を期すため、バイオ医薬品とワクチン製造を両立するような製造拠点整備、部素材のサプライチェーン強化、創薬ベンチャーの実用化開発支援を通じた国産ワクチン・国産医薬品の競争力強化を図ります。
- バイオ産業の強化
最先端のバイオ技術(ゲノム編集・合成等)とデジタル技術の融合や、バイオものづくり技術の向上を通じて、カーボンリサイクルにも寄与する革新的な高付加価値製品(バイオ医薬・高機能素材等)を創出する、バイオ産業の強化を推進していきます。
- 医療上必要不可欠な医療機器の安定供給
新型コロナ感染症の教訓も踏まえ、医療上必要不可欠な医療機器の安定供給に万全を期すため、サプライチェーンを把握するとともに、開発支援などにより平時から供給量を高める等の取組みを図ります。
- 人材育成の強化
Society5.0 の時代に子供たちが必要な資質・能力を育むために、教材のオンライン図書館である「オンライン STEAM ライブラリ-」の拡充等により、STEAM 教育を推進するとともに、産業構造の転換に向けた人材育成のためのリカレント教育を強化します。
- 研究開発支援の拡充・重点化
今後の経済成長の基盤であり、国家間競争の中核にもなりつつあるカーボンニュートラル、エネルギー、AI・量子等の更なるイノベーションを推進するため、研究開発支援の拡充・重点化に加え、国の研究機関や地域中核大学を中心とした産学連携拠点の充実に取り組みます。
また、イノベーションを推進する上では人材 の育成が不可欠です。大学において重点分野に 特化した育成カリキュラムを整備するとともに、若手研究者と産業界のマッチングや共同研究へ の支援の拡充に取り組みます。
更に、研究開発の成果を社会実装し、速やかに国際市場の獲得に結びつけていくため、産業界による戦略的な国際標準の開発や知的財産の獲得、それらの活用等を積極的に推進します。
- 健康分野の成長産業の創出
コロナ禍で健康の価値が再認識される中、健康分野の成長産業を創出するため、健康経営を通じた投資を促進するとともに、健康データやエビデンスに基づくヘルスケアサービスの事業化に向けた女性の健康・認知症・メンタルヘルス等の分野での研究を支援します。
- 大阪・関西万博の成功へ
2025 年大阪・関西万博を世界中の人々に「夢」と「驚き」を与えるような国際博覧会とするべく、準備を進めます。また、カーボンニュートラル、健康医療、Beyond 5G 等様々な分野の新技術を実証し、Society5.0 を体感できる未来社会の実験場とするほか、会期前から食・伝統文化等の地域資源の魅力を世界に発信する訪日プロモーションを推進し、官民一体となって準備を加速します。
- 対日直接投資の推進
対日直接投資促進のための政府横断的な機能を強化し、海外企業の国内立地等の諸手続きを大幅に簡素化しワンストップ化します。国の各省庁手続きや立地自治体との諸手続きを横断的にワンストップ化し、JETRO の対内直接投資推進業務を更に拡充します。また、日本企業と海外企業の協業を通じたイノベーション創出を推進します。
- インフラ海外展開の推進
新興国を中心としたデジタル化や脱炭素化等の新たなインフラ需要を積極的に取り込み、わが国の経済成長につなげるため、積極的なトップセールス等を実施するとともに、新型コロナ感染拡大等の国際情勢の変化に対応した貿易保険の機能強化することにより、日本企業のインフラ海外展開を力強く後押しします。
- 自由貿易体制の推進
公平な競争条件確保のためのルール作りや、WTO 改革を有志国と連携しながら進め、多国間貿易体制を維持・強化します。TPP11 協定の着実な実施を確保し、協定のハイレベルを維持しつつ新規加入の議論を主導するとともに、RCEP 協定の早期発効と各国の履行確保を進めます。
- 「イノベーション・エコシステム」の早期確立
世界はデジタル化とグリーン化を基軸とした経済・社会変革競争に突入しており、日本もイノベーションによって差別化を図り、知的財産を活用して有利な地位を確保することが必要です。そのためにも、イノベーションが自律的かつ持続的に生まれ続けていくイノベーション・エコシステムの確立を目指します。
コーポレートガバナンス・コードの改訂により、上場企業による知財情報の具体的な開示及び取締役会での実効的な監督が求められることを踏まえ、投資家や金融機関から適切に評価される知財投資・活用戦略の開示の在り方等を示すガイドラインを作成します。また、破壊的イノベーションの担い手であるスタートアップ・ベンチャーや中小企業についても、ビジネスを見える化し、金融機関が知財・無形資産とその活用方策を含む事業価値を適切に評価しやすい環境を整備します。
- 国際標準の戦略的な獲得と活用
産業や技術における国際標準の獲得は大きな市場の獲得と経済安全保障上の戦略的価値を有します。統合イノベーション戦略推進会議の下に設置された「標準活用推進タスクフォース」を司令塔として、官民一体となった標準の形成・活用を推進するとともに、国際標準の戦略的な活用に向けた各省庁の取組みに対し、追加的な予算配分をすることができる枠組みを一層活用し、取組みの加速化を支援します
更に、企業の標準活用戦略活動に対して、国立研究開発法人等の標準関係機関のネットワーク化し、ワンストップでの支援を行うプラットフォーム機能の充実を目指します。
- デジタル社会に対応したデータ戦略の実行デジタル社会で価値を生み出すデータについ ては、今年新たに「包括的データ戦略」を策定しました。パーソナルデータを含むデータの取引における懸念・不安が払しょくされるようなルールの整備により、世界の先導役として DFFT(信頼性のある自由なデータ流通)を実現します。そして、国民、行政機関、企業、アカデミアのデータ共有を進め、新たな価値の創出に取り組みます。その基盤としてのデータ標準、データ取引市場、プラットフォームの整備、人材育成を進めます。併せて、競争力の源泉であるデータの流通・ 活用を円滑に行うためには、データ連携基盤や データの流通・取引を行う上で必要となるデー タ取扱いルール等の整備が必要です。データ連 携基盤においてデータ流通の推進を図るために、データ連携基盤を構築する際に、データ取扱い ルールの実装の参考となるデータ取扱いルール の整備に向けたガイダンスを作成します
- コンテンツ戦略と海賊版対策
コンテンツ分野は、デジタルエコノミーの発 展を支える中間財として重要な役割を果たすこ とから、デジタル時代に適合したコンテンツ産 業の進化・発展を促します。デジタルの強みを 最大限生かしたコンテンツの流通に資するよう、著作権処理の円滑化に資するよう所要の制度改 正や権利情報データベースの構築をはじめとし た IT 基盤整備、デジタルアーカイブ社会の実現に向けた取組みを進めますまた、海賊版対策、コンテンツ制作に携わる人材育成、コンテンツ制作における取引の適正化や就業環境の改善に取り組みます。その際、ブロックチェーンやフィンガープリント等のデジタル時代の新たな技術を積極的に活用しながら、クリエイターに適切に対価が還元されるコンテンツの管理・流通の仕組み作りを進めます。そのために、メディアコンテンツ中期戦略を、関係者との対話を重ねつつ策定します。 - 「クールジャパン戦略」の推進
海外の人々が良いと思う日本の魅力をマーケットインの考え方に基づき効果的に発信し、インバウンドや輸出の拡大等にもつながるクールジャパン戦略を強化・拡充します。新型コロナによる影響など、クールジャパンを取り巻く環境の変化を踏まえ、新たに「クールジャパン戦略」を再構築しました。コロナの下での安全安心や自然、エコ、SDGs など「価値観の変化への対応」、コロナ禍でも堅調な農産品や日本酒類の輸出を有効に活用し、将来的なインバウンドに繋げる「輸出とインバウンドの好循環の構築」、オンライン消費やコンテンツのデジタル配信など「デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの確立」、日本全国に潜在する魅力や文化等を外国人の視点に立ってストーリー化する「発信力」の強化、地方自治体との連携など「クールジャパンを支える基盤」の強化といった柱となる 5 つの要素を踏まえ、コロナ後を見据えたクールジャパンの取組みを更に推進します。海外への情報発信に当たっては、2025 年大阪・関西万博の場を有効に活用してソフトパワーの強化を図ります。海外においても、現地人材の活用等を通じて、在外公館やジャパン・ハウス等の発信・展開拠点を強化します。 - 「クールジャパン」関連コンテンツの振興
コロナ禍の中で、飲食、観光、文化芸術、イベント・エンターテインメント、ナイトタイムエコノミーといったクールジャパン関連分野は大きな影響を受けました。中小企業・小規模事業者、フリーランスで働く人が多いという就業構造を踏まえつつ、事業継続の支援を行います。アニメ、マンガ、映画、ゲーム、放送など海外への発信力が高いコンテンツ産業は、クールジャパンの大きな推進力となっています。巨大な配信プラットフォームの台頭が与える影響に留意しつつ、製作現場のデジタル化、書面契約の徹底や就業環境を含めた商慣行の改善、人材育成、資金調達の改善を進め、コンテンツ産業の振興と海外展開を図ります。これらについても、関係者との対話を重ねてメディアコンテンツ中期戦略に盛り込みます。併せて、東京国際映画祭などコンテンツの中心としての日本の魅力を高める取組みを進めます。また、国内への大型映像作品のロケ誘致は、作品を通じて日本の魅力を発信するだけにとどまらず、海外の映像製作のノウハウを日本のコンテンツ産業にもたらします。諸外国の制度も参考にしつつ、ロケ誘致の一層の推進を図ります。更に、錦鯉や盆栽、ロボット、伝統文化や衣食住の生活文化などの新たな人気の高まり、SDGs や環境といった世界的な価値観の変化も取り入れて、日本のブランドイメージを高めていきます。若者の自立・自活を促すキャリア教育と職世界遺産・無形文化遺産などの保存・活用
ユネスコの「世界遺産」について、わが国に は、20 件の文化遺産、5 件の自然遺産があり、このうち、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」及び「北海道・北東北の縄文遺跡群」については、今年 7 月に開催された世界遺産委員会で世界遺産に登録されました。また、「無形文化遺産」については、「和紙:日本の手漉き和紙技術」「山・鉾・屋台行事」など合わせて 22 件が登録されています。更に、「世界農業遺産」には、新潟県佐渡市、石川県能登半島などが登録されています。これらの保存・活用を図ることによって、海外への日本文化の発信及び諸外国との相互理解の増進や、わが国の文化を再認識し、歴史と文化を尊ぶ心の育成、文化財の次世「新たな成長の源泉へ」~ジョブ型人材マネジメントとリカレント教育の推進DX の加速をはじめとするグローバルな競争激化や、人口減少社会の到来に対応し、日本社会・経済の回復を確実なものとするためには、企業・従業員の意識改革とリカレント教育の活性化を合わせて促進することが不可欠です。企業がジョブを定義し、リカレント教育により得たスキルで目標を達成し、最終的に評価や賃金と結びつける「ジョブ型人材マネジメント」の普及・促進に取り組みます。
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「日本版O-NET(job tag)」の機能強化よる職業情報見える化の充実や、民間求人サイト等との連携を更に推し進めることで、人材マッチング機能の質を高め、在籍型出向・転職・起業を応援し、人材流動化を促進することにより企業組織・企業文化の変革を働きかけます。
また、リカレント教育を受けられる場づくりとして、大学・専門学校等における実践的・専門的な教育プログラムの開発・促進、リカレント教育を支える専門人材の育成、社会人の学びのポータルサイト「マナパス」による情報発信を通じた学習基盤の整備等を行います。
生産性向上に一層貢献できる人材を輩出するために、産官学が連携したビジネス教育モデルの導入により、社会人中堅層のキャリアアップのためのリカレント教育を推進するとともに、学びの時間を確保するための休暇(サバティカル休暇)や選択的週休 3 日制導入により、我が国の次なる時代をリードする新たな成長の源泉とします。
- 公共放送の改革と放送の将来像についての検討
あまねく日本全国において豊かで良質な放送番組を放送するなど、NHK が公共放送としての使命を引き続き果たしていくため、不断の改革に取り組んでいきます。このため、受信料の適正かつ公平な負担を図るための還元目的積立金制度の整備等を内容とする放送法改正を目指すとともに、公共放送における放送番組等のインターネット配信の意義やサービスニーズを検証するため、テレビを保有・視聴しない方々を対象としたインターネット配信の社会実証を推進します。
また、電波の有限希少性等に加え、経済安全 保障の観点からも、放送・通信における外資規 制の実効性確保のための制度整備を進めるほか、スマートフォンの普及や視聴スタイルの変化な どにより放送を取り巻く環境が急速に変化する 中、放送のユニバーサルサービスや放送コンテ ンツのインターネット配信など、放送の将来像 について検討を行います。
- 携帯電話市場の公正競争促進
国民生活に不可欠な携帯電話サービスについて、「安く」「わかりやすく」「納得感のある」料金やサービスの実現に向け、通信料金と端末代金の完全分離や、事業者による利用者の行き過ぎた「囲い込み」を禁止するための電気通信事業法の改正をはじめとして、公正な競争を促進するための政策を進めてきました。こうした取組みの結果、この春以降、携帯各社から新しい低廉な料金プランの提供が開始されるなど、競争が活発化しており、従来の半額以下の料金水準が実現しています。一人でも多くの国民に携帯電話料金の低廉化の恩恵を実感していただけるよう、キャリア・メール持ち運びの実現など乗換えを円滑にするための取組みを進め、一層の公正な競争環境の整備に取り組みます。
- 社会全体の ICT 化と 4K・8K の多様な産業分 野での活用
5G、4K・8K 放送をはじめとした世界最高水準の ICT インフラの整備を目指します。
国、地方、企業、個人、訪日する外国人も含め、それぞれが ICT の恩恵 を受けられるよう「社会全体の ICT 化」を進めてまいります。5G の全国展開を着実に推進するため、通信事業者等による 5G 基地局や光ファイバなどの情報通信インフラの全国的な整備を推進します。また、東京圏に一極集中しているデータセンター、インターネット相互接続点(IX)、国際海底ケーブルの陸揚局等の重要な通信インフラの地方立地を支援することで、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に伴うインターネット上のデータ流通量の急増や、東京被災時に国内全域のインターネット利用に甚大な影響を与えるリスクへ対応するとともに、わが国が世界のデータを安心して預けてもらえる「データ集積地」となることを目指します。
更に、鉄道トンネル等電波が遮へいされる場所においても携帯電話が利用できるようにします。このうち、九州新幹線西九州ルート及び北陸新幹線の延伸区間については、開業時において全てのトンネルで携帯電話が利用できるようにします。また、在来線トンネルの対策も推進します。
2018 年 12 月から新 4K・8K 衛星放送が開始され、各家庭では臨場感あふれる高精細な映像を楽しむことができるようになりました。東京オリンピック・パラリンピック競技大会では多くの視聴者が 4K・8K 番組を通じて大会の感動が共有されたところ、引き続き、4K・8K 放送の普及に向け、周知・広報等を進めてまいります。また、4K・8K の高精細な映像技術は放送のみならず、幅広い分野への波及が期待されています。例えば医療分野においては、高精細映像を用いることで、 内視鏡等の検査・手術の精度の向上のほか、遠隔地 にいる専門医による診療といった遠隔医療の普及への寄与が期待されます。 このような 4K・8K の高精細な映像技術について、様々な産業分野での活用を通じ、地方創生や社会の 福祉の向上といった社会課題の解決を目指します。
- ICT 化による成功モデルの提示
テレワークや遠隔医療等に関する ICT 投資を拡大し、雇用の拡大や働き方改革の推進、医療・救急・介護・健康の連携、高度化に貢献するとともに、個人情報の取扱いにも留意しつつ、こう した諸課題の解決に向けた実証を通じ、新しい 成功モデルの提示や標準化を速やかに進めます。
- 多言語音声翻訳の普及・高度化
訪日・在留外国人数は増加傾向にあり、2025 年大阪・関西万博では更なる来訪者が見込まれている中で、日常生活・行政手続・観光等の分野において「言葉の壁」が大きな問題となっています。また、企業活動の国際化により、ビジネスや国際会議でも「言葉の壁」が問題となっています。ICT の発達により実現可能となった多言語の音声翻訳の幅広い普及やビジネスや国際会議にも対応した最先端の AI 技術を用いた同時通訳の実現により、訪日・在留外国人との共生社会の実現、企業のビジネスチャンスの拡大や海外連携の促進を図り、国内外での経済・社会活動において日本の価値と魅力を高めていきます。
- テレワークの普及推進
テレワークは、ICT を利用し時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方です。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、多くの企業・団体において緊急避難的にテレワークが導入された一方、急速な導入にこれまでの働き方の慣行や環境が対応しきれなかった面もあります。今後、わが党において取りまとめた提言「多様な働き方と企業の成長を実現する良質なテレワークの推進に向けて」も踏まえつつ、コロナ後の「新たな日常」・「新たな生活様式」に対応した働き方として、生産性の向上や働く人の満足度につながる形で良質なテレワークが導入・定着されるよう、テレワーク月間などの取組みを後押しし、テレワークの普及を更に推進していきます。
- 成長戦略に資するグローバル人材の育成
地域で子供・学生、社会人、障害者、高齢者等がプログラミング等の ICT を楽しく学び合う中で、世代を超えて知識・経験を共有する仕組みを整備します。
- 情報アクセシビリティの向上
本格的な IoT・AI 時代の到来に向け、障害者の皆さんがより豊かな生活を送ることができる ようにするため、必要な情報に円滑にアクセス できるよう、利便性に優れた情報通信機器・サ ービス等の企画、開発、提供の促進や、利用しや すい放送の更なる普及に向けた取組みを通じて、情報アクセシビリティの向上を推進します。
- パーソナルデータの利用の活性化
個人の生涯にわたる医療等のデータを時系列で管理し、本人の判断のもと多目的に活用する仕組みである PHR(Personal Health Record)
について、安心・安全な普及展開のための取組みを行います。また、個人の関与のもとでパーソナルデータの流通・活用を進める仕組みである情報銀行について、取り扱うデータの範囲に係る検討や、地方公共団体とのデータ連携に係る実証等を行うことにより、パーソナルデータの利用の活性化を推進していきます。
- Society 0 を支える ICT 先端技術開発
Society 5.0 を支える「サイバー空間とフィジカル空間の融合」や社会全体のデジタル変革
(DX)を加速するため、ICT 分野の技術開発等を推進します。具体的には、Beyond5G、AI、量子情報通信、宇宙通信などの先端技術の研究開発とその成果の社会実装、知財・国際標準化活動を支援します。
- 情報通信産業における経済安全保障の確保 と経済再生(国際競争力強化)
ICT は、新たな富の創出や生産活動の効率化に大きく貢献し、国民生活を便利にする戦略分 野であり、Society5.0 を支えるものです。近年の世界市場においては、米中のグローバル企業 が台頭するとともに、セキュリティの確保やデ ータ保護などを巡る民主主義の根幹に関わる負 の側面の顕在化などに的確に対応することが急 務となっています。そこで、戦略的自律性の維 持・強化、戦略的不可欠性の獲得の観点から、安全・信頼性を確保した情報通信インフラの整備・維持、国内外での事業展開を見据えた新興技術 の研究開発や標準化、プライバシー保護やセキ ュリティの確保と自由なデータ流通の両立など の取組みを推進し、わが国の情報通信分野にお ける経済安全保障の確保と経済再生を図ります。
更に、5G の次の世代のBeyond 5G は、将来のあらゆる産業や社会基盤になるものであり、わが国の国際競争力を取り戻すとともに経済安全保障を確保するとの認識の下、NICT(情報通信研究機構)に設置した Beyond 5G 研究開発基金により、官民の英知を結集した研究開発を強力に推進します。これに加えて、更に必要な政策投資を戦略的に推進することによって、官民連携による研究開発を加速化し、早期の技術確立を推進します。また、世界市場におけるわが国技術のいち早い導入のため、戦略的パートナーとの国際研究を推進し、国際標準獲得を図ります。また、ビジネスにおけるデータ利活用の基盤となる、データの自由な流通の促進及びそのための信頼性のあるデータガバナンスの構築を図るため、国際機関のトップ人材の輩出等を通じ、国際的なルール形成を主導します。
- 質の高い ICT インフラの海外展開支援
わが国の力強い成長のためには、人口増が続 き、マーケットが拡大しているアジア、中南米 などの旺盛なインフラ需要を積極的に取り込み、SDGs 達成による持続的成長につなげていくことが重要です。ICT は、それ自体が重要な社会 基盤インフラであるだけでなく、橋や道路など の公共インフラと組み合わせることで耐久性の 向上や需要予測など付加価値を高めることがで きます。このため、5G 等の通信ネットワーク、光海底ケーブル、地デジ、郵便、防災 ICT、セキュリティ、衛星、電波システム等、わが国 ICT の特徴・強みを活かした質の高いインフラにつ いて、JICT(株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構)も活用しつつ、積極的なトップセー ルス及び官民ミッションの派遣により、意欲あ る民間企業の海外展開を支援します。
- 紛争解決拠点の整備
わが国の経済や金融の活性化に向けて、アジア随一の紛争解決拠点となることを目指し、仲裁専用施設の更なる ICT 化、仲裁人・仲裁代理人などの人材育成、国内外の企業に対する広報・意識啓発といったインフラ整備とともに、仲裁法の見直しなどの法制度の整備を車の両輪として進めます。
また、海外進出するわが国企業などを法的側面から支援するため、法曹などによる日本企業などへの支援のあり方などを調査研究し、十分な支援を受けられる環境を整備します。
更に、国際取引の円滑化、対日直接投資の促進等に向けた環境整備を行うため、AI 翻訳の活用も含め日本法令の外国語訳の公開の迅速化・内容の充実を推進します。
- 「選択的週休 3 日制」による社会発展の促進
多様な働き方のひとつとして、「選択的週休 3 日制」の考え方が子育て、介護等と仕事の両立の促進やプライベート時間の創出に資することで人々の幸福につながり、これらが適切に普及していくことで、ワーク・ライフ・バランスの機運の醸成のみならず、週休 2 日未満の企業が 1 週間の休日数を増やすといった副次的効果も期待されます。また、長期的な観点では、「選択的週休 3 日制」を活用し、キャリアアップに励むことで、IT 等成長分野へ人材が移動することに寄与するものと考えられます。
そのため、希望者に「選択的週休 3 日制」を提供できる仕組みを広範に導入することを推進します。
更に、「選択的週休 3 日制」を活用し、都市勤務労働者が、本業とは別に週 1~2 日地方で兼業する等の取組みをはじめ、地域への人材展開を促進する政府の既存事業との連携や活用を図りながら、「選択的週休 3 日制」を利用した地方兼業を推進します。
- ソフトパワーを 100 兆円産業へ
文化芸術、スポーツ、観光、デザイン、コンテンツなどのわが国のソフトパワー産業を国の成長戦略の要、地方創生の切り札として活用し、2030 年に 100 兆円産業化を目指します。
- 日本産酒類の新市場創造等
日本産酒類の国内外での新市場を創造していくため、ブランド力向上や酒蔵ツーリズムの促進、輸出環境の整備などの対策を強力に推進します。また、日本酒等のユネスコ無形文化遺産への登録を目指します。
- 公的価格のあり方の見直し
看護師、介護士、幼稚園教諭、保育士をはじめ、賃金の原資が公的に決まるにも関わらず、仕事内容に比して賃金の水準が長い間低く抑えられてきた方々の所得向上に向け、公的価格のあり方を抜本的に見直します。
科学技術
- 政府研究開発投資の拡大に向けた取組みの推進
「第 6 期科学技術・イノベーション基本計画」に基づき、ここで掲げられた幅広い取組みを着実に実行していきます。特に、諸外国が科学技術投資を大幅に増やす中、このままでは科学技術先進国としての地位を失うおそれがあることに強い危機感を持ち、本基本計画で掲げられた5 年間での政府研究開発投資約 30 兆円、官民合わせた研究開発投資の総額 120 兆円の達成に向けて、官邸及び政治主導で毎年の科学技術予算を確実に措置し、未来投資を拡大するとともに、科学技術・イノベーション政策を強力に推進していきます。更に、効果的な政府研究開発投資のため、エビデンスに基づく政策立案や指標による計画の進捗把握・評価を推進します。
- 科学技術政策の強力な推進力となる「司令塔」機能の強化
官邸の科学技術イノベーション政策に関する政治決定と科学的助言の機能強化を図るとともに、わが国の生命線である科学技術を国家戦略として推進するため、「統合イノベーション戦略推進会議」及び科学技術・イノベーション推進事務局の機能を最大限働かせ、関係府省の連携・協力のもと、政策の重複を排除して、効率的・効果的な政策推進を図ります。社会課題解決に向けた取組みを強力に推進するため、「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)を発展させた次期 SIP を立ち上げるとともに、官民の研究開発投資拡大に向けた「官民研究開発投資拡大プログラム」(PRISM)を推進し、関係府省の連携・マネジメント体制を継続的に強化します。
- 実用化に向けた医薬品・医療機器の研究の促進
再生医療、医療・介護ロボット、バイオ新薬(バイオシミラーを含む)など、日本発の革新的医薬品・医療機器の研究開発や製造と普及を促進します。革新的な医療技術の実用化スピードを大幅に引き上げるため、日本医療研究開発機構(AMED)による一元的な研究管理や、研究と臨床の橋渡し、国際水準の質の高い臨床研究・治験が確実に実施される仕組みの構築等を行っていきます。AMED 基金を活用し、2040 年までに主要な疾患を予防・克服し 100 歳まで健康不安なく人生を楽しむための医療・介護システム実現に向けた研究開発を強力に促進します。また、2021 年 4 月の日米共同声明を受け、日米がんムーンショットの実現を目指します。
- 科学技術イノベーションの活性化
新たな技術革新を活用して経済成長と社会的 課題の解決の両立を目指す「Society 5.0」の実現は、成長戦略の次なる最大のチャレンジであ り、官民をあげた科学技術イノベーションの活 性化が不可欠です。このため、「第 6 期科学技術・イノベーション基本計画(2021 年 3 月閣議決定)」に基づき、科学技術・イノベーション政策を抜 本的に強化し、デジタル活用を前提とした持続 可能かつ強靱な社会への構造改革や、価値創造 の源泉となる研究力の強化に取り組みます。ま た、総合科学技術・イノベーション会議と、経済財政諮問会議や成長戦略会議などとを連携させ るとともに、安保・外交、経済・財政、規制改革などを総合戦略的な科学技術イノベーション政 策と位置づけ、官邸を司令塔として、こうした 政策を強力に展開します。
- 学術研究・基礎研究の振興や若手研究者の育成などの基盤強化
わが国は、2000 年以降では、米国に次ぐ世界第 2 位のノーベル賞受賞者を輩出してきました。こうした画期的な研究成果を生み、またイノベ ーションの源泉となる学術研究・基礎研究を一 層強力に推進していきます。このため、研究者 の自発性や独創性に基づいて行われる学術研究 を支える科学研究費助成事業について、現在展 開している抜本的な改革を着実に進めながら、 拡充を図ります。加えて、学術研究から生まれ た優れた成果を科学技術イノベーションにつな げていくための戦略的基礎研究を強化していき ます。特に、10 兆円規模の大学ファンドを 2022 年度までに実現し、その運用益を活用すること により、世界と伍する研究大学の実現に必要な 研究環境の整備充実への支援とともに、大学改 革を完遂することにより、わが国の研究大学に おける研究力を抜本的に強化します。また、競 争的研究費について、その多様性や連続性を確 保しつつ、間接経費 30%を措置するとともに、大幅に拡充します。
- 持続的なイノベーションの創出に向けたシステム改革
世界的なオープンイノベーションの潮流に対応し、分野・組織・セクター・国境を越えた研究活動や企業活動を促進する持続的なイノベーション・ナショナル・システムを構築することが不可欠です。このため、大学などにおける産学官連携マネジメント力を飛躍的に向上させ、競争領域を中心とした大型共同研究を集中的にマネジメントするオープンイノベーション機構を整備するとともに、非競争領域における産学共同研究などの推進や、産学官の人材、知、資金が結集し共創を誘発する「場」の構築などを通じて本格的な産学官連携を推進します。更に、ベンチャー企業の創出支援や起業人材の育成支援などを推進します。また、地域発のイノベーション創出に向けて、地域の様々なプレイヤーが事業化に向けたチームとして活動を行い、事業化の成功事例を蓄積する取組みを推進します。更に、先端研究施設などを核として大学・研究機関・企業が集積した研究開発・実証拠点(リサーチ・コンプレックス)を形成し、研究から事業化までを行う取組みを強力に推進し、科学技術イノベーションを駆動力とした地方創生を実現します。
わが国の人材育成及び学術研究の中心的役割 を担う国公私立大学の抜本的改革を確実に進め るとともに、運営費交付金や施設整備費補助金、私学助成などの基盤的経費を確実に措置します。特に国立大学については、客観的な成果指標に 基づく資源配分の仕組みを通じた資源配分の仕 組みや財務基盤の強化などの大学改革を断行す るとともに、「指定国立大学法人制度」により世界最高水準の卓越した教育研究活動を行う大学 を支援します。「研究成果の最大化」を使命とする国立研究開発法人の基盤的経費を充実すると ともに、産学官の技術・人材を糾合したオープ ンイノベーションハブの形成及びその機能強化 を進め、研究活動の支障となり得る規制・制度 改革を先導します。特に、2025 年までに大学・研究開発法人などに対する企業の投資額を 2014 年の水準の 3 倍とする目標を踏まえ、600 兆円経済の実現に向けて科学技術イノベーションの 活性化を図り、経済の好循環を実現するため、2020 年の通常国会で改正した科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律に基づく研 究開発法人による出資業務を推進します。
更に、研究開発税制や寄附金税制をはじめとするイノベーション促進に向けた税制改革や、革新的な技術シーズの事業化のためのリスクマネー供給などの政策金融の改革、特許などの知的財産の迅速な保護及び円滑な利活用を促進するための知的財産制度の改革、イノベーションの隘路となっている規制や社会制度などの改革や新技術に関する優先的な政府調達の実現、中小企業などに対する産学官連携などを強力に推進します。
国際標準の獲得を目指す各国の動きが一層活発化していることから、官民協働による戦略的な国際標準化活動を着実に推進します。また、わが国が優れた先端技術を持つ基幹インフラについて、建設から運用、人材養成への寄与までを一体システムとして捉え、官民協働による海外輸出・展開活動を大幅に強化します。
- 国の経済成長と安全保障の基盤となる基幹技術の推進
自然災害観測・予測・対策技術、海域監視・観測技術、海洋資源調査技術、宇宙探査技術(「はやぶさ 2」などの無人探査、有人探査)、次世代ロケット・衛星技術、核融合技術(ITER 計画など)、次世代スーパーコンピュータ開発・利用技術、光・量子技術、気候変動高精度予測・影響評価技術などは、研究開発に長期間要し、大きな開発リスクを伴う技術であり、民間企業では対応が難しい技術です。これらの技術は、総合的な安全保障を含め国の存立基盤を確固たるものにするばかりか、産業の競争力の維持・発展、安全・安心な社会の実現に寄与する技術です。最近の安全保障環境の変化と対応、グローバルな環境での競争激化の観点からも、国自らが戦略的かつ長期的視点に立って、このような基幹技術の研究開発を今後強力に推進していきます。更に、日本が強みを有する分野であるマテリアルや省エネ・再エネ技術については、わが国の基幹産業を支える要であり、多様な研究領域・応用分野を支える基盤であることから、革新的な材料開発や窒化ガリウム(GaN)などを活用したデバイスなどの開発に向けた研究をオールジャパンで強力に推進します。
- 戦略的宇宙政策の推進
安全保障や経済社会において宇宙の重要性が高まる中、引き続きわが国が宇宙活動を実施できる基盤を維持することが重要であり、「宇宙基本法」の理念と宇宙基本計画に基づいて、戦略的に宇宙政策を推進します。
特に、小型衛星コンステレーション等の先進的な衛星・ロケット技術の開発や、政府調達を通じたベンチャー支援、衛星データの利活用促進、産業を含めた月面活動に必要な技術の開発等、重要分野・重点プロジェクトに着実に取り組みます。
そのために、内閣総理大臣の重要な政策の一つとして、宇宙科学や宇宙産業基盤の振興を行うとともに、宇宙政策と安全保障やシーレーン確保、戦略的 ODA、資源外交、海洋政策などと連携して取り組みます。
- 情報収集衛星の機能強化
わが国の国家安全保障に関する政策判断をより的確に支え、関係機関の活動への一層の寄与を図るインテリジェンス機能を強化するため、情報収集衛星について、時間軸多様化衛星を含めた 10 機体制の確立を図ります。
- 宇宙安全保障の強化に向けた施策の推進
宇宙状況把握(SSA)、海洋状況把握(MDA)、早期警戒衛星、ミサイル防衛のための衛星コンステレーション活用などの宇宙安全保障の強化に向けて、それぞれの施策の具体化を図ります。
- 宇宙産業の国際競争力の強化と新規参入の促進
今後、世界的に急速な市場拡大と競争激化が見込まれる宇宙産業について、「宇宙産業ビジョン」を踏まえ、国際競争力強化に向けた環境整備や支援等の取組みを政府全体で強力に進めます。
宇宙分野と非宇宙分野の企業の融合を図るイ ベント、ビジネス・アイデア・コンテスト、投資マッチング・プラットフォーム等を活用し、宇 宙ベンチャーの創出、新たなビジネスモデル・ 技術イノベーションの促進を図ります。また、 わが国独自の小型衛星コンステレーションの構 築に向けて、民間衛星データ等の政府調達を進 めるとともに、光通信やオンボードコンピュー ティング等の基盤技術の開発を促進することで、宇宙産業の競争力強化を図ります。
更に、わが国の外交・通商ツールとして宇宙システムを用いて、宇宙新興国との二国間・多国間の関係強化を図るとともに、宇宙産業の海外市場開拓を目指します。
- 宇宙 3 法を通じた宇宙産業の振興と宇宙利用の拡大
本年 6 月に成立した「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」の早 期施行を図り、月面等における民間事業者によ る宇宙資源の探査・開発に関する事業活動を促 進します。また、「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」および「衛星リモー トセンシング記録の適正な取扱いの確保に関す る法律」を通じて、ロケット打上げ市場への民 間事業者参入のための事業環境を整備するほか、衛星運用・画像販売ビジネスの振興を図ります。これら宇宙 3 法を通じて、宇宙産業の健全な発展及び国際競争力の強化や、宇宙利用の拡大に 取り組みます。
- G 空間(地理空間情報)プロジェクトの推 進による新産業創出
G 空間社会実現のため政府の総合司令塔機能の強化、産学官連携の一層の強化を図り、自治体の ICT 化も含め更なるG 空間情報の利活用を促進するとともに、2023 年度を目途として、日本単独で持続・自律的測位を可能とする準天頂衛星システムについて、7 機体制を確立するとともに、後継機開発整備および機能・性能向上と、これに対応した地上設備の開発・整備及びセキュリティ強化を着実に行い、防災・農業・交通等の様々な分野で新たな産業やサービスを実現します。
- G 空間(地理空間情報)プロジェクトによる強靱な社会基盤インフラの構築
地理情報と衛星測位情報を電子国土基盤情報 として統合活用したG 空間情報は、領土、領海、領空統治の基本情報です。そこで、国、地方、民間が保有する様々な G 空間情報を集約・提供するG 空間情報センターを活用し、わが国の外交・経済・防衛上の安全保障の確保、国土の強靱化 等に役立てます。また、準天頂衛星システム等 の基盤を活用し、国内外の関係機関と連携する ことで、わが国及び ASEAN 諸国等の安全保障、災害対策、海洋監視、国土管理の強化にも貢献 します。
- 新たな「地理空間情報活用推進基本計画」 の策定
「第 3 期地理空間情報活用推進基本計画」に基づき、防災、交通・物流、質の高い暮らし、地方創生、国際展開等の様々な分野において、自動走行システムの開発・普及、無人航空機物流事業の促進、屋内外シームレスなナビゲーションの実現など、G 空間情報を活用したプロジェクトを推進します。更に、海外における電子基準点の設置及び運用支援、準天頂衛星システムを利用した利活用事業の支援等の社会インフラをパッケージとして海外に提供することで、途上国支援等の国際貢献を行います。それら成果をもとに、新たな「地理空間情報 活用推進基本計画」を策定し、更なるプロジェ クトの展開により社会への実装に取り組みます。
- G 空間(地理空間情報)プロジェクトによる資源確保と海の防災システム高度化の促進
わが国は世界第 6 位と言われる排他的経済水域を持つ国土大国です。「海洋基本法」、「宇宙基本法」と「地理空間情報活用推進基本法」を連携推進することで、わが国近海の地形をメートル単位で正しく把握し、正確な位置情報のもとで大陸棚や深海に眠るエネルギーやレアメタル資源等の発掘、水産資源の確保等に努めます。
また、海底プレートの移動や遠海の津波の高さをセンチメートル単位で常時監視するシステムを開発することで、地震予知や津波検知技術の高度化等も図り、防災・減災に役立てます。
- 地理空間情報を活用した自然災害からの復旧・復興支援、防災・減災対策
東日本大震災発災直後から、津波浸水状況の把握や地籍整備をはじめ、大規模な津波リスクを考慮した浸水想定区域の設定やハザードマップの策定等、初動対応や復旧・復興支援等の様々な局面で地理空間情報が有効活用されてきました。そこで得られた教訓をふまえ、今後想定される南海トラフ巨大地震等の大規模災害に備えるため、先進的技術と ICT の連携活用を行うことで、安心・安全な社会の実現を目指します。また、G 空間情報を高度に活用した防災・減災に係る技術「G 空間防災技術」の社会実装の推進と、L アラート(災害情報共有システム)の活用等を通じ、住民等への情報伝達の充実を図ります。
- 原子力損害賠償と自立支援策
原子力損害賠償法に基づく東京電力による原子力損害賠償が迅速かつ適切に実施されるよう徹底します。加えて、企業誘致や営農再開などにより雇用を創出するなど、生活の自立に向けた支援策を更に強化します。
- 東京電力福島第一原発の廃炉研究に向けた国内外の英知の結集
福島原子力発電所の事故対策において、環境モニタリングや放射性物質の環境動態調査、地元住民の支援などの現行施策を引き続き実施するとともに、原発事故の後処理や廃棄物の処理・処分、放射線可視化技術などの廃炉現場等で必要とされる技術を早急に確立、普及します。世界でも経験のない燃料デブリの取り出しや放射性廃棄物の処理処分などを着実に進め、廃炉を加速していくため、日本原子力研究開発機構廃炉環境国際共同研究センターの機能を強化し、福島県富岡町に整備された国際共同研究棟のほか、楢葉遠隔技術開発センターや大熊分析・技術センターなども活用した国内外の大学・研究機関との共同研究などを推進することにより、世界の英知を結集した国際的な廃炉研究拠点を形成します。
- 未来社会創造に向けた取組みの推進
「Society5.0」の実現に向けて、AI やビッグデータ、IoT、サイバーセキュリティなどの基礎研究から社会応用まで一貫した研究開発、それを活かした新しい価値やサービスの創出、人文社会科学の知見も活用した経済・社会制度の整備・構築、AI 技術者やデータサイエンティスト、サイバーセキュリティ人材といった関連する人材の育成などを強力に推進します。また、革新的な AI やビッグデータ、IoT、サイバーセキュリティなどの数理・情報科学技術のみならず、ロボット技術やバイオテクノロジー、マテリアル、光・量子科学技術など、未来社会創造の基盤となる研究開発などに戦略的に取り組みます。
- マテリアル、量子分野の研究開発促進
日本が強みを有し、経済的・社会的・国家的な重要課題解決に幅広く貢献するマテリアル分野について、データや AI を活用した研究開発の効率化・高速化・高度化に向けた良質なデータ創出のための全国の共用設備の高度化、創出データの集約・蓄積・AI 解析を含む利活用を可能とするデータ基盤の整備や、脱炭素などの社会課題解決に向けたデータを活用した革新的マテリアル研究開発を強力に進めます。また、国際競争が激化している量子コンピュータ研究開発については、早期の社会実装に向けてアプリケーション開発も含め抜本的に加速します。
- チャレンジングな研究開発と研究 DXの推進
「ムーンショット型研究開発制度」について、新目標を設定し、基金の拡充を含め抜本的に強化し、独創的かつ挑戦的な研究を大胆に推進する仕組みを展開します。加えて、研究交流のリモート化や、研究設備・機器への遠隔からの接続、スーパーコンピュータ「富岳」を含む全国の先端共用設備や大型研究施設も活用したデータ駆動型研究の拡大などの、研究活動のデジタルトランスフォーメーション(研究 DX)を推進します。特に、マテリアル、ライフサイエンス等多様な分野の研究データを戦略的に収集・共有・活用する取組みを強化します。
- 10 兆円規模の大学ファンドの実現
10 兆円規模の大学ファンドを 2022 年度までに実現し、その運用益を活用することにより、世界と伍す研究環境を構築するとともに、博士課程学生を含む若手研究人材を育成する取組みを推進します。また、ガバナンス改革等を通じた大学改革を完遂することにより、わが国の研究大学における研究力を抜本的に強化します。
- 各種研究事業を通じた学術研究・基礎研究の振興
研究者の自発性や独創性に基づいて行われる 学術研究を支える「科学研究費助成事業」につ いて、現在展開している抜本的な改革を着実に 進めながら、特に国際共同研究を加速させる種 目の拡充を図ります。また、学術研究をイノベ ーションにつなぐ戦略的基礎研究を強化します。
「未来社会創造事業」を推進し、実用化が可能かどうか見極められる段階を目指した研究開発を実施します。「創発的研究支援事業」について、定常化も見据えた充実を図ります。「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」を一層発展させていきます。これらの競争的研究費につい
て、間接経費 30%を目安とし、その多様性や連続性を確保しつつ、大幅に拡充するとともに、大学や国立研究開発法人等の運営費交付金などの基盤的経費を確実に措置します。
- 研究人材の育成、確保、支援等
ノーベル経済学賞につながるような優れた人材の養成に向けて、データや AI を活用したデータ駆動型研究を含む人文社会科学の研究に対する支援も大幅に拡充します。将来を担う博士後期課程学生へのフェローシップ、ティーチング・アシスタント及びリサーチ・アシスタントの充実など経済支援の抜本的拡充、大学の人事制度の抜本的改革を含む大学改革などを通じた優秀な若手研究者の育成・確保、研究マネジメント人材などの多様な人材の育成・確保、即戦力社会人や企業マインドを持つ人材の育成、女性研究者の活躍促進に向けた支援の充実、更には次代を担う人材の育成などを進めます。海外に出る研究者などへの支援や、優れた外国人研究者の受入れを一層促進しつつ、種々の研究開発事業における国際共同研究を更に強化します。
- 大型研究施設・設備の整備
世界最先端のスーパーコンピュータや大型放射光施設などの先端的な研究施設・設備などの整備や更なる充実を図るとともに、こうした施設などの産学官の幅広い利用を促進します。また、科学的・産業的に飛躍的なイノベーション創出が期待される次世代の軟 X 線向け高輝度放射光施設の整備を官民地域パートナーシップにより推進します。素粒子物理学分野の大規模プロジェクトである「国際リニアコライダー(ILC)」にも資する加速器技術の更なる向上に日本が主導的に役割を果たします。
- 経済的・社会的・国家的な重要課題への対応
2050 年カーボンニュートラル達成に向けて、画期的な省エネにつながる次世代半導体、次世代蓄電池、水素関連技術などの脱炭素化に向けた研究開発、更には化石燃料の高効率利用、原子力施設の安全確保や試験研究炉の整備を含めた原子力の利用に資する研究開発、核融合などの革新的技術の研究開発などオールジャパンで進めます。資源や食料の安定的な確保に向けた研究開発にも取り組みます。また、気候変動の予測やその影響・対策の評価を行うための信頼できるデータの蓄積や技術の研究開発、地球環境情報をビッグデータとして捉え経済・社会的課題の解決に活用するための情報基盤の構築などの研究開発を強力に推進します。
- 健康長寿社会の実現に向けた研究開発
健康長寿社会の実現に向けて、健康・医療戦略推進本部のもと、日本医療研究開発機構を中心に、わが国の強みを最大限に活かし、画期的な医薬品創出・医療機器開発や、医療技術創出拠点の整備、再生医療やゲノム医療など世界最先端の医療の実現、がん、認知症、精神疾患、新興・再興感染症、難病の克服、超高齢化社会を見据えた老化研究開発などを強力に推進します。
- 国家安全保障研究への対応強化
宇宙空間や海洋・サイバー空間、テロ・災害対策も含めた国家安全保障への対応を強化します。インターネットや GPS を生み出した米国の国防高等研究計画局(DARPA)を参考に、国家安全保障に関する研究が先端的・挑戦的な研究開発を 牽引し、成果が社会に還元されていることを踏 まえ、わが国でも技術の多義性や両義性(いわ ゆるデュアルユース性)も念頭に、研究開発支 援(ハイリスク研究支援)を強化します。
- 経済安全保障に資する戦略的取組みの強化
AI や量子など革新的かつ進展が早い技術が出現する中、経済と安全保障を横断する領域で国家間の競争が激化し覇権争いの中核が科学技術・イノベーションとなっています。そのような状況の中、わが国の戦略的不可欠性(優位性) を確実に確保し、経済安全保障を強化・推進するため、政府に政策提言を行うシンクタンクを創設するとともに、先端的な重要技術を強力に守り育てるため基金を創設します。
- 本格的な産学官連携とベンチャー・起業の推進、科学技術イノベーションによる地方創生
コロナ後の時代を見据えつつ、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に基づく未来のありたい社会像を拠点ビジョンとして掲げ、その達成に向けたバックキャストによるイノベーションに資する研究開発と産学官連携マネジメントシステムの構築をパッケージで進めることで、本格的な産学官連携を推進します。更に、ベンチャー企業の創出支援や起業人材の育成支援などを推進します。また、地域発のイノベーション創出に向けて、地域の様々なプレイヤーが事業化に向けたチームとして活動を行い、事業化の成功事例を蓄積する取組みを推進し、科学技術イノベーションを駆動力とした地方創生を実現します。
- 大学における世界最高水準の教育・研究水準の向上とイノベーション創出の強化
国立大学については、基盤的経費を確実に措置しつつも客観的な成果指標に基づく資源配分の仕組みを通じた資源配分の仕組みや財務基盤の強化などの大学改革を断行するとともに、「指定国立大学法人制度」により世界最高水準の卓越した教育研究活動を行う大学を支援します。私立大学等経常費補助金についても、教員数 の維持や施設・設備の管理・運用などで、多大な困難が生じているとの指摘は未だ解消されていないため、わが国の基礎科学を強化する観点からも、これらの基盤的経費を安定的に確保するとともに、経常的経費の1割以上など総額の確保はもちろんのこと、努力する大学へのインセンティブとなるような戦略的かつ厳格な評価に基づいたメリハリある配分を行います。
- 国立研究開発法人の基盤的経費の確実な措置と出資の推進
「研究成果の最大化」を使命とする国立研究開発法人の基盤的経費を確実に措置するとともに、2025 年までに大学・研究開発法人などに対する企業の投資額を 2014 年の水準の 3 倍とする目標を踏まえ、600 兆円経済の実現に向けて科学技術イノベーションの創造・活性化を図ります。また、経済の好循環を実現するため、2020 年の通常国会で改正した「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」に基づく研究開発法人による出資業務を推進します。
- 持続的なイノベーション創出に向けた制度改革
研究開発税制や寄附金税制をはじめとするイノベーション促進に向けた税制改革や、革新的な技術シーズの事業化のためのリスクマネー供給などの政策金融の改革、特許などの知的財産の迅速な保護及び円滑な利活用を促進するための知的財産制度の改革、イノベーションの隘路となっている規制や社会制度などの改革や新技術に関する優先的な政府調達の実現、中小企業などに対する産学官連携などを強力に推進します。
- 国際標準化活動と基幹インフラ輸出の推進
国際標準の獲得を目指す各国の動きが一層活発化していることから、官民協働による戦略的な国際標準化活動を着実に推進します。また、わが国が優れた先端技術を持つ基幹インフラについて、建設から運用、人材養成への寄与までを一体システムとして捉え、官民協働による海外輸出・展開活動を大幅に強化します。
- 科学技術外交の戦略的展開
科学技術イノベーションを積極的に平和外交や経済外交に活用し、「科学技術のための外交」及び「外交のための科学技術」の双方に取り組みます。このため、先進国・新興国・途上国との重層的な連携・協力の構築や、自然災害や感染症など、地球規模で発生する深刻な課題の解決に向けた共同研究・人材育成の推進、ODA を活用した科学技術イノベーションに関する支援・協力などを推進します。国連「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に、科学技術イノベーションが大きな役割を果たすとの認識に基づき、国内外の社会的課題の解決に科学技術を一層活用するために、国連機関との連携等を通じた実証を継続します(STI for SDGs の推進)。
- 科学技術外交・研究交流の推進と研究イン テグリティの確保
外務省科学技術顧問などが主導して、科学技術イノベーションに関する国際会議におけるアジェンダ設定や政策誘導などに取り組むとともに、国際会議の誘致や主催などによる対外発信・ネットワークの強化に取り組みます。優秀な若手研究者等の海外との間の戦略的な派遣・招へいや、国内外に研究拠点を構築することなどにより国際的なネットワークを強化します。更に、海外動向の収集・分析を進めるとともに、安全
保障に関わる技術などの管理を強化し、諸外国と調和した研究の健全性・公正性(研究インテグリティ)の自律的確保を促進します。国際的な核不拡散体制の強化に向けて、わが国の技術を積極的に活用し、これに貢献します。
- H3 ロケットの開発及び革新的将来宇宙輸送システムの実現に向けた取組みの推進
わが国の宇宙活動の自立性の確保と産業基盤の維持のためには、国際競争力の高い宇宙輸送システムが必要です。このため、官民一体となって、ロケットの機体と種子島宇宙センターなどの地上システムを一体とした総合システムとして H3 ロケットを開発し、初号機の打ち上げを目指します。また、宇宙輸送システムの抜本的な低コスト化等を目指した革新的将来宇宙輸送システムの実現に向け、官民連携による研究開発を進めます。
- 防災・災害対策や、地球環境問題解決等の ための衛星開発及び宇宙デブリ対策
カーボンニュートラルの実現やグリーン成長に貢献する温室効果ガス観測技術衛星や、次世代通信衛星技術等の獲得を目指した技術試験衛星等の開発を進めます。また、衛星コンステレーションに必要な基盤技術や、衛星開発において、官民で活用可能な挑戦的な技術や新たな開発・製造方式等に関する技術開発の確立に向けた研究開発を進めます。また、各国の先頭で宇宙デブリ対策に取り組み、世界に貢献します。
- 宇宙科学・探査の戦略的推進
宇宙開発利用の戦略的・外交的重要性を踏まえ、宇宙科学・探査分野においても日本が主体的な役割を担います。その一環として、国際協力のもとで、「はやぶさ」「はやぶさ 2」に続き、人類初の火星圏からのサンプルリターン実現に向けた火星衛星探査計画(MMX)や、わが国が強みを持つ X 線天文観測による宇宙の構造と進化にかかる数々の謎の解明を目指す XRISM を推進します。
- 国際宇宙ステーション計画・国際宇宙探査 の推進
国際宇宙ステーション(ISS)計画は、人類史上比類無い規模の宇宙分野における国際共同プロジェクトであり、今後も新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)による補給など、ISS 計画を積極的に推進していきます。また、国際宇宙探査「アルテミス計画」について、わが国が ISS 計画への参画等を通じて得た技術的な強みを生かして月面探査に不可欠な有人与圧ローバの開発を行うなど、月近傍有人拠点(Gateway)を含む月探査に向けた取組みを加速していきます。
- 海洋研究開発の戦略的推進
「海洋基本法」の理念と海洋基本計画に基づき、海洋研究開発を戦略的に推進します。船舶による観測や、フロート・ブイ、人工衛星などの観測機器の展開、自律型無人探査機(AUV)などを活用した無人海洋観測システムなど、海洋の総合的な観測体制を構築します。また、気候変動予測の高精度化を図り、カーボンニュートラルの実現に貢献するとともに、東日本大震災の知見を活かしつつ、海底地殻変動等のリアルタイム観測など海域地震発生帯における動的挙動を総合的に把握し、国民の安全・安心の確保に役立てます。更に、今年から開始した「国連海洋科学の 10 年」等の枠組みに基づき、国際連携・協力を積極的に進めるとともに、海洋分野の DX や、海洋人材育成も強化します。
- 国家戦略としての北極政策の推進
北極における環境変化は、地球規模の気候変動や生態系への影響などを招いており、国際的に大きな問題となってきています。一方、海氷の減少は、北極海の航路利用や資源の開発など新たな経済活動の可能性を生じさせており、世界的な注目が集まっています。わが国の強みである科学技術を中心として、国際研究プラットフォームとなる北極域研究船の確実な建造や、北極域研究に関わる人材の育成等を通じ、世界の気候変動予測の高度化に貢献するとともに、北極をめぐる国際社会の取組みにおいて主導的な役割を積極的に果たしていきます。
- 次世代航空機開発の技術基盤の強化
裾野が広い航空機産業をわが国の自動車産業に匹敵し得る成長産業とするためには、国が長期的な視点に立って、航空科学技術の施策を戦略的かつ強力に推進していくことが必要です。具体的には、国際競争力向上に直結するエンジ
ンの高効率化技術などの先進的な技術開発を進め、国内産業基盤の強化を図るとともに、産官学が連携してわが国の技術力を結集する体制を構築し、イノベーションを創出することで、他国より先駆けて高性能・高付加価値、コストに優れた次世代航空機の開発に貢献します。
- 地震・津波、水害・土砂災害、火山噴火な どの自然災害に対する強靱な社会を構築するための研究開発の推進
南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの巨大災害に備えた海底地震・津波観測網(N-net 等)の整備、海底地形調査に基づく津波被害の最小化対策、御嶽山や草津白根山などの噴火を踏まえた火山対策を含め、自然災害に対する全国的な観測体制の充実・強化を図るとともに、被害を最小化し早期に回復する社会を構築することを目指した研究開発を推進します。特に首都直下地震などへの対策を含め、組織を越えた防災情報の相互流通を担う SIP4D を核とした情報共有システムについて都道府県・市町村への展開を図る他、人文・社会科学と自然科学の融合による「総合知」やデジタル技術等を活用して防災分野における DX を進めます。
エネルギー
- 脱炭素社会の構築
2050 年までのカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指します。整合的で野心的な目標として、2030 年度に温室効果ガスを 2013 年度から 46%削減することを目指し、更に 50%の高みに向けて、挑戦を続けます。
これらの目標は決して容易ではなく、社会経済活動において脱炭素を主要課題の一つとして位置付け、持続可能で強靱な社会経済システムへの転換を進めることが不可欠です。目標実現のため、脱炭素を軸として成長に資する政策を推進していきます。また、国民経済及び産業の国際競争力に与える影響等を踏まえつつ、経済社会及び国民の生活行動の変化を促すとともに、脱炭素に資する設備・施設の普及によってあらゆる部門の排出削減を進めるため、経済的支援や規制的措置を講じます。パリ協定のもと、石炭火力など火力発電の脱炭素化への一刻も早い移行を進めるとともに、地域と共生する形で再生可能エネルギーの最大限の導入を進めます。
- イノベーション・政策総動員を通じた 2050年カーボンニュートラルの実現
2050 年カーボンニュートラル実現に向け、2 兆円のグリーンイノベーション基金を創設しました。エネルギー・産業部門の構造転換や、大胆な投資によるイノベーションを加速するため、官民で野心的、具体的な目標を共有し、10 年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援します。その際、投資促進税制などあらゆる政策を総動員します。
S+3E を大前提に、再エネについては、主力電源として最優先の原則のもとで最大限の導入に取り組み、水素・CCUS については、社会実装を進めるとともに、原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していきます。
- 「経済と環境の好循環」を生み出す脱炭素 技術の推進
次世代型太陽電池、蓄電池、二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)、メタネーション、水素、アンモニア、人工光合成等のカーボンニュートラルを目指す上で成長が期待される分野について、革新的技術の研究開発から社会実装まで一貫した支援を実施します。
また、変動する再生可能エネルギーに対して需要側で柔軟性を発揮する EV、ヒートポンプ等を ICT 活用し、需給調整するエネルギーマネジメントシステムの導入を促進するとともに、地域活性化にも貢献する再生可能エネルギー等由来の水素、超高効率の次世代パワー半導体(Ga N等)、自動車部材の軽量化による燃費改善が期待できるセルロースナノファイバー等の社会実装を推進します。
更に、2030 年までの導入のため CCS の商用化を前提とした、事業者においてあらかじめ必要となる準備(CCUS Ready)に関する検討などを実施します。
- 地域脱炭素ロードマップの推進と地域循環共生圏の創造
地域脱炭素ロードマップに基づき、2030 年までに少なくとも 100 カ所の脱炭素先行地域を創出し、複数年度にわたる継続的・包括的な支援スキームとして新たな交付金制度や財政投融資を活用した出資制度を創設します。
また、各地域が地域資源を活かして自立・分散型社会を形成する「地域循環共生圏」の創造に取り組むため、専門家や情報を集約し、パートナーシップによる地域の構想・計画の策定等を支援するプラットフォームを構築します。
- 徹底した省エネと経済成長の両立
経済成長と CO2 排出抑制を両立させるべく、新たなエネルギー投資を引き出します。
徹底した省エネルギー対策として、産業部門では、省エネ法に基づくベンチマーク制度の更なる活用とともに、民間企業等が行う先端的な省エネルギー設備の導入、中小企業に対する省エネ相談等を実施する地域プラットフォームの構築に取り組みます。
更に非化石エネルギーの使用拡大や、供給サイドの状況を踏まえたエネルギー利用の最適化などカーボンニュートラルに資する取組みを推進します。
また、窒化ガリウム等の次世代半導体やリチウムイオン電池の 2 倍以上の性能をもつ次世代蓄電池等の革新的な省エネルギー・再生可能エネルギー技術の開発を推進します。
- 住宅・建築物の脱炭素化の推進
2050 年カーボンニュートラルに向け、2030 年までに新築される住宅・建築物について、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB (ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)水準の省エネ性能を確保し、新築戸建住宅の 6 割に太陽光発電設備が導入されるようにするとともに、省 CO2 改修を促進します。省 CO2 化と併せて、気候変動による災害激甚化等への適応を高めつつ、快適で健康な社会の実現を目指します。
また、住宅・建築物における炭素貯蔵効果の高い木材利用の拡大に向けた取組みを推進します。
- サステナブルファイナンスの普及・拡大へ の取組み
パリ協定の目指す社会の実現に向け、気候変動対策やイノベーションに取り組む企業に対して民間投資を一層促す観点から、環境・社会・企業統治の要素を投融資判断に組み込む「ESG 金融」をはじめとするサステナブルファイナンスの普及・拡大に積極的に取り組みます。
具体的には、再生可能エネルギー等(グリーン)に加えて、省エネルギー等の着実な低炭素化の取組みなどの脱炭素への移行(トランジション)、脱炭素化に向けた革新的技術(イノベーション)へのファイナンスを一体的に促進していきます。また、世界のカーボンニュートラル実現に向け、アジアの脱炭素への移行を積極的に支援します。
- 脱炭素経営の推進
わが国の賛同機関数が世界一となっているTCFD(気候関連財務情報に関する開示)による情報開示の質と量の充実を促すとともに、投資家・金融機関による投融資先企業への気候変動対応とビジネス機会創出の支援を促していきます。
加えて、地域の脱炭素化を経済と環境の好循環創出につなげるため、地域金融機関とともに、地域資源を活用したビジネス構築や課題解決のモデルづくりを推進します。
また、こうした金融サイドの動きも踏まえた企業の脱炭素経営を促進するため、中小企業も含めた野心的な目標設定や気候関連のリスク・機会を織り込む経営戦略の策定、具体的な行動計画づくりを後押しし、脱炭素に向けた設備投資や製品サービス供給等、企業の行動変容を促します。
- 地域と共生し環境と調和した再生可能エネルギーの導入
地域共生型・裨益型の再生可能エネルギーの導入を拡大し、地域の防災・減災、地方創生にもつなげるため、脱炭素先行地域の創出に加え、公共施設や工場・事業場等における自家消費型太陽光発電、PPA 事業の導入を進めるとともに、改正地球温暖化対策推進法に基づく地方公共団体の再エネ目標や促進区域等の設定を促進し、環境保全に配慮しつつ、地域に貢献する再生可能エネルギーの最大限の導入を加速化します。また、使用済太陽光パネルの安定的なリサイクルの推進等に取り組みます。
- 洋上風力発電の導入拡大
