はじめに
多様な働き方を尊重し、個々の働く人を大切にするという視点は重要です。それにより、エンゲージメントを向上させ、生産性や労働効率を高めることにもつながります。
エンゲージメントの向上は、働く人が自身のスキルや好奇心をフルに発揮できる環境を整えること、また適切な評価や報酬の仕組みを整えることで実現します。個々の価値観や目標を尊重し、それに合わせた働き方を提案することも大切です。
また、労働力の拡大については、多様な働き手が活躍できる環境を整備することで実現できます。具体的には、テレワークやフレキシブルな働き方を整備し、子育てや介護等で働く時間に制約のある人々も含めた多様な労働力を活用すること、さらには共有値を明確にすることで、新入社員から経験者までが安心して働ける環境を作り出すことが重要です。
そんな働く人一人一人を尊重する風土を整えることで、はたらきやすい環境が実現し、企業も働く人も共に成長できる状況を作ることができます。
人材難の時代
日本において採用が難しい時代になってきたという認識は皆さまお持ちかと思います。
リクルートワークスの2019年卒の大学生を対象にした調査によれば、従業員数が300人未満の企業は求人倍率が9.91倍と過去最高の倍率を記録しています。一方で、大企業は0.37倍という結果が出ています。
大企業の認知度の高さや企業規模、給与、福利厚生、立地の良いオフィス、などの企業スペックの高さへ洗練された企業ビジョンが掛け合わされ、中小企業には太刀打ちできない魅力差が生じ、採用力に顕著な差が出ると考えられます。
このような状況においてどうやったら志望者が集まってくれるのか、経営者の方や人事担当者の方から苦労をしているという声を良く聞きます。
そこで、一度考慮して頂きたいのが採用ブランドです。
採用ブランドと聞くとそれは大企業のものであるとお考えではないでしょうか?
なんとなく高級感を感じて自社にブランドなんて、と思われる方が多いと思います。特に中小企業といわれる規模の企業の方はそう感じるのではないでしょうか。
しかし、企業のスペックで明確な差が出てしまっている現状では、採用ブランドを必要としているのはむしろ中小企業であると思いませんか?
そもそもブランドとは何か?
ブランドという言葉の語源は家畜を区別する焼き印が語源と言われています。
つまり同じカテゴリーの中で、似通った性質のものが並んでいる中で、他と区別を可能にするという機能がブランドの役割です。
例えばブランドとして知名度の高いLouis Vuittonの場合。
長い歴史の中で培われたデザイン性と機能性を兼ね備えた財布やバッグ、そして商品の代表的なイメージとなっているダミエやモノグラムは一目でLouis Vuittonと認識できる独自性を持っています。そして販売を行う店舗は洗練された内装と店員、接客で顧客を満足させます。そして何より製作から販売まで100年以上ブレない事業戦略です。
この事業戦略の一貫性と生み出される個性により顧客はLouis Vuittonとはどういうものかを明確に認識・理解しています。顧客は単なる高価な財布やバッグではなく、Louis Vuittonの財布、Louis Vuittonのバッグを購入しているのです。
一方で総合ディスカウントストア“驚安の殿堂”ドン・キホーテはどうでしょうか。ドン・キホーテでもLouis Vuittonの一部商品は購入できます。しかし、ドン・キホーテがLouis Vuittonの商品を販売している事を強みにはしていません。日用雑貨から装飾品といった商品の幅広さ、そしてそれが安いことを強みとしています。全国の店舗でオリジナルの音楽を流し、共通のデザイン性を持った看板、オリジナルキャラクター、どれもドン・キホーテとしての強烈な個性を演出しています。
以上、全く違う種類になりますが、どちらも初めて来店した顧客でさえどういったものを扱っているのか、どのように利用するのかを直ぐに理解できる分かりやすさがあります。どちらも自らの事業戦略を顧客接点の段階でも一貫したメッセージとして発信しているためです。そして顧客が受け取ったメッセージを正しく認識し、理解する事で他と区別ができる個として認知される=ブランドとして確立されるにいたります。
最初に取り組むべき採用ブランド戦略
Louis Vuittonもドン・キホーテも事業戦略が一貫しており、それを顧客が正しく認知することでようやくブランドとして確立されています。人材採用の領域においては、採用候補者に事業戦略を分かりやすく語り掛ける対話方法こそ採用ブランド戦略であり、その結果採用候補者に正しく認知される事で他社と明確な差が生まれます。
では、中小企業やスタートアップにおける採用ブランド戦略とはまず何を行うのでしょうか?
