信託型ストックオプションってなに?言葉の意味やメリットとデメリットを分かりやすく解説!
皆さまは「信託型ストックオプション」という言葉を耳にしたことはありますか?
また、従来の「ストックオプション」は知っているけど、信託型ストックオプションと何が違うのかを疑問に思ったことがありませんか?
この記事ではこれから起業される方や既に起業されている方に向けて、信託型ストックオプションの意味やメリットとデメリットに関して解説していきます。
是非ご覧ください!
はじめに
皆さんはストックオプションという言葉をご存知でしょうか?
簡単に説明すると、ストックオプションとは株式会社取締役や従業員などが、自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利のことです。
ストックオプションを知らない、もしくはストックオプションの意味を再確認したい方は、はじめに下の記事をご覧ください!
信託型ストックオプションの税務的解釈の説明について
従来の認識と異なる見解
信託型SOは一般的には、企業が従業員に自社株の購入権利を付与する形態の報酬制度です。これまでの一般的なスタートアップ界隈および弁護士、税理士等の認識では、信託型SOを行使して得た利益は譲渡所得として課税されるものとされていました。これは株式を売却した際に得られる利益であり、税率は約20%です。
国税庁の見解
しかし、国税庁の新たな見解では、信託型SOで得た利益は給与所得として課税されるとのことです。給与所得の最高税率は約55%で、これは譲渡所得の税率と比べて大幅に高いです。これはスタートアップ企業を含む多くの企業の従来の認識と異なるものであり、影響を及ぼす可能性があります。
さらなる問題点
従業員が自社株を取得後に売却した時点で給与所得と見なされると、税率の違いだけでなく、他の税務上の影響も生じる可能性があります。具体的な詳細が提供されていないため、具体的な影響を正確には把握できませんが、一般的には給与所得の課税が適用されると、所得税と住民税が源泉徴収され、年末調整の対象となります。
源泉所得税の負担
信託型SOが給与所得課税認定された場合、企業が源泉所得税を負担する選択肢があるとのことです。これは企業にとって追加のコストを意味する可能性があります。
以上の情報は概要を提供するためのものであり、具体的な税務処理については税務専門家にご相談ください。また、税法は頻繁に変更されますので、最新の情報を常に確認することが重要です。上記を踏まえた上で過去運用されていた信託SOの説明として下記をご覧ください。
信託型ストックオプションとは?
「信託型ストックオプション」とは、オーナーや経営者(=委託者)が、信託会社などに資金を預け、発行会社の時価発行分のストックオプションを将来、役員や従業員など(=受益者)に、客観的な業績評価に基づいてストックオプションを配るスキームです。より詳しい信託型ストックオプションのスキームが下の図になります。なお、SO=ストックオプションの意味です。
信託型ストックオプションは、従業員や役員に対する報酬として、ストックオプション制度と信託制度を組み合わせたものです。
この制度では、受託者を介して発行会社から間接的にストックオプションが交付されます。具体的には、発行会社が信託に預けたストックオプションを信託期間中に受託者が保管し、信託期間満了時に業績への貢献度合い等に応じてポイントを付与し、ストックオプションと交換する仕組みとなっています。
前述の通り、最初にストックオプションを信託に割り当てることで、後から評価に合わせて適切にストックオプションを割り振ることができることが最大の特徴です。
ストックオプションの行使条件を一定期間保存しておくことから、冷凍保存型やタイムカプセルと呼ばれることもあります。
この方式によって、従業員や役員が直接株式を保有するわけではなく、株式価値変動リスクを回避しつつ、将来の株価上昇によって得られる利益を享受できるようになります。また、税務上は株式売却時の20%課税のみとなるため、受益者にとって税負担が軽いというメリットもあります。
信託型ストックオプションは、これまでのストックオプションでの課題を解決する手段にもなっています。
信託型ストックオプションと従来のストックオプションの大きな違いは、以下の3点になります。
このように従来のストックオプションの課題を解決する形で生まれた信託型ストックオプションは近年、導入企業が増えてきています。
実際に、2022年2月15日の日本経済新聞では2021年の新規株式公開(IPO)企業で22社が導入し、2020年より導入企業が3倍に増えたという報道もあります。
また、市場の広がりを商機に専用システムの開発に乗り出す新興勢も出ているようです。
参考:信託型ストックオプション導入企業増加とシステム開発新興勢に関するニュース https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80153410V10C22A2FFT000/
信託型ストックオプションのメリット
前セクションでも少し触れましたが、信託型ストックオプションのメリットは以下の4つになります。