洋上風力発電は、大量導入やコスト低減が可 能であるとともに、経済波及効果が大きいこと から、カーボンニュートラル実現の切り札とし て、今後の導入拡大が期待されています。案件 形成の加速化に向けて計画立案の段階から政府 が積極的に関与しつつ、系統の整備や港湾施設 などのインフラ整備を積極的に進めます。また、着床式洋上風力の更なる普及促進と浮体式洋上 風力の技術開発を促進します。こうした取組み を通じて 2040 年までに 3,000 万 kW~4,000 万kW の大きな国内市場を作り出し、洋上風力の導入拡大と産業競争力強化の好循環を実現します。
- 太陽光発電の導入拡大
太陽光発電の更なる大量導入を加速するため、地域との共生を図ることを前提としつつ、再エ ネの電気を必要とする需要家の関与等によりFIT/FIP 制度を活用しない案件形成や有望な適地の確保を進めます。太陽光発電の更なる拡大 にあたっては、地域と共生できる事業実施、改 正地球温暖化対策基本法によるポジティブゾー ニングなどを推進し、前向きな合意形成に基づ く適地確保を進めていきます。
また、壁や曲がった場所にも設置できるペロブスカイトなど次世代型太陽電池の技術開発と社会実装に向けた実証等にも取り組みます。
荒廃農地を再生利用する際の要件緩和等、農 地転用規制等の見直しを通じて優良地を確保し つつ、営農を継続しながら太陽光発電を行う営 農型太陽光発電等の導入拡大を進めていきます。
- 水力発電の更なる活用
既存のダムにおける更なる水力発電事業の創出につなげるため、砂防ダムの水力発電ポテンシャルなどを調査し、地図形式等の分かりやすい形で公表し、事業化に資するような情報提供に努めるとともに、水力発電の事業化に対して、固定価格買取制度(FIT)との適切な役割分担のもと、財政的支援の検討を図ります。
また、設備のリプレース等による高効率化を進め、発電量を増加することに加え、デジタル技術の導入により、高効率に貯水運用を行うことで水力の有効活用を進めます。
- 地熱発電・バイオマスの更なる活用
地熱発電を短期間、かつ低コストに、円滑に導入できるよう地元自治体の勉強会、温泉事業者への説明等の地元の理解促進のほか、リスクマネーの供給や掘削に関する技術開発等の取組みを進め、事業者の開発リスクとコストの低減を図ります。
バイオマス発電については、特に国産木質バイオマス燃料の供給拡大に向け、政府と連携して市場取引の活性化の取組みを推進し、燃料費の低減と林業者の経営の安定化の両立を図ります。
- 温室効果ガス削減に向けた国際的な取組みへの貢献
国内での大幅排出削減に取り組むとともに、国際交渉をリードし、各国とも連携してパリ協定に基づく世界全体の脱炭素化の実現に貢献していきます。
また、世界全体での抜本的な排出削減に貢献するため、現在 17 か国と構築している「二国間クレジット制度(JCM)」の着実な実施、拡大等を通じ、優れた脱炭素技術の普及を推進します。更に、わが国の温室効果ガス観測技術衛星
(GOSAT)及びその 2 号機により地球全体の温室効果ガス濃度を継続的に観測するとともに、温室効果ガス排出源の特定能力と排出量推計精度を向上させた 3 号機(GOSAT-GW)を 2023 年度に打ち上げることを目指し、パリ協定の目標達成に向けた各国の温室効果ガス排出量削減政策と達成状況の把握等に貢献します。
- デジタルとグリーンによる脱炭素化の推進
デジタル化によるエネルギー需要の効率化・省 CO2 化の促進(グリーン by デジタル)と、デジタル機器・情報通信産業自身の省エネ・グリーン化(グリーン of デジタル)の 2 つのアプローチを車の両輪として各種取組みを推進し、2040 年に半導体・情報通信産業のカーボンニュートラルを目指します。
- 水素社会の実現に向けた取組みの強化
水素を日常の生活や産業活動で利活用する「水素社会」を実現していくため、多様な技術開発や低コスト化を推進するとともに、実現可能性の高い技術から社会に実装していくため、戦略的に制度やインフラの整備を進め、世界の脱炭素化への取組みを主導していきます。水素の供給コスト低減と利用拡大のため、大規模な水素導入を可能とする国際水素サプライチェーン構築や大規模な水素利用が期待される水素発電の技術開発を 2030 年の商用化を目指し、グリーンイノベーション基金も活用しつつ支援します。
また、燃料電池自動車・燃料電池バス及び燃料電池トラックの普及を見据え、2030 年までに1,000 基程度の水素ステーションについて、人流・物流を考慮しながら、全国で最適な配置となるよう整備することを強力に支援します。
運輸面においては、燃料電池自動車(FCV)のみならず、燃料電池バスや鉄道、船舶、港湾荷役機械など燃料電池技術の運輸部門での応用を進め、導入のための支援を強化するとともに、水素等の国際的サプライチェーンの拠点となるカーボンニュートラルポート(CNP)の形成を推進します。
- ゼロカーボン・ドライブとモーダルシフト
2035 年までに乗用車の新車販売に占める電動車の割合を 100%とすることを目指します。
また、世界各国の動向も踏まえ、開発競争をリードし、電動車の量販・量産を加速化するとともに、再エネ電力と EV・PHEV・FCV を活用する「ゼロカーボン・ドライブ」を普及させ、自動車による移動を脱炭素化し、災害時には非常用電源となる「動く蓄電池」として地域のエネルギーレジリエンス向上につなげます。
また、鉄道、船舶等による物資の流通の促進、公共交通機関やグリーンスローモビリティの活用による利用者の利便性の増進、歩道及び自転車道の整備等により、モーダルシフトや所有から利用への転換に対応した EV 等のシェアリングビジネスの普及を促進します。
- 自動車産業の支援
わが国の基幹産業である自動車サプライチェーン全体でのカーボンニュートラル化に向け、電動化を推進します。電気自動車・燃料電池自動車等の導入支援と、充電インフラ・水素ステーションの整備を両輪で進めるとともに、国内生産能力 100GWh の確保に向けた蓄電池・材料の大規模製造拠点の立地や次世代電池の研究開発を大胆に支援します。
また、自動車産業・雇用を守るため、e-fuel、水素等の研究開発・実用化など燃料の脱炭素化を進め、内燃機関を含む既存インフラの活用も追求するほか、カーボンニュートラル化・ 電動化に挑戦する部品サプライヤー、販売・整備業、ガソリンスタンド等の事業転換の伴走的なサポートや技術開発・設備投資・人材育成支援、水素社会・次世代モビリティ社会の実現に向けた規制緩和等を進めます。併せて、海外サプライチェーンの途絶への対策も徹底します。
- 蓄電池の総合戦略策定
蓄電池は、自動車の電動化、再エネの普及に必要となる調整力の提供、デジタル化の進展の要となる「新たなエネルギー基盤」であり、2030 年の温室効果ガス削減目標、2050 年のカーボンニュートラルの達成のための最重要技術の一つであり世界的にも電動車の普及、再エネの普及により蓄電池の市場は急拡大する見込みとなっています。わが国の蓄電池産業の競争力強化を目指し、上流資源からリサイクル・リユースの促進まで含めた総合的な戦略を策定してまいります。
- 蓄電池サプライチェーンの強化
国内の車載用蓄電池の製造能力を早期に高め、2030 年までに現行の約 5 倍の 100GWh を達成するために、蓄電池サプライチェーンの強化に 向けた大規模投資を支援していきます。
また、再エネの普及に必要な大型定置用蓄電池の導入を支援していきます。こうした大規模投資によるスケール化等により、2030 年までのできるだけ早期に、電気自動車とガソリン車の経済性が同等となる車載用の蓄電池パック価格1 万円/kWh 以下、太陽光併設型の家庭用蓄電池が経済性を持つシステム価格 7 万円/kWh 以下(工事費込み)、工場等の業務・産業部門に導入される蓄電池が経済性を持つシステム価格 6 万円/kWh 以下(工事費込み)を目指します。更に、家庭用、業務・産業用蓄電池の合計で、2030 年までの累積導入量約 24GWh(2019 年までの累積導入量の約 10 倍)を目指します。
- エネルギー多消費産業の燃料転換等支援
鉄鋼、化学、製紙・パルプ、セメントといったエネルギー多消費型産業を中心に、自家発電所の燃料転換や高炉・コークス炉などの設備の高効率化を含めた低炭素化のための投資を支援することで、わが国の競争力維持・強化と温室効果ガスの排出削減の両立を図ります。
- 港湾におけるカーボンニュートラルの実現
再エネ海域利用法に基づく促進区域の指定や 基地港湾の整備を進めることにより、洋上風力 発電の導入を促進します。更に、水素・燃料アンモニア等の大量かつ安定・安価な輸入を可能と する受入れ環境の整備や脱炭素化に配慮した港 湾機能の高度化、集積する臨海部産業との連携 等を通じて温室効果ガスの排出を全体としてゼ ロにするカーボンニュートラルポート(CNP)を形成し、脱炭素社会の実現に貢献します。また、 国内輸送網の要ともなるフェリー・RORO 船の活用促進を図るため、高規格ユニットロードター ミナルの実現を目指します。
- 調整電源としての火力発電
火力発電は、太陽光や風力の出力変動を吸収し需給バランス調整や、周波数の急減を緩和しブラックアウトの可能性の低減などの機能により電力の安定供給に貢献しており、当面は更なる導入拡大の進む再生可能エネルギーの変動性を補う調整力・供給力としても必要です。安定供給に必要な供給力を確保するため、電源の退出防止策や燃料確保の取組み強化に向けた検討を進めます。また、調整力確保の観点では、太陽光や風力の導入が拡大し、出力変動の増大が見込まれる中、調整を広域的に調達・運用することで需給調整の効率化を図るため、需給調整市場の整備を着実に進めていきます。
- 火力発電の次世代化・高効率化
2050 年カーボンニュートラル実現を見据えた上で、火力発電の次世代化・高効率化を推進しつつ、非効率な石炭火力のフェードアウトに着実に取り組むとともに、脱炭素型の火力発電への置き換えに向けたアンモニア・水素等の脱炭素燃料の混焼、CCUS/カーボンリサイクル等の火力発電からの CO2 排出を削減する措置の促進に取り組んでいきます。併せて、インフラ設備の健全性を確保するとともに、保安人材の不足にも対応するため、IoT、ビッグデータ・AI、ドローン等のテクノロジーの導入によって産業保安における安全性と効率性を追求する取組み、いわゆる「スマート保安」を強力に推進してまいります。
- 石油・天然ガス・金属鉱物資源の安定供給
資源の需給を巡る国際情勢は混沌としており、原油をはじめとする資源価格が大きく変動しや すく、上流投資が進みにくい状況が続いていま す。わが国のエネルギーセキュリティの確保の ため、石油・天然ガスと金属鉱物資源の安定供 給確保、更には水素やアンモニア、CCS 等の脱炭素燃料・技術の将来的な導入・拡大に向けた安 定確保を一体的に推進すべく、「包括的資源外交」を推進します。わが国の最先端技術を通じた支 援とともに、政策支援機関等を通じたリスクマ ネー供給を活用した権益獲得等により、一層の 供給源の多角化を図ります。また、資源・エネルギー等の安定的かつ安価な導入を実現するため、石油産業の効率化・国際化・多角化を支援する とともに、効率的な海上輸送網の形成を図りま す。
- 災害時・社会インフラとしてのエネルギー 供給網
災害時にはエネルギー供給の「最後の砦」となる LP ガスについては、その普及・促進を図るため、LP ガスバルク、LP ガス空調機器(GHP) 及び事業効率化のための集中監視システム等の利用機器の導入・普及の後押しを進めます。
ガソリンスタンドは石油製品の供給を担う重要かつ不可欠な社会インフラであり、災害時のエネルギー供給の「最後の砦」として、地域の実情に合わせて機能維持に向けた取組みを強化してまいります。このため、石油製品の供給を継続しながら EV や FCV へのエネルギー供給を担う「総合エネルギー拠点」や、「地域コミュニティインフラ」として燃料供給維持に向けた体制整備などの事業再構築を推進します。
また、病院等の重要施設及び一般家庭・自動 車への自衛的燃料備蓄等による災害対応力強化、人手不足克服に向けたデジタル技術の活用等を 後押しします。
更に、カーボンフリー社会における脱炭素燃料等の供給拠点とすべく、製油所等の燃料供給インフラが集積するコンビナートの強靱化及び機能強化に取り組んでまいります。
- わが国独自のエネルギー資源・鉱物資源の 開発・確保の推進
わが国の海洋探査・採掘技術を向上しエネルギー資源・鉱物資源の自主開発を促進します。ものづくり、特に国際競争力を持ったハイテク製品や再生可能エネルギー設備を開発・製造する上で不可欠なレアアース及びコバルト・リチウムなどレアメタルの安定的な確保を戦略的に進めます。また、メタンハイドレート・レアアース泥等の海洋資源戦略の推進を加速します。
国内に廃棄された精密機械などに眠っているレアメタル(いわゆる都市鉱山)を効率的かつ低費用で回収できる「レサイクル事業」(レアメタルのリサイクル)を行い、わが国独自の資源として位置付けます。特にリチウムについては、電池の安全対策(発火防止)とともに、リサイクル研究を支援します。
- わが国周辺の海洋資源探査・開発
わが国周辺の海洋に埋蔵されている石油や天然ガス、メタンハイドレートの探査を進めるとともに、2023 年から 2027 年の間に民間企業が主導するメタンハイドレートの商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指し、採掘技術の確立やコスト減などの技術開発を国が主体的・集中的に行います。
また、沖縄海域、南鳥島周辺海域等、わが国の排他的経済水域で確認されているレアメタルやレアアースをはじめとする鉱物資源の探査・開発を進めるとともに、遠隔離島における活動拠点の整備等を推進します。更に、メタンハイドレートや海底熱水鉱床等の海洋資源開発を加速化するための高性能のセンサーや無人探査機等の海洋資源調査技術の開発を推進します。
- 「包括的資源外交」の推進
これまで以上に産出国との外交展開やJOGMEC によるリスクマネーの供給等を通じた調達先の多角化などを行います。
天然ガスについては、中東や豪州、ロシアなどからの安定供給を確保するとともに、世界最大規模の LNG 輸入国として柔軟な国際 LNG 市場の形成をリードすることで、調達価格の安定化や電力・ガス自由化の中でのレジリエンス強化を戦略的に行います。その上で、低廉で安定的な天然ガスを確保するために必要なインフラ整備や取引ルールの整備、LNG バリューチェーン全体での脱炭素化等を主導していきます。また、北米からのシェールガス輸送、北極海航路等エネルギー輸送ルートの多様化に対応した安定的輸送を確保するため、わが国の技術を活かした海運・造船企業の戦略的取組みを推進します。
- エネルギー供給構造の一体改革
2050 年カーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素化の中での安定供給の実現に向けた電 力・ガスシステムの構築を強力に進めます。
引き続き、エネルギー供給構造の一体改革を推進することにより、エネルギーの安定供給を確保して国民生活の安全・安心を実現することはもちろんのこと、電気料金の抑制等により今後のわが国の産業の成長を促進させ、経済基盤の強化を図り、新規雇用を創出します。
- 電力システム改革と安定供給の実現
足元では、採算性の悪化する電源の退出が進 展し、新規投資が停滞する中で、電力の安定供 給に必要な供給力や調整力を確保するための対 策を講じます。また、非化石電源由来の価値を 小売電気事業者に限らず需要家も購入できるよ うな仕組みや、公正で持続可能な競争・市場環 境の整備について検討を進めます。更には、海 底直流送電なども含む送配電整備の検討や、配 電事業の参入促進など、災害にも備え、脱炭素 と安定供給に資する次世代型電力ネットワーク や分散型電力システムの構築を推進します。送 配電網の増強と国民負担の抑制を両立するため の託送料金制度の導入や、自由化後の公益的課 題に対する費用回収の取組みを着実に進めます。
- ガスシステム改革と脱炭素化へむけた技術開発支援
ガスの自由化から 4 年が経過し、ガスシステム改革についても、2050 年のカーボンニュートラル、自然災害の頻発・激甚化、国際的な LNG 需給構造の変化等の環境変化やそれに伴う新たな課題に対応し、産業競争力を強化していくため、持続可能な競争・市場環境整備を進めます。脱炭素化に向けた取組みを進めることも重要であり、その有望な手段の一つとして考えられているメタネーションを中心に、革新的な技術開発に取り組みつつ、ガスのカーボンニュートラル化を推進します。
- 再生可能エネルギーの主力電源化
2050 年カーボンニュートラル及び 2030 年目標に向けて、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、再生可能エネルギーに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら、最大限の導入を促します。
具体的には、①地域と共生する形での再生可能エネルギーの導入実現のための適地の確保、②技術基準の着実な執行や安全対策強化などの 事業規律の強化、③再生可能エネルギーのコス ト効率的な導入を促す改正 FIT 法の適切な運用、④設備の低コスト化等の技術開発、⑤基幹系統の増強や既存系統活用に向けた系統ルールの見直しなどの系統制約の克服、⑥風力や地熱導入拡大に向けた環境アセスの適正化や自然公園法等の関連規制の運用見直しに取り組みます。また、福島を未来の新エネ社会のモデル創出の拠点とする「福島新エネ社会構想」の実現に取り組んでまいります。
- 分散型エネルギー社会の実現
分散型エネルギー社会を目指し、再生可能エネルギーや蓄電池、コージェネレーション等の分散型エネルギーリソースを活用したアグリゲーションビジネスを推進するとともに、マイクログリッドを駆使した送電網、地域間連系線、分散型電力システム構築を通じて自然災害の頻発・激甚化の中でも安定したエネルギー供給の実現を目指します。
具体的には、再生可能エネルギーや蓄電池、コージェネレーション等の分散型エネルギーリソースを活用したアグリゲーションビジネスを推進するための市場環境整備や技術実証支援、蓄電池や水電解装置等の導入支援の取組みを進めるとともに、地産地消による効率的なエネルギー利用、レジリエンス強化、地域活性化に向けたマイクログリッドの構築支援等に取り組みます。
- 資源・エネルギー分野の技術で経済活性化・資源大国へ
国民生活や経済活動を支えつつ、資源エネルギーの脱炭素化と安定供給を推進するため、再生可能エネルギー・蓄電池・デジタル制御技術や水素・アンモニア、バイオ燃料、e-fuel・メタネーション・グリーン LPG 等の合成燃料、CCUS/カーボンリサイクル、DAC といった脱炭素燃料・技術の将来的な導入・拡大に向けて、2050 年カーボンニュートラル実現に向けた革新的な技術開発やその社会実装やルール形成を進めていくことが重要です。国内市場のみならず、新興国等の海外市場を獲得し、スケールメリットを活かしたコスト削減を通じて国内産業の競争力を強化するとともに、海外の資金、技術、販路、経営を取り込んでいきます。
- 宇宙太陽光発電衛星計画(宇宙太陽光発電 システムの研究開発)の推進
宇宙太陽光発電システムは、宇宙空間に大規模な太陽光発電装置を配置し、電波(マイクロ波)又はレーザー光線により地球に送電して、私たちの電力として利用するシステムです。
その壮大な計画の実現に向けて、現在進められている地上でのエネルギー無線伝送技術などの研究の成果を踏まえ、国際宇宙ステーションに設置されているわが国の実験モジュール「きぼう」などを使用した実証計画を策定することで、将来の新エネルギー利用に向けた研究開発を推進させます。
- 東京電力福島第一原子力発電所事故への反省
東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故は、被害の甚大さによって、わが国だけではなく、全世界に放射能の脅威を示すこととなりました。これまで原子力政策を推進してきたわが党は、このような事故を引き起こしたことに対してお詫びするとともに、今なお被災されている方々に対して心よりお見舞いを申し上げます。
わが党としては、福島第一原発事故から 10 年を迎え、その経験、反省と教訓を基に原子力をはじめとするエネルギー政策について取り組んでまいります。
- 安全性最優先での原子力発電所の再稼働
いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原 子力発電所の安全性については、原子力規制委 員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会 により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合 すると認められた場合には、その判断を尊重し 原発の再稼働を進めます。その際、国も前面に 立ち、地元自治体の理解が得られるよう丁寧な 説明を尽くしてまいります。
- 原子力発電所の安全性向上へ向けた取組み
新規制基準を越えた自主的な安全性向上の取組みをはじめ、更なる安全性向上を追求するなど、原子力に対する社会的信頼の獲得に向けた努力に全力を注ぎ、様々な課題に対応するための技術・人材の維持に向けた責任ある取組みを進めます。万が一事故が起こった場合の原子力災害対策の具体化・充実化についても、自治体からの意見も真摯に受け止め、しっかりと対応していきます。
一方、原発依存度については、徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの導入を進めていく中で、可能な限り低減させます。この方針の下、原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用してまいります。
- 核燃料サイクル政策への取組み
核燃料サイクルについて、引き続き関係自治 体や国際社会の理解を得つつ取り組むこととし、再処理やプルサーマル等を推進します。例えば、2020 年に原子力規制委員会から規制基準に基づ く許可を得た、核燃料サイクルの中核となる六 ケ所再処理工場と MOX 燃料工場について、安全確保を大前提に、これらの施設の竣工と操業に 向けた準備を着実に進めていきます。更に、高 レベル放射性廃棄物について、次世代に先送ら ず現世代の責任を果たすべく、最終処分に向け た取組みを着実に進めます。
- 原発立地地域の振興
原発立地地域が抱える、地域振興や防災体制の充実などの課題に真摯に向き合い、産業振興や住民福祉の向上、防災対策のための予算措置、原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法の活用などを通じ、課題解決に向けた取組みを進めていきます。
- 高速炉開発の推進と「もんじゅ」の廃止措置に向けた取組みの実施
将来のエネルギー問題の解決策として、現在、ロシア、中国、インドに加え、米国やカナダなど の国々が積極的に高速炉の開発を進めています。高速炉は放射性廃棄物の滅容・有害度低減、資 源の有効利用に貢献しうるものとしても認識さ れており、2018 年 12 月に高速炉開発に係る「戦略ロードマップ」が政府決定され、今後、本ロー ドマップに基づき、将来の高速炉の実現に向け、長期的な研究開発、体制の整備、国際協力等を 一体的に進めていきます。
廃止措置に移行した「もんじゅ」については、地元に大きな影響が生じないよう、また地元が共に発展していけるよう、地元の経済や雇用等に配慮するとともに、安全かつ着実に「もんじゅ」の廃止措置を進めます。また、「もんじゅ」でこれまで培われてきた人材や様々な知見・技術等については、将来の高速炉研究開発において最大限有効に活用していきます。
- 原子力安全の向上に向けた研究開発の推進
国際的に、原子力の利用は今後も拡大見込みであり、各国より日本の原子力技術に対する期待の声が寄せられています。たとえば、高温ガス炉は、固有の安全性を有し、発電用原子炉だけでなく、高温を取り出せる特長を生かした水素製造等の熱利用が期待され、次世代の原子炉として国際的に開発が進められています。
世界をリードする高い技術力を有するわが国として、軽水炉の一層の安全性向上に資する技術開発に加えて、高速炉、高温ガス炉、地下立地を含めた小型モジュール炉(SMR)、核融合等の抜本的に安全性を高める革新的技術について、国際的な連携を図りつつ、研究開発を推進します。
- 水素需要の創出
水素需要を創出のため燃料電池自動車の更なる導入拡大に向けた導入支援及び水素ステーションの戦略的整備や、水素発電の商用化、水素還元製鉄をはじめとする製造プロセスの大規模転換に向けた技術開発、定置用燃料電池(エネファーム含む)の更なる普及拡大に向けたコスト低減や、純水素燃料電池の導入支援などを強力に推進します。
また、分野横断的な取組みとして、世界でコスト低減競争が激化する水素供給の開発、製造、運搬、利用の各工程に係る煩雑な国内規制を一括化法等の策定により改革し、水素利活用を円滑化して国内コストの低減及び多様な分野の水素需要を創出して、水素社会を実現します。
- 温室効果ガスの抜本的な排出削減を実現する革新的技術の開発
2050 年カーボンニュートラルを実現するためには、エネルギー・産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションを大幅に加速する必要があります。
再生可能エネルギーの導入拡大に資する次世代太陽電池や浮体式洋上風力の要素技術、熱・電力分野を脱炭素化するための水素の大量供給・利用技術や、電化社会に必要な次世代蓄電池技術、CO2 を燃料や原料として活かすカーボンリサイクル技術等、温室効果ガスの排出削減に不可欠で、産業としての成長が期待される分野における革新的技術の開発・社会実装を後押ししていきます。
- 太陽光パネルの安全な処分ルールの策定
約 10 年後から大量廃棄が発生する初期型太陽光パネルの安全な処分ルール策定(土壌汚染や感電防止対策)とリサイクル技術の開発に取り組みます。
社会資本整備
- 所有者不明土地の解消
長期間相続登記が未了の土地や表題部所有者不明土地の解消に取り組むとともに、筆界特定制度の活用などにより登記所備付地図の整備を推進します。
また、所有者不明土地の発生予防・利用円滑化を図る民法・不動産登記法等の改正を受け、新制度の施行準備に取り組みつつ、隣地所有者不明土地の表示登記を円滑化する仕組みの導入を図るほか、相続に係る紛争を防止し、円滑な相続を実現するため、遺言書保管制度の活用を推進します。
更に、事業者の有する動産・債権などを担保 として活用しやすくし、保証に過度に依存しな い融資を促進するため、動産担保・債権担保に 関する法制度の見直しに向けた検討を行います。
- 日本経済の回復への対策
経済回復を確実なものとするため、2022 年以降の住宅ローン減税等の住宅投資促進策やカーボンニュートラルの実現等に向けた自動車購入への予算・税制上の支援について、十二分な対策を講じます。
- 競争政策の特例的取扱いを通じた地域の基盤インフラの維持
「地域基盤企業」といえる地域銀行及び乗合バスの 2 分野の事業者については、人口減少によるインフラ機能維持や経営力強化のための経営統合や共同経営等に関して、特例的な措置を講ずることで、地域の経済、産業、社会を守ります。その際、独占禁止法の究極的な目的である「一般消費者の利益」の確保の観点についても最大限尊重します。
- 住宅ローン減税等の確実な措置
住宅投資促進策の柱である住宅ローン減税等の税制上の支援策を 2022 年以降について確実に講じることにより、経済の回復を力強く牽引していきます。
- 車体課税の見直し
自動車税の環境性能割の臨時的軽減については、感染症の状況や経済の動向、臨時的軽減が環境インセンティブ機能に与える影響等を総合的に勘案して、適用期限を 9 月延長し、令和 3
年 12 月 31 日までに取得したものを対象とします。
今後、エコカー減税等の期限到来にあわせ、見直しを行うに当たっては、政策インセンティブ機能の強化、実質的な税収中立の確保、原因者負担・受益者負担としての性格、応益課税の原則、市場への配慮等の観点を踏まえることとします。
- 自動車関係諸税の課税のあり方の検討
自動車関係諸税については、「2050 年カーボンニュートラル」目標の実現に積極的に貢献するとともに、自動運転をはじめとする技術革新の必要性や保有から利用への変化、モビリティの多様化を受けた利用者の広がり等の自動車を取り巻く環境変化の動向、地域公共交通へのニーズの高まりや上記の環境変化にも対応するためのインフラの維持管理や機能強化の必要性等を踏まえつつ、国・地方を通じた財源を安定的に確保していくことを前提に、受益と負担の関係も含め、その課税のあり方について、中長期的な視点に立って検討を行います。
- 2020 東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーを踏まえた取組みの推進
2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシー(遺産)を踏まえた取組みとして、ユニバーサルデザイン 2020 行動計画に基づき、心のバリアフリーの推進とユニバーサルデザインの街づくりの両面で、各省庁等の取組みを継続的に改善していきます。また、バス・タクシーなどの交通サービスの整備や次世代自動車(運転支援システムの高度化・燃料電池車など)の導入の着実な推進などを図ります。
- 魅力ある地方都市の形成
地方都市において、地域経済の活性化や多様 な働き方・暮らし方の実現に向けたコンパクト でゆとりとにぎわいあるウォーカブルなまちづ くりを推進します。このため、都市機能の強化 と公共交通網の再構築などによるネットワーク 形成によりコンパクト・プラス・ネットワーク のまちづくりを進め、魅力ある経済・生活圏を 形成します。また、公園等の都市インフラや民 間施設の利活用とデジタル技術の活用等により、地域資源を活用してエリア価値を高めるコロナ 後に対応したまちづくりを推進し、まちに賑わ いと活力を生み出し、民間投資の喚起や所得・ 雇用の増加等につなげます。
- まちづくりの DX
まちづくりの DX を目指し、3D 都市モデル(PLATEAU)等のデジタル技術やデータを官民の多様な主体が駆使し、モビリティや防災等の多様な都市サービスを提供する環境を整備するため、ユースケース開発や取組みの全国展開を推進します。
- 都市の国際競争力の強化
グローバル化が急速に進展する中で、脱炭素化、職住近接等の新たなニーズに対応した複合型開発等の優良な民間都市開発事業の推進等により、都市の国際競争力の強化に取り組みます。
- ICT 等による建設現場の生産性向上やインフラ分野の DX の推進
トンネル、橋梁等を含む社会インフラの強靱化に際しては、ICT や、AI、UAV、BIM/CIM 等の先端技術導入を含めた、調査・測量、設計、施工及び維持管理・更新のあらゆるプロセスで生産性向上を図る「i-Construction」を推進し、また、国土交通データプラットフォームの構築・高度化を進めます。
更に、インフラ分野のデジタル・トランスフォーメーション施策により、社会資本や公共サービスを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、建設業の文化・風土や働き方の変革を推進します。
- ITS 技術の活用
官民連携の下、ITS 技術の活用により自動運転の実用化やそのための地図データの整備に取り組むとともに、深刻なドライバー不足が進行するトラック物流の省人化・効率化を推進するための高速道路でのトラックの隊列走行や、地方等における高齢者等の移動手段の確保のための公共交通等における自動運転サービスを、早期に実用化します。併せて、本格導入されたダブル連結トラックの対象路線拡充や自動隊列走行の早期実用化に向け、新東名・新名神の 6 車線化等の実施環境整備をするなど、世界で最も安全で環境に優しく経済的な道路交通社会を早期に実現します。
- 生産性革命の推進
人口減少社会の中、わが国の潜在的成長力を高めるとともに、新たな需要を掘り起こしていくため、戦略的なインフラマネジメントを進め社会全体の生産性を高めること、建設、物流分野等の生産性向上や自動運転等の新技術の社会実装を進めること等により、生産性革命を推進します。特に、Society 5.0 の実現に向けて、スマートシティや陸海空の次世代モビリティの推進、行政手続におけるデジタル化の推進、インフラの整備・管理・機能や産業の高度化、データの横断的活用やデータプラットフォームの構築・高度化等の取組みを強力に推進します。
- 働き方改革の推進
地域の経済・雇用を支える建設業や自動車運送事業(トラック・バス・タクシー)について、働き方改革関連法施行(2019 年 4 月)後 5 年の猶予を置いた上で罰則付き時間外労働上限規制が適用されることを踏まえ、長時間労働是正等の労働環境の改善を図り、働き方改革を推進します。
- 建設業の働き方改革の推進
建設業については、新・担い手 3 法等に基づき、公共・民間工事を問わず、建設工事にまつわる全ての関係者が一丸となって、適正な工期の 設定や週休 2 日の確保などを推進するとともに、建設生産プロセスにおける ICT の活用や施工時期の平準化、建設機械の無人化技術の導入環境 整 備 の 取組 み等 生産 性 向 上を 図る 「 i- Construction」の取組みを進めます。
- 自動車運送事業等の働き方改革の推進
自動車運送事業、自動車整備事業、宿泊業等については、IT の活用等による労働生産性の向上、多様な人材の確保・育成、取引環境の適正化等の長時間労働を是正するための環境整備等を推進します。また、2018 年に改正された貨物自動車運送事業法に基づき、荷主への働きかけ等を着実に進めるとともに、トラック輸送の生産性向上・物流の効率化、女性や 60 代以上の運転者等も働きやすい、より「ホワイト」な労働環境の実現に取り組む「ホワイト物流」推進運動を、荷主企業・物流事業者等の相互協力に基づき推進します。
- 不動産投資市場の活性化
民間資金等を活用し、オフィス・住宅の耐震化・省エネ化等を進め、ESG に即した質の高い不動産ストックを形成するとともに遊休不動産等の再生等を図ることで、地方都市の不動産を含め、不動産投資市場の活性化に取り組みます。また、不動産取引価格情報等の公表や不動産 ID のルール整備等を通じて不動産市場の活性化・透明化を図ります。また、わが国不動産業の海外展開を促進します。
- 所有者不明土地等対策の推進
所有者不明土地・管理不全土地・低未利用土地の利活用・管理を図る制度の拡充や創設、支援策の強化を図ります。また、迅速な災害復旧・復興等に資する地籍調査の円滑化・迅速化に向け、最新技術の普及等により自治体の取組みを支援します。
- 地方版図柄入りナンバープレートの推進
地域の魅力ある風景や観光資源を図柄にした地方版図柄入りナンバープレートの普及促進を通じ、地域の魅力を全国に発信します。
- 地域の貴重な公共空間である川の利活用の推進
全国各地を流れる川にはその地域特有の自然 があり、歴史があり、そこに集う人々の心を安 らげ、豊かにする魅力があります。地域の貴重 な公共空間である川の価値を更に活かすことで、その地域は観光振興や健康増進等により、もっ と生き生きと元気になる可能性があります。 自然環境が有する多様な機能を活かしたグリーン インフラの活用を推進し、市町村や住民、民間 企業の取組みを支援し、魅力ある水辺空間の創 出や生態系の機能の保全・創出等を進め、水辺 から得られる恵みを地域振興に活かします。
- 健全な水循環の維持・回復の取組みの推進
近年、都市部への人口の集中、産業構造の変 化、地球温暖化に伴う気候変動等の様々な要因が水循環に変化を生じさせ、それに伴い、渇水、洪水、水質汚濁、生態系への影響等様々な問題が顕著となってきています。国民共有の貴重な財産であり、地球上の生命を育み、国民生活及び産業活動に重要な役割を果たしている水が健全に循環し、そのもたらす恵沢を将来にわたり享受できるよう、地下水マネジメントを含む健全な水循環の維持・回復のための取組みを推進します。
- 地域の建設産業の健全な発展と企業の利潤確保・労働者の処遇改善
地域経済・雇用を支え、災害時には最前線で活躍する建設産業に若い世代が安心して入職できるよう、適切な賃金水準の確保、社会保険の加入徹底、建設キャリアアップシステムの活用、女性も活躍できる環境整備などを進めます。特に、9 年連続で引き上げられた公共工事設計労務単価の上昇分が、下請も含めた技能労働者にも確実に行き渡るよう、引き続き、適切な賃金水準の確保に取り組みます。加えて、わが党が中心となって成立させた建設職人基本法の趣旨を踏まえ、建設工事従事者の安全及び健康の確保、処遇改善・地位向上に取り組みます。
- 建設産業における働き方改革の推進
長時間労働を前提とした長年の慣行を打破し、建設業の「働き方改革」の実現に取り組みます。 新・担い手 3 法等を踏まえ、公共・民間工事を問わず、建設工事全ての関係者が一丸となって、適正な工期設定や週休 2 日の確保等の働き方改革を推進するとともに、建設生産プロセスにお ける ICT の活用や施工時期の平準化、建設機械の無人化技術の導入環境整備の取組み等による 建設現場の生産性向上を図る「i-Construction」の取組みを進めます。更に、建築物の設計業務 等の適切かつ円滑な実施を図り、設計業務の担 い手の確保にも資するよう、業務報酬基準の見 直しを推進します。
- 公共工事の品質確保等に向けた入札契約制度の運用改善等
わが党が中心となって実現した公共工事品質確保法の改正など、いわゆる「新・担い手 3 法」の趣旨を公共工事発注の現場で徹底し、災害対応や冬期の除雪作業など「地域の守り手」である建設企業や測量、地質、コンサルタント等の建設関連企業を応援します。引き続き、予定価格の適正な設定、ダンピング対策の強化を図るとともに、災害時における随意契約等の適切な入札・契約方法の選択、適正な工期設定、国庫債務負担行為の活用等による施工時期の平準化、ICT の活用等による生産性向上、調査・設計の品質確保など、国や地方公共団体などにおける入札契約制度の運用改善等を進めます。
- 地方の良質な建設産業の維持
地方の建設産業の持続可能な経営を支援するため、建設産業の資金調達の円滑化、連鎖倒産の防止に取り組むとともに、担い手確保・育成や生産性向上のための取組みを重点支援し、建設産業の経営上の課題解決に向けた取組みを支援します。地域防災への備えの観点から、災害時において使用される代表的な建設機械の保有や人材育成等を促進し地域の発展と安全を支える良質な建設産業を守り、将来のために必要な成長基盤や安全・安心基盤である社会資本の前倒し整備を進め、地域の特色を最大限に活かす国土の均衡ある発展を目指します。
- インフラシステム海外展開の推進
インフラシステムの海外展開について、オールジャパンの体制で戦略的な取組みを行い、民間企業の海外展開を支援し、2025 年のインフラシステムの海外受注額 34 兆円を目指します。このため、トップセールス、ビジネスマッチング、人材育成、官民ファンド、独立行政法人等の活用、中堅・中小企業の海外展開支援策の推進を通じて、わが国企業等の受注の確保・拡大を図ります。また、わが国の優れた土木・建築技術、交通システム、都市インフラ、港湾インフラ、水ビジネス、防災技術等の海外展開を図り、世界に貢献します。
- インフラ海外展開の促進
海外プロジェクトの推進、建設産業の海外展開の促進のため、トップセールスや情報収集・発信、ビジネスマッチング、人材育成、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)、独立行政法人等の活用を通じて、わが国建設企業等の海外における受注の確保・拡大を図るとともに、わが国の優れた土木・建築技術、交通システム、都市インフラ、港湾インフラ、水ビジネス、防災技術等の海外展開を図り、世界に貢献します。また、インフラ海外展開を支える中堅・中小企業の海外展開支援策を推進します。
- バリアフリー、ユニバーサルデザインのま ちづくりの推進
バリアフリー法に基づき、旅客施設の段差解消やホームドア設置、ホームと車両の段差・隙間の縮小、新幹線の車椅子用フリースペース導入、駅を中心とした周辺の生活関連施設を結ぶ道路や公園等、公共交通機関、建築物、公共施設等について、都市部に加え地方部のバリアフリー化を着実に推進するとともに、都市部での利用者の薄く広い負担の枠組みや地方部での既存の支援措置の重点化により、全国の鉄道駅のバリアフリー化を加速します。また、市町村が作成するバリアフリー基本構想等に基づく事業実施を支援します。更に、高速道路のサービスエリアや道の駅における子育て支援施設の整備を推進します。
- 心のバリアフリーと ICT 活用の推進
交通・観光分野の接遇の向上を進めるなど、バリアフリー化への国民の理解・協力を深める「心のバリアフリー」を推進します。高齢者、障害者等への情報、ICT 機器・サービスの提供について、テレビの外国語放送の吹き替えや解説放送の充実、ニュース速報や緊急災害速報に字幕、音声等を付加することや高齢者・障害者にやさしい ICT 機器・サービスを提供することにより情報アクセスに対するバリアフリー化を推進します。視覚障害者が駅ホームから転落する事故を防止するため、IT などの新技術を活用した対策を推進します。
- 住宅における「ストック社会」の実現
内需拡大の柱であり、あらゆる産業に経済波 及効果のある住宅を重要な国富として位置づけ、総合的な住宅税制・融資等支援制度、規制緩和 等を通じ、住宅を資産として残せる「ストック 社会」を実現します。高齢者が保有する資産を 現役世代に移転し、財政の負担を伴うことなく 住宅取得の促進を図り、内需の柱である住宅需 要の喚起を図ります。住宅金融支援機構の金利 引下げ等により、良質な住宅の取得や住宅投資 の活性化を図ります。老朽化した集合住宅の改 築も促進します。
- 既存住宅流通の活性化
ライフステージの各段階や「新たな日常」やDX の進展を踏まえた多様な働き方・暮らし方に応じた住環境を獲得できるよう、住棟認定の導入や共同住宅の認定基準の合理化等が行われる長期優良住宅の供給促進、既存ストックの長寿命化や資産価値の維持増大に向けた耐震・省エネ・バリアフリー化等のリフォームの普及促進、空き家の活用・除却の推進、インスペクションや住宅瑕疵保険、既存住宅の紛争処理制度等による住宅の品質確保等による既存住宅流通のための市場環境整備を進めます。
- 省エネ性の高い住宅の普及促進
エネルギーの効率化やCO2 の削減を図る ZEH、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス) 住宅などの省エネ性の高い住宅の普及に努めるとともに、既存ストックの省エネ改修への支援を強化します。
- 誰もが安心して暮らせる多様な住まいの確保
高齢化の著しい大都市周辺部で、少子高齢社会に対応し、子育て世帯や高齢者等が安心して健康に暮らすことができる「スマートウェルネス住宅・シティ」を実現できるよう、都市再生を進めつつ、サービス付き高齢者向け住宅の供給、子育て施設やケア施設と住宅の併設・近接、子供の安全・安心や子育て期の親の孤立・孤独防止に資する共同住宅整備を推進するとともに、要配慮者に対する空き家を活用した賃貸住宅の供給や孤独・孤立対策に資する見守り等の居住支援など、住宅セーフティーネット制度に基づく施策を着実に推進します。
- 三世代同居の推進
大家族による支え合いを応援するため、二世帯住宅の建設支援や UR 賃貸住宅での近居割の実施など、三世代の同居や近居に対する支援に取り組みます。
- 環境にやさしいまちづくりの推進
少子高齢化が進む中、健康で安心できる持続可能な社会システムの構築に向け、高齢者の住宅ストックの活用・流動化、都市のエリア単位での脱炭素化の推進、超小型モビリティの普及推進など次世代型の生活支援、道路照明の LED 化や太陽光発電の活用といった省エネ・創エネ・蓄エネ等まちや建築物におけるエネルギー利用の効率化などを推進します。
- 良質な木造住宅の供給促進
国産材を活用した良質な木造住宅の供給促進を通して、地域の環境整備や経済の活性化を図るとともに、これを担う中小工務店の技術力向上の支援を行います。
- 新たな国土形成計画の策定
「コンパクト+ネットワーク」の考え方のも と、スーパー・メガリージョンの形成等も見据 えて「対流促進型国土」の形成を目指した第二 次国土形成計画を推進します。更に、デジタル 革命の急進展、急激な人口減少・少子高齢化、自然災害の激甚化・頻発化など、国土を巡る大き な状況変化を受けて、二地域居住など関係人口 の拡大を推進するとともに、「真の豊かさ」を実感できる国土の実現を目指し、新たな「国土形 成計画」の策定に向け取り組みます。また、人口 減少下における適切な国土管理の在り方を示し た国土の管理構想に基づく取組みを推進します。
- 半島・豪雪地帯の振興
半島地域については、地域間交流や特産品の 販売促進等の産業育成等を通じて定住を促進し、半島振興対策を強力に推進します。また、除雪 時の死亡事故ゼロに向けた安全確保対策を含め 豪雪地帯の振興を図ります。
- 離島地域の振興
離島がわが国及び国民の利益の保護・増進に重要な国家的・国民的役割を担っていることを踏まえ、離島活性化交付金の充実やスマートアイランドの推進など、離島振興の一層の強化を図ります。
また、高校のない島から本土や他の島の高校に進学せざるを得ない場合の居住費・通学費の修学支援、医療従事者確保及び妊産婦支援などの離島医療対策、離島における介護提供体制の整備、漂流・漂着ゴミ対策や情報格差の是正などの施策の充実に取り組みます。更に、防災対策強化や本土と離島間の石油輸送コストのための支援措置の拡充を講じます。
- 離島航路航空路整備法の制定
離島航路航空路が本土における国道と同じ役割を果たしていることから、新たに『離島航路航空路整備法』を制定することにより、離島住民の基礎的交通手段(航路・空路)確保のための国の役割を明確にし、人流・物流面での格差是正を実現します。
- 奄美・小笠原地域の振興
奄美については、沖縄との調和ある振興策を図りつつ、世界自然遺産登録を踏まえた観光振興など、地域の自主的な施策の推進を支援する交付金を積極的に活用します。小笠原については、航空路の開設を含め、交通アクセスの改善などに必要となる施策に引き続き取り組むとともに、島民・観光客の安全確保のための防災施設、産業振興・生活環境の改善のための施設の整備等を支援します。
- 地域経済を活性化するまちづくり
地方都市における人口減少や高齢化の進展な ど、わが国の都市を取り巻く環境は厳しさを増 してきています。地域の活力を維持・向上させ るため、医療・福祉・商業等の都市機能や居住をまちなかに誘導し、既存の施設などを有効活用 しながらコンパクトシティの形成と、ネットワ ークの活用を図るとともに、歩行者利便増進道 路(ほこみち)制度による道路を活用した賑わ いの創出や、変化・多様化する人々のニーズに 対応するため、まちの資源として存在する地域 資源を活用してエリア価値を高めることにより、暮らしやすく、地域経済を活性化するまちづく りを進めます。
- 持続可能な地域づくり
多くの都市で、空き地、空き家等が時間的・空間的にランダムに発生し、コンパクトなまちづくりを進める上で重大な障害となっていることから、エリア価値向上に向けた低未利用地の利用促進などの取組みを進めます。更に、過疎地域等において、商店・診療所など、日常生活に不可欠な施設・機能を歩いて動ける範囲に集めた「小さな拠点」を活用し、周辺集落とネットワーク等で結ぶことにより、人口減少、高齢化に伴う課題解決のためのサービスコスト効率化・生活機能の維持を図り、持続可能な地域づくりを推進します。
- 自転車利活用の推進
第 2 次自転車活用推進計画(2021 年 5 月閣議決定)に基づき、地方公共団体の自転車活用推進計画の策定を促進するとともに、自転車通行空間の整備を推進し、安全で快適な自転車利用環境を創出します。
また、シェアサイクルの普及促進、「自転車通勤推進企業」宣言プロジェクト制度の活用等による自転車通勤等の促進や、日本を代表し、世界に誇りうる「ナショナルサイクルルート」等のサイクリングルートの磨き上げ・PR など、自転車の活用を推進します。
- 「真の豊かさ」を実現するためのインフラ整備の推進
インフラは、現在を生きる我々だけでなく将 来の世代の豊かな生活や社会経済活動、わが国 の競争力の基盤となるものです。社会資本整備 重点計画に基づき、従来の事業評価に捉われず、ストック効果の高いインフラ整備を進めるとと もに、整備・維持管理・利活用の各段階における工夫を凝らした新たな取組みを行うことにより、インフラの潜在力を引き出し、新たな価値を創 造していきます。こうした取組みを推進すると ともに、現場の担い手や技能人材を確保するた め、安定的・持続的な見通しを持って戦略的か つ計画的に必要な公共投資を行います。
- 国民に約束した国の基幹ネットワークを含む道路網の整備
高規格道路のミッシングリンクの解消や 4 車線化、高規格道路と代替機能を発揮する直轄国道とのダブルネットワークの構築・強化など、従来の事業評価に捉われず、国民に約束した国の基幹ネットワークを含む全国の道路網の整備を促進します。また重要物流道路制度を活用し、平常時・災害時を問わない安全かつ円滑な物流等を確保するため、基幹となるネットワークに対し、 経済や生活を安定的に支える機能強化や重点支援・投資を行うとともに、主要な拠点へのアクセスや災害時のネットワークの代替機能について、広域道路ネットワークを強化します。
- 高速道路の安全性・利便性の向上
高速道路の暫定 2 車線対策や逆走防止対策等、高速道路の安全・安心にかかる取組みを計画的 に推進します。また、ETC2.0 等の解消のためのビッグデータなど ICT を活用した渋滞対策や、民間施設に直結するインターチェンジも含めてETC 専用のスマート IC の整備を進めるなど、既 存のネットワークの使い方を工夫し、円滑かつ 安全な交通サービスの実現を目指します。また、ETC 専用化等による料金所のキャッシュレス化・タッチレス化を推進するとともに、ETC2.0 を活用した高速道路からの一時退出サービスの更なる拡充など高速道路の利用しやすい環境整備に取り組みます。
- 利用重視の高速道路料金の導入
高速道路料金については、利用重視の観点から、物流車両に対する大口多頻度割引の最大 5 割引の継続など実施目的が明確で効果の高い割引を行うとともに、適切な維持管理・更新へ対応した料金にします。なお、大都市圏と地方の道路利用の状況を鑑み、わかりやすい料金に整理するとともに、大都市圏については、環状道路時代にふさわしく、交通流を最適化する料金施策の導入に取り組みます。また、ETC2.0 を活用した一時退出サービスや ETC 二輪車の割引実施などに取り組みます。
- 安全・安心な道づくり
巨大津波時に防潮機能を発揮するとともに緊急避難路や避難所となり、復旧・復興支援物資などを輸送する代替路になる道路など「命の道」や生活道路・通学路の安全対策など、地域生活に不可欠な道路等については、積極的に整備を進めます。道路は、国民の貴重な資産であり、将来のメンテナンスに必要となる費用を把握し、地方公共団体のインフラ点検・修繕の支援を充実するなど、産学官の予算・人材、技術を最大限投入し、予防保全を前提とした持続可能なメンテナンスを実現します。
- 総合的な交通体系の整備
交通政策基本法に基づいて策定された交通政策基本計画を踏まえ、交通政策を総合的かつ計画的に推進します。
- 地域交通ネットワークの維持・利便性向上 の推進
感染症の拡大や自然災害、人口減少・高齢化により危機に瀕するバス、タクシー、鉄道等の安定的な事業継続に向けた環境を整備し、地域の生活交通の将来にわたる維持・確保や利便性の向上、都市を結ぶ高速交通のネットワークの維持・活性化、地域での連携・協働の支援に取り組みます。また、国内外の移動再開等に向けた交通機関等の感染防止対策に万全を期します。
更に、自動運転を含めた新たなモビリティも活用して地域交通の利便性を飛躍的に向上させるための取組みとして、MaaS 等の新たなモビリティサービスの導入を全国において促進し、公共交通を含めた移動の高度化に取り組みます。
- 交通サービスの向上
改正タクシー特措法に基づき、運転者の労働環境改善とタクシーの安全性やサービス向上等に取り組みます。空港・港湾や高速道路等の基幹ネットワーク作りを着実に進め、国際競争力に資する総合的な交通体系を整備します。また、交通ターミナルをはじめとする乗り継ぎ拠点の整備などを行うとともに、「道の駅」のバスの乗り継ぎ拠点化や、「道の駅」等を拠点とした自動運転サービスの社会実験などに取り組みます。改正債務等処理法等に基づき、基幹的な交通・物流ネットワークを担う JR 二島貨物会社の経営自立に向けた取組みを支援します。
- 整備新幹線の整備
整備新幹線は、2012 年 6 月に着工した新函館北斗―札幌間、金沢―敦賀間、武雄温泉―長崎 間については、着実に整備を進めます。未着工 区間については、財源を確保しつつ早期着工を 目指します。更に、新幹線ネットワークの整備 が地方創生に資することに鑑み、基本計画路線 に係る調査等、全国の幹線鉄道ネットワークの 更なる充実に向けた取組みを進めます。青函共 用走行問題については、時間帯区分方式の段階 的拡大も含め、引き続き努力するとともに、札 幌までの高速化を実現する可能性を検討します。
- 北陸新幹線の着実な整備
北陸新幹線については、与党整備新幹線建設促進 PT において、2020 年 12 月 15 日に取りまとめられた「北陸新幹線の取扱いに関する決議」に基づき、金沢・敦賀間の事業費の増加について必要な財源を確保するとともに、沿線自治体に負担が極力生じないように、新たな財源を捻出するなどの適切な措置を講じつつ、2023 年度末までの完成・開業に向けた着実な整備を進めます。併せて、敦賀・新大阪間の令和 5 年度当初の着工に向けた環境影響評価を着実に進めるとともに、安定的な財源見通しの確保を含む着工 5 条件の早期解決を図ります。
- 九州新幹線(西九州ルート)の整備
新幹線は全国につながる高速交通ネットワークとして整備すべきものであり、九州全体、ひいては西日本全体の未来に関わる重要な課題であるとの認識のもと、武雄温泉駅での対面乗換を利用者利便の観点から 1 日も早く解消する必要があることを踏まえ、①在来線の利便性の確保、②佐賀県の財政負担の軽減、③旅客流動や利用者の利便性、事業費などを総合的に勘案した将来の地域の発展に資するルート、④新幹線の開業効果が最大限発揮される地域振興策についての検討を進めます。
- 幹線鉄道ネットワークの更なる充実
新幹線ネットワークの整備が地方創生や国土強靱化に資することに鑑み、基本計画路線に係る調査等、全国の幹線鉄道ネットワークの更なる充実に向けた取組みを進めます。また、リニア中央新幹線、北陸新幹線等との乗り継ぎ利便性の観点から、新大阪駅の機能強化を図る地方創生回廊中央駅構想の早期実現に向けて取り組むとともに、新大阪―関西国際空港間のアクセス改善にも取り組みます。
- 山形新幹線の高速化
約 2 時間 26 分を要する山形新幹線(山形・東京間)は、降雪や豪雨により年平均 270 本(最高 410 本)が運休・遅延しています。
人を呼び込み地方を活性化する「地方創生」や命と暮らしを守る「国土強靱化」の推進には、山形新幹線の運休・遅延の解消と時間短縮は不可欠です。
将来的なフル規格での整備も見据え、高速走行を可能にする新型車両(E8 系新幹線車両)の2024 年春の導入による時間短縮に加え、運休・遅延の 4 割が集中する福島・米沢間の板谷峠区間に防災短絡トンネルを整備することで、更なる時間短縮と運休・遅延の解消による利便性向上に向けた具体的な検討を進めます。
- JR 二島貨物会社の経営自立に向けた支援
JR 北海道、JR 四国及び JR 貨物のいわゆる「JR 二島貨物会社」が置かれた厳しい経営状況を踏まえ、2021 年 3 月に成立した「日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律等の一部を改正する法律」に基づき、①経営安定基金の下支え、②構造的な経営課題への支援、③経営改革の推進等により、経営自立に向けて必要な支援を継続・拡充します。
- 超電導リニアの整備
超電導リニア(超電導磁気浮上式鉄道)については、品川―名古屋間の早期開業と、その建設工事に伴う水資源と自然環境への影響の回避・軽減の両立を図っていきます。建設にあたっては、「地産地消」の考え方のもと、地元事業者が主体的に参画できるような環境を整備します。また、東京―大阪間の全線開業は、財政投融資を活用し、最大 8 年間の前倒しを図ります。更に、リニアを効果的に活用するためのアクセス整備や企業誘致のための優遇制度等を創設するとともに、超電導リニア技術の輸出を支援します。
- 災害に強い鉄道インフラによる地域の活力の創出
コロナ禍を踏まえ、一極集中でない分散型の社会を形成するためには、地方と都市部が災害に強く安定性に優れた高速交通ネットワークで結ばれることが不可欠です。人の移動や交流を確保・促進するため、ミニ新幹線を含む主要な幹線鉄道について、災害時のボトルネック解消や大幅な高速化など、地域の活力を生む鉄道インフラの抜本改善に取り組みます。
- 総合的な物流効率化等の施策の推進
総合物流施策大綱を踏まえ、物流 DX や物流標準化等の物流効率化の推進、物流ネットワークの強靱性・持続性の確保・充実、過疎地域でのラストワンマイル配送の確保・維持等により、国民生活や日本経済を支える物流機能の強化を図ります。
- コロナ禍からの回復に向けた安全・安心な 航空輸送の実現
コロナにより深刻な影響が継続している航空・空港関連企業の安定的経営に必要なあらゆる支援を継続的・追加的に行うとともに、国内外の移動再開に向けた必要な措置を講じ、航空ネットワークの維持・確保、空港等の機能強化等を図ります。また、航空会社・空港会社等の設備投資等への支援、成田空港の滑走路増設等による首都圏空港の発着枠の拡大、国内外からの地方空港への就航再開の促進等により、地方経済活性化や日常生活に不可欠な地方航空ネットワークの維持・確保、空港等の機能強化等を図ります。更に、国内外の移動再開等に向け、空港での水際対策に引き続き万全を期します。
- 航空イノベーションの推進
改正航空法等を踏まえた航空保安対策の着実な実施を図るとともに、ドローン等の利活用促進のため、有人地帯での補助者なし目視外飛行(レベル 4)の実現や、「空飛ぶクルマ」の実現に向けた制度整備・技術開発を進めます。
- 航空分野の脱炭素化の推進
航空分野の脱炭素化に向け、①機材・装備品等への新技術導入、②管制の高度化による運航方式の改善、③持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進、④空港施設・空港車両の CO2 削減等の推進とともに、空港を再生可能エネルギー拠点化する方策を検討・始動し、官民連携の取組みを推進します。
- 操縦士・整備士等の育成、MRO 産業・航空 機産業の振興
航空需要への的確な対応のため、操縦士・整備士・製造技術者等の養成・確保や地上支援業務の省力化等を推進します。また、組織認証制度等を活用した航空機整備・製造産業の拡充に取り組み、MRO(整備・修理・オーバーホール) 産業を推進します。航空機の設計・製造国としての国産旅客機の安全性審査の適確な実施や、市場への投入・外国への輸出円滑化のための制度・体制の整備を進め、航空機産業の振興を図ります。
- 安定的な海上輸送の確保
わが国造船・海運業の競争力強化、船員の働き方改革・内航海運の生産性向上を図るため、海事産業強化法を着実に施行し、造船業におけるデジタル技術を活用した変革、造船業・舶用工業の企業間連携、新造船受注喚起にも資する高性能・高品質な船舶の導入、内航海運の新たなモデル事業の展開等を推進します。また、海事分野の脱炭素化について、ガス燃料船等の生産基盤確立、水素・アンモニア燃料船の技術開発支援等を進めます。更に、離島航路等の輸送サービスの確保、日本人船員の養成を推進します。
- 経済・産業を支える港湾機能の整備
港湾において、産業の立地環境の整備、地域 の基幹産業等を支える物流機能の強化を図ると ともに、国際コンテナ戦略港湾の機能強化、国 管理への移行、AI ターミナルの実現、サイバーポートの構築、国際バルク戦略港湾の整備、ク ルーズを安心して楽しめる環境整備等を行い、 国主導による国際競争力の強化を目指します。 また、港湾施設等の老朽化対策の加速、大規模 地震や強大化する台風発生時の港湾機能の維持、事故対応能力の強化等、わが国産業のライフラ インとしての港湾の災害・危機対応力を強化し、産業・物流基盤の安全性を確保します。更に、港湾における感染症に係る水際対策に引き続き万 全を期します。
- 経済・産業を支える道路ネットワークの整 備
感染症等による社会経済情勢の変化にも対応し、経済成長を支えるとともに、地域活性化に向けた環境整備や迅速かつ円滑な物流の実現等を図るため、全国的な高速交通ネットワークである高規格道路について、大都市圏における三大都市圏環状道路の整備や地方部におけるミッシングリンク解消等を推進することに加え、空港、港湾等の物流拠点へのアクセスの強化を推進します。
- 通学路等の安全確保
2019 年 5 月には滋賀県大津市で保育園児の列に車が衝突し、園児二人が亡くなり、2021 年 6 月には千葉県八街市で下校中の小学生の列に車が衝突し、児童二人が亡くなるなど、痛ましい事故が相次いで発生しています。
このため、ボランティアの方々とも連携しつつ、生活道路は幹線道路と機能分化させ、通学路を含めた点検やビッグデータの活用による効果的な取組みや、速度規制と物理的デバイスを組み合わせた「ゾーン 30 プラス」等の生活道路等の対策を推進します。
- 高齢者に対する交通安全対策
近年、交通事故死者数は減少を続ける反面、 いまだ多くの方が交通事故によって命を落とし ています。その半数は高齢者となっております。高齢者等への交通安全教育などの交通安全対策、高齢者の移動手段の確保、高齢運転者の交通事 故防止に資する自動ブレーキなど一定の安全運 転支援機能を備えた車(サポカーS)の普及、自動運転による移動サービスの社会実装を推進す ることにより、道路交通の安全と円滑を確保し、誰もが安全・安心に暮らすことができる社会の 実現を目指します。また、自動車事故被害者救 済対策の充実を図ります。
- 総合的な交通安全対策
高度道路交通システム(ITS)の推進による安全性を高めるための安全運転支援システムの実 現や、交通事故が起こりにくい街づくり、通学 路や園児等の移動経路における交通安全の確保、事故に遭っても被害が最小限に抑えられる車の 開発、自転車への対策、バス等の公共交通の安 全性向上、踏切対策、高速道路の逆走防止対策 など、総合的な交通安全対策を推進します。
また、軽井沢町スキーバス事故を踏まえた再発防止策を着実に実施します。
公共交通の安全を図るため、運輸事業者の安全管理体制の構築状況を国が確認する運輸安全マネジメント制度等を推進します。
- 緑や水を活かした都市空間の形成の推進
感染症への対応や遊具の点検など安心安全な公園整備に加え、Park-PFI 制度を活用した都市公園の整備や、市民緑地認定制度の活用など民間活力を最大限活用した緑とオープンスペースの整備・管理を進めるとともに、自然環境の有する多様な機能の活用によって持続可能で魅力ある地域づくりを進めるグリーンインフラの取組みを推進します。また、景観まちづくりや、ガーデンツーリズムの取組みを進めるとともに、2027 年国際園芸博覧会の準備に取り組みます。更に、火災で焼失した首里城の復元に向けた取組みを推進します。
- 下水道の ICT、強靱化、グリーン化の推進持続可能な下水道事業運営に向け、ICT イノベーションやデジタルトランスフォーメーショ
ン等による運営の最適化・高度化、効率的なマネジメントを推進し、併せて関連産業の生産性向上や発展にも寄与します。また、下水道施設の更新等に合わせた耐震化・耐水化、雨水対策施設の増強といった強靱化に加え、省エネ化、資源・エネルギー有効利用による創エネ等を推進します。
- 熊本地震からの復旧・復興