最も重要なことは、事業戦略を採用候補者たちに伝わるような情報に仕立てることです。また、経営者の思想を言語化する事も必要です。加えて現在働いている社員から会社の魅力をヒアリングして言語化する事も有効です。そして何より採用候補者への発信においてドン・キホーテの<驚安の殿堂>のように分かりやすいコンセプトを設定し発信できる用に仕立てるのです。
給料などの条件は比較対象にされやすく、競争に勝つ事は至難の業で、それでは良い意味での他社との区別になりません。むしろ、等身大で良いので分かりやすく事業戦略を軸に情報を発信した方が後々のミスマッチを防ぐといった効果も期待できます。
本当に等身大の情報を届けることで応募が増えるのかと思われるかもしれませんが、目的は応募数の最大化ではありません。自らの事業戦略を一貫して採用候補者たちに発信することが目的です。
事業戦略を採用候補者に分かりやすく発信することは何よりも優先して行う事と考え、発信すべき情報を整理しましょう。
それが採用ブランド戦略の一歩目です。
ターゲティングとペルソナの設定
中小企業はターゲティングに必要な調査を行う時間や予算が無いことが大半だと思われますが、エンゲージメントの高い社員にヒアリングを行いペルソナの元にするだけでも求める人物像がみえてきます。従来と比較して予算も時間も節約できます。何よりヒアリングは密に行えますし、実際に働いているのでメリットに感じる事もデメリットに感じることも良く分かります。
難しい事は考えず、自分たちの求める人物像を明確化し、経営陣や現場社員とのすり合わせを行ったうえでペルソナの設定を行うだけでも随分違います。
ここで注意したいのは、ペルソナの設定は応募者数を増やすためのものではないという事です。
求める人物像を明確化する事により、採用候補者へ自社の価値を正しく認識してもらうために必要なのです。そのためヒアリング内容をもとにペルソナに響く情報はどういったものなのかをはっきりさせておきます。例えば、ペルソナが自己成長の機会を会社へ求めているのであれば、入社することによってどの様な変化が自身に現れるのかをイメージさせないといけません。
また、ペルソナを設定することでターゲットがあまりにも絞られ過ぎるのではとリスクを感じる方もいらっしゃいますが、むしろ応募者数が減ったとしてもほしい人材が採用できるのであれば、無駄な面談が省けて業務効率の改善につながります。
もう一点気を付けなければいけない事は年齢差です。
ペルソナは社員をモデルにするとしましたが、そもそも一番若い社員が40代で採用は20代の新卒学生を求めるといった場合です。社員をモデルにしたとしても価値観が異なるという事を考慮に入れなければいけません。その場合はターゲットとなり得る学生へのヒアリングを重ね、採用側の希望とすり合わせを行いましょう。
採用候補者との対話
ペルソナ=採用候補者を設定し、どんな内容を発信するのかも決まり、あとはどのように発信しどのような対話を行っていくのかという話になります。それにはまず前提としてオンラインでの存在感を高める必要があるという事をご理解いただく必要があります。なぜなら2017年時点で13歳から59歳までのスマートフォン保有率は9割を超え、さらに2018年時点で学生のメディア接触時間はスマホやタブレットといったデジタルデバイスによるものが50%を超えています。現在の状況はオンラインで情報に触れてもらえるように準備を行うことは必須といえるのです。
認知を獲得し母集団を形成する
母集団の形成はどの企業もねらうところですが、そのためにまずは認知されなければなりません。採用候補者に見つけてもらうための活動が必要です。
今回は採用候補者を新卒の学生と仮定しますと、学生にみつけてもらうための情報発信とは何かを考える必要があります。例えば、学生は企業の社風や仕事のやりがいや、口コミ、インターンを経験している学生の姿などに情報としての興味を持っている事が多いため、関連する情報を発信し徐々に認知を高めていくという流れになるでしょう。
しかし、認知の獲得と一言で言っても大抵の企業がこのハードルを越えられません。そのためにオンラインとオフラインの活動の双方で働きかけるターゲット層の数を増やしていきます。