1. 発行時には割当先を決めず、後決めができる
<従来の課題>
従来のストックオプションでは、発行時に割当先の役員/従業員、及び割当比率を決めなければなりません。既に多くのストックオプションを付与した後に採用のミスマッチが発覚した場合には、付与者の同意がなければ原則的にストックオプションは回収できず、会社が不利益を被る場合があります。
<信託型ストックオプションの場合>
発行したストックオプションをあらかじめ信託しておき、会社への貢献度をポイントなどで評価して、ポイントに応じてストックオプションを付与することができます。企業への貢献度に合わせて、公平にストックオプションを付与できるため、社員のモチベーションアップにも繋がります。
2. 冷凍保存することで、大きなキャピタルゲインを得ることができる
<従来の課題>
事業拡大が拡大するにつれて時価総額が伸び、株価が上がります。その結果、後から発行したストックオプションの行使価格も高くなってしまい、後からストックオプションを得た受益者のキャピタルゲインが小さくなるという問題点があります。
<信託型ストックオプションの場合>
ストックオプションを信託に預け入れた場合、低い株価かつ発行時の条件のまま冷凍保存し、残しておくことができます。その結果、株価の上昇後でも大きなキャピタルゲインを得ることができます。後から入社する社員も大きなキャピタルゲインを得ることができるため、採用活動においても企業の魅力となります。
3. 有償ストックオプションであるため、税率が安くなる
<従来の課題>
従来のストックオプションは、労働の対価としてストックオプションを無償で取得できるため、税務上”給与”の性質を持ちます。そのため、株式に転換した時に給与と同じ総合課税が課され、 最大55%の累進課税が発生します。
<信託型ストックオプションの場合>
信託型ストックオプションは、受託者が信託会社に対し、信託財産である金銭を払い込むため、有償型ストックオプションとして扱われます。そのため、税務上は株式売却時の20%課税のみとなるため、受益者にとって税負担が軽いのもメリットです。現行では解釈が変更となっていますので注意してください。
4. 登記や実務の費用が一度で済み、トータル発行コストが低くなる
<従来の課題>
ストックオプション発行には、設計費用・弁護士費用・登記費用など多くのコストがかかります。度々発行してしまうと、毎回かかる発行コストがかかる上に、契約締結などの多くの手続きが必要となり、時間的・金銭的なコストがかかります。
<信託型ストックオプションの場合>
信託型ストックオプションは、まとめて発行して信託に割り当てるため、発行に必要な事務作業や登記が一度で済みます。結果的に、発行の時間的・金銭的なコストを抑えることができます。
信託型ストックオプションのデメリット
1. 委託者(主に創業者)の金銭的負担が大きい
ストックオプションの委託者は会社の代表者になることが一般的です。
委託者はストックオプション発行時に金銭を支払う必要があるため、委託者の個人資産から支払うことになります。
行使価格が高くなりすぎると、信託型ストックオプションの発行にかかる費用も大きくなります。
加えて、信託会社を通してストックオプションを発行する場合、多額の手数料を支払う必要があり、委託者には金銭的負担が大きくなります。
2. ポイント付与規程の作成が難しい
信託型ストックオプションの肝となるポイント付与規程の作成は、非常に高い専門性が要求されるため専門家の知見が必要です。ポイント付与規程は公平公正さを保ちつつも、自社に適した設計をする必要があり、非常に大切でかつ手間になるため、導入までの時間は一定掛かることが想定されます。
3. 各専門家や信託会社の協力が必要である
信託型ストックオプションの発行には、上記のようなポイント付与規程に加えて、法律的・税務的な手続きも多くあります。各分野の専門家や信託会社の協力が必須であり、委託費用もかかります。
そのため、信託型ストックオプションを導入する場合には、多くの専門家経費など導入コストがかかるというデメリットがあります。
税務上、会計上の取り扱いが明確となっていないことについて監査法人が嫌がるケースもあります。また信託型ストックオプションは事前の計画、付与設計がしっかりしていないと企図していた通りの運用や効果が期待できないリスクもあります。デメリットと思わずに、外部と協力しながら丁寧に設計することも重要です。
2023年2月20日(月)に開催された衆議院予算委員会第三分科会において、信託を用いたストック・オプションに関する課税上の取り扱いにかかる言及があり、課税上の取り扱いについては常に専門家にお問い合わせいただくようお願い致します。
土田議員による質問(https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54348&media_type=)
おわりに
最後までご覧いただきありがとうございました。今回は、信託型ストックオプションについてご紹介いたしました。
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