2016 年に発生した熊本地震により被災した地域の復旧・復興については、道路、鉄道等の基幹インフラの整備、熊本空港ターミナルビルの再建に関するコンセッション方式の活用や被災地の住宅再建・宅地の復旧等に対する支援を着実に推進します。また、熊本地震の教訓を受け、耐震強化岸壁の整備を進めるとともに、非常災害時においては国による港湾施設の管理や海上からの支援を円滑に進めます。
- 自動車保有関係手続きの利便性向上
自動車保有関係手続きの利便性向上のため、ワンストップ化の充実・拡充に向けた取組みを実施するとともに、自動車検査証の電子化、手数料等のキャッシュレス納付などのデジタル化を推進します。
- 次世代自動車世界最速普及とモーダルシフト
エコカー減税等により、2030 年までに乗用車新車販売に占める次世代自動車(EV、FCV、PHEV、HV 等)の割合を 5 割~7 割にすること、2035 年までに乗用車新車販売に占める電動車(EV、FCV、PHEV、HV)の割合を 100%にすることを目指します。
また、鉄道、船舶等による物資の流通の促進、MaaS の社会実装や地域交通ネットワークの再編等を通じた公共交通機関やグリーンスローモビリティの活用による利用者の利便性の増進、歩道及び自転車道の整備等により、モーダルシフト(自動車から温室効果ガス排出量がより少ない交通手段への転換)を促進します。
- ZEH/ZEB の普及拡大
2030 年度以降新築される住宅・建築物について、ZEH/ZEB レベルの省エネ性能の確保を目指し、ZEH/ZEB の実証や更なる普及拡大に向けた支援等を講じるなど、住宅・建築物の省エネルギー対策を推進します。
- 国産木材利用の拡大
国産材需要の約半分を占める住宅分野において、工務店、林業関係者等の連携による国産材を活用した住宅づくりや木材の安定的な確保に向けた支援を推進します。また、需要拡大対策として、非住宅や中高層建築物への CLT(直交集成板)を含めた木材の利用拡大の促進や設計、施工を担う建築士や大工技能者の育成を進めます。
加えて、耐火木材などの新たな木材製品・部材の開発・普及や、「木材利用促進法」による公共建築物(学校など)における木材利用の徹底と支援、公共土木分野において国産材の利用等を積極的に促進します。
- わが国建設企業等の海外における受注の確保・拡大
海外プロジェクトの推進、建設産業の海外展開の促進のため、トップセールスや情報収集・発信、ビジネスマッチング、人材育成、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の活用を通じて、わが国建設企業等の海外における受注の確保・拡大を図るとともに、わが国の優れた土木・建築技術、交通システム、都市インフラ、水ビジネス、防災技術等の海外展開を図り、世界に貢献します。また、インフラ海外展開を支える中堅・中小企業の海外展開支援策を強化します。
- PPP/PFI の推進
PPP/PFI を積極的に推進し、公共分野における民間の力を更に活用し、地域の活性化を進め ます。そのため、3 年前倒しで達成した事業規模目標(2013 年度から 2022 年度で 21 兆円)に代わる新たな目標を設定します。また、空港、水 道、下水道、道路のコンセッション(民間による 運営)事業や地方公共団体における導入促進な ど、取組みを加速化し、地域における民間事業 者の事業機会の創出や効率的な社会資本の運営、サービスの向上を図ります。
- 「グリーンインフラ技術」への投資
厳しい気候に耐え得る「土木・建築技術」や「農林水産技術」の研究開発、農地や牧地にとどまらず河川流域全体や市街地全体を再設計する「グリーンインフラ技術」に投資します。
- 郵政事業の更なる発展、ユニバーサルサー ビスの確保、地域住民への利便性の向上
少子高齢化・都市への人口集中等の中で、郵便局が地域に貢献し、地方にあって地域金融機関や自治体業務の補完等地域住民サービスに資するため 、マイナンバーカードの積極的有効活用を図るとともに DX・データ活用の推進と地域産業との新たな価値創造を振興することにより郵政事業の有用性を高めることで、郵政グループ一体となり郵便局ネットワークの維持とユニバーサルサービスの安定的提供の確保を図ります。最も住民に身近な金融機関であるゆうちょ銀行・かんぽ生命の限度額、新規業務等については、利用者利便の観点から、更なる見直しを検討します。郵便に対する国際機関におけるわが国のプレゼンスを高めることにより、アジアを中心とした国々に対する協力や連携などによって日本型郵便インフラシステムの国際展開を支援します。
防災・減災・国土強靱化
- G 空間プロジェクトによる資源確保と海の 防災システム高度化の促進
沖合の海底プレートの移動や津波の高さを高 精度で常時監視するシステムを開発することで、地震・津波を早期に検知する技術の高度化等も 図り、防災・減災に役立てます。
- 防災・減災・国土強靱化、復旧・復興、再 度災害防止等の推進
あらゆる自然災害等から国民の生命と財産を守るべく、国連「仙台防災枠組 2015-2030」に基づき、災害リスク削減への投資により事前防災・減災を進めるとともに、改良復旧の積極的な活用など迅速かつより良い復旧・復興、再度災害防止等を実施します。そのため、水害・土砂災害対策の推進、インフラの老朽化対策や耐震化の加速、緊急輸送ルート等のリダンダンシー確保、避難路・施設や救援体制の整備、漂流・漂着流木の迅速な処理、観測・情報伝達体制強化、防災教育等の対策を推進します。
- 国土強靱化の推進
首都機能等の維持・強化及び分散を図るとともに、日本海国土軸など多軸型国土の形成と物流ネットワークの複線化、支援物資物流の円滑化を進め、国土全体の強靱化を図ります。また、国土強靱化の取組みを地域経済の中長期的発展の呼び水とするとともに、雇用を創出します。更に、国土強靱化の推進を通じた国際貢献を図ります。特に、国土強靱化基本法に基づき 2018年 12 月に見直しを行った「国土強靱化基本計画」の取組みを推進します。また、BCP 策定や防災・減災投資等の民間企業の自主的な防災・減災対 策を加速させるため、予算や税制等で迅速に後 押しします。
- 鉄道の災害復旧の推進
集中豪雨、地震、台風などの自然災害は、鉄道にも甚大な被害を及ぼしています。鉄道は生活や経済活動に欠かせない交通インフラであることから、改正鉄道軌道整備法を活用し、大規模な災害を受けた鉄道の災害復旧を推進します。
- インフラ老朽化対策等の推進
老朽化対策等に予算を重点化しメンテナンスサイクルを構築するとともに、予防保全の取組みや新技術の開発・導入等によるトータルコストの縮減・平準化を図りつつ、老朽化する橋梁等の道路施設、港湾施設、河川管理施設、下水道等の的確な点検・診断、修繕・更新をすることにより、安全と安心の確保を促進して国民の生命と財産を守ります。
- TEC-FORCE の体制・機能拡充等による災害復旧支援の加速化
東日本大震災の際は、東北地方整備局の「くしの歯」作戦による緊急輸送道路の啓開・復旧、全国からの TEC-FORCE の派遣等による災害復旧の円滑化等、地方出先機関が大きな役割を果たしました。このような国の地方機関について、特定広域連合へ移管することなく災害対応力の一層の強化を図るとともに、地域に密接な事業は地方公共団体、基幹的・広域的な事業は国が行う等、適切な役割分担を行います。また、南海トラフ巨大地震等の大規模災害時においても的確な被災自治体支援ができるよう、地方公共団体との連携や、デジタル技術の活用も含め TEC- FORCE の体制・機能の拡充・強化を図ります。
- 大規模災害に備えた体制等の強化・拡充
災害に備え、住民自らの行動に結びつく水災害情報提供の高度化を図ります。大規模災害時に緊急通行車両等の通行が確保されるよう、迅速に道路啓開等を行うため、道路管理者の人員体制や資機材の充実など、体制の強化を図ります。大規模災害時に緊急物資輸送船等の航行が確保されるよう、航路監視の強化を図るとともに、航路啓開等を実施する作業船を維持するなど、啓開体制の強化を図ります。更に、「津波対策の推進に関する法律」に沿い、津波防災への意識向上のため、訓練を推進するとともに「世界津波の日」の理念を全世界に展開させます。
- 流域治水の推進等による水災害対策の加速化
国連・世銀主催の水のハイレベルパネルで提言されているように、水防災へ投資等を進めます。地球温暖化により世界中で凶暴化する豪雨災害から国民の生命・財産を死守するため、気候変動を見据えた水災害対策を加速化し、ハード・ソフト一体の「流域治水」の取組みを本格的に実践します。全国の流域治水プロジェクトの推進、河川・砂防・下水道事業等の水害・土砂災害対策の加速、利水ダムを含む既存ダムやため池の洪水調節機能の強化、雨水貯留浸透施設の整備等を進めるほか、水害リスクマップの整備等水害リスク情報の充実を推進します。
- 大規模地震に備えたインフラ整備
東日本大震災の教訓を踏まえ、大規模地震災害に備えるため、公共交通インフラ等をはじめ住宅・建築物の耐震化や密集市街地の解消、地下空間等の防災対策の推進、広域的な基幹ネットワークの整備・複線化、気候変動の影響を踏まえた津波・高潮対策のための避難路・津波避難施設・海岸堤防等の整備を進めます。
- 災害に強いまちづくりの推進
基幹的広域防災拠点の整備及び運用体制の構 築や気象、地震・火山監視機能の強化、防災気象情報の提供及び地域における利活用の促進など、災害に強いまちづくりを推進するため総合的な対策を推進します。まちづくりにおいて防災・減災を主流化し、災害リスクを踏まえた危険エリアでの新規立地の抑制や移転の促進、居住エリアの安全性強化に取り組みます。災害発生時の早期かつ的確な復旧・復興を実現するため、地方公共団体による事前復興まちづくり計画策定等の復興事前準備の取組みを推進します。
- 災害復旧支援による災害防止対策の強化
令和 2 年 7 月豪雨、熊本地震、北海道胆振東部地震など、頻発・大規模化する災害や、道路法・河川法改正等を踏まえ、災害復旧事業等の権限代行制度による地方公共団体の支援を推進するとともに、地域防災力の強化やインフラ老朽化対策の推進、交通連携の推進等のため、地方公共団体が実施する治水事業、道路事業等において、計画的・集中的に支援を実施する個別補助制度の創設・拡充を推進します。
- 豪雪対策の強化
平年を大きく超える豪雪に対しては市町村に除雪費を臨時に補助する制度を活用するとともに、雪害・凍雪害対策および地域の孤立化を防ぐ緊急防災公共事業を推進します。また、除雪時の死亡事故ゼロに向けた安全確保対策に取り組みます。
- 盛土による災害防止対策の強化
2021 年 7 月 1 日からの大雨による静岡県熱海 市の土石流災害を踏まえ、盛土による災害防止 に向けた総点検を実施し、危険箇所への対策や 安全性確保のために必要な対応に取り組みます。
- 避難経路等のバリアフリー化や分かりやすい情報提供の推進
地震、津波等の災害が発生した際に情報を入 手しやすくし、災害時要援護者である高齢者、 障害者、子供、妊産婦等が安全・安心に避難できるよう、避難経路等のバリアフリー化を推進し ます。特に、視覚障害者や聴覚障害者等の情報 入手に困難を抱える方々に対し、様々な障害特 性に配慮した文字、音声、点字、記号、筆談、手話、録音、光、振動等の多様なコミュニケーショ ン手段による情報提供、津波フラッグの普及を 推進するほか、周囲の状況や緊急性、情報の量 等に応じたわかりやすい情報提供を推進します。
- 無電柱化の推進
「無電柱化の推進に関する法律」や「防災・減災、国土強靱化のための 5 か年加速化対策」に基づき、電柱・電線が無い状態が標準であるとの認識のもと、新たな無電柱化推進計画(2021 年 5 月策定)に定めた約 4,000km について無電柱化を推進します。また、緊急輸送道路等のほか、幅員が著しく狭い歩道等も対象とした道路上の新設電柱の占用禁止を行うとともに、沿道区域においても届出・勧告制度の活用により、電柱の削減を加速します。
- 都市防災の推進
特に人口が密集している三大都市圏をはじめとする大都市の機能(政府機能含む)を守るため、帰宅困難者対策、木造住宅密集地域における不燃化・耐震化、避難地・防災拠点となる防災公園の確保、コンビナート対策、宅地や港湾施設の耐震化、宅地等の液状化対策、空港施設の防災対策、上下水道の老朽化対策や耐震化等のライフラインの防災対策を進めるとともに、集中豪雨に備えて河川の改修や地下調節池及び下水道を整備し、排水施設の効果的な整備を進めます。上部空間の利用等により高速道路の老朽化対策と民間都市開発を一体的に行います。
- 空港・港湾の防災対策
旅客や貨物の交流拠点となる空港や、産業や物流機能が集積する港湾における高潮対策を進めるとともに、大規模災害が発生した場合にも空港機能及び港湾機能を維持するため空港 BCP や港湾 BCP について、昨今の災害を踏まえた充実化を進めます。
- 地震・火山・集中豪雨等の自然災害に対す る強靱な社会を構築するための研究開発の推進地震や火山噴火、集中豪雨・土砂災害をはじめ、近年増加する激甚かつ広範囲に及ぶ自然災害から国民の生命と財産を守るため、防災・減災対策を強化するとともに、被害を最小化し早期に回復する社会を構築することを目指した研究開発・技術開発を推進します。具体的には、洪水時の浸水状況の迅速な把握のためのデジタル技術の活用や、排水ポンプの機能向上等による内水氾濫対策の強化、火山噴火リアルタイムハザードマップの精度向上等を推進します。
- 線状降水帯等の自然災害に関する観測・予測・分析の向上
線状降水帯の予測精度向上と予測情報の発信のため、水蒸気観測及びスーパーコンピューターの強化や技術開発を前倒しで早急に進めるとともに、次期気象衛星等の最新技術を導入します。また、気象防災アドバイザーの拡充、データ利活用等による地域防災力と生産性の向上に取り組むとともに、気象庁・気象台の体制強化を推進します。更に、自然災害に関する観測・予測・分析の体制充実や技術開発を推進することにより、水域・流域一体での洪水予測による予測精度向上や、支川等の予測情報の提供等の拡充を図り、安全・安心な地域社会を構築することを目指します。
- 防災・減災、国土強靱化のための 5 か年加速化対策の実施
度重なる災害やインフラ老朽化等の国家の危 機に打ち勝ち、国民の生命・財産を守り、国家・社会の重要な機能を維持するため、「激甚化する 風水害や切迫する大規模地震等への対策」、「予 防保全型インフラメンテナンスへの転換に向け た老朽化対策の加速」、「国土強靱化に関する施 策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進」の各分野について、取組みの更なる加速化・深 化を図り、5 か年に追加的に必要となる事業規模等を定めた「防災・減災、国土強靱化のための5 か年加速化対策」を着実かつ迅速に実施します。
- 国民保護関連施策の強化
地下シェルター整備等の国民保護関連施策の強化に加えて、公共・民間の既存の地下空間を活用して緊急避難場所を確保するための新たな取組みを早急に進めるとともに、国民保護にも大きな効果を発揮する国土強靱化の取組みを加速します。
- 地震・津波、水害・土砂災害、火山噴火な どの自然災害に対する強靱な社会を構築するための研究開発の推進
地震・津波、水害・土砂災害、火山噴火などの大規模な自然災害から国民の生命と財産を守るため、防災・減災対策を強化するとともに、被害を最小化し早期に回復する社会を構築することを目指した研究開発を推進します。
切迫性の高い南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの巨大災害対策、海底地形調査に基づく津波被害の最小化対策、御嶽山や草津白根山などの噴火を踏まえた火山対策を含め、地震・津波、火山噴火をはじめとした自然災害に対する全国的な観測体制の充実・強化を図ることで観測・予測・対策技術の研究開発を推進するとともに、首都直下地震などへの対策を含め、組織を越えた防災情報の相互流通を担う SIP4D を核とした情報共有システムについて都道府県・市町村への展開を図る他、人文・社会科学と自然科学の融合による「総合知」やデジタル技術等を活用して防災分野におけるデジタルトランスフォーメーションの実現に資する取組みを進めるなど、安全・安心な社会を構築することを目指します。更に、発災時に被害を最小化する技術や発災後に迅速な復旧・復興を可能とするような防災科学技術の推進を図るなど、国土強靱化の基盤を強化します。
- 土砂災害・豪雨災害に対する防災力強化
2014 年 8 月に広島県で発生した土砂災害を受けて改正された土砂災害防止法を的確に運用するとともに、土砂災害防止施設の整備を推進します。また、2015 年の通常国会で成立した改正水防法・下水道法を踏まえ、想定しうる最大規模の洪水・内水・高潮に対する避難体制等を充実強化させるとともに、河川改修やダムを活用した治水機能の強化、下水道による都市の浸水対策を緊急的に推進し、特にダムやスーパー堤防は地元の意見を踏まえながら建設の促進を図ります。
更に、平成 27 年 9 月関東・東北豪雨及び 2016年 8 月に北海道・東北地方を襲った一連の台風による被害の教訓を受けて、2017 年の通常国会で水防法等を改正し、国による権限代行制度の創設や要配慮者利用施設における避難確保計画の作成等の義務化等を図りました。これらの活用などを通じて、中小河川も含めた総合的な防災・減災対策を強力に推進します。
平成 30 年 7 月豪雨の教訓を受けて、都道府県管理河川を含めて、河川内の樹木伐採・土砂掘削等を継続的に実施するなど、適切な維持管理を推進します。
- 地震・火山・ゲリラ豪雨等の自然災害に対 する強靱な社会を構築するための研究開発の推進
火山噴火やゲリラ豪雨・土砂災害をはじめ、近年増加する突発的・局所的自然災害から国民の生命と財産を守るため、防災・減災対策を強化するとともに、被害を最小化し早期に回復する社会を構築することを目指した研究開発を推進します。また、防災分野においても、Society5.0 の実現に向け、新技術を活用した河川管理の高度化等を図ります。
御嶽山噴火や草津白根山噴火を踏まえた火山対策を含め、地震・火山・津波をはじめとした自然災害に対する観測体制の充実を図ることで、観測・分析・予測技術の開発を推進するとともに、ゲリラ豪雨や竜巻等の自然災害に対する早期予測システムを確立し、地域の特性に合わせて全国展開することで安全・安心な地域社会を構築することを目指します。
更に、発災時に被害を最小化する技術や発災後に復旧・復興を可能とするような防災科学技術の推進を図るなど、国土強靱化の基盤を強化します。
- 防災・減災、国土強靱化のための 5 か年加 速化対策を含む国土強靱化の推進
大規模自然災害等への対応として、被災の都度、復旧を図る事後対策ではなく、平時から備えを進めることが重要であるため、防災・減災、国土強靱化の取組みを強力に進めています。
2018 年に西日本豪雨等の災害が相次いだことを踏まえ実施した 3 か年緊急対策に続き、2021 年度より、風水害や大規模地震等への対策、老朽化対策、デジタル化の推進の 3 分野について、対策ごとに中長期の目標を定め、5 年間で重点的・集中的に対策を実施する「防災・減災、国土強靱化のための 5 か年加速化対策」により、取組みの加速化・深化を図ることとしています。
近年、毎年のように災害が発生する中、国家百年の大計として、災害に屈しない国土づくりを進めることが必要です。引き続き、国土強靱化を中長期的かつ明確な見通しのもと計画的に実施するために、必要・十分な予算を継続的に確保するとともに、5 か年加速化対策を含む国土強靱化の取組みを着実かつ迅速に実施します。
- G 空間防災システムとL アラートの連携推 進等
G 空間情報(地理空間情報)を活用した安全で災害に強い社会を実現するため、G 空間防災システムの普及展開を図るとともに、自治体等が発する災害情報を多様なメディアに一斉同報するための共通基盤である L アラート(災害情報共有システム)の一層の活用や地図化を推進し、住民等への情報伝達の充実を図ります。
また、災害時において常に信頼できる対応・対策が可能となるよう、防災組織の充実を図るとともに、災害事象の監視体制の強化と J アラート(全国瞬時警報システム)、L アラート(災害情報共有システム)をはじめとした防災情報提供手段の多様化・高度化を図ります。
- 大規模災害や土砂災害、噴火災害等に備え た地域の防災力の充実・強化
南海トラフ地震などの大規模災害やテロ災害に備え、緊急消防援助隊の大幅な増隊や消防防災ヘリなど常備消防力の充実強化を図るとともに、産業・エネルギー基盤の被害軽減や大規模な津波・風水害等への対応のため、必要な車両・装備等を整備します。また、「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」を踏まえ、消防団について、団員の処遇改善を進めるとともに、団活動に対する社会的な理解を深めていくことで、若者(学生)・女性等の入団を促進します。また、資機材、車両、教材等の整備や訓練の実施により、女性や若者が活躍する場と機会を広げていくとともに、自主防災組織等についてその育成及び消防団と連携した教育訓練を実施し、地域の災害対応能力の向上を図ります。
更に、災害対応の標準化を推進し、広域防災教育訓練施設の整備をはじめとして防災に携わる多様な人材の教育訓練の場の充実を図るとともに、平時においても利用できる災害時用資機材の地域での活用も検討します。更に、火山における登山者などの安全を確保するため、火山防災情報の収集・伝達手段や、地方公共団体における退避壕等の整備を促進し、救助・情報収集に必要な装備等を充実・強化します。「緊急防災・減災事業債」及び「緊急自然災害防止対策事業債」により、地方公共団体による住民の避難、行政・社会機能の維持及び災害に強いまちづくりを積極的に進めます。
- 情報インフラ整備の強化と災害時即応能力の促進
平成 30 年 7 月豪雨、北海道胆振東部地震、令和 2 年 7 月豪雨など、近年頻発している災害においては、住民の情報収集手段として、テレビやラジオといった放送メディアの重要性が改めて認識されました。災害時に住民の生命・財産の確保に必要な情報を確実かつ安定的に提供するためには、放送ネットワークの強靱化が不可欠です。そこで、具体的には、災害時における住民への情報伝達手段として特に大きな役割を果たすラジオ放送について、引き続き放送ネットワークの災害対策に対する支援を集中的に行っていきます。また、ケーブルテレビにおいては、災害時のケーブルの断線と長時間の停電がサービス停止の主な要因となることから、地域のケーブルテレビ事業者におけるネットワークの複線化、光化に対する支援を行っていきます。近年特に激甚化・広域化する自然災害においても国民の安心・安全をより確実に確保するため、防災関係機関が相互に連携して災害対処に当たることが必要です。このため、組織間の壁を越えた高度な情報共有を可能とする新たな無線通信システム(「公共安全 LTE」)を活用して、2022 年度から円滑な災害対応体制を確立していきます。
- 大規模テロや NBC 災害への対応に万全を期すための消防防災体制の充実強化
2025 年大阪・関西万博等の大規模イベント開催時における大規模テロや NBC 災害への対応に万全を期すため、特殊災害に対応するための消防車両や資機材の整備を進めるとともに、大規模テロや NBC 災害に対処するための専門教育・訓練の充実強化を図り、消防防災体制の充実強化を進めます。
- 女性消防吏員や女性消防団員等の増加などの活躍推進
女性の参画が十分に進んでいない消防の分野において、仕事と家庭の両立支援等による女性が働きやすい環境の整備や、業務の魅力に関する PR を行うことなどにより、全消防吏員に占める女性消防吏員の割合を 2026 年度当初までに 5.0%に増加させるなど、女性の活躍推進に取り組みます。また消防団について、充実強化大会の開催等により、意識啓発を実施することと併せ、女性団員等の加入を促進し、女性が活躍する場と機会を広げます。
金融
- 国民の安定的な資産形成の推進と顧客本位の業務運営の徹底
国民が生涯にわたり安定的な資産形成を行うため、つみたて NISA を更に普及するとともに、ICT を活用した金融経済教育の充実等金融リテラシー向上のための施策を推進します。
また、高度な専門性と職業倫理を保持し、顧客が分かりやすい説明を行うなど、金融事業者のサービスが顧客本位で提供されるよう促します。
更に、少子高齢化の進展を踏まえ、社会保険のみならず、それを補完する民間保険も含めた安心・安全なセーフティーネットの構築を促します。
- わが国金融市場の魅力向上と国際金融センターの実現
わが国の金融市場の魅力向上に向けた取組みを加速します。
わが国が民主主義・法治主義に支えられた安心・安全な拠点としてアジア・世界の国際金融センターの一つとしてより一層機能するため、銀証ファイアーウォールの見直しや成長資金の円滑な供給のための諸施策を進めます。
海外事業者や高度外国人材のビジネス環境を改善するほか、グリーンボンド等への資金をわが国に呼び込む「グリーン国際金融センター」構想を前進させます。
- 総合取引所の機能の強化等
総合取引所の機能性を更に高めるため、エネルギー等の先物商品の取り扱いを実現させるとともにその活性化に向け、金融所得課税の更なる一体化について総合取引所における個人投資家の取引状況も踏まえ、租税回避行為の防止策も含め早期に検討します。日本取引所グループの 2022 年の市場区分変更をスムーズに行うことで、わが国がより魅力ある市場となるようにサポートします。また、上場企業の中長期的な価値の向上につながるよう、非財務情報開示の充実が図られるよう求めます。
- 企業統治改革の推進
企業を取り巻く環境が大きく変わっている状況にあっても、各企業が課題を認識し変化を先取りするため、改訂されたコーポレートガバナンス・コードに基づいて企業経営の透明性を更に高めます。また、中核人材の多様性、サステナビリティといった新しい経営課題への対応も促し、企業の持続的成長を実現します。
また、車の両輪であるスチュワードシップ・コードの改訂でも求めている機関投資家等との建設的な対話を促します。
- サステナビリティに関する情報開示の取組みの支援
国際的に ESG への関心が高まる中、わが国の企業価値の評価を高めるため、各企業の取組みに関する情報開示の拡大・充実を促します。また、ESG に関する国際基準策定に向けた議論にも積極的に参画します。
非財務情報の開示の充実に向けてそのあり方に検討を加えるとともに、金融機関が企業と積極的な対話を行い、それに基づく投融資が行われるよう支援します。
- 金融におけるデジタル化対応とイノベーション加速
キャッシュレス決済の増加や、決済システム の高度化・効率化、暗号技術やブロックチェー ン技術等の新しいデジタル技術など、金融分野 でもデジタル社会に対応した技術革新を支援し、新たな金融サービスの創出を促進します。
決済法制の横断化と柔構造化に向けて新たな法律を成立させましたが、こうした決済システムの高度化・効率化に向けた取組みを引き続き後押しするとともに、決済の安定性確保の観点から、決済システムに接続する事業者を適切にモニタリングします。
また、金融イノベーション加速化のため、デジタル化への対応のあり方を検討し、利用者が
適切に保護されるモニタリングの体制整備を進めるとともに、今後も金融機関とフィンテック企業による革新的なサービスが利用者に活用されるよう、政府、金融機関、フィンテック企業に連携を働きかけます。
更に、二次元コードを用いた納税や、電子記録債権の普及等、社会全体で金融インフラのデジタル化を進めます。
- 金融庁検査と日本銀行考査の一体的運用
金融機関の負担軽減や、モニタリングの高度化が要請される状況の中で金融庁、日本銀行の限られたリソースを効果的に活用するという観点から、「最後の貸し手」としての日銀の独立性を尊重しつつ、金融庁検査と日本銀行考査の一体化にも近しい運用による質の高いモニタリングを実施します。
- 中小企業金融の充実と地域金融の機能強化
新型コロナウイルス感染症への対応や、コロ ナ後の地域企業の基盤を強化するためにも地域 金融機関が自らの経営改革、経営強化に取り組 む必要があります。これまでも業務規制の見直 しやガバナンス機能の強化に関する提言を行い、政府も制度改正を行ってきましたが、地域金融 機関が、最近の制度見直しも活用し、販路拡大 支援など新たなサービスを通じて地域経済に貢 献できるように後押しします。
また、新事業による収益の多様化に加え、ガバナンス強化や合併・経営統合、非競争分野での共同化による経営基盤の強化を後押しし、コロナ後の地域経済の回復・再生を支えます。
- CBDC
中央銀行デジタル通貨(CBDC)については、デジタル社会に相応しい決済システムの構築、わが国通貨主権の確保、安定的な国際通貨体制の維持という観点から、信用創造、民間のキャッシュレス高度化への取組み、物価安定や金融システム安定への影響、セキュリティ面への対応といった点に留意しつつ、迅速に実証実験を進めます。その際、CBDC の実証実験や制度設計にあたっては米国や欧州等、わが国と価値観を共有する国との連携を密にします。
- マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の強化
北朝鮮の弾道ミサイル発射やアフガニスタン情勢の急展開など、テロや大量破壊兵器の脅威が増しています。国際的な協調の下、その資金源を確実に遮断し、国民の安全・安心を確保するため、マネー・ローンダリング(マネロン)やテロリストへの資金供与、大量破壊兵器の拡散に寄与する資金の供与(拡散金融)対策の強化に取り組みます。
財政
- 危機に対応する財政余力の確保
新型コロナウイルス感染症に国民一丸となって打ち克つため、状況に応じて必要となる対応に躊躇なく取り組みます。数年に一度の頻度で襲ってくる危機に対して、機動的に対応できる財政余力を確保できるよう、中長期にわたる財政秩序を回復し、財政の体質改善を図ります。
- 経済成長なくして財政健全化なし
高齢化・人口減少といった構造的課題を乗り 越えるため、「経済再生なくして財政健全化なし」の考えに立ち、経済の持続的成長を実現して国 民の将来不安を軽減し、消費や投資が更に喚起 される好循環を実現します。
- 次代を見据えた財政構造改革
わが国財政は少子高齢化・人口減少といった構造的課題により受益と負担のバランスが崩れた結果債務残高が累積し、2020 年度の国・地方の公債等残高は GDP の 2 倍を超えています。
中長期にわたる財政秩序を回復し財政の体質改善を図ることで、危機発生時の財政の対応余力を確保し、国民の不安を取り除き、国民や企業が安心して消費や投資活動をできるようにしなければなりません。
そのため、引き続き、2025 年度のプライマリーバランス黒字化を達成し、債務残高対GDP 比を安定的に低減していくとの財政健全化目標を堅持するとともに、目安に沿った歳出改革努力を進めてまいります。
- 安全通貨「円」の信認維持に向けて
経常収支の黒字、対外資産残高、政治の安定
といった日本経済のファンダメンタルズ等により安全通貨といわれる「円」ですが、各国の金利差縮小や国際収支の構造変化による円買いニーズの減退、わが国の人口減少に伴う経済成長力の鈍化などによる中長期的な円安トレンドなど取り巻く環境が変化しています。
主要通貨間の相対評価の世界で、引き続き安全通貨「円」であり続けるためにも、信認の基盤である経済成長力の維持、経済財政に関する中長期的見通しと着実な対応、市場流動性の確保などに取り組んでいきます。
- 経済社会の構造変化に対応した税制改革 等
少子高齢化、働き方・ライフコースの多様化、デジタル化・グローバル化を背景とした新たな経済活動の拡大など、感染症の影響もあり、経済社会の構造変化が加速しています。このような構造変化を踏まえ、コロナ後に向けた経済構造の転換・好循環を実現するとともに、応能負担の強化等による再分配機能の向上を図りつつ経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を構築する観点から、税体系全般の見直し等を進めます。
- 経済社会の構造変化に対応した個人所得課税
個人所得課税については、働き方の多様化等の経済社会の構造変化への対応や応能負担の強化による所得再分配機能の回復の観点から、これまでの改正の効果も見極めつつ、税制のあり方等の検討を行います。また、老後の生活に備えるための支援については、働き方によって有利・不利が生じない公平な税制の構築に向けて取り組みます。資産課税についても、機会の平等の確保に留意しながら、資産移転の時期に中立的な制度の構築に向け、検討を進めます。
- 経済の好循環を生み出す法人課税の措置
法人課税については、企業によるデジタル社会やグリーン社会などの実現に向けた取組みを強力に推進するとともに、コロナ禍を踏まえ、企業における新たな人材の確保及び人材育成の強化を促しつつ、第二の就職氷河期を生み出さないようにするための税制措置を講じてきました。これらの改革により、企業に対して投資拡大や雇用の維持・拡大等を促し、経済の好循環を確実なものとしていきます。
- 国際課税制度への対応
国際課税制度の再構築を進め、日本企業の健全な海外展開を支えるとともに、国際的な租税回避や脱税に対してより効果的に対応していきます。経済の電子化に伴う課税上の課題についても、引き続き国際的な議論を積極的にリードし、国際合意に則った制度の見直しを進めていきます。
- 地方の経済社会の変化を踏まえた安定的な地方税体系の構築
地方創生を推進するとともに、人口減少の深刻化や急速な高齢化をはじめ経済社会構造の変化が進む中、各地方公共団体が安定的に地域のコミュニティを支える行政サービスを提供するためには、持続可能な地方税財政基盤を確立していくことが重要です。そのため、地方税の充実確保を図るとともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築を進めます。
- 経済社会の変化を踏まえた納税環境の整備
経済社会のグローバル化や ICT 化の進展を踏まえ、適正・公平な課税の実現による、税に対する信頼の確保、社会全体のコスト削減、企業の生産性向上等の観点から、適切な所得等の把握のための環境整備、記帳水準の向上、税務手続の電子化等の促進など、制度及び執行体制の両面からの取組みを強化します。
2023 年 10 月に導入される消費税のインボイス方式について、円滑な制度移行のために万全の準備を進めます。事業者の方々には、引き続き制度の周知・広報や相談への丁寧な対応を徹底するとともに、特に中小事業者のバックオフィスの負担軽減に資する取組みを着実に実施していきます。更に、制度移行にともない、小規模事業者が一方的に不当な値引きなどを求められないよう、独禁法や下請法といった関係法令に基づいて適切に対処していきます。
また、マイナンバーを用いた年金を始めとする社会保障サービスの向上や所得課税の更なる適正化を図ります。特に税分野においては、確定申告に必要なデータをマイナポータルを通じて入手した上、申告データに自動で取り込める環境を整備することなどにより、あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会の実現を目指します。
併せて、政府 CIO(内閣情報通信政策監)は、政府全体の情報システムの安全性を NISC(内閣官房情報セキュリティーセンター)と連携しな がら監督するととともに、効率性を図り、より 信頼性と経済性の高いシステム構築に努めます。また、個人番号カードについては、民間事業者 も活用可能な将来性・拡張性に富んだ仕組みと するとともに、スマートフォンや生体認証の活 用の研究を行います。
民間人となった日本年金機構の職員が行っている年金保険料の徴収業務を公務員である国税庁の職員が行う、いわゆる歳入庁構想には反対です。
- 財政の単年度主義の弊害の是正
企業に長期的視点を求めることと同様、政府も、科学技術の振興、インフラ整備や経済安全保障などの国家課題に長期的・計画的に取り組みます。
- 財政投融資の積極的活用
未来の成長を生み出す民間投資を喚起するため、現下のゼロ金利環境を最大限に活かし、財政投融資を積極的に活用します。
子育て
- 全ての妊産婦、全ての子育て世帯への支援の拡充
少子化の克服、子供を産み育てやすい社会の実現のため、子供の視点に立って政策を推進する観点から、子供に関する様々な課題への対応に必要な機能を有する行政組織を創設するとともに、将来の子供たちに負担を先送りすることのないよう、安定的な財源を確保しつつ、全ての妊産婦、全ての子育て世帯への支援を拡充します。これまでも「3 歳から 5 歳までの幼児教育・保育の無償化」や、「高校授業料の実質無償化」が実現したところですが、更に財源を確保して、「待機児童の減少」「病児保育の拡充」「児童手当の強化」を目指します。
- 待機児童の解消に向けた取組みの加速化
できるだけ早く待機児童を解消し、女性の就業率の上昇に対応するため、「新子育て安心プラン」に基づき、4 年間で 14 万人分の保育の受け皿を整備するとともに、地域の特性に応じた支援、保育という仕事の魅力向上や処遇の改善を通じた保育士の確保、地域のあらゆる子育て資源の活用を柱とした取組みを推進し、保育を必要とする全ての子供たちが質の高い保育を受けられるようにします。
また、人口減少地域の保育のあり方、保育所 による地域の子育て支援、わいせつ行為を行っ た保育士の再登録の厳格化について検討します。
- 妊娠から子育てまで切れ目のない家族支援
次代を担う子供たちを育てる少子化対策は、 日本経済と社会保障全体の基盤であることから、2018 年に成立した「成育基本法」に基づく取組みを推進するとともに、次のような妊娠から子 育てまで切れ目のない支援を進めます。
・妊娠や不妊に関する知識の普及啓発
・不妊治療への保険適用、相談支援、仕事との両立支援等の不妊に悩む方に対する支援の充実・出産費用の実態を踏まえた出産育児一時金の増額に向けた検討
・産後の母親に対するケアの充実や、新生児から 3 歳まで発達段階に応じた訪問育児支援の充実
・3 歳から 5 歳まで全ての子供たちの幼稚園、保育園等の無償化、0 歳から 2 歳児も所得の低い世帯の無償化の着実な実施
・病児・病後児保育や一時預かり保育、地域子育て支援センター・ファミリーサポートセンターなどへの支援の拡充
・ベビーシッター・家政士の利用の支援
・子供の発育に影響を及ぼす感染症の予防啓発の充実や小児医療の充実など乳幼児の命を守る仕組みの構築
・ヤングケアラーへの支援の強化その他にも、
・パパママ教室を充実し、出産前に命の大切さや成長発達を学ぶ機会の提供
・男性の育児休業の取得促進など、男女ともに仕事と育児の両立がしやすい職場環境の整備
・経済的に様々な困難を抱えているひとり親家庭への支援
・仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進
・マザーズハローワークにおいてワークライフバランスに配慮したマッチングを行うなど、出産・子育て後の再就職を積極的に支援
などにより子育て支援を充実します。
- 切れ目のない家族支援の体制整備
どの地域であっても安心して子育て支援を受けることができるよう、必要な体制整備を進めていきます。
・妊娠期から子育て期にわたる総合的相談や支援を行うため、子育て世代包括支援センターと子ども家庭総合支援拠点とを一体的に活用した相談体制の整備と家庭・養育環境の支援の充実
・新・放課後子ども総合プランの推進等、放課後児童クラブの受け皿の拡充と質の確保
・居住地域で出産できるよう産科医療機関の確保を支援し、周産期医療ネットワークを整備・充実するなど出産環境の整備
・小児の救急医療体制の整備・拡充
・乳幼児健診を充実し、発達障害などを早期に発見できる体制の整備
- 児童虐待の早期発見のため、地域や社会に よる取組みの一層の加速化
無料化が実現した児童相談所全国共通ダイヤル 189 番の活用促進と利便性向上を図るとともに、SNS を活用した相談体制の構築に取り組みます。
また、児童虐待防止対策体制総合強化プラン(新プラン)に基づく児童相談所の職員の大幅な増員、処遇改善、医師・弁護士の配置支援の拡充、保護者支援プログラムの推進、児童相談所と警察・検察による司法面接の推進をはじめとした関係機関との連携強化等により児童相談所の体制を強化するとともに、中核市・特別区による児童相談所の設置に対する支援の拡充、一時保護所の受け皿確保や職員体制の強化など児童相談所がきめ細かく対応できる体制整備を進めます。加えて、児童相談所と市町村の間での情報共有システムの構築や DV 施策との連携強化、支援を必要とする妊婦への支援の強化などにより児童虐待について迅速・的確な対応を行 うなど児童虐待対応を抜本的に強化します。更 に体罰によらない子育てを推進するなど子供の 育ちを守り、虐待を防ぐための啓発活動を積極 的に展開するとともに、子供食堂など民間団体 と連携した子供の見守り体制の強化を進めます。アドボケイト制度などにより子供の意見表明を 支援し、子供の権利擁護を推進します。
- 虐待された子供たちにあたたかな支援を
児童養護施設等で育った子供たちの自立を可能にするために、18 歳以降の方を含め、住まいの確保や進学・就職の支援を充実させるとともに、子供たちが家庭的な雰囲気の中で生活し、多世代間の交流や地域交流ができるよう、児童養護施設等の小規模かつ地域分散化を推進するなど、社会的養育の充実・強化に取り組みます。また、専門的な職員の増員や配置基準の引上げなどを通じ、児童一人ひとりにきめ細かな対応ができるように取り組みます。
更に、里親家庭等への支援を拡充し、里親を開拓するなど、里親やファミリーホームへの委託や特別養子縁組を推進し、虐待した親や虐待された子供たちが再び笑顔を取り戻せるよう支援策を拡充します。
- 子供たちの夢を徹底的に支援するための教育費負担の軽減
家庭の経済状況にかかわらず、次代を担う全ての子供たちが共通のスタートラインに立ち、誰にでもチャンスがある社会を実現するため、各学校段階で教育費負担の軽減のための取組みを強化します。小学校就学前段階においては幼児教育・保育の無償化を着実に実施します。義務教育段階においても、就学援助に加え、家庭の経済状況に左右されることなく、国公私立を通じて、子供たちの意欲や能力に応じた学校選択が可能となるよう、私立小中学校児童生徒への授業料負担の軽減などに取り組みます。高等学校段階については、2020 年 4 月から、高等学校等就学支援金を拡充し、年収 590 万円未満世帯を対象とした私立高等学校授業料の実質無償化を実現するとともに、授業料以外の教育費を支援する高校生等奨学給付金の充実を図っていきます。
また、高校等専攻科について、実態を踏まえた教育費支援のあり方を検討します。
高等教育段階においては、国公私立大学など の授業料免除を充実するとともに、大学等奨学 金事業における「有利子から無利子へ」の流れ を加速するとともに、返還月額が卒業後の所得 に連動する「所得連動返還型奨学金制度」を導 入しました。更に、専門学校生も含め、新たな修 学支援制度に基づき授業料減免や給付型奨学金 を着実に実施するとともに、「卒業後拠出金方式」を検討します。また、博士課程学生へのフェロ ーシップ、ティーチング・アシスタント及びリ サーチ・アシスタントの充実など経済支援を検 討し、学生全員が安心して学べる環境を整備し ます。
- IT 利活用による子育て支援の推進
マイナポータルを活用した子育て関係手続の検索・オンライン申請を提供する「子育てワンストップサービス」について、オンライン申請に対応した子育て関係手続のサービスメニューや利用可能なスマートフォン機種を拡充するとともに、地方公共団体への普及と利活用を更に推進し、子育て世代の負担を軽減します。
また、行政や医療保険者が保有する子供の予 防接種や検診履歴などの健康情報を乳幼児期か ら学童期まで切れ目なく確認できる仕組みを構 築するとともに、予防接種や児童手当、保険、家 事サービスなどの妊娠から就学前までの官民の 様々なサービスが最適なタイミングで案内され、ボタン一つで申請できるサービスの実現を目指 します。
- 未来を担う子供の安心の確保のための環境づくり
子供の貧困、児童虐待、障害、重大ないじめな ど子供に関する様々な課題に総合的に対応する ため、年齢による切れ目や省庁間の縦割りを排 し、妊娠前から、妊娠・出産・新生児期・乳幼児期・学童期・思春期を通じ、子供の権利を保障 し、子供の視点に立って、各ライフステージに 応じて切れ目ない対応を図るとともに、就学時 等に格差を生じさせない等の教育と福祉の連携、子供の安全・安心の確保、関係部局横断的かつ 現場に至るまでのデータ・統計の充実・活用等 を行い、困難を抱える子供への支援等が抜け落 ちることのないよう、子供関連施策を担う新たな組織として「こども庁(仮称)」を創設します。
社会保障
- 革新的な医薬品・医療機器の実用化促進
再生医療、医療・介護ロボット、プログラム医療機器、バイオ新薬(バイオシミラーを含む)など、日本発の革新的医薬品・医療機器の研究開発や製造と普及を促進します。ドラッグ・ラグやデバイス・ラグについては、薬事承認の迅速化等に向けた取組みが奏功し、審査に必要な期間は海外と遜色のないレベルまで短縮されましたが、引き続き審査の迅速化に取り組むとともに、開発ラグ解消支援のためのレギュラトリ- サイエンス戦略相談等を行います。また、重篤な疾患に対して、画期性があり、極めて高い有効性を持ち、世界で先駆けて日本で早期開発・申請される医薬品・医療機器・再生医療等製品(先駆的医薬品等)や、小児用法用量設定など医療上充足されていないニーズを満たす医薬品等(特定用途医薬品等)について、速やかな患者アクセスを確保します。
- 革新的な医薬品・医療機器・再生医療等製 品の実用化促進
医薬品・医療機器等の革新性に対しては医療 保険で適切な評価を行うとともに、医薬品等開 発に関わる、DX、AI 等幅広い分野にわたる人材育成体制の整備を充実させます。PMDA における予算拡充とレギュラトリーサイエンスの充実に より、最先端の医薬品、医療機器及び医療技術 に係る評価法について世界に先駆けて提案でき ることを目指します。特に、新規モダリティな どに対応するため、民間企業、アカデミア、規制 当局における、その評価手法や技術の確立を目 指します。国際共同治験を推進することにより 世界同時開発を加速するとともに、日米欧等の 規制当局・産業界により構成される ICH 等の活動を通じて各種ガイドラインの国際調和を進め、欧米に比肩できるよう、世界第一級の審査・安 全対策を担う機関として PMDA の体制整備・拡充を目指します。加えて、日本で承認された革新 的医薬品等が速やかにアジア諸国等で受け入れ られる体制の構築を目指します。更に、革新的な新薬や医療技術等の実用化スピードを大幅に引き上げるため、日本医療研究開発機構(AMED)による一元的な研究管理や、研究と臨床の橋渡し、国際水準の質の高い臨床研究・治験が確実に実施される仕組みの構築等を行っていきます。AMED に基金を創設し体制を強化することで、複数年にわたって機動的に実施する産学官連携による研究開発を促進します。
- ビジネスクラスの介護の促進
利用者の様々なニーズに応える質の高い介護サービスの提供を新たな成長分野と捉え、公的仕組みでは十分に対応できないニーズ等に応える多様な民間サービスを民間保険の活用を含め支援します。
- 医療の国際展開の推進
わが国の医薬品・医療機器や医療サービスの 国際展開に向けて、他国における医師・看護師 等の人材育成、公的医療保険制度整備の支援、 民間保険の活用の促進、医療技術・サービス拠 点整備などの医療関連事業の展開を図るととも に、国際共同臨床研究・治験の推進、日本で承認された医薬品・医療機器について相手国での許 認可手続の簡素化等の取組みをより推進します。
また、アジアにおいて、相手国が高度な意欲あるアジアの介護人材を送り出し、また、日本側も安心して受け入れることのできる仕組み等を、技能実習制度を活用して、「アジア健康構想」の枠組みのもと、取り組んでまいります。
- 外国人患者の受入体制の整備
地域医療に支障を来さず、かつ、外国人患者が、安全・安心に日本の医療サービスを受けられるよう、医療通訳等の配置等、地域の医療関係者等の参画も得て、医療機関における外国人患者受入れ体制の充実を図るとともに、外国人旅行者が医療機関に関する情報をスムーズに得るための仕組みづくりを行います。
- 社会保障の充実
税や社会保険料を負担する国民の立場に立って、全ての世代の方々が安心できる持続可能な社会保障制度を構築し、次の世代へ引き継いで行きます。まずは、長年の課題である少子化対策を大きく前に進めるとともに、2022 年に団塊の世代が 75 歳以上になり始める中で、給付は高齢者中心、負担は現役中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、切れ目なく全ての世代を対象とするとともに、全ての世代が公平に支え合う「全世代型社会保障」への改革を更に前に進めていきます。
また、働き方に中立的な、充実したセーフティネットを整備していくため、働く方が誰でも加入できる「勤労者皆保険」の実現に向けて取り組みます。
- 若者も高齢者も安心できる年金制度の確立
年金制度を持続可能なものとし、若者の給付 水準の確保等を図るための制度改革に取り組み、若者も高齢者も安心できる年金制度を確立します。
2020 年に成立した年金改正法により、2022 年10 月から 101 人以上、2024 年 10 月から 51 人以上の企業で働く短時間労働者にも、被用者保険が適用され、保障が充実されることになりました。施行に向けて、着実に準備を進めます。また、年金改正法では、60~64 歳の在職老齢年金制度の支給停止基準額の緩和や、在職定時改定の導入、受給開始時期の選択肢の拡大を行い、高齢期の経済基盤の充実を図りました。被用者保険の更なる適用拡大や、基礎年金給付水準の確保等について、引き続き検討を進めます。
企業年金・個人年金についても、2020 年に成立した年金改正法により加入可能年齢を引き上げるとともに、拠出限度額の見直しを行いました。公平な制度の構築に向けて引き続き検討を進めます。
- 年金制度の着実な運営
年金積立金の運用は、2001 年の自主運用開始以来、約 100.3 兆円の黒字となっています。更に安全かつ効率的に運用するため、積立金の運用を専門的に行っている法人(GPIF)の組織体制を強化します。
年金記録問題の更なる解明と迅速な救済、年金個人情報に対して攻撃が及ばないシステムの構築などのセキュリティ対策により、引き続き年金への信頼確保に努めます。
- 地域における必要な医療の確保
国民が住み慣れた地域において必要な時に質の高い医療が受けられるように、次の施策を実施し、地域において必要な医療を確保します。
・今後の人口構造の変化を見据えつつ、地域の医療ニーズに合った質の高い効率的な医療提供体制を構築するという地域医療構想の実現に向け、地域の関係者間における協議を活性化し、地域医療介護総合確保基金など財源の充実により地域の取組みを支援
・地域に密着し、入院機能とかかりつけ医機能を担う中小病院や有床診療所の充実策を講ずる
・地域枠の活用による必要な医学部定員の確保を図るとともに、実効性のある医師の診療科別、地域別偏在対策を講ずる
・2024 年度からの医師の時間外労働規制の適用に向けた医師の働き方改革の実効的な支援策の推進
・臨床研修医制度の見直し
・女性医師をはじめとする子育て世代の医療従事者の働きやすい環境の整備
・診療所(有床診療所を含む)の機能の強化・充実
・地域に密着した中小病院と大病院との外来機能の分化
・かかりつけ医の育成と支援
・医療機関薬剤師の充実・強化
・地域に定着する看護職員等の養成の充実
・医療人材を活用したチーム医療の推進
・産業医と精神科医等との連携を含め産業保健活動総合支援事業の充実・強化等
・医用テレメーターの電波遮蔽・混信の解消支援
- 国民が安心できる持続可能な医療の実現
人生の最終段階において、自らが望む生を全うするために、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に基づいた取組みを普及するとともに、介護施設や在宅サービスを含め、自らの意向を踏まえた看取りを可能とする体制を整備します。
地域医療の中核的な役割を担う公立・公的病院については、産科、小児科、救急部門における医療、感染症対応などの重要な役割を担う医療機関として、地域の民間医療機関との適切な役割分担・連携を図るとともに、持続的な病院経営を目指して経営効率化等を進めるほか、民間病院も含め、適切な財政支援を行います。地域医療の連携を推進する医療法人制度の適切かつ円滑な施行を進めます。
全国どこでも救急患者が医療機関に確実に受け入れられる救急医療体制づくりやドクターヘリやドクターカー及びメディカルジェット(メディカルウイング)の体制の整備を行い、救命率の向上を目指します。
入院患者の安全をしっかりと守るために、とりわけ中小病院・有床診療所の防火設備(スプリンクラー設備、火災通報装置等)の整備を更に推進します。
- 国民皆保険の堅持
少子高齢社会に対応し、国民皆保険を安定的に将来世代に引き継ぎます。人生 100 年時代を迎えるにあたり、全ての世代が公平に支え合う医療保険制度に向けて取組みを進めます。
後発医薬品や OTC 医薬品の適切な使用拡大を図り、保険料負担をはじめ国民負担の増大を抑制します。高額薬剤については、国民負担の適正化とイノベーションの促進の両立が図られるよう取り組みます。
2018 年度より都道府県単位化した国民健康保険制度については、引き続き、効果的・効率的な財政支援を実施し、運営の安定化、保険者機能の強化を図っていきます。
高齢者医療制度は現行制度を基本としつつ、 世代間の公平性や制度の持続性の観点から、高 齢者医療費の負担のあり方を検討するとともに、拠出金の負担が過重なものとならないようにす るための健保組合への財政支援、協会けんぽへ の国庫補助の継続による財政安定化などにより、国民皆保険制度を守ります。
患者の利益に適う最先端の医薬品、医療機器等が早く使用できるように、評価療養や患者申出療養によって、患者の安全に配慮しつつ、患者の選択肢を拡大します。
健診を積極的に受診した場合の受診者本人へのインセンティブ付与などの誘導策の導入、特定健診・特定保健指導の推進等により、健康寿命の延伸や、健康の維持増進、疾病の予防及び早期発見等を積極的に促進します。
- データヘルス改革の推進
健康・医療・介護に関するデータ利活用基盤の構築を軸に、ゲノム医療・AI 等の最先端技術の活用、科学的介護の推進、保険者機能の強化等、データヘルス改革を工程表に則り戦略的、一体的に推進していきます。
がん・難病等のゲノム医療について、全ゲノム解析等実行計画を着実に推進し、解析結果の患者への還元、研究・創薬などに向けた活用を進め、新たな個別化医療等を患者に届けるための体制を整備します。
- 医療機器の研究開発及び普及を促進
医療機器の研究開発及び普及を促進するため、承認審査や研究開発に関する体制の整備等を進 めます。また、海外で使用されている医療機器 等が日本で使用できない状態を解消するため、 医療ニーズの高い未承認医療機器等を選定し、 その開発を推進するほか、「先駆的医療機器審査 指定制度」によって、日本発の優れた有効性が 見込まれる医療機器等の開発と迅速な導入を図ります。
- 再生医療を国民が迅速かつ安全に受けるための総合的施策の推進
世界初の iPS 細胞を用いた臨床研究が行われるなど、わが国の再生医療は実用化に向けて着 実に進歩しています。「再生・細胞医療・遺伝子医療プロジェクト」や「先駆的再生医療等製品 審査指定制度」をはじめとした、再生医療の研 究開発から実用化までの施策を世界に先駆けて 総合的に推進し、国民が受ける医療の質及び保 健衛生の向上のための取組みを進めていきます。
- 在宅医療の推進
「在宅医療」を推進し、子供から高齢者まで全ての世代の通院困難な人々が自宅や施設で必要な医療が受けられ、自分らしい暮らしができるようにします。
- がん対策の充実
「がんによる死亡者の減少」、「全てのがん患者及び家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の向上」、「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」を目指し、がん検診の受診率向上、放射線療法、化学療法、手術療法の更なる充実やゲノム医療の推進、働く世代や小児・AYA 世代へのがん対策の充実、小児がん拠点病院の整備、地域の医療介護サービス提供連携体制の構築、地域の拠点としての機能を持つ医療機関の整備によるがん医療の均てん化と疾患別・治療別の機能連携による集約化、専門医の育成、がん研究10 カ年戦略の推進、がん診療連携拠点病院とハローワークの連携による就労支援、がん診療連携拠点病院における相談支援や緩和ケアの推進など、患者・国民の立場に立ったがん対策を総合的かつ計画的に推進します。
また、がん患者の情報を全国の医療機関から集め、がんの発生の状況や、生存率、早期発見率などを分析することにより、データに基づく適切ながん対策を提供し、がん医療の質を向上させるよう、更に取組みを推進します。
- 国民の命と健康を守り抜く新型コロナウイルス感染症対策
希望する者へのワクチン接種を 11 月早期までに完了します。必要な人が必要な医療を確実に受けられるよう、病床や人材確保に全力で取り組みます。医療のオンライン対応も進めます。
希望者にワクチンが行き渡った後、ワクチンの接種記録や検査の結果を活用し、イベントや旅行、大人数での会食等における行動制限を緩和するなど、「新しい日常」を実現します。更に、エビデンスに基づき、3 回目の追加接種等について必要な準備を進めます。
今回の新型コロナウイルス感染症の経験を踏 まえ、国の司令塔機能を強化しつつ、国と地方 の役割分担の見直し、感染症有事における病床・医療人材の確保、保健所・検査・水際対策等の対応力の確保を実効的に行う枠組みを整備します。
感染症有事における感染対策の実効性を確保し、国民の生命を守るため、クラスター発生の防止や人流抑制の方策について、法改正も含め国民的な議論を進めます。
国産治療薬、国内のワクチンの開発・生産体制の強化を図るとともに、緊急時の医薬品等の供給体制を確立します。緊急事態において、安全性や有効性を適切に評価しつつ、より早期のワクチン・治療薬等の実用化の支援に取り組みます。
- 雇用や暮らしへの支援
新型コロナウイルス感染症が雇用に与える影響が長期化していること等を踏まえ、雇用調整助成金の特例措置や、在籍型出向の活用による雇用維持支援を行うとともに、離職した方に対する就労支援や、ステップアップのための職業訓練を充実させ、雇用を守ります。
また、新型コロナウイルス感染症への対応も含め、各種の雇用対策の基盤となる雇用保険財政について、そのセーフティネット機能を十分に発揮できるよう、一般会計からの必要な対応を含め、安定的な財政運営を確保します。
生活や住まいの支援をはじめとする重層的なセーフティネットにより、長引く感染症の影響を受け、生活にお困りの方を支援します。
- 感染症対策の充実・強化
外国人旅行客の増加や特定技能外国人の受入れといったヒトやモノの移動の国際化の進展により、新しい感染症がわが国で発生するおそれが高まっています。今後もわが国の感染症対策の強化を図ることで、国民の安全を確保してまいります。
エボラ出血熱については、国民を感染から守るため、今後も検疫体制を強化するほか、海外渡航者への適時適切な情報提供を行ってまいります。また、今後万一、国内で発生した場合にも、国民に正しい理解に基づいて適切な行動をしていただけるよう、引き続き、エボラ出血熱に関する正確な情報を迅速に提供してまいります。
更に、エボラ出血熱等の国際的に脅威となる感染症が国内で発生した場合に備え、万全の検査・研究体制を整備する観点から、BSL4 施設を有する国立感染症研究所を中心とした危険性の高い病原体等の検査体制の強化を進めるとともに、BSL4 施設を中核とした感染症研究拠点の形成について検討している長崎大学において、地元関係者の理解を得るための協議が円滑に進められるよう、必要な支援を行ってまいります。
- ワクチン施策の推進
ワクチンで予防できる病気はワクチンで積極的に対応するとの方針のもと、ワクチンの一層の活用を図るため、公衆衛生の観点に立って、ワクチンの研究開発の促進と生産・供給体制の整備、充実等を図ります。
かつて日本はワクチン先進国でしたが、新型コロナウイルス感染症において、国産のワクチン開発が後手に回りました。度重なる予防接種禍や副反応訴訟敗訴から、新技術への取組みに消極的になり、また、国民のワクチン忌避傾向により、ワクチンの市場形成や事業が成り立ち難い状況にあります。この状況を打破するために、本年 6 月に閣議決定された「ワクチン開発・生産体制強化戦略」を迅速・確実に実現し、次のパンデミックで日本が最速でワクチンや治療薬を創製できるよう、官民の総力を挙げて取り組む必要があります。日本の研究開発基盤を整備し、収益や投資回収が確保し難いワクチンの事業性を改善し、産業力を強化することにも併せて取り組みます。
一方で、国民の健康安全保障の観点より、平 時からの感染症対策を強化する必要もあります。今回の新型コロナウイルス感染症で、迅速に創 製された欧米のワクチンは、安全保障として 10 年近く前から研究開発されていました。日本も 総合的・長期的視野をもって感染症の国家戦略 を立案し、その中でワクチンや治療薬について は、平時から産学官連携による技術革新や人材 育成を支援し、生産設備や安定供給のための基 盤整備を進める必要があります。
他の先進諸国と比べて公的に接種するワクチンの数が少ない、いわゆる「ワクチン・ギャップ」を解消するため、定期接種の対象として、2016 年にB 型肝炎ワクチン、2020 年にロタウイルスワクチンを新たに加えました。
現在検討が進められているおたふくかぜワク チンの定期接種化も含め、定期接種化の迅速化 及びプロセスの効率化を実現し、今後とも感染 症予防を促進するなど、新たなワクチン政策の 確立と推進体制を目指します。国家検定やワク チン特有の商習慣の課題にも対応していきます。また、緊急時のワクチンを含む医薬品の開発体 制及び薬事承認制度を確立します。
国民のワクチンへの理解を深めるためには、科学的に正しい情報を、そのリスクも含めて分かり易く伝えていくことが重要です。予防接種の副反応について情報収集を行った上で、専門家による定期的な分析・評価を行います。そして積極的な情報発信に努めます。
- 健康医療情報のコミュニケーションの強化・健康リテラシーの向上
国民の健康を守り、安全・安心な生活を確保する上で、感染症をはじめ、様々な疾病対策を推進することが急務であり、国民の健康医療情報を学術的な観点から整理・評価した上で国民に発信し、正しい情報を理解、評価し、使いこなす能力(健康リテラシー)を向上させるための体制整備を図ります。
- 医療事故調査制度の実施
医療の安全を確保するためには、医療事故の再発防止を行うことが重要です。このため、引き続き医療事故調査制度の円滑な実施を図ります。また、この制度の実施状況を踏まえて見直しを検討します。
- 精神保健医療福祉の推進
国民の精神保健医療福祉の一層の推進と質の向上を推進します。
特に精神科救急医療、依存症、うつ病、身体合併症、児童思春期、発達障害、高次脳機能障害、認知症など精神科医療に対する新たな社会的ニーズの広がりと深刻化に対応して、精神科医療への適切な評価、精神疾患に対する正しい知識の普及や早期発見・早期治療の促進を図るための啓発運動、教育機関や職場などにおけるメンタルヘルス教育、診断法・治療法等に関する研究の推進を支援します。
精神障害者の方々が、地域の一員として安心 して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加、地域の助け合い、教育が包括的に確保された「精神 障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構 築を進めます。
また、アルコール、薬物、ギャンブル等の依存症対策の更なる推進・強化を図るため、依存症専門医療機関の整備や相談支援体制の強化、自助グループ等民間団体への支援を充実してまいります。