SNS・ビジネスSNS・オフラインでのイベントを有機的に組み合わせて継続接触を行う
認知の獲得と並行して、応募への温度を上げるための施策も取り組みましょう。
SNSやwantedlyの様なビジネスSNSでの情報発信、オフラインでのイベントの開催を有機的に組み合わせて、企業が採用候補者たちと継続的な接触を行える環境を構築していきます。これらの活動は認知獲得の他、応募者の志望度を高めるためにも有効です。
※株式会社アイデムによる2018年3月卒業予定者の就職活動に関する学生調査によれば77.3%の学生が継続接触により志望度が高まったと答えています。
当然、会社ホームページのクオリティを上げる、採用募集ページの内容充実、ニーズに沿った魅力的な求人票の作成も重要です。企業イメージに合わせてオフィスを改装するといった事も効果があります。しかし、それら全てを行ったとしても認知されなければ採用においては意味がありません。また、他社も必死になって取り組んでいるものでもあります。その中で存在感を発揮するためには、手間をかけてでも母集団の形成を促し、継続接触を可能とする有機的な情報発信法を構築する事をお勧めします。
デジタル化とリモートワークの普及
近年、デジタル化の進展とCOVID-19パンデミックを契機に、リモートワークやフレキシブルな働き方が急速に普及しました。この変化は、働き方に対する価値観や企業文化にも影響を与えています。従来のオフィスワーク中心から、成果を重視した柔軟な働き方へのシフトは、個人のライフスタイルに合わせた働き方を可能にし、ワークライフバランスの向上に寄与しています。このような背景を踏まえ、リモートワークの推進やデジタルツールの活用が、企業の採用戦略やブランドイメージ構築において重要な要素となっています。
ダイバーシティ&インクルージョンの推進
多様性を尊重し、包摂的な職場環境の構築は、企業のイノベーションと競争力の向上に不可欠です。性別、年齢、国籍、障害の有無などにかかわらず、すべての従業員が平等にチャンスを得られる環境を整えることは、採用ブランドの魅力を高めるだけでなく、社会的責任を果たすことにも繋がります。また、多様なバックグラウンドを持つ人材の採用は、新たなアイデアや視点をもたらし、企業文化を豊かにします。
持続可能性と社会的責任
環境への配慮や持続可能な社会の実現に向けた取り組みは、特に若年層の労働者にとって重要な価値となっています。企業が社会的責任を果たし、持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する姿勢を示すことは、採用ブランドの魅力を高める要素となります。特に、環境保護、社会貢献活動、倫理的なビジネス実践への取り組みは、企業が社会の一員として価値を提供している証として、ポジティブなイメージを築くのに役立ちます。
テクノロジーの活用と新たなスキルセット
AIや機械学習、ブロックチェーンなど、新しいテクノロジーの発展は、業務プロセスの効率化だけでなく、新たな職種やスキルセットの需要を生み出しています。企業がこれらの技術を積極的に取り入れ、従業員のスキルアップやキャリア開発を支援する体制を整えることは、特に技術志向の高い人材にとって魅力的なポイントです。また、これらの取り組みは、企業が将来に向けて革新的であることを示し、採用ブランドの強化に貢献します。
これらの要素を取り入れることで、より時代に即した、魅力的な採用戦略を構築し、多様な人材を惹きつける企業ブランドを築くことができます。
採用ブランドは必須の時代
他社との明確な差を持って存在感を示し続ける事で、採用ブランドは強固になっていきます。
そのためのアプローチは様々ありますが、どの企業でも根幹は同じです。成果が感じられないと言って直ぐに取組の方針を変更してしまうのは受け取り手の混乱につながりますので、じっくりと形成していくものであることを忘れないで頂きたいと思います。
求人倍率が過去最高を記録しさらに人口減が続く今、採用ブランド確立は必須です。
是非チャレンジされることをお勧めします。
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