- 認知症施策の推進
認知症の方の日常生活を支えるため、「共生」と「予防」を車の両輪とした認知症施策推進大綱に基づき、戦略的に認知症施策を推進していきます。認知症の早期診断、鑑別診断とともに、身体合併症、精神症状と問題行動、生活機能障害へのリハビリテーション、認知症終末期医療・緩和ケア医療などあらゆる病態に適切に対応できるよう認知症対応力の向上を着実に進め、地域ケアの後方支援として機能することにより、 地域包括ケアをサポートします。認知症疾患医 療センターと地域包括支援センターなどの機能 的連携を深めることにより、効率的な地域サポ ートシステムを整備し、地域での生活を継続す るための地域ケアと施設ケアを統合した循環型 医療介護総合モデルの体制の確立を目指します。また、行動・心理症状(BPSD)に関しては精神科医療が中心となり、かかりつけ医も協力して、 多職種と連携して高齢者や家族の相談等に応じ る体制の整備を検討します。更に認知症サポー ターの更なる活躍や、認知症カフェ等を全市町 村に設置するよう取組みを進めるとともに、医 師・歯科医師・薬剤師・看護職員、介護職員等に対する研修を強化します。
- 看護職の確保及び処遇改善の推進
看護職の確保対策を推進し、看護職が働き続けられるよう勤務環境を改善する仕組みを着実に普及・推進するとともに、潜在看護職の再就職支援を強化・拡大します。在宅医療・介護の充実の必要性に鑑み、介護保険施設や訪問看護、看護小規模多機能型居宅介護に従事し生活の中で療養を支える看護職を確保し処遇を改善します。
また、マイナンバーを活用した看護職資格の活用基盤を強化し、就業支援や資質の維持・向上、キャリア構築支援を推進します。地域包括ケアに向けた訪問看護及び看護小規模多機能型居宅介護の計画的な充実や看護職の役割の拡大に向けた体制整備等を図ります。特に医師の確保が困難なへき地・離島等においては看護職がその専門性に基づき、判断し、より高度な実践をできる制度を構築し、地域の人々への安心・安全な医療・看護提供を推進します。
- 国民歯科医療の充実・発展
新型コロナウイルスの感染リスク・飛沫感染リスクが高い歯科医療において、更なる安全・安心な診療体制を構築するための具体的な措置を講じます。
コロナ禍による受診抑制を防ぐため、口腔の重要性に係る国民への情報提供促進を図るとともに、影響を受けた歯科医療提供機関への支援を行います。
ワクチン接種への歯科医師の協力を支援するため、必要な財政的措置を講じます。
超高齢社会における歯科口腔の疾病構造の変化に対応し、健康寿命の延伸に向けた歯科口腔保健の推進として、成人期以降の歯科健診の機会の拡大など、国民の生涯を通じた歯科健診の充実(国民皆歯科健診)を図ります。
地域医療介護総合確保基金事業の充実等により、在宅歯科医療の推進や人材育成を図るとともに、認知症対策や誤嚥性肺炎の防止など生きる力を支える生活の医療を拡充させます。
病院における歯科医師の配置など地域医療に配慮しつつ、適切な医科歯科連携を拡充し、歯科医療体制の構築を目指します。
介護予防における口腔機能の向上を図るための取組みを推進します。また、協力歯科医の業務の明確化や入院患者や要介護者に対する口腔健康管理を推進し、歯科における ICT の活用を推進します。
国民のニーズに合致した新しい歯科医療技術、歯科医療機器の研究開発の推進と保険収載を促 進し、人生 100 年時代に相応しい歯科医療提供を目指します。
安定的で質の高い歯科医療を提供するため、養成機関への支援・就業支援センターの整備など歯科衛生士や歯科技工士の人材確保を目指します。
災害歯科コーディネーター育成のための研修会等の充実を通じて、災害時の歯科医療救護及び歯科支援活動に資する人材を確保します。
2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会での成果を元に、スポーツデンティストの養成強化を行い、スポーツマウスガードの普及を促進し、選手、スタッフへの活動支援を通じ、国民スポーツの充実に努めます。
- 肝炎対策の推進
2018 年 12 月より開始している、肝がん・重度肝硬変の治療研究を促進する事業について、患者の方からの要望を踏まえ、本年 4 月から要件を緩和しました。更に、対象となる患者が支援を受けられるよう、事業の周知を図ります。また、B 型・C 型肝炎訴訟は各々の合意に則り、B 型肝炎については、給付金の請求期限を 2027 年3 月末まで延長する特措法の改正法案を成立させたほか、C 型肝炎については、給付金の請求期限を 2023 年 1 月 16 日まで延長しており、引き続き完全解決に向け努力します。
- 難病・小児慢性特定疾病対策の充実
難病・小児慢性特定疾病については、「難病の患者に対する医療等に関する法律」等に基づき、医療費助成の対象疾病を追加するなど、拡充を図ってきました。引き続き、医療費助成による患者の負担軽減を図るほか、地域の実情に応じた医療提供体制の構築、相談支援体制や療育環境の整備、就労支援、自立支援事業を実施するとともに、新薬の開発支援や医薬品の適用拡大により難病や小児慢性特定疾病の治療方法の早期確立に向けた研究開発を進めるなど、医療・福祉・就労・研究等の総合的な対策を充実します。
- ヒト T 細胞白血病ウイルス・結核・腎疾患 対策などの推進
ヒト T 細胞白血病ウイルスについて、全国一律の妊婦健診での抗体検査実施により母子感染を予防します。成人 T 細胞白血病、HAM の感染者・患者に対する診療体制の整備等を進め、これらの疾患に罹患されている方々に対する相談支援等に努めます。
結核は年間約 1.4 万人の新規患者が発生するなど、依然としてわが国の主要な感染症であり、確実な治療の実施等、総合的な結核対策を推進します。糖尿病性腎症を含む慢性腎臓病の重症化予防対策と腎不全・透析治療に移行しないための啓発活動を促進し、腎臓病の原因究明の研究を推進します。また、透析患者が安心して治療を受け生活できる環境及び体制の整備に努めます。
議員立法の「アレルギー疾患対策基本法」に基づく基本方針に沿って、治療体制・相談体制の整備や研究の促進等、アレルギー疾患対策を総合的に推進します。
- 「脳卒中」「心臓病」などの循環器疾患対策 の充実
日本の三大疾病となっている「心臓病」(心筋梗塞、心臓弁膜症など)や「脳卒中」(脳梗塞、クモ膜下出血など)の克服に向けて、2018 年に「脳卒中・循環器病対策基本法」を成立させ、2020 年には本法に基づく「循環器病対策推進基本計画」を策定するなど、対策を加速・強化します。生活習慣や生活環境、健康状態を踏まえた「予防・早期発見対策」を推進します。居住する地域にかかわらず、格差なく適切な タイミングで最先端の医療を受けることができ、安心してリハビリ等の医療・福祉施設の利用を 可能とする、地域の医療機能、施設・病院の整備による「医療の均てん化」を早急に実現してい きます。
- 薬局・医療機関の薬剤師の職能、役割の拡 充と積極的活用
国民医療の向上と健康づくり推進のため、かかりつけ薬剤師・薬局の充実・強化を図るとともに、社会から求められる薬局としての基本的な役割を果たすための機能を有した薬局を基本として、地域包括ケアシステムの中で在宅医療への対応やがん等の専門的対応が可能な薬局(地域連携薬局・専門医療機関連携薬局)を普及することにより、患者や地域住民が安心して医薬品を使うことができる環境を整備します。また、既に確立されている対物中心の業務とともに、対人中心の業務の拡大・充実を支援し、患者本位の医薬分業を実現し、わが国における医薬分業制度の定着を目指します。医薬品安全対策及び適正使用強化の一環として、チーム医療における薬剤師の業務の拡充と医療機関における薬剤師配置を含む薬剤師確保のための取組みを推進します。薬剤師の卒後研修の充実を図るとともに、薬局の医薬品管理・供給機能の高度化を進め、地域住民による主体的な健康の維持・増進を積極的に支援する健康サポート薬局の取組みを推進します。
また、患者とともに適切な服薬を推進するため、災害時にも役立つ OTC 医薬品を含めた「電子お薬手帳」の普及を強力に進める一方、災害時における医薬品の安定した提供体制を確保するため、発災時、地域に設置される災害対策本部に「災害薬事コーディネーター(仮称)」の設置を実現します。
- 薬物の乱用防止の総合的推進
啓発、取締り、薬物依存者の治療・社会復帰の支援など薬物乱用防止対策を総合的かつ有機的に推進し、乱用防止対策を一層効果的に実施します。特に、若者の間で大麻の乱用が拡大しており、その一因として「有害性がない」等の誤った情報がインターネット等で氾濫していることが挙げられます。その危険性に関する正しい知識の普及を図るとともに、取締りを強化します。また、大麻のほか、わが国最大の乱用薬物である覚醒剤、危険ドラッグ等の薬物を根絶するため、麻薬取締部及び税関等の体制の拡充を図るとともに、危険ドラッグのインターネット販売対策、水際対策等について、実効ある取締りを推進します。
- セルフケア・セルフメディケーションの推進と安心・安全な一般用医薬品及び一般用検査薬等の適正な使用
医薬品の販売業者において、一般用医薬品のインターネット販売を含め、適正な販売方法が遵守され、また、違法なインターネット販売が行われることがないよう、これまで以上に国や自治体による監視指導を徹底するとともに、国民に対する周知の徹底や注意喚起に努めます。医療の効率化や国民の健康維持の観点から、 医薬品の適正使用の推進、後発品の品質確保、安定供給を基盤とした使用促進を図ります。 要指導・一般用医薬品(検査薬を含む)や薬局製造販売医薬品(薬局製剤)を活用したセルフケア・セルフメディケーションを推進します。このため、スイッチ OTC 化を進めるとともに、セルフメディケーション税制の普及・拡充に努めます。
また、セルフケア・セルフメディケーションから医療へ適切につなげられるよう、要指導・一般用医薬品及び一般用検査薬等の安心・安全な使用のため、医師、薬剤師、登録販売者等から国民への適切な情報提供を促進します。
- 製薬産業に係る成長戦略推進と国民医療、健康への貢献施策の展開
ライフサイエンスはわが国の安全保障上も重要な分野であり、世界有数の創薬先進国として、革新的創薬によりわが国の健康寿命の延伸に寄与するとともに、医学・薬学研究や産業技術力の向上を通じ、産業・経済の発展へ寄与することを実現すべく、医薬品産業政策を推進します。製薬産業がイノベーションを通じて付加価値のある薬剤の創薬力を強化することで、国民医療に更なる貢献ができるよう、創薬支援ネットワーク等を通じた産学官連携・オープンイノベーション・製薬産業の国際化の推進をサポートします。民間リスクマネーや優秀な民間人材を獲得でき、かつアカデミア発ベンチャーを育てるため、海外の有力な大学や企業、VC 等との連携も視野に入れた魅力的なオープンイノベーション拠点の創設を目指します。そして、日本発の革新的な創薬シーズの開発・実用化のためには、地道なベンチャーの育成とそのシーズを創薬まで結びつける取組みが不可欠であり、大胆な治験費用等も含めた創薬ベンチャーの実用化開発費用の支援を進めます。薬価制度においては、欧米先進国と同様に特許期間中の新薬の薬価水準が維持されるよう、新薬創出等加算の改善や薬価収載後の評価充実など新薬のイノベーションの評価等のあり方を検討します。加えて、医療上不可欠な医薬品はもとより、後発医薬品等の安定供給に資する取組み、及び中間年改定のあり方を検討します。また、創薬の長期的な研究開発投資促進のため、研究開発税制の拡充を図り利用を促進します。更に、生命科学の進歩を広く国民が享受できるようにバイオ新薬・バイオシミラー等の開発・製造・使用促進を図ります。このように、わが国の製薬産業の国際競争力並びに創薬・開発能力の強化を図り、それらに向けたモチベーションを損なうことなく維持・向上されるよう配慮しながら、創薬国に相応しい魅力ある医薬品市場の構築に向け、より透明性・予見性の高い薬価制度になるよう見直します。
- 健康医療データの活用促進
「人生 100 年時代」に向け、国民が自身のライフコースを通して健康状態を確認し維持管理できる基盤として、健康医療ビッグデータの構築に向けた取組みを推進します。また、行政・保険者・研究者・民間等におけるデータ利活用を促進し、自身の健康管理、予防先制医療、医薬品開発等の取組みを推進します。そのために、電子カルテ情報も含めた標準化のほか、被保険者番号の使用などにより各データ基盤の連結など関係機関間の相互運用性、倫理や個人情報も含めたデータセキュリティ、システムの国際連携、必要となる法改正も含めて総合的に検討の上、世界最高水準のプラットフォームを速やかに構築します。医薬品・医療機器の研究・開発には目的別に必要なデータが異なることを踏まえ、目的に沿った質・量・項目が揃った医療データベースの構築と二次利用できる環境整備を進めるとともに、医薬品・医療機器の研究・開発に資するリアルワールドデータやゲノム・オミックスデータの活用について、ガイドライン・法整備も含めて推進します。
「全ゲノム解析等実行計画」を着実に推進し、結果をより早期に患者還元するとともに、新たな個別化医療等の日常診療への導入、研究・創薬などへの活用を実現します。また、健康医療データの扱いに長けた人材の育成を行います。
- 医薬品の流通体制の充実
安全・安心・信頼の医薬品流通を確立するため、医薬品のトレーサビリティ、医薬品の安定供給、品質確保対策、新型コロナウイルス・パンデミック対策を推進するとともに、緊急時を見据え、国による情報の一元的な把握や官民連携しての供給調整に備える他、災害時のガソリン・電力確保等の危機管理体制を充実します。また、個々の医薬品の価値をベースに納入価交渉を行う単品単価交渉を更に推進するなど、「医薬品産業ビジョン 2021」等を踏まえ、医薬品流通の改善を着実に進めます。
- リハビリテーションの提供体制強化と専門能力の向上
誰もが安心し生き生きと生活できる社会を実現するため、自立支援に資する訪問リハビリテーションや通所施設におけるリハビリテーション専門職の配置を強化するほか、自立支援・重度化防止に向けて収集したデータに基づいてリハビリテーション提供体制を強化し、医療と介護で切れ目のない相互連携のあるチーム医療を推進するとともに、適切な運動等の実施により、高齢者の健康寿命の延伸を図ります。
また、医療・介護をはじめとする多様な地域ニーズに応えうるリハビリテーション専門職の人材育成を目指して、より高度な大学・大学院での教育を推進し、その専門能力を現場で更に活用できる体制をつくります。
- 漢方医学の推進
日本の伝統医学である漢方医学について、指導者・臨床医の教育・研修、科学的根拠確立のための研究等の推進を図ります。漢方医学を支える漢方製剤の品質確保と安定供給が可能となる環境を整備します。
- 国民が自主的に健康増進を図るための一般健康食品の利活用の促進
国民が自主的に健康増進を図るため、一般健 康食品について、適切な情報に基づいて選択が 行えるよう、不必要な広告や情報にさらされな いよう注意します。安全性が担保された健康食 品市場の健全な発展を図ることで、健康長寿を 願う国民のニーズに積極的に応えてまいります。
- 生活の質(QOL)を高める統合医療の推進統合医療は、病気の予防と健康増進を目指す とともに、治療から看取りまでを含み、生活習慣の改善を支援し、QOL の向上と生きがいを支える医療です。具体的には、現行の医療制度とともに、漢方や鉞灸などの伝統医療、食の安全と食育、健康増進のための住環境・社会環境の整備など、健康増進のためのあらゆる活動を統合する医療と、それに関係する活動です。
統合医療には「医療モデル」と「社会モデル」があり、医療モデルは、「近代西洋医学に補完代替療法や伝統医学等を組み合わせて QOL を向上させる医療」です。社会モデルは、健康長寿社会を目指すために、学際的な知識を総動員して健康の社会的格差を是正するもので、地域が主体となってお互いの QOL を高める手段です。医療モデルと社会モデルは、互いに補い合い、社会関係資本(ソーシャルキャピタル)を有効に活用することで、高騰する医療費の適正化、平均寿命と健康寿命の格差の縮小などを目指すとともに、勤労世代が高齢者や若い世代を支える永続的な共助の構築を目指します。
統合医療は、WH0 の「健康の社会的決定要因」や、国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)と軌をーにするものであり、「人びとの健康や病気に影響を与える社会的、経済的、政治的、環境的な条件」に対する政策提言です。
今後、「統合医療推進基本法(仮称)」の制定を求めるとともに、統合医療の基本理念に沿った政府一体の取組みを進めていくことを求め、それを支援推進します。
- 健康で質の高い生活を目指すまちづくりの推進
地域住民が直面する健康課題には、一人ひとりの「心や身体の健康」のみならず、社会や文化、都市整備など住民を取り巻く多岐にわたる要因があります。
地域課題の解決やまちづくりに統合医療を取り入れる自治体を支援するなど、重層的で横断的な「心身ともに健康なまちづくり」を積極的に推進します。
- 地域包括ケアシステムの深化・推進と「介 護離職ゼロ」の実現
高齢化の進展により、増大が予想される介護保険料の上昇を抑制します。そのために、介護サービスの効率化、重点化を図り、持続可能な介護保険制度を堅持します。
介護サービスが利用できず、やむを得ず離職する者をなくすとともに、特別養護老人ホームに入所が必要であるにもかかわらず自宅で待機している高齢者の介護ニーズを満たすことを目指します。このため、在宅・施設サービス等の整備の充実、加速化や、介護人材確保に向けた総合的な方策を講じます。
同時に、地域の介護不安を解消し、セーフティネット機能を充実させ、安心して生活を継続できる地域包括ケア体制を深化・推進します。併せて、家族介護者の精神的・身体的・経済的負担等の軽減のため、介護家族の介護負担軽減に資する制度の充実、介護休暇・介護休業など仕事と介護を両立しやすい環境整備等の施策を進めます。
大災害時において、被災した介護や支援が必要な方々を支えるため、地方自治体や関係団体等の支援チームの創設、他の施設等での受入れ等の仕組みづくりを推進します。
- 介護人材の確保・資質の向上
介護人材の確保は、喫緊の課題であることから、競合他産業との賃金差がなくなるよう、更なる処遇改善を進めます。
また、認知症の高齢者や高齢単身世帯の増加等に伴う多様な介護ニーズに対応するため、中核的役割を担う介護福祉士の資質の向上や専門性を適切に評価するとともに、多様な人材の参入による「すそ野の拡大」を図ります。
更に、デジタルやテクノロジーの活用により、介護職の負担軽減を図り、介護現場の生産性向上を図ります。
EPA、在留資格「介護」、介護職種の技能実習制度、在留資格「特定技能」により、わが国の介護現場で活躍される外国人の方には、それぞれの制度趣旨に沿って必要な支援を進めます。
- 介護支援専門員の積極的活用
医療・介護・福祉サービスを必要とする人が過不足のないサービスを受けて、住み慣れた地域で自立した生活を営むためには、介護保険施設・在宅介護サービスにおいて、自立支援や重度化防止等に向けた高品質な介護サービスを提供できるシステムづくりが必要です。そのためには、介護支援専門員(ケアマネジャー)による適正なケアマネジメントが必要不可欠です。特に、居宅介護支援事業所の経営の安定化や中立性の推進を図ります。社会保障制度において重責を担う介護支援専門員の研修制度の充実を図るとともに、誰でも公平にケアマネジメントが受けられるように、居宅介護支援費に関しては、介護保険制度で全額を賄う現行制度を堅持します。
- 在宅介護の支援
地域で多様な質の高い在宅介護サービスが提供できるよう、事業者の創造性と自律性が発揮できる環境を整えるための公的保険外サービスの普及を促進します。
これにより、公的保険外サービスとの組合せの選択肢を増やし、介護保険内・外を含めたサービスの生産性向上を図ります。
権限委譲に伴う各自治体の運用が在宅介護分野の隘路とならないように、地方分権の観点にも配慮しながら、適正運用を図ります。
- 運動器リハビリテーションの充実とロコモティブシンドローム(運動器症候群)の早期発見
運動器の衰えにより、要支援・要介護となることを予防するため、医療における運動器リハビリテーションの充実を図ります。また、転倒・骨折・寝たきりのリスクが高くなるロコモティブシンドローム(ロコモ運動器症候群)該当者(予備軍を含め全国で推定 4,700 万人)を早期に発見し、リハビリテーションを指導することができるよう、運動器健診事業の導入を推進します。
また、フレイル(身体的脆弱性、認知機能や社会的つながりの低下といった多面的な課題を抱える状態)やサルコペニア(高齢期にみられる骨格筋量の減少と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下が見られる状態)といった、高齢期の健康課題に対応するため、運動、口腔、栄養、社会参加といった、保健事業と介護予防を一体的に進めるなど、高齢期の健康づくり、介護予防を進めていきます。
更に、疾病等の予防やフレイルに関する学校教育や国民に対する啓発活動を推進します。
- 介護付きホームの積極的な活用
終の棲家の機能を果たしている介護付きホーム(特定施設入居者生活介護事業所)の役割や整備計画を明確にし、地域包括ケアシステムにおける重要なセクターであることを明らかにします。
また、自立支援・重度化予防から、認知症ケア、「医療から介護へ」の退院先としての役割、そして看取りまでの総合的な機能が発揮できるよう支援します。
介護付きホームは、在宅療養支援診療所等と連携し、医療機関からの受入れや看取りに取り組んでいるため、医療との連携が進むよう支援します。
更に、介護保険事業計画に介護付きホームの整備量を位置づけ、その機能を適切に評価し、質の高い介護付きホームの整備を進めます。
- 災害時における福祉専門職の積極的活用及び支援体制の整備
近年頻繁に発生する大規模自然災害において、被災された住民の生活再建に向けた多様かつ複 合的福祉ニーズに対応するため、福祉専門職(社 会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、介護支 援専門員)を積極的に活用します。
また、平常時から福祉専門職や関係職種のネットワーク化を図り、災害発生時に福祉専門職を中心としたチーム(災害派遣福祉チーム)を派遣できる体制を都道府県ごとに整備します。
- 国民の信頼に基づく生活保護制度の実現
生活保護が、真に必要な人に行き渡るよう情報発信を強化するとともに、制度に対する国民の信頼と安心を確保し、納税者の理解の得られる公正な制度にします。
そのため、自助努力による生計の維持ができない者に対する措置ということを原点に、オンライン資格確認の基盤を活用した頻回受診に係る適正受診指導、生活習慣病の予防等に向けたデータヘルスの推進等による医療扶助の更なる適正化等を着実に実施するとともに、就労による自立の促進や貧困の連鎖を断ち切るための子供の大学等への進学支援等に取り組みます。併せて、ケースワーカーのマンパワーを拡充します。
- 生活困窮者の自立に向けた支援の強化
生活困窮者の自立を促進するため、支援につ ながっていない生活困窮者を把握し、世帯全体 への支援につなげる相談支援体制の整備を進め、地域の実情を踏まえた就労準備支援事業・家計 改善支援事業の普及・促進や子供の学習・生活 支援、居住支援の推進など、自立に向けた支援 メニューを強化します。
- 地域共生社会の実現に向けた取組みの推進
地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を構築するため、2021 年度から施行された「改正社会福祉法」に基づき、対象者の世代や高齢者、障害者、児童等の属性を問わない相談支援の構築や地域づくりに向けた支援を推進するなど、「地域共生社会」の実現に向けた取組みを進めます。ひきこもり支援については、生きづらさを抱える当事者やご家族の声も聞きながら、社会参加に向けて様々な支援の選択肢を用意できる環境づくりを進めます。
また、成年後見制度利用促進基本計画を踏ま え、権利擁護支援の地域連携ネットワークの中 核機関の整備など、全国どの地域においても、 成年後見制度を必要とする人が制度を利用でき る体制整備を進めるとともに、現行計画が 2021 年度までのため次期計画の策定に取り組みます。
- 原爆被爆者への支援
唯一の戦争被爆国であることを踏まえ、広島・長崎への原爆投下から 76 年が過ぎ高齢化が進む被爆者の方々に寄り添いながら、保健、医療、福祉にわたる総合的な援護施策を推進します。また、2021 年 7 月の「黒い雨」訴訟判決を踏まえた総理談話に沿って、原告の皆様と同じような事情にあった方々について、救済できるよう、早急に対応します。
- 中国残留邦人への支援
中国残留邦人の方々のための生活支援をはじめとした様々な支援策を引き続き講じるとともに、2014 年 10 月に配偶者支援金を創設しましたが、今後更に帰ってきて良かったと思えるような、きめ細かい対策を推進します。
- 更なる国民の負託に応えられる社会保険労務士制度の推進
わが党は、社会保険労務士が、国民の利便性の向上と更なる負託に応えられるよう、累次にわたり「社会保険労務士法」の改正に取り組み、法案を成立させました。今後、更なる法改正を含め、社会保険労務士の活動に資する施策の推進を図ります。
- 生活衛生サービスの安全・安心の推進
生活衛生サービスが、安全・安心に提供されるよう、生活衛生営業指導センター、生活衛生同業組合の活性化を図ります。また、建築物の衛生環境を確保するとともに、エネルギーコストの上昇にも対応できるよう日本政策金融公庫の融資の充実等を図ります。
- 柔道整復師の活動の支援
柔道整復療養費の受領委任を取り扱う施術管 理者の要件強化(実務経験と研修)を着実に実 施するとともに、柔道整復に関する制度の更な る改革を目指します。また、地域包括ケアシス テムにおける柔道整復師の役割を確立させます。なお、日本伝統医療としての柔道整復術が未来 永劫継承されるようその保護に努めます。
- はり・きゅう治療、あん摩・マッサージ・ 指圧治療の充実
国民が国家資格であるはり師、きゅう師、あん摩・マッサージ・指圧師が行う治療を、更に利用しやすくなる制度の整備に努めます。また、日本の伝統医療として更なる振興を積極的に支援します。
- 栄養士・管理栄養士の積極的活用
今後、増加が想定される在宅療養者や高齢者に対して適切な栄養管理の提供と全てのライフステージにおける栄養課題の解決ができる体制を構築し、国民が安心した生活を過ごせるよう、栄養士・管理栄養士の積極的活用を進めます。
- 一人ひとりの状況に応じた就労支援と労働環境の整備
ハローワークの機能強化等により、若者、女性、高齢者、障害や難病のある方など一人ひとりの状況に応じた就労支援を積極的に進め、全員参加の社会を目指します。
勤務地や職務、勤務時間を限定した「多様な正社員」の導入や非正規雇用労働者の正規雇用への転換などを行う企業への支援により、正規雇用への転換を希望する方々のキャリアアップ等を図るとともに、労働者派遣法に基づき、派遣労働者の正社員化など雇用の安定とキャリアアップの実現を図っていきます。
また、デジタル分野等の成長産業への円滑な人材シフトを促進し、正規雇用の維持、拡大を図ります。そのため、キャリアコンサルティング、ジョブ・カード、教育訓練給付、職業訓練、能力評価など、働きながらの学び直しや再就職、転職支援の制度の活用を進めます。
- 労働者の希望を生かした多様な働き方の実現
一人ひとりが生きがいをもって活躍できる社会の実現に向け、長時間労働の是正、総合的なハラスメント対策の推進、良質なテレワークの推進など多様で柔軟な働き方の実現、同一労働同一賃金の推進による公正な待遇の確保を着実に推進します。働き方改革の実現・定着に向けて、「働き方改革推進支援センター」における相談支援や、IT 化や業務効率化など生産性向上に取り組む中小企業等に対して支援します。また、長時間労働の事業場への監督指導をしっかりと行います。また、求人メディア等のマッチング機能の質を高めるルール整備等に取り組み、求職者が安心して就職・転職活動することができる環境整備を推進します。
- 最低賃金の引上げ
最低賃金については、過去 9 年で 181 円引き上げてきました。引き続き、中小企業・小規模事業者の生産性向上や価格転嫁等の取引条件の改善等の取組みを全力で進め、経済情勢の改善に努力することを通じて、感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取組みも参考にするとともに感染拡大前にわが国で引き上げてきた実績を踏まえつつ、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均 1,000 円とすることを目指します。
- 地域の創意工夫を活かした「しごと」や「ひと」づくりの推進
東京一極集中に歯止めをかけ、魅力ある地方を創生するためには、安心して働くことができるよう良質な雇用機会を創出するとともに、新しい人の流れをつくり、地方創生に必要な人材を確保することが必要です。このため、地方自治体が実施する「しごと」や「ひと」づくりに加え、地方への新しい「ひと」の流れづくりに取り組み、「しごと」と「ひと」の好循環を確立するための人材還流、処遇改善等についての創意工夫を活かした取組みを迅速に支援します。
また、地域における多様な就労の機会につながるよう、労働者協同組合法の施行を進めます。
- 新卒者就職対策の実施など若者の雇用対策の推進
新型コロナウイルス感染症の影響により、第 二の就職氷河期世代を作らないためにも、新卒 者及び 3 年以内の既卒者に対して、学校と連携しつつ、新卒応援ハローワークにおいて、個別 の状況に応じたきめ細かな就職支援を行います。
更に、若年者を中心に就労可能な者については、求職者支援制度の活用等により就労を促進します。
- 高齢者が活躍し続ける「生涯現役社会実現」
人生 100 年時代を見据え、働く意欲のある高齢者の方々が個人の能力・経験を活かして働きやすい環境を整え、「生涯現役社会」を実現します。
このため、65 歳以降の定年延長や雇用継続を行う企業等を支援するとともに、「第 2 のキャリア」を望む方の転職、再就職等の支援を強化します。
また、高齢者が企業を退職した後も、これまでの豊富な知識や職業経験等を活かして地域社会で活躍できるよう、多様な就業機会の確保を推進します。
更に、地域の日常生活に密着した多様な就業機会を提供し、高齢者の社会参加や地域の活性化に貢献するシルバー人材センターについて、消費税におけるいわゆるインボイス制度への対応を含め、安定的な事業運営や更なる活用のための環境の整備を図ります。
- 戦没者遺骨の早期帰還
先の大戦において 310 万余の方々が犠牲となられ、うち海外においては 240 万人もの方々が犠牲になられました。戦後 70 年以上を経て、戦没者のご遺族が高齢化する中、未だ 112 万人ものご遺骨が収容されておりません。この現状に 鑑み、2016 年 3 月にご遺骨の収集を国の責務として位置づける「戦没者の遺骨収集の推進に関 する法律」を議員立法として成立させました。 本法律は、2024 年度までを集中実施期間とすること、総合的かつ計画的に推進するための基本 計画を策定することなどを内容としています。 この基本計画に基づき、戦没者のご遺骨の収集・帰還を積極的に推進するとともに、新型コロナ ウイルス感染症の影響により海外での遺骨収集 を計画どおりに実施できていない状況を踏まえ、集中実施期間の延長に向けた検討を行います。併せて、慰霊巡拝を推進します。また、戦没者のご遺骨をご遺族の元にお返しするために、戦没者のご遺骨の身元特定のための DNA 鑑定を推進し、鑑定体制の拡充に向けて取り組みます。
- 自殺対策の強化
わが国における自殺死亡者数は、新型コロナウイルス感染症等の影響により、2020 年は 11 年ぶりに前年を上回るなど、更に深刻化しています。自殺対策基本法及び自殺総合対策大綱に基づき、自殺対策を更に推進します。
自殺の多くは多様かつ複合的な原因及び背景を有していることから、保健・医療・福祉・教育・労働・法律等の関係機関・関係団体等のネットワークの構築や、特に SOS の出し方に関する教育を推進し、生きることの包括的な支援として社会全体としての対策を進めます。
また、自殺相談は夜間にも多いこと、女性や 小中高生の自殺も増えていることから、電話・SNS 相談のそれぞれの特性を生かした対応や 24 時間対応の体制構築を推進するとともに、相談 員確保のための人材育成等の支援を強化します。
自殺対策の PDCA サイクルを社会全体で回す仕組みを構築し、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現を目指します。
- 死因究明体制の推進
公衆衛生の維持向上、犯罪の見逃し防止、そして遺族の権利利益の擁護、社会の安全・安心の向上及び医学の発展に向け、死因究明等推進基本法の理念を踏まえ、政府の死因究明等推進計画を推進することにより、「死因不明社会」の解消を目指します。モデル的な小児死亡例の Ai
(死亡時画像診断)実施及び CDR 導入の検討や、全国的な解剖体制の充実など必要な措置を積極的に検討し、着実に実現します。
- 医薬品・医療機器等の迅速審査、患者アク セス確保等
ドラッグ・ラグやデバイス・ラグについては、薬事承認の迅速化等に向けた取組みが奏功し、審査に必要な期間は海外と遜色のないレベルまで短縮されましたが、引き続き審査の迅速化に取り組むとともに、開発ラグ解消支援のためのレギュラトリ-サイエンス戦略相談等の拡充を図ります。また、重篤な疾患に対して、画期性があり、極めて高い有効性を持ち、世界で先駆けて日本で早期開発・申請される医薬品・医療機器・再生医療等製品や、小児用法用量設定など医療上充足されていないニーズを満たす医薬品等について、速やかな患者アクセスを確保し、また、技術の進展を活用し、医薬品の品質管理や安全対策のレベルの向上を図るため、医薬品、医療機器等の承認審査に関する制度を見直します。
また、医薬品・医療機器等の革新性に対しては適切な医療保険での評価を行うこととし、医薬品開発に関わる人材育成体制の整備を充実させます。PMDA における予算拡充とレギュラトリーサイエンスの充実により、最先端の医薬品、医療機器及び医療技術に係る評価法について世
界に先駆けて提案できることを目指します。国際共同治験を推進することにより世界同時開発を加速するとともに、日米欧の規制当局・産業界により構成される ICH 等の活動を通じて各種ガイドラインの国際調和を進め、欧米に比肩できるよう、世界第一級の審査・安全対策を担う機関として PMDA の体制整備・拡充を目指します。加えて、日本で承認された革新的医薬品が速やかにアジア各国で受け入れられる体制の構築を目指します。
- 若年者・高齢者の就労支援、低所得高齢者 等への生活支援の拡充
子供の将来が生まれ育った環境によって左右されることのないよう子供の貧困対策を進めます。
若年者を中心に就労可能な者については、仕事へ就くよう促すため、求職者支援制度の活用等により就労を促進します。また、「生涯現役社会」の実現に向け、65 歳以降の定年延長や雇用継続を行う企業等を支援するとともに、70 歳までの就業機会の確保について制度化の検討を進めます。働くことを希望する高齢者については、ハローワークの「生涯現役支援窓口」における就職支援やシルバー人材センターの活用等により、多様な雇用・就労機会を提供します。生活に困窮している低所得高齢者等に対して、その実態に即した生活支援を的確に行うため、生活に困窮している方々の支援に精通した NPO 等の活用を図ります。また、単身高齢者や老々介護の増大などに対応するため、高齢者の生活の場となる養護老人ホーム、グループホームや特定施設などの整備を進めます。
契約を前提する社会において、判断能力が不十分なことによって不利益を被ったり、人間としての尊厳が損なわれることがないように、成年後見制度を充実させます。
- 休眠預金の活用
預金者等の権利の保護や払い戻し手続きにお ける利便性等に十分に配慮しながら、10 年以上にわたり入出金等がない、「休眠預金」を、子供・若者支援、生活困難者支援、地域活性化等支援 の 3 分野で民間公益活動を行う団体への支援に活用する「休眠預金等活用制度」を活用し、社会 の諸課題の解決に向けた取組みを一層進めます。
- 就職氷河期世代支援の推進
現在主に 30 代半ばから 40 代後半の就職氷河期世代は、不本意ながら不安定な仕事に就いている方々も多く、新型コロナウイルス感染症の影響などにより厳しい状況にある中、2020 年度から 2022 年度までの 3 年間の集中的な取組みにより、就労や社会参加を強力に支援していきます。
- 感染症に対する国産ワクチン・治療薬開発 の強化
新型コロナウイルス感染症とその変異株や、死に至るまでの時間が短いエボラ出血熱などを含む新興・再興感染症への対応を強化するため、「ワクチン開発・生産体制強化戦略」(2021 年 6 月閣議決定)に基づき、将来のパンデミックにも備え、国産ワクチンの産学官による研究開発力、治験機能・体制、製造段階を含めた企業における創薬力など開発・生産体制を抜本的に強化するほか、国産治療薬の研究開発・実用化の加速に向けた支援に取り組みます。
- 恩給の適正な水準を確保
国家・国民のために身命を賭して忠誠を尽くされた方及びそのご家族の生活を支えるための恩給は、国家補償として適正な水準を確保します。
- コロナでお困りの皆様への経済的支援
非正規雇用者・女性・子育て世帯・学生をはじめ、コロナでお困りの皆様への経済的支援を行います。
女性活躍
- 全ての女性が輝く社会の実現
第 5 次男女共同参画基本計画と女性活躍・男女共同参画の重点方針 2021(女性版骨太の方針)に基づき、全ての女性がそれぞれの生き方に自信と誇りを持ち、様々な分野で持てる力を最大限発揮し、輝くことのできる社会の実現を目指します。
- 政治の「場」で活躍する女性の支援
改正された「政治分野における男女共同参画推進法」に基づき、議員や候補者に対するハラスメントの防止のための研修等を実施します。IPU(列国議会同盟)の自己評価ツールキット等を活用し、国会において女性が活躍しやすい環境を整えます。また、地方議会の女性議員の
増加を図ります。
- コロナ禍における女性の就業
コロナ禍が特に女性の就業に強い影響を及ぼ していることを踏まえ、女性の経済的自立を強 力に支援します。コロナ後の成長産業であるデ ジタル業界やトラック運送等の業界に着目し、 女性人材の育成や労働移動を推進します。デジ タル分野で必要な基本的なスキルの獲得に向け た職業訓練等の実施に一層取り組みます。また、地域女性活躍推進交付金を拡充し、地方公共団 体による女性デジタル人材の育成を支援します。トラック運送等の業界が行う、女性を含む未経 験者による大型自動車運転免許の取得の支援等 の取組みを後押しします。
全国の小学校、中学校、高校に、1 校に 1 人ICT 支援員を配置することを検討します。併せて、特にコロナ禍で失業等の状況にある女性に向けて、ICT 支援員に必要なスキルの習得を支援します。
ひとり親に対する高等職業訓練促進給付金の支援対象の拡充の継続的実施など、中長期的な自立につながる支援策の強化を図ります。
- 女性活躍の「場」の更なる拡大
2020 年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が 3 割程度となることを目指し、幅広い分野における政策・方針決定過程への女 性の参画を「見える化」等の手法を活用して拡 大します。
改正女性活躍推進法に基づき一般事業主行動計画の策定等の義務付けの対象となる中小企業に対し、きめ細やかな相談対応やアドバイス、支援のための専門家の養成等を行います。更に、同法に基づく認定を受けた企業を公共調達において加点評価する取組みについて、国の機関や独立行政法人等に対し、加点割合の引上げ等を要請するなど、企業の認定への意欲を高める方策を実施します。
また、上場企業に対し、女性等の管理職への登用等における多様性の確保についての考え方や目標を示すよう定めているコーポレートガバナンス・コードについて、その実施状況をフォローアップし、適切な実施がされていない企業に対しては強く改善を求めます。
企業における女性役員の割合を 12%とすることを目指します。そのため、女性役員の登用が進んでいない要因の調査や女性割合の高い企業の取組み事例の横展開を行います。
SDGs の全てのゴールの実現には、分野横断的な価値としてジェンダー平等の実現が不可欠であり、女性活躍の取組みを一層強化します。
- 女性の起業支援
起業家に占める女性の割合を 3 割にすることを目指します。女性起業家の支援事例や支援手法の共有、支援者の連携強化等により、女性起業家の事業環境の向上や支援体制、支援内容の充実を図ります。
- 地域の「場」での女性活躍
暮らしに身近な防災に取り組むことを通じて 地域活動の中核を担う女性が多くいます。こう した女性を支援するため、地域の防災活動に取 り組む女性リーダーの先進的な事例の横展開や、全国の女性防災士のネットワークづくりの支援 等を行います。
農業委員会に関する法律や農業協同組合法の規定に基づき、女性の農業委員や農協役員が登用されるよう、いまだに女性が 0 である農業委員会や農協に対する働きかけや支援を重点的に行うとともに、各市町村・農協の目標・実績について「見える化」を行います。
農林水産業で働く女性にとって扱いやすく、 かつ高性能な機械の開発や普及によるスマート 農林水産業を推進します。また、女性林業者が 主体的に行うブランディングやマーケティング、漁村女性の経営能力の向上、特産品の加工開発、直売所の運営を支援します。
- 教育・科学技術分野での女性活躍・人材育成
大学の理工系教員(講師以上)に占める女性の割合について、理学系は 12%、工学系は 9% とすることを目指すとともに、理工系の学生に占める女性の割合を毎年度伸ばしていきます。そのため、私立大学等経常費補助金をはじめ、
大学への資源配分において、教授等への女性登用に対するインセンティブ付与を検討します。また、IT 分野をはじめとした理工系分野において、特に女性の身近なロールモデルを創出するとともに、学校推薦型選抜や総合型選抜に女子を対象とする枠の設定やオープンキャンパスの実施、女子学生向けの STEAM 教育拠点の整備、理系分野で優れた業績を残している女性研究者の話を聞くことができる機会の充実等の総合的な支援策を講じます。
初等中等教育機関の校長等に占める女性の割 合を 2025 年に 25%とすることを目指します。そのため、女性活躍推進法に基づく「見える化」 を促進するとともに、教育委員会における管理 職人事担当者等が参加するフォーラムを開催し、課題の把握と地域の実情を踏まえた登用方策
(メンター制等)の検討を行います。大学や高校等の入学者選抜において、性別を理由とした不公正な取扱いは決して許容されません。そのような取扱いが行われることのないよう、周知徹底を図ります。
- 国際社会の「場」で女性活躍
乳幼児死亡率と母親の識字率との間に高い相 関関係があるとの研究成果が発表されています。途上国の女子教育の普及を支援するとともに、 男女別統計調査を奨励し、各国の予算やわが国 の ODA が確実に女性・女児に届くよう政策を強化します。
看護師、助産師、保健師の育成を支援し、日本式母子手帳の普及に努めます。
児童婚、児童買春は根絶させなければなりません。多国籍企業が女性や児童に最悪の状態の労働を強要しないよう国際的な行動規範を強化し、わが国は率先垂範します。
国際機関等で活躍する女性職員への支援を一層強化することで、国際社会におけるわが国の地位向上に努めるとともに、帰国後の就業機会の拡充、労働条件の改善を図ります。
- 困難な状況にある女性への寄り添い
コロナ禍において DV の相談件数は 1.6 倍、性犯罪・性暴力の相談件数も 1.2 倍となるなど、女性は厳しい状況に置かれています。こうした影響は平時における男女共同参画の取組みの遅れが顕在化したものであり、コロナ対応をきっかけに始めた事業については平時からも実施していく必要があります。
女性に対するあらゆる暴力を根絶します。 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの体制強化のため、相談員の処遇改善や支援員の人材育成等を図るとともに、全国共通短縮番号(#8891)の通話料無料化やセンターの 24 時間 365 日対応化等を推進します。
刑事の実態法・手続法に関し、暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方、地位・関係性を利用した犯罪類型の在り方、いわゆる性交同意年齢の在り方、性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の在り方、公訴時効の在り方、司法面接的手法による聴取結果の証拠法上の取扱いの在り方等について検討を進め、検討結果に基づいて、法改正を含め所要の措置を講じます。
性犯罪の加害者・被害者・傍観者にならないための「生命(いのち)の安全教育」について、予防啓発教材を活用したモデル事業を実施し、その成果や課題を踏まえ、全国への展開を図ります。
教育・保育施設等や子供が活動する場において、子供に対するわいせつ行為が行われないよう、行政機関が保有する情報を集約・活用し、有償、無償を問わずその職に就こうとする者から子供を守ることができるような仕組みの構築等について検討し、子供をわいせつ行為から守る環境整備を早急かつ強力に進める。
配偶者暴力への対策の強化のため、民間シェルター等が行う先進的な取組みの推進や「DV 相談プラス」などによる相談・被害者支援の更なる充実を図ります。また、加害者プログラムに係る基礎的なガイドラインの策定や、配偶者暴力対応と児童虐待対応の連携を進めます。毎年 4 月の「若年層に対する性暴力被害防止月間」に、SNS 等の若年層に届きやすい広報媒体を活用した啓発活動を行います。いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・「JK ビジネス」問題等の被害を根絶するための対策を推進します。
障害のある女性については、障害に加えて女性であることで更に複合的に困難な状況に置かれている場合があることに留意しながら、防災・防犯等の推進、自立した生活の支援・意思決定支援の推進、保健・医療の推進等の分野における施策を推進します。障害者の性別に留意した情報・データの充実を図ります。
様々な困難や不安を抱えながらも支援が届いていない女性が多くいることを踏まえ、NPO 等の知見を活用した女性に寄り添った相談支援や互いに支え合うことができるような居場所の提供等、地域の実情に応じた取組みについて地域女性活躍推進交付金を拡充して支援します。また、コロナ禍で顕在化した「生理の貧困」は女性の健康や尊厳に関わる課題であり、同交付金により、地方公共団体において、生理用品の提供だけでなく、それを一つのきっかけとして女性の背景や事情に丁寧に向き合い、寄り添った相談支援を充実させることを促します。
安全・安心で健やかな妊娠・出産、産後を支援するため、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援体制の充実に取り組みます。また、予期せぬ妊娠等により、不安を抱える若年妊婦等を支援します。
- 男性も女性も仕事と子育て等を両立できる環境整備
改正育児・介護休業法を円滑に施行し、男性が希望に応じて 1 か月以上の休業を所得できるようにするとともに、配偶者の出産を控えた男性労働者等に対する育児休業の意義・目的の周知や、助成金による支援等を実施します。
また、テレワークや選択的週休 3 日制など、多様で柔軟な働き方を選択できる環境を整備します。女性活躍推進法に基づき、一般事業主に対して、多様な働き方を可能にする制度の導入状況の公表を促すため、第三の情報公表カテゴリーを設けるなどの方策を検討します。
国家公務員についても、業務効率化・デジタル化及びマネジメント改革を徹底し、長時間労働を是正します。国会においても、質問通告の早期化などを行います。
男性による育児・介護や家事への参画に対する機運の醸成を図ります。併せて、東京 2020 大会におけるジェンダー平等のムーブメントを継承し、固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)の解消に取り組みます。
- 女性の健康について
女性の健康を脅かす、乳がん、子宮頸がん、骨粗しょう症等の予防や、検診の受診促進を支援するとともに、妊娠期等の心身の特性に応じた保健医療サービスの連携体制を整備し、女性特有の病気や性差を考慮した医療を推進します。子供を持ちたいという方々の気持ちに寄り添
い、不妊治療への保険適用を早急に実現します。保険適用までの間、所得制限の撤廃や助成額の増額等の支援を行います。医学的に妊娠・出産に適した年齢、計画的な妊娠など、妊娠の計画の有無に関わらず、早い段階から妊娠・出産の知識を持ち、自分の身体への健康意識を高めることができるよう、地方公共団体の優良事例を共有するなど教育・普及啓発を推進します。
いわゆるフェムテック関連製品について、正確な情報を提供しつつ、性能や品質が担保された上で、消費者に速やかに普及することができるよう、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」上の位置づけと必要な規制の詳細等について産官で議論します。また、働く女性の月経や妊娠・出産、更年期障害等、女性特有のライフイベントに起因する望まない離職を防ぐため、フェムテック製品・サービスの利活用を促す仕組みづくりを支援します。
予期せぬ妊娠の可能性が生じた女性が、緊急避妊薬を処方箋なしに薬局で適切に利用できるようにすることについて、国内外の状況等を踏まえ、検討を進めます。
- 女性活躍のための制度・基盤
人生 100 年時代が到来し、未婚・単身世帯の増加、離婚件数の増大、ひとり親の増加等、わが国の家族の姿は大きく変化しています。令和の時代にふさわしい各種制度の在り方について検討を進めます。
非正規雇用労働者に女性が多いことを踏まえ、非正規雇用労働者の待遇改善を図るとともに、 女性の正規化への重点的な支援を図ります。
働き方の多様化を踏まえつつ、働きたい女性が就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点や格差是正に向けて所得再分配機能を確保する観点等から、女性の視点も踏まえた税制や社会保障制度等を検討します。
離婚後の養育費の不払解消のため、離婚前後親支援モデル事業の活用に向けて地方公共団体の取組みを促します。養育費等の制度を見直す法改正に向け、実効性の高い法的支援・解決の在り方等の分析のため、利用者目線のモデル事業の実施を始めとする実証的調査研究を進めます。
農林水産
- わが国の食と活力ある農業・農村を次の世 代につなぐために
農業・農村は、国民生活に不可欠な食料を供給する機能とともに、その営みを通じて、国土の保全等の役割を果たしている、「国の基」です。
担い手の育成・確保や農地の集積・集約化を進めるとともに、規模の大小や中山間地域といった条件にかかわらず、農業経営の底上げにつながる対策を講じ、幅広く生産基盤の強化を図ります。
また、活力ある農村を実現するため、美しい棚田や田園風景が守られるよう、農村施策を推進します。
これらの施策を通じて、農業・農村の持続性を高め、食と環境を次の世代につないでいきます。
- 食料自給率・食料自給力の維持向上
将来にわたって国民に食料を安定的に供給するため、国民が求める多様な農産物の需要に応じた生産の拡大を進め、食料自給率・食料自給力の向上を図る対策を強化します。また、食料・農業・農村基本計画で定められた 2030 年度を目標年次とする食料自給率目標(カロリーベース45%、生産額ベース 75%)の達成を目指します。
- 新型コロナ感染症により影響を受けた農林水産業者等への支援
新型コロナウイルス感染症の影響による需要の減退等に対応するため、米など農林水産物の販売促進・販路の多様化(子供食堂や学生向け等を含む)、資金繰り支援等を行うとともに、外食産業への支援を行います。
- 「みどりの食料システム戦略」の実現に向 けた技術の開発・普及
わが国の食料・農林水産業は、生産者の減少、地球温暖化、大規模自然災害等の課題に直面しています。今後、SDGs や環境を重視する国内外の動きが加速していく中で、これらに的確に対応するため、農林水産業や地域の将来も見据え た持続可能な食料システムの構築を目指します。
その実現に向けて、カーボンニュートラルなど、地域・農林漁業者等の実態に応じた環境負荷低減に向けた取組み支援や法的な枠組みを検討し、生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を強力に推進します。
- TPP 対策等の着実な実施
TPP11 や日 EU・EPA 等による農林漁業者の将来への不安を払拭するため、「総合的な TPP 等関連政策大綱」に基づき、引き続き、農林漁業者の 体質強化を後押しするとともに、拡充したマル キン等の着実な実施により経営安定を図ります。
国際貿易交渉にあたっては、わが国の農林水産業が国民への食料の安定供給等の極めて重要な役割を果たしていけるよう、攻めるべきは攻め、守るべきものは守るとの考え方に立って、しっかりと交渉に臨みます。
- 農林水産物・食品の輸出力強化の取組みの実施
2025 年 2 兆円、2030 年 5 兆円の輸出額目標の達成に向け、マーケットインやマーケットメイクを推進し、以下の取組みを進めます。
①産地・事業者の育成、品目団体の組織化の促進
計画的にマーケットイン輸出に取り組む産地・事業者の育成に向け、産地における生産基盤の強化、有機栽培の拡大、HACCP 等に対応した施設や予冷機能などを備えた集出荷貯蔵施設の整備、新技術の実装、GFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト)を活用したビジネスマッチング等を支援し、大ロットかつ効率的な輸出の実現を図ります。
生産から海外での販売事業者を包含し、オールジャパンでの輸出を推進する品目団体の組織化を促進します。
②戦略的サプライチェーンの構築等
輸出産地と海外市場の間の物流・商流づくりや、市場調査及び開拓支援などを重点的に進めた戦略的サプライチェーンの構築を図ります。輸出に取り組む農林水産事業者・食品事業者
に対する様々な資金ニーズに対応した金融支援や金融機関からの融資を円滑化するための支援を検討します。
輸出物流の構築や加工食品の輸出向けに必要な施設等の整備に対する金融・税制を含めた支援の検討を進めるとともに、輸出物流については、鮮度保持・品質管理や物流効率化を図るために必要なパレット化に適した外装サイズやコード等の規格化・標準化を進め、加工食品の輸出については、地域の特色ある中小事業者が連携して取り組む海外市場調査、販路開拓、新商品開発等を推進します。
地理的表示(GI)の諸外国との相互保護を推進します。
これらの対策の実現に向けて、「輸出促進法」を改正して主要な輸出品目ごとに品目団体を法的に位置付けることや、予算・金融・税制上の措置の検討を進めます。
- 知的財産の保護
「改正種苗法」のもと、種苗の海外流出を防止するとともに、「家畜改良増殖法」と「家畜遺伝資源法」のもと、わが国固有の財産である和牛を守ります。
- 米政策の推進
価格の安定が喫緊の課題であることを鑑み、需要に応じた生産・販売が行われるよう、水田フル活用予算(産地交付金含む)は責任を持って恒久的に確保します。また、輸出などの新市場開拓に向けた産地と実需者との連携に基づく低コスト生産の取組みを支援(水田農業のリノベーション)します。
飼料用米の多収化や低コスト化などに取り組み、食料自給率の向上と畜産のブランド力強化につながる理想的なサイクルを実現します。
作柄等に柔軟かつ的確に対応するため、主食用米を長期計画的に販売する取組みや輸出用など他用途への販売を行う取組み等への支援を拡充し、ナラシ対策を安定的に実施します。
米及び米加工食品(パックご飯、米粉、日本酒を含む)の国内の需要の拡大を図るとともに、海外市場の開拓や輸出産地の育成などを強力に推進します。
更に、新型コロナウイルス感染症拡大による影響を受けた米農家を支援するため、食育活動を行う子供食堂等へ提供する際の食材の調達費、資材費等を支援します。
- 新型コロナ感染症拡大による米の需要減少対策
米については、コロナによる需要減に相当する量に対応する新たな特別枠を設け、中食・外食、生活弱者等への米の提供を支援し、販売環境を整備します。また、一時的な収入減少に対しては、収入減少影響緩和交付金や収入保険で対応し、これが支払われるまでの間、無利子融資を行います。
- 国産需要に応える大豆・麦の生産拡大
2030 年度に大豆の生産量を 2018 年度の 21 万トンから 34 万トン、麦の生産量を 2018 年度の76 万トンから 108 万トンへ拡大し、国産需要を確保します。また、国産シェアを拡大するため、実需との結び付きを強め、需要に応えた品質の麦・大豆の安定供給が着実に拡大するよう、作付の団地化と営農技術の導入、共同乾燥・調製施設の整備等による産地の生産体制の強化・生産の効率化を推進します。更に、作柄変動の大きい国産の供給力を安定させるため、民間保管施設の整備、一時保管に対する支援により安定供給体制を確立します。
- 収入保険制度の加入促進
全ての農産物が対象で、自然災害や価格低下などあらゆる収入減少のリスクに対応できる収入保険の加入を促進します。
- 畜産・酪農の生産基盤の強化
「畜産クラスター」等により、畜産・酪農の生産基盤の強化を図ります。
①畜産・酪農の省力化の推進等
キャトルステーションの整備や預託の仕組みなどを活用し、肉用牛の地域内一貫生産を推進します。
乳用後継牛の育成体制の整備、酪農ヘルパーの活用や搾乳ロボット等の省力化機械の導入により労働負担の軽減、飼養管理の効率化等を推進します。
国産チーズの競争力を高めるため、原料乳の低コスト・高品質化の取組みの強化、製造コストの低減と品質向上・ブランド化等を推進します。
新たに成立した「畜舎建築特例法」に基づき、建築コストの削減や省力化機械の導入による畜産農家の負担軽減を推進します。
②輸出拡大と環境負荷の軽減等
輸出拡大の主翼を担う畜産物の輸出について、輸出目標の達成に向けて、オールジャパンの取 組みに加え、生産者・食肉処理施設等・輸出事業者の 3 者から構成されるコンソーシアム(事業共同体)による取組みを支援するほか、輸出施 設の計画的な整備や輸出認定の迅速化を推進し ます。
畜産・酪農における持続的な生産を図るため、温室効果ガスなどの環境負荷の軽減と、良質な堆肥の生産・広域流通等による資源循環の拡大を推進します。
輸入飼料依存から脱却し、国産飼料基盤に立脚した畜産・酪農経営を確立するため、不安定な気象に対応した草地改良、飼料生産組織の育成、飼料用米・飼料用とうもろこしに加えエコフィード等の多様な国産飼料の生産・利用拡大、耕畜連携、放牧等を推進します。
③畜産・酪農の経営安定等
「改正畜安法」のもと、公平かつ安定的な取 引等により指定生乳生産者団体の機能を発揮し、酪農経営の安定、あまねく地域からの確実な集 乳を確保します。労働負担の軽減に資する機械 の導入や酪農ヘルパーなど外部支援組織の強化 などにより酪農の働き方改革を推進します。
意欲ある生産者が経営の継続・発展に取り組めるよう、畜種(酪農、肉用牛繁殖・肥育、養豚、採卵鶏)ごとの特性に応じて畜産・酪農の経営安定対策を着実に実施します。
また、養蜂の振興に向けた取組みを支援します。
- 農作物の産地強化対策
「産地生産基盤パワーアップ事業」により、果樹・野菜・花きなど全ての農作物を対象に、品質向上・コスト低減や高収益作物・栽培体系への転換などを強力に支援します。
- 園芸作物の生産体制の強化
マーケットニーズに対応した園芸作物の供給力を強化します。
①野菜の生産振興等
機械化や規模拡大、流通の合理化等の生産流通体制の整備の推進により、需要が拡大する加工・業務向け野菜を中心とした国産野菜の生産量について、2018 年度の 1,131 万トンから 2030 年度までに 171 万トン増産し、1,302 万トンを目指すとともに、経営支援策や高品質化支援策の強化等により、需要に即した収益性の高い産地づくりを進めます。
国産野菜の需要拡大のため、機械・施設の導入等による水田を活用した新たな園芸産地の育成、作柄安定技術の導入等による加工・業務用野菜の安定供給、鉄道貨物輸送や内航海運の活用による流通の合理化等により、生産流通システムの構造改革を実施します。野菜価格安定対策の円滑な推進により、野菜農家の経営安定を図ります。
②果樹の生産振興等
輸出も含め、様々なニーズに対応した、高品質な果実の生産維持・拡大に向け、基盤整備、改植支援、未収益期間対策、労働力確保対策等を推進します。また、ストレート果汁など国産の強みを生かした果実加工品の供給拡大に向け、作柄安定技術の導入等による原料果実の安定確保対策を推進します。
③花きの生産振興等
「花きの振興に関する法律」に基づき、国産花きの生産・供給体制の強化や、花育の普及、プロモーション活動等による国産花きの需要拡大を推進するとともに、需給構造の変化に対応するための取組みや輸出拡大に向けて国内外へ国産花きをアピールする取組みを推進します。
④施設園芸の生産振興等
施設園芸の大規模化・省エネ化等によるコスト低減や、高度な環境制御による次世代型の高収益な施設園芸の展開を推進するとともに、燃油価格の高騰の影響を受けにくい経営構造への転換を進めます。農業用ハウスの補強等により、自然災害に対する強靱化対策を進めます。
また、既に措置されている施設園芸農家の経営安定のための農業用 A 重油の免税・還付措置は今後も継続を目指します。
- 地域に根ざした特産作物の振興
「お茶の振興に関する法律」に基づき施策を推進し、国内外の需要拡大を通じ、茶の生産を2018 年の 8.6 万トンから 2030 年には 9.9 万トンまで拡大することを目指します。甘味資源作物については、生産体制の強化、地域の雇用確保も視野に入れた経営支援策の実施により生産・経営の安定を確保します。
茶の経営安定に資するよう、国内外のニーズに合わせ、高品質化・生産安定に向けた改植・未収益期間への支援、有機栽培や輸出向け栽培への転換支援、担い手への集積等に伴う茶園整理への支援、防霜ファンの整備を推進するとともに、燃油価格の高騰の影響を受けにくい経営構造への転換に対する支援を進めます。
台風等の自然災害の多いさとうきびのセーフティネット基金を活用した生産回復の取組み推進、産地ごとに作成したさとうきび増産プロジェクトの着実な推進、土づくり支援、かんしょ・ばれいしょを含めた甘味資源作物の作業効率化のための機械化一貫体系の確立や砂糖製造業における働き方改革の推進を図ります。かんしょ・ばれいしょ・てん菜の病害虫防除対策など作付支援や需要に応じた作物の生産拡大など畑作の持続的な生産体系の確立を推進します。そばの需要に応じた生産振興を推進します。
- 種子の安定供給
種子の安定供給のため、これまで通り、都道府県への地方交付税をしっかり確保します。
- 都市農業の振興
市民農園など、都市住民が都市農業に触れ合う機会を拡大するとともに、「都市農業振興基本法」等の理念に基づき、都市農業の安定的な継続と都市農地の有効な活用をはかる生産緑地を対象とした新たな貸借の制度の適正かつ円滑な運用を進めます。
- 担い手の経営発展支援(農地の集積・集約化、法人化の推進)
人・農地プランを法定化し、中小・家族経営等を含む地域における担い手に対し、農地バンク、農業委員会など関係機関が一体となって、農家負担のない農地整備事業の活用等を通じて、農地の集積・集約化を進めるとともに、その経営発展を支援します。受け手のいない農地について、放牧等による持続可能な土地利用を進めます。
法人経営、家族経営、集落営農、企業などの多様な担い手に対するスーパーL 資金等の融資、税制、出資等の支援を行い、こうした支援等を通じて、経営のレベルアップ等につながる法人化を推進します。リース方式による企業の参加を促し、企業の持つ販路や経営ノウハウを活用します。
- 多様な担い手の育成
農業の多様な担い手を育成します。世代間バランスを取り、家族経営、法人経営、集落営農、企業等の多様な担い手が共存する構造を創ります。
新規就農者の確保を促進するため、親元就農を含めた新規就農者に対する資金の支援や、地域のサポート体制の整備、農業大学校・農業高校等の農業教育の充実等を支援します。
また、女性の一層の活躍の推進や、外国人材の確保と受入れを支援します。
- 耕作放棄地対策
耕作放棄地ゼロを目指します。新たな耕作放棄地発生を予防するとともに、農地として再生利用可能な耕作放棄地のフル活用を図ります。耕作放棄地の再生利用にあたっては、農地法 に基づき、農地バンクを活用します。また、農業者、農地バンク等が行う耕作放棄地の再生作業や土づくり等を支援します。併せて、生産基盤整備による耕作放棄地発生の予防及び再生利用の推進を図ります。
- 生産資材価格形成の仕組みの見直し、流通・加工の業界構造の確立
生産資材の価格引下げや使用量の低減などの効率的な利用に向けた取組みを更に進め、農業者が生産資材を安定してより有利に利用できる環境をつくります。卸売市場の活性化、物流標準化・DX を進め、生産者にメリットのある流通・加工構造を構築します。
- 強い農業の基盤づくり(農業農村整備事業 の推進)
新たな「土地改良長期計画」に則して土地改良事業を着実に推進します。政権交代前の予算を超える水準まで回復した本事業について、スマート農業や水田フル活用等につながるよう、引き続き、予算の確保を図ります。競争力強化のための農地の大区画化や汎用化・畑地化、新たな農業水利システムの構築、国土強靱化のための農業水利施設の適切な更新・長寿命化、省エネ化・再エネ利用、ため池の防災・減災対策や農業用ダムの洪水調節機能強化、集落排水や農道等の生活インフラの整備等を推進します。
また、農業・農村の構造変化に対応できるよう、土地改良区の運営体制の強化を図る取組みを推進します。
- 農山漁村発イノベーションの推進
1 次産業、2 次産業、3 次産業の連携による付加価値の高いビジネスの展開を促進し、需要に応じた新たなバリューチェーンの構築や地理的表示制度の活用を推進するとともに、農山漁村の地域資源を活用した農山漁村発イノベーションの取組みを推進して、農林水産物・食品の高付加価値化や、地域の所得の増大と雇用機会の創出を実現します。また、集落営農等を母体とする 6 次産業化・地産地消への取組みを支援し、地域の農林漁業者、観光事業者、学校給食等の様々な事業者のネットワークを構築します。マーケティングに精通し、6 次産業化に取り組む農林漁業者の経営改善の取組みを支援する人材の育成・確保を図ります。販路と商品化のノウハウをもつ企業等の活動を支援します。
更に、これらの取組みの推進に当たっては、地域コミュニティを支える農村地域づくり事業体(農村 RMO)も事業主体となりうるよう支援を行います。
- 農福連携の推進
障害者等の農業分野での活躍を通じ、自信や生きがいの創出と社会参画を促す農福連携の取組みを強力に推進します。障害者・生活困窮者の自立や高齢者の健康・生きがいの向上のための福祉農園の整備、農業者が障害者を受け入れる際に必要となる安全設備等の整備、障害者が農業技術を習得するための研修等を支援し、障害者等の社会参画を促します。
- 日本型直接支払制度の推進
農業・農村の有する国土保全、水源かん養、自然環境保全等の多面的機能が今後とも適切に発揮されるようにするため、「農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律」によって法制化された「日本型直接支払制度」を着実に実施し、水路・農道等の地域資源の管理のための共同活動、中山間地域等の条件不利地における農業生産活動、環境保全効果の高い営農活動等を支援するとともに、担い手への農地集積などの構造改革を後押しします。
- 中山間地域等の振興
中山間地農業を元気にします。平地との格差を埋め、営農継続を支援する中山間地域等直接支払制度などを着実に実施していきます。また、中山間地域等の条件不利地においても、中山間地農業ルネッサンス事業等により、優先枠を設定し、創意工夫を発揮して収益性の高い農産物の生産等に取り組む意欲ある地域・農業者を積極的に支援します。
更に、これらの施策を含め地域政策の総合化を図り、地域コミュニティを支える農村地域づくり事業体(農村 RMO)の形成を支援します。
加えて、これらの地域政策と産業政策を車の両輪として進めていく上で土台となる水利施設等の生産基盤の整備も積極的に推進することにより、中山間地域の特性を生かした農業と地域の活性化を推進していきます。
- 棚田地域の振興
「棚田地域振興法」に基づき、棚田の保全、観光資源化など棚田を核とした地域振興の取組みを関係府省庁一体となり支援します。
- 「農泊」の推進
古民家などの活用を通じて、農村地域の伝統的な生活体験と非農家を含む農村地域の人々との交流を楽しむ「農泊」を地域が主体となって推進するなど、インバウンドの受入れも含め都市農村交流により、農山漁村の所得向上や農村への関心層の創出・拡大を実現します。
- 鳥獣被害対策・ジビエ利用の推進
鳥獣被害対策に全力で取り組みます。暮らしや農林業に深刻な被害を及ぼすシカ・イノシシ・
サルの生息数等を 2023 年度までに半減させることを目指し、市町村に設置される鳥獣被害対策実施隊を中心とした地域ぐるみの総合対策を推進するとともに、捕獲鳥獣のジビエ活用を推進します。
「改正鳥獣被害防止特措法」に基づき、鳥獣 被害対策実施隊の体制強化を図るとともに、都 道府県による広域的な捕獲など捕獲対策の強化、捕獲効率の向上や省力化にもつながるスマート 捕獲技術の導入促進、狩猟者確保のための射撃 場の整備、焼却施設の設置を支援します。更に、 捕獲鳥獣のジビエ利用量を 2025 年度までに倍増させることを目指し、需要開拓や国産認証制 度の普及を図るとともに人材育成、ジビエモデ ル地区の取組みの横展開等を支援します。この ほか、年間を通じた許可捕獲の運用など自治体 単位の柔軟な対応を推進します。
森林・林業においてもシカによる被害が深刻化しており、林業関係者が主体となった広域かつ計画的な捕獲・防除と監視体制の強化を進めます。
- 農協改革の推進
JA グループが農協組合員の判断に基づき創意工夫により取り組んでいる自己改革を後押しします。
- スマート農業等の推進
スマート農業を推進します。中山間地を含めロボット、AI、IoT など先端技術の生産現場への導入を促進するため、導入コストを低減する実証や、農村通信環境の整備、教育等を含めた総合的な取組みを推進します。併せて、国・都道府県・大学・民間企業の「知」の総力を結集し、新たな価値を生み出す品種や農作業の負担軽減等につながる技術開発など、現場と一体となって、農林漁業者等への実装までを視野に入れた技術革新を進めます。
また、様々な農業生産関連データの連携、共有、提供が可能な農業データ連携基盤について、範囲を加工、流通等まで拡大し、データを活用した農業を推進します。
- 食の安全・信頼の確保
飼養衛生管理の徹底や野生動物対策等により豚熱や鳥インフルエンザの発生予防とまん延防止に全力を尽くすとともに、発生農家等の経営再開を支援します。アフリカ豚熱等の家畜伝染病や病害虫の侵入を防ぐため、家畜防疫官・植物防疫官の増員等より空海港等での取締りを強化し、水際検疫に万全を期します。気候変動等により病害虫の侵入・まん延が懸念される中、化学農薬のみに頼らない、予防・予察に重点を置いた総合的な病害虫管理を推進します。動物医療分野における薬剤耐性対策等により、安心できる営農環境を守るとともに、食の安全・消費者の信頼確保を図る取組みを推進します。
全ての加工食品について、実行可能な方法で原料原産地表示を推進します。
また、都市と農山漁村の住民が共に行き交う共生・対流を図り、農業・農村に対する国民の意識を高め、子供の頃から農業・農村に親しむ取組みを推進します。
- 食文化・食育の推進、食品ロスの削減
「食育基本法」に基づき、食育を推進します。 子供にとっての貴重な共食の機会の場である、子供食堂と連携した地域における食育を推進します。
また、ユネスコの無形文化遺産にも登録された「和食」の保護・継承を図ります。「和食」を世界に正しく広め伝えていくため、日本食や日本の食文化の海外展開を戦略的に推進します。
更に、「食品ロスの削減の推進に関する法律」に基づき、様々な形での食品ロスを減らすために、消費者などの意識向上に尽力する等、食品の製造から消費に至るまでの一連の食品供給の行程全体で食品ロス削減国民運動を展開していきます。
- 環境と調和した持続可能な農業の展開
再生可能エネルギーの導入による利益の地域への還元を進め、農山漁村の活性化を図りつつ、安定した生産・流通・消費体制の整備、学校給食・外食産業等における国産消費拡大への支援、薬用作物の国内栽培振興支援、機能性農林水産物のほか、有機農業の拡大支援や土づくりをはじめとする「農業の自然循環機能に立脚した」技術に基づく持続可能な農業を推進するとともに、こうした農業により生産された農産物の国内安定供給体制を整備します。更に、食品ロスの削減推進、食品残さの飼料化・エネルギー化等リサイクルの活動を支援します。
- 東日本大震災及び福島原発事故に係る農林業再生等に全力
東日本大震災及び福島原発事故に係る農林業再生等に全力をあげます。国の責任を前提として、農地、農業用施設、施設園芸、海岸防災林等の再生に万全の対策を推進するとともに、農地の大区画化・利用集積や、高付加価値生産を展開する産地の創出、ため池等の放射性物質対策等の取組みを全力で支援します。原発事故の東京電力による賠償については適切かつ速やかに支払いが行われるよう徹底します。
福島県に設置した基金を活用し、避難区域等の営農再開を支援します。コメ、牧草、畜産物、野菜・果樹、原木しいたけ等について、必要な放射性物質の検査の実施や、除染・放射性物質の吸収抑制を徹底するとともに、消費者への安全・安心な食料の提供に万全を期し、消費拡大を図ります。更なる風評影響が生じないよう、対策の充実に努めます。
福島の森林・林業の再生に向け、「ふくしま森林再生事業」やしいたけ等原木林の計画的な再生等を進めるとともに、木材産業の復興等に取り組みます。
福島原発事故に伴う諸外国の日本産食品等の輸入規制については、米国、EU 等の多くの国・地域において撤廃・緩和が行われており、引き続き、撤廃・緩和に向けた働きかけを力強く行っていきます。
- 自然災害からの復旧・復興と防災・減災、国土強靱化のための緊急対策
近年の豪雨、地震等、頻発する自然災害に対し、被災した農林漁業者の一日も早い経営再開に向けて、農業用ハウスの再建や農地の改良・再編復旧等、きめ細やかな支援対策を継続的かつ適切に講じます。
防災・減災、国土強靱化のため、「ため池工事特措法」に基づく防災工事等を推進し、また、5 か年加速化対策において農業水利施設の整備や田んぼダム等の流域治水対策、農業用ハウスの補強等を加速して実施します。
- 森林・林業・木材産業によるグリーン成長の実現
新たな森林・林業基本計画に基づき、カーボンニュートラルを見据えた森林・林業・木材産業によるグリーン成長の実現に向け、再造林の確保や針広混交林等の森林づくり等による森林資源の適正な管理と林業・木材産業の持続的発展を推進します。
- 森林吸収源対策の推進
パリ協定を踏まえ、森林吸収源対策を推進します。2030 年度の森林吸収量の目標の達成や2050 年カーボンニュートラルの実現に向け、「伐って、使って、植える」森林資源の循環利用の確立を図るため、国産木材利用の拡大等の取組みとあわせて、路網整備、植林、下刈りや除伐・間伐等に支援する森林整備事業を推進していきます。
地域の森林整備の促進にも貢献する公的主体による奥地水源林の適切な整備、林業公社の経営改善の支援を図るとともに、林道橋等の既存施設の長寿命化に向けた取組みを推進します。
- 新技術を活用した林業のイノベーションの推進と「新しい林業」の展開
林業のイノベーションを推進し、林業の生産性を向上させます。特に、ICT 等を活用した森林資源情報等のデジタル化や適切な生産流通管理、機械の開発等による林業作業の省力・軽労化、エリートツリー等の普及・利用拡大等、新たな技術を活用した革新的な林業に取り組みます。
伐採から再造林・保育に至る収支をプラス転換する「新しい林業」を実現するため、新たな技術の導入による「新しい林業」経営モデルの構築、経営力の向上、労働安全強化対策等の取組みを推進します。
- 花粉発生源対策の推進
花粉症ゼロ社会を目指します。花粉症対策苗木への植替えや広葉樹の導入、花粉飛散防止技術の開発・実用化などを推進します。
- 林業を支える多様な担い手・人材育成
「緑の雇用」や緑の青年就業準備給付金により若い新規就業者の確保と定着を図り、森林総合監理士(フォレスター)、森林プランナー、オペレーター等林業技術者・技能者の育成を推進するとともに、森林組合、林業事業体、自伐林家など多様な担い手を育成します。
- 森林の経営管理の集積・集約化
森林環境譲与税も活用し、森林経営管理制度により林業経営者に森林の経営管理を集積・集約化するとともに、路網整備・間伐等を加速化します。また、森林環境譲与税等を活用した木材の需要拡大等を進めます。
更に、森林経営管理制度を円滑に推進するた めには、担い手の中核となる林業経営者の育成 が重要であるため、国有林野の一定の区域で、 公益的機能の確保や地域の産業振興等を条件に、一定期間・安定的に樹木を採取できる樹木採取 権制度の活用を図ります。
- 国産材の安定供給体制の構築(ウッドショ ックへの対応)
ウッドショックにより輸入木材の供給リスクが顕在化したことを踏まえ、輸入木材からの転換も含めた国産材の安定供給体制の構築を推進します。具体的には、森林所有者等の原木供給サイドと製材業者、工務店等との需給情報の共有、輸入木材の不足への対応も含めた国産材の供給力強化に資する木材加工流通施設の整備、効率的なサプライチェーンの構築を進めます。
また、国産材を低コストで安定供給するため、「森林経営管理法」に基づく経営管理の集積・集約化、森林経営の高度化、高性能林業機械の導入、急傾斜に対応した架線系集材技術の開発・普及、伐採と造林の一貫作業システムの導入、コンテナ苗の活用等を積極的に進めます。
- 「改正木材利用促進法」に基づく国産木材利用の拡大
森林・林業・木材産業によるグリーン成長を実現し、森林所有者や原木の生産者の所得の増大と地域の雇用の拡大を進め、山村の振興を図るため、国産木材の自給率 5 割を目標に生産流通構造改革と木材の利用拡大に総合的に取り組みます。
①住宅における木材利用
国産材需要の約半分を占める住宅分野において、梁や桁など国産材の利用が低位な部材での国産材シェアを高めるとともに、工務店と林業・木材産業関係者の連携による国産材を活用した住宅づくりを推進します。
②非住宅・中高層分野等における木材利用
「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(改正木材利用促進法)に基づき、公共建築物(学校など)における木材利用の徹底と支援、民間建築物における木材利用を促進します。
建築物への木材利用促進に当たっては、建築物木材利用促進協定制度を活用するとともに、経済界等の協力を得て、都市等において、非住
- 木質バイオマス利用の促進
山村地域の雇用と所得の拡大、山元への還元を確実にし、山村地域の活性化を図るために、地域の関係者の連携のもと、熱利用または熱電併給により、森林資源を地域内で持続的に活用する「地域内エコシステム」を構築し、木質バイオマスのエネルギー利用を促進するとともに、セルロースナノファイバー、リグニンなどのマテリアル利用を積極的に促進します。
- 森林所有者と境界の明確化
施業集約化、外国資本等による森林買収の防宅や中高層建築物への製材や CL(T直交集成板)止等を図るため、「森林法」や「森林経営管理法」を含めた木材の利用拡大を促進するとともに、JAS 無垢材の利用拡大に取り組みます。
加えて、耐火木材などの新たな木材製品・部材の開発・普及を併せて推進し、木材利用が低位なオフィスや店舗、工場、倉庫、事務所、工作物(ガードレールなど)等での木材の利用拡大に取り組みます。
災害公営住宅への国産材の積極的な利用を図ります。
③国民運動による木材利用の促進
心理面・身体面の効果など木材の良さを発信するとともに、国民運動としての木材利用促進に取り組みます。
- 合法木材の利用促進
「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(クリーンウッド法)に基づき、登録木材関連事業者の増加により合法伐採木材の利用を徹底するとともに、木材生産国における流通実態等の把握を進めるなど、地球温暖化防止等に資するための合法木材の利用促進に向けた取組みを強力に推進します。
- 国産木材の輸出促進
農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略に基づいて、木材の輸出を推進します。特にジャパンブランドの確立や川上から川下までの企業が連携した輸出産地の育成、国際競争力の高い生産体制実現のための加工・流通施設の整備等を通じて、海外市場で求められる付加価値の高い木材製品の輸出拡大を進めていきます。 - 木質バイオマス利用の促進
山村地域の雇用と所得の拡大、山元への還元を確実にし、山村地域の活性化を図るために、地域の関係者の連携のもと、熱利用または熱電供給により、森林資源を地域内で持続的に活用する「地域内エコシステム」を構築し、木質バイオマスのエネルギー利用を促進するとともに、セルロースナノファイバー、リグニンなどのマテリアル利用を積極的に促進します。
- 森林所有者と境界の明確化施業集約化、外国資本等による森林買収の防止等を図るため、「森林法」や「森林経営管理法」の規定を活用しつつ、市町村による林地台帳の整備、森林所有者に対する経営管理の意向調査、ICT 活用による森林情報の整備、地籍調査の加速化、森林所有者と境界の明確化等を推進します。
- 山村振興対策の強化
森林の多面的機能の発揮を支える山村の地域活動や林家の取組み(森林の管理、侵入竹への対応等)を総合的に支援します。
人口の減少と高齢化の進展、生活利便性の低下、鳥獣被害の激化等に鑑み、山村の維持・活性化に必要な観点から「山村振興法」に基づき、地域資源の活用に向けた交付金等により、山村活性化の支援を推進します。
きのこ、薬草、木炭など高収益や多様な利用が期待される特用林産物の生産・流通・販売体制の支援を強化します。加えて、健康・観光・教育など様々な分野での森林空間の活用を推進します。
- 国民参加の森林づくりの推進
森林・林業への国民理解の醸成、木材利用の促進の観点等も踏まえ、植樹活動等の国民運動を展開します。企業や NPO のネットワーク化などを進め、多様な主体が参加した森林づくりを推進します。
- 災害に強い森林づくり
近年頻発している集中豪雨や流木災害、地震等による激甚な山地災害から、国民の生活と暮らしを守るため、航空レーザ計測による崩壊危険地の詳細把握、治山施設等による荒廃地の早期復旧や予防対策、流木災害を防止する治山ダム等の整備、針広混交林等への誘導、海岸防災林の整備、間伐・再造林や代替路機能も有する林道の整備など、災害に強い健全な森林づくりを進めるとともに、特に早急に治山対策や森林整備等が必要な危険地区等において、5 か年の加速化対策を実施し、緑の国土強靱化を推進します。
- 新型コロナ問題に対応しつつ、水産改革・ 成長産業化を推進
新型コロナ問題で影響を受けた水産関係者が経営を継続できるように引き続き万全を期します。水産改革と成長産業化を着実に実行し、漁業者の所得向上と若者などにとって魅力ある漁業の実現を図り、 全国の浜を元気にします。具体的には、資源管理や収益性の向上に取り組む漁業者に対して、リース方式による漁船・漁具等の導入、生産性の向上、省カ・省コスト化に資する漁業用機器などの導入、 もうかる漁業・養殖業の実証等による漁船漁業の構造改革、積立ぷらす等の経営安定対策、新規就業者対策、水産物の加工・流通・消費の拡大対策など、DX・カーボンニュートラルも含む「水産日本」の復活に向けた取組みを引き続き支援します。
- 漁業者の経営安定の確保
漁船保険制度及び漁業共済制度は、自然環境 に左右されやすい漁業の再生産を確保し、漁業 経営の安定を図る役割を果たしていることから、漁業者ニーズヘの対応や国による再保険の適切 な運用などを通じて、両制度の安定的な運営を 確保します。
また、資源管理や漁場改善に取り組む漁業者に対し、「積立ぷらす制度」などの経営安定対策を引き続き実施するとともに、機能強化を図ります。
併せて、持続的発展のできる質の高い漁業となるよう日本版水産エコラベル (MEL 等)の普及と水産物のブランド化を支援するとともに、誇りと意欲をもって漁業経営を継続できる浜値となるよう、漁業者が魚の値決めに関与できる仕組みを工夫します。
また、漁業経営の一層の健全化に向けて取り組む漁業者が、必要とする資金を迅速かつ円滑に融通できるよう金利負担軽減などの金融支援を実施するとともに、保証制度についても無担保・無保証人でも活用できる制度を推進します。
- 燃油などの高騰への対策の実施
コストの多くを占める漁業用燃油・養殖用飼料価格の高騰から漁業経営を守るため、燃油価格などの高騰時に、漁業経営セーフティーネット構築事業により補てん金を交付します。また、漁業経営の安定のための漁業用 A 重油・軽油の免税・還付措置は今後も継続を目指します。
- 漁師になろう!漁業・水産業への新規就業 者を支援
地方の基幹産業である漁業・水産業に新しい力を注入し、漁村を活性化します。このため、新規就業希望者に対して細やかな情報発信を行える体制の構築や水産高校卒業生の海技士資格の取得を支援するとともに、外国人材の確保と適正で円滑な受入れを支援します。また、浜を牽引していく漁業者の経営能力の向上を支援します。更に、現場研修及び講習を行う漁業協同組合や水産関係団体・企業等の受入れ機関などに対する国による支援の拡充・強化を図ります。
- 漁業の構造改革
もうかる漁業・養殖業の実証により、高性能漁船の導入による新たな操業体制への移行、浜の構造改革を後押しするため、意欲ある漁業者へのリース方式による漁船導入を促進する支援策を引き続き講じ、漁業の収益性を向上させるとともに、居住性・安全性・作業性の高い漁船の計画的な代船建造を進めます。併せて、浜の構造改革を目指す取組みに必要な漁船・漁具等の導入を支援します。また、浜プランの実践による浜の構造改革を強力にサポートし、浜と企業とのマッチング活動の促進やガイドラインの策定などを通じ、浜と企業との連携などを円滑にするための取組みを行うとともに、漁船漁業における省人・省力化等のための技術開発、 人工衛星を活用した漁海況の把握・予測など ICT の利活用による漁業の効率化を促進します。
- 国産水産物の消費や魚食の拡大と地産地消の推進
水産物消費が大幅に減少している中、水産物を利用したいとの意欲のある学校給食などへの供給をはじめとした取組みを一層充実強化するとともに、教育現場での体験漁業の導入や地域水産物を活用した魚食の推進など、子供時代から魚に親しむ食生活の実現に向けた魚食普及の取組みを進めます。併せて、国産水産物の流通・消費を促進するために、全国各地の漁師自慢の魚である「プライドフィッシュ」の推進、低・未利用魚の活用や水産加工業者等への原材料の安定供給等のための水産物供給における平準化の取組み、新商品の開発、販路の拡大・開拓、特に内食需要への対応に当たっての手間がかかるといった水産物のマイナス特性を払拭する水産加工品や提供方法の開発などの課題に意欲的に取り組む漁協、漁連や水産加工業者等を支援します。
- 水産物の流通構造の改革
マーケットイン(※1)の発想に基づき、物流の効率化、 AI・ICT 等情報通信技術の活用、品質?衛生管理の強化、国内外の需要への対応を進め、生産、加工・流通、販売・輸出等の関係者が連携して水産物のバリューチェーン(※2)全体の生産性を向上させる取組みを支援します。また、IUU 漁業(※3)撲滅にも資する水産流通適正化制度の導入を、関係者の理解を得ながら丁寧に進めていきます。
※1 商品の企画開発や生産において消費者のニーズを重視する方法のこと。
※2 生産された水産物に付加価値を付けて、最終消費者に届けるまでの一連の流れのこと。
※ 3 「 違法・ 無報告・ 無規制( Illegal, Unreported and Unregulated)」に行われている漁業のこと。
- 水産物輸出の促進
世界的な水産物市場や日本食文化の広がりを踏まえ、2030 年までに農林水産物・食品の輸出額を 5 兆円(うち水産は 1.2 兆円)とする目標を見据えて水産物輸出を推進し、水産業の持続的発展による漁業・漁村の活性化を図ります。農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略に基づき、マーケットインの発想で輸出拡大に取り組む産地・事業者の生産基盤の強化や官民一体となった海外での販売力の強化等を図るとともに、HACCP(※)に基づく加工・流通施設整備への積極的支援や認定の加速化、輸出拡大の見込まれる大規模な拠点漁港等において一貫した衛生管理の下で共同利用施設などの一体的な整備等を推進します。また、輸入規制等の緩和・撤廃や、生産・衛生基準や各種証明を適切な内容とするための輸出先国との交渉などに取り組みます。
※食品の原料の受入れから製造・出荷までの全ての工程において、危害の発生を防止するための重要ポイントを継続的に監視・記録する衛生管理手法。
- 資源管理による水産物の安定供給の確保
産地市場・漁協等からの効率的なデータ収集 や資源調査の充実、資源評価の精度向上を図る ことにより、海の生産力を最大限活用し、最大 の漁獲量を持続的に得られるよう、資源評価に 基づく数量管理を基本とする資源管理を実施し、国際的に見て遜色のない水産資源の評価・管理 方法を導入します。これにより、国民に対する 水産物の安定供給の確保、浜の所得向上及び漁 業の成長産業化を図ります。また、種苗放流事 業については、地域の実情に応じた取組みに加 えて、ブロック単位等の広域的な取組みを積極 的に進めます。更に、サケ・マスの回帰率向上に必要な強い稚魚の生産と適期放流の体制への転 換、広域種の適切な放流費用負担の仕組みの構 築、ウナギ等の内水面資源の回復と適切な管理 体制の構築、スルメイカ、サンマ等資源状態が 悪化している魚種について、その原因解明に取 り組みます。
クロマグロをはじめ、国際条約などによる規制に応じた資源管理のための漁獲制限などについては、沿岸漁業者を含め可能な限り漁業者への影響が最小となるよう、漁業所得が減少する漁業者に対する経営安定支援を引き続き実施します。
鯨類については、鯨類科学調査を着実に実施するとともに鯨食普及や販売促進を支援するなど、再開された商業捕鯨の自立に向け着実な進展を図ります。
昨年 12 月に施行した改正漁業法による罰則強化の効果を最大限に高めるため、関係者が連携した漁業取締りの強化、漁業者による取組みへの支援等の総合的な密漁対策を推進します。
- 養殖漁業の成長産業化
養殖業の成長産業化に向けて、国内外の需要を見据えて国が定める養殖業に関する総合戦略に応じ、生産から販売・輸出に至る官民の関係者が一体となって取り組む協議会が策定する行動計画に基づき、輸出等を視野に入れた新技術を用いた協業化の促進や大規模沖合養殖システムの導入等による収益性向上のための実証等の取組みを支援します。また、養殖業の成長産業化を達成するために必要な低コスト・高効率飼料、人工種苗生産技術等の開発など、ボトルネックの克服に向けた技術開発・調査を推進します。併せて、既存漁業と調和しつつ沖合域における大規模静穏水域を確保するとともに、漁港の水域及び陸域の有効活用を積極的に推進して養殖適地の拡大を図ります。更に、漁業経営セーフティーネット構築事業による配合飼料に係るコスト対策や養殖用生餌の安定供給に対する支援を行い、養殖水産物の着実な消費・輸出拡大を図ることにより経営強化につなげます。
また、真珠の振興に関する法律に基づく基本方針に沿って、必要な施策を実施します。更に、河川・湖沼での漁場環境の改善や外来魚等の駆除など、内水面漁業振興対策を進めます。
- 国民の安全と国益を守る毅然とした水産外交及び外国漁船の違法操業対策の実行
外国漁船によって日本周辺水域での安全操業が脅かされている状況に鑑み、政府による強力な外交交渉を進め、日本の漁業者の安全操業の確保を図るとともに、取締船の新造及び老朽化した取締船の代船を進め、取締体制を強化することで外国漁船による違法操業の防止と日本周辺水域における資源管理の徹底を図ります。
カツオ・マグロ・サンマ・サバ・イカ・鯨など回遊性水産資源の持続的利用を効果的に図れるよう、わが国がリーダーシップをとって科学的調査に基づいた国際的な資源管理や捕鯨問題にも取り組むなど、国民の安全と国益を守る毅然とした外交交渉を行うとともに、ODA など国際協力を通じて海外漁場での安定的な操業を確保します。特に鯨類については、引き続き、国際機関と連携しながら科学的知見に基づく資源管理に貢献します。また、水産資源の持続的な利用という立場を共有する国々との連携を更に強化します。
WTO 交渉や EPA・FTA 交渉など貿易交渉においては、国益を第一に先達が築き上げてきた実績 と誇りを守る国際ルール作りに努めるとともに、地域において重要な基幹産業である水産業の国 際競争力強化に努めます。
- 漁港などの強靱化、安全で豊かな漁村づくりの促進
南海トラフ地震(※)津波などに備えて自然災害に強い漁業地域を目指し、漁港・漁村・海岸の防災・減災対策や老朽化対策を積極的に進めます。
漁港の集出荷機能の集約・強化や屋根付き岸壁の整備等による衛生管理対策を推進するとともに、漁船の大型化に対応した大水深岸壁、泊地等の整備を推進します。また、漁場の整備とともに、漁港の水域や陸域の増養殖の場等としての有効活用などを推進します。
併せて、整備の遅れている生活排水の処理など生活環境の整った安全で豊かな漁村づくりを進めます。
また、「浜の活力再生プラン」を全国の浜で進めることにより、担い手の確保・定着に向け、漁業者の所得を向上させるほか、都市住民などの漁村への訪問を促し、「海業」振興等により浜のにぎわいを復活させます。
南海トラフ及びその周辺の地域における地殻の境界を震源とする大規模な地震をいう。
- 水産の有する多面的機能の発揮、離島漁業再生支援
「水産多面的機能発揮対策事業」や「離島漁業再生支援交付金」、「特定有人国境離島漁村支援交付金」により国民に対しての多面的機能を提供する役割を担ってきた漁業や漁村を引き続き支援するとともに、ブルーカーボンに資する藻場・干潟の保全等の取組みの促進や、漁業・漁村が有する広大な国境監視のネットワーク機能等についての国民的理解の促進を行います。
- 有害生物の駆除と被害対策の確立
大型クラゲ、トド、アザラシ、ザラボヤ、カワウなど漁業被害を及ぼす有害生物や赤潮被害などについて、各種研究機関、わが国周辺の関係国とも密接な連携を行い、有害生物や赤潮の漁業被害の軽減のための研究調査を行います。 早期の有害生物の駆除など根本的な漁業被害発生の防止と軽減対策、有害生物発生や駆除作業に係る情報の関係漁業者への速やかな提供を行うなどの体制を整備します。
- 東日本大震災及び福島原発事故からの水産業再生の加速に全力
東日本大震災及び福島第一原発事故からの水産業再生を加速し、漁船・漁港・養殖施設など漁業生産基盤はもとより、水産加工施設や冷蔵施設・製氷施設など、関連産業施設の復旧・復興を進めます。また、水産加工業については、地域の水産物を用いた新商品の開発、新規販路開拓などの取組みを支援し、販路回復を進めます。原発事故による操業自粛などの直接被害、外国による輸入規制への対応及び風評被害対策については、輸入禁止措置の撤廃・緩和を働きかけていくとともに、各国に安全性を積極的にアピールし、一層の日本産食品の輸出拡大の実現など、漁業者への支援や安心確保を図ります。併せて、太平洋の海水、海底土及び水産物の放射線モニタリングを徹底し、今後予定される ALPS 処理水の海洋放出に伴う新たな風評への懸念があることから、水産物モニタリングの対象に新たにトリチウムを加えるとともに、漁業者が安心して事業を継続できるよう、万全な生産・加工・流通・消費対策を講じます。
地方創生・地方自治
- 地方創生を実現します
地方は少子高齢化や過疎化の最前線であり、地方の元気なくして日本の再生はありません。あらゆる政策に関し、すべての舞台は「地方」であり「ふるさと」です。引き続き地方の主体的な取組みを強力に応援し、地方が主役の「地方創生」を実現します。
テレワークの浸透や地方への関心の高まりなど、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う変化も見られる中、地域活性化の総合的司令塔として、科学的政策立案を活用し、地方創生の取組みを充実させ、積極的な展開を図ります。
- 地方創生臨時交付金等での支援
新型コロナウイルス感染症による影響からの回復を図るため、地方創生臨時交付金をはじめとした地方創生関連交付金を活用した地方の取組みを支援します。
- 地方創生推進交付金等での支援
コロナ後の地方創生に向けて、デジタル・トランスフォーメーションや脱炭素化を含め、各地域の特色を踏まえた地方の自主的・主体的な取組みを強力に後押しします。
それぞれの地方公共団体において、地方版総合戦略に基づき、自分たちの未来を、自分たちの創意工夫で切り拓く、意欲的なチャレンジが行われています。地方公共団体のこれらの意欲的な取組みを引き続き「地方創生推進交付金」等で積極的に支援し、地方創生の充実・強化を図ります。
また、地方創生は一朝一夕では実現しない、息の長い取組みです。このような施策により、今後も、地方公共団体のチャレンジを、安定的・継続的に支援していきます。
- 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税) の活用
企業が創業地などの地方創生プロジェクトを応援することを促進するとともに、地方公共団体が企業に地方創生の取組みをアピールするために政策面で競い合うことを促進することにより、地方創生の取組みを加速化するため、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)について、運用の改善等を図ります。
- 東京圏と地方の格差是正
すべての地域を大切にする基本姿勢の下、産業、生活、移動の基盤が不十分で、格差がある地域についての環境整備等を、震災復興の加速化、国土強靱化の促進などの取組みとより一層連携して進めます。
- 地方創生テレワークの推進
都市部の企業に勤務する人々がテレワークにより、地方にいながら都会と同じような仕事ができるようになる「転職なき移住」を実現するため、地方におけるサテライトオフィスの整備・利用促進等を推進し、進出企業の定着に向けた支援も進めることで、地方への大きな人の流れを生み出します。
- 地域における DX の推進
DX 推進による地域課題の解決、地域の魅力向上に向けて、デジタル分野の人材支援を進めるとともに、デジタル技術を活用して新たな社会システムづくりにチャレンジする取組みについて総合的に支援します。
- 女性が輝く社会の構築
すべての女性が働き方、生き方など自分の希望を実現し、個性と能力を十分に発揮できる「すべての女性が輝く社会」の実現を目指します。このため、女性の職業生活における活躍を推進するための法律に基づき、地域において、家事・子育てなどの経験を活かした再就職支援、正社員への転換の促進など働く女性の処遇改善、女性の参画が少ない分野での就業支援などを強力に進めます。
- 人口減少の克服
切れ目のない妊娠・出産・子育て支援の強化、待機児童解消の加速化、男性の家事・子育てへ の参画促進など総合的な少子化対策に取り組み、若い世代の就労・結婚・子育ての希望を実現させます。
- 地域アプローチの推進
少子化の状況やその背景にある「働き方」の実態は地域によって異なっているため、それぞれの特性に応じた地方の取組みを主力とする「地域アプローチ」を推進し、地域の実情に応じた「働き方改革」を支援します。
- 人材が還流するシステムの構築
地方における「しごと」と「ひと」の好循環を促進するため、地域イノベーション創出のための研究機関等の移転を着実に進めるとともに、社会実験も実施しながら文化庁を始めとする中央省庁など政府関係機関の地方移転を推進します。また、プロフェッショナル人材やハイレベル人材を活用するとともに、企業の地方への移転や地方への人材還流システムを構築します。また、地方への移住を促進するため、就労・居住・生活支援に係るワンストップの情報提供システムや相談支援窓口を充実させるとともに、地方活性化に貢献したい志を持つ若者を地方につなぐ「地域おこし協力隊」の拡充・体制強化を図ります。更に、交流人口以上定住人口未満の概念である、関係人口を各地で広げていきます。
- 企業の本社機能移転等の促進
地方における雇用創出を図るため、感染症の影響によるビジネス環境や企業動向の変化等を踏まえつつ、地方拠点強化税制の活用により企業の本社機能移転等を促進します。
- 全世代・全員活躍型「生涯活躍のまち」の推進
性別や年齢、障害の有無等を問わず、一人ひとりが個性と多様性を尊重され、それぞれの希望に応じてそれぞれの持つ能力を発揮し、生きがいを感じながら暮らすことができる地域づくりを進めます。
- 地方における魅力あるしごとの創出
地方において魅力ある職場を生み出すため、地域の産業の生産性向上や新たな事業創出の促進、一次産品や観光資源、文化・スポーツ資源などの地域資源の活用を支援します。このため、「地域の技の国際化(ローカルイノベーション)」、「地域の魅力のブランド化(ローカルブランディング)」、「地域のしごとの高度化(ローカルサービスの生産性向上)」などを通じ、ローカル・アベノミクスの地方への推進を図ります。
- 空き店舗、遊休農地、古民家等の遊休資産の活用
地方における遊休資産を活用することにより、都市・まちの生産性向上や地域の魅力を引き出 し、地域の活性化を図ります。そのため、地方公 共団体が主体的に進める商店街活性化を支援し、空き店舗の有効活用を進めます。また、既存の 施策に加え、優良農地を確保するとともに遊休 農地も活用しつつ農村地域における雇用と所得 の創出を推進します。地域に残る古民家等の歴 史的資源を観光まちづくりの核として再生・活 用する取組みについて、更なる展開を図ります。
- 地域経済牽引事業の促進
地域未来投資促進法を活用し、地域経済牽引事業に、予算、税制、金融、規制緩和等のあらゆる政策ツールを集中投入します。
- 地域商社の推進
民間投資を呼び込めるような先導的な地域商社について、地域商社協議会等を通じ事業構想・組織設計から物流、販路開拓、事業の収益化まで支援します。
- キラリと光る地方大学づくりなど地域における若者の修学・就業の促進
地域における若者の修学・就業を促進するため、地方大学・産業創生法に基づき、産官学連携による地域の中核的産業の振興や雇用創出と大学改革を一体的に行う優れた取組みを地方大学・地域産業創生交付金により支援し、「キラリと光る地方大学づくり」を進めます。また、地方における地元企業等に就職した者に対する奨学金返還支援制度の促進や、自分の住む地域に誇りと愛着を持つことを促進する教育を強化するとともに、地(知)の拠点である大学や高等専門学校、専修学校、高等学校における地方公共団体や企業等と連携した取組みを強化することにより、地域産業を担う高度な専門的職業人材や、地域に貢献する人材を育成します。
- UIJ ターンによる起業・就業者創出
過度な東京一極集中の是正及び地方の担い手不足対策を図るため、東京から地方に移住して起業・就業する際に最大 300 万円を支給する制度などを活用し、UIJ ターンによる起業・就業者の創出を目指します。
- 地方生活の魅力の発信
地域にある豊かな自然、固有の歴史・文化・伝統などの魅力について、子供のころから学び、触れる機会を創出します。また、人々のライフステージに応じた段階的な移住・定住の推進策等を進めるに当たっては、併せて、地方生活の魅力を発信する必要があるため、地方生活の魅力や各種支援策等についてウェブサイトを通じて積極的な情報発信を行います。
- 社会的事業の支援
全国各地で社会的課題の解決に取り組む民間の社会的事業者(ソーシャルベンチャ ー)を支援し、新しい担い手の確保に取り組みます。また補助金に頼らない資金として、SIB や休眠預金などのソーシャルなお金の活用を進めていきます。
- シェアリングエコノミーの推進
「第 4 次産業革命」(Iot・ビッグデータ・AI) の社会実装、先端的技術による「医療・介護革命」を進めます。また、地方にある使われていない資源や全国に点在しているスキルなどをシェアすることで、分かち合い、助け合いの精神を経済活動、社会生活へと繋げるシェアリングエコノミーを推進していきます。
- 子供の農山漁村体験機会拡充・地方移住受け皿の環境整備
子供の時代から農山漁村に親しむ機会を拡充し大人となってからの移住の環境を整えるとともに、若者の地方移住の受け皿となる環境整備を行う制度をつくります。
- にぎわいのある地域の形成
地域住民等が良好な環境の形成や地域の魅力向上に取り組むエリアマネジメント等により、地域の「稼ぐ力」や「地域価値」の向上を図る「稼げるまちづくり」を推進し、まちに賑わいと活力を生み出し、民間投資の喚起や所得・雇用の増加等につなげます。
- 自立するまちづくりの推進
地域経済牽引事業の推進、地元特産品の開発・販路拡大への支援、観光客を呼び込む観光地域づくり等によるローカル・アベノミクスの実現、生涯活躍のまちの推進、地域住民等が良好な環境の形成や地域の魅力向上に取り組むエリアマネジメントを含む自立するまちづくりの推進等を更に進めます。
- 農村漁村の維持
将来にわたって農山漁村の生活を維持し、安心なくらしを守ります。このため、2024 年度までに小さな拠点を 1,800 か所形成することを目指し、生活に必要なサービス機能(医療、介護、商業、物流等)を維持し、地域運営組織(住民が主体となって地域の維持、生活サービスの提供を行う組織)を支援します。
- IR の推進
「IR(統合型リゾート)整備法」に基づき、コロナウイルス感染症等も含めた様々な懸念に万全の対策を講じて、安心で魅力的な IR を創り上げます。
- ギャンブル等依存症対策の推進
「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」(2019 年 4 月 19 日閣議決定)に基づき、ギャンブル等依存症対策を徹底的かつ包括的に実施します。
- 地方税財政の充実
地方財政の厳しい状況に鑑み、地方一般財源の充実・強化を図ります。その際、税収が安定的で税源の偏在性の小さい地方税体系の構築を目指すとともに、引き続き、地方交付税の法定率の見直しなどを検討します。また、地方創生を進めるための地方財源の確保も重要である観点から、ふるさと納税の健全な発展を図るとともに、企業版ふるさと納税の一層の活用促進を図ります。
- 地方の機能強化
今回の新型コロナウイルス感染症対応で直面した課題等を踏まえ、国と都道府県の関係、大都市圏における都道府県間の関係及び都道府県と市町村の関係等について、議論を進めます。また、地方自治及び民主主義の基礎をなす存在である地方議会については、「地方議会・議員の位置づけの明確化」や「請負禁止の緩和」等を図り、令和時代にふさわしい地方議会・議員のあり方について、議論を進めます。
- 大都市制度等の検討
指定都市の役割を踏まえた地方活性化策を実施するとともに、多様な大都市制度の活用を推進します。
- 「自立分散型地域経済」の推進と「移住・交流情報ガーデン」の充実
東京一極集中の是正を図るため、地方への移住や、地域との多様なつながり等を創出することで、地方への新しい人の流れを創り出すとともに、自治体と大学や金融機関等が連携し、地域経済の活性化に資する自立分散型地域経済の構築を推進します。地方への移住・交流を推進するため設置した居住・就労・生活支援などの情報提供や相談についてワンストップで対応する「移住・交流情報ガーデン」において、利用者目線に立った移住関連情報発信の強化を図ります。
- 地域密着型企業への支援と自治体マイナポイントの推進
産(事業者)・学(大学等)・金(地域金融機関)・官(自治体)の連携により、地域の資源と資金を活用して、雇用吸収力の大きい地域密着型企業を 10,000 程度立ち上げる「ローカル10,000 プロジェクト」を推進します。具体的には、地域金融機関から融資を受けて事業化に取り組む、民間事業者の初期投資費用に対して、地方自治体が助成する場合に、地域経済循環創造事業交付金を交付すること等による支援を行います。マイナポイント事業で構築したシステムを活用し、地域活性化策として、地方公共団体の施策目的に応じたポイント給付施策の実施が可能な自治体マイナポイント事業を全国展開します。全国展開に当たっては、複数の地方公共団体におけるモデル事業を踏まえ、このシステムの基盤について更なる利便性の向上を図った上で、全国の地方公共団体に提供することを目指します。マイナンバーカードを活用し、公共施設等の様々な利用者カードのワンカード化を推進します。
- 地域コミュニティの再生
地域の「きずな」を再生するため、町内会や自治会など地域に根ざした活動を行う団体等を支援します。
地域で暮らす人々が中心となって、地域課題の解決に向けた取組みを持続的に実践する組織である「地域運営組織」の形成及び持続的な運営を支援します。各集落、小学校校区単位のコミュニティ活動や自治会また NPO 等の身近な団体活動を支援する「コミュニティ活動基本法」を制定し、地域内の活性化を図ります。更に、個性豊かで誇りある地域づくりに向けて、民間アドバイザー派遣等の人材支援を推進するとともに、地域の人材力の向上を支援します。
- 「地域おこし協力隊」の拡充
都市から地方への定住・定着を図り、地域の活性化に大きな役割を果たしている「地域おこし協力隊」の大幅な拡充を図ります。そのため、新規隊員の掘り起こし、自治体の受入れ態勢の充実、隊員や自治体からの相談対応、任期終了後の起業や事業承継の支援等に取り組むことにより、隊員の募集から任期終了後の定住・定着まで一貫した支援を行います。
- 地域社会の担い手の育成
人口が急減し、農林水産業、商工業等の地場産業の担い手が消滅しつつある地域について、ワークシェアリングの手法を活用しつつ、社会保険にも加入し、地域の担い手を確保する事業体を応援する「特定地域づくり事業協同組合」の取組みを推進します。
- 過疎地域対策の充実
わが党の主導により、検討を進めてきた新法については、本年 3 月、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」として衆参両院で全会一致により成立しました。支援措置については、現地での意見交換等を通して過疎地域の方々から多く寄せられた声を踏まえ、過疎対策事業債の対象事業の追加や、過疎税制の対象業種の追加、取得価格要件の緩和など、旧法と比較し内容を大幅に拡充強化するとともに、卒業団体への経過措置について手厚い措置としました。これら支援措置を活用した過疎地域の持続的発展の実現に向けた取組みを支援します。
また、過疎地域において、基幹集落を中心としたネットワーク化を推進し、日常生活機能の確保や地域産業の振興により定住できる環境を整備して、地域の活性化を図るとともに、日常生活を支える持続的な宅配物流ネットワークの構築などへの支援も含め、過疎対策の充実強化に全力を尽くします。
- 自治体病院の経営の強化
新型コロナウイルス感染症患者受入れやワクチン接種などで大きな役割を果たしている自治体病院の経営を強化し、感染症対策をはじめ、地域住民の命と健康を守ります。
- 脱炭素に向けたエネルギーの地産地消の推進
地方公共団体を核として、バイオマス等の地域資源を活用した地域エネルギー事業を立ち上げる「分散型エネルギーインフラプロジェクト」について、マスタープランの策定を支援するとともに、関係省庁の横串での連携により、事業化まで徹底したアドバイスを実施することで、エネルギーの地産地消を推進します。また、地域脱炭素の実現を人材面から支援するため、外部専門家の紹介、招へいについて支援するとともに、地域の資源と資金を活用した脱炭素に向けた取組みの立ち上げを、資金面からも重点的に支援します。
- 地域の魅力の情報発信
わが国の各地域の魅力を広く情報発信し、観光客の増加や地域産品の販路拡大などを通じた地方創生に資するため、地方独自の放送コンテンツを製作し、海外に継続的に発信する取組みを推進するほか、地域のコンテンツを日本全国及び世界にインターネットで配信するための配信基盤の整備に取り組みます。このほか、NHK 国際放送の充実強化を図るため、多言語化の推進や認知度向上に向けたプロモーション活動に取り組みます。
- 家庭ゴミの戸別回収支援
ご高齢の方や障害のある方の家庭ゴミの戸別回収支援に使える「特別交付税」の活用を促進します。
- 東京に集中する社会機能を地方に分散させる「分散型国づくり」を推進
国家の危機管理の観点とコロナ後の新しい社会を形成するため、東京の社会的機能・役割を地方が代替する「分散型国づくり」を推進します。
将来予想される首都直下地震やパンデミックに備え、人口、政治・経済・社会機能、防災、安全保障等の政府機能、企業の本社機能等の地方への分散を進めるとともに、地方拠点強化税制や“企業版ふるさと納税”の活用等により地方への資金の流れを加速させると同時に、東京もよりスマートで稼げる強い都市づくりを進め国際競争力を向上させます。地方と東京・首都圏が Win-Win となる、“分散型国づくり”を実現します。
観光
- 観光立国の推進と観光需要の喚起
観光は成長戦略の柱、地方創生の切り札であり、官民一丸となって観光立国を実現します。当面、危機に瀕する観光の存続に万全を期すとともに、コロナ後を見据え、地域経済を支える観光の本格的な復興を目指し、観光需要喚起、観光地の再生を推進します。Go To トラベルについては、感染状況やワクチンの接種状況等を踏まえた早期の事業再開により観光需要の喚起を図り、それまでの間も、地域観光事業支援を通じて、いわゆる県民割については被災地等への配慮や近隣圏域への拡大を図りつつ事業を継続するとともに、感染防止対策については宿泊事業者への支援を継続します。
- 観光地の再生
コロナ後の観光振興に向けて稼げる地域をつくるため、地域の核となる宿泊施設のリノベーション等により、自治体等地域一体となった面的な付加価値の高い観光地の創出、DX を活用した観光地経営の改善、地域ならではの観光資源を活用した新たな需要の掘り起こし・付加価値の高い看板商品の創出等に取り組みます。
観光地域づくりの舵取り役を担う法人(DMO) の育成・形成、観光産業の生産性向上、官民を挙げての観光業界の人材育成・確保などにより、持続可能な観光地域づくりを推進します。
- 新たな市場の開拓
コロナ後を見据え、人々の行動様式・生活様式・働き方が変化する中、そのニーズが多様化しており、これまでの短期滞在者だけではなく、中長期滞在者や反復継続した来訪者の増加(第2 のふるさとづくり)による新たな市場の開拓を図るとともに、ワーケーションやブレジャー等を「新たな旅のスタイル」として普及させます。若者の旅行促進を含めより多くの旅行機会の創出や、休暇改革などによる旅行需要の平準化を促進します。
506 インバウンドの回復に備えたコンテンツの充実
本格的なインバウンドの回復に備え、公的施
設やインフラの開放、国立公園や文化財の観光活用、古民家活用や社寺観光の推進、アドベンチャーツーリズムやスノーリゾート等の体験型コンテンツの造成、ビーチリゾートの活性化、サイクルツーリズムなど自転車活用の推進、クルーズを安心して楽しめる環境づくりの推進、戦略的な訪日プロモーション、上質なサービスを求める観光客の誘致等に取り組みます。
- 観光地における受入環境整備
観光地における受入環境整備として、外国語表記の充実、Wi-Fi 整備、キャッシュレス等を進めるほか、バリアフリー化や災害時対応の強化を図ります。
観光地への交通の充実、観光地における渋滞対策、より効果的に観光需要を喚起する高速道路料金の実現、ビジネスジェットやスーパーヨットの受入拡大、出入国の円滑化、空港・港湾のおもてなし環境の充実等を図るとともに、首都圏空港等の機能強化や地方直行便の拡大等による相互交流の拡大を図ります。
デジタル
- 社会全体のデジタル化の推進
2021 年 9 月に発足したデジタル庁を中心として、社会全体のデジタル化を推進し、一人ひとりに寄り添った行政サービスの提供による国民生活の利便性の向上や、新たなサービスの創出などによる日本経済の持続的な発展につなげます。
特に、2025 年度までをデジタル化の「重点期間」と位置付け、投資対効果を見据えた先行投資も含め予算の集中的な配分を行うほか、デジタル庁の体制強化を図ることによりデジタル化を強力に進めます。
また、国の行政機関のあらゆる部局で DX、BPR、データ利活用を進めるための体制整備や人材の拡充に取り組みます。
- 誰一人取り残さないデジタル社会の実現
高齢者や障害者が身近な場所で身近な人からデジタル機器やサービスの利用方法を学ぶことができる環境作りを推進する「デジタル活用支援」を充実させます。具体的には、2021 年度に主に高齢者のデジタル活用を支援する目的で全国 1,800 か所で実施している講習会について、
2022 年度以降は、全国 5,000 か所程度に拡大し5 年間で延べ 1,000 万人の参加を目指すほか、障害者を対象とした講習会も開催します。また、地方自治体、教育機関、NPO 法人などと連携して、若い世代が高齢者に機器やサービスの利用方法を教えたり、高齢者同士で教え合う場を提供したりするなど、より裾野の広い国民運動を展開し、社会全体で「誰一人取り残さないデジタル社会」を実現します。
また、障害者や高齢者の利便の増進につなが るデジタル機器やサービスの研究開発を推進し、併せて、中小企業のデジタル化の支援や市区町 村窓口に配備したタブレット端末の用途拡大な どを実現します。
- 新型コロナワクチンの接種証明のデジタル化
新型コロナワクチンの接種証明のデジタル化については、社会経済活動の回復に向けて、様々なシーンで利用されることを前提に、安心・安全かつ海外でも活用できる使い勝手の良いものとなるよう検討し、年内の利用開始を実現します。
具体的には、二次元コードによる偽造防止措置を講じた上で、スマートフォン上に接種証明書を表示して提示できるような方式を目指し、申請や交付はオンラインから迅速・簡単に行うことができる仕組みを構築します。
- マイナンバーを活用した公的給付金の受取の迅速化
新型コロナウイルスへの対応など行政機関からの突発的な給付金の支給等に備えて、希望する国民が給付金の受取口座をマイナンバーと共に登録する仕組みを「公金受取口座登録法」として 2021 年に法制化しました。給付金をプッシュ型で迅速に受け取ることができるよう、2021 年度中のできる限り早期にマイナポータルなどを通じて受取口座の登録を開始します。
- マイナンバーカードの普及・活用の推進
デジタル社会における本人確認の基盤となるマイナンバーカードについて、2022 年度末までにほぼ全国民に行き渡るよう普及に取り組みます。
マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにすることで、医療機関でマイナンバーカードを用いて医療保険の資格確認ができるようにするほか、本人がマイナポータルを通じて特定健診情報や薬剤情報を閲覧できるようにします。
並行して、マイナンバーカードと運転免許証との一体化(2024 年度末)や、在留カードとの一体化(2025 年度)を進め、国民生活の利便性を高めます。
マイナンバーカードをスマートフォンにかざすことなく、迅速・簡単にオンラインで行政手続きを行うことができるよう、2022 年度中にマイナンバーカードの機能(電子証明書)のスマートフォンへの搭載を実現します。
- マイナンバーカードの海外利用の実現
マイナンバーカードについては、2024 年度中に、転勤などにより海外へ移住した場合でも、海外で継続的に利用することができるようローマ字表記を実現します。
マイナンバーカードの海外利用の開始に合わせ、戸籍における読み仮名の法制化など、ローマ字表記に必要な戸籍法制の見直し法案を 2023 年の通常国会に提出し、法制上の措置を講じます。
- マイナンバーの利活用の促進
行政機関がマイナンバーを介して相互に情報の照会・提供を行う情報連携の仕組みを積極的に活用することにより、行政機関から逐一証明書を取得して別の行政機関に提出するといった国民の負担の軽減を図ります。これにより、行政機関から同じ情報を聞かれない「ワンスオンリー」の原則を徹底し、「デジタルを意識しないデジタル社会」を目指します。
現在は、税、社会保障、災害の三分野に限定されているマイナンバーを介した情報連携の仕組みについて、国民の理解が得られた分野においても活用することができるよう、2022 年の通常国会に必要な法案を提出し、法制上の措置を講じます。
ふるさと納税、年末調整・確定申告、iDeCo 等に関する手続きのデジタル化を進めるほか、医療費通知証明データ、社会保険料控除証明書データなど生活に密接に関連する情報を国民が自ら安全かつ容易に取得できるよう、マイナポータル上で取得可能な情報の充実を図ります。
- 霞が関のシステム刷新
霞が関の情報システムについて、共通的な基盤・機能を持つガバメントクラウドを整備して2021 年度中に運用を開始するほか、国の行政機関が利用するガバメントネットワークを再構築するなど、徹底した統合・一体化を推進し刷新を図ります。その際、行政サービス改革と業務システム改革を一体的に進め、従来の方法にこだわることなく、デジタルの力を活用して国民一人ひとりに寄り添った行政サービスの提供を実現します。
国等の情報システムが整備方針に基づいているかという観点等から、年間を通じてレビューを行い、その結果を予算要求や執行に適切に反映させます。これにより、2025 年度までに、2020 年度との比較で政府情報システムの運用経費・改修経費を 3 割削減します。
また、デジタル庁が予算執行を管理する情報システムの範囲を特別会計や特定財源により整備された情報システムにも広げ、政府全体として縦割りを排して効率的なシステム整備・運用に取り組みます。
更に、独立行政法人等の情報システムについても、国等と同様の取組みを推進していきます。
- 地方自治体のシステムの統一・標準化
地方自治体の情報システムについては、組織横断的なデータの共有や活用を図るため、ガバメントクラウドを活用しながら、システムの迅速な構築や柔軟な拡張、データの移行・共有・活用を可能としつつ、一方で高度なセキュリティ対策が実現されるよう、システムの統一・標準化を進め、2025 年度までに完了させます。
これにより、個々の手続き・サービスが一貫してデジタルで完結する「デジタルファースト」の原則や、行政機関から同じ情報を聞かれない「ワンスオンリー」の原則を徹底し、行政サービスの質の向上と行政機関の業務の効率化やコスト削減を実現します。
地方自治体の情報システムの運用経費については、2026 年度までに 2018 年度との比較で 3 割超の削減を実現し、国民負担の軽減につなげます。その前提として、2021 年度中に、国や地方自治体の情報システムやネットワークの構造全体 のトータルデザイン(あるべき姿)を描いた上 で、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)の情報システムを含む地方自治体の情報システム の抜本的な見直しの方向性を具体的に示します。
- 国や自治体の手続きの更なるデジタル化
全ての手続きの「スマホで 60 秒」完結を目指し、子育てや介護、引っ越し、死亡・相続や社会保険・税手続き、法人設立関係手続きや裁判関連手続きなど、行政・司法手続きのデジタル化・ワンストップサービス化を推進します。
また、原則、全ての地方自治体で、2022 年度中に子育てなどの主要な行政手続きをマイナポ ータルからオンラインで行うことができるよう、システム改修を支援します。
在留申請のオンライン化(2021 年度)やパスポート申請のオンライン化(2022 年度)を実現するとともに、査証の申請、検疫・入管・税関などをスマートフォンから行うことができるよう一連の入国手続きをオンライン化します。
- デジタル社会の基盤となる情報通信インフラの整備
デジタル社会を支える高速・大容量の情報通信インフラとして、5G インフラを整備するほか、先端半導体の製造拠点の国内立地を進めます。また、情報通信関連の消費電力が急増していることから、情報通信機器の省電力化に向けた研究開発を促進します。また、安全性、拡張性、省電力などの面で高度化の期待が高い次世代通信である Beyond 5G の実現に向けた研究開発を更に強力に推進するとともに、Beyond 5G 新経営戦略センターを活用して産学官の連携を強化することにより、技術仕様の国際標準の策定において世界をリードし、2030 年代のわが国の経済発展の礎を築きます。
- デジタルインフラの立地環境の最適化
データセンターやインターネットの結節点である IX 等のデジタルインフラについては、災害への対応、セキュリティの確保、グリーン社会の実現の必要性を踏まえ、偏在を是正し分散して配置するなど、段階的に立地環境の最適化を図ります。特に、データセンターについては、国内 5 か所程度への拠点整備を促進し、官民を通じて安定的かつセキュアな情報システムを利用できる基盤を実現します。
- デジタル社会の ID 認証基盤の構築
デジタル社会においては、情報の発信者の真正性や情報そのものの真正性、完全性などが保証され、情報の信頼性が確保されることが国民生活や経済活動にとって極めて重要です。
このため、電子署名、電子委任状、商業登記電子証明書、法人共通認証基盤(G ビズ ID)の普及を強力に推進します。特に、商業登記電子証明書については、無償化を実現することにより普及を図ります。
また、G ビズ ID を 2025 年度までにほぼ全ての法人が取得する環境を整備し、行政機関による各種支援施策のデジタル化を進めます。
- 医療・教育・防災分野などくらしのデジタル化の促進
医療・教育・防災など国民生活に密接に関連する分野において、一人ひとりのくらしに応じたサービスが提供されるよう、デジタル庁が中心となって全体像を描き、デジタル化を進めるとともに、様々なデータを連携したサービスの実現に取り組みます。
このため、2021 年度中に社会課題の抽出や実現すべきサービスの設定、必要なデータ標準の策定やデータ取扱いルール・システムの整備、運用責任者の特定やビジネスモデルの具体化など、デジタル化やデータ連携に向けた取組みを一気通貫で支援するためのプログラムを速やかに創設します。
- 健康・医療・介護分野のデジタル化
新型コロナウイルス感染症が拡大する中でも 安心して医療機関を受診することができるよう、初診からのオンライン診療の恒久化を含めてオ ンライン診療を強力に推進し、コロナ後の時代 の新たなスタンダードを築き上げます。ワクチ ン接種証明のデジタル化に加え、お薬手帳のデ ジタル化をサポートするなど、健康・医療・介護分野でデジタルの力を徹底的に活用します。
国民が生涯にわたって自らの健康情報を電子記録として正確に把握するための仕組み(PHR) の提供を推進します。具体的には、マイナポータルを通じて、がん検診、骨粗鬆症検診などの自治体検診(2022 年度早期)、40 歳未満が受診する事業主検診(2023 年度中)、学校検診(2022 年度中)の結果を本人が閲覧することができるようにします。
また、人生 100 年時代を見据え、診療行為のみならず、健康状態も含む well-being(生活・くらしの質)の向上にも自らの健康情報を活用できるよう、安全・安心に民間の PHR サービスが利用可能な環境整備に取り組みます。
- 教育分野のデジタル化
コロナ禍においてもわが国の将来を担う大切な子供たちの学びを止めることがないよう、オンライン教育環境をしっかりと整備します。このため、GIGA スクール構想による 1 人 1 台端末環境を前提として、ICT 利活用環境の強化を図ります。具体的には、学校のネットワーク環境の更なる改善、教職員端末の整備・更新、児童生徒 1 人 1 台端末の持ち帰りを可能にするためのガイドラインの整備、低所得世帯への家庭における通信費支援の拡充、オンライン学習システム「MEXCBT」の機能改善、デジタル教科書の全国的な普及促進、学校現場に対する組織的・安定的な支援体制である「GIGA スクール運営支援センター」の整備、校務及び家庭との連絡のデジタル化に向けた取組みなどを推進します。
また、デジタルを手段として子供たちの可能性を解き放ち、社会を創る多様な子供たち一人ひとりのニーズに合った教育を提供します。教育データのオンライン化・標準化、児童生徒のID、教育デジタルコンテンツプラットフォームの整備、デジタル社会を見据えた学校・教育の在り方の見直しなど、教育データを利活用するためのロードマップを 2021 年内に策定します。
- 防災分野のデジタル化
災害発生時の避難、救援等に的確に対応するため、国と地方自治体が災害時に様々な情報を共有する新たな仕組みを防災デジタルプラットフォームとして整備し、2024 年度に運用を開始します。
- キャッシュレス化の推進
デジタル改革の一環として、行政手続きにおける手数料等について、電子マネー、二次元コード、クレジットカードによる納付を可能とするキャッシュレス化に必要な法案を 2022 年の通常国会へ提出し、法制上の措置を講じます。
- シェアリングエコノミー
消費者等の安全を守りつつ、イノベーション及び新ビジネスの創出、地域の課題解決、非常時における支援の多様化等に貢献することが期待されています。このため、サービスの安全性及び信頼性の向上を図りつつ、シェアリングエコノミーの社会への更なる浸透・定着を促進します。
具体的には、官民連携して構築したシェアワ ーカー及びシェア事業者の認証制度の普及を図 ります。また、シェアリングシティ推進協議会 と連携して、防災分野におけるモデル連携協定 の周知や災害発生時等のシェア事業者向け実施 マニュアル等を作成するとともに、公共サービ スとしての新たな活用について検討を深めます。
- 包括的データ戦略の推進
データ利活用推進と安全・安心が確保されたデータ駆動型の社会を構築し、国際社会においても先進的かつ先導的な取組みを推進します。具体的には、フィジカル空間とサイバー空間 を高度に融合させたシステムを前提とした、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会を実現するため、2021 年 6 月に策定した「包括的データ戦略」に基づき、デジタル社会の基盤となるデータベースの整備やデータ取扱いルールの実装を推進します。
- オープンデータの推進
2021 年 6 月に改定したオープンデータ基本指針に基づき、個人情報保護に留意しつつ、行政機関が保有する各種データを民間や個人が活用しやすい形式で公開するオープンデータを積極的に推進し、国民生活の利便性の向上を図ります。
- 信頼性のあるデータの自由な流通(DFFT) の推進
社会のデジタル化やグローバル化が進展する中で、「21 世紀の石油」と言われるデータについて、国際社会の中で、信頼性を確保しつつ、自由、公正かつ安全な流通を確保する必要があります。このため、データに関する基本的な考え方や理念を共有する国々との間で連携を図り、データ流通に関する国際的なルール作りに積極的・主体的に、イニシアチブをとって取り組みます。更に、G7 各国などの在外公館にデジタル戦略担当を公使等のハイレベルで配置し、デジタル政策に知見を持つ行政官を派遣します。
- デジタル人材の育成
わが国の成長戦略の核となるデジタル化を進めるため、その担い手となるデジタル人材の育成・確保に取り組むことが喫緊の課題となっているため、2025 年度までの 5 年間において官民で 175 万人のデジタル人材、リテラシーレベルを含め 500 万人を育成することを目指して、着実かつ速やかに各種施策を連動させながら実施します。その際、特に地域ごとの取組みを推進するため、地域におけるデジタル人材育成を推進する地域包括 DX 推進拠点を設け、地方創生の各種予算を活用して支援するとともに、大学、経済産業局、労働局が連携して取り組んでいきます。
- デジタル人材の確保
デジタル改革を牽引する人材を社会全体で確保するため、適切なコンプライアンスの確保を前提として、優秀な人材がデジタル庁、各府省庁、地方自治体、民間企業、独立行政法人などを行き来しながらキャリアを積むことのできる環境を整備します。その一環として、教育コンテンツやカリキュラムの整備、実データを用いたケーススタディなど、実践的な学びの場を提供するデジタル人材プラットフォームを構築します。
デジタル人材プラットフォームにおいて、スキルを可視化するための標準を整備するとともに、オンライン教育サイト・コンテンツを整備し、レベルに応じた標準カリキュラムを提示します。また、実践型の疑似経験学習や OJT プログラムを提供します。加えて、受講者の学習履歴管理などを行います。
- 政府におけるデジタル人材の確保
政府におけるデジタル人材の確保・育成については、2022 年度以降、新たに設けられる国家公務員採用総合職試験のデジタル区分等の合格者をデジタル庁が中心となって各府省庁において積極的に採用するほか、「政府デジタル人材育成支援プログラム」の策定、デジタル化の進展を踏まえた研修体系・内容・手法の見直しに取り組み、地方自治体にも展開します。
- デジタル人材の職業訓練・教育
職業訓練(教育訓練給付、公共職業訓練、求職者支援訓練、人材開発支援助成金、生産性向上支援訓練)については、デジタル分野での訓練への重点化を図ります。その際、デジタル人材育成プラットフォームで開発されたプログラムをこれらの職業訓練の対象とするなど連携を図ります。
- デジタル人材育成に向けた教育プログラム創設等
高等教育機関において、分野横断型 Ph.D.プログラムなどを創設するとともに、データサイエンス・コンピューターサイエンス分野のマイナー・ダブル学位プログラムなどの設定を促進します。その際、9 つの地域ブロックごとの拠点となる大学や地域の連携大学において、地域包括 DX 推進拠点に対してモデルカリキュラムや研修の場を提供するとともに、デジタル人材育成プラットフォームが提供する実践的経験学習や OJT プログラムにおいて学生の受入れを行います。
小学校におけるプログラミング教育の必修化等の新学習指導要領に基づく取組みを着実に実施するほか、情報モラル教育や大学における ICTスキル習得といった実践的なプログラム、教育訓練給付における IT 分野の講座の充実を図ります。大学における数理・データサイエンス・AI 教育の充実、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)におけるアーキテクチャ設計の専門家やサイバーセキュリティ人材・高度セキュリティ人材の育成などを通じて社会全体のデジタル人材を育成します。
- 中小企業等の DX 支援
地域ごとの取組みを促進するため、地域包括DX 推進拠点の活用などにより、各地の地場産業との協業で DX 課題解決プロジェクトを実施し、地域の DX 成功例を創出するとともに、どのようにデジタル化に取り組めばよいのか知見のない地域の中小企業への支援を充実します。また、デジタルリテラシーの低い層に対する支援を行うため、地域ごとに IT 企業 OB などの協力を経て地域奉仕活動を組織化し、DX お助け隊を組成します。
- ICT 化による国民生活の利便性向上
AI・IoT・ブロックチェーン等の先端技術の利活用、デジタル活用共生社会の実現、地域課題の解決に向けた IoT の実装、スマートシティの形成、テレワークの活用による働き方改革の推進、キャッシュレス社会の実現、国民一人ひとりによる健康・医療・介護データの管理・活用、遠隔医療の推進、多言語音声翻訳の普及促進、サイバーセキュリティの強化による ICT の安心・安全の確保、5G、光ファイバ、4K・8K、Wi- Fi 等の世界最高水準のICT 環境の整備、災害時の情報伝達環境の整備などの国民生活の向上に資する ICT 利活用を力強く推進します。
- 個人データの安全・安心な流通促進等
個人データの安心・安全な国際的流通環境の整備に取り組みます。また、グローバルなデータ流通の実態等を踏まえ、改正個人情報保護法の円滑な施行を含めた措置を講じるとともに、これらに必要な個人情報保護委員会の体制強化を行います。
- デジタル・ガバメントの推進
少子高齢化や人口減少等の社会課題を解決するためには、デジタル技術の活用によりイノベーションを加速させる規制・制度への変革が必要です。この実現に向け、デジタル化及びデジタル化により生じる課題に対応する規制・制度改革を推進します。
行政手続に関しては、具体的には、書面の作 成・提出を求める行政手続について 2025 年まで に全体の 98%をオンライン化する方針を踏まえ、その実現の可能な限りの前倒しを図るとともに、性質上オンライン化が難しい手続についても、 最新のデジタル技術の活用等による利用者負担 の軽減策を検討します。
併せて、オンライン化されている手続については、本人認証方法の改善や民間サービスとのAPI 連携等による利便性向上に取り組み、オンライン利用率を横断的かつ大胆に引き上げる取組みを推進します。更に、車検や不動産登記諸費用等のオンライン納付や窓口におけるキャッシュレス払いを導入します。
- デジタル分野の競争環境整備
グローバルで変化が激しいデジタル市場における競争やイノベーションを促進するため、デジタルプラットフォーム取引透明化法の運用や適用対象の検討を通じて、透明化・公正化を確保し、事業者の自主性を尊重したルール整備に取り組みます。特にデジタル広告分野においても、閲覧数の水増しのような不正や自社優遇等の問題への対処を含め、この分野での国際的なルール作りにも貢献していきます。
また、スマートフォンなどのオペレーティングシステム(OS)を供給するプラットフォーム事業者がデジタル市場における競争環境に与える影響について、欧米の動向も注視しつつ、競争評価を行うなど、競争政策の迅速かつ効果的な実施を目的として、国内外の関係機関と連携しながらデジタル市場の評価並びに競争政策を推進します。
- マイナンバー制度の安定的な運用と利用拡大
Society5.0 時代の本人確認の基盤となるマイナンバーカードは、2022 年度末までにほぼ全国民に行き渡ることを目指し、更なる申請の促進・交付体制を強化します。また、将来性・拡張性に富んだ仕組みとするべく、マイナンバーカードの電子証明書のスマートフォンへの搭載について 2022 年度中の実現を目指すとともに、暗証番号に代わる生体認証の活用の研究を行います。
- 自治体 DX の推進
自治体の情報システムの標準化・共通化や行政手続のオンライン化など自治体DXを推進するため、デジタル人材の確保・育成など自治体におけるDXの推進体制の構築を支援します。
- 地方創生に向けたデジタル化の推進等
これからの地方創生には、デジタル化の推進が不可欠です。わが国が抱える様々な社会課題を、5G を活用した遠隔医療、遠隔教育、高齢者の見守りサービス等によって解決します。このため、携帯電話事業者によるエリア整備に加え、多様な地域や産業のニーズに応じて、様々な主体が柔軟にネットワークを構築できる「ローカル 5G」の利活用を促進することにより、課題先進国として 5G の利活用で世界トップを目指します。農林水産業、教育、医療、防災、観光、行政等の分野でデジタル化の推進に取り組む自治体や事業者などを支援するとともに、地方居住、地域の生産性向上、雇用の拡大等を促進します。また、スマートシティの推進や地域課題の解決を図ります。
- 高齢者等に向けたデジタル活用支援の推進
新型コロナウイルス感染症により、「人と接触を避ける」オンラインでのサービスの利用拡大が求められ、行政手続のオンライン化など、社会全体のデジタル化が進められる中、デジタル技術を使いこなせる人・そうではない人の「デジタル格差」の解消が重要となっています。「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」の実現に向けて、民間企業や地方公共団体などと連携し、特にデジタル活用に不安のある高齢者等を対象に「講習会」を実施し(2021 年度から5 年間で延べ 1,000 万人の参加を目標)、高齢者等が身近な場所で ICT 機器・サービスの利用方法を学ぶ環境作りを進めます。
- 地方からのデジタルイノベーション
自動宅配、リモート診療、リモート学習、自動タクシーなどのデジタルイノベーションを地方から社会実装します。
環境
- 地球温暖化に対する適応策の推進
豪雨や猛暑などの異常気象や農作物の品質の低下などの気候変動の影響による被害を回避・軽減するため、気候変動適応法や気候変動適応計画に基づき、政府施策への適応の組み込み、地域での適応を強化し、関係者が連携して農林水産業・防災・生態系・熱中症対策など様々な分野で適応策を推進します。特に、「気候変動適応情報プラットフォーム(A-Plat)」の科学的知見や支援メニューを充実、地方公共団体や企業の取組みを促進し、強靱な地域づくりや地域社会・経済の健全な発展、適応ビジネスの展開につなげます。熱中症対策については、年間死亡者数1,000 人以下の速やかな実現を目指し、サブスクリプション型のエアコン普及を促進します。国外においても、「アジア太平洋気候変動適応 情報プラットフォーム(AP-Plat)」を活用して途上国の科学的知見と能力強化を行い、気候変動影響評価や適応計画の策定、適応策の実施を支援します。
- 温室効果ガス排出量等の情報開示の促進
温室効果ガスの排出及び吸収量の状況、脱炭素社会づくりのために必要な措置の進捗状況等に関する統計の整備充実、集計及びその結果の迅速な公表、その他の必要な措置を講じます。また、企業の温暖化対策が市場で幅広く評価 されるよう、企業の温室効果ガスの排出量情報について、デジタル化・オープンデータ化を進め、材料の調達から製造、製品の使用・輸送・廃棄までのバリューチェーン全体を含めて、集計・公表や情報開示を促進します。
- 脱炭素社会実現に向けたライフスタイルの転換
消費ベース(カーボンフットプリント)から見たわが国の温室効果ガス排出の約 6 割を占めると言われる家計関連の排出を削減するため、ライフスタイルの転換を推進します。食や暮らしなど日常の環境配慮に対するポイ ント発行の仕組みの持続的な拡大や、ナッジや ブースト等の行動科学の知見と AI/IoT 等の先端技術の組合せ(BI-Tech)の活用により、国民の前向きで主体的な意識変革や行動変容を促し、脱炭素に貢献する製品・サービスの使用など脱 炭素行動を選択できる社会の実現を目指します。
- 脱炭素社会を進める人づくりと環境教育の推進
「環境教育等促進法」に基づき、人材育成、教材・プログラムの開発・整備、連携・ネットワーク機能の体制整備の 3 つの重点的な取組み事項を中心に、持続可能な開発のための教育(ESD) の視点を取り入れた環境教育を推進します。
また、ESD 活動に取り組む様々な主体が参画・連携し、地域が必要とする取組み支援や情報・経験を共有できる「ESD 活動支援センター」を活用し、地域の ESD 活動を支援します。
- カーボンプライシング
カーボンプライシングについて、産業の競争力強化やイノベーション、投資促進につながるよう、成長に資するものについて躊躇なく取り組みます。
炭素国境調整措置に関しては、わが国としての基本的考え方を整理した上で、EU 等の議論の動向にも注視し、戦略的に対応します。
- 生物多様性保全に向けた国際的リーダーシップの発揮
2010 年に日本で開催され、CBD COP10(生物多様性条約第 10 回締約国会議)で採択された愛知目標を継ぐ新たな世界目標(2022 年5月に決定見込み)の策定および実施に積極的に貢献します。陸地及び海洋の保護・保全区域を 2030 年までに 30%まで増加させる「30by30」の実現に向けたロードマップを策定するなど、生物多様性先進国を目指します。
- 豊かな自然環境を維持し取り戻す仕組みづくり
鎮守の森や里山の復活、生物多様性の確保、生態系サービス(水源涵養、防災・減災、食料供給等)の維持を目指し、地域、民間企業、市民団体等と連携した新たな管理手法の検討や、生物多様性保全と経営・投融資に関するガイドラインの提供等を進めます。これらにより、人口減少等の社会状況も踏まえつつ、豊かな自然環境を維持し、取り戻すための仕組みをつくり、SATOYAMA イニシアティブ等を通じて海外へ発信します。
今後のわが国のまちづくり・インフラ整備・地域開発においては、より環境に配慮した取組みが求められるため、コンパクトで人や環境に優しいまちづくり、地域づくりを進めます。これらにより、都市機能と豊かな自然環境が共存する 21 世紀型の持続可能な都市・生活空間をつくります。
- 生物多様性の恵みを実感できる国立公園等の実現
コロナ禍で自然・健康に関心が高まっていることを踏まえ、日本を代表する自然景観を有する国立公園等の魅力を更に高めるため、登山道、遊歩道、宿泊施設などの整備や滞在環境の質の向上、国内外への情報発信等を行う「国立公園満喫プロジェクト」を実施します。
更に、エコツーリズムの推進、温泉資源の保護、新宿御苑をはじめとする国民公園の積極的な活用等を通じ、自然環境を守りながらその活用を図る保全と利用の好循環を実現します。また、レンジャー(自然保護官)や公園管理関係者による国立公園の現地管理体制を強化し、自然環境の保全管理を行う事業者や NPO を支援します。
- 離島・世界自然遺産地域の保護管理
離島等における自然環境の保全や消失・変容した自然生態系の再生を図るとともに、海山、熱水噴出域、海溝等の特異な生態系や生物資源を保全するため設定した沖合自然環境保全地域の調査を進め、海底の形質を変更するおそれのある行為を規制する等により海洋環境の保全を推進します。また、新たに登録された「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」を含む 5 つの世界自然遺産地域の適切な保護管理等を進めます。
- 希少な動植物等の保護と管理
絶滅のおそれのある希少動植物種の保護・管理のため、法規制の対象となる種を大幅に増やすとともに、その生息・生育環境の保全を推進します。また、動植物園と連携して希少動植物種の繁殖を促進するとともに、野生順化訓練を通じ、トキやライチョウなど希少動物の野生復帰を促します。国際的に保護・管理が求められている希少野生動植物種については、国内の流通を適切に管理します。
ヒアリ等の外来生物については、外来生物法や「外来種被害防止行動計画」及び「生態系被害防止外来種リスト」に基づく生態系などへの被害の拡大防止の取組みを見直し、強化します。ニホンジカ、イノシシ等の鳥獣被害については、広域的な捕獲の強化やジビエの利用拡大等の対策を強化します。
- 愛護動物と共生する社会の実現
ペットは家族という考えのもと、人と動物が共に暮らす社会を創出するため、犬猫の殺処分ゼロを目指します。愛護動物の不適切な飼育をなくし、動物取扱業への適切な監視、指導などが実施されるよう国と地方自治体との連携強化を図ります。
また、犬猫へのマイクロチップ装着による情報管理制度の運用を開始し、犬猫の命を守る取組みを着実に進めます。更に、保護された犬猫の譲り受けが一般化し広く行われる社会づくりや、動物保護団体やペット業界などの関係者が譲渡促進に関われる枠組みづくりを進めます。また、災害時におけるペットとの同行避難の取組みも強化します。
- 自然環境保全基礎調査の拡充
わが国の「自然環境保全基礎調査」は世界トップクラスの精度を誇り、また、「モニタリングサイト 1000」では全国の生態系を 100 年間にわたってモニタリングしています。世界に誇る自然生態系・生物資源を有するわが国にとって、生態系の調査、モニタリング、適正管理は国益に資するものであり、こうした事業の拡充を図るとともに、自然環境データのオープン化、生態系マップ等の情報通信技術(ICT)を活用した公開などを進めます。
- フロン類対策の推進
強力な温室効果ガスであり、排出量が大幅に増加しているフロン類について、上流から下流までの総合的な対策に取り組み、フロン類の排出量を大幅に削減します。特に、「モントリオール議定書キガリ改正」による代替フロンの段階的削減、フロン排出抑制法による機器の低 GWP 化推進、IoT を活用した機器使用時漏えい対策促進、廃棄機器のフロン類回収徹底を進めます。
また、炭酸ガスやアンモニア等の自然冷媒を活用した冷凍空調機器など、フロン類の抑制に資する代替物質を用いた技術開発を大胆に進めるとともに、助成制度を活用し普及を図ることで、世界の先頭に立ちます。
- 海洋プラスチックごみ問題への取組み
海洋プラスチックごみによる汚染が世界的な課題となっていることを踏まえ、プラスチック資源循環法に基づくワンウェイプラスチックの排出抑制や分別回収・リサイクルの徹底に取り組みます。紙、バイオプラスチック等の代替素材の開発・利用といったイノベーションやリサイクルインフラ設備導入などの国内の資源循環体制の構築を強力に支援することでサーキュラーエコノミー(循環経済)への移行を加速させるとともに、海岸漂着物の円滑な処理をはじめとする海洋ごみ対策等を推進します。
また、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを踏まえ、世界全体の実効性のある国際枠組みをリードします。更に、海洋プラスチックごみ問題に関する普及啓発や情報発信を通じ、国民の自主的な取組みや連携協働を促進し、わが国への漂着物の出所となっている近隣諸国への対策を進めます。
- マイクロプラスチック等の海洋ごみ対策
マイクロプラスチック等の海洋ごみについて、「海岸漂着物処理推進法」等に基づき、実態把握や回収・処理、発生抑制対策等の取組みを推進し、海洋環境の保全や、地域の基幹産業である観光等の振興に必要な海岸の景観の保全を図ります。
- 廃プラスチックの適正処理
新たに成立したプラスチック資源循環法を活かし、産業廃棄物の廃プラスチックに係る保管量の上限の緩和、市町村の焼却施設での受入れ、更には施設の整備への支援等の施策を講ずることにより、産業廃棄物のプラスチックの適正処理及びリサイクルの促進を図ります。
- カーボンニュートラルを見据えた循環経済への移行と廃棄物処理の強靱化
循環経済への移行を推進するため、「もったいない」の心を活かし、廃棄物の発生抑制(リデュース)・再使用(リユース)・再生利用(リサイクル)の「3R」の適切な取組みに加え、バイオマス利活用(リニューアブル)を進めることにより、廃棄物・資源循環分野のカーボンニュートラルの実現を目指します。
また、廃棄物処理施設の広域化・集約化、老朽化施設の更新、エネルギーセンターや防災拠点としての活用などを通じ、地域の強靱化を加速するとともに、被災地復興に貢献するため、地震や風水害等の自然災害により発生する災害廃棄物を適正かつ円滑・迅速に処理するための対策を進めます。
- 生活排水対策の推進と不法投棄の撲滅
効率的な生活排水対策を進めるため、市町村等や国民の理解を得つつ、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換をはじめ、浄化槽の普及促進と管理の適正化に向けた体制整備並びに下水道施設等の広域化・共同化、浄化槽における脱炭素化に向けた取組みを進めます。
また、産業廃棄物の適正処理を確保するとともに、わが国の美しい国土を守るために、ごみ不法投棄撲滅に向けた未然防止・早期対応の取組みを推進します。更に、産業廃棄物処理業界が、今後のわが国のグリーン成長を担う循環型・脱炭素産業に成長していくような振興に取り組みます。
- 産業廃棄物の適正処理を担う人材の育成・ 確保
産業廃棄物の適正処理を担う産業廃棄物処理 業界の人材育成及び確保に向け、技能実習生の 受入れについて調査・研究を行うとともに、従 事者を対象とした資格制度の創設の検討を進め、更には労働災害防止体制の強化を図ります。
- 「3R」の促進
食品ロス削減の取組み強化をはじめ、ライフサイクル全体での資源循環への取組みを加速します。
更に、廃棄物処理業について、単なる廃棄物処理にとどまらず、廃棄物等を貴重な資源としてとらえ、積極的に循環利用する事業形態への転換を促進するため、優良産廃処理業者認定制度等の普及、優良事例の発信強化、優良なリユース事業者の育成、国によるグリーン購入・環境配慮契約の積極的実施等を行います。
- 化学物質と環境
国民が安心して暮らせる安全で豊かな環境を保全することは、政府としての基本的な務めです。子供の健康と環境に関するエコチル調査を進め、環境中の化学物質等が子供の発育に与える影響の解明及び成果の社会還元に取り組み、次世代を担う子供たちが健やかに育つ環境の実現を目指します。また、国際潮流を踏まえつつ、すべての化学物質を視野に入れた安全性評価・管理等を推進します。更に、「水銀に関する水俣条約」、「水銀汚染防止法」等に基づき国内外での水銀対策を推進します。
- 大気・水・土壌等の安全・安心な環境の保全
水や大気などの環境保全については、環境基準達成率の低い光化学オキシダントや微小粒子状物質(PM2.5)、湖沼及び内湾の底層の貧酸素化などへの対応等に取り組みます。特に自然の恵み豊かな沿岸域(いわゆる「里海」)の創生やそれぞれの湖沼の特色に応じた豊かな湖沼環境の再生を図ります。
また、放射性物質のモニタリングに引き続き取り組むとともに、ALPS 処理水の処分に関する基本方針の決定を踏まえ、透明性・客観性・信頼性を最大限高めた海域モニタリングの強化・拡充を図ります。更に、土壌汚染対策については、2019 年に全面施行された、改正「土壌汚染対策法」に基づき、適切なリスク管理を推進します。
- 越境汚染等への対応
近隣国を起源とする PM2.5 等の越境汚染によるわが国への影響が懸念されています。健康被害を防止するための対策を講ずるとともに、発生源への根本的な対応を促進するために、東アジア地域全体の環境汚染のメカニズムの調査研究を行います。その上で、起源国の自発的な対応を促し、必要な場合には支援を行います。
- 公害健康被害対策等の着実な実施
今後も水俣病問題の解決、アスベスト被害者の救済などの公害健康被害対策等や、アスベスト飛散防止対策等を着実に実施します。
また、国内における毒ガス弾等の問題について、環境調査など必要な対策を引き続き推進します。
- 瀬戸内海の環境の保全
2021 年 6 月に改正した「瀬戸内海環境保全特別措置法」に基づき、海域ごと、季節ごとの実情に応じたきめ細やかな栄養塩類管理や、藻場・干潟等の保全・創造等の促進等により、きれいで豊かな瀬戸内海の実現を地域の方々とともに目指す「令和の里海づくり」を進めます。
- 環境インフラ海外展開の促進
日本企業が有する脱炭素・環境負荷低減に資するハードインフラ、技術、サービス等(環境インフラ)の海外展開を促進するため、官民のプラットフォームを構築し、現地情報へのアクセス支援、技術情報の発信、個別案件形成を総合的に推進します。
- 原子力安全の最優先確保と規制行政の不断の見直し
福島第一原発事故の教訓を踏まえ、わが国の原子力規制に対する国内外の信頼を回復するために、安全性を最優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げてまいります。
原子力安全規制については、原子力規制委員会の独立性を尊重しつつ、リスク・インフォームド、パフォーマンス・ベーストの考え方に基づき、制度と運用の更なる改善を進めることが必要です。新たな検査制度の導入などの制度改正が真に実を挙げるものとなるよう、関係機関の取組みを検証し、必要に応じ更なる見直しを行います。
- 原子力災害への対応と原子力専門人材の充実
原子力規制機関の信頼性を確保し、IAEA(国際原子力機関)の最新の国際基準に照らした原子力規制を一層向上させるため、IAEA の総合的規制評価サービス(IRRS)の評価や指摘等を踏まえて改正された原子炉等規制法の着実な実施をはじめ、より実効性の高い規制の実現を目指します。
また、原子力防災体制の充実・強化に向けて、国と関係自治体が一体となって避難計画の具体化・充実化に取り組むとともに、自治体が行う防災資機材の整備、要援護者施設の放射線防護対策、緊急時避難円滑化事業等による避難の円滑化、防災訓練・研修の実施等への支援を継続します。
更に、原子力・放射能に関する高度の知見を有する人材の採用、養成などにより、原子力規制委員会の人員の増強・強化を図り、審査・検査体制及び原子力防災体制など、必要な体制整備を行うことで、原子力規制組織全体のパワーアップを実現します。
- 原子力に関する知見の国際的な共有化
わが国の原子力規制の向上及び他国の安全性確保に資するため、東京電力福島第一原子力発電所事故の経験から得た知見の国際的な共有化を進めます。
また、原発事故による放射性物質の拡散が人体や生態系に及ぼす影響を長期的に調査・公表することによって、安全な国民生活に寄与するとともに、世界と将来の人類への責任を果たします。更に、海外との人材交流を通じ、わが国の資源、エネルギー専門人材の育成を強化します。
沖縄振興
- 沖縄の自立的発展と県民生活の向上に向けた新たな沖縄振興の実現
2022 年 5 月 15 日、沖縄の本土復帰から 50 年を迎えます。沖縄がわが国のフロントランナーとして日本の経済成長を牽引していけるよう、国家戦略として総合的・積極的に沖縄振興を推進します。
取組みを進めるため、一括交付金、個別補助、 高率補助、税制上の特例措置等、2021 年度末に期限を迎える沖縄振興特別措置法等に基づく特 別措置について、必要な見直しを行いつつ、所 要の法的措置を講じることとし、次期通常国会 に所要の法案を提出します。また、沖縄振興策 と車の両輪として沖縄を支えてきた沖縄振興開 発金融公庫について、機能強化とともに、沖縄 独自の組織としての存続を強く求めていきます。
- 沖縄の発展の鍵となる人材の育成・子供の 貧困対策の充実
沖縄振興の更なる発展の鍵となるのは人材育成です。産業の基盤となる人材の育成とともに、学校教育段階の教育の充実、幼児教育・保育の充実、国際社会で活躍する人材の育成に積極的に取り組みます。
子供の貧困の根本的な解決に向け、親の就労 支援などの大人の貧困対策に取り組むとともに、支援員の質の向上など、子供のライフステージ に応じた支援の継続・充実を進めます。
- 沖縄の自立型経済の構築に向けた産業振興の強化
県民所得の向上を図るため、稼ぐ力のある競争力ある産業や外部変化に強い産業の育成・支援、DX の推進に向けたデジタル投資やグリーン投資による生産性の向上・事業構造の転換、産業人材の育成等を進めます。
コロナによる深刻な影響を受けている観光業の復活を支援するとともに、沖縄の独自性・強みを活かした質の向上、スポーツ産業や医療等の他の産業分野との連携を進めます。
離島農業の基幹作物であるサトウキビ及び製糖業の維持に取り組むとともに、農林水産業の担い手を確保するため、農産物流通の高度化、畜産や園芸作物の高付加価値化やブランドイメージの向上による競争力強化に取り組みます。加えて、情報通信産業の高度化や高付加価値 な業態の集積、沖縄の優位性を活かした高付加価値の製造業・物流産業の誘致・育成、酒造業の持続的な発展、航空関連産業やスポーツ関連産業、海洋・宇宙関連産業など、沖縄の優位性・潜在力を活かした新たな産業の創出・高度化を支援します。
沖縄における脱炭素に向けた取組みを加速させるため、既存発電施設の CO2 排出性能の向上や再エネの導入等を支援します。
- 沖縄における社会資本整備の推進、北部・ 離島の振興、駐留軍用地跡地利用の推進等
産業の振興・県民生活の向上を図るため、道路・空港・港湾等の整備、モノレールの能力増強、住環境の改善に取り組みます。また、沖縄の誇りであり世界遺産でもある首里城について、国の責任で着実に復元を進めます。
本島北部地域が、名護東道路の開通ややんばるの世界自然遺産登録等の発展の好機を着実に捉えることができるよう、北部振興事業に取り組みます。また、地元自治体における協議の進捗も踏まえつつ、公立北部医療センターの設置に向けた支援の在り方の検討を進めます。わが国の領海の保全等に大きな役割を果たしている沖縄の離島について、条件不利性を克服し、定住条件を整備するため、産業振興や移動・輸送コスト支援など、離島振興の取組みを進めます。大規模な基地跡地の有効活用は今後の沖縄振興において極めて重要であり、関係自治体の取組みを積極的に支援するとともに、跡地利用特別措置法や関連施策の延長を行います。沖縄科学技術大学院大学(OIST)が、沖縄の振興と日本及び世界の発展に貢献できるよう、適切に支援します。
復興の加速
- 復興が最優先
引き続き、東日本大震災からの復興を最優先 に進めます。わが国で開催される 2025 年の日本国際博覧会では、世界各国の注目が日本に集ま るこの機会を最大限に生かし、東日本大震災か らの復興を成し遂げつつある姿を世界に発信し、その成功に全力で取り組みます。
- 復興の加速化
今年度は「第 2 期復興・創生期間」(2021~2025 年度)の初年度であり、被災者の生活と生業を着実に取り戻し、東北地方が未来の構想を描いて飛躍していけるよう、地域住民、市町村、県、国が共通認識を持って共通の目標に向かっていく「オールジャパン体制」を強化します。地域によって復興の進捗状況が異なることから、復興のステージに応じた課題や多様なニーズにきめ細やかに対応し、復興を加速化します。そして、被災地の自立につながり、地方創生のモデルとなるような「創造的復興」を実現することを目指します。
- 復興及び防災体制の充実・強化
わが国においては大規模災害が頻発しており、国民の生命・財産を守り、国土の保全強化を図っていくことが急務です。このため、東日本大 震災からの復旧・復興に引き続き万全の体制で 臨むとともに、国の防災体制の一層の充実・強化を図り、国民の安全・安心の確保を図ります。
- 復興まちづくりのための土地活用の推進
2020 年度には、岩手県及び宮城県における仮設生活が解消し、被災地における高台の宅地整備も完了しました。引き続き、復興まちづくりのための土地の有効な活用促進に向け、被災地に寄り添ったハンズオン支援により、地域ごとの個別課題にきめ細かく対応し、造成宅地や移転元地の活用に全力で取り組みます。
- 「まち機能」の整備
産業・生業の再生を加速し、雇用の確保や教育、医療、商店街等の「まち機能」を整備して、安心して暮らせる環境を作ります。福島県では、その一環として「福島イノベーション・コースト構想」を軸とした新たな産業集積を加速し、自立的・持続的な産業発展を実現するため、政府と一体で、拠点整備、研究開発、生活環境整備、人材育成等に引き続き取り組みます。
- 新たなコミュニティの形成
被災者の災害公営住宅への入居等が進んでいる中、新たなコミュニティの形成や既存コミュニティとの融合など、住民同士の絆を深めるコミュニティ形成への支援に取り組むとともに、被災者の孤立防止や生きがいづくりに向けた「心の復興」事業など、引き続き、被災者の生活再建のステージに応じた切れ目のない支援に取り組みます。
- 地域経済の再生
平穏な生活を送る上で不可欠な生業の再建、地域経済再生の核となる地場産業の復興・成長の道筋を定めるため、必要な対策への取り組みを強化します。まず、自立的で活力ある地域経済を再生するため、水産加工業、食品製造業、ものづくり産業、農業、林業、漁業、観光業等、主力産業の成長を促進、なかでも売上げの回復に遅れの見られる水産加工業や食品製造業の販路回復については重点的に取り組みます。
また、地震・津波被災地域においては、復旧に必要な土地造成の遅れなど、被災地域の状況に応じて「津波・原子力災害被災地域企業立地補助金」を、福島の原子力災害被災地域においては、「自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金」等を活用し、製造業等の企業の新規立地を促進し、併せて被災地域の生活や経済活動の拠点となる商業施設の整備支援等を推進します。更に、地域資源を用いた新商品開発、ブランディング、販路開拓、生産性向上等の支援をはじめ、被災地域の中小企業等の前向きな取組みと挑戦について、引き続き積極的に支援します。
- 復興の進展に合わせた心と体の健康維持
復興の進展に伴い、また、今般のコロナ禍も相まって、被災者の方々が抱える課題は一層個別化・複雑化してきています。このため、個々の被災者の生活状況や生活再建のステージに応じ て、心のケア、孤立防止のための見守り、コミュ ニティ形成、生きがいづくり、生活・健康相談支援など、現場のニーズに即した、切れ目のない きめ細かな被災者支援に総合的に取り組みます。更に、見守りや健康支援、高齢者の生きがいや 健康づくり等の効果的な事例を広く紹介、実施 支援をしていくほか、児童・生徒の心のサポー ト、学習支援等とともに、支援者のケアにも配 慮していきます。
- 地域医療・介護の復興
「まち機能」に欠かせない地域の医療・介護の復興を更に推進します。特に、原子力災害被災地域では、医療・介護の提供体制の確保に向け、避難中の看護職員の帰還や再就職の促進、地元の医療機関の連携の推進に加え、被災地で勤務する医師の支援のための効果的な対策を講じるとともに、介護人材の確保等を支援します。
- 実情を踏まえたきめ細かい対応
住宅や廃棄物処理など、多くの避難者を受け 入れた地域における諸問題や避難中の防犯対策、資機材の不足対応のほか、災害による人口流出、復興事業にかかる労働力や宿舎需要の対策等に ついても、復興の進捗状況も踏まえつつ、実情 に沿ったきめ細かな対応をします。
- 行政需要の変化への対応
被災地の自治体への職員派遣に要する経費(応援職員、任期付職員の人件費等)については、第 2 期復興・創生期間においても引き続き自治体負担ゼロとし、復興の進捗状況を踏まえながら必要な人員確保の体制を整備します。
- 鳥獣被害の防止対策
イノシシなどの野生鳥獣が復興の妨げにもなることから、その生息状況等調査を継続するほか、侵入防止柵の整備や捕獲おり・わなの設置、捕獲・処理、環境管理、人材育成など、鳥獣の被害防止対策を支援します。
- 「協働」による福島の再生
復興のステージに応じたきめ細かな支援を継続し、福島の避難指示・解除地域について、国・県・市町村・住民が一体となった 4 輪駆動の「協働」馬力で復興・再生を実現します。
- 廃炉・汚染水・処理水対策
廃炉対策については、使用済燃料の取り出しや溶融した燃料デブリの取り出しについて、世界の英知を結集し、放射性物資の飛散防止を含め万全を期して安全かつ着実に進めます。
また、ALPS 処理水の処分について、本年 4 月に決定した基本方針の着実な実行に向け、本年8 月にとりまとめた「当面の対策」の着実な実施をはじめ、徹底した風評対策等を進めます。
- 避難指示・解除地域の復興及び再生
避難指示の解除は本格的な復興に向けたスタートであり、すでに避難指示が解除されている地域においては地元ごとの課題にきめ細かく対応するとともに、産業の再生や生活環境の整備に取り組むことで、地域の復興・再生を更に進めます。
また、帰還困難区域については、将来的にその全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意を一層強くし、2022 年、2023 年に予定される特定復興再生拠点区域の避難指示解除の実現のみならず、その後の帰還や移住・定住の促進などを通じて、復興に向けた環境整備を進めます。
- 中間貯蔵施設の整備
中間貯蔵施設の整備については、国が県、市町村と連携して地域住民の方々のご理解とご協力のもと、引き続き施設の整備を推進します。今年度末までに、福島県内に仮置きされてい る除去土壌等(帰還困難区域のものを除く)のおおむね搬入完了を目指すとともに、特定復興再生拠点区域において発生した除去土壌等の搬入を進めます。また、福島県内の除去土壌等の県外最終処分量を低減するため、減容・再生利用の技術開発等に取り組むとともに、全国的な理解醸成の取組みを強化します。
- 効率的な除染
2017 年 3 月までに面的除染を完了しましたが、引き続き実際の個人線量を重視し、他の放射線 防護対策と連携しながらきめ細かな対応を講じます。
特定復興再生拠点区域外の除染に関しては、地域住民の皆様の帰還意向を丁寧に把握しながら、帰還に必要な箇所の除染について検討を進めます。
- 指定廃棄物の処理
福島県内の指定廃棄物の処理については、地 元の信頼確保と安全・安心の確保に努め、既存 の管理型処分場を活用した埋立処分を進めます。
福島県外の指定廃棄物の処理についても、自治体と連携し、地元の方々への丁寧な説明に努め、取組みの促進を図ります。また、基準値以下の農林業系廃棄物等の処理についても、引き続き促進を図ります。
- 風評対策
福島県産農林水産物に対する風評の払拭や、避難児童生徒へのいじめの解消等を図るため、福島の復興の状況や放射線に関する正しい知識等について、効果的な情報発信を推進していきます。また、福島県産農産物等の流通実態調査のほか、被災地産品の利用・販売促進、国内外からの被災地への誘客促進等の取組みを行っていきます。
その他、除染、中間貯蔵施設の整備、ALPS 処理水の処分、避難指示の解除等の進捗について、広く理解されることが風評対策の基本であることを踏まえ、地元をはじめ国民、世界に向けて積極的に広く情報発信していきます。また、科学的根拠を伴わない、不当な輸入規制の撤廃も引き続き求めます。
- 「災害対策に責任をもてる危機管理体制」の整備
東日本大震災を踏まえ、避けられない将来の備えとして、同時複合災害発生時の的確な初動対応に万全を期すため、災害発生時のマニュアルの点検や訓練を充実させるほか、想定外を想定した「災害対策に責任をもてる危機管理体制」の整備についても引き続き検討を進めます。
- 国内外の英知を結集した東京電力福島第一原発の廃炉研究開発の加速
福島原子力発電所の事故対策において、環境モニタリングや地元住民の支援などで現行施策を拡充するとともに、これまでの研究開発成果であるロボットなどを効果的に活用し、廃炉作業上の課題を突破していきます。
また、東日本大震災からの復興のために、福島原子力発電所の廃炉に向けた取組みはわが国にとって最重要事項の一つであり、事業者任せにするのではなく、国が前面に立って廃炉に向けた支援を進めます。今後、世界でも経験のない燃料デブリの取り出しや放射性廃棄物の処理処分等を着実に進め、廃炉を加速していくためには、国内のみならず海外の研究者・技術者の英知を結集した技術開発が必要不可欠となります。このため、国内外の英知を結集させ、研究拠点を整備し、廃炉に必要となる人材育成や研究開発を加速させます。
- ALPS 処理水の処分に伴う対策の徹底
ALPS 処理水の処分については、まずは風評を生じさせないため、風評を最大限抑制する処分方法の徹底や外部の目による透明性の確保等、徹底した安全対策による安心の醸成を図るとともに、安心感を広く行き渡らせるため、情報発信等に取り組みます。また、風評に打ち勝ち、安心して事業を継続・拡大できるよう、水産業、農林業、商工業、観光業への支援拡充に取り組むとともに、万が一風評が生じた場合のセーフティネットとして、需要減少に備えた基金等の緊急対策や、なお生じうる風評被害への被害者に寄り添う賠償が行われるよう対応します。今後も、風評の状況を継続的に確認し、必要な追加対策を継続的に実施します。
- 特定復興再生拠点区域外における対応の具体化
特定復興再生拠点区域外にある自宅に帰りたい、という住民の方々の思いに応えるため、帰還に関する意向を個別に丁寧に把握した上で、帰還に必要な箇所を除染し、避難指示解除を行うという政府の基本的方針が示されたところです。2020 年代をかけて、帰還意向のある住民の方々が一人残らず帰還できるよう、取組みを進めます。また、残された土地・家屋等の扱いについては、地元自治体と協議を重ねつつ、検討を進め、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組みます。
- 創造的復興の中核拠点としての国際教育
研究拠点
第 2 期復興・創生期間において、福島はじめ東北地方が未来に向かって飛躍できるよう、創造的復興の中核拠点として、既存施設の研究活動に対する司令塔機能を持ち、旧来の枠組みに捉われない世界最先端の研究機関「国際教育研究拠点」を福島浜通り地域に創設します。「技術立国復活の狼煙(のろし)」を福島から上げるとの強い決意のもと、国が責任を持って財源・人員面での長期・安定的な運営を可能とする仕組みを構築し、政府・与党一体の国策として取り組みます。
- ICT 基盤整備による復興まちづくりへの貢献
東日本大震災からの復興の進展に伴って復興まちづくりが本格化する中、住民生活や産業復興に不可欠な超高速ブロードバンド、放送の受信環境、公共施設の情報通信システム等の ICT 基盤の整備や復旧を加速化し、住民の円滑な帰還や被災地の復興を支援します。
経済安全保障
- 基本的価値に基づく国際秩序強化
経済安全保障の観点も考慮し、気候変動や人権等も含めた基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持・強化や、その実現に向けた国内の体制・環境整備を図ります。
- 経済安全保障戦略の策定
自由、民主主義、人権といった価値を守り、有志国と連携して法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現しつつ、わが国の生存、独立、繁栄を経済面から確保するために経済安全保障政策を推進します。そのための「経済安全保障戦略」を早急に策定し、その主旨を次期「国家安全保障戦略」に盛り込みます。
- 基幹インフラ産業の自律性・強靱化
いかなる状況下においても国民生活の基盤を維持するために、基幹インフラ産業(情報通信、エネルギー、医療、金融、交通・運輸等)の自律性を高め、強靱化を図ります。
基幹インフラ産業について、機能の維持等に関する安全性・信頼性を確保するため、各業法等が経済安全保障上のリスクに対処できるかを点検した上で、必要な法的根拠を整えます。
また、半導体、医薬品、電池、レアアースを含む重要鉱物等の先行的な重点項目とともに、基幹インフラ産業において不可欠な物資・技術のサプライチェーン分析を進め、国内生産能力の強化や調達の多元化等を図り、中長期的な資金支援の枠組みを整えます。
- 先端半導体への支援
今後世界に先駆けて開発し得る素材・技術等の強化に加え、既存又は新規の産業分野における潜在的なニーズを見極め、わが国の不可欠性を獲得します。特にデジタル社会を支える先端半導体の設計やその製造技術の開発を研究開発基金等で積極的に支援します。
- 半導体産業の再生
半導体産業再生を目指し、国内における産業基盤を強化します。今後 10 年間で、先端半導体の国内開発・製造を目指し、海外企業のファウンドリ誘致や共同研究等を進め、他国に匹敵する支援措置を講じます。
- 先端分野における重要技術の育成
わが国の戦略的不可欠性の強化・獲得のために、宇宙、量子、AI、HPC、原子力、先端材料、バイオ、海洋等の先端分野における重要技術の育成について、国民の安心・安全に資する日本固有の革新的技術を適切に把握する政府の体制を強化するとともに、産官学連携の下、技術情報を保全しながら実用化する仕組みと十分な支援策を講じます。
- 経済安全保障推進法(仮称)の制定
安全保障の観点から、わが国の戦略的不可欠性(技術的優越性を含む)と戦略的自律性を支える戦略技術・物資を特定した上で、機微性に応じて、技術情報の管理強化、輸出管理の見直し、特許の非公開制度の導入等を進めていくとともに、投資審査体制の強化、研究環境の健全性・公正性の強化を含め、統合的、包括的な対策を講じてまいります。こうした経済安全保障に関する施策を推進していく上で必要な法的根拠を整備すべく、「経済安全保障推進法(仮称)」の制定を目指します。
- 国際デジタル秩序形成の主導
DFFT ルールの具体化において、EU と米国を連結する中核的役割を果たし、国際デジタル秩序の形成を主導します。また、デジタル時代におけるデータの法的権利に係る法整備を検討します。
- インテリジェンス能力の強化
インテリジェンスの能力及び連携の強化を進めるとともに、経済安全保障に係る各省庁の体制強化を図ります。また、機微な技術を保有する企業や大学等との連携を強化します。
- 必要物資の確保
緊急時でも「生活・医療・衛生・産業に必要な物資」を国内で生産・調達することを可能にするために、生産協力企業への設備投資支援、研究開発・生産拠点の国内回帰を促す税財政支援、基礎的原材料の確保に取り組みます。
- ペネトレーションテストの費用補助
家庭や職場のサイバーセキュリティ強化のため、中小企業に対して「発売前の IoT 機器のペネトレーションテスト」の費用を補助します。
外交
- 普遍的価値に基づく国際秩序のための力強い外交の推進
自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値に基づいた国際秩序の維持・発展は、わが国を含むインド太平洋地域、そして、世界の平和と安定のために死活的に重要です。米国との同盟関係を一層強化しながら、豪・印・ASEAN・欧州等の同志国とも連携を強化します。より多くの国・地域とともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた外交を更に力強く進め、普遍的価値に基づく国際秩序への挑戦に毅然と対処します。
特に、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のため、法の支配や航行の自由等の維持、連結性の強化を通じた経済発展への貢献、海洋安全保障や人道支援・災害救援分野での質の高いインフラ推進などの支援に取り組みます。
- 北朝鮮の拉致・核・ミサイル問題の解決
北朝鮮による拉致問題の早期解決は最重要課題です。あらゆる手段に全力を尽くし、政府認定の有無にかかわらず、拉致被害者全員の即時一括帰国を実現し、北朝鮮に真相究明、実行犯引き渡しを強く要求します。
米国をはじめとする関係国と連携を深め、制裁措置の厳格な実施と更なる制裁の検討を行うなど国際社会と結束して圧力を最大限に高め、関係国政府・議会及び国連に対する連携や働きかけを強化します。
核・ミサイル問題は安保理決議に従い、すべての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法での廃棄を求めます。朝鮮半島の非核化に向け、国際社会が一体となって米朝プロセスを後押しするため、関係国・機関との連携を深めます。
また、核兵器のない世界の実現に向け、核兵器国と非核兵器国の双方の協力により、現実的な手段として、特に、軍縮・不拡散体制の礎石である核兵器不拡散条約(NPT)の維持・強化等に取り組みます。
- 領土・主権・歴史に係る取組み
中国における、透明性を欠いた軍事力の強化や尖閣諸島領海への侵入を含む東シナ海・南シナ海での一方的な現状変更の試み、懸念すべき人権状況、経済分野の諸問題等に対し、具体的かつ実効的な措置の検討を不断に行いつつ、適切に対処します。
また、旧朝鮮半島出身労働者問題や慰安婦問題等について、韓国による国際法違反の状態や歴史認識等を巡るいわれなき非難といった、わが国の主権や名誉、国民の生命・安全・財産に関わる多くの課題に冷静かつ毅然と対応します。竹島・尖閣諸島等のわが国固有の領土・主権 を断固守るため、第三者研究機関を設置し、歴史的・学術的な資料等の調査を深め、常設展示館を拡充するなど、国内外への戦略的対外発信を更に強化します。わが国固有の領土である北方領土問題の解決に向け、ロシアとの平和条約締結交渉を加速します。
わが党が策定した「海洋基本法」に基づき、エネルギー資源等の海洋資源の開発・利用促進、排他的経済水域の開発や大陸棚の延長及び海洋調査の推進など、わが国の海洋権益を確保するとともに、排他的経済水域に関する包括的な法整備に取り組みます。
- 人権外交の推進
人権は普遍的価値であるとの立場を一層鮮明にし、中国における懸念すべき人権状況、ベラルーシにおけるジャーナリスト等拘束事案、ミャンマーにおける軍事クーデター等の問題に適切に対応します。人権擁護に歩みを進める国には寄り添って支援していくとの立場を堅持し、人権状況の実際の改善に貢献する日本らしい外交を主体的かつ積極的に推進します。
短期的には、ジェノサイド条約の取り扱い、外為法等の積極的運用改善、総合的外交判断のもとでの人権侵害制裁法など新たな法令上の枠組みの実現に向け取り組みます。また、企業の人権デューディリジェンスの支援強化、ODA による人権支援、国連の活動におけるイニシアティブの発揮、厳しい立場におかれる在留外国人等への支援強化等を検討・実現します。
中長期的には、二国間の「人権対話」の推進、権威ある国際 NGO との人権外交に関する対話枠組みの創設、外国人労働者との共生のための制度の強化、国際的に保護を必要とする難民等の受入れ改革等を追求します。
政府の情報収集能力の強化、人権関連部局の体制の拡充や議員外交に取り組みます。
- 台湾との関係強化
台湾は民主主義や法の支配などの普遍的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーです。「自由で開かれたインド太平洋」の外交方針に従い、台湾が国際社会における確固たる存在を維持すべく、WHO、CPTPP、ICAO、COP 等の国際機関・国際的枠組みへの参加を主導します。
日台関係の深化に向け、自民党青年局による公式チャネルの維持・強化、日米台三極議員による戦略対話を含む対話プラットフォームの構築等、必要な施策・制度の検討・準備を加速します。
また、安全保障も見据えた緊密な経済連携の観点から、わが国が強みを持つ半導体産業と世界有数のファウンドリ技術を有する TSMC をはじめとする台湾企業が共同でサプライチェーンを構築できる環境整備、DFFT(信頼ある自由なデータ流通)等のわが国のデジタル戦略における連携強化、日台間の貿易・インフラ輸出の拡大等を進めます。
台湾の危機はわが国の危機であり、価値観を共有する同志国との連携を深化させ、抑止力を強化します。防災・海難救助等の安全保障に資する日台間の非軍事的な交流実績を積み上げ、絆を強固にします。
- 新型コロナウイルス感染症への万全の対応
新型コロナウイルス感染症は歴史上、例を見ない人間の安全保障の危機です。
海外在留邦人の安全確保は政府の最も重要な責務の一つであり、引き続き在留邦人の安全に全力を尽くします。在留邦人が一時帰国してワクチン接種することに加え、現地でも接種できるよう、現地政府との交渉や接種体制構築の支援等を強化します。
諸外国の感染状況等を踏まえ、感染症危険情報レベルの見直し、入国者に対する事前措置の強化、空港における検査、入国後の停留・待機及びフォローアップ等の防疫措置を強化・徹底し、水際対策に万全を期します。
加えて、「誰の健康も取り残さない」との観点から、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC) の実現に向けた国際的な議論を主導し、わが国が主催した COVAX ワクチン・サミットなど国際社会との連携を更に深め、国産のものを含むワクチン・治療薬・診療薬の開発・供給・公平なアクセスに積極的に貢献します。
- わが国の特性を活かした国際協力の推進
持続可能な開発目標(SDGs)達成に向け、開発途上国の支援や地球規模課題への取組みを拡充します。国益に即した政府開発援助(ODA)を質・量両面で拡充し、民間投資との有機的連携により日本企業の海外進出を後押しします。
ODA 実施にあたっては、相手国のニーズに寄 り添った人材育成や質の高いインフラ整備など、わが国の特性を活かし、かつ中小企業を含む日 本企業や自治体の海外展開を推進します。ODA を通じた民間の貿易投資を促進し、開発途上国の 成長を日本に取り込むことで、わが国と相手国 の間に互恵的な関係を構築します。
2050 年までの「カーボン・ニュートラル」を含む世界の脱炭素化の実現、防災、教育、貧困撲滅、女性など各分野で、SDGs 達成に向け一層取り組みます。
自然災害が世界各地で頻発化・大規模化しており、国際緊急援助隊の派遣をはじめ人的・物的・資金的な緊急人道支援など、災害時における国際的な支援活動を積極展開します。
また、防災・減災・避難救援体制等、わが国が災害対応によって得た教訓・知見をソフトパワーとして世界に発信し、国際社会における防災の主流化を更に促進します。
- 国益に即した経済外交の推進
自由貿易の推進はわが国の通商政策の柱です。多角的貿易体制の強化・改善に向け、日米貿易 協定、TPP11 協定、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、日 EU 経済連携協定や日英包括的経済連携協定を着実に実施します。TPP11 協定については、参加を希望する国・地域に対して協定の高いレベルを維持しつつ、戦略的な観点や国民の理解も踏まえながら一層の拡大を目指します。
こうした取組みを通じて、各国の利益に資する貿易・投資を更に拡大させ、公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展等を実現します。国益確保の観点から、WTO 改革、デジタル分野を含め、グローバルなルールの策定にも積極貢献します。
日本企業支援では、情報共有・法的支援体制の強化、輸入規制・風評被害対策等を着実に進め、中小企業を含む日本企業及び地方自治体の海外展開支援を強化します。
更に、再生可能エネルギーを含めた資源外交や、鯨類を含む生物資源の持続可能な利用に関する取組み等、経済外交を積極展開します。
- 投資協定・租税条約締結の促進
海外市場で得た利益を国内の新たな付加価値創造へと向かわせるため、二国間の投資関連協定(投資章を有する EPA/FTA を含む)や租税条約等により、資本移動の自由化等を促進します。海外子会社の配当、ロイヤリティ等に対する進出先国での課税を可能な限り縮小することを目指します。
そのため、他の先進国に比べて締結数で遅れを取っている日本の投資協定について、経済界の実需に併せて、アフリカ等も視野に入れ、戦略的に展開するとともに、協定の質の向上にも努めます。
- 中東アフリカ地域への積極的関与
資源の安定的かつ安価な供給の確保は日本経済・暮らしの基盤です。要人往来、在外公館による日常的な働きかけ、国際的な枠組みの活用、ODA を含む外交ツールを活用し、主要な資源国との関係強化に努め、供給国の多角化を図るなど資源外交に力を入れます。そうした観点からも、わが国が原油の約 9 割を輸入する中東地域における緊張緩和と情勢安定化に向け積極的に取り組みます。
また、成長が著しい一方、多くの課題に直面するアフリカが自ら主導する発展を力強く後押しします。2022 年に行われる第 8 回アフリカ開発会議(TICAD8)も契機とし、日本ならではの貢献を広くアフリカ及び国際社会へ発信します。
- 国際社会におけるわが国のプレゼンスの強化
関係国と連携して国連改革を推進し、わが国の安保理常任理事国入りを目指しします。
国際社会における日本のプレゼンス強化のため、国連関係機関の日本人職員を 2025 年までに1000 人とする目標も念頭に、人材育成を進め、国際機関でのハイレベルも含めた邦人職員の増強に向けた取組みを強化します。国際機関に対する分担金等を適正に拠出し、その質を高める評価を行い、国際機関の戦略的活用を進めます。
- 戦略的対外発信の強化
戦後日本の平和国家としての歩みや国際貢献等を国内外に示すため、情報収集や調査・研究・分析を強化します。在外公館や世界 3 都市に開設したジャパン・ハウス等の一層の活用、SNS 等を含むオンラインでの発信の強化、国内シンクタンク等の充実や最大限の活用、多言語による発信を含め戦略的対外発信を通じ、わが国の名誉と国益を断固守り抜きます。
ALPS 処理水の取り扱いをはじめとする風評被害対策について、日本産食品等に対する輸入規制撤廃に向け、国際社会に科学的根拠に基づく正確な情報が理解されるよう、国際原子力機関(IAEA)等の国際機関との協力や現地における重層的な発信等に更に努めます。
普遍的価値を共有する国・地域との間で招聘・派遣・知的交流事業等を一層促進し、親日派・知日派の育成を推進し、わが国の立場への支持拡大や国際世論の形成に向け、積極的に取り組みます。
- 在外公館等を活用した日本企業の海外展開支援
在外公館施設等を活用したインフラ輸出、中小企業を含むわが国企業や地方自治体の海外展開を積極的に支援することにより、民間の貿易投資を促進します。トップセールスを更に強化するとともに、これまでの成果を着実にフォローアップします。
海外進出する日本企業の支援を在外公館の本来業務として位置づけ、人脈形成・情報提供など官民連携を一層強化します。
- 外交の実施及び情報収集・分析・共有体制の強化
多岐にわたる外交課題に取り組み、わが国の国益を守るため、積極的な議員外交の展開と併せて、業務のデジタル化を含め、外交実施体制を欧米主要国並みに充実させます。具体的には、働き方改革や業務の効率化に留意しつつ、外務省予算の増額、定員の拡充、在外公館の質と量の増強、領事サービス向上のための領事体制の抜本的強化等を推進します。
国際テロの脅威に対応し、在外邦人の安全を確保するため、「国際テロ情報収集ユニット」「国際テロ情報集約室」「国際テロ対策等情報共有センター」の活動を充実させ、官邸を司令塔とするわが国の安全に関わる情報の収集・分析・共有体制を一層強化します。緊急事態発生に迅速かつ適切に対応できるよう人的・物的体制を整備し、在外邦人・企業・学校・公館等の安全確保に万全を期します。
- 新たな政策領域での対応強化
経済安全保障、宇宙、サイバーといった新たな政策領域において、同志国等とも連携しつつ、関連情報の収集や分析などの取組みを強化します。
- 国際裁判への態勢の整備
国際社会における法の支配の確立や国際法に基づく紛争解決の重要性の高まりを踏まえ、国際裁判手続きに関する知見の増進や国内外の法律家との関係強化に努め、国際裁判への態勢を一層整備します。
安全保障
- 宇宙デブリ対策の推進
わが国の得意分野を活かし、世界をリードし て、人工衛星等の安全な運行のためのルール作 りや宇宙デブリ問題に取り組んでいくことで、 宇宙空間の持続的かつ安定的な利用の門を開き、国際社会に貢献します。
- わが国の安全保障に資する宇宙利用の促進
各国の動向を注視しつつ、わが国の安全保障に資する宇宙利用の促進、研究開発等を推進します。
具体的には、高分解能・高頻度の情報収集衛 星や早期警戒衛星等、わが国の安全保障に資す る研究開発を加速し、自衛隊をはじめ中央省庁・関係機関等が利用する通信、気象観測、偵察等、 様々な用途の衛星システムの開発を推進します。
また、輸送系システム、射場の新設・整備を含む地上系システム、宇宙関連技術基盤の維持・強化等を図るため、デュアルユースの観点も踏まえた宇宙システムの開発を推進し、宇宙状況把握に係る国内の体制を整備するとともに、ミサイル防衛等のための衛星コンステレーションについて、米国との連携可能性も念頭に検討を行い、先行的な技術研究に着手します。
情報収集衛星については、財源確保策の検討を進めつつ、10 機体制の確立を目指し、情報収集能力の強化を図ります。
- 国際協力等を通じた宇宙空間の安定的・効果的な活用の推進
各国との国際協力等を通じて宇宙空間の安定的・効果的な活用を推進します。
具体的には、準天頂衛星システムについて、7 機体制を確立するとともに、宇宙状況把握能力の向上に向けた米国のセンサを搭載すなどの日米協力を推進します。また、高精度測位や防災に係るサービスのアジア・オセアニア地域での海外展開を戦略的に進めます。地理情報と衛星測位情報を統合活用した G 空間情報(地理空間情報)を国として保有し、利活用するための社会基盤インフラを構築することで、わが国の安全保障上の利益の確保に努めます。
宇宙に関する対話・協議の促進や宇宙状況把握における協力の強化など、米国をはじめ各国との間で国際的な協力を推進します。宇宙空間における法の支配の実現・強化に向けても、国際的ルール作りに関する議論に積極的に貢献していきます。
- 安全保障上重要な土地等の管理
わが国の国土の適切な管理等の観点から、安全保障上重要な施設の周辺や国境離島等における土地等の利用の実態を的確に把握するため、「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」が本年 6 月に成立したところであり、その執行体制を早期に整備し、速やかかつ着実に土地等利用状況調査等を進め、国民生活の基盤の維持並びにわが国の領海等の保全及び安全保障の確保に努めてまいります。
- 令和 4 年度からの防衛力の大幅な強化
いかなる事態においても、国民の命や平和な暮らし、領土・領海・領空を守り抜くことは政治の最も重要な責務です。わが国として、NATO 諸国の目標水準(国防予算の対 GDP 比 2%以上)も念頭に、防衛関係費の増額を目指し、安全保障環境の激変に対応し得るだけのわが国自身の防衛力を令和 4 年度から大幅に強化します。
- 自らの防衛力を強化するための、国家安全 保障戦略・防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画の見直し
現在においては、周辺国の軍事活動の活発化や軍事力の高度化に加えて、経済安全保障上の懸念や新型コロナウイルス感染症など、新たな課題が発生しています。こうした課題に対して、わが国全体として有機的かつ効果的な対応が可能となるよう、急ピッチで変化する安全保障環境も踏まえ、自らの防衛力を大幅に強化すべく、あるべき安全保障やわが国防衛の姿を取りまとめ、新たな国家安全保障戦略・防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画等を速やかに策定します。
- 宇宙・サイバー・電磁波各分野における新 領域における体制強化の加速
新領域における体制強化に向けた取組みを加速化します。特に、宇宙分野においては、新編した「宇宙作戦群」を拡充し、自衛隊の能力向上を進めます。サイバー分野については、新編した
「自衛隊サイバー防衛隊」の体制強化や高度な知見を有する部外の人材の登用等により、サイバー防衛能力の抜本的強化のための取組みを進めます。電磁波分野については、新編した「電磁波作戦部隊」の拡充やゲーム・チェンジャーとなり得る技術の研究等により、電磁波領域における能力を強化します。
- 弾薬・維持整備のための費用確保、優れた装備品の数量確保、後方分野の能力強化
事態発生から終結までわが国を守り抜くために必要な、十分な量の弾薬の整備や装備品の維持整備に係る費用を確保し、また、急激に拡大する周辺国との戦力格差を一刻も早く埋めるため、領域横断作戦を通じてわが国を守り抜くために必要な、優れた正面装備品(艦艇、航空機等)の数量を確保します。加えて、輸送力や衛生機能を含む後方分野における能力の抜本的強化や、事態の兆候を迅速に察知し、有効に対処するための情報機能の強化を行います。
近年増加が著しい災害対処や新型コロナウイルスによる感染症対応など、国民を守るための活動に自衛隊が十分な態勢で臨めるよう、万全を期します。
- 相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有等、抑止力向上の取組み推進
極超音速兵器、変則軌道弾道ミサイル、無人機・スウォームといった複雑化・多様化する経空脅威からの防衛に万全を期すため、総合ミサイル防空能力を強化するとともに、イージス・システム搭載艦 2 隻につき、整備を着実に進めます。また、国民に深刻な被害をもたらしうる弾道ミサイル等による攻撃を防ぐため、相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取組みを進めます。
また、関係省庁と地方自治体との平素からの緊密な連携の確保や、実践的な訓練の実施、地方自治体の危機管理監等への退職自衛官の採用などを通じ、あらゆる事態を想定した国民保護の態勢を確立します。
- 島嶼部への攻撃や尖閣諸島周辺の事態など、不測事態に対処し得る体制の整備
わが国の島嶼部に対する攻撃への対応に万全を期し、常時警戒監視体制を強化するために、新型護衛艦(FFM)・哨戒艦や F-35 戦闘機等の整備を引き続き進めます。加えて、12 式地対艦誘導弾能力向上型の研究開発等を通じ、相手方の脅威圏の外から対処可能なスタンド・オフ・ミサイルの整備を進めます。
尖閣諸島周辺において、わが国に対する圧力が一層強まり、事態がエスカレートすることも予想される中、わが国の正当性について国際社会に対する発信力を強化し、実践的なシナリオに基づく共同訓練等を通じ、自衛隊と警察・海上保安庁との連携を強化するとともに、わが国の領域侵害に対して政府機関が十分に対処できるよう、法整備も含め、速やかに必要な措置を講じます。ハイブリッド戦や様々な複合事態に対しても、装備や法律上の権限などを十分に付与して、万全の体制を構築します。更に、衛星や海底ケーブルなど、国防上重要な施設等の防護を強化します。
- 防衛装備庁の研究開発費の大幅増額や先進的な民生技術の活用推進
将来にわたりわが国を守り抜くために、次期戦闘機やスタンド・オフ・ミサイルといった戦略的に重要な装備品の研究開発を強化・加速化します。同時に、「戦い方」の根本的な変化にしっかりと対応するために、今後わが国防衛の大きな鍵となる、AI、極超音速、指向性エネルギー兵器といったゲーム・チェンジャー技術に係る研究開発も強化・加速化していきます。こうした取組みを推進するために、防衛装備庁の研究開発費を大幅に増額します。また、安全保障技術研究推進制度(ファンディング制度)の活用等を通じ、先進的な民生技術の活用を推進します。
- 防衛装備庁の体制の抜本的強化
防衛産業基盤はわが国の防衛力の礎であり、防衛力の維持・強化に不可欠であるとともに、潜在的な抑止力を向上させるものであることから、防衛関係費の増額を通じてわが国防衛に必要な装備品等の安定的な調達を図るとともに、防衛産業基盤を強化する取組みを推進します。また、防衛装備移転三原則のもと、装備品の海外移転を戦略的に推進します。こうした取組みを推進するために、防衛装備庁の体制を抜本的に強化します。
- 同盟・友好国との協力強化
日米同盟及び地域の安全保障を一層強化するために、わが国の防衛力を強化し、また、サイバー・宇宙を含む、全ての領域を横断する日米防衛協力を深化させ、米国による拡大抑止を強化します。
「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを維持・強化するため、日米同盟を基軸としつつ、豪州やインド、ASEAN・欧州諸国などの友好国との間で、二国間のみならず、日米豪印 4 か国協力など多国間でも、人的交流や部隊間交流、共同訓練、防衛装備・技術協力、能力構築支援などの幅広い手段を効果的に組み合わせ、戦略的な国際防衛協力を推進します。
- 募集施策強化、再任用活用や女性活躍の推 進等、人的基盤の強化
防衛力の強靱性・持続性を確保するため、無人化・省人化の取組みを推進しつつ、高い意欲と能力を有する自衛隊員の確保・育成に全力を挙げます。
そのため、勤務環境の改善、再就職支援の強化等により、防衛省・自衛隊で働くことの魅力を高めつつ、募集施策の強化を図るとともに、定年退職者の再任用、予備自衛官等の活用・充足向上等の施策により、人的基盤を一層強化します。その際、女性活躍の積極的な推進など、人材のより一層の活用を図ります。
自衛隊員が高い士気と誇りをもって自らの能力を十分に発揮できるよう、働き方改革の一層の推進、福利厚生・各種手当の拡充をはじめとする名誉や処遇の改善の取組みを推進します。
- 国際社会の平和と安定への貢献
アジアと欧州・中東を結ぶ海上交通の要衝であるソマリア・アデン湾での海賊対処行動につき、中東地域における平和と安定及び日本関係船舶の安全確保のために、中東地域での情報収集活動を着実に実施します。
また、シナイ半島における多国籍部隊・監視団(MFO)や南スーダンにおける国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)への司令部要員の派遣といった取組みを通じ、国際社会の平和と安定に一層積極的に貢献します。
- 防衛施設と周辺地域との調和の推進
自衛隊施設や在日米軍施設・区域が所在する地元の負担軽減を図るとともに、特定防衛施設周辺整備調整交付金の交付、防音工事や民生安定施設への助成など防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策を推進します。
在日米軍の施設・区域については、日米同盟の抑止力を維持しつつ、沖縄をはじめとする地元の負担軽減を早期に実現するため、施設・区域の整理統合や、各種訓練の移転、在沖米海兵隊のグアム移転事業など在日米軍再編を着実に進めるとともに、再編交付金の交付などを通じた生活環境の整備や産業の振興を確保します。特に、普天間飛行場の危険性を一刻も早く除 去するため、現行の日米合意に基づく名護市辺野古への移設を推進するとともに、関係自治体
に対する各種施策を着実に実施します。
また、地域住民の方々の安全・安心の確保を最優先の課題として、米国政府と緊密に連携の上、在日米軍による事件・事故の防止を徹底し、日米地位協定のあるべき姿を目指します。
治安・テロ対策・海上保安
- テロの未然防止とサイバーセキュリティの確保
2025 年大阪・関西万博をはじめとする大規模国際イベント開催や観光立国実現を見据え、テロの未然防止やサイバーセキュリティの確保に向けた情報収集・分析体制を強化するとともに、水際対策の徹底や観光客などに対する円滑な出入国審査に取り組みます。
- インテリジェンス機能の強
国内外の悪意ある主体によるサイバー攻撃など、深刻化する脅威に対応するため、サイバー空間における不審動向などに関する情報収集・分析体制を強化します。
また、北朝鮮に対する制裁措置の実効性確保や北朝鮮による拉致事案などの解決に向けて、外国機関との連携を強化しつつ、情報収集・分析体制を強化します。
更に、テロの未然防止や国家安全保障政策に資するため、外国機関との連携を強化しつつ、サイバー空間を含む人的情報収集・分析を中心としたインテリジェンス機能を強化します。経済安全保障分野の政策判断に不可欠なインテリジェンス能力を向上させるため、公安調査庁をはじめとする関係省庁における情報収集・分析に係る能力・体制を更に強化します。
- 性犯罪への対応と法的支援態勢の強化
性犯罪について、被害の実態に応じた刑事法の検討を迅速かつ着実に進めるとともに、児童や精神に障害を有する性犯罪被害者からの聴取に関する多機関連携による司法面接などの取組みや、再犯防止の強化を進めます。また、困難な問題を抱える女性の自立を包括的に支援する新たな法律を議員立法で成立させるとともに、女性支援を前線で担っている婦人保護施設の機能強化や生活水準の向上、婦人相談員の処遇改善、NPO 等への支援強化を図ります。更に、高齢者、大規模災害の被災者、DV・児童虐待の被害者など社会的に弱い立場にある方々や、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による社会経済情勢の悪化等によって法的トラブルを抱え苦しんでいる方々の様々な法的ニーズを的確に把握・分析し、デジタル技術を利活用するなど、日本司法支援センター(法テラス)による法的支援態勢の強化を進めます。
- アジア地域における法の支配の確立
アジア地域を中心とした国々において、法の支配を確立・浸透させ、その国の持続的な成長に貢献するとともに、ビジネス環境改善にも資するため、法令の起草、運用改善及び司法実務家の人材育成などの支援を行う法制度整備支援を様々なアクターと連携しながら戦略的・多面的に推進します。
また、アジア・アフリカ諸国などにおける法の支配やグッドガバナンス(良い統治)の実現及び安全・安心な社会の確立のため、刑事司法実務家の人材育成などの支援を推進します。
- 法の支配に基づく国際秩序形成
京都コングレスで採択された「京都宣言」の実施にリーダーシップを発揮し、レガシーの確立に係る取組みの積極的な展開などを通じ、法の支配に裏打ちされたルールに基づく国際秩序形成を主導します。
また、「自由で開かれたインド太平洋」を支え、地域の安定と繁栄を実現する上で欠くことのできない法の支配を確立するため、国際会議の開催などを通じて、普遍的価値を共有する国・地域と法務・司法分野における連携を強化します。
- 司法外交の推進と国際ルール形成
司法外交を長期的かつ戦略的に推進するため、法曹などの国際機関への派遣などを通じ、司法 外交の担い手となる裾野の広い国際司法人材の 養成に取り組みます。国際的な法的紛争発生時 には、重要な国益の保護を図るため、国際的な 法的紛争への実践的な対応能力を更に強化し、 国際裁判等へ的確に対応します。
また、国際的な法的紛争に係る公正なルール形成に寄与するため、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)などにおける国際紛争解決ルールの形成手続に積極的に関与します。
更に、民商事法分野の国際ルール形成を主導するため、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)、ハーグ国際私法会議(HCCH)などの国際機関との連携を強化し、活動に貢献していきます。
- 諸外国の海上保安機関との連携強化
南シナ海・東シナ海等における法の支配、共通の価値に対する挑戦については、アジア諸国をはじめとした海外の海上保安機関間の枠組みや、地域の枠組みを越えた「世界海上保安機関長官級会合」等の多国間の枠組み等を活用し、能力向上支援や国際連携等の強化を図ります。
- 領土・領海の堅守
わが国の領土・領海の堅守に万全を期し、国民が安全・安心に暮らすことができる平和で豊かな海を守り抜くため、海上保安庁の海上法執行能力、海洋監視能力、海洋調査能力の 3 点について強化を図ります。具体的には、尖閣領海警備体制の強化と尖閣以外の大規模事案の同時発生に対応できる体制の整備、海洋調査体制の強化、海上保安業務対応能力の向上を図るための人材の育成・定員の増員・教育訓練施設の拡充等の基盤整備などを進めます。また、国境画定の起点等遠隔離島における活動拠点の整備等を推進します。
- 海上における治安の維持・安全の確保
無操縦者航空機の導入などにより海洋状況把握の能力強化の取組みを進めるとともに、大和堆周辺海域における外国漁船の取締り強化のための体制を強化するなど、離島・遠方海域における治安の維持・安全の確保に努めます。更に、三大湾、瀬戸内海等において、勢力が強い台風により、人流・物流に甚大な被害を及ぼすような船舶の走錨に起因する事故の防止を図る等、海上交通の安全の確保を推進します。激甚化する自然災害に対しても、人命救助を基本に、関係機関と連携して被災地のニーズに柔軟に応えられるよう努めます。
- 重要インフラ等におけるペネトレーションテスト等の継続的な実施
重要インフラや IoT システムにおけるサイバーセキュリティ対策が継続的に実施されるためには、日々、高度化する攻撃リスクを把握することが重要です。継続的なペネトレーションテスト等の実施を通じ、経営者を含めた攻撃リスクの認識を共有し、セキュリティ対策を推進します。
- 「世界一安全な日本」を実現するための体 制強化
良好な治安を確保するため、「『世界一安全な日本』創造戦略」に基づき、サイバー犯罪、組織犯罪、児童虐待、特殊詐欺等への対策を講ずるとともに、警察及び検察の人的・物的基盤の強化を推進します。
大規模国際会議等を見据え、テロ等を未然に防止する取組みを促進しつつ、国内の組織・法制のあり方について研究・検討を不断に進めるとともに、関係省庁の人的・物的基盤を拡充するなど、情報収集・分析体制を強化します。
- サイバー事案に対応するための体制強化
サイバー攻撃やサイバー空間でのテロリスト等の活動に対応するため、国の情報収集・取締りの体制を強化するとともに、関係省庁における資機材の整備や専門人材の確保・育成に力を注ぎ、攻撃の予兆や攻撃主体・方法等に関する情報収集・分析体制を強化します。
また、わが党は、サイバー空間における違法・有害情報の排除、日本サイバー犯罪対策センター(JC3)の積極的な活用、捜査手法の高度化、 情報技術分析体制の強化、国の捜査部隊の創設などに取り組みます。
- 対日有害活動やテロ等への対策強化
北朝鮮による核実験・ミサイル発射等を受けて採択された国連安保理決議等の実効性の確保及び北朝鮮による拉致容疑事案等の真相解明に向けて、人的・物的基盤の拡充や外国治安・情報機関との情報交換の推進等を通じて、情報収集分析体制を強化します。
また、現在も市民生活を脅かす暴力団による抗争事件の発生がみられるほか、海外テロ・原発テロ・スポーツイベントにおけるテロなどの脅威への対応が求められています。
こうした情勢を踏まえ、海外などにおける情報収集体制や警備体制の強化など、サイバー犯罪対策、組織犯罪対策やテロ対策に万全を期します。
- 国民の安全安心の確保
高齢者が振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺や悪質商法の被害に遭ったり、ストーカー事案により女性の安全が脅かされたり、刑務所等の出所者が再び犯罪を犯したりするような国民の安全・安心を脅かす事案が相次いでいます。わが党は、相談事案従事者のスキルアップや広域的な情報管理体制の確立、交番及び通信指令の機能強化、矯正職員の技能向上など、市民生活の安全を確保するために必要な体制の強化を図っていきます。特に、特殊詐欺については、金融機関、関係事業者等の協力を得て未然に防止するための取組みを強化するとともに、高齢者のみならず、その子供・孫世代を対象に、家族や地域の絆による被害予防を呼びかける広報啓発に取り組むなど官民一体となった予防活動を推進します。また、犯罪被害者等にきめ細かで充実した支援が行われるよう、「第 4 次犯罪被害者等基本計画」の着実な推進を図ります。
- 緊急事態対処体制の強化
尖閣諸島及び周辺海域のように警戒警備の強化が急務な場合があるため、国家・国民の安全を断固として守るために必要な法務・警察部門の体制強化を図り、頼りがいのある治安インフラの確立を目指します。
- テロリスト等の入国を阻止する水際対策、 情報収集・分析体制の強化
テロリスト等の入国を阻止するため、出入国 管理体制の強化、出入国管理に係るインテリジ ェンス機能の強化、顔画像照合機能の活用等に より水際対策を強化します。国際テロ情勢や安 全保障環境が厳しさを増す中、海外の関係機関 との連携を一層緊密にし、関係省庁の専門人材 の確保及び育成を強化するなど、わが国の情報 収集・分析体制を強化します。テロへの関与が 疑われる外国人が、日本への帰化によって日本 人としてわが国に潜伏することを防止するため、より慎重に帰化許可申請の審査を行うとともに、関係機関との連携強化を図ります。
- サイバーセキュリティ対策に係る連携の強化
地方自治体について、サイバー攻撃が急速に複雑・巧妙化している中、地方自治体の行政に重大な影響を与えるリスクも想定されることから、その情報セキュリティ対策の抜本的強化を推進します。
また、諸外国等との効果的な連携を図り、サイバー分野における日米及び日 ASEAN 等の政府間の対話をはじめ二国間・多国間での政策対話・取組みや国際会議への参画、能力構築支援等を通じた国際協調による協力体制の構築を図ります。
更に、中小企業におけるセキュリティ対策の抜本強化に向け、中小企業が利用しやすいサイバーセキュリティ保険の普及に向けたサービスの普及支援を行います。
- 総合的なサイバーセキュリティ対策の強化
デジタル・トランスフォーメーションにより、サイバー空間と実空間の融合が進み、社会経済活動のあらゆる領域において、サイバーセキュリティの確保が必要な時代が到来しています。
また、国境を越えたサイバー攻撃により、政府や企業の機微情報や技術情報の窃取や国民生活に直結する重要インフラ分野への攻撃、IoT を悪用した脅威等が益々深刻化しています。わが党は、サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、「サイバーセキュリティ基本法」の制定や改正に主導的に取り組んで参りました。今後とも、同法の理念に則り、政府内の体制を更に強化するとともに、IoT セキュリティの総合的な対策をはじめ、通信ネットワークの安全性や信頼性の確保等を通じ、ICT の利活用による豊かで便利な社会を作るための総合的サイバーセキュリティ対策を推進します。
- わが国独自のセキュリティ技術の開発とサイバーセキュリティ人材の育成等
国家安全保障の観点も踏まえつつ、サイバー 先進国である米国に比べてはるかに劣る予算を 充実させ、わが国独自のサイバーセキュリティ 技術の開発や高度なサイバーセキュリティ人材 の育成等に大胆に予算を配分します。とりわけ、サイバー攻撃に対するわが国の自律的な対処能 力を高めるため、サイバー攻撃に関する多様な データを国内で大規模に収集・蓄積・分析・提供し、国産のセキュリティ技術の開発や社会全体 での人材育成を進めるための産学の結節点とな る拠点を早期に完成させます。加えて、特に、警 察庁や防衛省、海上保安庁においては、サイバ ー防衛隊等を拡充し米国並みの動的防御システ ムやバックアップシステムを早急に構築します。
- 国民の情報を守るためのサイバーセキュリティ
行政機関等の保有する国民の情報を守り、国民に対する安定的な行政サービスの提供に資するため、NICT の大規模演習基盤の活用等により、政府機関や地方自治体等の情報システムのサイバーセキュリティを担う人材の育成を強力に推進して参ります。政府機関の情報機器や複合機等の政府調達に際しては、サイバーセキュリティの観点から、適切な製品等が調達される仕組みを推進します。
わが国の産業界をサイバー攻撃から守るため、サイバーセキュリティ対策等を整理したフレー ムワークの策定とその産業分野への実装を進めるとともに、産業サイバーセキュリティセンターの模擬プラントの活用等による人材育成を進めます。さらに、データの管理・処理を担う半導体を中心に、信頼あるサプライチェーンの確保に努めます。
- 電気通信事業者による積極的セキュリティ対策の推進
国民生活や経済活動に必要な多くのやりとりが電気通信事業者のネットワークを通じて行われています。日々、高度化する攻撃リスクに効果的に対処するには、電気通信事業者において、データの取扱い等に係るガバナンスを強化するとともに、より積極的なサイバー攻撃対策を実施していくことが重要です。こうした対策を実施するため、必要となる関係法令の整理や実証事業を推進します。
- 再犯防止施策の推進
「『世界一安全な日本』創造戦略」に基づき、多機関と連携しつつ、組織犯罪、児童虐待、外国人犯罪などへの対策を推進します。
また、安全で安心して暮らせる「世界一安全な国、日本」の実現に向け、「再犯防止推進計画」に基づき、国・地方公共団体・民間が一体となって再犯防止施策を強力に推進します。そのため、性犯罪や薬物事犯などの問題に応じた対策の充実など、地方公共団体による取組みを支援するほか、民間団体などの創意と工夫による再犯防止活動を促進するため、SIB による新たな再犯防止事業など、民間資金の活用を含む様々な取組みを推進します。
- 矯正施設の充実
矯正施設におけるアセスメント・効果検証機能の強化や対象者の特性に応じた指導・支援の充実を図るとともに、地方公共団体・民間団体などとの連携を一層推進します。
また、地域の犯罪・非行を防止するため、少年鑑別所(法務少年支援センター)における非行・犯罪心理に関する専門的知見を活用した相談体制を強化します。
更に、「国土強靱化基本計画」に基づき、矯正施設などの耐災害性を更に強化し、地方公共団体などの避難場所に指定するなどの地域と連携した取組みを推進します。
- 地域社会や民間団体と連携した就労支援
再犯防止と社会復帰に重要な就労の確保・継続に向けて、職業訓練・指導の充実やコレワークなどのマッチング機能の強化など、矯正施設在所中から地域社会や民間団体などと連携した就労支援を推進するほか、きめ細かな就職活動支援や寄り添い型の職場定着支援を強化し、協力雇用主への支援の充実などに取り組みます。また、再犯防止に必要不可欠な保護司や協力 雇用主、更生保護施設等の民間協力者の活動を強力に支援します。満期釈放者対策等として、地域における支援ネットワークの構築や地方公共団体の取組みの促進など継続的支援体制の整備にも取り組みます。
- 少年院における矯正教育
少年院において、入院早期の段階から地域社会や民間団体などと連携し、社会復帰後の地域での生活を見据えた矯正教育・修学支援などを推進します。
また、少年法の改正等を踏まえ、18・19 歳を含む少年院在院者や少年を含む若年受刑者の改善更生のため適切な処遇を一層推進します。
- 更生保護の充実
犯罪をした者などのうち、特に行き場のない者の立ち直りを支援するため、更生保護事業のあり方の見直しを進め、更生保護施設の計画的整備や受入れ・処遇機能の充実強化などに取り組みます。
また、特に自立が困難な高齢者や障害者を適切に福祉的支援に結びつけるため、更生緊急保護制度を拡充し、刑事司法手続の各段階での支援等を強化します。
- 包摂的なコミュニティづくり
「社会を明るくする運動」をはじめとする広報啓発活動を一層強化し、立ち直ろうとする人を受け入れ、支え続けられるような包摂的なコミュニティづくりに取り組みます。
また、社会内処遇におけるアセスメントを強化するとともに、薬物犯罪者や性犯罪者等の再犯防止に向けて、更生保護と保健医療・福祉等との連携体制を強化し、治療・支援の一体的な取組みを進めます。
- サイバー防御体制の確立
海外からのサイバー攻撃が激増する中で(2020 年は、1 日平均 13 億 6,600 万回)、皆様の生命や金融資産を守り抜くために、特に「航空」「鉄道」「自動車」「医療」「電力」「ガス」「水道」「金融」「クレジット」などの分野におけるサイバー防御体制の樹立と高度化、情報セキュリティ産業の育成を急ぎます。
教育
- 青少年の健全育成
青少年健全育成のための社会環境の整備を強化するとともに「青少年健全育成基本法(仮称)」及び「家庭教育支援法(仮称)」を制定します。また IT の発達等による非行や犯罪から青少年を守るための各種施策を推進します。
- 新型コロナウイルス感染症対策と学びの保障の両立
学校で子供たちが学び合うことを教育の基本 としつつ、新型コロナウイルス感染症対策と子 供たちの健やかな学びの保障の両立を図るため、学校での感染症対策に万全を期した上で、GIGA スクール構想で整備した ICT 環境を最大限活用します。また、新たな感染症の流行や災害など の不測の事態が生じた際にも学校教育活動を継 続し、誰一人取り残すことなく子供たちの学び を保障するため、新しい時代の学びを支える教 育環境の整備を推進します。
更に、学校教育活動を確実に継続していくためのマネジメントの在り方を明確にするとともに、不測の事態が生じた時に、子供たちが主体的に考え、適切に判断し行動できるような資質・能力の育成を図ります。
- 改正教育基本法に基づく教育改革
誰もが日本に生まれたことを誇りに思える品格ある国家を目指して、2006 年の「教育基本法」の改正以降、人格の完成を目指し、国家及び社会の形成者を育成するという理念を踏まえ、いわゆる教育 3 法の改正や、教育振興基本計画の策定、新学習指導要領の実施による伝統・文化に関する教育や道徳教育の充実など、教育再生を総合的に推進し、教育内容の抜本的な改善・充実や、切れ目のない教育費負担の軽減、次世代の学校・地域の創生を行ってきました。今後は、Society5.0 の実現に向けて、新学習指導要領の着実な実施や学校における働き方改革、高大接続改革、教育費負担軽減や人生 100 年時代におけるリカレント教育の推進など、新時代に対応した教育改革に取り組みます。
- 教育再生の着実な実行
「教育基本法」の理念に基づき、「自助自立する国民」「家族、地域社会、国への帰属意識を持つ国民」「良き歴史、伝統、文化を大切にする国民」「自ら考え、判断し、意欲にあふれる国民」を育成します。そのため、「教育基本法」に則り策定した「第 3 期教育振興基本計画」や学習指導要領、教育再生実行会議の提言などを踏まえ、これまで進めてきた教育再生の歩みを緩めることなく着実に実行します。
- 教育投資の充実と安定的な財源確保策の検討
「家庭の経済状況や発達の状況などにかかわらず、学ぶ意欲と能力のある全ての子供・若者・社会人が質の高い教育を受けることができる社会」を実現します。また、少子化を解決し、「格差の再生産」を食い止めることは、わが国にとって喫緊の課題です。これらの課題解決に向けて、OECD 諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考とし、教育投資をこれからの時代に必要な「未来への先行投資」と位置づけ、その抜本的拡充と財源確保、民間資金の更なる活用などに取り組みます。
- 若者の夢や志を実現する学校教育への抜本的転換
変化が激しく先の予測が困難な時代の中で、全ての若者が夢や志を抱き、チャレンジし、それを実現していくことができるよう、学校教育のあり方を抜本的に見直すことが必要です。このため、一人ひとりの状況に応じた質の高い教育を提供するため、小学校における 35 人学級を計画的に推進し、その効果検証を踏まえ、中学校での対応を検討します。また、小学校高学年における教科担任制の整備などの指導体制の充実と未来の創り手となる子供たちに必要な資質・能力の育成を目指す新学習指導要領の着実な実施に取り組みます。併せて、高等学校教育、大学入学者選抜、大学教育の一体的な改革を進め、知識・技能だけでなく、思考力・判断力・表現力や主体性をもって多様な人々と協働する態度、リーダーシップ、企画力や創造力、豊かな感性や優しさ、思いやりなどを備えた人間を育成します。
- グローバルに活躍できる人材の育成
日本人としてのアイデンティティ、歴史や伝統、文化に対する教養などを備え、高い志や意欲、社会貢献への意識を持つ自立した人間としてグローバルに活躍する創造的な人材を育成することは重要な課題です。このため、教師の資質向上に加え、小学校の英語専科指導や少人数英語指導を徹底するための教員配置や指導体制の充実、中学校における英語の全国的な学力調査の実施、英語を母国語とする外国語指導助手(ALT)などの外部人材の活用を促進させるなどにより、英語教育を抜本的に改革・強化します。また、WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアムの構築を支援するとともに、希望する生徒全員が海外留学できるよう、留学支援の充実を図ります。また、共通必履修科目「地理総合」「歴史総合」において地理歴史や伝統・文化に関する教育の推進を図ります。併せて、帰国生の公立学校における受入れ態勢を充実します。
- 理数教育の大幅な充実
理数教育については、将来、イノベーションの担い手として世界を牽引していくリーダーとなるような明確な目的意識を持つ子供の育成に向けて、子供の多様性を尊重し、創造性を育むとともに、優れた資質を伸ばし、育てる才能教育を強化します。理数好きな子供を増やすため、体験活動や実験教室の充実、理工学部の学生や企業関係者などの外部人材の活用、更には理数教育に携わる教師の指導力向上、理数専科教員の増員など、初等中等教育段階での理数教育を大幅に充実します。また、全国学力・学習状況調査で、国語・算数(数学)に加え、理科の調査を定期的に実施します。
- 理工系人材の育成
理科設備などの環境整備、先進的な理数教育を行う「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」や、学校を超えた才能教育の場を確保するための「グローバルサイエンスキャンパス」と「ジュニアドクター育成塾」を推進するとともに、中学・高校生の「科学の甲子園」などの活躍の場の充実などを推進し、国際科学オリンピックに参加する児童生徒数の大幅な増加を促進し、国際的な交流機会を拡大します。また、高等教育段階において、入学時に必要な学力として文系においても論理的思考力や表現力などの理数の力を重視する取組みや、文理横断型教育プログラムの開発、理工系人材の育成などを支援します。
- 国際バカロレアの導入・運営環境の整備
グローバル人材の育成に有益な国際バカロレアは、国際的に通用する大学入学資格を取得することが可能であり、論文作成など一部のカリキュラムを日本語でも実施可能にするプログラム(日本語 DP)の開発・導入、大学入試における活用や、全国的なコンソーシアムによる国際バカロレアの導入・運営に係る環境の整備を通じて、国際バカロレア認定校などを 2022 年度までに 200 校程度に増加させます。
- 教育の情報化の推進
GIGA スクール構想によって整備された子供たち一人一台の ICT 端末等を活用した教育の本格化に向け、学校における ICT 活用支援の更なる強化や、情報モラル教育を充実するとともに、子供たちが互いに切磋琢磨しながら一人ひとりの力を最大限引き出す教育環境の整備を行います。また、校務の情報化を進め、業務の効率化や学校における働き方改革につなげます。更に、すべての小・中学校等における学習者用デジタル教科書の導入を支援するとともに、教育データの活用等による教育 DX を推進します。
- 日本人学校などのグローバル人材育成機能の強化
海外で暮らす子供たちは将来のグローバル人材の金の卵です。そうした子供たちが安心して学べるよう、国内同等の教育環境を整備する観点から、日本人学校などへの教師派遣の拡充や教師の質の向上に向けた取組みを進めるとともに、ICT 教育環境の整備に取り組みます。また、魅力ある在外教育施設づくりに向け、先導的で特色ある取組みを推進するとともに、教育・運営に係るきめ細かな支援体制を強化します。
- 日本型教育の海外展開の推進
高い基礎学力とともに協調性や行動規範を重視する小学校・中学校教育や、実践的で高度な職業教育を行う高等専門学校制度などの「日本型教育」を学びたいという要望が、諸外国から寄せられており、わが国の教育それ自体がソフトパワーの源泉となっています。こうした日本型教育の海外展開を NPO、大学、企業等の参画を得ながら積極的に行い、課題解決、国際貢献、親日層の拡大につなげていきます。
- 公教育における国の責任体制の確立
義務教育については国が責任を果たすとの理念に立ち、教育の正常化を図った上で、子供が日本のどこで生まれ育ったとしてもふるさとで頑張っていれば必ず夢が実現できる環境を整えるため、教育の地域間格差が生じないよう、公教育の底上げに徹底的に取り組みます。
経済状況をはじめとした家庭環境や地方自治体の財政力によって教育格差が生じないよう、教育費負担の軽減などに取り組みます。
- 学校の指導・運営体制強化と働き方改革
義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国学力・学習状況調査を悉皆かつ毎年度継続的に実施し、全ての子供の課題把握、学校の指導改善に生かします。また、保護者への調査や学力の経年変化を継続的に把握するための調査などを定期的に実施して、学力の状況を多角的に把握・分析し、次代を担う子供たちが確かな学力を身につけるための取組みを一層推進します。更に、GIGA スクール構想の推進や国際学力調査の CBT(コンピュータ使用型調査)による実施の流れなどを踏まえ、全国学力・学習状況調査の CBT 化を推進します。国際的な学力調査の結果を見ても、日本の子供の学力はトップレベルにあります。ただし、応用力や活用力の面に課題があり、また、発展的な学習の実施や、実社会とのつながりを意識しつつ、教育課程や方法を改善していく必要もあります。これからも全ての子供の能力を最大限に伸ばし、未来を切り拓いていく力を身に付けさせ、公教育の使命を果たします。
- 教育の質の保証
障害のある子供、経済的困窮家庭の子供、日本語指導が必要な子供、不登校傾向のある子供など特別な支援を必要とする子供たちが増加する中で、こうした子供たちの自立と社会参加を目指し、真の「共生社会」や「一億総活躍社会」の実現のため、多様な子供たち一人ひとりの状況に応じ、それぞれが持つ能力を最大限に伸ばすためきめ、細かい教育を提供していくことが必要です。このような観点から、新学習指導要領を円滑に実施し、教育の質を保証するため、小学校 35 人学級の計画的な整備や小学校高学年における教科担任制の推進、教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ)や部活動指導員等の支援スタッフの一層の充実などにより、学校の指導・運営体制の強化・充実を図ります。こうした取組みを通じて、新学習指導要領を 円滑に実施し、教育の質を保証するとともに、世界的に大きな成果を上げてきた、質の高いわが国の学校教育を持続可能なものとし、更に発展させるため、勤務時間管理の徹底、学校及び教師が担う業務の明確化・適正化等を通して、教師の長時間勤務を是正し、学校における働き方改革を併せて推進します。
- 教師の処遇改善
優秀な人材を確保し、頑張っている教師の士気を高められるよう、「人材確保法」の初心に立ち返った処遇の改善を図るとともに、教師の勤務実態に応じた処遇となるよう改善を検討します。
- わが国を愛する心を養う教育と体験活動などの推進
国旗・国歌を尊重し、わが国の将来を担う主権者を育成する教育を推進します。不適切な性教育やジェンダーフリー教育、自虐史観偏向教育などは行わせません。
中学校・高等学校でボランティア活動やインターンシップを積極的に推進し、公共心や社会性を涵養します。キャリア教育や職業教育、また、豊かな体験に裏打ちされた子供の力強い成長を促す農山漁村地域での自然体験活動や長期宿泊体験学習などを推進します。併せて、地域に根差した伝統・文化や、スポーツクラブ、サークル活動などの地域の絆を守り、困難な状況にある家庭も対象とした取組みを支援(伝統文化親子教室や幼児期からの運動習慣作りの促進、親子参加型自然体験活動の充実など)します。
- 規範意識を養う教育の推進と新科目「公共」 の設置
人が人として生きる上で必要な規範意識や社会のルール、マナーなどを学ぶ道徳教育については、家庭や地域との連携を図りながら、学校の教育活動全体を通じて行うものであり、その要となる道徳の特別の教科化を踏まえ、検定教科書を用いた指導の着実な実施などにより、更なる充実を図ります。全国の優れた取組みを発信(道徳教育アーカイブなど)するとともに、都道府県が実施する研修や家庭・地域との連携強化のための取組みを支援します。また、高等学校において、主体的な社会参画に必要な力を実践的に育むよう新しく設置された科目「公共」について、着実な実施に取り組みます。更に、小・中・高等学校を通じて、学校に新聞の複数紙配備を進め、併せて主権者教育を推進します。
- 依存症予防教育の総合的な推進
近年、喫煙、飲酒、薬物、インターネット、ギャンブルなどに関する依存症が社会的な問題となっており、将来的な依存症患者数の逓減や、青少年の健全育成の観点から、国、学校、地域が一体となって予防教育を行っていくことが必要です。具体的には、読み手に分かりやすい総合的な啓発資料の作成など、各学校段階における依存症に関する予防教育の取組みを充実するとともに、社会教育施設などを活用した保護者、地域住民向けの「依存症予防教室」などの学校外の取組みを推進します。
- 令和の日本型学校教育をはじめとする、激動の時代に対応する新たな教育改革
世界トップの教育立国とするため、結果の平等主義から脱却し、社会状況や子供の多様な成長の実態などに応じた、学校制度の多様化・複線化、教員免許制度改革や小学校高学年における教科担任制の推進などによる義務教育改革、普通科の抜本見直し・文理分断からの脱却を図る高校教育改革、高大連携の推進、社会変革の原動力となる高等教育改革、大学院の充実、産学連携、社会人の学び直しなど、学校制度全体 を通じて、「令和の学制改革」に取り組みます。2016 年 4 月に制度化された小中一貫教育を域の実情に応じて積極的に推進するとともに、 フリースクールやインターナショナルスクール、フリーアクセスができる教育クラウドの作成な どの学校外教育の環境整備、夜間中学の設置促 進・教育活動の充実、飛び級の制度化など、個人の志や能力・適性に応じ、様々な挑戦を可能と する学びの保証システムを実現します。
- 高等学校教育改革の推進
高校生の学習意欲を喚起し、能力を最大限引き出すための普通科改革の推進や、地域における人材の定着・還流に向けた高等学校と地元の市町村や産業界等との連携強化など、高等学校教育改革を推進します。
更に、後期中等教育の複線化を図り、若者が自らの夢や志を考え、目的意識を持って実践的な職業能力を身に付けられるようにするとともに、産業構造等の変化に対応するため、専門高校と専攻科を活用した 5 年一貫の職業教育や、専門高校と専門学校との連携接続を促進し、「マイスター・ハイスクール(次世代地域産業人材育成刷新事業)」を通じて支援を強化します。自動車や造船をはじめとした地場にある産業界との連携を強化して、実践的なキャリア・職業教育、社会制度教育等を推進していきます。
- 何歳になっても学び直しのできる社会の実現
何歳になっても、スキルアップ、職種転換などに役立つ学び直しができるよう、意欲のある学習者への経済的支援を充実するとともに、放送大学の機能強化などにより、学びやすい環境整備を推進します。また、大学・大学院・専修学校などにおいて、「職業実践専門課程」や「キャリア形成促進プログラム」、「職業実践力育成プログラム(BP)」の認定拡大や、社会人や企業などのニーズを踏まえた実践的・専門的な教育プログラムの提供及び費用支援や情報アクセスの改善など、就職氷河期世代も含めた社会人が再び学べる環境を整備し、産業構造の変化に対応したキャリアアップの機会保障と再チャレンジを促進します。
- オンラインによる学びの機会の充実
様々な困難を抱える人々も含め全国民の学びを保障するため、子供向けから大人向けまで多様な動画教材や学習講座を紹介するポータルサイトを整備し、地域・障害・言語などの壁を越えて学びの機会を提供します。
- 女性や高齢者の学び直しや活躍の機会の創出
特に女性については、大学などにおける保育環境の整備を含め、子育てなどで離職した女性の学び直しと再就職やリカレント教育を一体的に行う仕組みづくりなど、地域と教育機関などの連携によるキャリア形成支援を充実します。高齢者については、地域における関係機関が連携し、学び直しが地域活動や就労・起業などと連動する仕組みづくりを推進します。
- 教育委員会改革の推進、町村教育委員会へ の支援強化
地方分権を受けて、地方自治体の教育政策決定や教育行政運営において、首長や地方議会の役割が高まっています。いじめ問題では教育委員会に対し形骸化や名誉職化といった批判があったため、2014 年に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」を改正しました。教育の政治的中立性を確保しつつ、地方自治体の教育行政に民意を反映させ、効率的・迅速な運営を可能とすることを目指した法改正の趣旨に則り、引き続き、教育委員会改革を推進します。また、様々な課題を抱えているにもかかわらず、事務局体制が十分でない教育委員会に対する支援策を検討するとともに、教育委員会の運営の活性化のための教育委員への研修を実施します。
- 真に教育基本法・学習指導要領に適った教 科書の作成・採択
「教育基本法」が改正され、学習指導要領が改訂された後も、自虐史観に立つなど、偏向した記述の教科書が存在したことから、安倍政権において、教科書検定基準を改正しました。
政府見解があるものについてはきちんと書かせ、特定の学説のみを記載して子供たちが誤解するといったことがないように抜本的改革を進め、全体的に記述の大幅な増加や内容の充実がみられました。また、学習指導要領を改訂し、領土に関する記述が大幅に増加しました。また、学習指導要領の改訂に併せて、検定基準の更なる見直しを行いました。加えて、教科書調査官は、学習指導要領に基づいた良い教科書を作っていく上で、教科書検定における大変重要な役割を担っており、優れた人材の登用が必要であることから、教科書調査官の採用における公募制を導入しました。この方向性を一層推し進めます。
- 教科書採択の公正確保
義務教育諸学校の教科書採択の制度に関しては、各教育委員会や国立大学付属学校や私立学校に、採択した結果や理由などの公表に努めることを義務付けており、高等学校等に関しても、採択の結果や理由を公表すべく、設置者に働きかけを行っていきます。教科書採択にあたっては、国民から疑念をもたれないように、今後とも、採択権者の権限と責任により適切な採択が行われるよう、教科書発行者、教育委員会・学校関係者に対し、採択における公正確保などを徹底します。
- 格差克服のための教育の推進
貧困の連鎖を断ち切り、「一億総活躍社会」や「地方創生」を実現するためには、教育における格差を克服し一人ひとりの能力を向上させることは喫緊の課題です。そのため、学校が全ての子供に基礎学力を保障できるよう、学力課題校の解消や重大ないじめ・不登校・中退などの課題を抱える子供への支援に取り組みます。また、幼児期から高等教育段階まで切れ目なく教育費負担の軽減を図るため、無償化を実現した幼児教育については更に質を向上させるための財源を確保し、就学援助に係る補助の充実、高校生等への修学支援の充実、高等教育段階では、高等教育の修学支援新制度(授業料減免及び給付型奨学金)の着実な実施など、経済的支援の充実を図るとともに、「所得連動型拠出金制度」や多子世帯支援強化等を検討します。
- 貧困家庭に対する教育支援
国及び基礎的自治体に、教育支援も含めた貧困家庭に対する支援を行う総合的なワンストップ窓口を整備するとともに、「教育格差克服モデル都市」を設け、取組みを確立・発信していきます。また、格差克服が様々な社会的便益をもたらすというエビデンスを整備し、教育財源を確保するとともに、民間資金を含む多様な資金を活用するため新たな制度の導入も検討します。更に、困難を抱える家庭に寄り添った伴走型の家庭教育支援員の養成・配置促進による訪問型家庭教育支援の充実や親の相談・交流の居場所の提供、原則無料の学習支援の充実や図書館を活用した読書や自然体験活動を通じた親子の学びの推進などにより、学校だけでなく、家庭や地域の教育力向上を図ります。
- 多様な個性を最大限に伸ばす教育の実現
全ての子供の可能性を伸ばし活躍できる社会の実現に向け、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実します。保護者の不安を解消し一人ひとりの個性への理解を深め、子供たちを温かく見守ります。
一人ひとりの学習状況にきめ細かく対応するため、1 人 1 台端末の下、ICT 等の活用と少人数学級の推進、放課後や土曜日などを活用した補充的・発展的な学習などを拡充します。教育支援センターの充実や高校中退者などの高卒資格取得等に向けた学習相談・支援、特別の教育課程を編成する学校の整備など、また、隠れた能力を引き出すための ICT などの活用も推進します。
- 特に優れた能力を更に伸ばす教育、リーダ ーシップ教育
多様な個性が長所として肯定され生かされる教育の実現には、一人ひとりの長所や強みを最大限に生かす視点が重要です。このため、社会の理解を醸成しつつ、国内外の実践事例について幅広く知見を収集し、大学などとの連携も含め、各学校、地方自治体などで、特に優れた能力やリーダーシップなどの資質を最大限に伸ばす多様な教育を推進します。
- 地域と学校の連携・協働による社会総掛か りでの教育の実現
学校が地域の人々と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子供たちを育む「地域とと もにある学校」に転換していくため、コミュニ ティ・スクール(学校運営協議会を置く学校)と地域学校協働活動の一体的推進が不可欠です。2022 年度までに全ての公立学校がコミュニティ・スクールになることを目指し、市町村や学校などの取組みを強力に支援します。また、地域住民などの協力による放課後や土曜日などの学習・体験活動などの地域と学校が連携・協働して地域全体で子供を育てる活動(地域学校協働活動)や、家庭教育支援、図書館なども活用した読書活動などを推進します。地域住民などのネットワーク化と学校との連絡調整を図る「地域学校協働活動推進員」の配置の充実などにより、「地域学校協働本部」を整備し、豊富な知識・経験を持つ地域の退職者、企業・団体など外部の人材が、放課後などの学習、総合的な学習の時間や道徳などにおいて、その社会体験を活かした支援を行う体制を構築します。特に、経済的な理由や家庭の事情により、学習が遅れがちな子供たちへの原則無料の学習支援(地域未来塾)の取組みを積極的に推進します。
- 地域から学校を支え、地域を活性化
地域から学校を支えるとともに、地域の活性化を図るため、高齢者をはじめ地域住民などがボランティアや地域活動に参画しやすい環境を整備することが必要です。このため、高齢者などの地域住民などが活躍するための学びと実践の場を創生するなど、地域社会において全ての世代が活躍できる環境を充実します。
- 深刻ないじめを無くし、一人ひとりを大切 に
「いじめは絶対に許されない」との意識を日本全体で共有し、その一方で、「どの学校にもいじめは起こりうる」との危機感もあわせ持ちつつ、加害者にも、被害者にも、傍観者にもしない教育を実現します。第一に守るべきは、いじめの被害者です。いじめを繰り返す児童生徒への出席停止措置や、行為が犯罪に該当する場合は警察に通報する、道徳教育の徹底など、今すぐできる対策を断行するとともに、いじめ対策に取り組む地方自治体を、国が協働しつつ指導を徹底し、財政面などで強力に支援します。
- 総合的・組織的ないじめ対策の推進
いじめが背景にあると疑われる痛ましい自殺 事案が後を絶ちません。「いじめ防止対策推進法」に基づく総合的ないじめ対策が全国で確実に実施されているか点検するとともに、同法が真に実効的な内容であるか徹底的に議論し、国、地方自治体及び学校が有機的に連携しながら、組織的にいじめ対策を推進できるような方策を講じます。また、インターネット内での問題行動に対する取組みを強化するとともに、いじめの予防及び早期解決に向けて地方自治体を支援するため、緊急時にいじめ・自殺など対策の専門家を派遣するなど国の体制を整備します。
- 不登校・中退の未然防止や児童虐待対応などにより、若者に明るい未来を
「チーム学校」の理念のもと、教師と専門ス タッフなどが役割を分担し連携・協力して生徒 指導に取り組む教育相談機能を強化します。具 体的には、児童生徒支援担当の専任教諭の配置 拡充に加え、福祉の専門家であるスクールソー シャルワーカーを全ての中学校区(約 1 万中学校区)に、心理の専門家であるスクールカウン セラーを全公立小中学校(約 2 万 7500 校)に配置するとともに配置時間を拡充し、将来的には 全公立小・中・高等学校(約 3 万校)で常時相談できる体制の整備を目指します。また、児童 生徒や学校を取り巻く問題に関して法的側面か らの助言を行うスクールロイヤーの配置を目指 します。加えて、子供の貧困・生理の貧困やヤングケアラーなど子供を取り巻く諸課題に対して、教育と福祉等が連携した取組みを推進します。
- 不登校の子供に対する支援の強化
不登校の子供に対する支援を強化するため、 教育支援センター(適応指導教室)へのスクー ルカウンセラーの配置などによる機能強化や設 置促進を行うとともに、不登校の子供に配慮し た特別の教育課程を編成する学校の全国展開や、学校外で学ぶ子供たちへの支援、夜間中学の設 置促進・教育活動の充実と就学希望者への積極 的支援、教育支援センターや不登校特例校との 連携強化などの施策を一体的に実施します。
- 高等学校卒業程度認定試験の実施における地方との協働
高等学校段階の不登校者及び中途退学者の支援策として不可欠な高等学校卒業程度認定試験について、例えば都道府県による受験生への試験案内や進路変更に係る教育相談、試験会場の提供など、国と都道府県が互いの役割を果たしながら緊密に連携し、試験を実施していきます。
- 公私間格差の是正・私学助成の拡充
公教育において私学が果たしてきた重要性に鑑み、私学の建学の精神を尊重しつつ、「私立学校振興助成法」の目的の完全実現(教育条件の維持・向上、修学上の経済的負担の軽減、経営の健全性向上)により、公私間格差の解消を図ります。また、私立大学については少子化を見据えた経営改革や社会からの要請と期待に応える抜本的な変革を行うとともに、まずは経常的経費の 1 割以上を確保し、2 分の 1 を目標に私学助成を充実します。併せて、高等学校以下の私学助成についても、経常的経費の拡充や私立小中学校における家計急変世帯への支援の拡充など更なる充実を図ります。
- 教育の政治的中立性の徹底的な確立
政治的中立性を厳に確保し、間違っても学校教育に政治的なイデオロギーが持ち込まれることがないよう、教育公務員の政治的行為の制限違反に罰則を科すための「教育公務員特例法」の改正、及び法の適用対象を義務教育諸学校限定から高等学校などに拡大する「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」の改正を行います。
- 教師力の一層の向上
教師力の一層の向上を図るため、中央教育審議会における「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方についての議論も踏まえながら、既存の在り方にとらわれることなく基本的なところに遡って必要な改革を進めます。具体的には、教師に求められる資質能力の再定義や多様な専門性を有する質の高い教職員集団の在り方についての検討を進め、教員養成大学・学部、教職大学院の機能強化・高度化を図り、専門性や強みを発揮する質の高い教師を学部・大学院一貫プログラムも活用しながら養成します。また、研修の効果向上と負担軽減、指導力不足教員対応等の一体改革を進めます。
- 適性・人物重視の採用システムの整備と教師の地位向上
大学・大学院における学修成果、社会経験やボランティア活動等諸活動の実績等を多面的な方法・尺度を用いて総合的かつ適切に評価することにより、一層適性重視・人物重視の採用システムの整備を進めるほか、各教育委員会が教師養成に一定の責任を持つ「教師塾」の全国展開を促進します。更に、教師の社会的地位の向上及び子供や保護者、地域住民などが教師の担う職務への理解を深める日として、学制公布 150 年(2022 年)に向けて、近代教育制度を定めた学制の発布日である 9 月 4 日を「教師の日」として制定し顕彰することにより教職の重要性に関する認識を深めるとともに、教職を肯定的に表現しうる教師という用語の通用性を高めるための取組みの一環として、「教師」という用語を用いることを一層推進します。
- 教育職員等による児童生徒等に対する性暴力等の防止等の推進
第 204 回国会において可決・成立した「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」が適切に運用され、児童生徒等の権利利益の擁護に資するよう、この問題に関する取組みを総合的に推進します。
- チーム学校の実現
校長の適切なマネジメントのもと、学校に多様な人材が参画し、教師と教師以外の多様な人材がそれぞれの専門性を十分に発揮して教育活動を行う「チーム学校」を実現します。
そのため、「チーム学校」を実現していく上で何よりも重要な学校教育の中核を担う教師をは じめとする教職員体制の充実など、優秀な人材 を確保するための総合的な方策を講じます。ま た、学校全体の教育力を高めるため、教師と専 門スタッフが連携・分担して教育活動にチーム として取り組むことができる環境を整備します。
- 学校と地域の連携・協働の強化と校長のリ ーダーシップの発揮
子供たちの教育を更に充実していくためにも、学校と地域が目標やビジョンを共有し、学校・ 地域人材によるチームを形成することが重要で す。そのため、コミュニティ・スクールの必置化を見据えた導入を加速させるとともに、地域住民などの協力による放課後や土曜日の学習・体験活動などを推進するための体制を整備することにより、学校と地域の連携・協働を強化します。
「チーム学校」が有効に機能するためには、校長のリーダーシップが重要です。教職大学院等も活用しながら、管理職や主幹教諭、指導教諭の育成を進めます。また、校長がリーダーシップを十分に発揮できるためには、校長を補佐する体制を充実させることが必要です。そのため、主幹教諭を倍増させ全校に配置するとともに、学校の経営企画機能を飛躍的に強化するため、事務職員の職務の見直しや適正な配置などの事務体制の効率的な強化を行います。
- 安全・安心な学校環境の構築
学校施設は、子供たちの学習・生活の場のみならず、災害時には避難所としての役割(命を守るシェルター機能)も果たし、また、地域コミュニティの拠点として高齢者や障害者なども活用するものであり、一億総活躍社会の実現や地方創生、国土強靱化、国民保護のための拠点となる重要な施設です。
このため、安全・安心な学校施設の実現と新しい時代の学びに対応した教育環境の向上を一体的に推進するとともに、「防災・減災、国土強靱化 5 か年加速化対策」に盛り込まれた防災拠点としての整備の観点も踏まえつつ、非構造部材を含めた耐震対策、トイレ環境の改善、空調整備、バリアフリー化など喫緊の課題にしっかりと取り組みます。加えて、LED 照明等のネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)化により地域の脱炭素化にもつながる学校施設整備を支援します。更に、これらの整備需要に対応するため、実態に即した国庫補助単価への引上げを図ります。
- 学校施設の防災機能の充実
災害時においては学校施設が避難所となることから、天井材などの非構造部材を含めた耐震対策にしっかりと取り組みます。また、学校施設の防災拠点としての機能をより充実させるため、独立して域外と連絡可能な通信設備の設置や、自家発電設備、備蓄倉庫、井戸や給水槽、入浴設備の設置、避難所へ炊き出しを提供する給食施設の整備などを進めます。更に、地方自治体が財政上、困窮していることに鑑み、国から の支援の強化に努めます。加えて、国公立に比 べ遅れている私立学校施設の耐震化について、 早期の完了に向けて集中的に支援するとともに、大規模地震などの災害時には地域の避難所とし て重要な役割を果たしている公立体育館などについても、天井材などの非構造部材を含めた耐 震化などの老朽化対策を加速します。
- 学校における安全確保
東日本大震災の教訓を生かし、保護者が帰宅困難になった際などに、子供を学校に留め置いて安全を確保するなど、保護者や子供の立場に立った災害対応体制を、国公私立を通じて整備します。地震・台風・火災などの災害を身近な危険として認識し、日頃から備え、災害の被害を防ぐため、地域の実情にあった「防災教育」を充実します。併せて、通学路の安全を確保するなど、子供が安心して通学できる学校環境を整備します。また、あってはならないことですが、弾道ミサイルによる武力攻撃事態やテロ攻撃に対しても、設置者や学校長が「国民保護法」に基づく国民保護計画に即して、学校の危機管理マニュアルを不断に見直し、地方自治体が開催する訓練に参加することなどにより、J アラートを通じて緊急情報が発信された際に適切に対応できるよう、学校における安全を確保する万全の取組みを促していきます。
- 新しい時代の学びを実現する学校施設の構築
学校施設に求められている長寿命化改修等を通じた老朽化対策の実施を着実に進めるとともに、これからの新しい時代の学びを実現する学校施設に求められるトイレ環境の改善、空調整備、バリアフリー化などの課題にしっかりと取り組みます。加えて、LED 照明等のネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)化による地域の脱炭素化にもつながる学校施設整備を支援や地域の状況を踏まえた効率的な施設整備ができるよう、学校施設と他の公共施設等との複合化・共用化を推進します。
- 学校の適正規模・適正配置の推進
今後、少子化の更なる進展による学校の小規模化に伴い、児童生徒が集団の中で切磋琢磨しながら学んだり、社会性を高めたりすることが難しくなるといった課題が顕在化することが懸念されています。子供たちのことを第一に考え、教育的な視点からこうした課題の解消を図っていく必要があります。こうした中、公立学校の設置者である地方自治体が、学校統合により魅力ある学校づくりを行い、地域の活性化を図ることができるよう、統合による学校の魅力化に関する好事例を創出するとともに、学校の小規模化への対応について各地方自治体の積極的な検討を促し、支援します。
なお、地域コミュニティの核としての学校の役割を十分に考慮し、地域の総力をあげて、小規模校のメリットを活かしデメリットを緩和しながら学校の存続を図る場合についても支援します。
- 幼児教育の質的充実と幼児教育の無償化
幼児期の教育は、「教育基本法」に定めるとおり、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり、この時期に、全ての子供に質の高い幼児教育を保障することは極めて重要な意義を有しています。2019 年 10 月に実現した幼児教育・保育の無償化の次なるステップとして、
「幼児教育スタートプラン」の実現に向けて、全ての子供たちの多様性にも配慮した上で学びや生活の基盤を育む「幼保小架け橋プログラム」の開発・推進、幼稚園教諭、保育士などの処遇改善、人材確保・キャリアアップ支援、地方自治体における幼児教育推進体制の充実、感染症対策支援や ICT 環境整備支援等の教育環境整備支援などを図り、幼児教育の質の向上に取り組みます。子供たちが無償化により確保した教育機会で健やかに学べるよう、更なる質の向上のための財源を確保します。
- 「幼児教育振興法」の制定と教職員配置の改善
幼児教育の振興に関する施策を総合的に推進するための「幼児教育振興法」の制定や、少人数に対するきめ細かな指導体制を実現するための教職員配置の改善に向けて取り組みます。
- 家庭教育の支援体制強化
家庭教育は全ての教育の出発点であり、「教育基本法」では、保護者が子供の教育について第一義的責任を有すること、国や地方自治体が家庭教育の自主性を尊重しつつ、家庭教育支援に努めるべきことを定めています。親子の育ちを応援する学習機会を充実させるとともに、地域の人材の力を活用して、学校などとの連携により家庭教育に関する保護者の悩みや不安を解消し、家庭教育の充実につなげる「家庭教育支援チーム」の全市町村への普及を図り、家庭教育の支援体制を強化します。また、妊娠期から学齢期までの切れ目のない支援を実現するため、子育て支援や保健などの福祉サービスと家庭教育支援とを一体的に提供する体制の整備を図ります。更に、家庭教育支援に関する施策を総合的に推進するため、「家庭教育支援法」を制定します。
早寝早起きや朝食摂取などの子供の望ましい基本的な生活習慣を育成するために、企業と連携した取組みや、中高生以上の世代も含めた普及啓発を推進します。
- 読解力を高める国語教育
国語科は各教科などの学習の基盤であり、小・中・高等学校を通じて国語教育の一層の充実を 図ること、特に、読解力の向上を通じて、各教科 における知識・技能や、思考力・判断力・表現力の育成を重視することが必要です。そのため、 国語科について、「子供の言語能力を育てる授業」へと改善するとともに、高等学校においては新 たな科目構成の下、実社会・実生活に生きて働 く国語の能力や、多様な文章などを多角的な視 点から理解し、創造的に思考して自分の考えを 形成し、論理的に表現する能力の育成を目指し ます。併せて、発達段階に応じた作文や卒論の 指導等の論理的思考や課題解決能力を伸ばす教育を推進します。
- 外国人の子供が日本社会で活躍するための日本語教育等
日本に在住する外国人が社会に溶け込み、また活躍する環境を整備するため、外国人の子供の就学を促進するよう、地方自治体における多言語の就学案内の送付や就学状況把握などの取組みを支援します。また、公立学校における外国人の子供の日本語能力や学力を保障するための指導を行う教師や指導員・通訳等の配置や ICT 機器・教材の活用など、学習者の日本語能力に応じたきめ細かな受入れ体制を構築します。更に、高校・大学等への進学の促進を行うとともに、キャリア教育支援を充実することにより、将来、わが国の社会での活躍を目指した学習意欲の向上を図り、日本人の子供と外国人の子供がお互いに学び合い、切磋琢磨し合う環境づくりに取り組みます。併せて、外国人の子供の健康の確保のため、外国人学校の保健衛生対策の取組みを進めます。
- 真に外国人との友好を築く日本語教育
「日本語教育の推進に関する法律」等に基づき、日本語教師の能力等を証明する新たな資格や日本語教育機関の水準の維持・向上を図るための仕組みについて、法案提出も視野に検討を進めるとともに、「地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業」などを継続的に実施・充実させるなど、真に外国人との友好を育むための環境整備を行います。また、海外における日本語の普及にも取り組みます。
- 一人ひとりを大切にし、充分に力を伸ばす特別支援教育
「障害者の権利に関する条約」の理念を踏まえ、発達障害を含む障害のある子供たちが希望を持って生涯を過ごすことができるよう、その自立と社会参加を目指し、切れ目ない支援を行える体制を整備します。
一人ひとりの教育的ニーズに応じた教育の充実のため、早期発見や乳幼児期から学校卒業後まで切れ目ない発達支援・相談対応などを行える仕組みの充実を含め、障害のある児童生徒への必要な教育支援体制の整備、特別支援学級などの対象となる児童生徒に係る「個別の教育支援計画」及び「個別の指導計画」の作成義務化を踏まえた活用の促進、通級による指導の充実や特別支援教育コーディネーターの専任化のための教職員定数の改善、特別支援教育支援員の配置促進、医療的ケア看護職員などの学校への配置拡充、ICT などの技術を活用した教材などの研究や指導内容・方法の工夫改善などに取り組みます。併せて、特別支援学校教諭免許状の取得率の向上や全ての小・中・高等学校の教師が特別支援教育に関する一定の知識・技能を身に付けられるようにします。
- 障害者の自立と社会参加を実現するための教育・就労支援の充実
自立と社会参加を実現するため、障害のある生徒に一層配慮した高校・大学入試の実施、個々の特性や能力に応じたキャリア教育・就労支援の充実、就労支援コーディネーターの配置拡充、高等学校における通級による指導の制度化を踏まえた実施のための体制整備や特別支援学級の制度化の検討、学校卒業後の能力維持・向上のための継続的な生涯学習の機会の充実などに取り組みます。
- 実践的な職業教育の推進
人材育成に関する社会の要請に応えるため、普通高校以外に、実践的な職業教育を行う専門高校を整備するなど、多様性・専門性のある選択ができるようにします。専門高校については、地域の産業界等との連携・協働による実践的な職業教育を推進し、地域に求められる人材を育成するため、「マイスター・ハイスクール(次世代地域産業人材育成刷新事業)」の充実などにより、企業や大学などと連携して、社会の変化や産業の動向などに対応した実践的な職業教育を推進します。特に、農林水産高校においては、農林水産業界や関連産業などと連携して農業経営に関する学習の充実を図るなどの取組みを進めます。また、多様化する生徒のニーズに応えて、高校と同じ期間で職業を中心に学ぶことができる高等専修学校(専修学校高等課程)を支援していきます。
- 専修学校・各種学校の教育の充実
専修学校において、地域企業などとの組織的な連携を進め、地域の人材ニーズに対応した実践的な職業教育の質の向上に取り組みます。現状の専修学校・各種学校の存在意義を十分認識して、他の学校群との制度的格差の解消を目指し、財政的支援や教育内容の充実に向けての公的支援などを図ります。
大学、専修学校などと産業界・地域社会とのより幅広い連携協力のもとで、中核的役割を果たす専門人材の養成に取り組みます。地域密着型のコミュニティカレッジ化により、技能習得と就労を支援します。
- 若者の自立・自活を促すキャリア教育と職業教育の推進産業構造の変化や社会経済情勢の変化に伴い、国民が自ら主体的に生きることができる能力及 び態度を養うことができるようにキャリア教育 を推進します。そのためキャリア教育推進の理 念や基本事項などを定める「キャリア教育推進 法」を議員立法で制定します。そのうえで、総合 的、体系的かつ効果的な推進を図るための連絡 調整を行うために、文部科学省、厚生労働省、経 済産業省その他の関係行政機関の職員をもって 構成するキャリア教育推進会議を設置します。 都道府県は、区域におけるキャリア教育を推進 するため、都道府県の関係機関、教育関係者、事 業者、事業者団体などをもって構成する都道府 県キャリア教育推進協議会を設置します。
- キャリア教育の効果的な推進
インターンシップが事実上の就職活動とならないように配慮するとともに、地方や中小零細企業が受け入れる際の負担の軽減や学校現場への繁忙を取り除くための適切な配慮をします。更に、学生の学修時間の確保や留学などの多様な機会を確保し、大学等における人材育成と両立した適切な就職活動の定着に取り組みます。
- 国立大学法人改革を通じた教育研究の質の向上
国立大学については、地方創生への貢献、グローバル化への対応やイノベーション創出等の社会からの期待に応えるため、学部・研究科などを越えた予算や人材などの学内資源配分の最適化、年俸制やクロスアポイントメント(混合給与)の導入、年功序列などの現行人事・給与システムの抜本的改革、戦略的な施設マネジメントの取組みを進めるとともに、運営費交付金や施設整備費補助金などを通じた戦略的・重点的な支援を強化します。
また、国立大学の教育研究の質の向上や経営基盤の充実を図るため、開かれた教育と研究体制をつくり、学長のリーダーシップの強化を引き続き進めるとともに、ステークホルダーの信頼を得られる自浄作用を持つガバナンス体制の構築を進め、出資対象範囲の拡大といった規制緩和や一法人複数大学制を推進します。
- 私立大学の振興
私立大学は、全大学の約 8 割を占め、学生数は全学生数の 7 割を超えるなど、わが国の学校教育に大きな役割を担っています。少子化の進展など、私立大学を取り巻く環境が厳しさを増す中で、私立大学が社会から信頼され、健全な発展を遂げていくよう、私立大学のガバナンスの強化や戦略的財政支援など、私立大学の総合的な振興を図ります。私立大学の収入の約 8 割は学生納付金であり受益者負担が重い現状を踏まえ、国公私立大学の設置形態論・経費の受益者負担論の見直しなどを行い、多様な財源の確保による安定的な経営を可能にするため、寄附の拡大や受託研究・共同研究の受入れの促進など、企業などの協力も得ながら、民間資金を自主的・積極的に調達するための環境整備を推進します。
- 大学と地域の共創の推進
大学同士だけでなく、地域共創(大学と地方・地域社会、産業の連携)運動を積極的に推進するとともに、大学の多様な取組みについて情報の国内外への発信を推進します。
地域の中核となる大学が、“特色ある強み”を 十分に発揮し、社会変革を牽引する取組みを政 府が総力を挙げて強力に支援するため、2021 年度中に必要な政策パッケージを取りまとめます。特定分野の高い研究力の強化、人材育成や産学 連携活動を通じた地域の経済社会、日本や世界 の課題解決への貢献のため、「知と人材の集積拠点」である多様な大学の強みや特色を最大限に 活かし、発展できるような大学のミッション・ ビジョンに基づく戦略的運営の実現を推進します。
- 新たな時代を生き抜く真の学ぶ力を育成する高大接続改革の推進
新たな時代に向けて国内外の大きな社会変動が起こっている中、確実に学力を身に付け、人生を自ら切り拓き新たな価値を創造していける力を培う教育が重要です。これに対応するため、高校で身に付けた力を適切に評価し、次の段階へ進むことができるよう、高校教育と大学教育、そしてそれらをつなぐ大学入試を一体的に改革します。
これにより、学力の 3 要素をもって多様な人々と協働する態度を養い、リーダーシップ、企画力や創造力、豊かな感性や優しさ、思いやりなどを備えた人間を育成します。更に、これらの改革を推進するための体制の整備・強化など財政支援に取り組みます。
- 変化する社会に対応するための高等学校教育改革
高等学校教育改革では、①これからの時代に求められる資質・能力を育成するという観点に立った教育課程の見直し(高等学校学習指導要領の改訂)を行い、②課題の発見と解決に向けて主体的・対話的で深い学び、(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)の視点からの授業改善を推進するとともに、③生徒の日々の活動を通じた幅広い資質・能力の多面的評価の充実を図るとともに、多様な学習成果を測定するツールの一つとして「高校生のための学びの基礎診断」を導入しました。これらを引き続き推進し、高等学校教育の質の確保・向上に取り組みます。
- 社会の変化を踏まえた大学改革
大学の持つ教育機能を抜本的に強化し、学生を鍛え上げ社会に送り出していくための教育改革を加速します。そのためアクティブ・ラーニングの推進など授業方法を質的に転換し、学修成果の可視化や大学教員の教育能力の向上、学修環境の整備など、教育改革に取り組む大学や教員への支援を強化します。
すなわち、大学教育の質の保証を徹底するための全体的な制度(設置基準や大学評価など) を充実するとともに、大学教育の改革に取り組む大学への資金の重点配分を行います。また、今後の 18 歳人口の減少と、地域における質の高い高等教育機会を確保する観点を踏まえつつ、大学の連携・統合・撤退などの改革構想を明確にします。
- 「三つの方針」に基づく個別大学の教育改革、大学入学者選抜改革
各大学において、教育理念に基づき、①「卒業認定・学位授与の方針」、②「教育課程編成・実施の方針」、③「入学者受入れの方針」のそれぞれの方針が一貫性を持つ明確なものとして策定されるようにするとともに、これらの 3 つの方針に基づく充実した大学教育の実現を推進します。
大学入学者選抜改革では、大学全入時代を迎え、入試の選抜性が高い大学がある一方、選抜機能が低下している大学が存在しており、このような中にあっては、大学と進学希望者が双方を選択するという観点から、進路選択に必要な情報を積極的に提供することや、志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価する入学選抜への転換に取り組みます。
- 0 時代の到来を見据えた高等教育改革
デジタル化の進展により、「数理・データサイエンス・AI」に関する知識・技能の修得と、それを活用した社会課題の解決が求められています。この観点から、文理を横断したリベラルアーツ 教育やデータサイエンス教育を進めることによ り、幅広い知識と深い専門性をもった人材を育 成する大学教育を推進してまいります。また、 デジタル社会に対応した資質や能力を涵養する ため、大学・高等専門学校において、デジタル技術を積極的に取り入れ、「学修者本位の教育の実 現」、「学びの質の向上」に資するための取組み を支援し、教育の質の向上を図ります。
- 専門職大学などにおける専門職業人の養成
専門職大学などにおいて、変革の時代に対応した個人の能力の磨上げや学び直しのための教育を提供し、時代を先取りした学校教育と職業教育の新たな融合形態を作り上げ、実践的な職業教育を推進することで、変化の激しい時代を主体的に生きる質の高い専門職業人養成機関として、産業界や地域社会とも連携し、社会ニーズに即応した人材養成を進めます。また、高度専門職業人養成を目的とする専門職大学院においても、ビジネススクールなどで、今後のわが国の経済社会を牽引する高度経営人材などを輩出するための、産業界や地域社会とも連携した新たな教育モデルの編成やステークホルダーの視点を取り入れた評価の導入などにより、教育の質的向上を図ります。
- 高等専門学校の機能強化
実践的技術者の育成機関として国内外から高い評価を受けている高等専門学校について、時代の変化や進歩に対応した教育機関として財政面も含め更なる支援を行い、技術立国日本にふ さわしい人材育成を実現します。同時に地域産 業界との連携により地域の潜在力を掘り起こし、地方の雇用を拡大し地方創生に取り組みます。 地域や産業界のニーズを踏まえた実践的・創造 的技術者教育の充実やグローバルに活躍する技 術者育成の強化などの改革を進める高等専門学 校を重点的に支援します。
- 地方大学などの活性化を通じた人口減少克服
若年層人口の東京一極集中を解消するためには、地方の大学・高等専門学校が一層魅力ある存在となることが不可欠です。このため、地域の知の拠点としての大学が自治体や地方企業などと連携して行う人材育成などの取組みを支援するとともに、国立大学や私立大学に対する地域の強みを活かした教育研究の機能強化、公立大学の教育・研究・社会貢献機能のより一層の強化を図ります。更に、大学生が地方企業へのインターンシップなどに参加する取組みを支援するとともに、都市部の優れた大学が行う授業を地方においても受講できるようにするための取組みへの支援を行います。加えて、初等中等教育段階においても、地域に愛着と誇りを持って地域を支える人材を育てるとともに、地域学校協働活動など、学校を核として、学校と地域の連携・協働により地域力を強化します。
- 大学の教育研究活動を支える基盤的経費の安定的な確保
わが国の高等教育や基礎科学の中核を担っているのは、多様な人材が集い、教育活動や研究活動を行っている大学です。近年、その安定的な教育研究活動を支える基盤的経費(国立大学法人運営費交付金及び施設整備費補助金、私学助成)は減少傾向にありましたが、国立大学法人運営費交付金については 2015 年度予算以降、前年度同額程度を確保しており、2021 年度予算においては、教育研究活動に必要な経費について対前年度増額を確保しました。わが国の人材育成及び学術研究の中心的役割を担う国公私立大学の抜本的改革を確実に進めるとともに、運営費交付金や施設整備費補助金、私学助成などの基盤的経費を確実に措置します。
- 社会変革や地域の課題解決を主導する国 立大学への変革
国立大学については、2022 年度から始まる第4 期中期目標期間に向けて、各大学のミッション実現のために必要な取組みの推進や、社会的なインパクト創出のための戦略的な強化を後押しするとともに、共通指標に基づくメリハリある資源配分の仕組みにより、自らのミッションに基づき、自律的・戦略的な経営を進め、社会変革や地域の課題解決を主導する国立大学への変革を実現します。また、キャンパス全体のソフト・ハード一体となった共創拠点化を目指します。
- 評価制度の抜本的改革と情報公開
大学の教育研究活動の質を保証し、向上させていくためには、評価制度を抜本的に改革することが不可欠です。大学が自律的に改革を行うインセンティブを働かせるため、学修時間や卒業生の満足度をはじめとする成果指標を定め、教育成果の「見える化」、情報公開を進めます。
- 大学院教育の抜本改革
大学院について、研究活動のみならず教育活動を一層重視し、文系・理系それぞれの設置目的に応じた多様性を確保して、体系的かつ組織的な高度人材の育成の取組みへの支援を強化します。特に、社会の多様な場で活躍する人材を育成・確保するため、産業界などとの密接な連携・協力を推進し、専門分野の枠を超えた体系的な博士課程の構築や、社会人が学べる環境の整備など、大学院における教育活動を強化します。新たな知の創造と活用を主導する博士人材を育成するため、複数の大学、民間企業、国立研究開発法人、海外のトップ大学・研究機関などが連携した「卓越大学院」を形成します。そのため、優秀な若手教員を惹き付けるための環境整備や、優秀な大学院生への経済的支援などの資金の重点的支援を行います。
- 若手・女性研究者の活躍促進
若手研究者への支援に重点化して安定的なポストを大幅に増やすとともに、大学院生への多様な財源による経済的支援を行います。特に、わが国の科学技術・イノベーションの将来を担う博士後期課程学生について、その支援の抜本的な拡充を進めます。また、優秀な研究者が大学や公的研究機関、産業界の枠を超えて活躍できる環境を整備します。加えて、キャリアパスを多様化するため、産業界と連携した若手研究者や大学院生に対する企業家・イノベーション人材育成を実施するとともに、産業界の研究職や知的財産管理などの研究支援に携わる専門職などでの活躍を促進します。若手研究者が自立して研究に専念できるようにするため、プロジェクト雇用における専従義務の緩和や研究以外の業務の負担軽減等を進めます。
また、女性研究者の活躍促進に向けても、出産や育児等のライフイベントと研究の両立、女性研究者の研究力向上、女性研究者の上位職への登用などの取組みを支援します。
- 学生の国際交流の積極的推進
新型コロナウイルス感染症により、大きな影響を受けている高校生段階からの留学生交流や高等教育のグローバル化の取組みについての再開・継続を支援します。日本経済を再生するには、グローバルに活躍できる「強い」日本人の育成が必要であり、意欲と能力に富む全ての学生に留学の機会を与える環境整備を進めます。このため、海外留学促進キャンペーン「トビタテ! 留学 JAPAN」による留学機運の醸成に引き続き取り組み、必要な留学などの経費の支援に係る官民が協力した海外留学支援制度の運用や就職活動への影響の回避、語学力の向上など、留学しやすい環境を整備します。
更に、日本人学生の海外留学と外国人留学生の受入れの両面でオンラインの活用も含めた多様な国際交流を活用し、質の高い国際流動性の実現を目指します。
- 優秀な留学生の戦略的な獲得
留学生の受入れに当たっては、特定の国・地域に偏ることなく、優秀な留学生を戦略的に獲得します。世界的な外国人留学生の獲得競争の中で、日本で学ぶ留学生や研究者が増えるよう、海外拠点を活用した教育研究活動に関する情報発信の強化や現地入試などの促進や、留学生の適切な在籍管理、地方自治体や大学、民間団体、NPO などが連携したインターンシップの実施、卒業・修了後の就職支援など産業界をはじめとする社会の受入れの推進を図るとともに、受入れ数を重視するこれまでの視点から、より出口に着目して受入れの質の向上を図る視点への転換を図ります。
- 海外の優れた研究者の受入れと大学・研究活動の国際化
英語による授業の拡大や、学生の国際流動性の促進、外国人や海外で学位を取得した若手の積極的採用を行うなど、徹底した大学改革と国際化を断行する「スーパーグローバル大学」を継続的に重点支援します。また、大学が世界水準の教育研究活動を展開するためには、海外から優れた研究者を受け入れ、協働で研究活動に取り組むことが不可欠であり、奨学金の充実や受入れ機関の体制整備、周辺の生活環境の整備などを推進し、優秀な留学生や海外からの研究者の受入れを進めます。また、柔軟なアカデミック・カレンダーの導入や留学支援体制の充実など、学生交流を促進する体制作りの取組みや、わが国にとって戦略的に重要な国・地域の大学との国際教育連携の促進などを通じて、大学の徹底した国際化を推進します。更に、多くの研究者が、海外の異なる研究文化・環境の下で研さん・経験を積めるように、国際研究ネットワークの構築を図ります。
- 海洋立国に相応しい海洋教育の充実
わが国は四方を海に囲まれ、世界第 6 位の領海・排他的経済水域を持ち、海外との貿易によって成り立つ海洋立国です。海洋基本法が制定され、海洋基本計画に基づき、各種海洋施策が推進されています。その中で、海洋立国を担う海洋人材の育成、海洋教育の充実が課題となっています。小・中・高等学校においては、発達の段階に応じて、関係教科や総合的な学習の時間等を通じ海洋教育を推進します。専門的人材の育成と確保のために、産学連携を強化しつつ、高等教育機関での海洋教育の充実を図ります。学校と社会教育施設、産業施設、各種団体などとの有機的な連携を促進し、学協会などとの協力のもと、アウトリーチ活動を重視した取組みなどを推進します。
- 安全安心な社会、健康で豊かな社会を創る ための教育
幅広い世代を対象に、地域ぐるみの「防災教育」「防犯教育」「消費者教育」「投資教育」「情報セキュリティ教育」「食育」「スポーツ」「文化芸術活動」を応援します。
- 「社会制度教育」の推進
卒業・成人式などの節目や、社会福祉協議会や自治会による催しの場で、「社会制度教育」を推進します。生活保護の申請ができずに亡くなったり、育児や介護の負担に耐えられなくなったり、進学を諦めたりする方が居なくなるように、生活・育児・介護・障害・進学への支援策など利用可能な施策の周知を徹底します。
- オンラインによる学びの機会の充実
様々な困難を抱える人々も含め全国民の学びを保障するため、子供向けから大人向けまで多様な動画教材や学習講座を紹介するポータルサイトを整備し、地域・障害・言語などの壁を越えて学びの機会を提供します。
スポーツ・文化
- 東京大会のレガシーとしてのスポーツによる国際貢献
これまで「Sport for Tomorrow」プログラムで行ってきた国際的なアンチドーピングの活動の推進支援や発展途上国における学校体育カリキュラムなどの策定支援、スポーツ指導者の派遣などについて、新たな取組を進め、スポーツ分野における国際貢献を進めてまいります。
- スポーツの国際競技力向上
東京大会の素晴らしい日本選手団の活躍が一過性のものとならないよう、競技団体向けの選手強化費をしっかりと措置し、わが国の国際競技力向上のための取組みを一層加速します。
競技団体の強化活動全体を統括する人材や海外から招聘した人材などを含む優秀な指導者層の配置など、各競技団体が行う日常的・継続的な強化活動や、地域スポーツからの接続も意識した次世代アスリートの発掘・育成、女性アスリートの支援、スポーツ医・科学研究などについて、オリンピック競技・パラリンピック競技への一体的な支援の充実を図ります。
また、競技力向上の大きな役割を担う競技団体が自立して持続的に役割を果たせるよう、組織基盤の強化にも努めます。また、学校や各地域における障害者専用・優先スポーツ施設・用具の更なる整備を図るとともに、トップアスリートが同一の活動拠点で集中的・継続的にトレーニング教科活動を行うため、競技別強化拠点を含めたナショナルトレーニングセンターの機能強化を引き続き進めます。
- スポーツ・インテグリティの確保とドーピング防止
スポーツ活動が公正かつ適切に実施されるよう、スポーツ・インテグリティ確保に向けたアクションプランを推進し、関係団体と連携した
「スポーツ政策の推進に関する円卓会議」にお いて、ガバナンス確保の取り組みを進めます。 併せて、スポーツ団体が遵守すべき原則・規範 を定めたスポーツ団体ガバナンスコードに基づ く取組みを推進します。また、フェアプレーに 徹するアスリートを守り、競技大会における公 正性を確保するため、世界アンチドーピング規 程や新たな教育に関する国際基準等に基づいた、ドーピング防止に関する教育・研修及び研究活 動を実施します。
アスリートが安心して競技に取り組める環境を守るため、アスリートに対する SNS 等での誹謗中傷や、写真や動画による性的ハラスメントの問題にも取り組みます。
- 東京 2020 大会のレガシーの継承
交通インフラや各種施設のバリアフリー化と いった成果にとどまらず、心のバリアフリー、 共生社会の実現を東京 2020 大会のレガシーと して継承していきます。また、国立競技場の大 会後の運用管理に関する検討を着実に進めます。
プレミアムな観戦体験を提供するスポーツホスピタリティを推進するとともに、スポーツのDX 化を推進します。スポーツ、食、伝統文化などの幅広い分野で草の根レベルの交流を行うホストタウンとしての活動は、感染症対策のために大会直前の活動を縮小した地域を含めて、更なる国際交流の発展の礎としていきます。
- 国際スポーツ大会の招致
東京 2020 大会以降も国際的なスポーツ大会をわが国に招致して、国内におけるスポーツ活動、スポーツ教育の活性化を図るとともに、スポーツを通じた国際交流、文化・観光の魅力発信等につなげていきます。
特に、2030 年に予定されているオリンピック・パラリンピック冬季大会について、JOC は札幌市を国内候補地として決定しています。1972 年札幌大会、1998 年長野大会の 2 度の冬季大会や、直近の東京 2020 大会の成果・経験も活かしながら、ウィンタースポーツの盛んな札幌、そして日本の魅力を世界に発信できるよう、大会の構想を具体化していきます。
- 東京オリンピック・パラリンピック競技大 会の成果等を踏まえた「スポーツ基本法」に基づく「スポーツ立国」の実現
北京冬季オリンピック・パラリンピック競技大会、2024 年のパリオリンピック・パラリンピック競技大会をはじめとする国際競技大会で日本代表選手が活躍できるよう、競技団体向けの選手強化費や地域スポーツからの接続を意識した次世代アスリートの発掘・育成、女性アスリートの支援を充実させるとともに、スポーツ医・科学などを活用した支援やナショナルトレーニングセンターの機能強化を進めるなど、9 月にスポーツ立国調査会で取りまとめた「ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)の今後の活用について」提言も踏まえ、国際競技力向上施策を推進します。また、東京大会で活躍したトップアスリート等との交流を通じた子供たちへのオリンピック・パラリンピック教育の更なる展開を進めていきます。
- スポーツを通じた国際貢献・国際協力
わが国の国際的なプレゼンスを高めるため、スポーツ国際団体の日本人役員の更なる獲得に向けた支援を強化するとともに、「Sport for Tomorrow」プログラムによる国際貢献・国際協 力について、新たな取組みを進めてまいります。
- 各国際競技大会の成功に向けた取り組み
2021 年ワールドマスターズゲームズ関西、第19 回FINA 世界水泳選手権 2022 福岡大会などの成功に全力を尽くすとともに、スポーツの公平性を確保するため、アンチ・ドーピング活動を推進します。更に、各競技の国際競技大会の招致に取り組みます。
- 子供の体力向上の取組み推進
ICT 活用も含め、学校における体育の充実を図るとともに、障害の有無にかかわらず、体育 の授業や部活動に参加できる環境を整えてまい ります。加えて、子供達の安全・安心を確保するため、学校体育活動中の事故防止に取り組みま す。運動部活動における体罰を根絶し、合理的・効果的な運動部活動を推進するとともに、全国 的な運動部活動の地域移行を推進するなどの部 活動改革を推進します。また、子供の体力・運動能力、運動習慣について調査を悉皆で行うとと もに、調査結果を活用することで、新型コロナ ウイルス感染症の子供の体力への影響を分析し、子供の体力向上の取組みを推進します。
- 地域スポーツ・民間スポーツの充実
幼児から高齢者まで誰もがスポーツに親しむ ことができる環境を整備することは重要であり、国民体育大会、全国障害者スポーツ大会、指導 者養成事業、スポーツの裾野を広げるための地 域スポーツの基盤強化など各種スポーツ振興事 業の充実を図るとともに、スポーツを通じた健 康増進を図るため、最新のスポーツ医・科学な どに基づくスポーツの普及やスポーツ無関心層 に興味・関心を喚起する取組みへの支援、地域 スポーツコミッションなどによるスポーツと地 域資源を掛け合わせた地域活性化・まちづくり の取組みを促進します。併せて、スポーツ団体 の発展基盤の強化に向けて、競技団体の組織基 盤強化のための取組みを支援するとともに、民 間企業によるスポーツ振興活動の維持拡大に向 けた検討や、スポーツ団体ガバナンスコードに 基づくガバナンスの強化やアスリートやスポー ツ指導者のキャリア支援などに取り組むととも に、大学スポーツ協会(UNIVAS)の円滑な事業運営のための必要な支援を行い大学スポーツの振 興を図ります。また、地域の住民が学校や地域 のグラウンドや体育館等を利用しやすい環境の 整備についても検討を進めます。
- 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーの継承・発展活用
スポーツを通じた国際交流や東京大会に出場したトップアスリート等との交流を通じたオリンピック・パラリンピック教育の全国展開などを幅広く展開し、スポーツボランティアの育成を図るなど、オリンピック・パラリンピック・ムーブメントを全国へ波及させます。こうした取組みを通じ、競技場や交通網などのインフラのみならず様々な分野で芽生えてきた 2020 年東京大会のレガシー(遺産)を地域に根付かせます。
また、国立競技場の大会後の運用管理に関する検討を着実に進めるとともに、これまで「Sport for Tomorrow」プログラムで行ってきた国際的なアンチ・ドーピングの活動の推進支援や発展途上国における学校体育カリキュラムなどの策定支援、スポーツ指導者の派遣などについて、新たな取組みを進め、スポーツ分野における国際貢献を進めていきます。
大会の開催を契機に、国民にとってスポーツがより身近なものとなり、スポーツが生活の一部となることで、わが国のスポーツ文化をより一層深化させ、国民の健康増進、子供達の体力強化、スポーツの産業化の推進に取り組んでいきます。
- アスリートの引退後のキャリア形成支援、教育委員への任命
2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会や国際的な競技会で活躍したアスリートなどが、引退後の人生に不安を抱くことなく安心して競技に取り組んでいける環境づくりをしていくことが必要です。
アスリートが競技に専念できる環境の整備と引退後のキャリアの構築について、個々の選手に適した取組みを行うため、スポーツ団体や企業などの関係機関が連携した検討を行うとともに、デュアルキャリアと学び直し支援や、例えば教育委員などとしての活動も含めた学校・地域などにおける活躍の場の拡大など現役時代と引退後をつなぐアスリートキャリア支援を推進します。
- スポーツの成長産業化・地域活性化の推進これまでの「体育」から、自らがプロフィット を生み出す「スポーツ」への変革を促していく
ために、民間ノウハウの積極的な導入を通じて、スポーツで稼ぎ、その収入をスポーツへ再投資する自律的好循環を形成し、スポーツの成長産業化を推進していきます。
具体的には、スタジアム・アリーナ改革をはじめとしたスポーツ施設整備のあり方を抜本的 に見直し、これまでのコストセンターからプロ フィットセンターへの変革を促進していきます。また、スポーツコンテンツの魅力の最大化を推 進するために、コンテンツホルダー(スポーツ 団体、大学スポーツなど)の経営力強化、スポー ツデータの利活用、スポーツ経営人材の育成、 外部人材の流入促進などに取り組んでいきます。加えて、スポーツの有する資源をオープン化し、外部の資金・人材・技術等を融合させることに よるイノベーション創出の促進や健康ビジネス の拡大、スポーツツーリズムの活性化などを進 め、スポーツ市場の拡大を一層加速させていき ます。
- 学校や社会体育施設を中心にした生涯スポーツ振興
国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営むため、生涯にわたってスポーツをする場の提供を推進していきます。具体的には、総合型地域スポーツクラブの登録・認証などの制度を整備するとともに、都道府県レベルでの中間支援組織の整備及び当該組織によるクラブの自立的な運営を促進する事業などを支援することで、クラブの質的な充実を図る取組みを推進します。また、総合型地域スポーツクラブをはじめ地域の住民がスポーツをする場として、学校のグラウンドの芝生化や照明の整備、社会体育施設の整備などを進めるとともに、学校開放事業の運用のあり方についても検討を進め、生涯スポーツの振興に向けた環境の整備を推進します。
- 障害者スポーツの振興
スポーツを通じた共生社会を実現するため、多くの障害者がスポーツに親しめる環境を整備することにより、障害者スポーツの裾野を拡大していきます。そのため、障害者が身近な場所でスポーツを実施できる環境づくりや、特別支援学校を地域の障害者スポーツの拠点にする取組み、障害の有無にかかわらず共にスポーツを実施する取組みを推進していきます。また、基盤の脆弱な障害者スポーツ団体の体制整備のため、支援を求める障害者スポーツ団体と民間企業とのマッチングなどにより、団体を支援する取組みを推進します。加えて、スポーツ車いす、スポーツ義足等の高額な障害者スポーツ用具の共有促進など用具利用を容易にするための体制構築や、スポーツ施設などのバリアフリー化も推進します。更に、パラリンピック、スペシャルオリンピックス、デフリンピックなどの国際的な障害者スポーツ大会への選手派遣の支援も推進します。
- 武道の振興
わが国固有の伝統文化である武道を多様な世代へ振興するため、各種武道大会などの開催や中学校における武道指導の充実、指導者の資質向上、武道場の整備、武道の国際交流などを通じて、武道の更なる振興、発展を図ります。
- 世界に誇るべき「文化芸術立国」の創出
世界に誇るべき「文化芸術立国」の実現に向けて、文化芸術基本法に基づき、文化芸術活動への支援や、伝統文化の継承・発展や文化財の保存・修理・活用、その理解を深めるための国立劇場の再整備の推進及び国立文化施設の改修・充実や施設の新設などによる機能強化、若手芸術家などの人材の積極的育成や文化芸術を支える専門人材の確保などに取り組むとともに、「文化芸術推進基本計画」を踏まえ、観光やまちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の幅広い関連分野との連携を図ります。また、新たな文化や価値を創造していくための社会的な基盤となるデザイン分野を含めた文化関係資料のアーカイブ化の取組みを推進します。更に、「文化芸術立国」の創出に向けて、必要な文化予算を確保します。
- 文化芸術の継続支援と基盤整備
コロナ禍で多様な文化芸術の灯を消さぬよう、文化芸術・伝統芸能関係者及びスタッフの育成 や、団体・文化施設の活動存続等に向けた支援 を行うとともに、感染防止と両立したイベント 開催制限の緩和を進めます。また、子供たちの 文化芸術体験活動の推進、文化芸術・伝統芸能 を次代へ継承する担い手育成、適正な契約慣行 の定着や共済制度の創設検討等による実演家や 技術スタッフ等が安全・安心な環境で活動でき る環境の整備、力強い文化芸術活動の推進を可 能とする基金の拡充、地域活性化の核となる地 域の文化施設の機能強化等を図ってまいります。
- アート市場活性化の推進
アート市場の活性化をはじめとする文化産業の振興、パブリックアートによる空間の価値向上、観光客の増加や他の産業や地域経済への波及を一層促進し、文化を通じて日本経済の活性化(文化による GDP の拡大)を進めます。とりわけアートについては、その学術的評価と市場評価が車の両輪であるという認識の下、国内美術館の体制整備や国際的なアートフェア・オークション等の国内誘致などを通じ、わが国アートシーン・アート市場の活性化・国際拠点化を図り、アートによる生活の質向上、観光振興及び新たな市場・産業を創造します。
- わが国文化の国内外への発信強化
2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会後も引き続き、日本の美を発信するため の日本博を全国展開し、日本各地の文化資源で 世界の人々を魅了する機会を創出するとともに、多言語で文化芸術の魅力を国内外に発信します。また、日本文化を戦略的に海外発信するため、
「国際文化交流の祭典の実施の推進に関する基本計画」を踏まえた大規模祭典の実現に向けた取組みや伝統的な文化・芸術の継承・発展を引き続き推進するとともに、文化交流の相手先と内容の重点化、優れた芸術の国際交流の推進、海外の日本語教育拠点の拡充などを行います。
- 文化芸術を通した地域活性化の取り組み
劇場・音楽堂、美術館・博物館などを活性化するため、実演芸術の振興や美術品や文化財の鑑賞機会の充実を図るとともに、地方自治体による計画的な文化事業や、国等が有する地方ゆかりの名品を展示するなどの特色ある地方博物館の取組みへの支援を実施します。文化芸術の創造性が産業や地域の活性化に結びつく取組みを行う「文化芸術創造都市」が全国各地に広がっていくよう支援します。
- 文化芸術体験の充実
文化芸術体験はわが国の将来を担う子供の豊かな感性や創造力の涵養に資するという認識のもと、国として責任を持って義務教育期間中に、全ての子供が、質の高い文化芸術を最低 2 回(伝統芸能と現代舞台芸術を各 1 回)は鑑賞・体験することができるようにするとともに、地域の文化施設や文化芸術団体等との連携による学校や地域における芸術教育の推進や、「伝統文化親子教室」などの取組みを充実します。
- 文化庁の京都移転と機能強化
文化庁の京都への全面的な移転を着実に進めるとともに、地域の文化資源を活用した観光振興や地方創生の拡充に向けた対応の強化、わが国の文化の国際発信力の向上、生活文化の振興、科学技術を活用した新文化創造、文化政策調査研究や文化政策の総合的推進など、新たな政策ニーズに対応できるよう、文化庁の機能強化を図ります。
- メディア芸術の振興と拠点整備
優れた文化的価値を有するマンガ・アニメ・ ゲームをはじめとする日本のメディア芸術の更 なる振興を図るとともに、日本ブランド構築の 一翼を担うため、メディア芸術分野の人材育成 や創作活動の充実、国内外への発信の強化、制 作者の待遇改善を図ります。また、わが国のメ ディア芸術に関するアーカイブ機能や国内外へ の発信機能の強化を通じた国際的な評価の向上 などを図るため、「メディア芸術ナショナルセン ターの整備及び運営に関する法律」を制定し、 メディア芸術の情報拠点などの整備を進めます。
- 文化芸術活動の支援
文化芸術団体の円滑な活動のため、専門的人材の育成や意欲的・先進的な活動に対して、手厚い支援を行います。寄付文化の醸成を図るための環境を整備し、税制上の優遇措置の利用を促進します。東京には国立博物館をはじめ、多くの文化施設が存在しますが、これらと各地域に文化クラスター(文化集積地区)を創出することにより、全国各地での鑑賞機会の充実を図ります。
- 文化財の後世への確実な継承
文化財を適切に保存し、確実に次代へ継承するための 5 か年計画である「文化財の匠プロジェクト」を着実に推進します。伝統的な技術や原材料・道具を絶やさないために、修理事業の事業量を安定的に確保することが重要なことから、必要な財源の確保、国指定文化財等の修理
周期の適正化を総合的・計画的に推進するとともに、安心・安全な修理の実施や修理技術の研究・評価・普及啓発に努め観光資源としての価値を高める美装化を行うとともに、文化財の買取りや、地震や火災、大雨、土砂崩れなどの災害等により被災した建造物・美術工芸品などの文化財の復旧、これらの災害等から文化財を守るための防災・防犯対策を併せて推進します。
- 障害者の芸術活動の推進
共生社会を実現するため、障害者等が必要な支援を受けて文化芸術や伝統芸能を鑑賞することができる機会の拡充や、障害者等が自ら芸術を創造できる環境の整備、障害者等の制作した作品等を広く発信するための機会の確保を図るとともに、障害者等の芸術作品等が広く世間に認識され、適正な評価を受けることができるよう、博物館や美術館をはじめとする公的な文化施設等における展示の促進など、障害の有無を問わず、全ての国民が、文化芸術や伝統芸能を身近に感じ、親しむことを可能とする環境の整備を図ります。
- 地域における文化財の保存・活用
地域に長く伝わり、文化伝承の礎となってい る礼祭・伝統行事等が、コロナ感染拡大の影響 を受け、開催の見送りや規模の縮小を余儀なく されることにより、その継承が困難となってい る現状を打開するとともに、芸能、食文化を含 む生活文化を後世に確実に引き継いでいくため、文化財保護法の改正を契機とした、わが国が誇 る貴重な無形の文化財の登録の推進、次世代へ の確実な伝承を可能とする支援事業の実施、上 演機会の提供や文化財所有者からの相談への一 元的な対応などを行うセンター機能の整備、映 像記録(デジタルデータ)などの作成を推進し ます。景観・まちづくりや観光などとも連携し つつ、地域一体となって文化財を総合的かつ計 画的に保存・活用するため、地域における文化 財の総合的な保存・活用に関する基本的な計画 の作成を推進するとともに、地域における文化 財保護の取組みへの支援を進めます。
- 日本遺産をはじめとした文化財を核とした地域活性化
「日本遺産(Japan Heritage)」については、2020 年までに 47 都道府県において計 104 件が認定されたところ、今後も、日本遺産全体の底上げを図り、日本遺産ブランドを維持・強化していくための取組みを推進します。また、国際観光旅客税も活用しつつ、日本遺産や生きた歴史体感プログラム(リビング・ヒストリー)のほか、博物館での特色ある取組みへの支援などを通じて文化芸術資源を磨き上げ、観光振興やまちづくり、地方創生につながる文化資源の活用を進めます。
- 文化観光の推進
2020 年 5 月に施行した「文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律」等を活用し、文化観光拠点・地域の整備の促進や、日本遺産等の文化資源の魅力向上や発信強化を行うとともに、地域の文化施設や文化資源等について、文化観光資源としての高付加価値化を図り、文化振興・観光振興・地域活性化の好循環を創出します。また、博物館等の国際交流の促進等を通じて、国内外へ日本の文化芸術の発信を強化します。
世界遺産・無形文化遺産などの保存・活用
ユネスコの「世界遺産」について、わが国に は、20 件の文化遺産、5 件の自然遺産があり、このうち、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」及び「北海道・北東北の縄文遺跡群」については、今年 7 月に開催された世界遺産委員会で世界遺産に登録されました。また、「無形文化遺産」については、「和紙:日本の手漉き和紙技術」「山・鉾・屋台行事」など合わせて 22 件が登録されています。更に、「世界農業遺産」には、新潟県佐渡市、石川県能登半島などが登録されています。これらの保存・活用を図ることによって、海外への日本文化の発信及び諸外国代への継承などを積極的に推進します。
代への継承などを積極的に推進します。
- デジタルトランスフォーメーション(DX) 時代に対応した著作権制度・政策
DX の推進は、文化芸術における創作・流通・利用にも大きな影響を与えており、DX 時代における社会・市場の変化やテクノロジーの進展に柔軟に対応したコンテンツ創作の好循環を実現する必要があります。そのため、DX 時代に対応した簡素で一元的な権利処理方策や、公的機関・企業等でのデジタル化に対応した基盤の整備等、コンテンツの利用円滑化とそれに伴う適切な対 価の還元について取り組みます。また、著作権 侵害に対する実効的な海賊版対策の実施、わが 国のコンテンツの海外展開の推進、デジタルプ ラットフォームサービスに係るいわゆるバリュ ーギャップ等への対応、著作権制度・政策の普 及啓発・教育方策を進め、コンテンツの権利保 護を図ります。
- 博物館の機能強化
博物館は、地域の文化・教育施設として国民の豊かな生活の創出に貢献してきましたが、近年、観光やまちづくりなど社会的・地域的課題への対応がますます求められるようになっています。しかしながら、経営基盤や人材の不足により、このような求められる役割に対して十分に応えることができていない課題が指摘されています。そこで、博物館がこれらの課題に対応していくことができるよう、博物館法で定められている登録制度の刷新をはじめとして、その活動と経営の改善・向上を促進するための制度整備や支援を行い、わが国の博物館の機能強化を図ります。
- 公民館 1 万 4000 ネットワークの活用
社会教育施設として全国各地に公民館が約14,000 か所設置されています。各地の教育委員会の社会教育主事が中心となって講座などの利用が進められてきました。しかしながら、社会教育主事の配置が十分ではなく、また講座などの内容がともすれば個人の趣味嗜好に陥りがちになっているのではないかとの課題が指摘されていました。
そこで、本来の社会教育のあり方を検討しつつ、地域の課題を模索し解決するための社会貢献型に展開すべきです。スポーツ庁と連携して健康増進活動や、厚生労働省と連携してのボランティア活動、法務省と連携しての終活など、各地の好事例を収集し、ブロックごとに周知を図るための支援を充実します。
生活の安全
- 訟務機能の強化
法の支配を徹底し国民の権利や国益を守るため、国内外の法的紛争の未然防止に向けた予防司法機能を充実させるなど、国の訟務機能を強化します。
また、国民の様々なニーズに応える良質な法的サービスを提供可能とするため、その実態を把握し、多様な分野で活躍する法曹を多数輩出できる環境を実現します。
- 司法分野のデジタル化
適正かつ迅速な裁判の実現を図り、民事裁判を国民にとって一層利用しやすいものとするため、当事者の裁判を受ける権利にも配慮しつつ、民事裁判手続の IT 化を実現します。
また、身近な紛争解決手段として ODR(オンライン型民間調停)を利用できるようにするほか、国民に対して行動規範・紛争解決指針を示すとともに紛争解決手続に関する AI の開発等の研究を推進するための基盤ともなり得る民事判決情報のデータベース化を実現するなど、司法分野におけるデジタル化を進めてまいります。
更に、刑事手続に関与する国民の負担軽減や円滑・迅速な刑事手続の実施を図るため、システム構築を含めた IT 基盤を整備するなど、刑事手続における IT の活用についての取組みを推進します。
- 法教育と人権啓発活動の推進
2022 年 4 月に行われる成年年齢引下げを見据 え、消費者被害等を防ぎつつ、若者が社会の様々 な分野でいきいきと活躍することができるよう、迅速かつ適切な環境整備に取り組みます。
また、子供たちが法を主体的に利用して未来を切り開く力を身に付けられるよう、法教育の担い手の育成や教材の充実などを図り、法教育を一層推進します。
更に、児童虐待やいじめ、インターネット上の誹謗中傷など、様々な人権問題を解消するため、人権啓発活動を推進するとともに、早期発見・救済に取り組みます。
- 養育費不払いと無戸籍者の解消
誰もがお互いの人権を尊重し支え合う「心のバリアフリー」を推進し、共生社会の実現に取り組みます。
また、養育費の不払いの解消など、離婚をめぐる子供の養育に関する問題解決のため、子供本位の取組みや法整備を実現します。
更に、親によって出生の届出がされておらず、無戸籍となっている方々について、徹底した実態把握に努めるとともに、無戸籍状態の解消に全力で取り組みます。
- 交通安全教育の充実と徹底
交通事故の発生を未然に防止し、交通安全を徹底すべく、心身の発達段階に応じて、また生涯にわたって、段階的かつ体系的な交通安全教育を充実します。高校では「三ない運動(免許を取らせない、バイクを買わない、乗せない)」の見直しを進め、全国の高校の好事例の普及を支援していきます。若者の「車離れ」が叫ばれる中で、道路交通法規の教育の徹底を支援します。
- 交通事故死傷者数を半減
近年、交通事故死者数は減少を続けていますが、未だ多くの方が交通事故によって命を落とされており、その半数は高齢者となっております。更に、2019 年 4 月には東京都池袋で高齢者の運転する車が歩行者をはね、母子 2 人が亡くなる事故が、2019 年 5 月には滋賀県大津市で保育園児の列に車が衝突し、園児 2 人が亡くなる事故が、2021 年 6 月には千葉県八街市で下校中の小学生の列にトラックが衝突し、小学生 2 人が亡くなる事故が起こるなど、痛ましい事故が相次いで発生しております。
このため、わが党はボランティアの方々とも連携しつつ、生活道路は幹線道路と機能分化させ、通学路を含めた点検の実施やビッグデータの活用による効果的な生活道路等の対策を行うとともに、高齢者等への交通安全教育などの交通安全対策、高齢者の移動手段の確保、高齢運転者の交通事故防止に資する自動ブレーキなど一定の安全運転支援機能を備えた車(サポカーS)の普及、自動運転による移動サービスの社会実装を推進することにより、道路交通の安全と円滑を確保し、誰もが安全・安心に暮らすことができる社会の実現を目指します。
同時に高度道路交通システム(ITS)の推進による安全性を高めるための安全運転支援システムの実現や、交通事故が起こりにくい街づくり、スクールバス導入等による子供の移動経路における交通安全の確保、事故に遭っても被害が最小限に抑えられる車の開発、自転車に対する対策、バス等の公共交通の安全性向上、踏切対策、高速道路の逆走防止対策など、総合的な交通安全対策を推進します。
- 交通事故死傷者数を半減(総合的な交通安全対策)
高度道路交通システム(ITS)の推進による安全性を高めるための安全運転支援システムの実現や、交通事故が起こりにくい街づくり、スクールバス導入等による子供の移動経路における交通安全の確保、事故に遭っても被害が最小限に抑えられる車の開発、自転車に対する対策、バス等の公共交通の安全性向上、踏切対策、高速道路の逆走防止対策など、総合的な交通安全対策を推進します。
- 消費者行政の強化・充実
新型コロナウイルス感染症に便乗した悪質商法被害の防止や孤独・孤立した環境に置かれた消費者への対応など、消費者の安全・安心を脅かす様々な課題に機動的に対処すべく、消費者庁創設時の理念に基づき、消費者庁、消費者委員会、国民生活センターそれぞれの機能の充実を図るとともに、スピード感を持って施策の推進に取り組みます。
同時に、消費者の安全で安心な暮らしを守るために、どこに住んでいても質の高い相談・救済を受けられ、デジタル化にも対応した相談体制の強化や、孤独・孤立の状況にある方、高齢者、障害者等の配慮を要する消費者の被害防止のための「地域の見守りネットワーク」を全国に整備していくことなどにより、地方消費者行政の強化・充実を目指します。
- 消費者保護・育成施策の充実
デジタル化や高齢化の進展を踏まえ、インタ ーネット通信販売をはじめとする様々な取引に おける消費者の保護やぜい弱性に対するセーフ ティネット構築のための制度整備及び運用に取 り組みます。不当な表示を防ぎ、消費者の利益 を保護するため、デジタル広告の表示の適正化 に向けた検討を進めるとともに、消費者にわか りやすい食品表示制度の円滑な運用に努めます。
若年者や高齢者など特に被害が懸念される消費者へのきめ細かな注意喚起や啓発を行うとともに、被害者の救済を消費者団体が代わって求める訴訟制度について、消費者の利用促進等実効性の向上により、迅速な救済の実現を目指します。
更に、消費者教育を通じて消費者被害を防止し、自主的かつ合理的に行動できるかしこい消費者を育成するとともに、事業者の消費者志向経営の促進や公益通報者保護制度の実効性向上により、消費者と事業者双方の信頼関係を構築し、持続可能な社会の形成と経済の活性化を図ります。
- ネット上の誹謗中傷等の対策推進
SNS 等のネット上の誹謗中傷やフェイクニュース等に対応するため、改正プロバイダ責任制限法の円滑な施行、刑法の侮辱罪の法定刑見直し、プラットフォーム事業者の積極対応の促進、情報リテラシー・モラル教育の拡充、被害者の相談対応・苦情処理の充実強化、会社法の外国会社登記の徹底、捜査機関の体制強化など、表現の自由を最大限考慮しつつ総合的な対策を推進します。
多様性・共生社会
- 障害者の方への施策の推進
障害者とともに安心して暮らせる共生社会の実現に向け、2021 年 6 月に公布された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」の改正法の施行に向けた準備と「改正障害者雇用促進法」の着実な実施に向けた取組みを進めます。また、障害者スポーツや、障害者の芸術・文化活動の更なる推進にも取り組みます。
障害福祉施策について、地域での自立生活の実現・継続を支える制度の見直しの検討を進めます。障害福祉サービス等報酬改定を通じて、障害者の重度化・高齢化への対応や感染症等への対応力の強化を図るとともに、障害福祉人材の処遇改善に取り組みます。
先般成立した「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」を踏まえ、医療的ケア児やその家族等への支援を進めます。
障害者の就労ニーズの多様化が進む中で、在宅就労やテレワーク等の推進を通じ、雇用の質の向上を図ります。障害者雇用と福祉の連携を強化し、一体的な推進による効果的で切れ目のない支援体制の構築に向けた検討を進めます。職業紹介の推進とともに、コロナ禍で赤字になっている「就労系障害福祉事業所」への支援を行います。また、わが党が主導した「障害者優先調達推進法(ハート購入法)」の着実な実施に努めます。
意思疎通支援が必要な障害者等に対する手話その他のコミュニケーション支援のあり方について、必要な法整備等を含めて検討し、その普及・充実に努めます。併せて、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」を踏まえ、読書環境の整備を進めます。
引き続き、障害のある人の自立と社会参加のための基盤整備や人材の確保を積極的に推進してまいります。
- 外国人との共生社会の実現
わが国における外国人との共生社会のあり方、その実現に向けて取り組むべき中長期的な課題 及び方策等を示し、共生社会の実現に向けた取 組みを推進します。共生社会の実現のため、在 留外国人が、社会の構成員として責任を持って 行動が取れるよう、日本語を習得する機会、税 や社会保障等の社会制度等を修得する仕組みを 構築します。
- 在留管理と多文化共生社会の実現
外国人の適正な在留管理の徹底を図るとともに、多文化共生社会の実現のため、一元的相談窓口の設置、行政・生活情報の多言語化などの受入れ環境整備を進めます。
また、国と地方公共団体、全国の一元的な相談窓口などとの連携を充実させるなど、効果的・効率的な支援の実施を推進します。
更に、行政・生活情報について、わが国を訪れる外国人の国籍や使用言語などの多様化を踏まえ、多言語対応を推進しつつ、所要の体制整備を行います。国民と外国人の双方からの継続的な意見聴取や、基礎調査の実施などを通じ、外国人の生活上の諸問題を的確に把握し、共生社会実現に向けた施策に反映させていきます。
- 在留管理におけるインテリジェンス機能の強化
安全・安心な社会を実現するため、幅広い関係機関等との連携強化などにより、出入国在留管理におけるインテリジェンス機能の強化を図ります。
また、関係省庁が連携し、在留カードの偽造事案に厳格に対応するなど不法・偽装滞在者対策を推進しつつ、入管法違反者の円滑な送還のための体制整備を進めます。日本人と外国人がともに安心して暮らせる社会の実現に向け、在留が認められない外国人の適正・迅速な送還とその間の収容長期化の防止のための法改正に取り組みます。
- 出入国審査と在留手続の円滑化
訪日外国人 6,000 万人時代に向けて、顔認証技術などの最新技術の活用などにより、円滑かつ厳格な出入国審査を実現します。
また、在留外国人の在留手続の円滑化・迅速化を図るとともに、外国人の利便性を向上させるため、在留関係手続のデジタル化の推進等に係る施策の充実を図ります。
- 留学生の入国再開と受入れ体制の確立
留学生は、わが国の社会、経済の活性化に不可欠な存在であることから、水際での適切な防疫措置を講じながら早急に留学生の入国再開を実現します。
また、わが国が留学先として選ばれる国となるためにコロナ禍においても感染拡大防止と両立できる受入れ体制を確立し、内外にそれを周知します。
- 留学生・技能実習生の適切な在籍・在留管理
留学生の適切な在籍管理を図るため、日本語教育機関の告示基準の見直しに基づく運用を着実に行うことに加え、在籍管理が不適切な大学などに対して厳格な対応を行います。
また、技能実習生の適切な在留管理を図るため、実地検査のための体制や送出国を含む関係機関の連携の強化などを通じて、制度の改善及び運用の適正化を図ります。
- 特定技能制度の活用
特定技能制度が深刻な人手不足の解消策として活用されるよう、試験実施国等の拡大や、実態に即した技能実習制度との一元的運用及び、各分野の実情を踏まえたマッチング支援等の取組みを推進します。
また、特定技能外国人の大都市圏などへの集中を防止するため、地方における受入れ環境整備や、地方定着のノウハウ、優良事例の共有などを積極的に行います。
- 孤独・孤立対策の推進
コロナ禍で深刻化する「望まない孤独・孤立」を放置しておくことはできません。孤独・孤立は人生のあらゆる場面で、誰にでも起き得るものです。孤独・孤立に苦しんでいる方々に寄り添い、一人ひとりを支えていく支援策の体系を構築します。
私たちが住む地域を、望まない孤独・孤立に陥らない、また、陥ったとしても速やかに支えられる社会にしていくことが重要です。助けを求める声を上げやすく、安心して生活できる、人と人との「つながり」を大切にした地域づくりを進めます。
- 助けを求める声を切れ目のない相談支援につなげる
様々な相談に的確に対応するため、電話や SNS などの特性を生かした相談窓口のワンストップ化、ネットワーク化、24 時間化を進めます。誰もが「助けを求める声を上げやすい社会」にしていけるよう、SOS の出し方の普及啓発を行うとともに、支援策を網羅したポータルサイトにより、いつでも容易に情報が得られる環境をつくっていきます。
支援を必要とする方々の目線に立ち、積極的に支援を届けるアウトリーチ活動により、様々な支援策を確実に届けてまいります。社会福祉協議会や民生委員など公的な組織等の拡充・強化を図るとともに、NPO など民間団体に対し、きめ細かく継続的な支援を行ってまいります。
- 孤独・孤立に陥らない取組みの推進
「社会的処方」の取組みを推進するため、医療保険者とかかりつけ医の協働によるモデル事業に加え、国立公園や美術館・博物館などの公的施設の魅力発信・活用を積極的に進めていきます。
安心して住める場所を持つことは、孤独・孤立対策の基礎であり、住居の確保に向けた支援や人とのつながりを生み出す共用スペースの活用などを支援していきます。
コロナ禍の影響は、非正規雇用の方々や女性がより深刻に受けています。孤独・孤立に陥らない予防的な施策として、職業訓練の内容の更新、求職者支援制度の充実、ハローワークや地域若者サポートステーションのより一層の活用を行います。
- 性的指向・性自認に関する理解の増進
性的指向・性自認(LGBT)に関する広く正しい理解の増進を目的とした議員立法の速やかな制定を実現するとともに、民間や各省庁が連携して取り組むべき施策を推進し、多様性を認め、寛容であたたかい社会を築きます。
- 当事者に寄り添ったひきこもり支援の推進
ひきこもり状態にある当事者やそのご家族が抱える葛藤に思いを巡らせ、生きづらさを少しでも解消して一歩踏み出すことを後押しできるよう、身近な相談窓口の設置や安心できる居場所づくりなどに取り組み、当事者本位の寄り添った支援を進めます。
また、存在そのものが肯定され、幸福感や生きがい、安心感を持って人生を過ごすことができる社会の構築に向けて、ひきこもり支援に関する法律の制定を目指します。
- 氏制度について
令和 3 年最高裁大法廷の判決を踏まえつつ、氏を改めることによる不利益に関する国民の声や時代の変化を受け止め、その不利益を更に解消し、もって国民一人ひとりの活躍を推進します。
憲法改正
- 憲法改正の実現
「現行憲法の自主的改正」は結党以来の党是であり、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の 3 つの基本原理は今後とも堅持し、国民の幅広い理解を得て、憲法改正への取組みを更に強化します。
技術革新、安全保障環境や社会生活の変化など、時代の要請に応えられる「日本国憲法」を制定するために、力を尽くします。
わが党は憲法改正の条文イメージとして、① 自衛隊の明記、②緊急事態対応、③合区解消・地方公共団体、④教育充実の 4 項目を提示しています。
衆参の憲法審査会を安定的に開催し、憲法の本体論議及び国民投票法について積極的に議論を進めます。
憲法及び憲法改正に関する国民の幅広い理解を得るため、党内外、全国各地での取組みを積極的に行います。
憲法改正に関する国民意識を高め、憲法改正原案の国会発議、国民投票の実施、早期の憲法改正を目指します。
行政改革・選挙制度等
- デジタル化等による行政の見直し
デジタル庁を中心に行政のデジタル化を強力に推進し、国民の行政手続きの利便性を高めます。行政文書の電子化を更に進め、文書管理の適正化や事務コストの効率化を図ります。
各省庁にまたがる新たな政策ニーズに機動的に対応し、重要政策に関する司令塔機能、総合調整機能を強化する観点から、内閣官房・内閣府の担務を早急に見直しスリム化を図ります。行政事業レビューと政策評価の更なる質の向 上及び連携強化を図るとともに、各省庁における EBPM 手法の活用を抜本的に強化します。
真に専門的かつ幅広い知見を政策に反映する観点から、省庁に設置された審議会等のあり方の整理・再編を進めます。
法律等に基づき策定される基本計画や報告書等の内容の重複等を見直し、国や自治体の業務負担の軽減を図るとともに、国民へのわかりやすい説明に努めます。
- 魅力ある職場に向けた公務員制度改革
能力・実績主義の評価による適材適所の人事配置や、時間外労働の徹底管理とテレワーク等による働き方改革を進め、熱意ある官僚が十分に能力を発揮できる環境を実現します。
給与制度や採用試験のあり方を柔軟に見直すとともに、再就職基準の見直し等によるいわゆる官民の「回転ドア」を進め、官民の垣根を超えた多様かつ優秀な人材を確保する環境を整えます。
- 攻めの制度改革
DX の推進をはじめ新たな経済社会システム構築に向けて、時代の要請に応える規制改革を大胆に進めます。新産業創出等に資するべく、特区制度の更なる充実を図ります。
子供と接する職業に就く人の性犯罪等に関する無犯罪歴を証明する「日本版 DBS」制度を創設し、省庁の壁を越えて子供たちを卑劣な性犯罪から守る社会を実現します。各種行政分野において、個人情報に配慮しつつ、その目的外利用や流出・漏洩等への対策を施した上で、マイナンバーへの集約を進め、機動的な行政運営体制を実現します。
- 基金・特別会計等の改革、独立行政法人の 活用
基金や特別会計等についても不断の見直しを行い、基金の余剰資金の国庫返納や、特別会計の積立金・余剰金等の一般会計等の財源としての活用、独立行政法人の独自財源収入の増加や事業費抑制等を通じての国の一般会計からの繰り入れや運営費交付金の抑制を進めます。また、これまでの独立行政法人制度改革の成果を踏まえ、引き続き業務運営の効率化を進めつつ、独立行政法人の持つ専門性やノウハウを、国の政策課題の解決のために最大限活用してまいります。
- 人事院勧告制度の尊重
人事院勧告は、国家公務員において憲法上の労働基本権が制約されていることの代償措置として、国家公務員に対し、適正な給与を確保するという機能を有するものであり、人事院勧告を尊重します。
- 将来にわたる高い品質の統計の提供、ビッグデータ、デジタル技術等の利活用
将来にわたって高い品質の統計を提供するために、必要な体制整備や人材育成を行いつつ、ビッグデータ、デジタル技術等も活用し、統計精度の向上に引き続き取り組むとともに、報告者負担の軽減による効率化等に取り組みます。また、統計情報を国民が容易に利用し、合理的な意思決定や新たなアイデアの創出につなげることができるよう、データ利活用の利便性を向上させます。また、これらと両輪のものとして、限られた予算のもとで政策効果を最大限に発揮するため、証拠=エビデンスに基づく政策立案(EBPM)を一層推進します。
- 国民目線に立った行政の見直しの推進
国民本位の効率的で質の高い行政を実現するためには、行政自らが、国民目線に立った評価・分析を徹底した上で、その結果を政策の改善につなげていくことが重要です。このため、制度導入から 20 年となった政策評価について、政策の企画立案や見直しプロセスにおいて、より一層活用されるものとなるよう、改善を図ります。また、従来の社会環境を前提とする仕組みそのものの見直しを要する施策、府省横断的な見直しを要する施策などについて、国民目線に立って見直します。
- 郵便等投票制度の対象者の拡大
在宅介護を受ける歩行が困難で自ら投票所に 行けない選挙人の投票機会を確保するため、現 在の郵便等投票制度の対象者の拡大を図ります。また、選挙権年齢が 18 歳以上に引き下げられたことを踏まえ、被選挙権年齢も引下げの方向で 検討します。適用年齢・対象選挙は若者団体等 広く意見を聴いた上で結論を出します。更に、 選挙運動規制等の公選法全般の見直しも進めま す。
- 不断の政治改革
政治の信頼回復を図るため、当選無効となった議員の歳費返納等を義務付ける法改正の速やかな実現等、不断に政治改革に取り組みます
まとめ
特に経済政策や補助金の動向を注視しています。